アート分野の授業を通した
「認識」の変化についての一考察
── 「美術」科目の受講生を対象とした質問紙調査の分析から ──
A Study on Changes in Perceptions Through the “Art” Class:
“
Art” Analysis of a Questionnaire Survey of Students Taking Subjects
前 沢 知 子
Tomoko Maezawa
要 旨 本研究は、アートを通した「認識」の転換について、アート分野の授業を通した「認識」の変化に着 目し、授業を受講した学生の「認識」の変化から考察を行うものである。現代ビジネス学科における 「美術」の授業を対象として、受講した学生の「認識」の変化について質問紙調査から分析・考察を行 う。結果として、「美術」を受講することにより、学生には「認識」の変化がもたらされることがわ かった。そこでは、受講科目である「美術」と学生の身近な事柄である「生活」において、「認識」の 変化が引き起こされ、日常生活においてアートに関連する要素が、アートへの理解を深め、「認識」に 影響していることが明らかになった。そして「美術」の授業においては、授業の時間のみならず、日常 生活と往還しながら理解を深め、「認識」の変化を引き起こすことがわかった。 〔キーワード:認識、STEAM教育、オンライン授業、アート、クリエイティビティ〕1.はじめに
⑴ 目的 本研究は、アートを通した「認識」の転換につい て、アート分野の授業を通した「認識」の変化に着目 し、現代ビジネス学科における「美術」の授業を対象 として、受講した学生の「認識」の変化から考察を行 うものである。「美術」を受講することにより学生に どのような変化がもたらされ、アートのどのような要 素が影響しているのか考察を行う。これによりアート の授業内容のあり方と、その可能性を検討するもので ある。 ⑵ 背景 ─現代社会におけるアートの広がり─ 現代の社会において、近年アートは拡張され社会に おいて有用な方法論の一つとして活用され始めてい る。こうしたアートの広がりの中で、アートを通した クリエイティビティの教育が注目されている。 教育では、深い学びの必要性から、教科や分野の横 断や融合の学習の取り組みが始まっている。理系分野 の教育手法として行われていたSTEM教育(1) では、 理系技術をより有効的に活用するためにはクリエイ ティビティが必要であるとの認識から、近年はアート (Art)のAが入りSTEAM教育として、アート分野と 理系分野との融合や横断としての教育活動が注目され 始めている。ビジネスでは、イノベーションが必要とされ、アー トはイノベーションを起こす手段として用いられてい る。アート観賞やデッサン体験、オフィスにアートを 飾るなど様々なアートを活用したクリエイティビティ の教育を通して、問題提起力、想像力、実践力、共創 力などの「アートパワー」の育成に力を入れている(2) 。 アートがイノベーションの手段として用いられている ことからもわかるように、アートのクリエイティビ ティにおける創造的思考として「認識」の転換を引き 起こすための発見や気づきが重要視されていることが わかる。 また福祉の分野では、ソーシャル・インクルージョ ン(社会的包摂)という概念が注目され始めている。 社会構造の変化に伴いグローバル化が加速するととも に、多様な他者との協働的活動の重要性は増す。そこ では多様な他者への理解は不可欠である。このソー シャル・インクルージョン(社会的包摂)という概念 をもつアートとして、インクルーシブ・アートも同様 に注目され始めている。インクルーシブ・アートとは 直訳すると「包摂的芸術」を意味する。障がいのある なし年齢や性別や国籍などに関わらず、誰もが参加出 来る芸術活動のことを指す。このようなインクルーシ ブ・アートにおける実践では、参加者は様々な人々と 出会い関わりを通して、多様な価値観に触れること で、異なる視点への気づきにより「認識」の変化が引 き起こされる。ここでは自己への発見や気づきと同時 に、多様な他者への理解がもたらされる。 このように現代社会においてアートが広がる背景に は、社会がクリエイティビティに求めている役割があ り、その根底には現代社会が抱える課題に対する解決 の手段としての「認識」の転換の必要性がある。 ⑶ 先行研究の整理 アート分野の授業研究では、小学校、中学校、高等 学校を対象にした学校教育についての研究は、豊かな 実践をベースとした有意義な研究が多数行われてい る。同様に、保育園や幼稚園など保育施設における アート実践の研究も、子どもの様相の丁寧な観察から 導き出された研究が多数行われている。大学において は、美術系大学や教育学部、文学部、教養学部などで は、リベラルアートを含むアート関連の授業が行われ ており、研究も広域に行われている。しかしながら、 商学部を含めた上記以外の学部においては、アート分 野の授業の実践とその研究は希少であり、発展の途に 着いたばかりの段階である。先述のように、社会教育 やビジネスの分野においては、近年ではアートの有効 性が注目され、「アート思考」として社会人を対象に した講座などが開催され始めている。またその教育的 意義について、認知科学において広域の芸術を対象に 研究を進める岡田猛は、アートが人間にもたらす潜在 的な可能性からその意義を提示する。工藤、八桁、小 澤、岡田、荻生の研究では、「芸術を専攻しない大学 生」を対象に芸術授業の実践の意義についての考察を 行っている。そこでは、芸術を専攻していない一般大 学の学生にドローイング(素描)の実践を行い、それら の結果から創造性について考察している(3)。分野を横 断する教育・研究活動として、2019年に東京大学で は、芸術を中心に据えた「芸術創造連携研究機構」を 発足させた。学内の7部局である医学系研究科、教育 学研究科、工学系研究科、情報学環、学際情報学府、 人文社会系研究科、理数科学研究科学が連携し芸術創 造に関する分野融合型の研究を推進する(4) 。これらか らも、芸術系や芸術に関わる文系大学のみならず、芸 術には直接関わらない多分野においてアート分野の授 業を行うことにおいて有用性があると考える。広く他 分野においてアート分野の授業を実践するためには、 実践する授業内容についての研究の必要性がある。 なお、本研究 では「美 術」という 用語に つい て 「アート」を用いることとする。それは、本研究が扱 う先行研究や分野においてアートがより頻繁に用いら れているため論文構成上そのようにした。授業科目名 である「美術」と、授業に関する考察においては美術 を用いる。 ⑷ 研究の視点と方法 分野を横断する教育活動としてアート分野の授業で は、どのような観点が重視されるべきであろうか。先 述したように、アートはイノベーションの手段として 用いられ、「認識」の転換を引き起こすための発見や 気づきが重要視されている。これについてニール・ヒ ンディは、アートの可能性として「考え方を問い直 す」とし、「イノベーションを起こすには視点を変え て世界をとらえ、欠点やチャンス、解決しなければな らない問題がどこにあるかを理解する能力が求められ る(5) 」と指摘する。このように、イノベーションを起 こすためには「視点」を変えて世界をとらえること、
つまり世界への「認識」の転換が必要である。以上を 踏まえ、本研究の視点として「認識」に着目して、 「美術」の授業を通した「認識」の変化について考察 を試みる。方法は、現代ビジネス学科における「美 術」の授業を対象として、受講した学生の「認識」の 変化について質問紙調査から分析・考察を行う。
2.授業の概要
⑴ 「美術」授業の実践概要 本年度の授業では、「美術」科目は1年生の選択科 目として前期15回を金曜の3限に開講した。授業形態 は、新型コロナウィルスの影響で、オンラインでの遠 隔授業の実施になったが、内容としてはオンラインで も支障がなかったため、予定していたシラバスで変更 はなく行った。ただし、15回のうち3回は課題提出と いう形での実施になった。 ⑵ 授業の内容 授業のねらいは以下になる。 「この授業は美術を通して、表現方法とその影響、 創造的なプロセスに関する知識を理解することを目 指します。美術と他分野の学びを関連させながら、 リベラルアーツ教育、STEAM教育の一環として、 美術を学びます。」 このねらいを踏まえ、授業は次のように構成した。 前半では、美術についての知識理解として、時代(古 代から現代)、ジャンル(絵画、彫刻、現代美術、メ ディア・アートなど)、地域(西洋、東洋、オセアニ ア、アフリカなど)などを網羅的に扱い、また表現技 法や制作過程など基本的な事項を学ぶ。これらを参照 して、表現や影響、効力などの考察を行い創造的思考 につなげる。後半では前半での学びを基盤として STEAM教育の実践を試みる。授業では、広い範囲を 短時間で扱うことになるため、それぞれのテーマで取 り扱う作品や作家について、そのテーマを特徴づける ものを厳選して取り上げた。留意点として、内容が広 く浅くならないように、取り上げる事例の数は少なく し、その社会的な背景や関わりを含めて深く扱うこと を心がけた。また、古代の事例など身近に感じられに くいものも扱うため、学生自身が自分と関わりをもち ながら対峙し理解の糸口を見いだせるような動画や事 例の選択を行った。 授業で扱ったアートのジャンル・テーマについては 以下である。シラバスは(表1)になる。 ・アートの発祥 ・Artの歴史と文化(ヨーロッパ、アメリカ) ・Artの歴史と文化(アジア、アフリカ) ・現代のArt ・メディアとArt ・Artが与える影響 ・Artの要素とは ・表現とは ・様々な表現方法とその効力 これらの学びを踏まえて、授業の後半でSTEAM教育 の実践を行った。 ⑶ 授業の方法 授業の方法は、前半は講義、後半はグループワーク での実践を行った。講義はパワーポイントでの説明 と、動画視聴、ディスカッションで構成した。筆者が 作成したパワーポイント資料を用いた講義の後、指定 した動画に各自ネットに接続して動画を視聴してもら い、全体でZOOMにおいてディスカッションを行っ た。ディスカッションでは発言のみならず、チャット への書き込みを通して全員が意見を発表し共有した。 またグループワークでは、ZOOMのグループ作成機 能を用いて、3人∼4人のグループを作成し、ディス カッションおよびSTEAM実践を行った。また、オン ラインでの授業であったため、双方向性をもつ授業に なるように心がけた。具体的には、学生が発言する 際、教員主導ではなく学生同士が指名する方法をとっ た。また視聴しやすくするために、できる限り画面に 動きを出すことを心がけた。手を振るなど行為を伴う アクションをしてもらうように言葉掛けを行い、教員 が率先して行った。3.質問紙調査の概要
⑴ 質問紙調査の目的 現代ビジネス学科の「美術」科目を受講した学生を 対象にして、「アート」分野の授業を通した「認識」 の変化について検討を行うことを目的とする。⑵ 調査対象 筆者が担当している現代ビジネス学科の前期に実施 した「美術」の科目の受講生を対象とする。2020年度 は22名が受講をした。受講生の出席状況に関しては、 全日程を通して、公休1名、欠席1名であった。回収 率は86%(n=19人)であった。 ただし、このうち回答ミスなどで3名分が無効にな り、分析対象は16名分72%であった。 ⑶ 調査方法 本年度は、オンライン授業であったため、インター ネットのGoogleフォームのアンケートを用いた。本 研究の説明を行い、その上で協力承諾の確認後、最終 授業である15回目の終了後に実施し、調査は無記名で 行った。 ⑷ 倫理的配慮 オンライン授業であったため、受講生に対しまず授 業において、口頭で調査の目的方法および倫理的配慮 について説明を行った。かつGoogleフォームのアン ケートのアドレスを掲載する際、口頭での説明と同様 の内容について同画面に記載し、アドレスに接続する 前に確認していただいた。 ⑸ 質問紙調査の項目 質問紙調査の項目の内容は以下である。 表1 2020年度「美術」科目のシラバス(部分) シラバス 講義科目名称:美術 金曜 3 限 授業のねらい (概要) この授業は美術を通して、表現方法とその影響、創造的なプロセスに関する知識を理解することを目指しま す。美術と他分野の学びを関連させながら、リベラルアーツ教育、STEAM 教育の一環として、美術を学びます。 授 業 計 画 第 1 回 【遠隔】 オリエンテーション 授業の進め方と課題。アートの発祥。 第 2 回 【遠隔】 Art の歴史と文化① ヨーロッパ、アメリカの Art の歴史と文化について学んでいきます。 第 3 回 【遠隔】 Art の歴史と文化② アジア、アフリカの Art の歴史と文化について学んでいきます。 第 4 回 【遠隔】 現代の Art デザイン、現代美術について学んでいきます。 第 5 回 【遠隔】 メディアと Art メディアと Art の関係について学んでいきます。 第 6 回 【課題】 Art が与える影響 Art が与える影響について考えていきます。 第 7 回 【遠隔】 Art の要素とは Art の要素および絵画の見方について考えていきます。 第 8 回 【課題】 表現とは Art を通して見える表現力について考えていきます。 第 9 回 【遠隔】 様々な表現方法とその効力① 様々な表現方法の事例について学んでいきます。 第10回 【課題】 様々な表現方法とその効力② 様々な表現方法における効力について考えていきます。 第11回 【遠隔】 STEM 教育から STEAM 教育 STEM 教育から STEAM 教育の基礎的な考え方について学んでいきます。 第12回 【遠隔】 STEAM 教育の実践① STEAM 教育の実践について考えていきます。 第13回 【遠隔】 STEAM 教育の実践② STEAM 教育について、グループワークでの発表を通して考えていきます。 第14回 【遠隔】 Art から見た世界の多様性 世界の多様性について考えていきます。 第15回 【遠隔】 まとめ
・「1.『美術』の授業を通して、あなたの認識に何か 変化がありましたか?」 選択肢:とてもあった、まあまああった、どちらと も言えない、あまりなかった、まったくな かった、 ・「2.上記1の回答で、『とてもあった まあまああっ た』にご回答された方にお聞きします。具体的に授 業で扱ったどのテーマ(授業内容)で、認識の変化 がありましたか?テーマ(授業内容)を以下から選 んでください。(あてはまるものすべてに○)」 選択肢:アートの発祥、Artの歴史と文化(ヨー ロッパ、アメリカ)、Artの歴史と文化(ア ジア、アフリカ)、現代のArt、メディア とArt、Artが与える影響、Artの要素とは、 表現とは、様々な表現方法とその効力 ・「2 2.その理由を具体的にお書きください。」 ・「3.上記1の回答で、『とてもあった まあまあ あった』にご回答された方にお聞きします。具体的 にどのようなことに対して認識の変化がありました か?認識に変化があったことを以下から選んでくだ さい。(あてはまるものすべてに○)」 選択肢:美術、教育、社会、世界、歴史、生活、人 生、自分、他者、その他 ・「3 1.上記3の回答で、その他とご回答の方 具 体的にお書きください。」 ・「3 2.上記3の回答で、どのような変化が起き (感じ)ましたか?具体的にお書きください。」 ・「3 3.上記3の回答で、変化が起きた(感じた) 理由はなんですか?具体的にお書きください。」 ・「4.上記1の回答で、『どちらとも言えない』『あ まりなかった』『全くなかった』にご回答された方 にお聞きします。その理由を具体的にお書きくださ い。」 ⑹ 調査結果の分析方法 各項目についてそれぞれ集計を行う。選択項目の集 計はGoogleフォームを用いる。記述項目について は、まず全回答に対してナンバリングを行い整理す る。さらに個別の回答に対して、KJ法を援用した分 類の方法により、キーワードを抜き出してカテゴリー 化し、各質問における回答の傾向を探る。集計とカテ ゴリー化された傾向を照合して分析を行う。
4.調査結果
⑴ 質問1の集計結果 質問内容は「1.『美術』の授業を通して、あなた の認識に何か変化がありましたか?」であった。結果 は「とてもあった」12名75%、「まあまああった」4 名25%であり、100%の回答で、「認識に変化」があっ たとの回答を得られた。(図1) ⑵ 質問2の集計結果 質問内容は、「2. 上記1の回答で、『とてもあった まあまああった』にご回答された方にお聞きしま す。具体的に授業で扱ったどのテーマ(授業内容) で、認識の変化がありましたか?テーマ(授業内容) を以下から選んでください。(あてはまるものすべて に○)」であった。結果は、「現代のArt」14名87.5% で一番多く、次に「Artが与える影響」が9名56.3% 図1 集計結果「質問1」表2 「2─2 その理由を具体的にお書きください。」 番号 回 答 キーワード カテゴリー a 実際に課題をやってみてより考えが深まった気がします。 実際、課題 日常生活 b 日常生活で身近な存在だと感じたから 日常生活 日常生活 c 身近なところにも art があったから 身近 日常生活 d アートは日常に潜んでいるんだなあと思ったからです 日常 日常生活 e 一番私が興味を持ったのは絵画でバロック絵画です。あの時代の絵は本当に引き込まれるものがあって もっといろんな作品を見てみたいと思いました。 引き込まれる、いろ いろな作品 作品 f 美術の歴史が知れたり、art でどのように世界が変化していったのか授業を進めて楽しかったからです。 歴史、世界、変化 歴史、世界の変化 g アートは作った人がアートだと思ったらアートになることを知ってアートのイメージが変わりました。 アートのイメージ アートのイメージ h 知らなかったことがたくさんあったのでもっと見てみたいという興味が出ました 知らなかったこと 知識 i アートは自由ということが知れたから 自由 自由 j 現代のアートと昔のアートの違いや要素についてもっと知りたくなった。 現代、昔、違いや要 素 違い k 一番最初のアートの発祥では、ラスコーの話が印象的だった。あのような時代に高くて硬い天井にどの ようにして絵を書いたのかどのような目的で絵を書いたのか呪術的な目的などたくさんの説が挙げられ るのが昔のアートの面白みだと思った。Art が与える影響の授業ではお金持ちを優遇する時代から革命 がおこり社会主義革命が始まったという背景からアートも農民がテーマの絵がはやるなど、アートと社 会事情の関係は切り離せないという事が身に染みて感じた。表現とはの授業についてはジョン・レノ ン、オノヨーコの表現の仕方によって様々な与える影響が異なり、表現の多様性を感じた。 たくさんの説、アー トと社会事情、表現 の仕方、影響が異な る、表現の多様性 社会事情、表現の多 様性 l 海外のアートや現代のアートの雰囲気がとても素敵で興味深かったです 雰囲気、素敵 作品 n アートといえば、絵というイメージが強かったのですが、この授業で身近なところにもアートがあると 知れたことが大きな発見だったなと思ったから。 身近な、発見 日常生活、発見 m 授業を受けた後に毎回、美術は表現が違うだけでこんなにも見かただったり、印象が変わるのだなと強 く思ったからです。 違い、印象が変わる 違い o アートが与える影響の発表を聞いて自分とは違うアートの要素がしれたこと 自分とは違う、アー トの要素 違い p 自分で考えることが大変だったけど、課題をこなせてよかった。また Art にはすごい影響力があるんだ なって思った。 影響力 影響力 図2 集計結果「質問2」
図3 集計結果「質問3」 表3 「3─2 上記の回答で、どのような変化が起き(感じ)ましたか? 具体的にお書きください。 番号 回 答 キーワード カテゴリー a 身の回りでも美術ってあるんだなぁと思ったし、美術は絵だけではないんだなと思いました。 身の回り、絵だけで はない 美術・絵画、日常生 活 b アートをただ見るのでなく授業でやったポイントを意識して見ていきたいです 意識してみる 意識 c 生活する中でたくさんのアートなどが目に入る 生活、アートが目に 入る 日常生活 d アートを日常に見出すようになりました。 日常 日常生活 e 興味がふかまった。 興味 興味 f 美術は絵だけだと思っていたが、美術は絵だけではなく、科学や歴史も取りいれることで美術は成り 立っているということが分かりました。 絵だけではない、科 学や歴史 美術・絵画、科学、 背景・歴史 g アートは教育の中で大事な要素だと改めて感じました。 教育 教育 h たくさんの作品の物語やどういう時代に作られたのかを調べたくなりました 時代 背景・歴史 i 教育にアートが必要だということ。 教育 教育 j 美術の面白さをもっと知りたいと思った。 美術の面白さ 美術・絵画 k 最初は、アートはただの絵だと思っていたが、今はその絵にはいろいろな背景が含まれていると知っ た。自分の考えと他人の考えでそれぞれアートに対する見解の違いがあることに気づいた。 ただの絵、いろいろ な背景、見解の違い 美術・絵画、背景・ 歴史、見解の違い l 美術の授業で見た作品を私生活で見たとき、美術でやったやつだと思って知識が増えたと思った 生活、知識 日常生活 n 美術が教育に大きな影響を与えているということを初めて知ることができたこと。 教育 教育 m 人の差別の問題に気づかされたり、STEAM 教育は普段の生活の中でもたくさん関わっていること、世 界で起こった歴史の変化などがよく分かりました。 差別の問題、生活、 世界の歴史の変化 社 会 問 題、 日 常 生 活、世界、背景・歴 史 o 自分が今まで生活をしてきた中でもたくさんのアートがあるんだなと感じた 生活 日常生活 p 美術は歴史が関係しているんだなとしれた。 歴史 背景・歴史
で2番目に多かった。「アートの発祥」、「Artの要素」 「様々な表現方法とその効力」が8名50%であった。 「Artの歴史と文化(ヨーロッパ・アメリカ)」、「メ ディアとArt」が7名43.8%であった。「Artの歴史と 文化(アジア・アフリカ)」が5名31.6%、「表現と は」が4名25%であった。(図2) 2の質問に対する具体的理由についての結果は以下 である。カテゴリーとしては、「日常生活」5名、「違 い」3名、「作品」2名、「歴史・世界の変化」、「アー トのイメージ」、「知識」、「自由」、「社会事情」、「表現 の多様性」、「影響力」がそれぞれ1名であった。(表 2) ⑶ 質問3の集計結果 質問内容は、「3. 上記1の回答で、『とてもあった まあまああった』にご回答された方にお聞きしま す。具体的にどのようなことに対して認識の変化があ りましたか?認識に変化があったことを以下から選ん でください。(あてはまるものすべてに○)」であっ た。結果は、「美術」13名81.3%で一番多かった。次 に「生活」8名50%であった。「世界」「歴史」7名 43.8%、「 教 育 」、「 自 分 」6名37.5%、「 社 会 」3名 18.8%、「人生」2名12.5%、他者1名6.3%であった。 (図3) 3の質問における具体的な変化についての結果は以 下である。「認識」の変化があったカテゴリーとして は、「日常生活」6名、「背景・歴史」5名、「美術・ 絵画」4名、「教育」3名、「意識」、「興味」、「科学」 「見解の違い」、「社会問題」がそれぞれ1名であっ た。(表3) 3-2の質問において、「認識」の変化が起きた理由に ついては以下であった。「日常生活」4名、「意識・視 野の広がり」3名、「歴史」2名、「絵画」、「雑学」、「制 作」、「科学、技術、数学」、「未来」、「多様性」、「社会 背景」、「他者との違い」、「STEAM教育」、「YouTube 動画」がそれぞれ1名であった。(表4) 表4 「3─3 上記3─2の回答で、変化が起きた(感じた)理由はなにですか? 具体的にお書きください。」 番号 回 答 キーワード カテゴリー a 身の回りを眺めてみると美術がとても関わってきてると考えたからです。 身の回り 日常生活 b なし c なし d アートが日常に潜んでいるんだと知ったので、探すようになったから 日常、探す 日常生活、意識・視 野の広がり e 身近な生活にも美術、芸術がかかわっていると知り、視野が広がった。 身近な生活、視野 日常生活、意識・視 野の広がり f 高校の時は美術は選択授業でとってなくて、中学校ぶりに美術を授業でやったのですが、中学の美術は ずっと絵を描いているだけの美術だったので、雑学を学べたからです。 絵 を 描 い て い る だ け、雑学 絵画、雑学 g 虹を作ったり氷のお皿を作ったりして、steam 教育の科学や技術、数学の要素も入っていたからです。 作る、科学、技術、 数学 制作、科学、技術、 数学 h 知らないことだらけだったからです 知らないこと 意識・視野の広がり i なし j 美術の歴史を知ってこれから先の美術がどのようなものになるか知りたいと思った。 歴史、これから先 歴史、未来 k 様々な国のたくさんのアートを見てきてそこからその国の社会事情や歴史的文化を知ることができるこ とがわかった。皆で感想を言う際にも自分とはまったく違う考えの人がいておもしろかった。 様々な国たくさんの アート、社会事情、 歴史的文化、自分と 違う考え 多様性、社会背景、 歴史文化、他者との 違い l なし
n STEAM 教育について学んだこと。 STEAM 教育 STEAM 教育
m 授業内で見る youtube の動画を見ていて、3-2で書いたような変化や感じたことがあったからです。 youtube 動画 youtube 動画
o 今まで普通に生活してきた家にもあるんだなと感じた 生活 日常生活
5.考察
⑴ 質問1についての考察 質問内容は「1. 『美術』の授業を通して、あなたの 認識に何か変化がありましたか?」であった。回答の 結果は、「とてもあった」と「まあまああった」を合 わせて100%があったと回答した。「とてもあった」は 75%であったことも含めて、『美術』の授業を通し て、「認識に変化」があったと考察できる。 ⑵ 質問2についての考察 質問内容は、「2. 上記1の回答で、『とてもあった まあまああった』にご回答された方にお聞きしま す。具体的に授業で扱ったどのテーマ(授業内容) で、認識の変化がありましたか?テーマ(授業内容) を以下から選んでください。」であった。回答の結果 は、「現代のArt」87.5%で一番多く、次に「Artが与 える影響」が56.3%で2番目に多かった。これらから は、「現代のArt」の授業内容によって、「認識の変 化」があったことがわかる。また「Artが与える影 響」の授業に内容においても、「認識の変化」があっ たことがわかる。前者と後者では、31.2%の差がある ことから、「現代のArt」が「認識」の変化のきっか け を 与 え や す い と 言 え る。 ま た、「 現 代 のArt」 は 「知識の習得」から知見を広めるものであり、一方 「Artが与える影響」は「考察」を深めるものであっ た。これらからは「知見を広めること」と「思考を深 めること」の両方とも、「認識」の変化を引き起こす きっかけになることがわかる。 2の質問に対する具体的理由についての結果として は、カテゴリーでは「日常生活」5名で一番多かっ た。これらからは「現代のArt」や「Artが与える影 響」が「日常生活」に関わっていることが考察できる。 ⑶ 質問3についての考察 質問内容は、「3. 上記1の回答で、『とてもあった まあまああった』にご回答された方にお聞きしま す。具体的にどのようなことに対して認識の変化があ りましたか?認識に変化があったことを以下から選ん でください。」であった。結果は、「美術」13名81.3% で一番多く、次に「生活」8名50%であった。これら から、「美術」に対する認識が変化したことがわか る。また「生活」についても認識が変化したことがう かがえる。 3の質問における具体的な変化についての結果とし ては、カテゴリーでは「日常生活」、「背景・歴史」、 「美術・絵画」であった。これらからは、「美術」と 「生活」について、「日常生活」から捉えていることが わかる。また「背景・歴史」、「美術・絵画」について は授業の内容と照らし合わせると、「美術」に対する 「認識」の変化を引き起こすきっかけであったと考え る。「背景・歴史」、「美術・絵画」という知識を学ぶ ことで、美術分野に対する「認識」が変化したと考察 する。 ⑷ 総合考察 質問1、質問2、質問3について考察をまとめると 以下になる。 ・『美術』の授業を通して、「認識に変化」があった。 ・「現代のArt」と「Artが与える影響」が「認識」 の変化のきっかけを与えやすい。 ・「知見を広めること」と「思考を深めること」の 両方とも、「認識」の変化を引き起こすきっかけ になる。 ・「現代のArt」や「Artが与える影響」が「日常生 活」に関わっている。 ・「認識」の変化が多かったのは、「美術」と「生 活」に対してであった。 ・「美術」と「生活」について、「日常生活」から捉 えている。 ・「背景・歴史」、「美術・絵画」という知識を学ぶ ことで、美術分野に対する「認識」が変化した。 以上より、『美術』の授業を通して、「認識に変化」 が あ り、 本 授 業 内 容 に お い て は、「 現 代 のArt」 と 「Artが与える影響」が「認識」の変化のきっかけに なったことがわかる。この2つからは、「知見を広め ること」と「思考を深めること」の両方とも、「認識」 の変化を引き起こすことがわかった。また、そこには 「日常生活」との関連も伺えた。これは「現代のArt」 や「Artが与える影響」が、同時代に生きる学生に とって、「日常生活」に関わって捉えることができる ものであると考察する。そして、学生が授業で学んだ ことを日常生活においてもフィードバックしながら修 得し、認識の変化を実感していることがわかった。6.おわりに
本研究は、アートを通した「認識」の転換につい て、アート分野の授業を通した「認識」の変化に着目 し、受講した学生の「認識」の変化から考察を行うも のであった。「美術」を受講することにより、学生に は「認識」の変化がもたらされ、そこにおいては、受 講科目である「美術」と学生の身近な事柄である「生 活」において、「認識」の変化が起こっていることが わかった。そこには「現代のArt」など日常生活の延 長としての要素が影響していることもわかった。「美 術」の授業においては、授業の時間のみならず、日常 生活と往還しながら理解を深め、「認識」の変化を引 き起こすことがわかった。また、本研究のさらなる展 開の可能性を見出すものとして、学生の回答では以下 のようなものがあった。 「最初は、アートはただの絵だと思っていたが、今 はその絵にはいろいろな背景が含まれていると知っ た。自分の考えと他人の考えでそれぞれアートに対す る見解の違いがあることに気づいた。」 そして、以下の回答に続く。 「皆で感想を言う際にも自分とはまったく違う考え の人がいておもしろかった。」 この学生は、アートの多様性とその背景についての 深い学びから、他者との見解の違いに気がつき、それ に対して「違う考えの人」は「面白い」という「肯定 的な視点」を自覚し「多様性の価値」を見出している ことがわかる。質問紙調査の回答では、「違い」につ いて肯定的な回答が複数あった。これらからは、アー トを通した「認識」の転換についての可能性をうかが える。これらを踏まえてさらに研究を進めていきたい。謝辞
本授業科目を実践させていただきました高崎商科大 学関係者の皆様に感謝申し上げます。また、本質問紙 調査実施に際し、調査にご協力くださった受講生の皆 様に御礼申し上げます。 注 (1) STEM教育とは、2000年代にアメリカで始まった教育モデル。STEMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工 学)、Mathematics(数学)の頭文字を指し、これらの分野か ら構成された教育。 (2) 若林宏保、大西浩志、和佐有紀、上原拓真、東成樹、電通美 術回路編、『アート・イン・ビジネス ビジネスに効くアート の力』有斐閣、2019年、pp.2 11 (3) 工藤彰、八桁健、小澤基弘、岡田猛、荻生田伸子、『芸術を 先行しない学生のための省察的表現教育-授業感想文のテキス トマイニングによる教育的意義と効果の検討』「美術教育学研 究」第49号、大学美術教育学会、2017 (4) 長木誠司「アートで知性を拡張し、社会の未来をひらく」 (https://www.art.c.u-tokyo.ac.jp/about/)(閲覧日,2020年9月 20日)
(5) Hindi,Nir, Renaissance of Renaissance Thinking, A New Paradigm in Managemen,(長谷川雅彰、小巻靖子訳、『世界の ビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』クロスメ