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日本と開発途上国の看護の差異に関する研究 ―ラオスで活動した青年海外協力隊員への面接と報告書の分析―

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日本と開発途上国の看護の差異に関する研究

ラオスで活動した青年海外協力隊員への面接と報告書の 析

髙 田 恵 子, 森

淑 江, 辻 村 弘 美

宮 越 幸 代, 栗 原 千絵子, 長 嶺 めぐみ

要 旨 【目 的】 国際看護協力を行う際の問題点の一つとして, 派遣された国における看護に関する え方や看護 技術の日本との違いが挙げられる. 開発途上国に対する効果的な看護協力のために, ラオスで活動した青年 海外協力隊看護職隊員の面接調査と活動報告書を 析し, 看護の差異を明らかにすることを目的とする. 【方 法】 看護職隊員 14名の活動報告書, 5名の隊員に面接調査を実施し, 作成された逐語録から日本と異 なる看護に関する記述を抽出し,「看護技術/助産技術到達目標」(厚生労働省 2003) を参 に 類した. 【結 果】 日本と異なる看護の記述は「感染予防の技術」,「症状・生態機能管理技術」,「与薬の技術」に関する内 容が多く,患者の身の回りの世話は家族が行っていた.助産技術は 期,妊娠期についての記述が多かった. 【結 語】 ラオスと日本の看護の違いが明確化された. それらは, 今後の国際看護協力活動において多大に 寄与するものと える.(Kitakanto Med J 2010;60:31∼40) キーワード:看護技術, 助産技術, 差異, ラオス, 青年海外協力隊 は じ め に 青年海外協力隊は, 1965年にわが国政府の事業として 発足し, 1974年に国際協力事業団 (Japan International Cooperation Agency: JICA (現国際協力機構)) の設立 後は事業主体を JICA に移した. JICA では青年海外協 力隊をボランティア派遣事業の一つとして 位 置 づ け 2009 年 9 月 30日現在, べ 33,541名の隊員を 83カ国 に派遣している.その内,看護職隊員 (看護師,保 師,助 産師) の派遣数は 2,183名 (看護師 1,352名, 保 師 402 名, 助産師 429 名) に上っている. 国際看護協力を行う際の問題点の一つとして, 派遣さ れた国における看護に関する え方や看護・助産技術の 日本との違いが挙げられる. 青年海外協力隊看護職隊員 による技術顧問に対する質問状の 析結果 によると, 日本の経験と異なる派遣国の看護技術・ケアの違いに関 する事項が最も多く,滅菌・消毒,看護ケア・診療に関す る質問が全体の 32%を占めていた. また, 青年海外協力 隊看護職隊員に対する調査 によると, 派遣された国の 看護で驚いたことは清潔概念・操作, 物品・医薬品管理, 看護のレベル, 看護業務の違いなどとなっている. 国際 看護協力に従事する看護職者はこのように, 日本と派遣 された国との看護や看護・助産技術の違いに戸惑いを感 じながら試行錯誤で看護協力を行ってきた. 筆者自身も ラオスでの青年海外協力隊看護職隊員として日本と異な る看護の中で活動した経験を持っている. 「国際看護とは,自 のものとは異なる国 (独立国とし て認定されていない地域も含む) でその国の社会, 政治, 経済, 教育, 文化, 保 医療システム, 疾病構造など看護 に影響するあらゆるものを 慮して適用する看護のこと である」 と定義されるように, その国の様々な背景や 状態によって看護や看護技術, 助産技術に違いがあると えられる. しかし, これまで国際看護協力において日 本と異なる看護や看護技術についての研究はあまり行わ れてこなかった. 日本と異なる看護や看護・助産技術に ついて明らかにすることは派遣された国の実情に合った 1 埼玉県越谷市三野宮820 埼玉県立大学保 医療福祉学部看護学科 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 3 長野県駒ヶ根市赤穂1694 長野県看護大学 平成21年11月20日 受付 論文別刷請求先 〒343-8540 埼玉県越谷市三野宮820 埼玉県立大学保 医療福祉学部 髙田恵子

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国際看護協力を実施するために重要であると えられ る. そこで, 我々は 2007年から日本と中南米の看護技術 書の 析, 日本と中国の看護技術の差異に関する研究 を実施してきた. 本研究では派遣国の様々な背景や状態 に合った効果的な看護協力のために, ラオスで活動した 青年海外協力隊看護職隊員の面接調査と JICA へ提出し た報告書から日本と異なる看護に関する記述を抽出し, その差異を明らかにすることを目的とした. 研 究 目 的 ラオスで活動した青年海外協力隊看護職隊員の面接調 査と JICA に提出された報告書から日本と異なる看護に 関する記述を抽出し, その差異を明らかにする. 用 語 の 説 明 青年海外協力隊隊員が JICAに提出された報告書: 任期中の 2年間に 1号報告書から 5号報告書の 5回の 報告書の提出が義務づけられている. 青年海外協力隊員 は, あらかじめ指定されたフォームに基づき記載する. 各報告書の表紙には, 一般 開の可否及び複写の許可の 有無を記入する. 研 究 方 法 1.対象 2002年度から 2004年度末までにラオスに派遣された 青年海外協力隊看護職隊員 (看護師, 助産師) 14名が作 成した JICA に提出された報告書 ( 開 ) 計 57冊の 析と帰国後あるいは派遣中の隊員 5名 (帰国隊員 4名, 派遣中の隊員 1名) への半構造化面接調査を行った. 2. 析方法 2002年度から 2004年度末までにラオスに派遣された 青年海外協力隊看護職隊員 14名の活動報告書の記述か ら, 日本と異なる看護技術及び助産技術に関する記述を 抽出, 意味が変わらないよう短文化し, 1意味 1文章とし てデータとした. さらに帰国隊員 4名 (内 2名は報告書 と併せて 析), 派遣中の隊員 1名に「日本と異なる看護 技術及び看護」, 日本と異なる助産技術及び助産」につ いて報告書から抽出された内容を参 に, 半構造化面接 を行い, 報告書と同様に 析対象とした. 得られたデー タを「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討 会」報告書 (厚生労働省 2003) の看護実践における技術 表1 看護実践における技術的側面「看護技術」 大項目 小項目 1 環境調整技術 ①温度, 湿度, 換気, 採光, 臭気, 騒音, 病室整備の療養生活環境調整 例 : 臥床患者, 手術後の患者等の療養生活環境調整> ②ベッドメーキング 例 : 臥床患者のベッドメーキング> 2 食事援助技術 ①食生活支援 ②食事介助 例 : 臥床患者, 嚥下障害のある患者の食事介助> ③経管栄養法 3 排泄援助技術 ①自然排尿・排 援助 (尿器・ 器介助, 可能な限りおむつを用いない援助を含む.) ②浣腸 ③膀胱内留置カテーテルの挿入と管理 ④摘 ⑤導尿 4 活動・休息援助技術 ①歩行介助・移動の介助・移送 ②体位変換 例 : 1及び 2について, 手術後, 麻痺等で活動に制限のある患者等への実施> ③関節可動域訓練・廃用性症候群予防④入眠・睡眠への援助⑤体動,移動に注意が必要 な患者への援助 例 : 不穏,不動,情緒不安定,意識レベル低下,鎮静中,乳幼児,高齢者等への援助> ④入眠・睡眠への援助 ⑤体動, 移動に注意が必要な患者への援助 例 : 不穏,不動,情緒不安定,意識レベル低下,鎮静中,乳幼児,高齢者等への援助> 5 清潔・衣生活援助技術 ①清拭 ②洗髪 ③口腔ケア ④入浴介助 ⑤部 浴・陰部ケア・おむつ 換⑥ 寝衣 換等の衣生活支援,整容 例 : 1)から 6)に ついて, 全介助を要する患者, ドレーン挿入, 点滴を行っている患者等への実施> 6 呼吸・循環を整える技術 ①酸素吸入療法 ②吸引 (気管内, 口腔内, 鼻腔内) ③ネブライザーの実施 ④体温調整 ⑤体位ドレナージ ⑥人工呼吸器の管理 7 傷管理技術 ① 傷処置 ②褥瘡の予防 ③包帯法 8 与薬の技術 ①経口薬の与薬, 外用薬の与薬, 直腸内与薬

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②皮下注射, 筋肉内注射, 皮内注射 ③静脈内注射, 点滴静脈内注射 ④中心静脈内注射の準備・介助・管理 ⑤輸液ポンプの準備と管理 ⑥輸血の準備, 輸血中と輸血後の観察 ⑦抗生物質の用法と副作用の観察 ⑧インシュリン製剤の種類・用法・副作用の観察 ⑨麻薬の主作用・副作用の観察 ⑩薬剤等の管理 (毒薬・劇薬・麻薬, 血液製剤を含む) 9 救命救急処置技術 ①意識レベルの把握 ②気道確保 ③人工呼吸 ④閉鎖式心臓マッサージ ⑤気管挿管の準備と介助 ⑥止血 ⑦チームメンバーへの応援要請 10 症状・生体機能管理技術 ①バイタルサイン (呼吸・脈拍・体温・血圧) の観察と解釈 ②身体計測 ③静脈血採血と検体の取扱い ④動脈血採血の準備と検体の取り扱い ⑤採尿・尿検査の方法と検体の取り扱い ⑥血糖値測定と検体の取扱い ⑦心電図モニター・18 誘導心電図の装着, 管理 ⑧パルスオキシメーターによる測定 11 苦痛の緩和・安楽確保の技術 ①安楽な体位の保持 ②罨法等身体安楽促進ケア ③リラクゼーション ④精神的安寧を保つための看護ケア 12 感染防止の技術 ①スタンダードプリコーション (標準予防策) の実施 ②必要な防護用具 (手袋, ゴーグル, ガウン等) の選択 ③無菌操作の実施 ④医療廃棄物規定に った適切な取扱い ⑤針刺し事故防止対策の実施と針刺し事故後の対応 ⑥洗浄・消毒・滅菌の適切な選択 13 安全確保の技術 ①誤薬防止の手順に った与薬 ②患者誤認防止策の実施 ③転倒転落防止策の実施 ④薬剤・放射線暴露防止策の実施 文献 8をもとに作成 表2 看護実践における技術的側面「助産技術」 大項目 小項目 妊 産 婦 ①正常妊婦の 康診査と経過診断, 助言 ②外診技術 (レオポルド触診法, 子宮底・腹囲測定, ザイツ法, 胎児心音聴取 (ドップラー法, トラウベ)) ③内診技術 ④ 監視装置の装着と判読 ⑤ 開始の診断, 入院時期の判断 ⑥ 第 1∼4期の経過診断 ⑦破水の診断 ⑧産痛緩和ケア (マッサージ, 温罨法, 温浴, 体位等) ⑨ 進行促進への援助 (体位, リラクゼーション等) ⑩心理的援助 (ドゥーラ効果, 妊産婦の主体的姿勢への援助等) 正常 の直接介助, 間接介助 妊娠期, 期の異常への援助 (指導の下での実施) 新 生 児 ①新生児の正常と異常との判断 (出生時, 入院中, 退院時) ②正常新生児の 康診査と経過診断 ③新生児胎外適応の促進ケア (呼吸・循環・排泄・栄養等) ④新生児の処置 (口鼻腔・胃内吸引, 臍処置等) ⑤沐浴 ⑥新生児への予防薬の与薬 (ビタミン K2, 点眼薬) ⑦新生児期の異常への援助 (指導の下での実施) 褥 婦 ①正常褥婦の 康診査と経過診断 (入院中, 退院時) ②母親役割への援助 (児との早期接触, 出産体験の想起等) ③育児指導 (母乳育児指導, 沐浴, 育児法等) ④褥婦の退院指導 (生活相談・指導, 産後家族計画等) ⑤母子の 1か月 康診査と助言 ⑥産褥期の異常への援助 (指導の下での実施) 証明書等 ①出生証明書の記載と説明 ②母子 康手帳の記載と説明 ③助産録の記載 文献 8をもとに作成

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的側面「看護技術」の 13の大項目と 69 の小項目に っ て, 助産技術」の 3つの大項目と 28の小項目を参 に 類した (表 1,2).また,対象の看護技術について行われ ていないと記述されたものに関してもデータとした. さ らに,「看護技術」,「助産技術」以外のデータを「看護技 術に関連する事柄」,「助産技術に関連する事柄」として 類した. 3.倫理的配慮 報告書は一般 開及び複写が許可されたものを対象と し, 面接調査では, 対象者に本研究の目的, 方法, 本研究 の参加は自由意思で途中中断も可能であること, 参加の 拒否や途中中断による不利益はないこと, 内容は研究以 外では 用しないこと, 個人の名前は特定されないこと, データの正確性を確保するために本人の同意を得て IC レコーダーに録音し, 録音内容は逐語録として記録した 後は消去することを説明した. また, 口頭及び書面で説 明を行い書面で同意を得た. 同意書は 2通作成し, 研究 参加者と研究者で各々一通を所持した. 結 果 析対象とした青年海外協力隊看護職隊員の職種は看 護師 15名 (78.9%), 助産師 4名 (21.1%) であった. その 内, 活動報告書の 析は看護師 12名 (85.7%), 助産師 2 名 (14.3%), 面接調査は看護師 3名 (60.0%), 助産師 2名 (40.0%) であった. 配属先は全体で病院・診療所 17名 (89.5%), 教育機関 2名 (10.5%) であり, 看護師隊員の配 属 先 は 病 院・診 療 所 13名 (86.7%), 教 育 機 関 2名 (13.3%)であり,助産師隊員の配属先は病院・診療所 4名 (100%) でった (表 3). 1.青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べた ラオスの「看護技術」 青年海外協力隊看護職隊員が述べた日本と異なるラオ スの「看護技術」を表 4に示す.看護実践における技術的 側面〔看護技術〕の 13大項目中,日本と異なる看護技術 に関する記述は 11項目であった. 合計 78記述の内訳は 〔12. 感染防止の技術〕21記述 (26.9%),〔10. 症状・生 体機能管理技術〕15記述 (19.2%),〔8.与薬の技術〕14記 述 (17.9%),〔1.環境調整技術〕8記述 (10.3%),〔5.清潔・ 衣生活援助技術〕8記述 (10.3),〔3. 排泄援助技術〕3記 述 (3.8%)〔7. 傷管理技術〕3記述 (3.8%),〔4. 活動・ 休息援助技術〕2記述 (2.6%)〔6.呼吸・循環を整える技 術 2記述 (2.6%)〔2.食事援助技術〕1記述 (1.3%),〔13. 安全確保の技術〕1(記述 1.3%)の順に多く,また,〔9.救 命救急処置技術〕,〔11. 苦痛の緩和・安楽確保の技術〕 についての記述はなかった. 69 小項目 類においては〔10. 症状・生体機能管理技 術〕①バイタルサイン (13記述),〔12.感染防止の技術〕 ③無菌操作の実施 (12記述),〔8. 与薬の技術〕③静脈内 注射・点滴静脈内注射 (6記述), ②皮下注射・筋肉内注 射・皮内注射 (5記述),〔1.環境調整技術〕②ベッドメー キング (5記述),〔12. 感染防止の技術〕④医療廃棄物規 定に った適切な取扱い (5記述),〔5.清潔・衣生活援助 技術〕①清拭 (4記述),〔12. 感染防止の技術〕⑥洗浄・ 消毒・滅菌の適切な選択 (3記述) の順に多かった. 具体的な内容は〔10.症状・生体機能管理技術〕①バイ タルサインでは「基本的なバイタルサインチェックもで たらめなことが多い」,「検温はしているが検脈はみたこ とがない」,「脈拍は一桁代も書いていたが 15秒くらい 計って 4倍していた」,「血圧は 2桁読み.人によって四捨 五入しているか,切り捨てしているかはわからない」,「血 圧測定は聞こえたかどうかではなく, 水銀の動きだけを みている」,「血圧測定では聴診器を 用せずに血圧を 測っていた」,「体温計は家族に配り計らせていた.挿入場 所や測定場所,読み取り方は家族次第」,「視力は測定もせ ずに正常と記入される」等の内容であった.〔12. 感染防 止の技術〕③無菌操作の実施 (12記述) では「同じセッ トを って次の患者さんに 用する」,「清潔操作を行う 際には, 清潔な手袋を 用していても, 清潔な部 以外 のところを触ってしまう」, 滅菌しない物を ってい た」, 汚染ガーゼを摂子を いはさみ, それを元に戻す」 等の内容であった.〔8.与薬の技術〕③静脈内注射・点滴 静脈内注射 (6記述)では「点滴の敵下数の計算ができな い」, 小児の点滴の速さの加減は家族がやっていた」, 医師は一 間に 25滴という処方をするが, 看護スタッ フによっては滴下を数えていない」,「輸血のアレルギー 反応がでてもだれもみていない」,「アレルギーテストを した直後にすぐに注射した」等の内容であった. ②皮下 注射・筋肉内注射・皮内注射 (5記述)では「注入の際に 注射針を手で固定する」,「針基から先 (清潔部 )の部 を触る」,「注射は根本まで刺す」, 「アルコール綿は わ 表3 対象者の属性 (n=19) n (%) 職 種 全 体 看護師 15 ( 78.9) 助産師 4 ( 21.1) 報告書 看護師 12 ( 85.7) 助産師 2 ( 14.3) 面接調査 看護師 3 ( 60.0) 助産師 2 ( 40.0) 配属先 全 体 病院・診療所 17 ( 89.5) 教育機関 2 ( 10.5) 看護師 病院・診療所 13 ( 86.7) 教育機関 2 ( 13.3) 助産師 病院・診療所 4 (100.0) 教育機関 0 ( 0.0)

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ず水を含ませたコットンで注射部位を拭く」等の内容で あった.〔1.環境調整技術〕②ベッドメーキング (5記述) では「枕元を玉結びしてひっかけ,足下だけ三角にする」, 「布団はすべて家族が持ち込む」等であった.〔12. 感染 防止の技術〕④医療廃棄物規定に った適切な取扱い (5 記述) では病棟の外のゴミ箱内に注射器と針・血のつい たガーゼがはいっていた」,〔5. 清潔・衣生活援助技術〕 ①清拭 (4記述) では「水を って清拭する」,「氷を っ 表4 青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べたラオスの「看護技術に関連する事柄」 大項目 小項目 内容 (例) n % ( ) 内の数字は n 1 環境調整技術 8 (10.3) ①療養生活環境調整 (3) ・病室が汚い ②ベッドメーキング (5) ・枕元を玉結びしてひっかけ, 足下だけ三角にする ・布団はすべて家族が持ち込む 2 食事援助技術 1 ( 1.3) ③経管栄養法 (1) ・胃カテーテルを気道確保の体勢で挿入する 3 排泄援助技術 3 ( 3.8) ②浣腸 (1) ③膀胱内留置カテーテル の挿入と管理 (2) ・目盛りが付いているが尿量を計らない ・市販のペットボトルのミネラルウオーターで浣腸する (家族が実施) 4 活動・休息援助技 術 2 ( 2.6) ① 歩 行 介 助・移 動 の 介 助・移送 (2) ・頭を下にして坂を上る ・頭から移送 (足からは死亡したときのみ) 5 清潔・衣生活援助 技術 8 (10.3) ①清拭 (4) ③口腔ケア (2) ④入浴介助 (2) ・水を って清拭する ・氷を って清拭する (発熱時) ・呼吸器装着患者の口腔ケアをしない ・水浴びが多い 6 呼吸・循環を整え る技術 2 ( 2.6) ①酸素吸入療法 (2) ・看護師の判断で流量をコントロールする 7 傷管理技術 3 ( 3.8) ① 傷処置 (3) ・ 部消毒した後, 強く押す (排膿を確かめている) ・手術後, ガーゼ汚染がひどく何日も変えていない 8 与薬の技術 14 (17.9) ②皮下注射, 筋肉内注射, 皮内注射 (5) ③静脈内注射, 点滴静脈 内注射 (6) ⑥輸血の準備, 輸血中と 輸血後の観察 (2) ⑦抗生物質の用法と副作 用の観察 (1) ・注入の際に注射針を手で固定する ・針基から先 (清潔部 ) の部 を触る ・注射は根本まで刺す ・アルコール綿は わず水を含ませたコットンで注射部位を拭く ・点滴の敵下数の計算ができない ・小児の点滴の速さの加減は家族がやっていた ・医師は一 間に 25滴という処方をするが,看護スタッフによっては滴下を数えてい ない ・輸血のアレルギー反応がでても誰もみていない ・アレルギーテストをした直後にすぐに注射した 9 救命救急処置技術 0 ( 0.0) 10 症状・生体機能管 理技術 15 (19.2) ①バイタルサイン (13) ②身体計測 (1) ③静脈血採血と検体の取 扱い (1) ・基本的なバイタルサインチェックもでたらめなことが多い ・検温はしているが検脈はみたことがない ・脈拍は一桁代も書いていたが 15秒くらい計って 4倍していた ・血圧測定 : 128と目盛りを読めるが, 128も 126も 124も 120とする ・血圧は 2桁読み,人によって四捨五入しているか,切り捨てしているかはわからない ・血圧測定の記載は 2桁 (フランス式だと聞いている) ・血圧測定は聞こえたかどうかではなく, 水銀の動きだけを観ている ・血圧測定では聴診器を 用せずに血圧を測っていた ・体温測定 : 挿入角度とか動脈に充てるのではなく脇に挟む ・体温計は家族に配り計らせていた. 挿入場所や測定場所, 読み取り方は家族次第 ・視力は測定もせずに正常と記入される ・看護学 の演習室で採血は教えていない (注射は筋肉注射のみ実施) 11 苦痛の緩和・安楽 確保の技術 0 ( 0.0) 12 感染防止の技術 21 (26.9) ①スタンダードプリコー ション (標 準 予 防 策) の実施 (1) ③無菌操作の実施 (12) ④医療廃棄物規定に っ た適切な取扱い (5) ⑥洗浄・消毒・滅菌の適 切な選択 (3) ・手洗いの後にタオルで手を拭かずに, シン (ラオスの民族衣装である巻きスカート) や白衣などで拭いている ・同じセットを って次の患者さんに 用する ・清潔操作を行う際には, 清潔な手袋を 用していても, 清潔な部 以外のところを 触ってしまう ・滅菌しない物を っていた ・汚染ガーゼを摂子を いはさみ, それを元に戻す ・滅菌パックに滅菌した日付けは記載しているものの,滅菌後,何日たっているかとい うことは全く注意が払われていない ・病棟の外のゴミ箱内に注射器と針・血のついたガーゼが入っていた ・オーブントースターがあって, それに入れて一応, 滅菌の儀式的な行為をしていた ・ 用した針はまた煮沸器の水の中に戻され, 再煮沸するわけでもなく繰り返し わ れる 13 安全確保の技術 1 ( 1.3) ③転倒転落防止策の実施 (1) ・ベッドのストッパーがあってもしない 合計 78 (100)

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て清拭する (発熱時)」等の内容であった.〔12.感染防止 の技術〕⑥洗浄・消毒・滅菌の適切な選択 (3記述)では 「オーブントースターがあって, それに入れて一応, 滅 菌の儀式的な行為をしていた」,「 用した針はまた煮沸 器の水の中に戻され, 再煮沸するわけでもなく繰り返し われる」等の内容であった. 2.青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べた ラオスの「看護技術に関連する事柄」 青年海外協力隊看護職隊員が述べた日本と異なるラオ スの「看護技術に関連する事柄」を表 5に示す. 合計 71 記述の内訳は〔看護の基本姿勢と態度〕22記述 (31.0%), 〔看護ケアの実施者〕17記述 (23.9%),〔看護記録〕6記 述 (8.5%),〔看護師の業務範囲〕6記述 (8.5%),〔看護管 理〕4記述 (5.6%),〔看護テキスト〕3記述 (4.2%),〔手 洗い〕2記述 (2.8%),〔看護資格〕1記述 (1.4%),〔看護 学生臨地実習〕1記述 (1.4%),〔その他〕9 記述 (12.7%) であった. 具体的な内容は〔看護の基本姿勢と態度〕では「勤務 時間中に患者の前で間食する」,「患者へきちんと説明し ない」,「勤務中でも処置的なことがないと刺繡,編物をは じめる」,「ラオス人は郊外に住む人, また, 少数民族を軽 視する傾向にある」等の内容であった.〔看護ケアの実施 者〕では「身体を拭くのも家族の仕事」,「排泄介助は家族 が行う」,「シーツをきれいにするのは医療者の仕事と 思っていない」,「患者の食事は家族や, 親戚が準備する (患者家族炊事場がある)」,「日常生活の援助は家族の役 割であり, 家族の方も当然とおもっている様」,〔看護記 録〕では「バイタルサインチェックしてないことも平気 でカルテに記入する」,「看護記録も事実がかかれないこ とがある」等の内容であった.〔看護師の業務範囲〕につ いては「医師と同様に看護師が投薬の指示を書いてい る」,「縫合,小手術をおこなっていることもある」,「入院 費用の計算も看護師がおこなう」等の内容であった.〔看 護管理〕では「業務の責任の所在が明確でない」,〔看護テ キスト〕では「教科書はない」, ラオス語の文献が少ない 表5 青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べたラオスの「看護技術に関連する事柄」の 類と例 項目 n % 内容 (例) 1 看護の基本姿勢と態度 22 (31.0) ・勤務時間中に患者の前で間食する ・患者へきちんと説明しない ・勤務中でも処置的なことがないと刺繡, 編物をはじめる ・患者さんが来ても, おしゃべりをしているだけで, ちっとも対応をしない ・仕事の途中で買い物に出かけたりする ・ラオス人は郊外に住む人, また, 少数民族を軽視する傾向にある 2 看護ケアの実施者 17 (23.9) ・患者の身の回りの世話などは, すべて家族が行っている ・身体を拭くのも家族の仕事 ・排泄介助は家族が行う ・シーツをきれいにするのは医療者の仕事と思っていない ・患者の食事は家族や, 親戚が準備する (患者家族炊事場がある) ・日常生活の援助は家族の役割であり, 家族の方も当然とおもっているようで入院するときは 2∼3人以上が付き添ってくる 3 看護記録 6 ( 8.5) ・バイタスサインチェックしてないことも平気でカルテに記入する ・決まった時間の記録を書くだけで変化があったときの記録はほとんどない ・看護記録も事実がかかれないことがある 4 看護師の業務範囲 6 ( 8.5) ・医師と同様に看護師が投薬の指示を書いている ・縫合, 小手術をおこなっていることもある ・入院費用の計算も看護師がおこなう 5 看護管理 4 ( 5.6) ・業務の責任の所在が明確でない 6 看護テキスト 3 ( 4.2) ・教科書はない ・ラオス語の文献が少ないため, 教員はタイ語の本を翻訳して 用している状況である ・教科書が無く生徒はタイ語の教科書を参 に, ラオス語に翻訳しながら授業している先生の 講義をノートに写す ・滅菌しない物を っていた 7 手洗い 2 ( 2.8) ・手拭タオル, 石鹼がない 8 看護資格 1 ( 1.4) ・一般診療科で看護師として働く者の中には,薬剤の勉強をしてきたのにも係わらず,看護師と して働いている者もいる 9 看護学生臨地実習 1 ( 1.4) ・夜勤帯は日勤帯同様に看護学生が実習に来ており, 注射などの看護の殆どは学生がする 10 その他 9 (12.7) ・ラオスでは医師は社会的地位が高く, 看護スタッフが意見することはない ・心霊信仰の人が多いためか,患者の状態が悪くなれば,もう家に連れて帰り死を見取るような 形をとる人が多い ・亡くなる前に帰宅する 合計 71 (100)

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ため, 教員はタイ語の本を翻訳して 用している状況で ある」,「教科書が無く生徒はタイ語の教科書を参 に,ラ オス語に訳しながら授業している先生の講義をノートに 写す」であり,〔手洗い〕では「手拭タオル,石鹼がない」, 〔看護資格〕では「一般診療科で看護師として働く者の 中には, 薬剤の勉強をしてきたのにも係わらず, 看護師 として働いている者もいる」,〔看護学生臨地実習〕は「夜 勤帯は日勤帯同様に看護学生が実習に来ており, 注射な どの看護の殆どは学生がする」であった.また,〔その他〕 では「心霊信仰の人が多いためか, 患者の状態が悪くな れば, もう家に連れて帰り死を見取るような形をとる人 が多い」,「亡くなる前に帰宅する」等の内容であった. 3.青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べた ラオスの「助産技術」 青年海外協力隊看護職隊員が述べた日本と異なるラオ スの「助産技術」を表 6に示す.合計 35記述の内訳は〔妊 産婦〕25記述 (71.5%),〔新生児〕7記述 (22.9%),〔褥婦〕 2記述 (5.7%),〔証明書等〕1記述 (2.9%) であった. 〔妊産婦〕の内訳は妊娠期 (10記述), 期 (15記述) であった. 妊娠期の具体的な内容は「出産までに 4回の 妊婦 診を受けるように指導している」,「妊婦 診は血 圧測定とドップラーでの胎児心音聴取だけ」,「ドップ ラーによる胎児心音聴取でも, 胎位を確かめずにいきな り測定していた」,「脈拍測定をみたことがない」等の内容 であった. 〔 期〕の具体的内容は「出血量を測定しない」,「 中,児心音を聴かない」,「子宮口全開後 2時間以内に産 ませるようにする」,「出産後, 母のバイタル測定なし」, 「ルーチンで多くの薬剤が全例に 用される」,「陣痛促 進のため産婦の腹部を指でつまみたたく」,「陣痛中の内 診もしない」,「会陰切開もほぼ全例で同様におこなわれ ていた」,「ラオスではモータムネェーと呼ばれる伝統産 婆 (TBA)がいて,癒着胎盤のときは祈禱師のところに行 き産婦の背中を叩いてもらい, 病院へ行かなくてもよい などと答えが返ってきた 」等の内容であった. 〔新生児〕の具体的内容は「出生体重は百の単位まで, 以降切捨て (例 ; 3200g)」,「出生後は体重測定のみであ る」,「臍帯クリップのかわりに点滴ルートをリサイクル していた」,「ラオスではモータムネェーと呼ばれる伝統 産婆 (TBA)が臍の緒を木の棒や包丁で切断する」等の内 容であった. 〔褥婦〕の具体的内容は「帰宅前にカラムキン (食事制 限) の説明をする」等の内容であった. 〔証明書等〕は「母子手帳は用いるもののほとんど記 入していない」等の内容であった. 4.青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べた ラオスの「助産技術に関連する事柄」 青年海外協力隊看護職隊員が述べた日本と異なるラオ スの「助産技術に関連する事柄」を表 7に示す. 合計 17 記述の内容は「ベッドにあらかじめ家族が持ってきた布 表6 青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べたラオスの「助産技術」に関する 類と例 大項目 小項目 内容 (例) n (%) ( ) 内の数字は n 1 妊産婦 25 (71.5) 妊娠期 (10) 期 (15) ・出産までに 4回の妊婦 診を受けるように指導している ・妊婦 診は血圧測定とドップラーでの胎児心音聴取だけ ・ドップラーによる胎児心音聴取でも, 胎位を確かめずにいきなり測定してい た ・脈拍測定をみたことがない ・出血量を測定をしない ・ 中, 児心音を聴かない ・子宮口全開後 2時間以内に産ませるようにする ・出産後, 母のバイタル測定なし ・ルーチンで多くの薬剤が全例に 用される ・陣痛促進のため産婦の腹部を指でつまみたたく ・陣痛中の内診もしない ・会陰切開もほぼ全例で同様におこなわれていた ・ラオスではモータムネェーと呼ばれる伝統産婆 (TBA)がいて,癒着胎盤のと きは祈禱師のところに行き産婦の背中を叩いてもらい, 病院へ行かなくても よいなどと答えが返ってきた 2 新生児 7 (22.9) ・出生体重は百の単位まで, 以降切捨て (例 ; 3200g) ・出生後は体重測定のみである ・臍帯クリップのかわりに点滴ルートをリサイクルしていた ・ラオスではモータムネェーと呼ばれる伝統産婆 (TBA) が臍の緒を木の棒や 包丁で切断する 3 褥 婦 2 (5.7) 褥婦の退院指導 ・帰宅前にカラムキン (食事制限) の説明をする 4 証明書等 1 (2.9) 母子 康手帳の記載と説明 ・母子手帳は用いるもののほとんど記入していない 合計 35 (100)

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などを汚染防止のため敷いてある」,「 後のベッドの 清掃などは家族が行う」,「看護師が会陰切開, 縫合, クリ ステレルを行う」,「夜間の は当直の一般診療科の看 護師が介助する」,「郡内では伝統産婆 (TBA)介助による 家 内 も相当数存在する」,「お産は医療者や伝統産 婆 (TBA)の介助なしで,家族や自 一人で行ったという 人もいた」,「病院へのアクセスに関わらず自宅 して いる人が多く存在する」,「胎盤は家族が持って帰り森に 投げると聞いた」,「出産後すぐに帰宅する」,「産後は「火」 の近くで休むという伝統があり (大体 5∼15日間), その ために早く帰りたいといとも言う」,「ビエンチャン市の 街中でもユーファイ (火の側で過ごす)やカラムキン (食 事制限)しているのが当たり前のようだった」,「新生児に もち米を与えている地域も多かった」等の内容であった. 察 本研究ではラオスで活動した青年海外協力隊看護職隊 員が述べた「日本と異なる看護及び看護技術」,「日本と異 なる助産及び助産技術」に着目し, 日本とラオスの看護 の差異について検討した. その結果, 日本とラオスでは 「看護技術」,「看護技術に関連する事柄」,「助産技術」,「助 産技術に関連する事柄」について差異があることが明ら かになった. 以下に特徴的な「日本と異なる看護技術及 び看護」,「日本と異なる助産技術及び助産」の差異につい て 察する. 1.日本と異なる看護技術及び看護 日本と異なる看護技術の記述 (表 4)では バイタルサ イン>の「血圧は 2桁読み」の記述は「120/60mmHg」の 血圧測定値の場合,「12/6」と表記することである. これ は「cmHg」で表すフランス医学の影響であると えられ る. 筆者らが, 2009 年に入手したウドムサイ保 学 (2.5年の看護教育中級看護師養成 Dip1omanurses) 講義 資料 (ラオ語)では「mmHg」の単位記載であった.また, 〔看護テキスト〕では「教科書は無く,タイ語の教科書を 先生がラオス語に翻訳し授業を行っており, 生徒たちは 講義をノートに写す」と述べられているように, タイで 入手した看護技術テキスト (タイ語) と同じ挿絵が 用 されていた.タイのテキストでも「mmHg」であった.ラ オスは 1947年の独立まで 60年という長期に渡りフラン ス植民地時代が続いていた. この影響がラオス全土にお いてみられ, 日本と異なる看護技術としての記述が多 かったと えられる. 無菌操作の実施> の「同じセットを って次の患者 さんに 用する」,「清潔な手袋を 用していても,清潔な 部 以外のところを触ってしまう」等の記述も多かった. 無菌操作の実施> の記述が多い理由として横川ら が 「日本の看護教育及び臨床では清潔・不潔の区別は当然 のことであり, 無菌操作は緊急を除いて絶対的な技術と して求められる. しかし, 活動国においては, それが必ず しも優先されず求められない場合も少なくない.」と述べ ているように, 派遣国の経済状況, 医療器材の不足等が 影響していると えられる. また, 本調査の 9 割近くの 配属先が病院・診療所であるため日々の業務の中で 無 菌操作の実施> の占める割合が大きく日本と異なる看護 技術としての記述が多かったことも えられる. 静脈 内注射・点滴静脈内注射> 皮下注射・筋肉内注射・皮内 注射> が多かったこともこれらの処置を目にする機会が 多かったことが えられ, 注入の際に注射針を手で固定 する」,「針基から先 (清潔部 )の部 を触る」は清潔操 作の優先度が日本と異なっていたことが えられる. ま た,「アルコール綿は わず水を含ませたコットンで注射 部位を拭く」,「注射は根本まで刺す」等の内容について中 南米の基礎看護技術テキストでは注射針が根本まで挿入 されている図が用いられている. ラオス, タイのテキス トではそれぞれ図が異なっていることから国や地域に よってその方法が異なっていることが えられた. 注射 部位の消毒についても皮膚の汚れを取り除くことは水に 含ませたコットンでも可能である. 今後, どのような方 法が安全であり, どのような根拠があるのかを明らかに 表7 青年海外協力隊看護職隊員が日本と異なると述べたラオスの「助産技術に関連する事柄」の例 内容 (例) ・ベッドにあらかじめ家族が持ってきた布などを汚染防止のため敷いてある ・ 後のベッドの清掃などは家族が行う ・看護師が会陰切開, 縫合, クリステレルを行う ・夜間の は当直の一般診療科の看護師が介助する ・郡内では伝統産婆 (TBA) 介助による家 内 も相当数存在する ・お産は医療者や伝統産婆 (TBA) の介助なしで, 家族や自 一人で行ったという人もいた ・病院へのアクセスに関わらず自宅 している人が多く存在する ・胎盤は家族が持って帰り「森に投げる」と聞いた ・出産後すぐに帰宅する ・産後は「火」の近くで休むという伝統があり (大体 5∼15日間), そのために早く帰りたいといとも言う ・ビエンチャン市の街中でもユーファイや食事制限しているのが当たり前のようだった ・新生児にもち米を与えている地域も多かった

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する必要がある. 看護の差異に直面したとき,「その国の 看護が遅れているからと捉えるのではなく, 何らかの要 因がもとらす影響によって, 日本とは異なる看護技術を 必要とするのではないか」 という視点が重要であると える. 日本と異なる看護 (表 5)の記述では「看護の基本姿勢 と態度」が「看護技術に関連する事柄」全体の記述の 3割 を占め,「看護ケアの実施者」が 2割以上を占めていた. 「勤務時間中に患者の前で間食する」,「患者へきちんと 説明しない」,「ラオス人は郊外に住む人, また, 少数民族 を軽視する傾向にある」の記述はラオス人の気質や多民 族社会であることが影響していると えられる. ラオス では療養生活の世話は家族がその役割を担っており, 看 護師が行っていないことが一般的であるため,「身体を拭 くのも家族の仕事」,「排泄介助は家族が行う」,「シーツを きれいにするのは医療者の仕事と思っていない」,「患者 の食事は家族や, 親戚が準備する (患者家族炊事場があ る)」,「日常生活の援助は家族の役割であり, 家族の方も 当然とおもっているよう」等の記述も多かったと えら れる. また,「亡くなる前に帰宅する」の記述は筆者もラオス で活動するなかで, 日本では病院で亡くなることが当た り前であっため, その違いに驚いた. また,「ストレッ チャーの移送」はラオスでは頭からが通常である. ラオ スは小乗仏教国であるが, 同様に人々は精霊信仰が日常 生活の中で重んじられ, その影響から亡くなる前に帰宅 する. そして, 小乗仏教の影響がストレッチャーの移送 に影響している. このように, その国の宗教や人々の信 仰は看護の中で差異として現れていることが えられ る. 2.日本と異なる助産技術及び助産 日本と異なるラオスの助産技術, 助産 (表 6, 7) のとお り妊娠期, 期,産褥・新生児期は日本と異なる多くの 記述があった. 特に出産はその国の文化や社会が大きく 影響しており差異として現れるのではないかと える. 妊娠期の具体的な内容で「出産までに 4回の妊婦 診を 受けるように指導している」と出産前の 診は,妊娠 3ヶ 月までの妊娠前期に 1回, 中期に 1回, 後期に 2回の少 なくても 4回行われる. このように国によって母子保 システムが異なる. また, ラオスでは自宅出産が多い ことや保 医療施設へのアクセスが地域によって違いが あること,モータムネェーと呼ばれる伝統産婆 (TBA)や 祈禱師がいて助産ケアの担い手となっていることが影響 していると えられる. 出生直後のケアにおいては「臍帯クリップのかわりに 点滴ルートをリサイクルしていた」等の記述から, 物品 不足の中での知恵と工夫が伺われる.「褥婦」の具体的内 容は「帰宅前にカラムキン (食事制限)の説明をする」等 の内容であった. ラオスでは産後の過ごし方にユーファイ (火の側で過 ごす)やカラムキン (食事制限)などの伝統的な習慣があ る. これらの文化的習慣についても今後, その根拠など は明らかにする必要があるが, 文化や習慣を尊重した助 産ケアを提供するために, 重要な日本とラオスの助産の 差異であると える. 結 語 今回の調査では, 報告書 析と面接調査により結果に 挙げた日本とラオスの違いが示唆された. それらは, 今 後の国際看護協力活動において多大に寄与するものと える. 今後は, 現地で行われている教育内容の 析とと もに社会文化背景等についても に調査を進めていくこ とが課題である. 謝 辞 本研究にご協力いただきました青年海外協力隊の皆様 に深く感謝申し上げます. なお, 本研究は平成 19-21年 度科学研究費補助金 (基盤研究 (C) 課題番号 19592429) の助成を受けて実施しました. この研究の一部は 2009 年の第 24回日本国際保 医療学会学術集会で発表しま した. 文 献 1. 独立行政法人国際協力機構青年海外協力隊事務局 青年 海外協力隊派遣実績 JICA-ボランティア青年海外協力 隊. 2009.09.30. http://www.jica.go.jp/activities/jocv/ outline/data/results/results 04.html, (参照 2009.11.15) 2. 戸塚規子. 開発途上国で保 医療協力に携わる看護職の 活動上の問題―青年海外協力隊員の求める技術支援の 析から―. 第 19 回国際協力学術奨励研究報告書 1997: 39-42. 3. 横川裕美子, 森 淑江, 戸塚規子他. 看護職による国際協 力活動の還元に関する研究−国際看護協力の異文化適応 の支店からの 察−. THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL, 2002; 52(5): 361-368.

4. DeSantis,L.: The Relevance of Transcultural Nursing to International Nursing. INR 1998; 35(4): 110-112, 116. 5. 森 淑江. 国際看護の概念と看護の国際協力に関する日

本の現状. 看護教育 1997; 8(12): 1027-1031.

6. 宮越幸代, 髙田恵子, 辻村弘美ら. 日本と開発途上国の看 護技術の差異−中南米と日本で発行された看護技術書の 析−. THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2008; 58(1): 43-54.

7. 辻村弘美, 森 淑江, 髙田恵子ら. 日本と途上国の看護技 術の差異 (中国) −中国で活動した青年海外協力隊への 面接と報告書の 析−. THE KITAKANTO

(10)

MEDI-CAL JOURNAL 2009 ; 59(1): 51-57. 8. 厚生労働省. 新人看護職員の臨床実践能力の向上に関す る検討会報告書 2004. 9. 清水利恭. フランス語圏では血圧を四捨五入?クロス ロード. 社団法人協力隊を育てる会 2002. 12: 15. 10. 森 淑江. 看護の基本と国際看護. INR 2009 ; 32(2): 14-17, 16. 11. Manilay Phengxay.ラオスの母子保 及び日本での育児 経験. 保 の科学 2007; 49(12): 813-816, 814.

Differences in Nursing between Japan

and Developing Countries:

Analysis of Interviews with and Reports from Japan Overseas Cooperation

Volunteers Nurses Working in Laos

Keiko Takada,

Yoshie Mori,

Hiromi Tsujimura,

Sachiyo Miyakoshi,

Chieko Kuribara

and Megumi Nagamine

1 Department of Nursing, School of Health and Social Services, Saitama Prefectural University 2 School of Health Sciences, Gunma University Faculty of Medicine

3 Nagano College of Nursing

Purpose: Issues arising in international nursing cooperation include differences in thinking about nursing and nursing skills between the destination country and Japan. To make nursing cooperation for developing countries more effective,Japan Overseas Cooperation Volunteers nurses working in Laos were interviewed, and their activity reports analyzed to clarify differences in nursing practices. M ethods: Five nurses from Japan working in Laos and 14 reports prepared by nurses working in Laos were analyzed to clarify differences in nursing practices between Laos and Japan. Descriptions of differences in nursing were extracted from reports, and semistructured interviews. Data was classified referencing Achievement Targets for Nursing Skills/Midwifery Skills (Ministry of Health, Labour, and Welfare, 2003). Results: Many statements were related to nursing skills such as infection prevention,symptoms and biological function management, and medicine prescription, and patient care by patients family. Many differences in midwifery skills during delivery and pregnancy were extracted. Conclusions: The study clarified nursing practices between Laos and Japan,and is expected to contribute greatly to future international cooperation in nursing.(Kitakanto Med J 2010;60:31∼40)

Key Words: nursing,midwifery,difference,Laos,Japan Overseas Cooperation Volunteers (JOCV)

参照

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