原位置サンプリング試料を用いた非排水繰返し三軸試験
結果のばらつきと信頼性について
山口輝大
1),加村晃良
2),金鍾官
3),風間基樹
4) 1) 大成建設株式会社,元 東北大学工学部建築・社会環境工学科 学生 e-mail : [email protected] 2) 東北大学大学院工学研究科土木工学専攻,助教 博士(工学) e-mail : [email protected] 3) 韓国建設技術研究院,上席研究員 博士(工学) e-mail : [email protected] 4) 東北大学大学院工学研究科土木工学専攻,教授 博士(工学) e-mail : [email protected] 要 約 地盤の詳細な液状化の予測判定を行う場合,原位置からのサンプリング試料を用いて非 排水繰返し試験によって土の液状化特性が評価される.原地盤そのものに不均質性,サ ンプリング時の乱れ,要素試験法自身の問題などのため,得られる液状化強度曲線には 一定の不確実性があると考えられる.本稿では,土木研究所が実施した原位置試料によ る室内試験結果から液状化強度曲線の信頼性を検討した.その結果,液状化強度曲線に 含まれるばらつきの原因の傾向を明らかにし,液状化の程度をエネルギー的観点で評価 することの優位性を示した. キーワード: 液状化, 液状化強度曲線, 原位置サンプリング試料,累積損失エネルギー 1. はじめに 近年,地盤物性の不均質性・不確実性を考慮した信頼性設計が行われるようになってきた例えば 1).しか しながら,これまで地盤の静的な物性に関する信頼性は検討されているものの,液状化の予測・判定に 使われる非排水せん断特性の信頼性に関しては,十分な検討は行われてこなかった.これは,液状化の 予測・判定に使われる液状化強度曲線が複数の供試体の実験結果をもとに求められるため, 多くの試験 を実施してデータの信頼性を吟味することが難しかったためと思われる.本研究では,土木研究所が 2011 年東北地方太平洋沖地震の後に実施した土質試験結果2),3)をもとに,非排水繰返しせん断特性のば らつきや特性を表す指標について検討した結果を報告する. 図1は,原位置の地盤のサンプリングから,液状化の予測・判定に使われる物性を求めるために行わ れる非排水繰返しせん断試験までの過程で,どのような不確実性の要因があるかを概略的に示したもの である.実際の自然堆積地盤には,薄いシーム層や堆積過程でのグレーディングが存在する.また,人 工的な埋め立て地盤でも,埋立て材料や埋立て堆積過程で生じる不均質性が存在する.また,サンプリ ング時や運搬時に供試体の土骨格構造に乱れが生じる場合や,水分の移動,応力解放など,原位置の状 態を真に反映しない要因がある.原地盤からサンプリングした試料を用いた試験では,こうした不確実 性が存在し,複数の供試体が同質とみなせない場合には, 液状化強度曲線の信頼性が損なわれてしまう 日本地震工学会論文集 第19巻, 第5号(特集号), 2019ことが問題となる.一方,繰返しせん断試験時の課題としては,実験者の技術の差,実験条件による違 いによる結果の差などの他,本質的には破壊の定義,ねばり(靭性)の評価,破壊モードの違いなども 挙げられる4)-6). 2. 本検討で用いた土木研究所の実施した実験データ 土木研究所は,2011 年東北地方太平洋沖地震の際に,関東地方の沖積平野に位置する河川堤防におい て液状化した地点11 地点,および埋立地 3 地点の合計 14 地点についてボーリング調査を行い,54 深 度,総数227 本の非排水繰返し強度試験を実施した結果を報告している2),3).報告書では,現状の液状 化判定法の中で残された課題として,細粒分の影響に関して特に着目している.報告書では,原位置と 室内での物理・力学試験のばらつきに関して,採取試料の品質の面で二つの問題があることが指摘され ている.一つは,従来から言われているように,原位置試料採取時の乱れの影響,もう一つは細粒分を 含む砂の場合,原位置と液状化試験に供した1 試料 4 供試体で土質に著しい相違,ばらつきが存在する ことが多いということである.ここでは,報告されている土質試験のデータに基づいて,試験結果のば らつきについて詳細に検討した. ここで検討に用いたのは,土木研究所の実施した東日本大震災時に液状化した14 地点,54 深度,総 数227 本の非排水繰返し強度試験結果のうち,液状化強度曲線が描ける表 1 に示す 9 地点,14 深度,51 供試体である. 試験の終了条件は,両振幅軸ひずみ εDA =5 % に達した時である.また,報告書では,原 位置の1 試料に対して,室内試験に用いた 4 供試体の細粒分含有率 Fc が±20 %,乾燥密度 ρdが±0.2 g/cm3,初期せん断剛性率G 0が0.5~1.5 倍の範囲内にあるデータを対象としている.これは,室内試験に 用いた供試体の品質保証の観点から,チューブサンプリング時の乱れに起因するばらつきの影響を低減 させるためにスクリーニングしたものである7).なお,室内試験における乾燥密度ρ dについては,圧密 後の値を原位置に対する比較対象としている.表 1 に選んだデータはすべて土木研究所のこの判断基準 を満たしたものである.これを見ると,選ばれたデータは,N1値で0.0~11.3,細粒分含有率 Fc で 1.1~99.5 % の範囲に入っている. こうして選ばれた表 1 の14 深度の液状化強度曲線を図 2 に示す.図中の液状化強度曲線は,筆者ら が両対数グラフ上での関係を線形近似することで描いたものである.ここで,近似曲線は式(1)で表され る.式中のR はせん断応力比,N は両振幅軸ひずみが 5 %に達するまでの繰返し回数,a,b は定数であ る.図中には,繰返し回数20 回における応力比 RL20は, マーカー内に×印を付けて示した.なお,本稿 では,近似曲線形状や後述する偏差との対応が直感的に理解し易いよう,横軸を算術軸で表している. R= aNb (1) 図 1 原位置サンプリング試料の液状化特性の評価の信頼性に関わる課題
表 1 非排水繰返しせん断試験 供試体の諸元 ※文献2),3)のデータを使用し右 3 列分を追加 ※A, I, J, K は埋立土,その他は沖積土。ρdは飽和度100%を仮定し土粒子密度と自然含水比より算定3) 識 別 供試体名 調査地点 細粒分含 有率 Fc(%) 乾燥密度 ρd (g/cm3) 繰返し 回数N 応力比 R 液状化強度 RL20 最大過剰間 隙水圧比 正規化累積 損失エネル ギー (NDE) RL20に相当 する NDE 偏差 ΔRL 2-2-1-3 6.50 ~ 6.62 52.4 1.379 82.5 0.161 0.887 0.154 0.002 2-2-1-4 6.62 ~ 6.74 44.2 1.370 23.5 0.210 0.912 0.089 -0.013 2-2-1-5 6.74 ~ 6.86 51.9 1.359 11.5 0.257 0.935 0.080 -0.013 2-2-1-2 6.38 ~ 6.50 44.6 1.314 13.5 0.285 0.800 0.094 0.026 4-2-1-8 5.90 ~ 6.02 12.2 1.396 83.5 0.137 0.986 0.062 0.003 4-2-1-3 5.30 ~ 5.42 3.5 1.419 20.5 0.159 0.981 0.033 -0.030 4-2-1-2 5.18 ~ 5.30 11.9 1.441 10.5 0.198 0.957 0.033 -0.025 4-2-1-10 6.10 ~ 6.22 8.1 1.419 13.5 0.273 0.968 0.059 0.064 4-2-3-5 8.48 ~ 8.60 18.6 1.436 56.5 0.117 0.988 0.020 0.007 4-2-3-6 8.60 ~ 8.72 15.0 1.460 9.5 0.158 0.971 0.023 -0.014 4-2-3-4 8.36 ~ 8.48 17.0 1.417 2.5 0.213 0.954 0.022 -0.027 4-2-3-3 8.24 ~ 8.36 19.3 1.425 1.5 0.316 0.949 0.031 0.043 6-2-2-2 7.22 ~ 7.34 72.3 1.308 158.5 0.207 0.959 0.301 -0.017 6-2-2-1 7.10 ~ 7.22 85.0 1.302 15.0 0.270 0.939 0.091 -0.057 6-2-2-3 7.34 ~ 7.46 89.5 1.346 51.5 0.324 0.923 0.239 0.056 6-2-2-4 7.46 ~ 7.58 78.8 1.323 7.5 0.395 0.826 0.124 0.029 7-2-2-6 8.58 ~ 8.70 96.8 1.141 61.5 0.236 0.925 0.274 -0.014 7-2-2-3 8.22 ~ 8.34 87.1 1.200 52.5 0.269 0.932 0.265 0.015 7-2-2-5 8.46 ~ 8.58 84.0 1.150 10.0 0.294 0.921 0.087 -0.002 10-2-1-5 3.48 ~ 3.60 26.3 1.375 10.0 0.239 0.990 0.051 0.004 10-2-1-6 3.60 ~ 3.72 3.2 1.372 3.5 0.292 0.935 0.038 -0.010 10-2-1-3 3.24 ~ 3.36 37.1 1.168 1.0 0.413 0.872 0.037 0.006 11-2-3-4 7.86 ~ 7.98 99.2 1.048 43.0 0.290 0.770 0.369 -0.011 11-2-3-1 7.50 ~ 7.62 99.1 1.036 39.5 0.317 0.746 0.349 0.012 11-2-3-3 7.74 ~ 7.86 98.6 1.045 6.0 0.386 0.798 0.103 -0.005 11-2-3-2 7.62 ~ 7.74 98.3 1.051 4.0 0.417 0.709 0.090 0.004 12-2-3-5 4.98 ~ 5.10 46.1 1.454 43.5 0.229 0.906 0.234 -0.026 12-2-3-2 4.62 ~ 4.74 44.3 1.384 57.5 0.263 0.942 0.240 0.025 12-2-3-3 4.74 ~ 4.86 35.8 1.315 15.5 0.313 0.976 0.139 -0.018 12-2-3-4 4.86 ~ 4.98 33.7 1.439 10.5 0.388 0.830 0.116 0.023 13-1-1-1-6 3.60 ~ 3.72 98.8 0.844 95.5 0.372 0.605 0.640 -0.018 13-1-1-1-5 3.48 ~ 3.60 98.9 0.961 24.5 0.509 0.576 0.313 0.044 13-1-1-2-6 3.60 ~ 3.72 99.5 0.855 7.0 0.529 0.630 0.130 -0.017 13-1-1-2-5 3.48 ~ 3.60 99.0 0.967 3.5 0.590 0.638 0.107 -0.007 13-1-6-5 14.48 ~ 14.60 17.1 1.213 124.0 0.237 0.917 0.477 -0.003 13-1-6-4 14.36 ~ 14.48 18.8 1.238 11.0 0.390 0.861 0.149 0.012 13-1-6-6 14.60 ~ 14.72 16.8 1.219 2.5 0.490 0.759 0.078 -0.009 14-2-1-6 4.60 ~ 4.72 7.2 1.427 26.0 0.179 0.951 0.036 -0.019 14-2-1-5 4.48 ~ 4.60 34.3 1.324 28.0 0.187 0.984 0.052 -0.008 14-2-1-3 4.24 ~ 4.36 43.3 1.356 37.0 0.203 0.978 0.083 0.020 14-2-1-4 4.36 ~ 4.48 41.3 1.430 10.5 0.254 0.990 0.055 0.009 14-2-3-2 7.82 ~ 7.94 12.6 1.476 14.5 0.205 0.969 0.038 -0.009 14-2-3-7 8.40 ~ 8.52 1.9 1.411 11.0 0.250 1.033 0.064 -0.015 14-2-3-3 7.94 ~ 8.06 18.9 1.397 12.5 0.264 0.979 0.065 0.024 14-2-3-8 8.52 ~ 8.64 1.6 1.415 6.5 0.401 0.952 0.071 0.001 14-2-5-2 10.82 ~ 10.94 7.6 1.397 121.0 0.243 0.948 0.402 -0.007 14-2-5-1 10.70 ~ 10.82 11.1 1.430 4.5 0.287 0.795 0.043 -0.068 14-2-5-4 11.06 ~ 11.17 1.1 1.396 6.5 0.434 0.846 0.073 0.092 14-2-6-3 11.49 ~ 11.61 16.5 1.405 94.5 0.231 0.943 0.310 0.014 14-2-6-1 11.25 ~ 11.37 5.7 1.465 23.5 0.262 0.990 0.159 -0.048 14-2-6-4 11.80 ~ 11.92 5.7 1.419 9.5 0.432 0.977 0.114 0.041 N 0.141 M 0.046 0.323 0.303 J 0.221 I 0.370 L 0.024 K 0.078 0.338 0.477 0.164 0.211 千葉県千葉市 幕張海 浜公園 平均採取深度: GL-3.43m 千葉県千葉市 幕張海 浜公園 平均採取深度: GL-14.50m F 0.063 E 0.185 H 0.143 G 0.262 0.277 0.311 0.333 0.199 千葉県香取市 佐原イ地 先(利根川下流) 平均採取深度: GL-8.45m 茨城県水戸市 下大野 地先(那珂川) 平均採取深度: GL-3.50m 茨城県茨城郡茨木町 下石崎先(涸沼川) 平均採取深度: GL-7.93m 東京都江東区毛利 猿 江恩賜公園 平均採取深度: GL-5.00m 0.033 A 0.084 D 0.194 C 0.022 0.190 0.233 0.312 0.143 B 千葉県浦安市 舞浜地 先 平均採取深度: GL-4.43m 千葉県浦安市 舞浜地 先 平均採取深度: GL-8.05m 千葉県浦安市 舞浜地 先 平均採取深度: GL-10.43m 千葉県浦安市 舞浜地 先 平均採取深度: GL-11.83m 採取深度 GL- (m) 茨城県常総市 上蛇地先 (小貝川) 平均採取深度: GL-6.75m 茨城県稲敷市 本新地 先(霞ヶ浦西浦) 平均採取深度: GL-5.78m 茨城県稲敷市 本新地 先(霞ヶ浦西浦) 平均採取深度: GL-8.47m 千葉県印旛郡 栄町請 方地先(利根川下流) 平均採取深度: GL-7.60m
試験結果から得られた応力比のばらつきの程度を検討するため,複数の試験結果をもとに設定された液 状化強度曲線との差を偏差ΔRLとして求め,これをその地点の試験結果のばらつきと定義した(表 1 の 右端欄).このΔRLは絶対値で0.001~0.092 の範囲を有し,繰返し回数 20 回に相当する RL20は各地点間 で0.143~0.477(約 3.34 倍)の違いがあることが分かる. 3. 土木研究所の行った繰返し三軸試験(応力比一定試験)の分析 3.1 応力比一定試験のばらつきの分析 図 3 に応力比一定試験のRL20とΔRLの関係を示す.このデータは,図 2 に示した14 地点の応力比一 定試験結果について,応力比と液状化強度曲線との差ΔRLをRL20との関係で示したものである.この関 係より,液状化強度曲線からの偏差が最大で0.092 を示したのは,地点 M の供試体(RL20が0.3 付近) であることがわかる.ただし,このΔRLとRL20の相関性については,ΔRLが最大値をとった地点M 以外 に着目すると,RL20=0.3 付近の偏差 ΔRLが必ずしも大きくなっているわけではなく,この関係のみで試 図 2 検討に用いた 14 地点の液状化強度曲線(εDA =5%までの繰返し回数と応力比の関係) 図 3 応力比一定試験のRL20とΔRLの関係 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 20 40 60 80 100 120 140 160 応力比 R 繰返し回数N A B C D E F G H I J K L M N -0.15 -0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 Δ RL RL20 A B C D E F G H I J K L M N
験結果のばらつきを論ぜられないことが分かる.そこで,供試体について他に得られている情報に着目 するため,まずは細粒分含有率 Fc と ΔRLの関係を図 4 に示す.この関係を見ると, 応力比のばらつき は,Fc が 50~60 %程度で最小となることがわかる.Fc が高いデータに着目すると,D や I の ΔRLが大 きくなっている.特にばらつきが大きいD の供試体については,同一サンプリング試料であるにも関わ らず,Fc が 72.3~89.5 %の間にばらついていることから,この 4 つの供試体間の不均質性が影響してい る可能性が考えられる. 次に,応力比一定試験の繰返し回数N と ΔRLの関係を図 5 に示す. この図 5 を見ると, 繰返し回数 N が少ないほど,応力比のばらつきが大きくなる結果となった.ここで,非排水繰返しせん断試験による 供試体の破壊モードを考える.本稿で使用したデータには供試体の破壊モードを示す情報が含まれない ため対応を確認できないものの,一般に,①有効応力の完全喪失により供試体全体が液体状に至るモー ド,②供試体内にせん断ひずみ帯を伴って局所的なすべり面で破壊するモード,③伸張破壊・ネッキン グに至るモード,等に分類される.さらに,過剰間隙水圧の上昇が鈍く液状化強度が高い供試体,もし くは応力比が小さく繰返し回数N が大きい条件では,④材料力学的な疲労限界に漸近しながらひずみが 蓄積して破壊(の定義)に至るモードも生じうる.なお,液状化強度の高い供試体では,②や④の破壊 モードが支配的であると考えられ,後述の 3.2 においてエネルギー的観点から考察している. 一方,液状化強度が低い供試体は,過剰間隙水圧の上昇によって力学特性が急激に変化するため,繰 返し回数 N が少ないほど(すなわち応力比が大きいほど)偏差 ΔRLが大きくなったものと考えられる. 図 6 には,一例として液状化強度が最も低かった地点 C の有効応力経路と応力-ひずみ関係を示す.各 供試体の繰返し回数については,応力比が小さい緑色の経路で56.5 回であるのに対し,応力比が大きい 青色の経路で1.5 回,赤色の経路で 2.5 回となった.このように,応力比が小さい試験条件では,上述④ のように疲労破壊的な挙動を示す一方,応力比が大きい試験では,このわずか1,2 回の間に有効応力が 著しく減少し破壊していることがわかる.このことは,土の液状化強度を規定する指標として,載荷の 繰返し「回数」という力学的意味が乏しく粗い評価尺度を用いることに限界があることを示している. したがって著者らは,後述の 3.2 において,繰返し回数N ではなく,力学的に意味を有するエネルギー 的観点から液状化強度を評価する手法について考察し,その優位性と妥当性を検討している. なお,図 4 および図 5 のばらつきの整理法については,近似曲線を両対数グラフ上で線形近似した影 響も考えられたため,近似曲線を片対数グラフ上で線形近似した場合も同様の整理を行ったが,繰返し 図 4 応力比一定試験のFc と ΔRLの関係 図 5 応力比一定試験の繰返し回数N と ΔRL の関係 -0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0 20 40 60 80 100 ΔR L 細粒分含有率Fc (%) A B C D E F G H I J K L M N ΔRL の最大値0.092 (地点Mの供試体) -0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0 50 100 150 ΔR L 繰返し回数N A B C D E F G H I J K L M N
回数が少ないほど応力比のばらつきが大きくなる結果に変わりはなかった.また,図 4 および図 5 のデ ータ整理にあたっては,横軸の各指標に対してデータが均等に分布していることが理想である.しかし, そもそも液状化が生じたと判定される地盤において FCや繰返し回数N が大きい値を取ること自体,出 現頻度は高くない.偏差が大きいデータ群について,前述の観点から力学的に矛盾なく解釈可能である と本稿では判断したが,さらなるデータの蓄積が望まれる. 3.2 正規化累積損失エネルギーによる分析 土供試体の破壊モードや靭性といった特性を力学的に有意な指標で評価するため,応力比一定試験の 結果を正規化累積損失エネルギーの観点 7), 8)で分析した.ここで,正規化累積損失エネルギーとは,土 の応力-ひずみ関係のループの面積を載荷の全ステップで足し合わせ,初期有効応力で正規化した無次元 量として定義される.本稿で用いた土木研究所のデータ 3)は三軸試験によるものであるため,各ステッ プの損失エネルギー∆𝑊から,次式によって累積損失エネルギーが得られる. ∆𝑊 𝜎 𝜎 2 𝜀 𝜀 (2) ここで,𝜎 と𝜎 は𝑖ステップと𝑖 1ステップの軸差応力であり,𝜀 と𝜀 は𝑖ステップと𝑖 1ステ ップの軸ひずみ,𝑛1は 1 サイクルの時刻歴データ数である.さらに,このように求めた累積損失エネル ギーは拘束圧に依存することから,初期有効応力𝜎 で正規化をすることで正規化累積損失エネルギー ∑ ∆𝑊 /𝜎 を求めた. 図 7 は表 1 の51 供試体の非排水繰返しせん断試験における,正規化累積損失エネルギーと繰返し載 荷の各サイクルにおける最大過剰間隙水圧比の関係を描いたものである.実際には,ダイレイタンシー に基づく有効応力の回復(過剰間隙水圧比の減少)が生じているが,試料間のエネルギー吸収特性の違 いをわかりやすくするために,このように最大値で整理した. この図 7 に示す関係より,①各供試体の過剰間隙水圧の上昇過程は,正規化累積損失エネルギーの対 数に比例していること,②過剰間隙水圧比が0.95(一般的な液状化判断の閾値)を超えてからもエネル ギーを蓄積する供試体があること,③過剰間隙水圧比が 0.8 に至らず,有効応力を喪失するような液状 化破壊に至らない供試体があること,等が分かる.試験終了時の正規化累積損失エネルギーの違いは, C の 4 試料の平均値の 0.024 が最小,I の 4 試料の平均の 0.225 が最大で,約 10 倍の差がある.各サイ クルにおける過剰間隙水圧比0.4 で比較した場合は,同じく C の 4 試料の平均値の 0.0015 が最小,I の 4 試料の平均値の 0.041 が最大で,差は約 27 倍となる.したがって,C と I の RL20の0.143~0.477(3.34 (a) 有効応力経路 (b) 応力-ひずみ関係 図 6 地点 C の 4 供試体の有効応力経路と応力-ひずみ関係3) -60 -40 -20 0 20 40 60 0 20 40 60 80 100 軸差 応力 (k N /m 2) 有効応力(kN/m2) 4-2-3-5(応力比0.117) 4-2-3-6(応力比0.158) 4-2-3-4(応力比0.213) 4-2-3-3(応力比0.316) -60 -40 -20 0 20 40 60 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 軸差 応力 (k N /m 2) 軸ひずみ 4-2-3-5(応力比0.117) 4-2-3-6(応力比0.158) 4-2-3-4(応力比0.213) 4-2-3-3(応力比0.316)
倍)に比較して,ある過剰間隙水圧比までの累積損失エネルギーの方が感度の良い指標であることがわ かる. この観点を踏まえ,図 8 にはそれぞれの供試体の応力比とその試験の際に費やされた正規化累積損失 エネルギーの関係を示した.図中で,繰返し回数20 回における応力比 RL20は,マーカー内に×印を付け て示した.さらに,図 9 にRL20とそれに相当する正規化累積損失エネルギーの関係を取り出して示す. この14 ケースでは,RL20に相当する正規化累積損失エネルギーは0.022~0.370(約 16.8 倍)の違いがあ り,RL20の比率約3.34 倍の範囲より 5 倍程度感度が良いことがわかる.これは正規化累積損失エネルギ 図 8 応力比一定試験の正規化累積損失 図 9 RL20とRL20に相当する正規化累積 エネルギーと応力比,RL20の関係 損失エネルギーの関係 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.01 0.1 1 応力比 R 正規化累積損失エネルギー A B C D E F G H I J K L M N 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.01 0.1 1 応力比 R RL20の正規化累積損失エネルギー ×16.8 0.022 0.370 × 3. 34 0.14 0.48 図 7 応力比一定試験の正規化累積損失エネルギーと過剰間隙水圧比の関係 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 各サイクルにおける最大過剰間隙水圧比 正規化累積損失エネルギー A B C D E F G H I J K L M N ③過剰間隙水圧比が0.8 に至らない供試体がある ②過剰間隙水圧比が0.95あたりを 超えてからもエネルギーが蓄積 ①過剰間隙水圧の上昇過程は 正規化累積損失エネルギー の対数に比例
ーで液状化抵抗を評価する場合の優位性と言える.現行の液状化強度の評価軸は,非排水繰返しせん断 の載荷回数という物理的な意味が乏しい指標を用いているが,上述のようなエネルギー指標を用いるこ とで,供試体の破壊モードや靭性を含めた評価につながる可能性がある.3.1 で言及したように,供試 体の破壊モードの違いから生じる誤差が現行の液状化強度評価に与える影響が大きいことを踏まえると, むしろその破壊モードの違いを評価に含められるような指標を用いることには合理性がある.これまで 述べた試験結果のばらつきの傾向をみると,ばらつきの原因を一意的に特定して排除することは到底不 可能であることから,非排水繰返し三軸試験の結果の信頼性という観点において,このような考え方は 重要である.したがって,非排水繰返し三軸試験の結果の信頼性を確保するためには,供試体の破壊モ ードや,破壊モードと累積損失エネルギーの定量的相関についてデータの蓄積が重要となることは明ら かである. なお,図 8 を詳しく見ると,同一深度における応力比が異なる試験において,εDA = 5 % の試験終了条 件に至るまでに費やすエネルギーに違いがあることがわかる.特に,試料G,H,I,J,N(図 8 中,右 側に位置)などは,応力比が大きくなるにつれてエネルギー消費性能が低下している傾向が見て取れる. 一方,それ以外のエネルギー消費性能が比較的低い他の試料(図 8 中,左側に位置)は,応力比に対し て一意的な傾向を読み取ることができない.液状化強度が低い供試体において,急激に破壊(液状化) するのか,それとも有効応力を徐々に喪失して破壊に至るのかについては,3.1 で述べたとおり応力比 の大小によって異なるため,これがばらつきの一因にもなっている9). 既往の研究において,応力比を用いて許容応力度的に液状化判定するのではなく,地震中に地盤に入 力されるエネルギーと土要素が液状化までに費やすことができる累積損失エネルギーを比較して液状化 を予測・判定することが提唱されている8).そしてこのようなエネルギー指標を用いて評価することで, 液状化強度が低い供試体においても,応力比に依存せず一意的な評価が可能であることを示す報告もあ る10).したがって,土要素の本来的な液状化強度を評価するという観点において,エネルギー的手法に 基づく液状化予測・判定手法には一定の合理性があり,非排水三軸試験結果を用いた液状化予測判定の 信頼性を向上させる可能性があると考えられる. 図 10 には,細粒分含有率Fc と最大過剰間隙水圧比の関係を示す.Fc が 100 %に近い供試体は,試験 終了時までの最大過剰間隙水圧比が0.6~0.8 となっていることがわかる.これは,Fc が 100 %に近い粘 性土供試体は繰返しせん断を受けても,有効応力がゼロ付近に至らず試験終了条件に達したためである. 一方,Fc が 20 %以下の供試体でも過剰間隙水圧比が十分上がらず,0.9 以下で試験が終了したケースが 4 つある.具体的には,液状化強度 RL20が比較的大きいJ と M の応力比の大きい試験ケースである.こ れらの試験供試体では,有効応力を喪失するような液状化とは異なる破壊モードで試験が終了したもの 図 10 細粒分含有率Fc と最大過剰間隙水圧比の関係 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 0 20 40 60 80 100 120 最大過剰間隙水圧比 細粒分含有率Fc(%) A B C D E F G H I J K L M N
である(いずれも液状化を伴わない軸ひずみの発達による破壊,原データは参考文献3)および 7)によ る).また,過剰間隙水圧比が0.8 まで上昇しなかった結果を含むケース A,G,I,J,M のうち,A,I, M については,図 4 および図 5 より,偏差 ΔRLが大きいことを読み取ることができる(A:0.026,I: 0.044,M:0.092).一方で,G や J の偏差 ΔRLは0.011~0.012 となっており,他の供試体に比べて相対 的に大きくないことが分かる.これらの違いについては,供試体の破壊モードの違いが関連していると 考えられる.過剰間隙水圧が上昇しにくい供試体では,局所的なせん断帯を伴う破壊モードや,疲労破 壊的なモード(3.1 で述べた破壊モードの②および④)の違いが出ているものと推定される.この点に ついては,更なるデータの集積が必要な部分であり,非排水繰返し三軸試験を実施する場合には供試体 の破壊モードも試験結果として記録することの重要性を示すものである. 4. 結論 本研究では,土木研究所が実施した原位置試料による室内試験結果から液状化強度曲線のばらつきと 信頼性に関する要因を分析した.その結果,以下の結論が得られた. 1) 4 つ程度の応力比を変えた試験結果から求められた液状化強度曲線に対して,試験結果との差 ΔRL は応力比で最大0.092 程度の違いが認められた. 2) 限られたデータ群からの解釈ではあるが,細粒分含有率 Fc が小さい試料ほど,また,応力比一定試 験の繰返し回数が少ない試験ケースほど,ΔRLが大きくなることがわかった.このことは,現行の液 状化強度曲線では,土供試体の破壊モードによって繰返し回数が極端に変わるため,ばらつきを内 包しやすい整理法であることを示すものである.すなわち,繰返し「回数」という力学的意味が乏 しい評価指標で液状化強度を評価することには限界があるといえる. 3) 土材料の液状化抵抗を表す指標として,応力比一定試験の繰返し回数 20 回における応力比 RL20よ りも,累積損失エネルギーのほうが5 倍程度感度の良い指標であることがわかった. 4) 応力比一定試験において,両振幅軸ひずみ 5%発生を試験終了条件とすると,試験終了時までに過剰 間隙水圧比が0.8 にすら達しないものがある.これは,細粒分含有率 Fc が 100%に近い試料と Fc が 20%以下で比較的液状化抵抗の大きい試料に大きな応力比を作用させたケースである.これらの試 験供試体では,有効応力を喪失するような液状化とは異なる破壊モードで試験が終了しており,試 験結果にばらつきを与える一要因となっている. 5) 従来の繰返し回数で整理する液状化強度曲線において,液状化強度が比較的高い試料については, 応力比が大きくなるにつれてエネルギー消費性能が低下する傾向を示した.一方,それ以外のエネ ルギー消費性能が比較的低い試料においては,繰返し回数と応力比との間に一意的な傾向を読み取 ることは困難であった.そしてこれら傾向の違いは,供試体の破壊モードが異なることに起因して いるものと推察される. 以上,非排水繰返し三軸試験結果のばらつきの傾向とその要因を踏まえると,供試体の破壊モードの 違いから生じる誤差が現行の液状化強度評価に与える影響が大きいことから,繰返し回数といった物理 的意味が乏しく粗い指標を用いるよりも,破壊モードの違いを評価に含められるようなエネルギー指標 を用いることには合理性があると考えられる.試験結果の信頼性を確保するためには,非排水繰返し三 軸試験の破壊モードや,破壊モードと累積損失エネルギーの関係性についてのデータの蓄積が重要であ る.なお,このデータの蓄積にあたっては,例えば細粒分含有率FCや密度など各種物理指標に対するデ ータ分布の均等性には留意する必要があると考えられる. 謝 辞 本研究では,国立研究開発法人土木研究所より貴重な原位置データならびに各種室内試験結果を提供 頂いた.また,研究遂行にあたっては,科学研究費助成事業の基盤研究(A)「地盤の耐液状化性能設計 法の構築とその実用化 -設計地震動を超える外力への対応- 」(研究代表者:風間基樹)の補助を受けた. ここに記して関係各位に謝意を表する.
参考文献 1) (公)日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・同解説,2018.5. 2) 佐々木哲也,石原雅規,谷本俊輔,増山博之:東北地方太平洋沖地震における液状化を踏まえた液 状化判定法の検討,土木研究所資料,第4280 号,2014.1. 3) 佐々木哲也,石原雅規,谷本俊輔,林宏親,江川拓也,鷲見浩司,川口剛:細粒分を含む砂の液状化 強度の評価法に関する再検討,土木研究所資料,第4352 号,2016.3. 4) 風間基樹:阪神大震災以降の液状化研究-液状化した土の残留変形特性の評価,電力土木,No.348, pp.1-6, 2010. 5) 風間基樹, 河井正, 森友宏, 金鍾官, 山崎智哉:東日本大震災の液状化被害に見る液状化研究の課題, 日本地震工学会論文集,Vol.15, No.7, pp.49-59, 2015.12. 6) 風間基樹:2011 年東北地方太平洋沖地震による地盤災害と復興への地盤工学的課題,東日本大震災 に関する技術講演会論文集 -巨大地震・巨大津波がもたらした被害と教訓-, 2012. 7) 公益社団法人地盤工学会 エネルギーに基づく液状化予測手法に関する研究委員会:エネルギーに基 づく液状化予測手法に関するシンポジウム 委員会活動報告書および論文集,2019.3. 8) 風間基樹, 鈴木崇弘, 柳沢栄司, 地盤に入力された累積損失エネルギーの評価法と液状化予測への 適用, 土木学会論文集, No.631/Ⅲ-48, pp.161-177, 1999. 9) 山口輝大,加村晃良,金鍾官,風間基樹:原位置サンプリング試料を用いた非排水繰返し三軸試験 結果の信頼性とランダム地震動入力の影響について,第 15 回日本地震工学シンポジウム発表論文 集,pp.2359-2368,2018. 10) 國生剛治:エネルギーによる液状化判定法の適用性検討と FL 法との対比,地盤工学ジャーナル, Vol.8(3),pp.463-475,2013. (受理:2019 年 3 月 14 日) (掲載決定:2019 年 6 月 19 日)
Variation and Reliability of Undrained Triaxial Shear Test
using In-situ Soil Specimens
YAMAGUCHI Teruhiro
1), KAMURA Akiyoshi
2), KIM Jongkwan
3)and KAZAMA Motoki
4)1) Taisei Corporation -Former student, Tohoku University
2) Assistant Professor, Department of Civil and Environmental Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University, Dr. Eng.
3) Researcher, Seismic Safety Research Center, Department of Infrastructure Safety Research, Korea Institute of Civil Engineering and Building Technology, Dr. Eng.
4) Professor, Department of Civil and Environmental Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University, Dr. Eng.
ABSTRACT
When we conduct the prediction and judgement of liquefaction, the liquefaction properties of soils are evaluated by means of undrained cyclic shear test using in-situ soil specimens. It is considered that there are uncertainties in the liquefaction strength curve obtained because of inhomogeneous of in-situ ground, sampling disturbance and failure mode of elementary test. In this paper, the cause of deviatoric variation in the liquefaction resistance of soils is analyzed based on the data of in-situ specimen collected by Public Works Research Institute after the 2011 off the pacific coast of Tohoku earthquake. As the result, the authors clarified the tendency of the cause of variation included in the liquefaction resistance curves, and showed the superiority of evaluating the degree of liquefaction from the view point of energy.