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ヘパリンの肺血管成長促進作用 -新生野兎を用いた解析-

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Academic year: 2021

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(1)

ヘパリンの肺血管成長促進作用 -新生野兎を用いた

解析-著者

渡辺 卓

3378

発行年

2006

URL

http://hdl.handle.net/10097/23004

(2)

氏名(本籍)

学位の種類

学位記番号

学位授与年月日

学位授与の条件

最終学歴

学位論文題目

わたなへすくる

渡辺卓(栃木県)

博士(医学)

医第3378号

平成18年3月1日

学位規則第4条第2項該当

平成3年3月31日

東北大学医学部卒業

ヘパリンの肺血管成長促進作用

一新生野兎を用いた解析一

論文審査委員

(主査)

教授田林胱一

教授近藤丘

教授林

山・田

(3)

論文内容要旨

研究背景と目的

先天性心疾患は一般的に外科手術により根治的治療が行われ良好な成績が得られている。しか し,単心室系の疾患では上大静脈,下大静脈を肺動脈に吻合する,いわゆるFontan手術が最終 的根治術として施行されるが,このような症例においては肺血管の発達が未熟で,肺血管抵抗が 高いため根治術を行なう事が不可能となり姑息的な手術で終わる症例も少なくない。しかし内科 的に肺血管の成長を促進し肺血管抵抗を低下させる事が出来れば,このような症例においても, 早期の根治術を行う事が出来る可能性が生まれてくる。肺血管の成長には様々な血管成長因子と 共に,ヘパリンおよびヘパリン類似物質が重要な役割を成す事が知られている。また,ヘパリン は抗凝固剤として心臓カテーテルや開心術の人工心肺使用時に広く臨床的に用いられている。加 えてヘパリンは血管内皮への成長促進作用,血管平滑筋の成長抑制作用等の薬理学的な作用を要 している事も知られている。しかし,その機能および効果に関して,まだ十分には解明されてい ない。そこで本実験ではプ日夕ミンおよびヘパリンを新生野兎に投与し,肺血管内皮の成長とそ れによる肺血管抵抗の変化を検討した。この作用の評価としては,肺動脈/体動脈圧比Pp/Ps (pulmonarypressure/systemicpressure)を測定し,同時に肺血管抵抗減少の背景となる肺 血管の病理組織学的検討を行った。肺血管の病理学的変化に関しては以下の3つの問題がある事 が知られている。1)肺血管抵抗の半分は血管平滑筋のない,直径40μm以下のいわゆる capillaryにより構築される血管床に依存している。2)血管床を構成するcapillaryは病理組織 学的には肺胞壁との鑑別が難しい。3)通常,肺の病理標本ではcapillaryは虚脱した状態であ り管腔構造を呈していない事から管腔構造として評価出来ない。以上のことから今回の検討では, 血管内皮に特異的抗体CD3!を用いた免疫組織化学染色を行い,肺血管内皮成長の指標として 肺血管内皮密度を画像解析する事により評価した。 4 4

研究方法

生後3日目の新生野兎(各群12羽)にプロタミン(60mg/kg/day),ヘパリン(450単位/kg /day),コントロールとして生食(0.45m工/kg/day)を12時間おきに皮下注射し,2週間継続 して行った。それぞれのグループの7日目(各群4羽)と14日目(各群8羽)に於いて,ケタ ラール麻酔,自発呼吸下に右頸動脈より動脈圧を,右頚静脈よりポリプロピレンチューブを右室 まで挿入し右室圧を測定し,肺動脈圧の代用とした。これら実験から肺血管抵抗の指標となる, 肺動脈/体動脈圧比(Pp/Ps)を求めた。犠牲死させた後に肺を摘出し,血管内皮に特異的な CD31抗体を用いて,免疫組織化学染色を行った。肺血管密度をCAS200と,NIHimageの二

(4)

種類の画像解析装置を用いて肺血管密度の測定を行った。

研究結果

7日目のPp/Psでは3群間に有意差は認めなかった。14日目のPp/Psはプ日夕ミン群;29.9 ±4.4%,生食群;29.4±3.0%,ヘパリン群;2LO±4.0%と,プ日夕ミン群は生食群に比較して Pp/Psの軽度増加傾向を示し,ヘパリン群のPp/Psは生食群に比較して有意に低値であった。 CAS200を用いた肺血管密度は7日目では3群間に差はなかった。14日目の肺血管密度はそれ ぞれ,プロタミン群;30.2±3.9%,生食群;33.2±1.5%,ヘパリン群;38.4±3.2%で,プロタ ミン群の肺血管密度は生食群と比較して有意に低価であった。ヘパリン群の肺血管密度は生食群 と比較して有意に高値であった。NIHimageを用いた肺血管密度は7日目では3群間に差はな かった。14日目の肺血管密度はそれぞれ,プロタミン群;19.2±L8%,生食群;20.8±3.8%, ヘパリン群;24.0±L3%で,プロタミン群の肺血管密度は生食群と比較して有意に低値であっ た。ヘパリン群の肺血管密度は生食群と比較して有意に高値であった。

結論

プロタミンは生後の肺血管成長に関与するヘパリンおよび,ヘパリン類似物質の作用を抑制し た。ヘパリンの投与は,Pp/Psの低下,血管内皮細胞密度の増加をもたらした。ヘパリンは血 管内皮の成長と,肺血管床の発達を促進することが明らかとなった。臨床的に肺血管床が未熟な 先天性心疾患患者に対するヘパリンの投与は,肺血管床の成長をもたらし,早期に根治術の可能 性を高める事が示唆された。今後の臨床応用が期待される。

(5)

審査結果の要旨

§ .単心室の先天性心疾患では,近年手術成績も向上してきたが,肺血管床が未熟なため根治術を 行なう事が出来ない場合もある。これらに対しては現在のところ肺の成長を待つ以外,治療方法 がないのが現状である。本研究では肺血管成長にヘパリンおよびヘパリン類似物質が関与してい る事に着目し,プ日夕ミンおよびヘパリンを新生野兎に投与し,肺血管内皮の成長に対する影響 と,肺血管抵抗の変化を検討した。 研究方法は,新生野兎にプロタミン(60mg/kg/day),ヘパリン(450単位/kg/day),生食 (0.45m1/kg/day)を12時間おきに皮下注射し,それぞれのグループの7日目と14日目に,動 脈圧と右室圧を測定し,肺血管抵抗の指標となる,肺動脈/体動脈圧比(Pp/Ps)を求めた。犠 牲死させた後,肺を摘出し,血管内皮に特異的なCD31抗体を用いて,免疫組織化学染色を行 い,肺血管密度をCAS200と,NIHimageの二種類の画像解析を用いて測定した。 7日目では,Pp/Psおよび,肺血管密度いずれも詳聞に差は認めなかった。14日目のPp/Ps は,生食群に比較してプ日夕ミン群は軽度増加し,ヘパリン群は低価となった。CAS200および NIHimage共に,14日目の肺血管密度は生食群と比較してプロタミン群は低下し,ヘパリン群 は増加した。プロタミンは生後の肺血管成長に関与するヘパリンおよび,ヘパリン類似物質の作 用を抑制し,ヘパリンの投与は,Pp/Psの低下,肺血管密度の増加をもたらした。 本研究は,生後の肺血管成長に関して,ヘパリンが肺血管の成長促進作用を有する事を示した。 また肺血管成長の評価として,血管内皮密度の変化を画像解析で評価した最初の論文である。臨 床的に肺血管床が未熟な先天性心疾患患者に対するヘパリンの投与は,肺血管床の成長をもたら し,早期に根治術の可能性を高める事を示した点で独創的であり学位論文に値すると評価する。 よって,本論文は博士(医学)の学位論文として合格と認める。 … 、§

参照

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