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JAIST Repository: サービス化経済のパラドックスに関する実証分析1 : 日本の生産拠点の国外移転に伴うアジア大におけるエネルギー需要の誘発

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Japan Advanced Institute of Science and Technology

JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/

Title

サービス化経済のパラドックスに関する実証分析1 :

日本の生産拠点の国外移転に伴うアジア大におけるエ

ネルギー需要の誘発

Author(s)

堀尾, 容康; 渡辺, 千仭

Citation

年次学術大会講演要旨集, 23: 503-506

Issue Date

2008-10-12

Type

Conference Paper

Text version

publisher

URL

http://hdl.handle.net/10119/7611

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す

るものです。This material is posted here with

permission of the Japan Society for Science

Policy and Research Management.

(2)

2A15

サービス化経済のパラドックスに関する実証分析 1

-日本の生産拠点の国外移転に伴うアジア大における

エネルギー需要の誘発

○堀尾 容康(東工大社会理工学)

、渡辺千仭(東工大社会理工学)

1. 背 景

1.1 ポスト工業化社会とサービス化経済

経済のサービス化とは、総付加価値や労働人口の農林 水産業・製造業からサービスへの重心移動であり、持続 可能な社会の実現や人間個性の回復などの価値観の転 換を伴いつつ、いわゆる「ポスト工業化社会」「情報化 社会」の実現として期待されてきた。

1.2 サービス化経済のパラドックス

サービス化の進展は、知識集約型経済への移行により、 エネルギー・資源の消費依存からの脱却が進むと考えら れてきた。しかし、豊かさが一定の水準を越えると、所 得の不均衡やエネルギー消費の急速な高まりが観測さ れ、いわゆる「クズネッツ仮説」とは反対の現象が生じ ている。図 1 に各国経済のサービス化と一人当たりエネ ルギー消費の分布を示す。サービス化の進展とともに、 むしろ一人当たりのエネルギー消費が加速的に拡大す るというパラドックス的状況が生じている。 (1)サービス化とエネルギー消費増大の共進 図 2a に各国経済のサービス化と一人当たりの総所得 の分布を示す。一人当たり総所得が概ね 5000 ドル(購 買力平価換算・US$)まで、急速にサービス化率が高ま り、それ以降や緩やかに上昇する傾向にある。

図 1. 各国経済のサービス化と一人当たりエネルギー消費(2006). 図 2b に日本、韓国、中国の一人当たり国民総所得とサー ビス化の推移を示す。これら3カ国ともほぼ同一傾向線の 上にサービス化が進みつつある。中国を見るとサービス化 率は 2005 年時点で 4 割程度であるが、今後の経済成長と ともに一人当たりの収入が増大し、サービス化率も急速に 高まることが予想される。このように、サービス化の進展 とともに世界のエネルギー消費依存は引き続き高まるも のと考えられる。 y = 203.26e0.0346x R2 = 0.2264 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 0 20 40 60 80 100 産油国 中国 米国 韓国 日本 香港 ルクセンブルグ アイスランド サウジアラビア UAE ブルネイ 一人当たりエネルギー 消費量 (石油換算キロ/人) サービス生産 /GDP(%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 日 本 韓 国 中 国 % 一人当たり国民総所得(GNI) PPP 購買力平価 GDPに占めるサービス生産シェア 2005 2005 2005 1980 1980 1980 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 4960 56 中国 日本 韓国 インドネシア 米国 図 2a.各国経済のサービス化と一人当たり国民総所得(2005). 図 2b.日本、韓国、中国におけるサービス化率の推移(1980-2005).

(3)

(2)サービス化とともに進む生産の国外移転 経済のグローバル化により、貿易取引や国際的生産代替 が進み、特に近年、東アジア域内の経済的深化が進みつつ ある。表 1 は、アジア、北米、欧州それぞれの地域におけ る域内貿易比率の推移を示す。1980-2006 年の間にアジア、 北米地域の域内貿易比率は概ね 10 ポイント程度上昇し、 域内経済関係が緊密化しつつある。 表 1. 世界の主要地域の域内貿易比率の推移(1980-2006) (単位:%)

1980

1990

2000

2006

アジア ASEAN+6

34.6

33.7

40.5

42.7

北米

NAFTA

33.8

37.9

48.8

44.2

欧州

EU27

61.6

67.1

67.3

66.0

(注)ASEAN+6 は、ASEAN および日本、中国、韓国、豪州、ニュー ジーランド、インド。

〔出典〕IMF-Direction of Trade Statistics 2007. (3)各国のエネルギー消費効率の格差 経済関係の緊密化と貿易取引の増大の一方、世界各国には 大きなエネルギー効率の格差が存在する。表 2 に、日本、韓 国、中国における各産業部門のエネルギー消費原単位を示す。 ここでは、各国の物価水準を考慮し購買力平価換算の付加価 値あたりのエネルギー消費量を示す。 表 2. 日本、韓国、中国における各産業部門エネルギー消費原単位 の比較(2005) 単位:TOE(原油換算トン)/百万 PPP(購買力平価ドル (4)サービス業のエネルギー消費原単位の上昇 サービス業(第三次産業)のエネルギー消費原単位は他 の産業に比べて低いが、徐々に増加する傾向にある。図 3 及び図4に日本の製造業とサービス業のエネルギー消費 原単位の推移、及び各種サービス部門の推移を示す。 図 3. サ ー ビ ス 業 と 製 造 業 の エ ネ ル ギ ー 消 費 原 単 位 の 推 移 (1965-2006). 図 4. 各 種 サ ー ビ ス 部 門 に お け る エ ネ ル ギ ー 投 入 量 の 推 移 (1970-2000).

1.3 仮設的見解

これまでの観察に基づき、サービス化とともに進むエネ ルギー消費の増大について、日本からの生産拠点の国外移 転に伴うエネルギー消費誘発に関する下記の仮説的見解 に基づき実証する。 (1)生産の国外への生産移転によるエネルギー消費の減少 生産に必要なエネルギー消費は、国外移転により見 かけ上減少(見かけ上の効率化)。 (2)途上国におけるエネルギー消費の増幅的誘発 エネルギー効率の低い途上国への生産移転は、国内 生産時よりも大きなエネルギー消費を増幅的に誘発。 (3)サービス産業のエネルギー消費効率問題の顕在化 サービス産業の多くは労働集約的であり生産性やエ ネルギー効率の抜本的向上に課題。さらに都市化や IT により新たなエネルギー依存が発生。 日本 韓国 中国 第一次産業

81.25

73.21

41.89

第二次産業

109.75

117.46

158.32

第三次産業

36.82

43.97

54.23

全産業平均

64.11

98.08

117.77

生産・組立 製造産業 サービス機能 企 画 、 設 計 、

移転先国におけるエネルギー消費

輸出・輸入 サービス産業 輸送、エネル

発展途上国(エネルギー効率:低)

サービス産業への新 生産の アウトソーシ ング

エネルギー消費の移転

製造産業 図 5.国際的生産代替によるエネルギー消費誘発メカニズム.

工業先進国(エネルギー効率:高)

エネルギー 消費 原単位( 1970=1. 0 ) 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 各時点の全産業エ ネルギ ー投入量 平均=1とした場合の各サービス 産 業の大きさ 1970年-20 2000年産業 連関表(投入 表)より計算 卸小売 金融保険 医療福祉 通信 オフィス ビル他

(4)

2. 国外生産移転によるエネルギー消費

の増幅的拡大

2.1 国際取引によるエネルギー消費の推定

国際取引によるエネルギー消費誘発について推定する ため、各国の産業連関表を各時点での貿易取引によって相 互に接続する。ここでは、相互に密接な経済関係有する、 日本、韓国、中国、インドネシア3カ国を対象とし、さら に各国によってエネルギー供給構造が異なることから、各 国のエネルギー統計を用い国際エネルギー連関分析モデ ルを構築した。 なお、中国については、産業連関表の作成・発表時点が 他の3カ国と違い、そのままエネルギー分析モデルに用い ると各国取引高と差が生じることから時点補完を行った。 また、中国の産業連関表は輸入と輸出が区別されず、いわ ゆる競争輸入型ではないため、貿易統計を用いて輸出と輸 入成分に分解し、他の3カ国と接続した。 モデル化のために行った数理展開を下記に示す。 (1)投入行列 国内生産Xは、中間投入(AX)及び国内最終需要(Fd)、 輸出(Fe)の合計から輸入(M)を差し引いたものとしてあら わされる。 (1) これを国内生産(X)について求めると (2) Iは単位行列、M は輸入行列(対角行列)を表す。 ここで輸入ファクターは下記式で表される (3) また、エネルギー消費は各国のエネルギー消費をEとし、 (4) ただし (5) とあらわされる。図6にエネルギー連関モデルの構造を示 す。

2.2 国外生産移転のエネルギー増幅効果

(1)国外生産移転によって誘発されるエネルギー量 図 7 に対日輸出によって誘発される中国、韓国、インド ネシアのエネルギー量の推定結果を示す。3カ国全体の日 本への輸出額は 2000 年で約 4000 億ドルであるが、生産誘 発額全体では 3 兆 9400 億ドルであり、これによって消費 されるエネルギー量は約 9000 億 TOE(エネルギー量を石 油燃焼熱エネルギーに換算する場合の重量トン)。 これは、概ねフィリピンとインドネシア両国の年間エネ ルギー消費量(8500 億 TOE)を上回り、複数の国家に相当す るエネルギー消費が行われていることを示す。 図 7.日本への輸出が誘発するエネルギー消費量(2005). (2)誘発されるエネルギー消費の国内シェア 図 8 に韓国、中国、インドネシア 3 カ国の対日輸出によ るエネルギー消費の国内におけるシェアを示す。概ねそれ ぞれの国の 4-5%に相当するエネルギーが対日輸出のため に用いられていると推定される。 また、仮にこれらの生産を日本国内で行った場合、韓国 の場合は 40%、中国の場合 14%、インドネシアの場合 45% となると推定される。このように、国外への生産移転によ り 2 倍から7倍程度のエネルギー消費の増幅が行われて いる。 図 8.日本への輸出が誘発エネルギー消費量の国内エネルギー消 費に占める割合(2005). エネルギー 国 内シ ェア ( % )

X

M

F

F

AX

+

d

+

e

=

(

)

[

I

I

M

A

] [

I

M

F

d

F

e

]

X

=

ˆ

−1

(

ˆ

)

+

⎟⎟ ⎠ ⎞ ⎜⎜ ⎝ ⎛ + =

j d ij ij i ii m a x Fi mˆ /

=

i ij jj jj

e

x

e

ˆ

/

X

E

E

=

ˆ

図 6.東アジア経済・エネルギー分析用産業連関モデル. エネルギ ー 消 費誘発(100 万 T OE )

(5)

3. サービス産業によるエネルギー消費

の加速メカニズム

サービス化とともに、減少すると考えられてきたエネ ルギー消費が、むしろ増加傾向にあることは、前節の実 証分析に基づき、図 9 に示すとおり、①サービス部門自 体のエネルギー消費効率の悪化、②生産の国外移転によ る見かけ上のエネルギー消費の減少、③移転先国におけ るエネルギー消費の増幅的拡大、の3つの要素が複合的 に作用した結果であると考えられる。 また、サービス産業の低生産性問題が指摘されており、 サービス分野の構造改革は、産業競争力にとどまらず、 エネルギー消費を通じ地球環境問題や持続可能な経済 社会の実現のための重要課題となりつつある。 図 9.サービス化によるエネルギー消費加速メカニズム.

4. 結 論

4.1 総 括

(1)経済のサービス化の一方、むしろエネルギー消費への 依存は高まる傾向にある。今後の新興経済国の経済 成長により世界全体のエネルギーへの需要は拡大す ると予想。 (2)生産の国外への生産移転によるエネルギー消費の見か け上の減少の一方、途上国におけるエネルギー需要 が増幅的に拡大。

4.2 今後の課題

サービスは1つの独立した産業部門ではなく、むしろ サービス自身を含み、農林水産業や製造業の各産業部門 においていわば輸送や通信など経済活動の「媒介」とし ての機能を持ち始めている可能性がある。このため経済 構造におけるサービス産業の媒介機能に着目し分析を 行う必要がある。

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参照

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