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児童の自尊感情の発達に関する実践的研究

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Academic year: 2021

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児童の自尊感情の発達に関する実践的研究

著者

虎杖 真智子

学位名

博士(教育学)

学位授与機関

大阪総合保育大学大学院

学位授与年度

2014

学位授与番号

第1号

URL

http://doi.org/10.15043/00000001

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学位請求論文

論文題目

「児童の自尊感情の発達に関する実践的研究」

児 童 保 育 研 究 科 児 童 保 育 専 攻

博 士 後 期 課 程 2012年

入 ・ 進 学

氏 名 虎 杖 真 智 子

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目 次 Ⅰ 自 尊 感 情 の 発 達 に 関 す る 従 来 の 研 究 と 問 題 ... 1 1 自 尊 感 情 の 定 義 ... 1 2 児 童 ・ 生 徒 の 自 尊 感 情 に 関 す る 研 究 の 問 題 ... 4 Ⅱ 本 研 究 に 関 連 す る 問 題 と 研 究 の 目 的 ... 8 1 本 研 究 に 関 連 す る 従 来 の 研 究 ... 8 2 研 究 の 目 的 ... 11 Ⅲ 研 究 1 算 数 科 自 尊 感 情 測 定 尺 度 の 開 発 ... 11 1 研 究 1- 1 予 備 調 査 ... 12 (1) 目 的 ... 12 (2) 方 法 ... 12 (3) 結 果 ... 12 2 研 究 1- 2 本 調 査 ... 17 (1) 目 的 ... 17 (2) 方 法 ... 17 (3) 結 果 ... 19 (4) 考 察 ... 23 Ⅳ 研 究 2 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 作 成 ... 25 1 小 学 校 の 算 数 科 授 業 に お け る 課 題 ... 25 2 教 師 全 体 の 算 数 科 授 業 に 関 す る 研 修 ... 27 3 算 数 科 授 業 に お け る 習 熟 度 別 授 業 の 必 要 性 ... 30 4 児 童 の 自 尊 感 情 を 高 め る 授 業 プ ロ グ ラ ム の 作 成 ... 31

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(1) 新 し い 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム 作 成 の 基 本 的 な 枠 組 み ... 31 (2) 授 業 プ ロ グ ラ ム に お け る カ リ キ ュ ラ ム の 内 容 の 位 置 づ け ... 32 (3) 新 し い 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム ... 34 ( 4) 実 験 群 の 児 童 の 習 熟 度 に よ る 児 童 の 区 分 け ( 学 習 内 容 に よ る ) ... 35 ( 5) コ ー ス 別 の 指 導 案 ... 35 Ⅴ 研 究 3 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 実 践 的 実 験 と そ の 効 果 ... 38 1 目 的 ... 38 2 方 法 ... 38 (1) 被 実 験 児 童 ( 以 下 、 被 験 児 童 と す る ) と 実 験 実 施 時 期 ... 38 (2) 実 践 的 実 験 の ス ケ ジ ュ ー ル ... 38 (3) 実 験 材 料 ... 39 (4) 手 続 き ... 39 3 結 果 ... 40 (1) 授 業 プ ロ グ ラ ム 実 施 前 の 実 験 群 と 統 制 群 の 算 数 自 尊 感 情 と 全 体 的 な 自 尊 感 情 に 関 す る 基 礎 統 計 量 の 比 較 ... 40 (2) 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 実 施 が 児 童 の 算 数 自 尊 感 情 に 与 え る 効 果 ... 44 (3) 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 実 施 が 児 童 の 全 体 的 な 自 尊 感 情 に 与 え る 効 果 .... 51 (4) 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 実 施 が 児 童 の 算 数 自 尊 感 情 の 得 点 の 上 昇 率 に 及 ぼ す 効 果 ... 58 (5) 全 体 的 な 自 尊 感 情 の 10 月 と 12 月 の 平 均 値 の 上 昇 率 に つ い て ... 62 4 考 察 ... 65 (1) 授 業 プ ロ グ ラ ム 実 施 前 の 実 験 群 と 統 制 群 の 基 礎 統 計 量 の 比 較 に つ い て .... 65

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(2) 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 実 施 が 児 童 の 算 数 自 尊 感 情 に 与 え る 効 果 に つ い て ... 66 (3) 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 実 施 が 児 童 の 全 体 的 な 自 尊 感 情 に 与 え る 効 果 に つ い て... 67 (4) 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム の 実 施 が 児 童 の 算 数 自 尊 感 情 の 測 定 値 の 上 昇 に 及 ぼ す 効 果 に つ い て ... 68 Ⅵ 研 究 4 算 数 自 尊 感 情 の 高 さ が 算 数 科 学 力 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て ... 69 1 算 数 自 尊 感 情 の 高 低 が 算 数 科 学 力 に 及 ぼ す 影 響 ... 69 (1) 10 月 の 授 業 開 始 時 の 算 数 科 自 尊 感 情 と 算 数 科 学 力 の 関 係 ... 69 (2) 12 月 の 授 業 プ ロ グ ラ ム 終 了 時 の 算 数 自 尊 感 情 と 算 数 科 学 力 の 関 係 ... 70 2 算 数 自 尊 感 情 の 高 揚 が 算 数 科 学 力 に 及 ぼ す 影 響 ... 71 (1) 算 数 自 尊 感 情 全 体 の 高 揚 群 と 低 下 群 の 抽 出 ... 71 (2) 算 数 自 尊 感 情 全 体 の 高 揚 が 算 数 科 学 力 に 及 ぼ す 影 響 ... 72 (3) 算 数 自 尊 感 情 各 因 子 の 高 揚 が 算 数 科 学 力 に 及 ぼ す 影 響 ... 73 3 考 察 ... 78 Ⅶ 本 研 究 に つ い て の 総 合 的 考 察 と 今 後 の 課 題 ... 82 1 総 合 的 考 察 ... 82 2 今 後 の 研 究 課 題 ... 85 謝 辞... 86 引 用 文 献 ... 86

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1 児 童 の 自 尊 感 情 の 発 達 に 関 す る 実 践 的 研 究 Ⅰ 自 尊 感 情 の 発 達 に 関 す る 従 来 の 研 究 と 問 題 1 自 尊 感 情 の 定 義 教 育 現 場 で は 、 児 童 ・ 生 徒 の 「 自 尊 感 情 」 を 育 む こ と が 急 務 と さ れ て い る が 、 そ の 背 景 に は 現 代 の 子 ど も た ち に は 、 物 事 を 最 後 ま で や り 遂 げ る 体 験 が 少 な い こ と 、 自 分 に 自 信 を 持 つ こ と が で き ず 、 自 立 す る 力 が 育 っ て い な い こ と 、 人 間 関 係 が 希 薄 で 集 団 と し て の つ な が り が 弱 い と い う 現 状 等 の 問 題 が 少 な か ら ず あ る た め で あ る 。 内 閣 府 が 実 施 し た 「 低 年 齢 少 年 の 価 値 観 等 に 関 す る 調 査 」 ( 2000) と 「 低 年 齢 少 年 の 生 活 と 意 識 に 関 す る 調 査 」 ( 2007) で は 、 「 自 分 に 全 く 自 信 が な い 」 と 答 え た 児 童 ・ 生 徒 の 割 合 が 増 加 し て い る こ と が 報 告 さ れ 、 ま た 、 園 田 ( 2007) は 、 従 来 か ら の 国 際 比 較 調 査 を 基 に 、 他 国 に 比 べ 、 日 本 の 小 学 生 、 中 学 生 、 高 校 生 の 自 尊 感 情 が 低 い 傾 向 に あ る こ と を 指 摘 し 、 自 尊 感 情 を 育 む 必 要 性 を 述 べ て い る 。 自 尊 感 情 と は 、 園 田 ( 2007) は 、 「 自 分 に 対 す る 肯 定 的 感 情 で あ り 、 そ れ な り の 能 力 と 良 い 面 を も っ た 大 切 な 存 在 と す る 感 覚 の こ と で あ る 。 ま た そ の 感 覚 が 一 時 的 で あ っ た り 浮 遊 的 で あ っ た り す る の で は な く 、 個 人 の 中 に あ る 程 度 、 安 定 し て 存 在 し て い る も の と い う と こ ろ に 特 徴 が あ る 」 と し て い る 。 遠 藤( 2007)は 、「 自 尊 感 情 は そ の 人 自 身 に つ ね に 意 識 さ れ て い る わ け で は な い が 、そ の 人 の 言 動 や 意 識 態 度 を 基 本 的 に 方 向 付 け る 。 自 分 自 身 の 存 在 や 生 ( 生 き る こ と ) を 基 本 的 に 価 値 の あ る も の と し て 評 価 し 信 頼 す る こ と に よ っ て 、 人 は 積 極 的 に 意 欲 的 に 経 験 を 積 み 重 ね 、 満 足 感 を 持 ち 、 自 己 に 対 し て も 他 者 に 対 し て も 受 容 的 で あ り う る 。 こ の よ う な 意 味 に お い て 、 自 尊 感 情 は 精 神 的 健 康 や 適 応 の 基 盤 を な す 」 と し て い る 。 ま た 、 自 尊 感 情 は 、 自 分 に 対 し て 肯 定 的 か 否 定 的 か と い っ た 評 価 方 向 と 程 度 だ け で な く 、 自 己 の ど の よ う な 領 域 へ の 認 知 と 結 び 付 い て い る か に つ い て も 検 討 さ れ て き た 。 遠 藤 ( 2007)が 紹 介 し て い る James( 1890) の 書 に よ れ ば 、 「 自 尊 感 情 = 成 功 / 願 望 、 と い う 公 式 で 表 さ れ る が 、 こ れ は 個 人 が 願 望 を 持 っ て い る 領 域 で 成 功 し た と 思 え る こ と が 、 自 分 に 対 す る 満 足 を 高 め る こ と 」 を 示 し て い る 。 と こ ろ が 、 個 人 が 何 を も っ て 成 功

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2 と す る の か は 、 そ の 人 の 持 つ 評 価 の 基 準 が 何 で あ る か に よ っ て 決 定 さ れ る と こ ろ も あ る 点 も 考 え る と 、Jamesの 自 尊 感 情 に つ い て の 簡 潔 な 公 式 は 、実 に 複 雑 な 内 容 を 備 え て い る 。 こ の Jamesの 自 尊 感 情 に つ い て の 考 え 方 は 、他 の 研 究 者 に も 引 き 継 が れ て い る 。ま た 、遠 藤( 2007)に よ る と 、Rogers( 1951)が 自 尊 感 情 を「 理 想 自 己 と 現 実 自 己 の ず れ 」か ら 捉 え て い る こ と に な る が 、そ れ は 、Jamesの 自 尊 感 情 に つ い て の 概 念 の 枠 組 み で は 理 想 自 己 は 願 望 に 、 成 功 は 現 実 自 己 に 類 し て い る か ら で あ ろ う 。 さ ら に 、 遠 藤 ( 2007)は 、 Rosenberg( 1965) は 、 自 己 の 自 尊 感 情 に 関 す る 研 究 で 、 自 己 を 評 価 す る あ り 方 と し て 次 の 2つ を 区 別 し て い る と い う 。「 と て も よ い( very good)」 と「 こ れ で よ い( good enough) 」で あ る 。前 者 は 優 越 性 や 完 全 性 の 感 情 と 関 連 し 、他 者 よ り も 優 越 し て い る と い う 意 味 合 い を 包 含 し て い る 。 そ れ に 対 し て 、 後 者 に は 優 越 性 や 完 全 性 の 関 係 は 含 ま れ ず 、 自 ら の 基 準 に 照 ら し て 自 分 を 受 容 し 素 朴 に 好 意 を 抱 く と い う 意 味 合 い が 示 さ れ る 。 Rosenberg自 身 は 、 後 者 を 以 っ て 自 尊 感 情 で あ る と み な し て い る 。

こ の Rosenbergの 自 ら の 基 準 は 、Rogersの「 現 実 の 自 己 」や 、次 に 述 べ る Lawrenceの「 現

実 の 自 己 像 」 に 近 い 意 味 が あ る 。 こ れ ら の 研 究 者 は 、 い ず れ も 、 自 己 に つ い て の 現 実 像 と 理 想 像 か ら 自 尊 感 情 を 捉 え よ う と し て い る と い え る 。 近 年 に 至 っ て 、 Lawrence( 2006) は 「 自 尊 感 情 を 自 己 像 と 理 想 自 己 の 不 一 致 に つ い て の 個 人 の 評 価 と し 、 こ の 両 者 の 間 の 不 一 致 は 避 け ら れ な い も の で あ り 、 そ れ は 正 常 な 現 象 で あ る 」と 言 っ て い る が 、こ の 概 念 規 定 で 現 実 の 自 己 と し て 自 己 像 を 取 り 上 げ て い る 。 こ の よ う に 従 来 の 自 尊 感 情 の 概 念 規 定 は 、ほ ぼ Jamesの 考 え 方 に 沿 っ て き て い る と い え る 。 そ し て 、 Lawrenceが 、 現 実 の 自 己 像 と 理 想 自 己 と の 不 一 致 に つ い て の 当 該 個 人 の 評 価 か ら 自 尊 感 情 と し て 捉 え た と こ ろ は 、 個 人 は こ の よ う な 不 一 致 が あ る か ら こ そ 自 己 を 伸 ば そ う と 努 め る の で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 自 尊 感 情 に 関 す る 研 究 で は 、 教 育 的 に も 極 め て 重 要 な 指 摘 で あ る と い え よ う 。 一 方 、 こ れ に 関 連 し て 、 本 邦 で は 、 園 田 ( 2007) は 、 近 藤 が 、 「 自 尊 感 情 を 育 て る 児 童 心 理 」の 中 で 、自 尊 感 情 の 構 造 に つ い て 次 の よ う に 述 べ て い る こ と を 紹 介 し て い る 。そ れ に よ る と 、 Rosenbergの い う 「 こ れ で よ い 」 と し て い る 感 情 を 基 本 的 自 尊 感 情 と 呼 び 、 こ の 自 己 の 価 値 に 関 す る 基 本 的 な 感 情 の 上 に 、 「 と て も よ い 」 と し て い る 感 情 が バ ラ ン ス よ く 乗 っ て い る の が 自 尊 感 情 で あ る と し て い る 。 こ の 「 と て も よ い 」 感 情 を 社 会 的 自 尊 感 情 と 呼 ん で い る 。 こ の よ う な 自 尊 感 情 に つ い て の 層 構 造 的 な 捉 え 方 は 本 研 究 の 実 践 的 な 展 開 に も 大 い に 参 考 に な る 。 後 述 す る Lawrence( 2006) が 取 り 上 げ て い る 特 殊 自 尊

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3 感 情 に 通 ず る と こ ろ が あ る 。 そ れ は 、 着 実 に 育 ま れ て き た 形 成 歴 を 有 す る 確 固 た る 基 本 的 自 尊 感 情 を 基 盤 と し 、 自 他 相 互 の 肯 定 的 な 競 争 や 努 力 に よ っ て 高 め ら れ 得 る と 思 わ れ る 社 会 的 自 尊 感 情 と い う 2つ の 領 域 の 自 尊 感 情 を バ ラ ン ス よ く 育 て る こ と が 重 要 で あ る と さ れ て い る か ら で あ る 。 Lawrenceは 、 特 定 の 経 験 領 域 に 関 わ る 自 尊 感 情 を 特 殊 自 尊 感 情 と み な し 、 そ の 基 盤 に な る 基 本 的 な 自 尊 感 情 が あ る と し て い る 。 本 研 究 で は 、 こ の 立 場 を 研 究 の 主 軸 と し て 、 研 究 を 進 め る の が 妥 当 で あ る と 考 え て い る 。 と こ ろ で 、 Pope( 1988)は 、 自 尊 感 情 の 構 造 に つ い て は 、 自 尊 感 情 は 、「 自 己 概 念 に 含 ま れ て い る 情 報 を 評 価 す る こ と で あ っ て 、 い ま の 自 分 に 関 す る す べ て の 事 柄 に つ い て 自 分 が 抱 い て い る 感 情 か ら 出 て く る も の 」 と 位 置 付 け 、 自 尊 感 情 の 構 成 概 念 を 「 社 会 的 領 域 」、「 学 業 的 領 域 」、「 家 族 的 領 域 」、「 身 体 的 領 域 」、「 全 体 的 自 尊 心 」の 5つ に 分 類 し 、 自 尊 感 情 の 測 定 に 示 唆 に 富 む 指 摘 を し て い る 。 そ こ で 、 こ の よ う な 自 尊 感 情 の 測 定 に つ い て の 先 行 研 究 を 調 べ て み る と 、 次 の 通 り で あ る 。 例 え ば 、 自 尊 感 情 に つ い て 、 遠 藤 ( 1992) は 、 「 自 尊 感 情 と は 、 人 が 持 っ て い る 自 尊 心 、 自 己 受 容 な ど を 含 め 、 自 分 自 身 に つ い て の 感 じ 方 を さ し て い る 。 自 己 概 念 と 結 び 付 い て い る 自 己 の 価 値 と 能 力 の 感 覚 で あ る 。 ・ ・ ・ こ の よ う な 感 覚 は 、 人 が 到 達 し 、 維 持 す る 判 断 と し て 概 念 化 で き る も の で あ る 。 そ れ ゆ え 、 測 定 で き る 持 続 的 な 人 の 属 性 で あ る と 考 え ら れ 、 い ろ い ろ な 測 定 法 が 編 み 出 さ れ て い る 」 と 述 べ て 、 自 尊 感 情 の 測 定 の 可 能 性 を 指 摘 し て い る 。 ま た 、 池 田( 2000)は 、 Rosenberg( 1979)の 作 成 し た 自 尊 感 情 尺 度 を 参 考 に 、 新 し く 質 問 紙 に よ る 測 定 尺 度 を 構 成 し 、 自 尊 感 情 の 概 念 を「 包 み 込 ま れ 感 覚 」、「 社 交 性 感 覚 」、 「 勤 勉 性 感 覚 」、「 自 己 受 容 感 覚 」の 4つ の 構 成 因 か ら 構 造 的 に 捉 え る 試 み を し て い る 。 池 田 の い う 「 包 み 込 ま れ 感 覚 」 と は 、 自 分 の 身 近 に い る 人 が 自 分 を 温 か く 包 み こ ん で く れ て い る 、 自 分 を 愛 し て く れ て い る 等 、 だ れ か が 自 分 の 気 持 ち を 分 か っ て く れ て い る と い う 気 持 ち の 事 、 「 社 交 性 感 覚 」 と は 、 友 だ ち が 言 っ た こ と は 自 分 は よ く わ か る 、 自 分 の 言 っ た こ と は 友 だ ち が よ く わ か っ て く れ る 、 と い う 友 だ ち と の 心 の 通 じ 合 い が で き て い る と い う 気 持 ち の こ と で あ る 。 ま た 、 「 勤 勉 性 感 覚 」 と は 、 自 分 は コ ツ コ ツ と 努 力 を す る 人 間 だ と い う 気 持 ち 、 何 か を や り 始 め た ら 最 後 ま で や り 通 す の だ と い う 気 持 ち の こ と で あ る 。 Bandura( 1997)は 、 既 に 自 尊 感 情 に 関 連 す る 実 験 的 な 研 究 を 介 し て 、 自 尊 感 情 は「 特

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4 定 の 作 業 を 遂 行 す る の に 必 要 な 一 連 の 行 動 を 組 織 化 し 、 実 行 す る 自 分 自 身 の 能 力 に つ い て の 評 価 で あ る 自 己 効 力 感 」 に 類 す る も の と み な し て い る 。 さ ら に 、 そ こ で は 、 今 の 自 分 が 好 き で あ る 、 ま た 、 自 分 の 性 格 が 好 き と い う 気 持 ち の こ と で あ る 「 自 己 受 容 感 覚 」 が 存 在 し て い る こ と も 指 摘 し て い る 。 Banduraの こ の よ う な 自 尊 感 情 に つ い て「 自 己 有 能 感 」 、 「 自 己 受 容 感 」 を 主 要 な 構 成 要 因 と す る 実 験 的 な 提 唱 は 、 本 邦 の 最 近 の 実 証 的 研 究 で も 明 ら か に さ れ て い る 。 例 え ば 、 東 京 都 教 職 員 研 修 セ ン タ ー と 慶 應 義 塾 大 学 の 共 同 研 究 で あ る 「 子 ど も の 自 尊 感 情 や 自 己 肯 定 感 を 高 め る た め の 教 育 の 充 実 」 で は 、 2009年 度 の 調 査 研 究 で 、 質 問 項 目 の 関 係 性 を 分 析 し た 結 果 、 自 尊 感 情 を 構 成 す る 要 因 は 、 「 自 己 評 価 ・ 自 己 受 容 」 、 「 関 係 の 中 で の 自 己 」 、 「 自 己 主 張 ・ 自 己 決 定 」 の 3つ が 大 き な 柱 で あ る と し て い る 。 従 っ て 、 Lawrence( 2006) が 、 実 証 的 研 究 で 、 自 尊 感 情 と は 「 現 実 自 己 と 理 想 自 己 の 不 一 致 に つ い て の 個 人 の 評 価 の こ と で 、 全 体 的 な 面 ( 多 面 に わ た る 自 己 価 値 観 ) と 特 殊 的 な 面 ( 特 殊 的 な 活 動 や 行 動 に 関 す る 自 己 価 値 観 ) の 二 つ の 面 が あ り 、 特 殊 的 な 自 尊 感 情 を 高 め る こ と は 全 体 的 な 自 尊 感 情 に 影 響 さ れ る 」 と 指 摘 し て い る と こ ろ は 、 こ れ ま で に 紹 介 し た 従 来 の 内 外 の 諸 研 究 で 支 持 さ れ て い る と い え よ う 。 つ ま り 、 こ れ ら の 研 究 か ら 総 じ て 、 い わ ゆ る 自 尊 感 情 と は 、 自 己 に 関 す る 肯 定 的 、 積 極 的 な い く つ か の 感 情 か ら 構 成 さ れ て お り 、 そ れ ら を 包 括 し た も の で あ る と み な す の が 適 切 で あ る と 思 わ れ る 。 な お 、 Lawrence( 2006) は 、 1970年 代 に 自 尊 感 情 の 重 要 性 に つ い て の 研 究 を 進 め て い く 中 で 、 そ れ ま で の 教 育 者 に よ れ ば 、 学 力 上 の 改 善 が 自 尊 感 情 を 高 め る 結 果 を も た ら す と 考 え ら れ て き た が 、 そ の 反 対 の 視 点 を と り 、 自 尊 感 情 を 高 め る こ と に ま ず 重 点 を 置 き 、 そ し て そ の 結 果 と し て 学 力 に 改 善 が み ら れ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 Lawrenceの こ の 研 究 結 果 は 、 本 研 究 に 取 り 組 む 上 で 、 示 唆 に 富 む 有 力 な 実 証 資 料 と な っ て い る 。 2 児 童 ・ 生 徒 の 自 尊 感 情 に 関 す る 研 究 の 問 題 以 上 の よ う に 、 自 尊 感 情 を 捉 え る と 、 自 尊 感 情 の 形 成 度 の 水 準 が 学 校 教 育 の 実 践 上 の 諸 問 題 と 関 連 を 持 つ こ と が 推 測 さ れ る 。 例 え ば 、 東 京 都 教 育 委 員 会 に よ る 研 究( 2008)で は 、「 東 京 都 教 育 ビ ジ ョ ン( 第 2次 )」 の 中 で 暴 力 行 為 、 不 登 校 、 い じ め な ど の 教 育 問 題 と 自 尊 感 情 と の 負 の 相 関 関 係 が あ る こ と を 実 証 し て い る 。

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5 ま た 、 文 部 科 学 省 ( 2009) か ら 出 さ れ た 報 告 「 子 ど も の 徳 育 の 充 実 に 向 け た 在 り 方 に つ い て 」 で は 、 小 学 校 の 高 学 年 か ら は 、 自 己 に 対 す る 肯 定 的 な 意 識 が 持 て ず 、 自 尊 感 情 の 低 下 等 に よ り 劣 等 感 を 持 ち や す い 時 期 で あ る と し 、 こ の 時 期 の 重 要 課 題 と し て 自 尊 感 情 の 育 成 の 必 要 性 を 強 調 し て い る 。 さ ら に 、 文 部 科 学 省 ( 2011) の 「 生 徒 指 導 提 要 」 で は 、 自 尊 感 情 を 高 め る こ と に は 、 自 分 は 大 切 に さ れ て い る 、 自 分 は 必 要 と さ れ て い る と い っ た 、 他 者 か ら の 賞 賛 や 承 認 、 評 価 が 影 響 し 、 周 り の 人 た ち に 明 確 に 認 め ら れ て い る こ と が 大 切 に な る と 示 さ れ て い る 。 そ し て 、 こ れ ら の 指 摘 に は 、 先 に 挙 げ た 自 尊 感 情 に 関 す る 諸 研 究 の 成 果 が 反 映 し て い る こ と が わ か る 。 一 方 、 近 年 の 研 究 の 中 に は 、 学 級 の 実 態 に 応 じ た 社 会 的 ス キ ル 訓 練 を 行 い 、 人 間 関 係 作 り の 実 践 を 通 し 、 自 尊 感 情 の 高 ま り を 調 べ る 研 究 が 多 い 。 例 え ば 、藤 枝 、相 川 、石 川( 1998)は 、「 学 級 を 対 象 と し た 社 会 的 ス キ ル 訓 練 の 効 果 に 関 す る 研 究 (1)」 で 、 小 学 校 4 年 生 を 対 象 に 「 仲 間 へ の 入 り 方 、誘 い 方 」、「 や さ し い こ と ば か け 」、「 上 手 な 頼 み 方 」、「 あ た た か い 断 り 方 」 の 訓 練 を 実 施 し 、「 社 会 的 ス キ ル 尺 度 」 を 用 い 調 査 し た と こ ろ 、 児 童 の 向 社 会 性 の 促 進 に 効 果 が あ っ た と い う 。 そ の 後 、 藤 枝 、 相 川 ( 1998) は 、 継 続 し た 「 学 級 を 対 象 と し た 社 会 的 ス キ ル 訓 練 の 効 果 に 関 す る 研 究 (3)」 で 、 小 学 校 4 年 生 を 対 象 に 、「 研 究 1 」 の 場 合 と 同 様 に 、「 仲 間 へ の 入 り 方 、 誘 い 方 」、「 や さ し い こ と ば か け 」、「 上 手 な 頼 み 方 」、「 あ た た か い 断 り 方 」 の 側 面 か ら 社 会 的 ス キ ル の 訓 練 を 実 施 し 、「 学 級 享 受 感 尺 度 」を 用 い 調 査 し た と こ ろ 児 童 の 学 級 生 活 に 対 す る 満 足 感 を 上 昇 さ せ る こ と が で き た と 報 告 し て い る 。 ま た 、柳 瀬( 1998)は 、「 子 ど も の ア サ ー シ ョ ン 及 び 攻 撃 性 に 関 す る 研 究 」で 、中 学 生 を 対 象 に 対 人 不 安 傾 向 と ア サ ー シ ョ ン 、 攻 撃 性 と の 関 係 を 調 査 し た 結 果 、 対 人 不 安 傾 向 が 高 い も の の 方 が 、ま た 、男 子 よ り 女 子 の ほ う が「 攻 撃 的 言 動 」が 多 い と 報 告 し て い る 。 一 方 、小 石 、岩 崎( 2000)は 、「 仲 間 関 係 へ の 自 己 効 力 感 を 高 め る 操 作 の 効 果 の 検 討 」で 児 童 が 仲 間 の 良 い と こ ろ を 見 つ け 、 一 覧 表 に し た も の を 児 童 に フ ィ ー ド バ ッ ク す る と 、 仲 間 関 係 へ の 自 己 効 力 感 を 高 め る こ と が 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 次 い で 、 藤 枝 、 相 川 ( 2001) の 「 小 学 校 に お け る 学 級 単 位 の 社 会 的 ス キ ル 訓 練 の 効 果 に 関 す る 実 験 的 検 討 」 で は 、 小 学 校 4 年 生 を 対 象 に 「 仲 間 へ の 入 り 方 、 誘 い 方 」、「 や さ し い こ と ば か け 」、「 上 手 な 頼 み 方 」、「 あ た た か い 断 り 方 」 の 訓 練 を 実 施 し 、 社 会 的 ス キ

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6 ル の 程 度 の 低 い 児 童 を 対 象 に( a)「 社 会 的 ス キ ル の 自 己 評 定 尺 度 」、( b )「 社 会 的 ス キ ル の 教 師 評 定 尺 度 」、( c)「 目 標 ス キ ル の 自 己 評 定 尺 度 」を 用 い 調 査 し た と こ ろ 、( a)の 社 会 的 ス キ ル の 自 己 評 定 尺 度 に よ る 測 定 結 果 で は 、 有 意 な 効 果 は 認 め ら れ な か っ た が 、( b ) の 社 会 的 ス キ ル の 教 師 評 定 尺 度 を 用 い た 測 定 で は 、 社 会 的 ス キ ル の 訓 練 の 効 果 が 統 計 的 に 有 意 に 生 じ て い た 。ま た 、( c)の 目 標 ス キ ル の 自 己 評 定 尺 度 を 用 い た 結 果 に よ れ ば 、「 上 手 な 頼 み 方 」、「 あ た た か い 断 り 方 」 に お い て 効 果 が 証 明 さ れ た と 報 告 し て い る 。 こ れ ら の 結 果 に よ れ ば 、 同 一 の 社 会 的 ス キ ル の 訓 練 を し て も 、 測 定 尺 度 が 異 な れ ば 、 訓 練 効 果 の 有 無 が 違 う こ と に な る 。 特 に 、 自 己 評 定 尺 度 で 有 意 差 が 見 出 さ れ な く て も 、 教 師 評 定 尺 度 で は 有 意 な 差 が 認 め ら れ る 評 定 は 注 目 に 値 す る 。 尺 度 を 用 い る 評 価 者 の 評 価 視 点 が 反 映 し て き て い る と 思 わ れ る か ら で あ る 。 こ の 研 究 結 果 は 、 測 定 の 主 体 を 子 ど も と す る こ と に ポ イ ン ト を 置 く こ と の 大 切 さ を 示 し て い る と い え る 。 そ れ は 、 子 ど も 自 身 に と っ て の 社 会 的 ス キ ル が 実 際 の 対 人 関 係 で 実 質 的 な 意 味 を 持 つ か ら で あ る 。 さ ら に 、廣 岡 、廣 岡( 2004)は 、「 中 学 生 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 を 高 め る ア サ ー シ ョ ン ト レ ー ニ ン グ の 効 果 」で 、「 話 す ス キ ル 」、「 聴 く ス キ ル 」を 標 的 ス キ ル と し て ト レ ー ニ ン グ を 行 っ た 結 果 、「 主 張 性 尺 度 」と「 社 会 的 ス キ ル 尺 度 」の 得 点 に 有 意 な 変 化 は 見 ら れ な か っ た が 、 ト レ ー ニ ン グ 後 は 生 徒 の プ ロ グ ラ ム に 対 す る 理 解 度 が 良 好 で 、 生 徒 の 感 想 に も 積 極 的 な も の が 多 く み ら れ 、 ア サ ー シ ョ ン の 好 ま し さ の 認 知 を 高 め る こ と が で き た と 報 告 し て い る 。 こ の 結 果 に よ れ ば 、 中 学 生 に な る と 、 自 己 の ア サ ー シ ョ ン に つ い て の 評 価 が 進 み 、 的 確 な 評 価 が 行 わ れ る よ う に な れ ば 、 自 己 有 能 感 の 形 成 に 影 響 し 、 そ れ は 、 自 尊 感 情 の 発 達 に 必 然 的 に 関 連 し て く る こ と が 推 定 さ れ る 。 ま た 、塩 見 、正 田( 2004)は 、「 児 童 の ア サ ー シ ョ ン と 学 校 ス ト レ ス の 関 係 に つ い て の 研 究 」で 、主 張 性 と 、状 態・特 性 不 安 の 関 係 を 検 討 し 、「 主 張 性 の 高 低 が ス ト レ ス の 高 低 に 影 響 を 及 ぼ す 」こ と と 、「 他 者 と 関 わ る 行 動 」に つ い て は 、そ の 得 点 の 高 低 と 状 態・特 性 不 安 の 高 低 の 間 に は 何 ら 関 係 の な い こ と が 明 ら か に な っ た と 報 告 し て い る 。 加 え て 、多 賀 谷 、佐 々 木( 2008)は 、「 小 学 4 年 生 の 学 級 に お け る 機 会 利 用 型 社 会 的 ス キ ル 訓 練 」 で 、 授 業 中 に 生 起 し た 標 的 行 動 を 題 材 に し て 、 そ の 場 で 学 級 成 員 全 体 の 社 会 的 ス キ ル 訓 練 に 活 用 さ せ 、 仲 間 関 係 へ の 自 己 効 力 感 ・ 社 会 的 ス キ ル の 促 進 、 仲 間 へ の 認 知 の 変 化 、 仲 間 関 係 の 改 善 に 効 果 の 違 い が あ る か 否 か を 検 討 し て い る 。 そ の 結 果 に よ れ ば 、 社 会 的 ス キ ル 訓 練 を 受 け る と 、 社 会 的 ス キ ル を 維 持 し 、 仲 間 に 対 す る 認 知 が 肯 定 的 な 傾 向 を 示 す よ う に 変 化 し 、 さ ら に 、 児 童 相 互 の 関 わ り の 対 人 関 係 が 深 ま る 様 子 が 認 め

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7 ら れ た と 報 告 し て い る 。 こ れ ら の 研 究 か ら 、 社 会 的 ス キ ル の 一 つ で あ る ア サ ー シ ョ ン の 獲 得 が 、 対 人 関 係 の あ り 方 に お け る 様 々 な 側 面 の 改 善 に 働 く 要 因 と な る こ と が わ か る 。 そ れ は 、 対 人 関 係 の あ り 方 に 影 響 さ れ 、 自 尊 感 情 の 形 成 に も 大 き く 関 わ る こ と に な る も の と 思 わ れ る 。 一 方 、ア サ ー シ ョ ン と 自 尊 感 情 と の 関 連 に つ い て の 研 究 で は 、菅 沼( 1994)は 、「 ア サ ー テ ィ ブ 行 動 の 構 造 に 関 す る 因 子 論 的 研 究 」 で 、 人 は 主 張 的 に 行 動 す れ ば 自 尊 感 情 は 高 ま る と 報 告 し て い る 。 ま た 、 塩 見 、 伊 達 、 中 田 、 橋 本 ( 2003) は 「 中 学 生 の ア サ ー シ ョ ン に つ い て - 自 尊 感 情 と の 関 連 を 中 心 に し て 」 で 、 自 分 に 自 信 を 持 っ て い る 生 徒 の 場 合 は 、 受 容 的 な 態 度 を 持 ち 、 対 人 関 係 で 適 切 な 権 利 を 主 張 す る こ と に プ ラ ス の 影 響 が 生 ず る こ と と 、 ア サ ー シ ョ ン 得 点 が 高 い ほ ど 自 信 得 点 も 高 く な る こ と を 報 告 し て い る 。 こ の 結 果 は 、 ア サ ー シ ョ ン が 的 確 に 行 わ れ れ ば 、 自 尊 感 情 の 構 成 要 素 の 一 つ で あ る 自 信 が 高 ま る こ と を 示 し て い る 。 さ ら に 、半 田( 2007)は 、「 児 童 用 ア サ ー シ ョ ン 尺 度 の 作 成 の 試 み 」で 、ア サ ー テ ィ ブ な 自 己 表 現 と 自 尊 感 情 の 関 連 を 調 べ 、 こ の 間 に 正 の 相 関 が あ っ た と 報 告 し て い る が 、 こ れ は 、 ア サ ー シ ョ ン 得 点 が 高 い 人 ほ ど 、 自 尊 感 情 が 高 い こ と を 意 味 し て い る 。 こ れ ら の 研 究 も 踏 ま え 、 筆 者 は こ れ ま で の 研 究 で 、 小 学 校 高 学 年 の 児 童 に ア サ ー シ ョ ン ト レ ー ニ ン グ を 実 施 す る こ と で 、 適 切 な 人 間 関 係 の 形 成 が 促 進 さ れ 、 自 尊 感 情 の 基 盤 と な る 全 体 的 自 尊 感 情 が 高 ま る こ と に つ い て 検 証 し 、 ア サ ー シ ョ ン ト レ ー ニ ン グ の 有 効 性 を 明 ら か に し た 。 し か し 、 こ の 基 本 的 な 全 体 的 自 尊 感 情 の 高 ま り が 定 着 す る た め に は 、 継 続 的 な ア サ ー シ ョ ン ト レ ー ニ ン グ が 必 要 で あ る こ と 、 即 ち 、 特 に 、 児 童 の 学 校 生 活 で 大 半 を 占 め る 授 業 の 中 で 、 全 体 的 な 自 尊 感 情 、 さ ら に 、 特 殊 的 な 自 尊 感 情 を 高 め る 授 業 プ ロ グ ラ ム を 作 成 し 、 教 育 現 場 で 実 践 に 移 し 、 そ の 有 効 性 を 実 証 す る こ と が 課 題 と し て 残 さ れ た 。 そ の 理 由 は 、 児 童 は 学 校 生 活 の 大 半 で 、 諸 領 域 に 分 化 さ れ た 教 科 学 習 を 経 験 し て お り 、 そ の よ う な 学 習 の 場 で は 、 各 教 科 に 関 わ る 自 尊 感 情 を 形 成 す る 機 会 に 多 々 当 面 す る こ と が あ る か ら で あ る 。 ま た 、 も ち ろ ん 、 特 別 活 動 の 場 で も 自 尊 感 情 の 形 成 は 十 分 考 え ら れ る が 、 教 科 の 学 習 で は 、 児 童 の 授 業 へ の 取 り 組 み に 対 す る フ ィ ー ド バ ッ ク が 、 直 接 、 直 後 に 行 わ れ る 可 能 性 が 大 き く 、 そ れ は 、 児 童 の 自 尊 感 情 の 形 成 に 大 き く 影 響 す る も の と 思 わ れ る か ら で あ る 。

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8 Ⅱ 本 研 究 に 関 連 す る 問 題 と 研 究 の 目 的 1 本 研 究 に 関 連 す る 従 来 の 研 究 自 尊 感 情 を 高 め る こ と を 目 的 と す る 多 く の 研 究 に は 、 自 尊 感 情 と 対 人 関 係 と の 関 わ り 方 と の 関 連 を 重 視 し て い る も の が 多 い 。 Jhonsonら( 1998)は 、児 童 期 、青 年 期 の 仲 間 関 係 に 関 す る 研 究 で 、「 子 ど も 達 は 仲 間 と の 相 互 作 用 を 通 し て 、大 人 か ら は 得 ら れ な い 態 度 、価 値 、技 能 、情 報 を 直 接 学 習 す る 。 そ し て 、 他 者 の 視 点 か ら 状 況 や 問 題 を 捉 え る こ と が で き る よ う に な る 。 ま た 、 教 育 現 場 で も 勤 労 場 面 で も 仲 間 は 、 生 産 性 に 強 い 影 響 を 与 え る 。 子 ど も の 教 育 的 向 上 心 は 、 ど ん な 社 会 的 影 響 よ り 仲 間 か ら の 影 響 を 受 け る 」 と し て 、 生 活 に 適 応 す る 上 で 仲 間 関 係 が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 し て い る 。 こ れ は 自 尊 感 情 の 形 成 に つ い て も 例 外 で は な い 。 例 え ば 、 思 春 期 の 子 ど も の 自 尊 感 情 の 研 究 で 、 自 尊 感 情 と 結 び つ く 最 も 基 本 的 な 要 因 と し て は 、「 重 要 な 他 者 」に よ る 関 心 、受 容 、尊 重 だ と さ れ て い る( Coopersmith、1967)。 蘭 ( 1992) は 、 子 ど も の 自 尊 感 情 は 子 ど も 同 士 の 対 人 関 係 に よ っ て 影 響 さ れ る と 述 べ て い る 。 他 の 研 究 で も 、 仲 間 関 係 を 通 し て 、 対 人 関 係 の 能 力 や 精 神 的 健 康 さ 、 ま た 役 割 取 得 能 力 を 学 習 す る こ と が 、 自 尊 感 情 の 形 成 に 大 き な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か に さ れ て い る ( 遠 藤 、 井 上 、 蘭 、 1992) 。 さ ら に 、 滝 ( 2004) は 、 日 本 の 子 ど も 達 の 問 題 行 動 の 背 景 に は 、 対 人 関 係 の 面 で の 未 熟 、 未 発 達 が 関 係 し て お り 、 そ れ は 、 子 ど も 達 が 他 者 と の 関 係 を 作 れ な い こ と や 、 体 験 の 乏 し さ な ど が 原 因 だ と 考 え て い る 。 そ こ で 、 他 者 と の 関 係 の 乏 し さ が 問 題 行 動 の 根 本 原 因 で 、 他 者 と の 関 係 に お い て 、 存 在 感 を 獲 得 で き て い く こ と で 問 題 行 動 の 多 く が 消 滅 し て い く と 仮 説 を 立 て 、 実 証 し て い る 。 こ の よ う に 、 滝 の 研 究 で は 、 他 者 と の 関 係 で の 自 分 が 意 味 の あ る 存 在 感 が 得 ら れ る こ と が 明 ら か に さ れ て い る が 、 そ こ に は 、 自 尊 感 情 の 形 成 が 介 在 し て い る こ と が 推 測 さ せ る と こ ろ が あ る 。 そ の 他 に も 、既 に 、Burns( 1982)は 、子 ど も の 自 尊 感 情 と 教 師 の 自 尊 感 情 と の 間 に 相 関 関 係 が あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 つ ま り 、 自 尊 感 情 の 高 い 教 師 と 心 が ふ れ あ う 機 会 が 多 い ほ ど 、 し だ い に 子 ど も 達 は 、 自 尊 感 情 を 高 め る よ う に な り 、 こ の よ う な 学 校 生 活 に お け る 自 尊 感 情 の 高 ま り と 関 連 し て 学 力 も 上 が る こ と を 実 践 的 な 研 究 で 示 し て い る 。 こ れ ら の 諸 研 究 の 研 究 の 結 果 に よ れ ば 、学 校 で 子 ど も 達 の 自 尊 感 情 を 高 め る た め に は 、 子 ど も 達 を 取 り 巻 く 友 達 、 教 師 と の 関 係 作 り が 重 要 で あ る こ と が わ か る 。

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9 Lawrence( 2006)は 、教 師 が ク ラ ス で 自 尊 感 情 を 高 め る た め の 3つ の 方 法 と し て 、① 継 続 的 に 行 う グ ル ー プ 活 動 を 行 う こ と 、 ② 個 人 的 な 自 尊 感 情 を 高 め る プ ロ グ ラ ム を 取 り 入 れ る こ と 、 ③ ク ラ ス に ポ ジ テ ィ ブ な 気 風 を 生 じ さ せ る こ と を 提 案 し て い る 。 そ し て 、 こ れ ら の 活 動 が 目 指 し て い る 目 標 は 、 自 己 を 受 容 し 、 他 者 を 尊 重 す る よ う な 肯 定 的 な 特 質 が 十 分 内 面 化 さ れ る ま で 子 ど も を 発 達 さ せ る こ と と し て い る 。 と こ ろ で 、 現 在 、 大 阪 の 学 校 現 場 の 教 育 課 題 と し て 重 要 視 さ れ る こ と は 、 児 童 の 学 力 の 向 上 を い か に し て い く か と い う こ と で あ る 。 全 国 の 小 学 校 の 学 力 学 習 状 況 調 査( 2013) の 結 果 か ら も 、 他 府 県 に 比 べ 、 学 力 が 低 下 し て い る と い う 極 め て 深 刻 な 学 力 の 実 態 が 明 ら か に な っ て お り 、 各 学 校 で 様 々 な 学 力 を 向 上 さ せ る た め の 取 り 組 み に つ い て 考 え ら れ て い る ( 2013)。 そ こ で 、 学 力 と 自 尊 感 情 の 関 連 を 検 討 し て い る 研 究 に つ い て 、 以 下 に 述 べ る 。 Daviesと Brember( 1999) は 、 自 尊 感 情 に 関 す る 8年 間 に 渡 る 横 断 的 な 研 究 を 続 け 、 そ の 結 果 、 自 尊 感 情 と 全 て の 学 力 の 得 点 と の 間 に は っ き り し た 相 関 が 認 め ら れ た と 報 告 し て い る 。 ま た 、 自 尊 感 情 が 低 い と 自 分 の 能 力 を 十 分 に 使 い き れ な い と い う 研 究 結 果 も あ

る( Rosenberg,1955;Mrak,1999;Crocker& Wolfe,2001;Galbraith& Alexander,2005)。

本 邦 で も 、 毎 日 新 聞 ( 2009) で 、 「 荒 れ た 学 校 か ら の 再 生 」 と し て 、 生 徒 に 今 の 自 分 の 学 力 の 状 態 を 知 り 、 授 業 で 考 え る 機 会 を 与 え 、 さ ら に 、 生 徒 同 士 の 「 つ な が り 」 を 強 め る 取 り 組 み を 行 っ た 結 果 、 学 力 の 向 上 が 見 ら れ た と 指 摘 さ れ て い る 。 ま た 、 学 校 教 育 に お い て は 、 学 業 達 成 場 面 で 自 尊 感 情 を 構 成 す る 要 因 の 一 つ で あ る 自 己 効 力 感 を 育 む こ と が 学 業 の 成 績 と 動 機 づ け に 影 響 を 及 ぼ す こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 ( 小 田 、 2002) Bandura( 1977)は 、自 己 効 力 感 の 変 容 の た め に は「 遂 行 行 動 の 達 成 」、「 代 理 的 経 験 」、 「 言 語 的 説 得 」、「 情 動 的 喚 起 」の 4種 類 の 体 験 が 必 要 と し て い た が 、こ の「 遂 行 行 動 の 達 成 」 と は 、 自 分 で 実 際 に 行 い 、 成 功 体 験 を も つ こ と で 、 「 代 理 的 経 験 」 と は 、 う ま く や っ て い る 他 者 の 行 動 を 観 察 し 、「 自 分 に も で き る だ ろ う 」と 感 じ る こ と で あ る 。ま た 、 「 言 語 的 説 得 」 と は 、 「 ~ が で き る 」 と い う よ う な 自 己 強 化 や 、 他 者 か ら の 説 得 的 な 暗 示 を 受 け る こ と で あ る 。 「 情 動 的 喚 起 」 と は 、 自 分 の 心 理 的 な 反 応 の 変 化 に 応 じ て 自 己 効 力 感 を 喚 起 す る こ と で あ る 。 池 田 ( 2000) は 、 こ の 「 自 己 効 力 感 」 と 学 力 に 相 関 関 係 が あ る こ と を 「 学 力 と 自 己 概 念 」 の 中 で 述 べ て い る 。 そ の 中 で 、 自 己 効 力 感 を 育 む た め の 必 要 条 件 と し て 、 「 達 成 体

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10 験 」、「 成 長 の モ デ ル 」、「 目 標 を 持 つ 」、「 周 り の 人 間 の フ ィ ー ド バ ッ ク 」の 4つ 挙 げ て い る 。 こ れ ら を 筆 者 の 受 け 止 め た 視 点 で 捉 え る と 、 ま ず 「 達 成 体 験 」 で あ る が 、 こ れ は 、 問 題 や 課 題 を 自 分 で 解 決 す る こ と が で き た と 感 じ る こ と や 、 そ れ ま で で き な か っ た こ と が で き た と 感 じ る 体 験 で あ り 、 「 自 己 効 力 感 」 の 不 可 欠 な 要 素 で あ る 。 従 っ て 、 子 ど も た ち が 問 題 や 課 題 に 向 か っ て い る と き そ れ を 解 決 で き る よ う に 教 師 は 子 ど も 達 の 支 援 を し て い く 必 要 が あ る と い え よ う 。 そ し て 、 子 ど も 達 が 問 題 や 課 題 を 解 決 で き た と き に は 、 そ の 学 習 の 取 り 組 み が 次 の 学 習 の 重 要 な 条 件 と な る と い う 意 味 づ け を し 、 そ こ ま で の が ん ば り を 肯 定 的 に 評 価 す る こ と に な れ ば 、 子 ど も た ち の 「 自 己 効 力 感 」 に 刺 激 を 与 え る と 考 え ら れ る 。 次 に 、 「 成 長 の モ デ ル 」 に つ い て は 、 「 重 要 な 他 者 」 と も な り う る 身 近 な 人 に よ る 見 本 と な る 姿 が 、 子 ど も た ち に 、 肯 定 的 あ る い は あ こ が れ と し て 捉 え ら れ れ ば 、 子 ど も た ち は 自 分 も あ あ な り た い と 考 え 同 一 化 し て い く こ と を 示 唆 し て い る 。 そ の た め に は 、 子 ど も の 身 近 に い る 他 者 自 身 が「 自 己 効 力 感 」を 持 っ て い る 必 要 が あ る こ と と な る だ ろ う 。 さ ら に 、「 目 標 を も つ 」と い う 点 で あ る が 、「 遠 い 目 標 」、「 中 く ら い の 目 標 」、「 身 近 な 目 標 」 を 持 ち 、 そ の 目 標 を 自 分 が 達 成 し て い る と 実 感 で き る な ら ば 、 そ れ は 、 「 自 己 効 力 感 」 が 培 わ れ る 大 切 な 体 験 と な る こ と を 意 味 し て い る 。 池 田 が 上 げ て い る 4つ め の 条 件 で あ る 、 「 周 り の 人 間 の フ ィ ー ド バ ッ ク 」 に つ い て は 、 子 ど も は 自 分 が し た こ と に 対 し て 、 そ の 価 値 や 意 味 が わ か ら な い こ と が あ る た め 、 周 り の 者 が 言 葉 で 評 価 を す る こ と の 大 切 さ を 意 味 し て い る 。つ ま り 、池 田( 2000)に よ れ ば 、 「 周 り の 人 間 の フ ィ ー ド バ ッ ク 」 は 、 子 ど も 達 が 自 分 の 行 為 を 的 確 に 意 味 づ け が で き る よ う に な る と い う 点 で 「 自 己 効 力 感 」 を 育 む の で あ る 。 佐 伯 ( 2003) は 、 「 自 分 が 外 界 の 変 化 を も た ら す 原 因 と な り 得 る こ と を 学 ぶ に は 、 ま ず 、自 己 の 可 能 性 に 関 し て 、現 実 的 な 眼 で 捉 え る こ と を 知 ら な け れ ば な ら な い 」と 論 じ 、 自 己 を 見 つ め な い ま ま 暗 雲 で 根 拠 の な い 見 通 し を 立 て る よ う で は 自 己 効 力 感 が 育 た な い と し て い る 。 佐 伯 の 論 ず る と こ ろ に よ れ ば 、 何 を ど れ だ け で き る の か 、 ま た で き な い の か を 適 切 に 見 極 め 、 明 確 な 自 分 な り の 目 標 を 持 つ こ と が 極 め て 重 要 と な る の で あ る 。 そ し て 、 目 標 を 目 指 し 、 た と え 、 失 敗 を し て も 耐 え 、 目 標 に 達 す る べ く 積 極 的 に 行 動 す る こ と で 、 自 己 効 力 感 が 着 実 に 育 ま れ 、 子 ど も は 外 界 に 意 欲 的 に 働 き か け 、 自 己 効 力 感 を 自 ら 高 め る 変 化 を も た ら す 主 体 と な っ て い く こ と が で き る の で あ る と い え る 。

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11 河 地 ( 2003) は 、 「 自 信 力 は ど う 育 つ か 」 の 中 で 、 「 自 己 効 力 感 」 の 高 い 子 ど も た ち は 、 「 学 校 生 活 で 一 番 大 切 な も の は 次 の ど れ か 」 と い う 質 問 に 対 し て 、 「 学 ぶ こ と 」 と 「 部 活 を や る こ と 」 の ど ち ら か を 選 ん で い る こ と を 明 ら か に し 、 目 標 や 目 的 を 持 っ て 、 何 か に 熱 心 に 取 り 組 み 、 相 応 の 達 成 を 経 験 す る こ と が 、 自 信 を 助 長 し て い る と 思 わ れ る と い う こ と を 示 唆 し て い る 。 ま た 、 授 業 中 に 質 問 を し た り 、 発 言 す る 子 ど も ほ ど 自 信 度 が 高 い こ と が 示 さ れ て い る 。 こ の よ う な 経 験 の 具 体 的 な 内 実 は 、 例 え ば 、 子 ど も の 授 業 に お け る 発 言 や 質 問 を 教 師 が し っ か り 受 容 す る こ と で 、 子 ど も が 、 自 分 が 受 け 入 れ ら れ て い る と 感 じ ら れ る よ う な 人 的 な 学 習 環 境 が 備 わ り 、 そ れ は 、 子 ど も の 授 業 へ の 積 極 的 な 参 加 を も た ら し 、 学 力 の 獲 得 が 高 め ら れ る こ と に 影 響 が 生 ず る と 予 測 さ せ る も の で あ る 。 こ の よ う に 、 従 来 の 諸 研 究 か ら は 、 学 力 の 向 上 と 自 尊 感 情 の 高 揚 と の 間 に は 強 い 相 関 的 な 関 係 が あ る こ と が わ か る 。 2 研 究 の 目 的 本 研 究 で は 、 こ れ ま で の 自 尊 感 情 に 関 す る 諸 研 究 の 成 果 を 踏 ま え 、 第 一 に 、 算 数 自 尊 感 情 尺 度 を 開 発 す る 。 第 二 に 、 学 校 で の 授 業 場 面 、 特 に 算 数 科 の 授 業 に 焦 点 を お き 、 算 数 科 の 学 力 の 伸 長 を 促 し 、 算 数 自 尊 感 情 の 高 揚 に 有 効 な 算 数 科 授 業 プ ロ グ ラ ム を 新 し く 作 成 す る 。 第 三 に 、 新 し く 作 成 し た 授 業 プ ロ グ ラ ム を 実 際 の 授 業 で 実 践 し 、 学 力 と 相 関 連 し て 、 算 数 自 尊 感 情 を 高 め 、 全 体 的 な 自 尊 感 情 に も 積 極 的 な 効 果 を も た ら す か 否 か に つ い て 検 証 す る 。 第 四 に 、 こ の よ う な 算 数 自 尊 感 情 は 学 力 の 向 上 に 寄 与 す る か に つ い て 、 実 践 的 に 検 証 す る こ と を 目 的 と す る 。 Ⅲ 研 究 1 算 数 科 自 尊 感 情 測 定 尺 度 の 開 発 一 般 に 、 個 人 の 自 尊 感 情 は 、 個 人 が 日 々 の 生 活 の い ろ い ろ な 経 験 に 対 す る 自 他 の 評 価 を 介 し て 形 成 が 進 む と い え る が 、 そ れ ら の 生 活 経 験 に 即 し た 特 殊 的 自 尊 感 情 を 測 定 す る 方 法 は 、 必 然 的 に 多 様 化 す る 。 従 っ て 特 殊 的 な 自 尊 感 情 の 測 定 結 果 は 、 個 人 の 生 活 の ど の よ う

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12 な 場 面 で 測 定 す る か に 依 存 し て い る と い う 問 題 が あ る 。 そ こ で 、 本 研 究 の 研 究 1で は 、 算 数 科 の 授 業 場 面 を 取 り 上 げ 、 算 数 科 に お け る 自 尊 感 情 を 測 定 す る こ と に し た 。 そ れ は 、 児 童 の 学 校 生 活 の 大 半 は 授 業 場 面 で 占 め ら れ て い る と み な せ る が 、 算 数 科 の 授 業 場 面 で は 他 の 教 科 の そ れ と 比 べ て 、 児 童 の 学 習 活 動 に 対 す る フ ィ ー ド バ ッ ク が 生 ず る 経 験 過 程 が 相 対 的 に 多 く あ り 、 そ の よ う な 過 程 で は 、 必 然 的 に 自 他 評 価 が な さ れ 、 児 童 が 自 尊 感 情 を 獲 得 す る 機 会 に 恵 ま れ や す い と 推 測 さ れ る か ら で あ る 。 1 研 究 1- 1 予 備 調 査 ( 1) 目 的 算 数 科 自 尊 感 情 測 定 尺 度 ( 中 ・ 高 学 年 版 ) を 作 成 す る た め の 予 備 調 査 を 実 施 し 、 本 調 査 に 使 用 す る 測 定 項 目 を 決 定 す る 。 ( 2) 方 法 1) 調 査 対 象 児 童 と 調 査 時 期 大 阪 府 下 の I小 学 校 の 4年 生 ( 男 子 52名 、 女 子 56名 ) 、 5年 生 ( 男 子 59名 、 女 子 51 名 )の 合 計 218名 の 児 童 を 予 備 調 査 の 対 象 と し た 。 ま た 、 調 査 時 期 は 予 備 調 査 の 対 象 と す る 学 校 の 年 間 指 導 計 画 を 考 慮 し 、2013年 1月 25日 の 午 前 中 の 授 業 時 間 内 と し た 。 2) 手 続 き 被 調 査 対 象 児 童 に 、 学 級 担 任 が 「 算 数 の 授 業 を 受 け て い る 時 の あ な た の 気 持 ち を 3つ 上 げ て く だ さ い 。 ま た 、 理 由 も 述 べ て く だ さ い 」と 教 示 し 、 所 定 の 用 紙 に 回 答 を 記 入 す る よ う に 求 め た 。 な お 、 回 答 記 入 用 紙 の 紙 面 は A4版( 横 長 210mm×297mm)と し 、 横 書 き で 3つ の 回 答 記 入 欄 を 設 け 、 各 欄 に は 順 次 番 号 を 1か ら 3ま で 付 け た 。 ま た 、 各 欄 に は 「 気 持 ち 」 と 「 そ の 理 由 」 を 記 入 す る 個 所 を 示 し 、 被 調 査 対 象 児 童 は 、 こ の 指 定 の 個 所 に 回 答 を 記 入 し た 。 こ の よ う な 回 答 記 入 個 所 を 設 け た の は 、 被 調 査 対 象 児 童 が 算 数 の 授 業 ( 学 習 ) に つ い て 思 い 浮 か べ る 気 持 ち の 強 さ の 順 を 、 記 入 個 所 の 番 号 順 に 反 映 さ せ る こ と が 期 待 で き る か ら で あ る 。 ( 3) 結 果 被 調 査 対 象 児 が 回 答 を 寄 せ た 「 算 数 科 の 授 業 を 受 け て い る 時 の 気 持 ち 」 に 関 す る 記 述 を 全 て カ ー ド 化( こ の カ ー ド を 気 持 ち カ ー ド 項 目 と す る )し 、 460枚 の 気 持 ち カ ー ド

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13 を 作 成 し 、 ま ず 、 「 プ ラ ス の 気 持 ち 」 ( 表 1) と 「 マ イ ナ ス の 気 持 ち 」 ( 表 2) に 分 類 し た 。 そ の 結 果 、 算 数 科 の 授 業 を 受 け て い る と き の 気 持 ち を 記 述 し て い る 気 持 ち カ ー ド は 、 プ ラ ス の 気 持 ち カ ー ド 項 目 に 281枚 、 マ イ ナ ス の 気 持 ち カ ー ド 項 目 に 179枚 と 区 分 さ れ 、 児 童 が 算 数 の 授 業 を 受 け て い る 時 は プ ラ ス の 気 持 ち の 方 が 明 ら か に 多 い こ と が わ か っ た 。 1) 回 答 の 分 類 表 1 算 数 科 の 授 業 を 受 け て い る と き の 気 持 ち - プ ラ ス の 気 持 ち 学 年 4 年 5 年 合 計 ( % ) 気 持 ち 人 数 ( % ) 人 数 ( % ) 1 た の し い 51 30.2% 37 33.0% 88 31.3% 2 わ か り や す い 36 21.3% 31 27.7% 67 23.8% 3 う れ し い 30 17.8% 22 19.6% 52 18.5% 4 お も し ろ い 20 11.8% 6 5.4% 26 9.3% 5 簡 単 10 5.9% 2 1.8% 12 4.3% 6 が ん ば ろ う と 思 う 5 3.0% 5 4.5% 10 3.6% 7 集 中 し て い る 6 3.6% 0 0.0% 6 2.1% 8 少 人 数 は い い な 5 3.0% 0 0.0% 5 1.8% 9 な る ほ ど ! と 思 う 0 0.0% 4 3.6% 4 1.4% 10 す き 2 1.2% 2 1.8% 4 1.4% 11 気 持 ち い い 1 0.6% 1 0.9% 2 0.7% 12 あ て て ほ し い 1 0.6% 1 0.9% 2 0.7% 13 す き に な り た い 1 0.6% 0 0.0% 1 0.4% 14 成 績 あ げ る ぞ 0 0.0% 1 0.9% 1 0.4% 合 計 169 100.0% 112 100.0% 281 100.0% 基 礎 統 計量

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14 表 2 算 数 科 の 授 業 を 受 け て い る と き の 気 持 ち - マ イ ナ ス の 気 持 ち 学 年 4 年 5 年 合 計 ( % ) 気 持 ち 人 数 ( % ) 人 数 ( % ) 1 む ず か し い 21 29.6% 13 12.0% 34 19.0% 2 た の し く な い ( つ ま ら な い ) 11 15.5% 12 11.1% 23 12.8% 3 わ か ら な い ( 思 い つ か な い ) 9 12.7% 11 10.2% 20 11.2% 4 め ん ど く さ い 5 7.0% 15 13.9% 20 11.2% 5 不 安 ( あ て な い で ほ し い ) 4 5.6% 9 8.3% 13 7.3% 6 早 く 終 わ っ て ほ し い ( イ ラ イ ラ す る ) 7 9.9% 5 4.6% 12 6.7% 7 う る さ い 2 2.8% 8 7.4% 10 5.6% 8 い や ( き ら い ) 3 4.2% 6 5.6% 9 5.0% 9 し ん ど い 0 0.0% 7 6.5% 7 3.9% 10 ね む い 0 0.0% 7 6.5% 7 3.9% 11 ひ ま 0 0.0% 6 5.6% 6 3.4% 12 に が て 3 4.2% 1 0.9% 4 2.2% 13 く や し い 4 5.6% 0 0.0% 4 2.2% 14 つ か れ た 2 2.8% 1 0.9% 3 1.7% 合 計 71 100.0% 108 100.0% 179 100.0% 基 礎 統 計 量

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15 表 3 算 数 科 の 授 業 を 受 け て い る 時 の 気 持 ち と そ の 理 由 プ ラ ス の 気 持 ち 理 由 ① た の し い ( 88 人 ) < 31.3% > ・ 問 題 が 解 け た と き ・ よ く わ か る 教 え 方 だ か ら ・ 何 回 も 説 明 し て く れ る か ら ・ 道 具 を 使 え た と き ・ 次 の 学 年 に 役 立 つ 勉 強 が で き た と き ・ 分 割 で い ろ い ろ な 問 題 を と い た と き ・ 好 き な 単 元 の と き ・ じ っ く り で き る か ら ・ 先 生 が 楽 し い か ら ・ わ か る と 次 に 進 め る か ら ・ 友 だ ち と 意 見 を 言 い 合 え る か ら ・ 100点 と れ た と き ・ ホ ワ イ ト ボ ー ド に 書 け た か ら ( 発 表 で き た か ら ) ・ 知 ら な い こ と を し れ た と き ② わ か り や す い ( 67 人 ) < 23.8% > ・ 先 生 の 教 え 方 が う ま い 、 て い ね い 、 ゆ っ く り ・ 質 問 し や す い か ら ・ わ か る ま で 教 え て く れ る か ら ・ 聞 き や す い ふ ん い き 、 声 だ か ら ・ 相 談 で き る か ら ・ ホ ワ イ ト ボ ー ド に か く と 友 だ ち の い ろ い ろ な 考 え が わ か る か ら ・昨 日 の 復 習 を し て く れ る か ら ・図 を か い て 説 明 し て く れ る か ら ・ 黒 板 が み や す い か ら ・ 友 だ ち の 意 見 を 聞 い て 思 っ た か ら ・ 少 人 数 の と き ③ う れ し い ( 52 人 ) < 18.5% > ・一 人 で 問 題 が 解 け た と き・わ か っ た と き ・自 信 を 持 っ て 発 表 で き た と き ・ 一 度 し た こ と が あ る 問 題 が で た と き ・ み ん な よ り 早 く で き た と き ・ ノ ー ト を き れ い に 整 理 で き た と き ・ そ の 場 で ま る つ け し て も ら っ た と き ④ お も し ろ い ( 26 人 ) <9.3% > ・ ど ん な 問 題 を す る の か 楽 し み だ か ら ・ 新 し い こ と を す る と き ・ 先 生 問 題 を だ し て く れ る と き ・ わ か る と お も し ろ い か ら ・ 考 え る と き ⑤ 簡 単 ( 12 人 ) <4.3% > ・ や り か た を し っ て い る と き ・ か ん た ん だ か ら ・ 得 意 だ か ら ・ 意 味 が わ か り や す い か ら ⑥ が ん ば ろ う と 思 う ( 10 人 ) < 3.6% > ・ し っ か り き こ う と 思 っ た と き ・ 成 績 上 げ る ぞ と 思 っ た と き ・ 挑 戦 し た い と 思 っ た と き ⑦ そ の 他 ・ 安 心 で き る か ら ・ わ か ら な い と き 先 生 が つ い て く れ る か ら 等

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16 マ イ ナ ス の 気 持 ち 理 由 ① む ず か し い ( 34 人 ) < 19.0% > ・ 文 章 問 題 が む ず か し い ( ど う 解 い て い っ て い い か わ か ら な い 、 説 明 が で き な い ) か ら ② た の し く な い ( 23 人 ) < 12.8% > ・ 問 題 の 意 味 が わ か ら な い か ら ・ 計 算 が ふ く ざ つ だ か ら ・ 数 字 が た く さ ん あ り す ぎ る か ら ・ 覚 え る こ と が 多 い か ら ・ 公 式 が な い と わ か り に く い か ら ・ 少 人 数 は 難 し い 問 題 多 い か ら ・ 自 分 で 解 き 方 を み つ け ら れ な い と き ③ わ か ら な い ( 20 人 ) < 11.2% > ・ ち ゃ ん と き い て も わ か ら な い と き ・ き き の が し た と き ・ 新 し い 問 題 の と き ・ 一 人 で と く と き ・ 国 語 力 が な い と き ④ め ん ど く さ い ( 20 人 ) < 11.2% > ・ 問 題 量 が お お い と き ・ 図 を う つ す と き ・ 計 算 が わ り き れ な い と き ・ 教 科 書 を よ む と き ⑤ 不 安 ( 13 人 ) < 7.3% > ・ 今 日 は ど ん な こ と を す る の だ ろ う か ・ ・ ・ ? と 思 う と き ・ 次 は ど ん な こ と を す る の か と 思 う と き ・ ま ち が っ て い た ら い や だ と 思 う と き ・ あ た っ た ら ど う し ょ う と 思 う と き ・ で き な か っ た ら は ず か し い と 思 う と き ⑥ 早 く 終 わ っ て ほ し い ( 12 人 ) < 6.7% > ・ 毎 日 あ る か ら ・ ノ ー ト に 書 く こ と 多 い か ら ・ 集 中 で き な い か ら ⑦ そ の 他 ・ ひ ま だ か ら 、 ね む い か ら 、 く や し い か ら 、 う る さ い か ら 等 算 数 科 の 授 業 の 対 す る 気 持 ち の 理 由 に つ い て は 表 3の よ う に な る 。 ま ず 、 算 数 科 の 授 業 に 対 す る プ ラ ス の 気 持 ち で は 、 4、 5年 の 結 果 を 合 わ せ る と 、 表 1か ら も わ か る よ う に 、「 楽 し い 」( 88人 )< 31.3% > 、「 わ か り や す い 」( 67人 )< 23.8% > 、「 う れ し い 」( 52人 )< 18.5% > 、「 お も し ろ い 」( 26人 )< 9.3% > 等 が 多 か っ た 。 理 由 と し て 、 表 3の よ う に 、「 よ く わ か る 教 え 方 だ か ら 」、「 て い ね い だ か ら 」、「 聞 き や す い ふ ん い き 、 声 だ か ら 」、「 質 問 し や す い か ら 」等 、 教 師 に 対 し て の 気 持 ち と 、 「 友 だ ち と 意 見 を 言 い 合 え る か ら 」 、 「 相 談 で き る か ら 」 と 友 だ ち と の 交 流 を 求 め る 気 持 ち 、 そ し て 、 「 一 人 で 問 題 が 解 け た と き 」 と 自 分 自 身 が で き た と 感 じ た 時 に プ ラ ス の 気 持 ち を 抱 く よ う に な る こ と が わ か っ た 。

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17 一 方 、 算 数 科 の 授 業 に 対 す る マ イ ナ ス の 気 持 ち は 、 表 1の 場 合 と 同 様 な 統 計 的 処 理 を す る と 、 表 2の よ う に 、 「 む ず か し い 」 ( 34人 ) < 19.0% > 、 「 楽 し く な い 」 ( 23 人 ) < 12.8% > 、 「 わ か ら な い 」 ( 20人 ) < 11.2% > 、 「 め ん ど く さ い 」 ( 20人 ) < 11.2% > 、 「 不 安 」 ( 13人 ) < 7.3% > 等 で あ っ た 。 そ の 理 由 と し て は 、 「 文 章 問 題 が む ず か し い か ら 」 、 「 ど う 解 い て い っ て い い か わ か ら な い か ら 」 、 「 計 算 が 複 雑 だ か ら 」 、 「 自 分 で 解 き 方 を 見 つ け ら れ な い と き 」 、 「 説 明 が で き な い か ら 」、「 ち ゃ ん と き い て も わ か ら な い と き 」等 が 上 げ ら れ て い た 。 2) 質 問 項 目 の 選 定 次 に 、 こ れ ら の プ ラ ス と マ イ ナ ス の 気 持 ち の 区 分 け の そ れ ぞ れ に 属 す る 気 持 ち 項 目 の カ ー ド に つ き 、 意 味 ・ 内 容 の 類 似 す る 項 目 を 細 分 し て ま と め 、 1 ) で 明 ら か に な っ た 算 数 科 の 授 業 の 気 持 ち の 実 態 も 考 慮 に 入 れ て 、 予 備 調 査 で 得 ら れ た 全 回 答 360項 目 よ り 、 そ の 8% に 相 当 す る 30項 目 を 最 終 的 に 選 定 し 、 本 調 査 に 用 い る 質 問 項 目 を 決 定 し た 。 こ の 選 定 作 業 に よ り 取 り だ さ れ た 質 問 項 目 は プ ラ ス の 気 持 ち 項 目 は 28項 目 ( 9% ) 、 マ イ ナ ス の 気 持 ち 項 目 は 2項 目 ( 1% ) と な っ た 。 な お 、 質 問 項 目 に 関 す る こ れ ら 一 連 の 分 類 、 抽 出 、 選 定 に あ た っ て は 、 発 達 ・ 臨 床 を 専 門 と す る 大 学 院 教 員 1名 と 児 童 保 育 研 究 科 に 在 籍 す る 大 学 院 生 3名 の 協 力 を 得 て 、 合 わ せ て 5名 に よ り K J 法 を 用 い そ の 作 業 を 進 め た 。 2 研 究 1- 2 本 調 査 ( 1) 目 的 算 数 自 尊 感 情 を 測 定 す る た め の 尺 度 を 構 成 す る 項 目 を 決 定 し 、 算 数 自 尊 感 情 測 定 尺 度 を 完 成 す る 。 ( 2) 方 法 1) 調 査 対 象 児 童 と 調 査 時 期 大 阪 府 下 の H小 学 校 に 在 籍 す る 4年 生 108名( 男 子 45人 、 女 子 63人 )を 対 象 に 、 2013 年 3月 14日 の 午 前 中 の 授 業 時 間 内 に 本 調 査 を 実 施 し た 。 2) 調 査 材 料 予 備 調 査 で 選 定 し た 30項 目 か ら な る 質 問 紙 を 使 用 し た 。 な お 、 選 定 し た 項 目 を 表 記 す る 場 合 、 「 ~ で す か 」 の よ う に 質 問 の 方 式 を 取 る と 、 回 答 を す る 際 に 質 問 内 容 が 過 剰 に 意 識 さ れ 、 そ の た め に 回 答 に 偏 り が 生 じ る 恐 れ が

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18 あ る た め 、 全 て 叙 述 の 方 式 を 取 っ た 。 質 問 項 目 に つ い て は 、 予 備 調 査 で 得 ら れ た 児 童 の 自 由 記 述 に よ る 回 答 の 表 現 を 、 で き る だ け そ の ま ま 使 い 、 児 童 が 、 十 分 に 理 解 で き る よ う 配 慮 し て 質 問 項 目 を 決 め た 。 表 4 学 習 ア ン ケ ー ト 1 計 算 問 題 は す き で あ る 2 わ か り や す い 教 え 方 で あ る 3 算 数 の 授 業 は よ く わ か る 4 授 業 で 友 だ ち と 意 見 を 交 流 で き る 5 文 章 問 題 は 得 意 で あ る 6 好 き な 単 元 が あ る 7 い ろ い ろ な 問 題 を 解 く こ と が で き る 8 授 業 で は 勉 強 が わ か り や す い 工 夫 が し て あ る 9 質 問 し や す い 雰 囲 気 で あ る 10 わ か ら な い と き は 先 生 に 相 談 で き る 11 授 業 で 友 だ ち と 意 見 を 交 流 で き る と わ か り や す い 12 問 題 が 解 け る ま で あ き ら め な い 13 少 人 数 ク ラ ス に す る と わ か り や す い 14 自 信 を 持 っ て 発 表 す る こ と が 多 い 15 み ん な よ り 早 く 問 題 が 解 け る 16 自 分 の 意 見 を 説 明 で き る 17 ど ん な 問 題 を す る の か た の し み 18 難 し い 問 題 が 解 け る 19 図 を 描 い て 説 明 す る と わ か り や す い 20 算 数 の 問 題 は 簡 単 だ 21 友 だ ち の 意 見 を 聞 く と わ か る 22 し っ か り 話 を 聞 こ う と 思 う 23 算 数 の 問 題 に 挑 戦 し た い 24 公 式 が あ る と 解 き や す い

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19 25 一 人 で 問 題 が 解 け る 26 授 業 で 発 表 が で き る 27 教 科 書 を 読 む の は た の し い 28 算 数 の 授 業 は 楽 し み 29 が ん ば っ た こ と を 先 生 は ほ め て く れ る 30 算 数 の 成 績 に 満 足 し て い る 3) 手 続 き 被 調 査 児 童 に 回 答 を 求 め る 際 に は 、 一 定 の 回 答 用 紙 を 作 成 し 、 ク ラ ス 単 位 で 担 任 が 質 問 紙 の 30項 目 に 付 き 1項 目 ず つ 項 目 を 順 次 読 み 上 げ 行 っ た 。 30項 目 に 対 し て は 、 「 あ て は ま ら な い ( 1点 ) 」 、 「 ど ち ら か と い う と あ て は ま ら な い ( 2点 ) 」 、 「 ど ち ら か と い う と あ て は ま る ( 3点 ) 」 、 「 あ て は ま る ( 4 点 )」と そ れ ぞ れ 配 点 す る 4件 法 で い ず れ か の 選 択 肢 に ○ 印 を つ け る こ と に よ り 回 答 を 求 め た 。 な お 、 尺 度 構 成 に 使 用 す る デ ー タ に つ い て は 、 108名 の 被 調 査 児 童 の 内 、 回 答 に 不 備 の あ っ た 20名 を 除 き 、 回 答 を 使 用 す る 被 調 査 児 童 数 ( n ) は 、 88名 と な っ た 。 ( 3) 結 果 算 数 科 の 授 業 に お け る 特 殊 的 な 自 尊 感 情 を 測 定 す る 尺 度 を 構 成 す る 因 子 を 求 め る た め に 、 以 下 の 手 続 き に よ り 因 子 分 析 を 実 施 し た 。 ま ず 、 作 成 し た 30項 目 に 対 し て 主 因 子 法 に よ る 因 子 分 析 を 行 っ た 。 固 有 値 の 変 化 と 因 子 解 釈 の 可 能 性 を 考 慮 し て 、 3因 子 が 妥 当 で あ る と 考 え ら れ た 。 そ こ で 、 3因 子 を 仮 定 し て バ リ マ ッ ク ス 回 転 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 十 分 な 負 荷 量 を 示 さ な か っ た 11 項 目 を 分 析 か ら 除 外 し 、 19 項 目 か ら な る 算 数 自 尊 感 情 尺 度 を 決 定 し た 。 そ の 結 果 は 、 表 4に 示 す 通 り と な っ た 。

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20 表 5 算 数 科 自 尊 感 情 測 定 尺 度 の 因 子 分 析 の 結 果 ( バ リ マ ッ ク ス 回 転 ) (n =88) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ 意 欲 因 子 ( α = .85) 1 算 数 の 授 業 は 楽 し み だ .74 .06 .07 2 し っ か り 話 を 聞 こ う と 思 う .63 .07 .24 3 教 科 書 を 読 む の は た の し い .61 .27 .09 4 わ か ら な い と き は 先 生 に 相 談 で き る .60 .02 .29 5 ど ん な 問 題 を す る か 楽 し み だ .55 .37 .22 6 公 式 が あ る と 解 き や す い .50 .37 .26 7 授 業 で 友 だ ち と 意 見 を 交 流 で き る と わ か り や す い .49 .12 .30 8 一 人 で 問 題 が 解 け る .44 .19 .41 9 が ん ば っ た こ と を 先 生 は ほ め て く れ る .43 .33 .42 Ⅱ 解 決 因 子 ( α = .85) 10 友 だ ち の 意 見 を 聞 く と わ か る .07 .76 .27 11 い ろ い ろ な 問 題 を 解 く こ と が で き る .11 .74 .12 12 難 し い 問 題 が 解 け る .47 .68 -.11 13 授 業 で 発 表 が で き る .18 .67 .09 14 計 算 問 題 は す き で あ る .07 .63 .30 15 自 分 の 意 見 を 説 明 で き る .49 .51 .02 Ⅲ 理 解 因 子 ( α = .71) 16 算 数 の 成 績 に 満 足 し て い る .11 .30 .66 17 わ か り や す い 教 え 方 で あ る .24 .00 .64 18 算 数 の 授 業 は よ く わ か る .08 .45 .54 19 授 業 で は 勉 強 が わ か り や す い 工 夫 が し て あ る .26 .07 .54 因 子 抽 出 法 : 主 因 子 法 回 転 法 : Kaiser の 正 規 化 を 伴 う バ リ マ ッ ク ス 法

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21 因 子 分 析 の 結 果 よ り 、 表 4の よ う に 、 第 Ⅰ 因 子 は 、 「 1 算 数 の 授 業 は 楽 し み だ 」 、 「 2 し っ か り 話 を 聞 こ う と 思 う 」、「 3 教 科 書 を 読 む の は 楽 し い 」、「 4 わ か ら な い と き に は 先 生 に 相 談 で き る 」 、 「 5 ど ん な 問 題 を す る か 楽 し み 」 、 「 6 公 式 が あ る と 解 き や す い 」 、 「 7 授 業 で 友 だ ち と 意 見 を 交 流 で き る 」 、 「 8 一 人 で 問 題 が 解 け る 」 、 「 9 が ん ば っ た こ と を 先 生 は ほ め て く れ る 」 の 9項 目 で 構 成 さ れ て お り 、 児 童 が 意 欲 的 に 授 業 に 取 り 組 む こ と に 関 す る 項 目 が 高 い 負 荷 量 を 示 し て い た た め 、 算 数 の 学 習 へ の 「 意 欲 」 因 子 と し た 。 第 Ⅱ 因 子 は 、 「 10 友 だ ち の 意 見 を 聞 く と わ か る 」 、 「 11 い ろ い ろ な 問 題 を 解 く こ と が で き る 」 、 「 12 難 し い 問 題 が 解 け る 」 、 「 13 授 業 で 発 表 が で き る 」 、 「 14 計 算 問 題 は す き で あ る 」、「 15 自 分 の 意 見 を 説 明 で き る 」の 6項 目 で 構 成 さ れ 、 問 題 を 解 決 す る こ と に 関 わ る 項 目 が 高 い 負 荷 量 を 示 し て い る た め 、 「 解 決 」 因 子 と し た 。 第 Ⅲ 因 子 は 、 「 16 算 数 の 成 績 に 満 足 し て い る 」 、 「 17 わ か り や す い 教 え 方 で あ る 」 、 「 18 算 数 の 授 業 は よ く わ か る 」 、 「 19 授 業 で は 勉 強 が わ か り や す い 工 夫 が し て あ る 」、 の 4項 目 で 構 成 さ れ 、 授 業 を 理 解 す る こ と に 関 わ る 項 目 に 高 い 負 荷 量 が 認 め ら れ た の で 、 「 理 解 」 因 子 と し た 。 以 上 の 因 子 分 析 を 経 て 作 成 し た 算 数 自 尊 感 情 測 定 尺 度 は 、 表 6の 通 り で あ る 。 表 6 学 習 ア ン ケ ー ト 1 教 科 書 を 読 む の は 楽 し い 2 授 業 で 友 だ ち と 意 見 を 交 流 で き る と わ か り や す い 3 公 式 が あ る と 解 き や す い 4 が ん ば っ た こ と を 先 生 は ほ め て く れ る 5 自 分 の 意 見 を 説 明 で き る 6 い ろ い ろ な 問 題 を 解 く こ と が で き る 7 わ か り や す い 教 え 方 で あ る 8 一 人 で 問 題 が 解 け る 9 し っ か り 話 を 聞 こ う と 思 う 10 ど ん な 問 題 を す る の か 楽 し み だ

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22 11 算 数 の 授 業 は 楽 し み だ 12 計 算 問 題 は す き で あ る 13 友 だ ち の 意 見 を 聞 く と わ か る 14 算 数 の 成 績 に 満 足 し て い る 15 授 業 で 発 表 が で き る 16 わ か ら な い と き は 先 生 に 相 談 で き る 17 算 数 の 授 業 は よ く わ か る 18 授 業 で は 勉 強 が わ か り や す い 工 夫 が し て あ る 19 難 し い 問 題 が 解 け る こ の 新 し く 作 成 し た 算 数 自 尊 感 情 測 定 尺 度 の 信 頼 性 と 妥 当 性 を 検 討 し た と こ ろ 、 次 の 結 果 を 得 た 。 ま ず 、 本 尺 度 の 信 頼 性 を 検 討 す る た め 、 各 因 子 の α 係 数 を 算 出 し た と こ ろ 、 「 算 数 の 学 習 へ の 意 欲 」 因 子 で は α = .85 、「 解 決 」因 子 で は α = .85、「 理 解 」因 子 で α = .71と 本 尺 度 の 信 頼 性 が 支 持 さ れ る の に 、十 分 な 値 の α 係 数 が 得 ら れ た 。 よ っ て 、 本 尺 度 の 信 頼 性 が 認 め ら れ た と い え る 。 つ い で 、 本 尺 度 の 妥 当 性 を 調 べ る た め に 、 基 準 尺 度 と し て Rosenbergの 自 尊 感 情 尺 度 を 使 用 す る こ と に し た 。 本 研 究 2-1で 基 準 尺 度 と し て 用 い た 、 Rosenberg( 1965) の 自 尊 感 情 尺 度 は 、 日 本 語 版 ( 桜 井 茂 男 訳 ) を 小 学 校 中 ・ 高 学 年 向 き に 改 訂 し た も の で あ る 。 な お 、 質 問 項 目 を 小 学 生 に と っ て 、 で き る だ け わ か り や す い 表 現 に 変 更 す る 作 業 は 、 本 研 究 の 指 導 教 員 と 大 学 院 生 6名 の 協 力 を 得 て 行 っ た 。 ま た 、 Rosenberg自 尊 感 情 尺 度 の 原 尺 度 は 、 10項 目 で 構 成 さ れ て お り 、 逆 転 項 目 が 5項 目 含 ま れ て い た が 、 逆 転 項 目 の 中 の 否 定 的 な 言 葉 で 問 う こ と に よ り 、 児 童 に 、 否 定 的 、 消 極 的 な 感 情 を 抱 か せ る こ と も 想 定 さ れ た た め 、 こ れ ら の 逆 転 項 目 に つ い て は 、 さ ら に 逆 転 の 変 更 を 加 え る 教 育 的 な 配 慮 を 行 っ た 。 「 あ て は ま る ( 4点 ) 」 、 「 す こ し あ て は ま る ( 3点 ) 」 、 「 あ ま り あ て は ま ら な い ( 2点 ) 」 、 「 ぜ ん ぜ ん あ て は ま ら な い ( 1点 ) 」 の 4段 階 評 定 を 用 い た 。 各 質 問 項 目 内 容 は 、 表 7に 示 し た 。

参照

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