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第 2 章 アジア 内 需 とともに 成 長 する 我 が 国 持 続 的 成 長 実 現 に 向 けたアジア 太 平 洋 の 枠 組 み 第 図 主 要 国 地 域 の 家 計 貯 蓄 率 の 推 計 Maste

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(1)

2章

な決済手段が確立されていないという課題も存在して

いる。アジア市場においてオンライン・ショッピング

がさらに発展するためには、インターネット・セキュ

リティの強化、電子商取引等の法制度の整備、取引上

のトラブル問題があった場合の相談システムの整備

等、事業者・消費者ともに安心かつ安全にインター

ネット上の取引に参加できる環境整備が求められる。

第2-3-3-4図 中国におけるBtoC電子商取引市

場の推移

52 157 258 561 1,282 2,484 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 2004 2005 2006 2007 2008 2009(年) (億元) 資料:艾瑞咨洵集団(iResearch)レポートから作成。

第2-3-3-5表 アジア各国・地域の所得に占める

オンライン・ショッピング利用額

の割合(2008年)

所得に占め る利用額の 割合(%) 一人当たり 平均年間 利用額 対象者平均 年間所得 (ドル) 一人当たり 国民所得 (ドル) 対象者数 (n) 中国 10.9 2,180 20,075 3,247 504 韓国 10.1 3,008 29,778 17,455 500 インド 9.4 2,208 23,386 961 500 シンガポール 8.6 3,364 39,300 39,462 521 オーストラリア 7.7 2,576 33,661 46,986 506 香港 7.3 2,172 29,675 30,710 500 タイ 7.0 1,552 22,269 4,177 501 日本 6.6 2,708 40,908 38,543 502 備考:一人当たり平均年間利用額は、3 か月間の一人当たり平均利用額か ら算出。

資料:MasterCard“MasterCard Worldwide Insights”から作成。

第2-3-3-6表 最近のネットビジネス分野の日系

企業海外進出事例

(株)ファーストリティリング 2009 年 4 月 中国でネット通販大手アリババと提携 SBI ベリトランス(株) 2009 年 4 月 中国の消費者向けの仮想商店街を本格開業 (株)ヨドバシカメラ 2009 年 7 月 中国語でのインターネット通販サイトを開設 楽天(株) 2009 年 9 月 タイの現地企業を買収し、EC 事業を展開 (株)ビットウェイ (凸版印刷子会社) 2009 年 9 月 香港にて、日本のマンガ配信を開始。他の中国語圏に拡 大予定。 ケンコーコム(株) 2009 年 10 月 シンガポールに子会社設立し、EC 事業を開始 (株)リサーチパネルエイジア (EC ナビ子会社) 2009 年 10 月 中国でインターネット調査サービスの窓口となるサイト を開設 (株)オウケイウェイブ 2009 年 11 月留学や旅行などで日本に興味を持つ中国人向けに中国語の Q & A サイトを開設 トランスコスモス(株) 2009 年 12 月 中国 EC サイト最大手の淘宝と提携し、淘宝と連携する CRM システムを構築するとともに、出店企業向けにカ スタマーサポートやマーケティングなどのサービスを展 開 楽天(株) 2010 年 1 月楽天と百度が中国国内に合弁会社を同年末までに設立。中国国内のネットショップから中国の国内ユーザーに商 品を販売。国際間取引も視野。 (株)リサーチパネルコリア (EC ナビ子会社) 2010 年 3 月韓国でインターネット調査サービスの窓口となるサイトを開設 資料:各種報道資料から経済産業省作成。

(1)所得格差と求められる社会保障整備

急速に拡大しているアジア消費市場であるが、米国

やEUと比較すると、一人当たり消費額や製品・サー

ビスの質ともに未発展な部分も多い。アジア市場が

量・質ともに欧米市場を上回るまでに成長するには、

いくつかの課題が存在する。その一つが、地域内の所

得格差である(第2-3-4-1図)。

2008

年のアジアにおける国・地域別の一人当たり

GDP

は、オーストラリアの46,824ドルが最大で、ミャ

ンマーの446ドルが最小となっており、105倍の格差

がある。一方で、2008年のEUにおける国別の1人当

たりGDPは、ルクセンブルクの62,097ドルが最大で、

ブルガリアの6,561ドルが最小となっており、9.5倍の

格差にとどまっている。

4

さらなるアジア消費の拡大に向けて

第2-3-4-1図 アジアとEUのローレンツ曲線

(2008年)

EU アジア 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 人口 名 目 GDP 備考:直線に近づくほど平等。    名目GDP、人口は、1 人当たりGDPの低い国・地域から順に累積した値。    中国、インドは省市、州別データを使用。

資料:IMF「World Economic Outlook」、CEIC Databaseから作成。 (%)

(2)

また、アジアの国・地域では、家計貯蓄率が高いこ

とが特徴として挙げられる(第2-3-4-2図)。将来の収

入や雇用に対する不安が高く、消費者にリスク回避傾

向があれば、支出を抑え貯蓄に回すようになると考え

られる。

アジアの国・地域において家計貯蓄率が高い理由の

一つとして、社会保障制度が未整備である点が指摘で

きる。例えば、主要国の公的年金カバー率をみると、

米国72.5%、我が国71.4%であるのに対して、アジア

新興国では、中国 17.2%、インドが 5.7%と低くなっ

ている(第2-3-4-3図)。また、MasterCardのアンケー

ト調査

6

によれば、中国の都市、農村とも支出を減ら

す理由として、社会福祉が不十分であることが挙げら

れており、社会保障制度の整備が求められている(第

2-3-4-4

図)。

アジア新興国における社会保障制度の整備により、

消費者の将来への不安が解消され、貯蓄から支出に振

り向けられれば、アジア消費市場のさらなる拡大が期

待される。

(2)サービス産業の発展

アジア消費市場が成長・成熟していくためには、現

地の様々な所得階層のニーズに応えうる、多様なサー

ビスが必要になってくる。そのためには、現在も多く

のアジアの国・地域に残っているサービス産業の規制

等を緩和し、貿易・投資の自由化を図ることで、現地

における消費意欲の向上や市場の拡大・質の向上を実

現することが可能となる。

また、サービス産業が拡大するにつれ、その生産性

向上が重要になってくる。生産性は、民営化や競争を

導入することで大きく向上する

7

と考えられており、

外資系企業の参入は競合相手にもなるとともに、新し

い技術等をもたらす存在になる

8

。異なる経済環境や

商習慣の下で育成された外資系企業の参入は、新しい

ビジネスモデルや新しい経営資源の流入による生産性

向上や国内に無かった新しいサービスの提供などによ

る消費者利益の増大をもたらす。こうしたことから、

第2-3-4-4図 中国の家計支出を減らす理由

所得の減少 不十分 社会福祉が 雇用不安 の支払い 住宅ローン が暗い 景気の見通し 56% 44% 38% 34% 45% 69% 61% 45% 30% 5% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 都市 農村 備考:1.都市(北京、上海、広州)n=4500、農村(江蘇省昆山、 山東省莱西、陝西省神木)n=1800 2.調査期間は 2009 年 7 月∼ 8 月。

資料:MasterCard「MasterCatd Worldwide Insights調査」から作成。 (%)

6 MasterCard Worldwide Insights「中国における政府の景気刺激策と生活者の反応」調査期間 2009 年 7 月∼8 月(n =都市 4500、農村 1800)。

7 “A Handbook of International Trade in Services”, Aaditya Mattoo, Robert M. Stern, and Gianni Zanini, Oxford University Press, 2008 8 “Service Trade and Growth”, Bernard Hoekman, Aaditya Mattoo, The World Bank, January 2008

第2-3-4-3図 主要国の公的年金カバー率

72.5 71.4 69.6 54.6 18.7 18.0 17.2 11.3 10.8 5.7 0 10 20 30 40 50 60 70 80

資料:「OECD Pensions at a Glance」から作成。 (%) イ ン ド ベ ト ナ ム イ ン ド ネ シ ア 中国 タ イ フ ィ リ ピ ン 韓国 オ ー ス ト ラ リ ア 日 本 米国

第2-3-4-2図 主要国・地域の家計貯蓄率の推計

(2008年)

32.9 31.2 27.9 17.7 17.6 17.4 13.7 12.8 12.7 11.1 9.6 7.5 6.6 4.9 2.2 2.2 1.6 0.9 0 5 10 15 20 25 30 35 備考:家計貯蓄率=(可処分所得−消費支出)÷可処分所得とした。 資料:「Euromonitor Consumer International 2008/2009」から作成。 (%) タイ フィリピン 米国 ブラジル ベトナム 英国 インドネシア インド 日本 フランス ロシア 台湾 ドイツ 韓国 マレーシア 香港 中国 シンガポール

(3)

2章

各国・地域におけるサービス産業の発展や消費者利益

の増大にとって、外資系企業への規制緩和等により対

内直接投資を拡大することが重要であると考えられ

9

さらに、サービス産業は製造業と比して雇用吸収力

が高いとされている。サービス産業の発展に伴い、そ

の従事者数が増えれば、消費市場をより拡大すること

につながる。

アジア各国・地域においては、マレーシア、ベトナ

ム等での動きが挙げられる。マレーシアでは、流通・

サービス部門の外資参入規制を定めたガイドライン

10

の改定が予定されている。ベトナムでは、2007 年に

WTO

加盟国に流通サービス分野を開放し、代理店・

卸売・小売サービス・フランチャイズの形態について

は、2009年から、外資100%での進出を可能としてい

る。

このように、サービス分野において規制撤廃・緩和

が進みつつあるものの、アジア各国・地域において

は、外資系企業に対する規制・商慣行が多く残ってい

る(第2-3-4-5表)。これらの規制等に対しては、通商

交渉・対話等を通じ、相手国の事業環境整備を促して

いく必要がある。

(3)商業施設へのアクセスのための交通インフラ整

アジア新興国では、交通インフラの整備も消費拡大

のための重要な要素と考えられる。例えば、中国の農

村部においては、インフラ整備による大都市商業施設

へのアクセス改善等により消費が拡大することが期待

されている。MasterCardのアンケート調査

11

によれ

ば、実施されれば支出を増やす施策として、中国農村

部では、社会福祉の充実(社会保障制度の整備)と並

んでインフラ整備を挙げる消費者が多い(第 2-3-4-6

図)。特にインフラ整備については、商業施設が多く

存在する都市部ではなく、農村部で挙げられているの

が特徴である。中国の都市部と農村部の消費性向

12

を比較すると都市部が71.4%であるのに対し、農村部

は 55.9%と低く、消費が抑制されている(第 2-3-4-7

図)。

消費が抑制されている要因は、中国の都市と農村部

における社会保障制度の整備状況の違いなども考えら

れるが、中国農村部等では、消費における選択肢が不

足していることも一因として考えられる。インフラの

整備により農村地域で入手できる財やサービスが質・

量の両面で改善されれば、流通、商業施設などへの新

たな投資が生まれ、中国農村部やアジア新興国におい

て新たな消費市場が生まれると考えられる。

第2-3-4-5表 アジア各国・地域における外資系

企業への主な規制

中国 ・外資出資比率規制(特定商品を扱い 30 以上の店舗を 有する小売・卸売 49%以下等。外資と中国企業の合 弁の場合、外資は 25%以上) ・流通、電信等の地域制限 ・コンピュータ関連サービスの参入分野制限 ・法定保険分野への参入規制 ・音響・映像の制作・配給等の規制 ・最低資本金規制(概ね 15 万米ドル以上) ・外貨送金規制(購入、販売、配当等において許認可が 必要等) インド ・外資出資禁止(総合小売業) ・外資出資比率規制(小売 51%(ブランドホルダーに 限る)、保険 26%、銀行 74%) ・海外送金規制 ・コンピュータ関連サービスの法人設立制限 ・国際海上貨物運送の拠点設置規制 タイ ・外資出資比率規制(資本金 1 億バーツ未満の小売、一 店 舗 当 り 最 低 資 本 金 1 億 バ ー ツ 未 満 の 卸 売、 広 告 50%未満等。製造業では販売 75%、アフターセール スサービス 60%) ・最低資本金規制(原則 200 万バーツ以上。規制業種は 300 万バーツ以上) ・電気通信分野における提供サービスの制限および外資 規制 インドネシア ・外資出資禁止(スーパー、百貨店を除く小売、通販、 陸上輸送機器レンタル等) ・外資出資比率規制(電気通信 35%以下、商品輸送、 海運、航空関係 49%以下、建設 55%以下、発電・給 電 95%以下等) ・外資進出地域限定(スーパー、百貨店等) マレーシア ・最低資本金規制(外国資本 100%の場合にはローカル 資本やローカルと外資の合弁よりも最低額が高い) ・電気通信分野の外資規制 ・流通分野における拠点設立の制限 フィリピン ・外資出資比率規制(公共事業の建設、修理 25%以下、 広告 30%以下、電気通信、国際海上貨物輸送 40%以 下、建設、投資会社 60%以下等) ・最低資本金規制(小売業では外資の場合 250 万米ドル 等) ・流通における拠点設立の制限 ベトナム ・外資出資比率制限(卸売、小売は 2009 年 1 月から 100%外資の設立が可能、電気通信で不可欠設備を持 つ事業者は 49%以下、不可欠設備を持たない事業者 は WTO 加盟時 51%以下、2010 年 1 月に 65%以下 等サービス分野で段階的に開放) 資料:国際経済交流財団「今後の多角的通商ルールのあり方に関する調査 研究報告書」(2010 年 3 月)、経済産業省通商政策局編「不公正貿易 報告書 2009 年版」、ジェトロ「ビジネス情報・国・地域別情報 (J-FILE)」、貿易・投資円滑化ビジネス協議会「各国・地域の貿易・ 投資上の問題点と要望(2009 年版)」、グローバル・サービス研究 会「アジアの消費者との価値共創を通じたイノベーションへの挑戦」 (平成 21 年 3 月)から経済産業省作成。 9 2007年通商白書。 10 国内取引・協業・消費者省(MDTCC)「国内取引・協業・消費者省(MDTCC)による外資参入に関するガイドライン」。

11 MasterCard Worldwide Insights「中国における政府の景気刺激策と生活者の反応」調査期間2009年7月∼8月(n=都市4500、農村 1800)。

(4)

日台企業アライアンスによる中国展開

コラム16

日台企業間のアライアンスは、世界経済危機以降、中国が「工場」から「市場」として注目される中、中国

の内需市場開拓に対中ビジネスの重点を置き始めた日本企業の経営戦略の変化、中台関係の緩和などを背景に

注目を集めている。ここでは、台湾企業の世界・中国市場におけるプレゼンスの拡大を概観した上で、中国内

需市場開拓における台湾企業とのアライアンスのメリットについて紹介したい。

1.台湾企業の世界・中国におけるプレゼンス

IT

製品の OEM、ODM 化と共に、台湾企業は、半

導体、液晶などの分野で、世界的に大きなシェアを有

している。OEM 製造ベースでみた場合、その世界

シェア(2008年)は、ノートPC92%、マザーボード

は 92%などと、圧倒的な存在感を誇っている(コラ

ム第16-1図)。

第2-3-4-7図 中国の都市・農村の消費性向

(2008年)

71.4 66.6 72.7 78.7 55.9 59.1 50.9 72.3 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 農村部 都市部 備考:消費性向=消費支出(現金消費支出)÷可処分所得(現金収入) 資料:CEIC Databaseから作成。 (%) 陝西省 山東省 江蘇省 中国全体 広東省 上海市 北京市 中国全体

第2-3-4-6図 中国で実施されれば支出を増やす施策

55% 33% 40% 51% 0% 0% 69% 60% 0% 0% 57% 42% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 社会福祉の充実 の購入補助金 自動車・家電 所得税減税 の抑制 不動産価格 インフラ整備 融資環境の整備 都市 農村 備考:1.都市(北京、上海、広州)n=4500、農村(江蘇省昆山、山東 省莱西、陝西省神木)n=1800 2.調査期間は 2009 年 7 月∼ 8 月。

資料:MasterCard「MasterCatd Worldwide Insights 調査」から作成。 (%)

コラム第16-1図 台湾IT製品の世界シェア

(2008年)

(%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 光ディスクドライブ デスクトップ PC サーバーシステム デジタルカメラ モニター LCD モニター マザーボード ノート PC 資料:台湾経済部国際貿易局「2008 対外貿易発展概況」から作成。 25.2 33.3 35.4 39.7 53.1 76.8 92.2 92.4

(5)

2章

こうした世界シェア拡大の背景として、台湾企業生

産拠点の中国シフトがある。台湾企業による大陸への

投資は、特に、中国の産業構造変化による投資の大型

化、IT 組立工場移転の急増や台湾からの対中投資規

制の緩和などを背景に大きく拡大してきている(コラ

ム第16-2図)。

その結果、中国の経済活動における台湾企業の存在

感は大きく、成功例も多い。中国における輸出額上位

10

社のうち 6 社が台湾系企業となる(コラム第 16-3

表)。

コラム第16-3表 2008年の中国における輸出額上位10社

企業名 出資企業【国・地域】 業種 1 鴻富錦精密工業(深セン)有限公司 鴻海精密工業【台湾】 コンピュータ周辺機器 2 達豊(上海)電脳有限公司 広達集団【台湾】 コンピュータ 3 諾基亜通信有限公司 ノキア【フィンランド】 固定電信サービス 4 名碩電脳(蘇州)有限公司 華碩電脳集団【台湾】 コンピュータ関連部品 5 華為技術有限公司 中国民営企業 通信製品 6 英順達科技有限公司 英業達【台湾】 コンピュータ及び周辺機器 7 仁寶資訊工業(昆山)有限公司 仁寶【台湾】 コンピュータ及び周辺機器 8 中国石油天然気集団公司 中国国有企業 エネルギー 9 緯新資通 ( 昆山 ) 有限公司 Wistron 社【台湾】 コンピュータ及び周辺機器 10 中国中化集団公司 中国国有企業 エネルギー 資料:中国商務部投資促進事務局 Web サイトから作成。

2.中国展開における日台アライアンスのメリット

台湾企業が中国市場でのプレゼンスを高める中、日台アライアンスによる中国展開を考える日本企業が増え

つつある

13

。台湾企業は、90年代初頭から始まった中国進出により中国ビジネスに関する高度なリスクマネジ

メント能力を蓄積しており、ノウハウを十分に持たない企業にとっては、特に協業のメリットが大きいと思わ

れる

14

。日台企業アライアンスのメリットとしては、台湾企業が有する、中国との言語的・文化的な共通性、中

国人に対する労務管理力、中央・地方政府の許認可への対応、大陸でのネットワーク構築力(特に販売ネット

ワーク)

15

、経営力(意志決定スピードの速さ等)、ビジネスセンス等と、日本企業が有する、技術力(研究開発、

品質管理)、世界的なブランド力、プロジェクトマネジメント力等の相乗効果が挙げられる。中国現地における

台湾系企業の商工会にあたる「台商協会」は、2005年には中国全土で85団体も設立され、2万社以上が会員と

なっている

16

。これらの台商協会の支援により、台湾企業は中国現地の複雑な商慣行、規制等に対処し、現地市

場において広範なネットワークを構築することに成功している。

近年、小売、飲食、流通といったサービス業で中国展開を考える日本企業が増えているが、第3次産業におけ

る中国での規制は複雑と考えられる。こうした規制に対処する上で、台湾企業との協力関係が有効と思われる。

13 在台湾日系金融機関によれば、日台アライアンスに関する日本企業からの相談が増加している。 14 中国に進出した台湾企業の成功率(黒字比率)は高く、中国進出台湾企業の売上トップ1,000社のうち77.2%が黒字である(「大陸台商 1000大(2008年版)」)。なお、中国進出日本企業の黒字比率は51.9%となっている(JETRO「在アジア・オセアニア日系企業活動調査 実態-中国・香港・台湾・韓国編(2009年度調査)」)。 15 また、台湾人向けの投資保護規定も定められており、台湾同胞は中国の法等に基づき優遇を受けられるとされている(中華人民共和国 台湾同胞投資保護法)。 16 中国国務院台湾事務弁公室Webサイトより。

コラム第16-2図 台湾の対中国直接投資額の推移

1.7 2.5 12.69.6 10.912.3 26.1 15.2 12.5 26.1 27.8 38.6 45.9 69.4 60.1 76.4 99.7 106.9 71.4 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 0 20 40 60 80 100 120 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 (億ドル) (件) 資料:台湾経済部投資審議委員会資料から作成。 投資額 件数(右目盛)

(6)

また、近年では両岸関係の緊張緩和と経済緊密化が進んでいることも、日台アライアンスが注目される理由

となっている。従来、政治的な理由から台湾企業による大陸への投資については、様々な制限が設けられてい

た。2008年5月の台湾政権交代(国民党:馬英九政権)以降、直航解禁、投資制限の大幅緩和等、急速に中台間

の緊張緩和が進みつつある(コラム第 16-4 表)。また、2010 年中に締結される見通しの ECFA(Economic

Cooperation Framework Agreement:両岸経済協力枠組取決め)により、両岸経済関係の更なる緊密化が予想さ

れている(コラム第16-5表)。今後具体化されるECFAの内容によっては、台湾企業とのアライアンスにより中

国市場展開を進めやすくなることが考えられる。

コラム第16-4表 両岸経済・貿易における規制緩和の状況

項目 実施時期 内容 実施済み 「小三通」の緩和拡大と正常化 2008 年 6 月、9 月 金門・馬祖~アモイ間の直接往来全面解禁 台湾の人民元交換業務を開放 2008 年 6 月 許可を得た金融機関による 2 万人民元以内の売買 「大三通」 2008 年 7 月、12 月、2009 年 8 月 海・空の直行便を段階的に実現。航空便は定期便化し、増便。 外資の台湾上場規制の緩和、大陸資本に よる台湾株式市場への投資を一部開放 2008 年 7 月 海外企業の台湾上場資格等の緩和等 中国人の台湾団体旅行の解禁 2008 年 7 月 受入人数 1 日平均 3 千人を上限として、大陸からの台湾団体旅行を解禁 大陸投資金額の上限規制の緩和と審査の 効率化 2008 年 8 月 ・大陸投資の上限が正味資産の 60%まで可能に・投資審査手続きの簡素化 中国資本による台湾投資・事業所設置の 開放 2009 年 7 月 ポジティブリスト方式により段階的に投資開放項目を拡大 (09 年 6 月 30 日発効) 開放項目:製造業 64 項目、サービス業 25 項目、インフラ建 設 11 項目 金融覚書(MOU) 2009 年 10 月 両岸間の金融機関取引の規制緩和 検討中 ECFA(両岸経済協力枠組取決め) 2010 年中(予定) 両岸間の貿易関税撤廃 中国人の台湾自由旅行 未定 個人自由旅行の解禁 資料:台湾行政院大陸委員会、海基会資料等から作成。

中国内需市場獲得においては、現地規制への対応を

はじめ、従来とは異なるビジネスノウハウ・ネット

ワークが必要となる。こうした中、中台関係の緩和を

背景に中国大陸市場にネットワークを深める台湾企業

とのアライアンスに、日本企業の関心は高まっていく

と思われる。

コラム第16-5表 ECFA(両岸経済協力枠組

取決め)の概要

ECFA の位置づけ ・両岸間の経済協力事項のみ規定し、統一・独立 問題など政治問題には触れない。 ・WTO の規定と合致するものとする。 ・経済協力の枠組と達成目標を定め、詳細な内容 については締結後引き続き更なる協議を行う意 向。 内容案 ○財貿易(低関税、貨物輸入制限の開放等) ○サービス貿易 ○投資権益の保障 ○経済協力 ○アーリーハーベスト(早期市場開放)リスト →緊急性があり、高度なコンセンサスが得られ た項目からスタートし、開放範囲を順次広げ ていく ○紛争解決メカニズム ○終了条項 資料:台湾行政院大陸委員会資料から作成。

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