• 検索結果がありません。

イノベーション概念の再考ー日本政府の政策方針を素材としてー

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "イノベーション概念の再考ー日本政府の政策方針を素材としてー"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

イノベーション概念の再考

─日本政府の政策方針を素材として─

明 石 芳 彦

1 .はじめに 「破壊的イノベーション」と呼ぶに相当する社会的インパクトを生み出すことや、それに 基づく経済成長を期待した表現が、近年の『科学技術白書』にしばしば明記されている。し かし、経済を成長させるイノベーションを促進しよう、という日本政府の見解において、イ ノベーションを目標や手段とみなし短期的に経済成長を実現する考え方には、イノベーショ ンに対する誤解と誤った期待が背景にある。政策的関心にかかわる現実とイノベーション概 念との対応や関連付けを整理する必要があると考える。 安倍内閣での「民間投資を喚起する成長戦略」の中心的な柱である「イノベーションの実 現」に向けた政策は、民間企業によるイノベーション創出がうたわれ、2013年の『科学技術 白書』では「イノベーションの基盤となる科学技術」と表現されていたが、2018年『科学技 術白書』では「イノベーションの担い手である、大学、公的研究機関、産業界が共創し」「新 しい市場を開拓しつつ目覚ましい成長を遂げる」という表現になった1)。さらに、「基礎研究 を淡々と行うのではなく、戦略的に破壊的イノベーションを実行するときで、その典型例は 1) 2013年は、平成25年度『科学技術白書』副題名、2018年は、平成30年度『科学技術白書』冒頭大臣挨拶 部分と14ページによる。   なお、イノベーション創出総合戦略を策定したのは小泉内閣(2006年 9 月)であり、安倍内閣は、その 路線を踏襲していると解釈できる。この間の日本の科学技術・イノベーション政策には、アメリカの制度・ 機構を取り込む側面も強かった。1998年、新技術創出促進法(中小企業技術開発推進事業)は日本版 SBIR(中 小企業イノベーション推進事業)と命名された。また、アベノミクスの第 3 の矢「民間投資を促す成長戦略」 のうち、「戦略市場創造プラン」(2013年)の 1 つとして医療研究の司令塔を日本版 NIH(国立衛生研究所) と呼んだ。そして、2019年 7 月には、暮らしや産業を一変させる可能性を秘める「破壊的イノベーション」 を生むための「ムーンショット型研究支援」を DARPA(国防総省高等研究計画局)日本版と呼んだ。 1.はじめに  2.三局面で見るイノベーション概念の再検討  3.イノベーションと事業的成功・社会的影響に関する検討 4.経済成長論での技術進歩の扱い 5.イノベーション類型と経済成長に関する考察 6.結びに代えて

(2)

AI だ」。世界の研究開発は、あたかも工場管理のごとく、しかも柔軟に管理されている。日 本も基礎研究力の強化に加えて、Society5.0と第 4 次産業革命に突進すべきであるという見 解が新年度科学技術関連重点政策の説明会の場で公言された2)。実際、2019年、研究開発から 実装までの一気通貫型の「ムーンショット」型政策で破壊的イノベーションを実行するとい う政策が出た。日本政府もかなり具体的な成果を求めているとわかる。 新商品の爆発的売れ行きで経済成長がもたらされるという期待や新商品が既存経済シス テムを変革するという理解は、過度の期待というだけでなく、「ないものねだり」の類に近 い。また、経済成長をけん引する「破壊的イノベーション」を生む科学・技術成果の創出に向 けて大学等がもっと積極的に取り組むべきだという意見もイノベーション概念やイノベー ションを生み出す活動やプロセスに関する実態を誤解していると言わざるを得ない。 本稿では、「破壊的イノベーション」3)を含め、昨今、多義的に用いられているイノベーショ ン概念をいくつかに類型化し、その論点整理を通じて、錯綜した議論をただすことを目的と する。以下では、第 1 に、研究開発(R&D)・イノベーション・事業競争について図 1 で示し た研究成果と先行的事業化とその影響(事業的成功)の関係を再検討し、それらの理論的・ 概念的理解と、産業政策的な捉え方をレビュー風に振り返る。その結果を踏まえて、第 2 に、 日本政府の科学技術・イノベーション政策と経済成長、生産性向上、(技術的)イノベーショ ンとの関連性について含意を整理する。 2) 日本において、実験室での発見・発明は限りなくあるが、日本の研究開発はマネジメントになっていな いという見解もある(赤石浩一内閣府政策統括官の講演『MOT活動報告』 vol.52)。 3) 「破壊的イノベーション」という表現はクリステンセンから普及した用語法だと思われるが、彼は disruptive technology とみなされる技術がローエンド市場領域に「まったくの新規なもの、既存商品の代 替物」として入り込み、それが既存の支配的な技術を侵食していくと述べた(Christensen [1997] pp.213-214)。彼が提示した概念(disruption)は、新技術が既存の支配的技術の周辺部分や低価格帯から入り込み、 徐々に活動領域を広げていき、最終的には高価格帯にまで広げて全体の構造を変えてしまうという見方で あり、短期間に一気に既存市場秩序を破壊し、変革する内容ではない。結果だけを見ると、「破壊的イノベー ション」は従来、画期的(quantum leap)イノベーションまたは「ラディカル・イノベーション」などと 呼ばれていたもの(Utterback [1996] p.158以降)に相当するだろうが、それは既存技術の価値を段階的 に破壊するプロセスに関わる。シュンペーター自身は産業活動の進化的変化と述べたが、「破壊的イノベー ション」を創造的破壊という用語と並べて表現することは誤解を招きやすいと思われる。

1 「イノベーション」と事業的成果

研究・技術 開発活動 事業化 科学・技 術成果 経済 成長 新商品の 爆発的販売 新市場・事業の創造 初めての事業化 (イノベーション) 破壊的イノベーション 新規商品・方法の普及と 社会的影響 研究開発上の イノベーション 出所)筆者作成。 図 1  「イノベーション」と事業的成果

(3)

2 .三局面で見るイノベーション概念の再検討 ⑴ 研究・開発と事業は一直線か。 研究・開発と事業の関係をどのように捉えるべきか。アメリカの化学企業デュポンが社内 研究所の活動をへてナイロンを発明し、巨額の利益を得た。その成功事例を見て、少なから ぬアメリカ企業は、新技術を生み出すための投入活動として研究を行えば、研究活動の産出 成果として新技術やそれに裏付けられた新事業や利益が得られる、つまり、研究・開発活動 が画期的製品等を創造すると大なり小なり考えた。研究・開発活動と大きな事業的成果の関 係が単線的に結びつく状態を線形(リニア)の関係といい、研究・開発とイノベーションの 「線形モデル(linear model)」と呼ぶ。 図 2 には、リニアモデル(研究・開発と事業が一直線の関係にあるという見解)に対応さ せて、研究・開発から生産までの関係をイメージ的に示している。しかし、実際には、研 究・開発の成果を活用して、生産規模をそのまま拡大することが事業上の先行者利益を生み 出すのは、(化学、医薬品、農薬など)新しい化合物などの発見が事業の優位性に結びつく場 合に限られた。あるいは、基本特許の取得が競争上、きわめて有利となるような産業技術的 特性をもつ場合にしか成立しないと次第に明らかとなった。 他方、機構・組み立て系事業では、線形の関係が存在しているとはいえず、事業化のプロ セスは簡単には進まない。単線型ではないイノベーションのモデルとして要因間の相互作用 が反復する連鎖結合(chain linked)型モデルも提案された4)。フロリダとケニーは、イノ ベーションは「科学的・技術的ブレークスルーと同義ではないことを認識しなければならな い」「既存製品の漸進的イノベーションは、パフォーマンス、信頼性、品質を高めることが重 要だ」と述べた(Florida and Kenney[1990]pp.10-11)。

2 シュンペーターが言うイノベーション概念の確認  シュンペーター[1951]は、3 つの関連著作の第 1 冊目で、新規の製品・サービス、生産 方法、材料や部品、販路や販売方法が生み出されること、および、(百貨店、協会組織、分業 体制など)新しい組織が登場することを、既存の生産物、生産要素、生産方法、生産工程の 新たな組み合わせ(新結合)と呼んだ。そして、これらの新しい変化が経済活動や市場競争 4) クライン[1992]参照。明石[2002]も参照のこと。

2 研究・開発と事業は一直線か

開発 (試作) 研究 事業化 (量産)準備 発売 企業研究所 修正・改良 販売 促進 科学と技術の進展 研究開発成果の「最初の事業化」 大学・研究機関等 要素技術→ 中間財→最終財 出所)筆者作成。 図 2  研究・開発と事業は一直線か

(4)

に影響を及ぼし、結果として、経済的な発展・進化(evolution)をもたらすと述べた。彼は 次の著作で、新結合を行うことをイノベーションと呼んだ(Schumpeter[1939]p.88)5) 彼は 2 冊目の著作で、従来と異なるやり方でことを進めること、投入物と産出物の新しい 関係を樹立する(経済学用語では、新たな生産関数を構築する)ことをイノベーションと呼 んだ。彼はその条件として、「やり遂げる」意思や、イノベーションを生み出すのは、起業家 と呼ばれる「新しい人々」によるリーダーシップの登場だと、起業家の役割を具体的・系統 的に論じた6)。ただし、彼はこの段階では、投資活動に伴う新しい商品の登場やそれに付随 する既存商品の陳腐化など、イノベーションを通じた経済変動(または景気循環)への影響 を中心に論じていた(Schumpeter[1939])。 彼の 3 冊目の著作では、新しい商品や技術など、不連続だがイノベーションが周期的に登 場した結果、既存の商品・市場秩序や経済システムが破壊され、それらにとってかわられて いく実態を「創造的破壊」と名付けた。シュンペーターは、第 2 冊目の著作では、新しいこ とを「初めて事業化」(新規発売)する試み、あるいは、挑戦的行動や変化を起こすこと自体 に着目したが、第 3 冊目の著作では、新規の製品や技術が既存システムを破壊し、既存の製 品・サービス、方法に代替し、生産・就労・生活の様式や形態に影響を及ぼす状況を「創造 的破壊」と表現したのである(Schumpeter[1950]p.83)。 その後、ビジネス的成功をもくろむ企業の新規事業やイノベーションへの取り組み方に関 する事業経営方式の実務的見解が無数に生まれた。一方、経済学では、民間企業の技術革新 への取り組みやその市場での普及の仕方、一国の技術力(技術開発力)を維持する産業政策、 技術変化が市場での経済活動に影響を及ぼすことなどに関する公共政策の在り方などの研 究が進んだ7)。とはいえ、定型的な生産活動として説明しにくい起業家活動やイノベーショ ンを、経済理論における企業行動の中心とみず、起業家が新しい経済的成果を市場に持ち込 んだ後の状況、つまりイノベーションの市場競争への影響を主たる考察対象(関心事)とし てきた。そこでは、イノベーションは生産費用曲線の低下を引き起こす外生的な攪乱要因と みなされていた8)。その意味で、イノベーションや技術革新に関する研究は、独立した領域 のごとく切り離されていた面もある。 さて、イノベーションという用語の意味にも、1)研究・技術的な新規物を生み出すこと、 2)その新規物の市場販売を開始すること、3)市場販売物が事業的に成功し、既存の市場競 争状態に影響を及ぼすこと、という少なくとも 3 つの局面として捉えることができる(明石 5) シ ュ ン ペ ー タ ー は 原 著( ド イ ツ 語 版 ) で は Neuerungen ( 革 新 ) と 表 現 し て い た( , 1931, p.100)。英訳者オピー(R. Opie)はそれを innovation と翻訳した (Schumpeter [1951] p.65)。 6) 経済学用語でいう「新しい生産関数の導入」と表現している。それと同時に、イノベーションとは「他 者と違うことを行う」、そしてそれをやり遂げる(新アイデアの試行と、意図の実現)とも述べている。   なお、日本では『経済白書』昭和31年版、34,38ページでの表現を契機に、現在に至るまで、技術革新 という訳語表現がもっとも広く使われている。シュンペーター『経済発展の理論』邦訳書の解説欄には「新 機軸」という用語も出てくる。

7) 体系的な概説書だけを例示すると、Nelson, Peck, and Kalachek [1967]、Mansfield [1968a][1968b] な どがある。

8) 筆者も従来見解に従い説明した(明石[1995/2003])。なお、成長理論での技術進歩率はイノベーション というよりも技術進歩であるが、その扱いは後述する。

(5)

[2002]p.17)9)。だが、3 つの次元でのイノベーションの捉え方に応じて、それぞれの意味合 いは異なるので、論者がそのいずれの意味でのイノベーションを論じているかを明確にしな いと、議論は相互にかみ合わず、しばしば混乱する。 以下ではイノベーション概念を 3 つの次元・局面で捉えて、それぞれに対応させて内容や 特徴を再検討し、その 1 つひとつの内容と実態的特徴を突き合わせ、整理したうえで、「イ ノベーション政策」の意味を論じる。 3 大学や研究機関におけるイノベーション要素の創出 大学や研究機関におけるイノベーション創出を目指す取り組みや活動の結果、画期的な研 究成果または科学・技術的な新規物を生み出すことが望まれている。科学的・技術的次元で のイノベーションを生み出すという立場(第 1 の局面)から日本の現状を論じる人は、たと えば、現在日本の研究条件の悪化に着目する。つまり、大学研究費や論文数は GDP と相関 しているので、日本の大学研究費の傾向的減少は大学の研究活動や研究能力を低下させ、論 文数の減少につながってくるとともに、日本経済の将来に悪影響を及ぼすという論旨である (最近では豊田[2019]が代表的である)。豊田は、日本の研究・開発費(支出額)の大半を 占める企業の研究・開発費については必ずしも論じないが、大学研究活動を国の特許数の減 少とも関連付けて論じている。それはリニアモデルの見方に近いが、豊田が著書の副題に挙 げたとおり、関心は「研究力」である。 大学等からイノベーションの「種」が輩出されることを強調するので、大学研究費の減少 が大学の研究活動、研究能力を低下させ、将来の研究成果が減少し、競争力の低下(産業競 争力指数でのランキング低下)を招くと懸念を表明する。 4 技術要素の蓄積と事業化に向けた取組み 筆者の考えでは、特許は研究活動の成果だが、連続する生産プロセス(技術進歩やイノ ベーション過程全体)のなかでは、新しい知識や研究・技術の成果はほとんどすべて中間生 産物に過ぎないのではないだろうか(明石[2002]15ページ)。デュポンでカロザースがナイ ロンを開発した経験から、研究開発活動と特許と製品等が強い相関関係にあるとみなした見 解についても、リニアモデルとはいえ、研究・技術開発活動が有用な化合物などの成果を生 むまでには一定の時間を要した。医薬品の場合だと、その後に臨床試験もあり、効果・副作 用の検証にかなり長期の時間とリスクを伴うと受け止める必要がある。そして、一国の出願 特許件数の減少は、企業の研究・開発活動が相対的に短い期間で成果を出すことを重視する 傾向を強めた結果とみる点や、事業的結果を期待できない研究・開発活動・成果には資産的 価値を認めず、一定期間を超えるとそれを不良債権とみなすという国際会計基準に由来する リスクが生じる面もある。 一方、組立系・機構系製品の場合、研究開発活動やその無数ともいえる技術開発成果が中 間生産物として蓄積されていく。図 3 に示されている通り、研究者やサプライヤー事業者の 9) 研究・開発行動など、イノベーションを生み出すまでの行動やプロセスと、その成果を事業化する取り 組み、事業化後(市場で販売を開始した後)の行動とに区分できる。事業化に至るまでの行動を、OECD and Eurostat [2018]では「イノベーション活動」と呼び、イノベーションと区別している。

(6)

新しい技術成果やその実用化(イノベーション)は 1 つひとつの部材や部品に関わり、それ は最終製品のイノベーション要素を構成していく。サプライヤーのイノベーションが完成品 供給企業の製品の特徴を顕著に変えることもあれば、それを支える 1 つの技術要素の改良に 過ぎないこともある。いずれにしても、組立系・機構系製品については、社内で、またはサ プライヤーが 1 つひとつの部材や部品、部分品を作り、それらを組み合わせて、新しい製品 や工程となっていくのである。材料、部品材料(部材)、部品、部分品を構成する技術要素に 着目する限り、それは、無数の知識の創出と技術的改良結果を蓄積した末、はじめて実現す る点を看過してはならないだろう10) また、図 4 はサービスの場合であるが、人から人へのサービスと、遠隔地の顧客に対する 機械から人へのサービス(システムを介したサービス)では、サービス内容やサービス生産 のプロセスに関わるイノベーションやその形態はかなり異なるであろう。サービス全般で は、提供サービスの内容や提供方法のイノベーションが重要となり、人の要素が強いほど、 提供方法や売り方のイノベーションが重要になると考えられる。一方、情報システムの開発 を必要とする場合は、基盤となるシステムに関わるソフトウェア、アルゴリズムの開発とと もに、基盤となるシステムに応じて、そのうえで動く実行システムや応用ソフトウェアを逐 次、大量に開発し、既存システムに追加実装していくことになる。それが提供サービスの選 択メニュー(一部のサービス内容)とその提供方法や使い勝手(速度を含む)を変えていく。 開発と事業化のプロセスは図 3 の逐次的改良のプロセスと似た状況である。 以上をまとめてみる。第 1 の局面である大学や研究機関における研究活動の成果、あるい は企業における研究開発活動で成果を出すことは、大学や研究機関で研究開発活動に取り組 10) 技術的可能性を、事業的採算性にまで引き上げるために、社内資金の投入額を象徴的に表現すれば、研 究部門(1)、企業内製品・技術開発(10)、事業化開発(100)と、研究から開発までで10倍の資金、事業 化までにさらに10倍の資金を要するという見解もある(中村[2002])。

3 研究技術開発から事業化までの過程

製品(完成品) 新しい機能、 性能、費用 事業化 研究・技術開発の成果 中間財・その組み合わせ 技術的イノベーション イノベーション新規発売 システム・ 操作方法 の変革 素材、 物質、材料 用途・使用法、ソフトウェア、方法 新しい部材、部品、 デバイス、部分品の創造 最終財

無数の変革、改良の知識の蓄積

出所)筆者作成。 図 3  研究技術開発から事業化までの過程

(7)

むなかでの大きな成果としてのイノベーションの創出という局面に相当する。だが、それ自 体は市場化のかなり前の段階の話である。本稿でいうイノベーションとは異なる。 5 「先行的な事業化」への取り組みの局面 研究・技術成果を他社に先駆けて「先行的に事業化しようとする」局面に注目するとき、 研究成果を出した第 1 局面から、それをいかにして事業化し、所定の結果(事業や利益)を 出すかが、第 2 局面では重要となる。斬新な科学的成果を速やかに事業化する仕組みの欠落 を事業化資金の問題としてだけでなく、事業化主体の欠如およびその支援政策の不適切さと 結びつけた指摘もある(山口[2016])。そこでは、学術的研究活動(や企業内開発活動)の 成果を市場に結び付けるための研究技術開発マネジメントとして、資金調達や事業経営がで きる人材の確保など、主には新興企業の課題や支援政策に関わる論点は多いが、第 1 局面か ら第 2 局面への移行は本稿の検討対象ではない。 6 初めての事業化 初めての事業化は、従来なかった製品、設備、方法、サービスの市場販売開始(新発売・ 導入)ではあるが、「初めての発売」というイノベーションの定義は、無条件には、ビジネス の上での事業的成功を意味しない。それは、他社に先駆け、自社内か提携企業が開発に成功 したものを、他社に先駆けて市場発売するという意味である。事業化した結果(事業を始め た結果)は、①よく売れ、大きな影響を生んだ。②多少は売れたが大きな影響はなかった。 あるいは、③それは売れなかった。要するに、売れるときも売れないときもあり、結果は事 前にわからないことが多いのである。つまり、先行的市場化、あるいは、先行的市場投入・ 商業事業化という行為に過ぎないのである。初めての事業化は、事例としては話題を呼ぶか もしれない。また、最初に事業化したという名誉を得るものだが、話題づくりよりも、事業 の採算性が実現されなければ、事業上の成功者は他の組織となってしまう。

4 サービス開発から事業化までの過程

人から人へ 新機能、機能高度化 事業化 研究・技術開発 システムから人へ システムを介したサービス サービス 提供開始 サービス実現方法の変革 新しいアイデア ソフトウェア 提供支援体制 サービス提供形態 サービスパーツ 提供体制の整備 出所)筆者作成。 図 4  サービス開発から事業化までの過程

(8)

そもそも、事業化とは、市場で新規に事業を始めること、つまりは発売を開始することで ある。新規発売は第 2 局面の目標ではあるが、ビジネスの視点(第 3 局面の課題)から見る と、それは出発点に過ぎない。そこでは、販売促進が重要なのである。実務上または理屈上、 損益分岐点を超えるまで販売しなければ、利益は出ない。新規発売の事業を黒字にすること は事業的成功の 1 つの定義といえる。 英国の研究者グループは、「イノベーション後の事業業績」そのものを研究課題とし、 技術的イノベーションの優位性と事業展開での劣位性の関係を子細に研究したほどである (Georghiou et al. [1986])11)。ティース[1986]も、技術的な成果を他社に先行して市場販売し ても、後発企業のほうが事業的に成功する場合があり、先行的なイノベーション遂行者の利 益獲得が不十分となる事態があると指摘した。レビンら[1987]は、R&D 活動の結果から報 酬を専有できる可能性または利益専有性(appropriability)という概念を示し、それは後に 特許保有と利益・収益性の関係に結び付けて用いられることが増えた。しかし、現在の文脈 で見ると、特許と利益を結び付ける論理(イノベーションからの収益性)でさえ多様な形態 があり、特定の特許が大きな利益を生み出す事例は、化合物領域以外では少ないかもしれな い。特許は経済理論的な 1 つの指標(実際の生産プロセスでは中間生産物)ではあるが、特 許が利益に結びつくプロセスやそのメカニズムはさまざまであると言える。 以上をまとめると、新技術に基づく事業化の事業的見通しも不確実な上に、事業規模が小 さい局面において、大企業は、新しい事業を自ら推進するだけの関心を抱くこともなく、そ れに直接、関与する度合は低い。よって、新しい技術成果を事業化するプレイヤーとして、新 興の小規模企業の活動に期待が高まるのである。経済・産業政策的には、大学発ベンチャー 企業の輩出や躍進する新興企業が強調された。大学技術の民間移転制度(TLO)の設立や、 バイドール法等の整備もなされた。しかし、現実の政策に関わる論点としては、制度整備だ けではなく、誰がどのように事業化を進めるかが重要だと思われる。 R&D から大きな利益を生むには、すべてを独力で実施するか、他社にライセンス料を 払って技術を導入するかなど、社内開発活動の位置づけの変化もあった。アメリカの競争政 策としては、企業同士が共同で研究開発を実施することが反トラスト法違反でないと認めら れるのは、米国「国家共同研究法」(1984年)以降である。それ以降、共同行為の競争制限性 を「合理の原則」で捉え、R&D 資源を外部に求めること(今でいう、オープン・イノベー ション)も可能となった。 初めての事業化を含めて、市場での販売という第 3 の局面で、新事業が影響力を持って展 開する「破壊的イノベーション」にもとづく経済の成長(または生産・販売額の拡大)が期 待された。そこでは、新たに発売、事業化した事業化初期局面に着目する視点と、新しい 製品・工程等の事業を開始した一定期間後の、企業間競争の展開に関わる局面の 2 つがあっ た。この点を次の節で、検討する。 11) Georghiou et al.[1986]の議論については明石[2002]第1章を参照。また、英国では、科学者に対して 技術者の評価が低い。発見・発明をいかにビジネスに結び付けていくかが重要と英国首相だったサッチャー に対して盛田は進言したと言う(盛田[1992]475-476ページ、404ページ)。盛田は、科学の水準だけで はなく、技術の水準を重視しないと、産業の国際競争力は向上しないと1991年にロンドン王立協会(Royal Society)で講演した。

(9)

3 .イノベーションと事業的成功・社会的影響に関する検討 発明内容の初めての事業化、そして事業的成功とインパクト(社会的影響)のいずれがイ ノベーションの定義としてもっとも妥当であろうか。 製品・サービスの革新事例や企業活動と結び付けたイノベーションの捉え方は、基本的 に、事業的成功に比重を置いた議論である。企業での事例分析におけるイノベーションの多 くは、1 つひとつの部品・製品・サービス・事業における革新的方法や成功事例を取り上げ、 その要因を分析する。つまり、新製品の発売、新技術の商業的利用開始などに際して事業者 の期待通りの販売と、その「事業的成功」でイノベーションを捉えているのである。たしか に、「販売的成功」は計画通りの付加価値額を実現する(生産性を高める)ことに結びつく。 販売額の拡大状況が、成長率を決める。販売金額からみた影響力や、販売市場シェアの水準 は、新たに生み出された製品・サービス・技術の現実の普及度とそのインパクトに関わる。 ここでは、事業的成功の側面と、既存生産システムの変化と何らかの効果、意図した効 果、結果としての社会的影響(インパクト)の側面から、イノベーションの捉え方を総合的 に検討してみよう。 ⑴ 事業的成功 事業的成功にも、基本的定義とそれを踏まえた、いくつかの捉え方がある。基本的定義と は、新しい事業の採算性を確保でき、投資資金を回収すること、とりあえず、利益を確保で きたことである。そのうえで、一定(以上)の市場販売シェアを獲得すること、第 2 に、既 存市場の市場シェア序列関係を変えてしまうほどの売れ行きや普及が見られたこと、第 3 に は、その補完的形態かもしれないが、既存市場の製品・サービス・技術に新しいカテゴリー (セグメント市場)を追加したことがあろう。そうすると、新規事業の市場浸透度(一定以上 の販売確保、市場シェア達成)を第 3 局面における「事業的成功」のもう 1 つの定義とみる ことができるだろう12) さらに別の視点としては、基本的定義での事業的成功を収めた後、事業的採算が良好な状 態あるいは事業的な競争優位性がいつまで継続するか、についてである。それを検討するた めには、「成功」の状況分析や評価基準の期間的長さ、および、製品・サービスの特徴や魅力 はもちろん、プレイヤー特性や売り方を含む事業の仕組み(ビジネスモデル)など、いくつ かの要因と成功基準の見直しが必要であろう。ここでの論点は、研究・技術開発活動の成果 を初めに市場に出した企業が成功したという見解と、製品を初めに市場に出すよりも優れた ビジネスモデルを構築する方が重要という見解のいずれを重視するかである。 事業的成功はいかなる要因に依存するか。ポーターの競争優位性の説明を取り出すまでも なく、第 1 に低コストと高生産効率、第 2 に製品差別化と製品・サービスの魅力、第 3 にそ の他要因があるだろう。第 1 に、各社の市場販売価格が競争的価格とほぼ同一水準であり、 それが費用水準と対応している状況において、特定企業の費用水準だけが低下するならば、 12) マーケティングや事業システム(またはビジネスモデル)など、非技術要因でのイノベーションは除外 する。

(10)

利益は増加する。(経済理論の多くでは、市場価格に対して自社の費用水準を低下させるべく 努力する、いわば 「受動的」 対応を迫られている企業行動を考えている)。第 2 に、特定企業 の製品・サービスが魅力的であり、他社の製品・サービスの価格(市場価格)より少し高い けれども、その製品・サービスを購入したいと考える顧客が一定数、存在する場合に、製品 差別化が成立しているとみなすことができる。少し高くても、その製品・サービスは売れる だけの魅力を持っているのである。(では、その製品・サービスの魅力を決める要因は何だろ うか。ただし、企業が提供する製品・サービス等の競争優位性とその継続性については別稿 で検討する。) 製品・サービスが量的に過剰な状況においては、類似品や競合品が多数ある。その状況に おいて、高くても買うという行動は製品差別化に依存する。ただし、販売実績が大きな新し い製品・サービスの魅力のすべてをイノベーションということはできない。実質は同じだ が、外観的・表面的差異(バラエティ)を生む場合は水平的差別化と呼ばれる(Caves[2000] p.6; Stoneman [2010]p.35)。 2 社会的影響(インパクト) 第 2 の論点に関連して、日本政府が言う「破壊的イノベーション」という言葉が意味するこ とは、インパクトが大きいこと、および、経済成長をけん引する力をもつこと、つまり、影 響力ある形での事業展開である。日本政府が言及している「破壊的イノベーション」とは、 既存事業者の製品・サービス・技術を陳腐化し、既存品との代替をもたらす、強いインパク トをもつことであろう。イノベーションの影響の強さとは、代替の強さや影響が広がる速度 を反映し、技術的・内容的側面とビジネスモデルの形態や特質、変化を引き起こす機運、た とえば、新旧が交代・代替する速度や形態に依存すると考えられる。新しい内容が一気に普 及し、既存状態・内容にとってかわるならば、古い内容を提供する事業者は存続の危機にさ え瀕する。きわめて顕著な効果が予想される物質や化合物の場合や、IT やデジタル技術・イ ンターネットへの依存度が高い事業における「方法の大きな変革」などでは、棲み分け状態 に至ることなく、文字通り、新旧製品・方法の代替が生じるかもしれない。 一方、該当する産業、製品、サービス、技術の特性とも関わるが、数年間以上に及ぶ相対的 に緩慢な速度で普及進展する場合、更新投資や買い替えのタイミングで新旧交代が進むこと が多い。実際の普及や形態変化の速度は、その両極端の中間水準となるであろう。例えば、 鉄鋼業で LD 転炉の実用化(1955年)は生産費用を大幅に削減させたが、(設備投資の償却を 終えた生産費水準での)平炉による既存の生産方法を駆逐したわけではなかった。この場合 には、既存の製品、サービス、技術の多様性(バラエティ)を形成し、既存の製品、サービ ス、技術と棲み分けはできるが、その有力な代替物となる。共存可能かもしれないが、市場 での普及率(市場シェア、もしくは利用率や浸透率)で逆転現象が生じることもインパクト としては小さくないかもしれない(棲み分けではあるが、新規セグメント市場が圧倒的に大 きくなる場合に相当する)。 大きな結果をもたらす、既存秩序を変革するほどの影響力を持つ、成長に貢献する、生 産・販売額の拡大は「結果」であるとはいえ、そのためには、販売額がある程度、大きいこ とが求められ、市場がそれらを受け入れたかどうかに依存する。これらの表現を伴うことが

(11)

できるイノベーションは、仮に実現すると、大きなインパクトをもつ。しかし、大半の事例 において、販売面での影響力は事業化の後の段階でしかわからない。開発や事業化の局面か ら見た後発者ながら、販売拡大を通じて急成長する事例など、市場競争での優位が、技術利 用面での多数派となることもある。結果を見た後知恵的解釈の要素を伴うのである。 投入と産出の関係において、産出(または成果)指標として、上記のようなインパクトを もつイノベーションの創出は「期待」「願望」であっても、それを確実に生み出すようなイ ノベーション創造活動計画は明示できない。資源投入の内容やタイミングを事前に明示する ことはできない。また、研究開発活動の成果が生まれる時点での不確実性(技術活動として 期待した成果が出る確率は100%ではないという意味)、その成果をもとに事業化を始めたと き、その事業が成功する確率も100%とは言えない。ましてや、その事業が社会に大きな影響 を及ぼすと考えるのは、待望の新薬、原理を具体化する周辺技術の完成など、期待としては 十分にあるだろうが、事業活動として100%の確率で進める話ではない13)3 検討内容のまとめ イノベーションの捉え方には、イノベーション成果を最初に使用開始する点に着目する基 準と、もう 1 つには、イノベーションの事業的な影響が出た状況を想定する基準とがあると 再確認できた。では、社会的影響力(インパクト)が大きい変化とは何か。それには、新規製 品・サービス・生産方法がよく売れること、新しい事業 ・ 市場が創造されること、既存物が淘 汰されること、新興企業の存在感が高まること、などいくつかの次元や側面があるだろう。 図 5 に示した通り、以上のことを踏まえると、局面 1 の目標は研究・技術的成果を出すこ 13) 企業行動理論のレベルでは、「開発」が成功裏に目標を達成できるかどうか、新規発売品が期待通りに 売れるかどうかについては、技術開発上の不確実性と市場販売面での不確実性と呼ぶ。その要素を厳密に 取り込むと、行動分析の方法は、企業の研究・開発活動と期待収入のバランスに関する条件付き最適化行 動の分析など主観的最適化モデルが中心になるかもしれない(Kamien and Schwartz [1982]など)。

5 イノベーション局面別の事業目標と成果

研究開発活動領域

爆発的な販売・普及 高市場シェア確保 研究・技術 開発活動 研究成果

経済活動領域

成果の初めての事業化(新発売) 事業的成功 研究・技術的イノベーション イノベーション 破壊的イノベーション 出所)明石 [2002] 17ページの内容を一部修正し図示。 図 5  イノベーション局面別の事業目標と成果

(12)

とが求められるので、それが達成されると「成功」といえる。局面 1 では、研究・技術開発活 動において、研究成果や技術開発の画期的な成果を出すことは名誉や受賞にもつながるが、 それは「研究・技術面でのイノベーション」と呼ぶことしかできない。 局面 2 では、上市することが目標であるが、他社より早く出すことをイノベーションと捉 えた。成果の事業化、特に他社に比して世の中(市場)に初めて出したこと(初めての事業 化)は、新結合の成果である。だが、事業面で見ると、損益分岐点を超えなければ、投資資 金の回収や利益の実現にはならない。それを満たすことは、販売計画を達成し利益を上げた という 1 つの基準でみた事業的成功といえる。しかし、新規製品・サービス・システムの普及 に伴う既存システムの陳腐化や新市場・事業の創造、または、社会的影響を持つことなど、 破壊的イノベーションに至るには、爆発的な販売・普及や高市場シェア確保などが観察され なければならないだろう。 ただし現実には、他社より早く出すのか、売れるものを出すのかで意見は分かれる。局面 2に関連して、開発資金または事業化資金を回収するプロセスでは、より多く (損益分岐点 を越えるまで) 販売し、利益を出すことが目標といえる。それに加えて、「破壊的イノベー ション」を局面 3 に据えているのが本稿冒頭の日本政府の見解である。破壊的イノベーショ ンを文字通りに解釈すれば、爆発的な販売、既存製品・製法等の陳腐化、生活様式や生産様 式の刷新などをもたらす。事業的成功や「インパクト」と言うときの成功の基準や評価のタ イミングに関わる指標(売上高、利益、株価、その他)に統一的な見解はない。また、成功 についても、ときには、後知恵的な解釈もある。 4 .経済成長論での技術進歩の扱い ⑴ 恒常成長モデルにおける研究開発活動 マクロ経済成長における技術進歩(技術変化)の扱いは、ソローの研究に端を発している (Solow[1956][1957])。産出を Y、資本を K、労働を L で示し、コブ・ダグラス型の生産関 数を対数表示すると、

  logY = logA + αlogK + βlogL

となる(A は定数項)。両辺を時間(t)で微分すれば、各変数の変化率の形式で表示でき る。たとえば、logY については dY/dt/Y となるので、それを <Y> と示す。ここで、< 変 数 > 記号は、変数の成長率を表示する。すると、

  <Y> = <A> + α<K> + β<L>

をえる。この式に基づく実証分析の結果において、Solow[1956][1957]は、経済成長モデ ルにおける資本と労働で説明しきれない部分(残差項、A)を技術進歩要因を含む諸要因の 結果と解釈した。その後、マンスフィールドやグリリカスは、コブ・ダグラス型生産関数の

(13)

なかに、研究開発活動(R&D)を変数として加えた。その結果、経済成長と技術進歩の関係 を分析する式は

  <Y> = <A> + α<K> + β<L> + γ<R&D> となった。 ソローは、労働と資本設備の増加では説明できない成長促進部分(残差要因)を技術進歩 による寄与と解釈した。そこで、成長モデル分析のうえで、産出物の拡大(成長)を促す要 因、または潜在的な生産能力水準の引き上げと費用節約的効果に関わる生産性上昇率などが 技術進歩の効果とみなされた(読み替えられた)。当初時点で、デニソンは実証分析上の残 渣を分解して、技術変化以外にも人の学習や労働の質(教育の効果)など多様な解釈を与え (Denison[1962])、アローはその一部を取り上げ、試行錯誤を通じた学習効果(learning by doing)と名づけて分析した(Arrow[1962])。シュルツは人的資本での説明を試みた。ス ミスとバーフィールドは、文献レビューの結果、経済成長を推進する要因として、資本、労 働、人的資本、研究開発資本、技術進歩の 5 つの要因が支配的であったと説明し、それらの 説明力を比較分析している(Boskin and Lau[1996]pp.100-103)。その他、経済成長に対す る科学、新技術、研究開発(R&D)の寄与度に関わる多くの実証分析がなされている。その 際、国としての研究費や学術的研究活動と経済成長を直接に関連づけた理解が多かった。そ の後、労働、資本、その他要因の総要素生産性(Total Factor Productivity:TFP)の変化 率で分析されるようになった。

一方、日本とアメリカの経済的成果の相違などを分析したマンスフィールドは、学術的研 究や科学的知識よりも、改善、生産管理、マーケティングなど、事業的取り組みが、産業的 (民間部門での)イノベーションを左右すると論じた(Mansfield[1996])が、「ミクロレベ ルでの推測事情は、マクロレベルに集計された際にはほとんど言及されてなかった」という 見解もあった(Boskin and Lau[1996]p.79)。これら以外にも、経済成長や国の競争力と関 連づけて生産性の上昇に関する多数の研究が輩出された。 マクロ経済分析でいう技術進歩とは、上述した手順で導かれる「残余」の大きさであり、 結局は外生要因の扱いであったが、ローマーは、恒常成長モデルのなかに研究開発活動を内 生的変数として取り込み、研究開発活動と経済成長率が比例的関係にあるモデル(技術進歩 内生化の経済成長モデル)を提示した(Romar[1990])。マクロ経済分析の中ではイノベー ションと呼んでいなかったが、ローマーの論文の結果、恒常成長モデル、または、長期的関 係において、研究開発成果をイノベーションと読み替えた技術進歩(イノベーション)内生 型成長理論が「生み出された」。 その結果、研究開発活動とその成果の実用化・事業化としての販売高の増大(国レベルで は科学技術と国内総生産との関係)を結びつける議論が生まれた。それは、新しい科学的・ 技術的成果が「事業的成功」をもたらすという「単線的関係」として解釈しうるので、しば しば、イノベーションと経済成長の関係と読み替えられている。しかし、恒常成長モデルに おける変数(要因)間の関係性が、現実の世界で成立するためには、どれほどの期間を要す ると考えればよいのかに関する議論は放置された。

(14)

統計数値としての経済成長とはある時点での生産額、出荷額、販売額、付加価値額の過去 の数値に対する増加率を言う。新しく事業化された製品・サービス等が無条件に経済成長に 組み入れられるのは生産額だけであるが、通常は、販売というプロセスを経た数値が経済成 長に関わっている。一方、技術の生産に関する投入活動である研究開発と、成果を反映する 「技術進歩(率)」に対して、上述の解釈(想定)がなされているが、本来それはイノベーショ ンと同義ではないのである。 2 マクロ経済政策と技術進歩率の上昇:新規投資の供給と需要の両側面 マクロ経済成長論での生産性とは、1 人当たりの所得(または GDP、付加価値額等)、ま たは労働時間当たりの所得であり、測定単位は金額である。国際比較では、通常、労働時間 当たりの付加価値額で計測される。すると、個々の生産効率の高低ではなく、国や産業とし て、何をいくら販売し、付加価値額を得たかに関わってくる。 マクロ経済政策や経済成長論での技術的イノベーションは、生活・生産活動における生産 性を高め、個別経済主体(ミクロの視点)と一国経済全体(マクロの視点)の両面で、最大 可能な供給能力を高めると捉えられている。例えば、IT(情報技術)、人工知能(AI)が決 め手という時の政策的目的の 1 つは生産性の向上である。他方、IT を活用するなどして、生 産効率を向上することや、それが競争力を高め、成長率を引き上げるという見解がある。た だし、技術的インパクトへの期待について、新規投資が形成する新しい生産能力や情報シス テムが計画(期待)通りに成果を発揮するためには、利用者・社会の需要量(消費と投資の 支出額の大きさ)に依存している。 さらに、マクロ経済の恒常成長モデルの命題は 1∼3 年の「短期」経済政策には無効であろ う。では、5 -10年の長期を考えるならば、どうか。労働力を必要とする人手不足の成長部門 に労働力が流入することがあれば、1 つの成長基盤形成となるだろうが、成長部門で求めら れている職業的能力をその間に、いかにして涵養するかという課題は残っている。結局、生 産額からみた成長性の分析と、販売額からみた成長性の分析のバランスをいかにとるかであ る。概念的 ・ 政策実務的には、需要サイドと供給サイドのどちらを重視するか、である(吉 川[2003]38ページ)。需要側と供給側に関連して、1 つの見解は「買いたいものがない」の で、イノベーションを起こして「買いたいもの」を生み出せという見解があった(経済産業 省[2002]15ページ)。 5 .イノベーション類型と経済成長に関する考察 安倍政権での成長戦略の一環として、2016年 6 月「日本再興戦略2016」のうちの、①新た な「有望成長市場」の戦略的創出、②人口減少に伴う制約や人手不足を克服する「生産性革 命」、③新たな産業構造を支える「人材強化」が産業経済に直接関連するだろう。日本政府 の政策方針では、1 つには破壊的イノベーションを興して経済成長を果たすこと、もう 1 つ には生産性を高めて人材不足を解消することがうたわれていた。つまり、①と②はイノベー ションと関係する政策方針といえる。そこでは、イノベーションやそれを実現するための投

(15)

資が、経済成長に結びつくイノベーションの波及・誘発効果をもたらすことを期待するので ある14) 以下では、第 1 に、イノベーションと経済成長の関係は直結するものではないこと、か つ、イノベーションのすべてが「破壊的イノベーション」ではないこと、第 2 に、生産性の 理解には、少なくとも 2 つあり、業務に関わる効率と業務遂行後の成果の大きさに関わるも のがあることを順次検討していこう。 ⑴ イノベーションは経済成長をどれほど推進するか。 経済実態や経済活動を変えるインパクトを含め、シュンペーターが考えたイノベーション は、すべて「断絶的」または「不連続」と呼べる事象だけであろうか。シュンペーターは、イ ノベーションに関わる経済変化のさまざまな特徴を部分的分析からだけではその全体像を 把握できない。資本主義経済は進化するプロセスと結びついて、産業変化は進化的特徴を持 ち、それは進化的プロセスでもあると述べている(Schumpeter[1939]p.82)。つまり、シュ ンペーター自身も、新しい要因は、事態を一気に変えるだけではなく、一定の時間的経緯を伴 う場合も考慮に入れているのである。イノベーションの多くは必ずしも画期的イノベーショ ンではないし、破壊的イノベーションとも限らない。新しい技術、新しい製品 ・ 製法を中心 として、仕入れや流通の新しいしくみに関わることや新しい組織の設立や形成は、少しずつ 段階的に変化を続け、一定期間の間に、所定の技術的変化や組織の改廃に結びつくものも少な くないだろう。顕著な変化やそれをもたらした顕著な成果(イノベーション)は目覚ましい。 だが、顕著な変化や顕著な成果を上げたことだけをイノベーションととらえることは妥当 ではない。新しい事業的取り組みや挑戦の要素を考慮する必要もあるだろう。挑戦した限り で顕著な成果は出なかったとしても、計画した成果に結実しなかったプロセスにおける経験 知が、それに続く挑戦者にとり有意味な情報となることもありうる。そうした累積的なプロ セスとしてのイノベーションや漸進的な変化・改良の結果としてのイノベーションの方が多 いという意見もある。ルンドバルは、イノベーションを特殊な出来事と見るのではなく、既 存物の新用途にかかわるものを含めて、事業の基盤を固めるための日常的にいたるところに ある(ubiquitous)現象と表現した(Lundvall[1992]p.8)。 フリーマン[1987]は、日本の経済成長や産業システムを分析する中で、プロセスとして の変化、生産方法の改善に基づく生産効率(または生産性)の向上の重要性を指摘した。生 産費用と品質に関する日本企業の生産現場での実情、および、それを促進する国または(能 率協会や日科技連など)全国組織の取組みを含めて、「国のイノベーション(創出)システ ム」と呼んだ。それは制度 ・ 政策の策定および制度 ・ 政策が誘発する企業活動を指したの で、フリーマンが述べたイノベーション・システムの定義はかなり幅が広い15) 14) 山口[2015][2016]、岡田[2019]では、イノベーション政策として、新興企業の推進を強調している。 後藤は、イノベーション政策を、需要側の政策、供給側の政策、システムの政策の 3 つにわけて説明して いる(後藤[2016]216-218ページ)。

15) OECD & Eurostat のオスロ・マニュアル(第 4 版)でも、当該組織にとり新しい取組をイノベーショ ンとみなすなど広い定義となっている。なお、オスロ・マニュアルは、イノベーションを分析する標準的 方法やその指針を示すことが狙いである。

(16)

また、ネルソン 「1993」、[1996]は、15か国について、国のイノベーション・システムを 比較研究し、各国におけるイノベーションの捉え方が多様であると示した。それとは別に、 イノベーションに関わる制度や活動の国際比較を行う手法や指針を示す点で、OECD はEU と共同で「オスロ・マニュアル」を1992年に作成した(その後改訂を重ね、2018年に第 4 版 が示されている)。 2 斬新・新規な製品・サービスの登場と既存物の改良 経済理論で扱われているイノベーションは製品や製造方法の大きな変化に着目し、製品や 製造方法に「大きな変化」があったときを想定した比較分析を行う。しかも、まったく新規 な製品・サービスの突然の登場は、しばしば最終財に着目した見方である。この見方の限界 は、その製品・サービスが市場に登場するまでのプロセスへの考慮が十分でないこと、ある いは、多くの場合、原材料、部品、中間財などにおける「目に見えにくい」変化やイノベー ションを考慮できない点である。製造方法や提供方法における改革にも、一括代替型変化と 漸進的変化がある。 実態分析や事例分析においても、ビジネスモデルや工業デザインのイノベーションは日常 的に多く観察されるが、検討の中心は、最初の事業化や画期的な技術的イノベーションなど である。販売実績の結果を出したものや、販売と結びつく形で好評だったものを指すことが 多い(売れたものだけが評価される)。だが、技術的に新しい製品・方法や技術以外の面で の新しい製品・方法やサービスが必ずしも期待通りに売れるとは限らない。既存の製品、方 法、サービスを改良、刷新したものが大いに売れる(売れ続ける)こともある。また、定番 商品と呼ばれる製品、方法、サービスでも水平的差別化は生じるので、内容に変化がないわ けではない。 製品概念として斬新な技術の研究開発の成果を事業化し、それが大いに売れることは事業 的にも概念的にもイノベーションの典型と扱われている。しかし、そうした状況は例外的事 例と言えるかもしれない。そうだとすれば、フリーマンらのように、イノベーションを広い 意味に定義して、大いに売れた製品・サービスがいくばくかの新要素を持つ限り、それらを すべてイノベーションと捉えることも 1 つの考え方となる。 製品・サービスの機能、性能、耐久性などを徐々に、漸進的に改良し、一定期間の後にそ れらを当初の水準から一定水準以上に高めて、高品質と見なされることは、製品の競争力を 高める上では重要な側面といえる。クリステンセンの破壊的技術(イノベーション)概念も この要素を含んでいる。 改良型イノベーションは、材料、加工方法、部品、機能性材料 ・ 部品、組み立て ・ 生産方法 など、要素技術 ・ 要素材料の変化と、最終製品の(目に見える)変化やその影響に関わる。 意図 ・ 狙い ・ 要因と効果に関わる。改良にも、目に見えるほど顕著な 1 回限りの改良と、そ うでない漸進的な改良がある。漸進的な改良という小規模改善の積み上げを通じた一定の変 化は、科学・技術的な活動とみなされないこともある。大規模な投資を必ずしも伴わず、日 常的な人的対応などの組織的取り組みを中心とした結果として生じるためである。 だが、個人の創造性を重視するアメリカでは、企業や研究組織での技術開発において、既 存品の機能や生産効率を飛躍的に改良しても技術者として評価されない。また、アメリカの

(17)

販売方法の基本は低価格の訴求が多かった。そのための手段は小さな改善の積み重ねではな く、低賃金労働の活用など費用をいかに引き下げるかという即効性を重視する。それは、多 くの場合、その時々の「短期的」条件に関わるものであり、「長期」に及ぶ漸進的で、改良 的な方法を重視することは少ない。 技術面で見た新しさ(新規性)ではなく、アイデアや事業の仕組み(またはビジネスモデ ル)、デザインなどの側面での新規性に着目して競争力を解釈する考え方もある(Stoneman [2010])。さらに、最終財に外見上の際だった革新性がなくても、材料、部品、グレード形 成要素などでの改良や革新の結果、それらの機能や性能や効率を、あるいは、製品・サービ スの品質評価を高めているかもしれない。(つまり、材料や部品等、中間財のイノベーショ ンが、工程のイノベーションを実現することは少なくない。逆に言えば、工程や方法のイノ ベーションを実現するためには、素材、部品、それらを組み合わせ方や方法の革新を必要と しているのである。)この種の改良型イノベーションは、主として研究活動を行う R&D 部門 だけでの成果ではなく、日常的な製造やサービス提供を担当する事業所における企業活動の 中から生まれてくることが多いかもしれない。そうだとすれば、技術的に高度な新規性はほ とんどなくとも、製品・サービスの品質や魅力または費用対効果を高めることの、販売促進 (事業的成功)への貢献度は大きいとも考えられるのである。 3 生産性上昇と労働力確保・生産費用削減 生産性の向上とは、個別企業(ミクロ)の視点でいえば、現場での必要労働時間の削減、 マクロの視点(経済成長の側面)でいえば、潜在成長率の引き上げ要因である。 業務現場でいう生産性とは、費用削減要因、能率的作業に関わる生産や提供に要する時間 短縮要因の側面である。一方、付加価値面で「効果を高める」というとき、付加価値を金銭 的な指標で見るならば、事業的販売金額で捉えることになる。つまり、生産プロセスに関わ るイノベーションの次元ではあるが、特定の生産工程の変化ではなく、市場販売額の多寡や 原材料等の費用要因と結びついた概念となる。 第 1 に、個別企業では、生産性上昇のため、必要労働を削減するかもしれない。そこで不 要となった労働力が別産業の労働力となって生産活動に従事すれば、国としての生産量・額 は増加したと純粋理論的には言える。第 2 に、(生産)単位費用の低下は伝統的貿易論では、 価格競争力の上昇や輸出拡大となる可能性として理解されてきた。サービス産業の生産性を 引き上げ、単位費用を引き下げ、国全体の産業競争力を高めるという伝統的な見解である。 これらは費用引き下げ(つまり低価格販売)や供給側に着目する見解であるが、業務現場 での生産性向上とは、同じ仕事や作業を能率よく行うこと、よって、仕事・業務遂行に要す る時間の短縮などで説明される。資源投入に対する産出の比率の改善は理論的・実際的には 「生産効率」の上昇である。よって、生産現場レベルの生産性向上は、「むだ」を省き能率を 上げるだろうが、所得収入や付加価値額そのものを必ずしも拡大しないのである16) 16) 生産性の引き上げと付加価値額拡大との関係については、明石[2020]も参照。

(18)

6 .結びに代えて 経済成長とイノベーションの関係はどうであろうか。2018年、サムスン電子の売上高 (243.8兆ウォン)は韓国の GDP(1893.5兆ウォン)の13%を占めた。サムスン電子グループ として韓国の経済活動の15-20%を占めているだろうから、その影響力は多大である。一方、 2019年、GAFA と呼ばれる企業群の売上高合計(7732憶ドル)のアメリカ GDP(214277憶 ドル)に対する比率は3.6%であり、経済成長に大きく影響しているという分析結果はない。 トヨタ自動車の売上高(29.9兆円)が日本の GDP(553.7兆円)に占める比率は0.5%とさら に低い。要するに、特定企業の特定製品・サービスの爆発的な販売といえども、一国の経済 活動(GDP)の大きさや成長率に文字通り影響を与えると考えるのはそもそもかなり無理が ある。ましてや、新興企業の台頭でイノベーションを興し、経済成長を高めるとか経済成長 に弾みをつけるという見解は、スローガンや希望の灯としての効果はともかく、政策理論的 には無理があるだろう。 個別企業行動に関して言えば、「イノベーション」は製品・サービス提供者の数年間におけ る市場地位逆転や顔ぶれの交代など、販売競争の中でのその時々の(10年に一度程度の)変 化、または消費者や生活様式の側面での根本的変化を導くと考えることはできるかもしれな い。しかし、一国の産業競争力や短期的視点での経済成長のメカニズムを変革する議論や政 策理論の中にイノベーションの役割を結び付けて大きな効果を嘱望するには無理がある。イ ノベーションは「魔法の杖」ではないと理解すべきである17) 最後に、本稿ではイノベーションを主に事業的成功の視点から論じたが、この事業的成功 という概念を踏まえてイノベーションと競争力との関係を再検討することも必要である。そ れについては稿を改めて検討する。 本稿は、2019年 9 月 7 日、産業学会イノベーション研究部会(大阪商業大学梅田サテライ トオフィス)での報告内容を修正したものである。 参考文献 明石芳彦[1995]/[2003]「研究開発とイノベーション」新庄浩二編『産業組織論』初版 / 新版、有斐 閣、所収。 明石芳彦[2002]『漸進的改良型イノベーションの背景』有斐閣。 明石芳彦[2019]『進化するアメリカ産業と地域の盛衰』御茶の水書房。 明石芳彦[2020]「イノベーション・産業経済から見た日本経済 ─平成の30年間の振り返り」村上 亨・柳川隆・小澤太郎編『成長幻想からの決別 ─平成の検証と令和への展望』勁草書房、48-73 17) 本稿の射程に入らないが、収入や利益を直接もたらさないこともイノベーションとみなす議論が増えて いる。とくに、インターネット上での無料のサービス提供を典型事例として、従来、入手や使用に代価を 払っていたサービスやさまざまな労力と時間を要していたサービスが、現在では、無料で簡便に手に入る 変化を、フォン・ヒッペル[2017]は「フリー・イノベーション」と名付けて、多面的に分析している。

(19)

ページ。

Boskin, M. J. and L. J. Lau [1996] Contributions of R&D to Economic Growth, in Smith and Barfield [1996], pp.75-113.

Caves, R. E. [2000] , Cambridge, Harvard University Press.

Christensen, M. C. [1997]

, Boston, Harvard Business School Press. 伊豆原弓訳[2001]『イノベーションのジレンマ ─ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』増補改訂版の訳、翔泳社。

Denison, E. F. [1962] United States Economic Growth, , 35, pp.109-121. Florida, R. and M. Kenney [1990]

, The Basic Books.

Freeman, C. [1987] , London, Pinter. 新田光重訳『技術政策と経済パフォーマンス ─日本の教訓─』晃洋書房、1989年。 Georghiou, Luke, J. Stanley Metcalfe, Michael Gibbons, Tim Ray, and Janet Evans, [1986],

-, Macmillan. 後藤晃[2016]『イノベーション 活性化のための方策』東洋経済新報社。

Griliches, Z. [1988] Productivity Puzzles and R&D: Another Non-explanation, , 2(4), pp.9-21.

Griliches, Z. [1994] Productivity, R&D, and the data Constraint, , 84, pp.1-23.

Kamien,M.I. and N.L. Schwartz [1982] , Cambridge, Cambridge University Press.

経済産業省経済産業政策局編[2002]『イノベーションと需要の好循環』(財)経済産業調査会。 クライン、S. J. [1992]『イノベーション・スタイル ─日米の社会技術システム変革の相違』鴨原

文七訳、アグネ承風社。原典は、 , Stanford University, 1990.

Levin, R. C., Klevorick, A., Nelson, R.R. and S.G.Winter [1987] Appropriating the Returns from Industrial Research and Development, , No. 3, pp.783-820.

Mansfield, E. [1968a] , W.W.Norton. (伊藤史朗訳『技術進 歩の経済学』日本経済新聞社、1971年。)

Mansfield, E. [1968b] , W. W. Norton. (村上泰亮・ 高島忠訳『技術革新と研究開発』日本経済新聞社、1972年。)

Mansfield, E. [1972] Contribution of R&D to Economic Growth in the United States, , 175, February, 4, pp.487-494.

Mansfield, E. [1996] Contribution of New Technology to the Economy, in Smith and Barfield[1996], pp.114-139.

盛田昭夫[1992]「「日本的経営」が危い ─「良いものを安く」が欧米に批判される理由─」『文芸春 秋』2 月、94-103ページ。

(20)

盛田昭夫 / 下村満子 /E・ラインゴールド(下村満子訳)[1990]『メイドインジャパン』朝日文庫、 朝日新聞社。

中村末広[2004]『ソニー中村研究所 経営は「1・10・100」』日本経済新聞社。 Nelson, R. R., Peck, M. J. and E. D. Kalachek [1967]

, Brookings Institution / Rand Corporation, Washington D.C., Santa Monica. (矢島釣次・ 中村壽雄訳『技術開発と公共政策』好学社、1972年)。

Nelson, R. R., ed. [1993] , New York, Oxford University Press. Nelson, R. R. [1996]National Innovation Systems: A Retrospective on a Study, in,

, edited by G. Dosi and F. Malerba, New York, MacMillan Press.

OECD and Eurostat, eds. [2018]

, 4th edition (Oslo Manual 2018), OECD and European Union.

岡田羊祐[2019]『イノベーションと技術変化の経済学』日本評論社。とくに第11章「イノベーショ ン政策」。

Romar, P. M. [1990] Endogenous Technical Change, , vol. 98 , supplement to no.5, pp.S71-102.

Scherer, F. M. [1999] , Washington, D. C., British-North American Committee and The Brookings Institution Press. Schultz, T. W. [1972] , National Bureau of Economic Research.

Schumpeter, J. A. [1926] , 2. Aufl. (1st ed. 1912)塩野谷 祐一・中山伊知郎・東畑精一訳『経済発展の理論』岩波書店(文庫)、全 2 冊、1977年。 Schumpeter, J. A. [1939]

, 2 vols. MaGraw-Hill Book Company, Inc., New York. 吉田昇三監修・金融経 済研究所訳『景気循環論』有斐閣、全 5 冊、1958-1964年。

Schumpeter,J.A.[1950] , 3rd ed., New York, Harper. (1st ed.1942,2nd ed.1947)中山伊知郎・東畑精一訳『資本主義・社会主義・民主主義』東洋経済新 報社、全 3 冊、1962年。

Schumpeter, J. A. [1951] , translated from the German by Redvers Opie, Harvard University Press.

Smith, B. L. R. and C. E. Barfield, eds., [1996] , Washington, D.C., The Brooking Institution and American Enterprise Institute.

Solow, R. M. [1956] A Contribution to the Theory of Economic Growth, , vol. 70, pp.65-94.

Solow, R. M. [1957] Technical Change and the Aggregate Production Function, , vol. 39, pp.312-20.

スティグリッツ=グリーンウォルド(岩本千晴訳)[2017]『スティグリッツのラーニング・ソサイエ ティ 生産性を上昇させる社会』東洋経済新報社。

(21)

Oxford University Press.

Teece, D. J. [1986] Profiting from Technological Innovation, , 15(6), pp.285-306. 豊田長康[2019]『科学立国の危機 ─失速する日本の研究力』東洋経済新報社。

Utterback, J. M. [1996] , Boston, Harvard Business School Press.

Von Hippel [2017] , Cambridge,The MIT Press.

山口栄一編[2015]『イノベーション政策の科学 ─ SBIR の評価と未来産業の創造』東京大学出版会。 山口栄一[2016]『イノベーションはなぜ途絶えたか ─科学立国日本の危機』ちくま新書。

参照

関連したドキュメント

現実感のもてる問題場面からスタートし,問題 場面を自らの考えや表現を用いて表し,教師の

このため、都は2021年度に「都政とICTをつなぎ、課題解決を 図る人材」として新たに ICT職

注:一般品についての機種型名は、その部品が最初に使用された機種型名を示します。

「技術力」と「人間力」を兼ね備えた人材育成に注力し、専門知識や技術の教育によりファシリ

◆後継者の育成−国の対応遅れる邦楽・邦舞   

ALPS 処理水の海洋放出に 必要な設備等の設計及び運 用は、関係者の方々のご意 見等を伺いつつ、政府方針

結果は表 2

省庁再編 n管理改革 一次︶によって内閣宣房の再編成がおこなわれるなど︑