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労働安全衛生研究: 第8巻第1号

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08-01_表紙_cs2_02.indd 2 2015/02/18 10:34:04

(3)

 平成

27 年度から始まる改正労働安全衛生法によるストレスチェック制度は,おそらく

世界で初めての制度である.制度の根幹となるストレスチェック法の標準版となる職業性

ストレス簡易調査票

1)

を開発した者の一人としてこの制度がうまくいくことを願ってい

る.

 この調査票は,平成

7 年から平成 11 年まで行われた労働省委託研究「労働の場におけ

るストレス及びその健康影響に関する研究」班(班長加藤正明東京医科大学名誉教授)の

中の「ストレス測定研究」グループにより開発されたものである.労働の場でストレス対

策に簡便でかつ有用なストレス評価法を開発せよという課題をいただいて行われた.

当時,

労働衛生対策の重要な課題の一つに,ストレスとメンタルヘルス対策が挙げられているに

もかかわらず,ストレスの評価法が確立しておらず,国としても効果的な対策を打ち出す

ことができない現状があったからである.

 研究の当初は,客観的なストレス評価法として生理・生化学的な指標はないか検討した

が,妥当なものを見出すことができなかった.ちょうどその頃,米国労働安全衛生研究所

NIOSH)の職業性ストレス調査票や Robert Karasek と Tores Theorell の開発による

デマンド・コントロール・サポートモデルに基づいた調査票

Job Content Questionnaire

JCQ)などが,翻訳され我が国でもストレス科学研究の中で使用され始めていた.

 さらに遡ること数年,平成元年に,私は職業性ストレス研究をリードしていたスウェー

デン王国カロリンスカ医科大学ストレス研究所に

1 年間ほど留学をした.研究所は,スト

レスに関する「人―環境モデル」を提唱した

Lennart Levi 所長の下に優秀なスタッフが

集っており,

JCQ を用いた研究の成果が次々と発表され,連日活発な議論が行われており,

色々と勉強することができた.そして帰国後,労働省委託研究班に加えていただいたので

ある.研究班には,

JCQ を使用して研究を行っていた川上憲人先生(当時岐阜大学医学部)

や,

NIOSH 調査票を用いて研究を行っていた原谷隆史先生(産業医学総合研究所)が班

員として参加しておられた.そのような背景の下,私たちは,労働者のストレス状態を,

心理的ストレス反応だけでなく,デマンド,コントロール,人間関係等の仕事のストレス

要因と,上司,同僚,家族・友人の支援の有無を同時に把握することができる調査票を開

発することはできないかと考えたのである.そして出来上がったものが全

57 項目からな

る職業性ストレス簡易調査票であった.その解析結果は,労働者や産業保健スタッフが理

解しやすいようにレーダーチャートの形で出力され,抑うつや不安などの心理的ストレス

反応の状態のみならず,仕事の量的・質的な負担などの仕事のストレス要因や上司,同僚

などの支援に関するレーダーチャートが示されるようになっており,調査票は,労働者個

人のセルフチェックばかりでなく,産業保健スタッフの面談の際の補助的なツールとして

使用可能なものとなった.一方,健康影響評価グループの川上憲人先生のチームはこの調

査票から,仕事の量的なデマンドと仕事のコントロール度及び上司,同僚の支援に関する

ストレスチェック制度の開始にあたって

ストレスチェック制度の開始にあたって

下 光 輝 一

公益財団法人健康・体力づくり事業財団理事長

健康日本 21 推進全国連絡協議会会長

東京医科大学名誉教授

巻 頭 言

(4)

質問項目合計

12 項目を抜き出し,仕事のストレス判定図として,部署ごとのストレスの

健康リスクを数値として表わすことができるツールを開発し,職場環境の評価と改善に役

立てることができるようになった.

 平成

12 年にこれらのツールに関する報告書が発表され,産業現場で用いられるように

なると,時間が経つにつれて全国の産業保健スタッフからその有用性について高く評価さ

れるようになり,産業現場で汎用されるようになった.

 また,労働者個人のストレスと部署毎の職場環境の評価が可能になったことにより,我

が国のストレスとメンタルヘルス対策は新たな地平が切り開かれた.同年,厚生労働省は,

「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を打ち出し,

4 つのケア(労働

者自身によるセルフケア,ラインによるケア,産業保健スタッフによるケア,事業場外資

源によるケア)を提唱した.その後も,私たちはさらにこれらのツールを用いて,職場環

境改善のための方法の開発,そのためのツール(アクションチェックリスト)の開発など,

研究を継続的に行った.

 このような流れの中で,平成

22 年長妻昭厚生労働大臣の時代に,自殺予防対策の一環

として,労働安全衛生法の改正によるストレスチェック制度の創設が図られた.本法案は,

政権交代により一度は国会で廃案となったが,再度上程され平成

26 年 6 月に改正法案が

成立したのである.

 かつて,ストレス研究所に留学した時に,

Levi 先生は,「政策と科学研究の間には大き

なギャップがある,研究のための研究を行うのではなく,その成果をいかに実践(施策)

に応用して行くのかについて考えなければならない」と常に心を砕かれていた.私にもそ

の役割を果たすよう期待しておられ,

「日米欧は脱工業化社会に進んでおり,この三極で

職業性ストレスに関する国際会議を開き,ストレス対策のアクションを取っていきたい」

と事あるごとに言われていた.

 帰国後,大学の公衆衛生学講座の主任教授を拝命した後の平成

10 年 10 月 31 日~

11 月 1 日に Levi 先生と NIOSH の Steven Sauter 部長と私が発起人となって,WHO,

ILO,EC,NIOSH,厚生省,労働省,カロリンスカ研究所などの多くの団体の後援の下,

東京医科大学主催で日米欧のストレス研究者を集めて三極国際会議を開催し,議論を行っ

た.その成果を受けて,

11 月 3 日には東京医科大学国際シンポジウムを開催させていた

だいた.最後に「日米欧脱工業化地域における

職業性ストレスと健康に関する東京宣言」

を採択したが,その冒頭において「研究によって得られた知識と知識を実践に移すことの

ギャップを埋めることが重要である」と起草させていただいた

2)

 私たちは,平成

7 年から 5 年間にわたる労働省委託研究費を頂いて調査票の開発を行い,

また今日までの間に職場環境の改善に関する方法などの研究開発も行ってきた.一方,行

政の方ではこれらの研究を基にして,

「労働者の心の健康づくり指針」

「職場復帰支援の

ための指針」などが打ち出され,今回労働安全衛生法が改正され,法律の下で労働者のス

トレスチェックを行うことになったが,ストレスチェック制度のための標準的な質問紙と

して職業性ストレス簡易調査票が採用されたことを考えると,我が国のストレスとメンタ

ルヘルス対策(施策)とストレス科学研究が非常にうまくタイアップして進んできたよう

に思われる.施策と研究のギャップを埋めるように,という

Levi 先生の教えが生かされ

つつあることを実感している.

1) 職業性ストレス簡易調査票 http://www.tmu-ph.ac/topics/stress_table.php

2) Levi L, Sauter SL, Shimomitsu T: Work-Related Stress ― It's Time to Act.

Journal of Occupational Health Psychology 4(4): 394-396, 1999

「労働安全衛生研究」

(5)

1 はじめに  貯槽などに蓄えられた大量の化学物質は,蓄熱しやす いことから,中で発熱反応が進行した時には,発生した 熱が外部に逃げずに内部の化学物質の温度を上昇させ, その温度上昇によって反応速度が増していく.それを繰 り返すことで最終的に爆発的な反応に至る.近年,大規 模な化学プラントでの死傷者を伴う4 件の爆発災害が断 続的に発生しており1-5),その4 件の災害のうち 3 件で, 操作等の失敗から化学反応による発熱速度が放熱速度を 上回り,爆発的な反応に至ったことが災害のきっかけと なっている.このような爆発災害を防止するためには, 化学プロセス内で扱われる化学物質・反応の熱的危険性 を事前に把握し,その危険性を顕在化しないための措置 を講ずることが必要である.  大量に貯槽に蓄えられた化学物質の中心部分は,物質 の熱移動が遅いため,発熱が生じてもほとんど冷却され ることがなく,擬似的な断熱状態と見なせる.したがって, 大量に蓄えられた化学物質の熱的危険性を評価するため には,断熱条件における発熱挙動の把握が重要である. これまでに,断熱条件における化学物質の熱的危険性に ついて,各種の評価手法が開発されている.危険物の輸 送に関する国連勧告では,米国式SADT 試験,断熱貯蔵 試験,等温貯蔵試験,蓄熱貯蔵試験などが例示されてい る6).これらの試験では,微小な発熱を検知するために, 多量の試料を要するものが多く,試験時に起こり得る火 災や爆発の危険性を考慮すると通常の実験設備で評価を 行うことは極めて困難である.  そこで,汎用性に優れ,かつ精密に断熱条件下での化

示差型断熱熱量計の熱的危険性評価に対する適用範囲の検討

佐 藤 嘉 彦

*1

 板 垣 晴 彦

*1 学物質の熱安定性を評価するための研究が行われ,琴寄 らにより自然発火試験装置(SIT)7-9),Townsend らによ

りAccelerating Rate Calorimeter(ARC)10-12)などが開

発されてきた.これらは,いずれも数mL と比較的少な い試料で,良好な断熱制御性能を持つ温度測定装置であ り,その構造の特徴から,SIT は空気による酸化で発熱 する自然発火性の評価,ARC は自己反応性物質の熱安定 性の評価に広く使用されている.  しかし,ARC では高い耐圧性を持つ剛直な金属製の試 料容器の外側の温度を測定して断熱制御をするため,試 料から発生する熱の一部が試料容器の温度を上げること に消費される.このため試料容器の熱容量が無視できず, ARC の測定データに影響を与える.そのため実際のプラ ントで生じる発熱挙動を評価するためには,この影響を なくすように測定データを補正する必要がある10, 13).こ の補正はφ補正と呼ばれる.φ補正を行う際には,見か けの活性化エネルギーを,着目している反応率の範囲及 び温度範囲で一定であると仮定する.しかし,複数の反 応が重複する反応系では,それぞれの活性化エネルギー は異なるため,φ補正を行っても実際のプラントで生じ る発熱挙動を正確に評価できない.これは,実際のプラ ントでの危険性を顕在化しないための措置を検討する際 に問題となり得る.  その問題を解決し,φ補正をすることなく,着目して いる反応の発熱挙動を直接測定できるとされる示差型の 断熱熱量計(Differential Accelerating Rate Calorimeter, DARC)が近年開発された14).DARC は,熱容量がほぼ 同一の試料容器と参照容器の2 つの容器を有している. 両者の温度差がなくなるように,それぞれの容器に設置 された補償ヒーターにより容器を加熱することにより, 試料容器に消費される熱を補償し,試料から発生する熱 がすべて試料の温度上昇に費やされる.そのため,実際 のプラントで存在するような混合物など,複数の反応が   化学プラントなどにおいて,大量に蓄えられた化学物質の中心部分は,物質の熱移動が遅いため擬似的な断 熱状態となる.それは蓄熱による爆発火災事故をもたらす可能性があり,それらの事故を防止するには断熱条件 における発熱挙動の把握が重要である.最近,着目している反応の断熱条件における発熱挙動を直接測定できる 示差型の断熱熱量計(DARC)が開発された.しかし,DARC による熱的危険性の評価例は少なく,その適用範 囲は十分に分かっていない.そこで,DARC の熱的危険性に対する適用範囲を明確にすることを目的として,反 応機構が既知であり,断熱熱量計の性能評価によく用いられているジ-tert- ブチルペルオキシド(DTBP)とト ルエンの希釈溶液及びDTBP 単体の熱分解挙動を測定し,広く用いられている断熱熱量計(ARC)との比較を行っ た.その結果,ARC では評価が困難であった発熱量 100 J/g 未満の微小な発熱を示す反応の熱的危険性評価に, DARC が有効であると考えられた.一方,蒸気圧を有する発熱量の大きい物質の熱的危険性評価には適用すべき ではないと考えられた.  キーワード:熱的危険性,断熱熱量計,DARC,ARC,ジ -tert- ブチルペルオキシド,適用範囲 特集 労働安全衛生の新技術 † 原稿受付 2015年01月05日 † 原稿受理 2015年01月30日

J-STAGE Advance published date: February 20, 2015 *1 (独)労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ 連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6

(独)労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ 佐藤嘉彦*1 E-mail: [email protected]

(6)

「労働安全衛生研究」 25 ℃から 300 ℃まで,10 ℃ /min の速度で昇温して,こ の温度域での熱流束を測定した.得られた熱流束を解析 して,発熱量を算出した.それぞれの試料で3 回ずつ測 定し,その平均値を発熱量とした.  さらに,DSC のような外部から加熱したときの測定後 の液相残留物を分析するために,グラム単位の試料の熱 量測定が可能な高感度熱流束型熱量計による測定を行っ た.装置にはC80(Setaram Instrumentation, France) を用いた.約1 mL の試料をハステロイ C 製耐圧容器に 充てんし,20 ℃から 300 ℃まで,0.5 ℃ /min の速度で 昇温して,この温度域での熱流束を測定した.得られた 熱流束を解析して,発熱量を算出した.2 回測定を行い, 結果に再現性があることを確認した.  測定後の気相及び液相については,ガスクロマトグラ フィ及びガスクロマトグラフィ-質量分析法により,そ の成分分析を行った.無機ガス及び炭素数1 及び 2 の炭 化水素の分析には,装置はGC-14B(島津製作所)を使 用し,検出器は熱伝導度型検出器(TCD)とした.カラ ムには長さ2 m,内径 3 mm,材質がステンレス鋼の無 機 ガ ス 分 析 用 パ ッ ク ド カ ラ ム(SHINCARBON ST 50/80,信和化工)を使用した.カラム温度を 40 ℃で 3 min 保持した後,昇温速度 20 ℃ /min で 200 ℃まで加熱 してから,200 ℃で 4 min 保持した.気相における炭素 数3 以上の炭化水素の分析には,装置は GCMS-QP2010 (島津製作所)を使用し,検出器には質量分析器(MS) を使用した.気化室及びインターフェイスの温度,スプ リット比はそれぞれ150 ℃,5 とした.気相の生成物の 分 析 に は, 長 さ25 m, 内 径 0.52 mm, 膜 厚 5 µm の 100% ジメチルポリシロキサン無極性キャピラリーカラ ム(HiCap-CBP,島津製作所)を用い,カラム温度を, 35 ℃で 5 min 保持した後,昇温速度 5 ℃ /min で 200 ℃ まで昇温してから,200 ℃で 5 min 保持した.50-200 の 質量数についてスキャンモードで質量分析を行った.液 相の生成物の分析には,長さ30 m,内径 0.25 mm,膜 厚0.25 µm の 100% ジメチルポリシロキサン無極性キャ ピラリーカラム(HiCap-CBP,島津製作所)を用いた. カラム温度を,35 ℃で 5 min 保持した後,昇温速度 5 ℃ /min で 250 ℃まで昇温してから,250 ℃で 15 min 保持 した.50-200 の質量数についてスキャンモードで質量分 析を行った. 3 結果及び考察 1) 1) DTBP-トルエン混合溶液  図1 に DTBP-トルエン希釈溶液についての DARC の 測定結果及びARC のφ補正後の結果を示す. ARC の測 定結果のφ補正は,Huff 法18-20)によって行った.φ補正 時に使用する試料の平均比熱は,ARC で測定された温度 範囲の平均温度における,それぞれの物質の比熱の文献 値21, 22)をDTBP とトルエンのモル比で比例配分すること により求めた.試料容器の平均比熱は,ARC で測定され た温度範囲の平均温度におけるハステロイC の比熱の文 献値23)を用いた.DARC の測定結果において,30% 及 重複していると考えられる反応系の熱的危険性を正確に 評価できることが期待される.しかし,DARC による化 学物質の熱的危険性の評価例は少なく15-17),その適用範 囲は十分に分かっていない.適用範囲について詳細に検 討するためには,その装置内でどのような反応が生じて いるかを把握することが必要である.その検討は,反応 機構が既知の反応についての分析を行い,DARC で生じ ている反応が着目している反応であるかを評価すること によって可能となると思われる.  そこで本研究では,DARC の熱的危険性に対する適用 範囲を確立することを目的として,反応機構が既知であ り,断熱熱量計の性能評価によく用いられているジ -tert-ブチルペルオキシド(以下DTBP)とトルエンの希釈溶 液及びDTBP 単体の熱分解挙動を測定し,一般的な熱的 危険性評価に用いられている示差走査熱量測定(以下 DSC)及び ARC との比較を行った.また,ガスクロマ トグラフィにより反応生成物の分析を行い,DARC 内で 生 じ て い る 反 応 経 路 を 推 測 し た. 以 上 の 結 果 か ら, DARC の熱的危険性評価への適用範囲を検討した. 2 実験 1) 1) 試料  測定される発熱挙動,反応速度論的パラメータの変化 の検討には,ジ-tert- ブチルペルオキシド(東京化成工業, 以下DTBP)及びトルエン(和光純薬工業)を用いた. DTBP を試薬のまま測定するとともに,トルエンで 5, 10, 15, 20, 30, 40% に希釈した DTBP を供した. 2) 2) 測定方法  DTBP 及び DTBP- トルエン希釈溶液の測定には Euro-ARC( 以 下 ARC,Thermal Hazard Technologies, UK) 及 びDifferential Accelerating Rate Calorimeter( 以 下 DARC,Omnical Inc., USA)を用いた.DTBP-トルエン 希 釈 溶 液 に つ い て は,ARC による測定の時には 6 g, DARC による測定の時には 5 g の試料をニッケル-クロ ム合金(ハステロイC)製の試料容器に充てんし,測定 を行った.DTBP については,0.34, 0.52, 0.75. 1.0, 1.54 g の試料をハステロイ C 製の試料容器に充てんし,ARC 及びDARC による測定を行った.測定は,Heat-Wait-Search モ ー ド(ARC) 及 び Heat-Soak-による測定を行った.測定は,Heat-Wait-Search モ ー ド (DARC)によって行った.測定モードの呼称は異なるが, 両者の測定方法は同一である.測定を開始する温度,待 機時間及び昇温幅は,それぞれ80 ℃,15 分及び 5 ℃と した.それぞれの試料で2 回ずつ測定し,再現性がある ことを確認した.ARC と DARC の発熱検知感度はそれ ぞれ0.02,0.01 ℃ /min とした.ARC の試料容器は,内 径約2.54 cm の球形であり,内容積は約 8.6 cm3であった. DARC の試料容器は,内径約 1.88 cm,高さ約 6 cm の円 筒形であり,内容積は約16 cm3であった.  また,発熱量の比較を行うために,上記と同じ試料に ついて示差走査熱量計(DSC)による測定を行った.装 置にはDSC1(Mettler-Toledo, Switzerland)を用いた. 約1 mg の試料をステンレス鋼製耐圧容器に充てんし,

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Vol. 8, No.1, pp. 03-12, (2015) び40%DTBP-トルエン希釈溶液の発熱速度が,約 200 ℃ 以上において約100 ℃ /min でほぼ一定になっているが, これはDARC のヒーターの最大昇温能力が 100 ℃ /min 程 度 で あ る こ と に 由 来 す る も の で あ る. 表1 に は, DTBP-トルエン希釈溶液についての ARC 及び DARC で 得られた発熱開始温度,最終到達温度及び断熱温度上昇 を示す.これらの値は2 回測定した結果の平均値を示し ている.なお,発熱開始温度,最終到達温度及び断熱温 度上昇はARC のφ補正後の結果を示し,自己発熱速度 の最大値はARC の実測値を示している.実測された発 熱開始温度は,全体的にARC の方が高く測定された.こ れは,もっぱら装置の測定感度に依存している.φ補正 後のARC の測定結果と,DARC の測定結果は,発熱初 期ではよく一致し,ARC のφ補正結果を低温側に外挿す ると,DARC で実測された発熱開始温度が予測できる.  最終到達温度及び断熱温度上昇については, 5%DTBP-トルエン希釈溶液ではARC の感度不足のため断熱温度 上昇の値が一致しなかった.10% 及び 15%DTBP-トルエ ン希釈溶液ではARC により得られた最終到達温度が高 く,断熱温度上昇が大きくなる傾向が見られた.これは, DARC の試料容器と参照容器の重量が完全には一致して いないため,わずかに試料容器の熱容量の影響が表れた ものと考えられる.一方,20% ~ 40%DTBP-トルエン希 釈溶液では,DARC により得られた最終到達温度が高く, 断熱温度上昇が大きくなった.  表2 には,ARC のφ補正結果及び DARC の測定結果 により得られた断熱温度上昇から,式(1) により発熱量 を算出した結果を,DSC 及び C80 の測定結果と併せて 示した.   ΔQ = Cp∙ ΔT 式(1) ここでΔQ は発熱量,CpはDTBP-トルエン希釈溶液の平 均比熱,ΔT は断熱温度上昇である.なお,DTBP-トルエ ン希釈溶液の比熱は,ARC のφ補正後の結果及び DARC の測定結果の平均温度における,それぞれの物質の比熱 の文献値21, 22)DTBP とトルエンのモル比で比例配分す ることにより求めた.また,DTBP の熱分解反応が 1 次 反応であるとして反応速度論的解析を行った際の活性化 エネルギー及び前指数因子を併せて表2 に示した.  断熱条件では系内の温度と反応物濃度,発熱速度と反応 速度が等価であるため,発熱速度は式(2) で表される10, 11)    式(2) 表1 DTBP-トルエン希釈溶液について ARC 及び DARC で得られた発熱開始温度, 最終到達温度,自己発熱速度の最大値及び断熱温度上昇 DTBP 濃度 [%] 発熱開始温度 [℃ ] 最終到達温度 [℃ ] (dT/dt)max*1 [℃ /min] 断熱温度上昇 [℃ ]

 ARC*2 DARC  ARC*2 DARC ARC*3 DARC  ARC*2 DARC

5  130 110  149 149 0.03 0.06  19 39 10  124 115  186 173 0.16 0.63  62 58 15  118 115  214 198 0.84 7.45  96 83 20  118 115  238 245 3.50 66.4  120 130 30  114 110  280 301 31.9 91.4  166 191 40  113 105  313 326 58.4 89.6  200 221 *1 自己発熱速度の最大値 *2  補正値を示す *3  実測値を示す 表2 DTBP-トルエン希釈溶液について ARC 及び DARC で得られた発熱量,活性化エネルギー及び前指数因子 DTBP 濃度 [%] 発熱量 [J/g] 活性化エネルギー [kJ/mol] 前指数因子 [/min]

 ARC DARC DSC C80  ARC DARC  ARC DARC

5  30 60 143  247 148  1.96×1029 3.28×1016 10  102 93 207  159 152  7.20×1017 1.09×1017 15  162 138 291  158 156  5.48×1017 9.17×1017 20  209 228 332 328  161 155  1.53×1018 1.83×1017 30  304 355 505  159 155  9.47×1017 1.94×1017 40  384 427 620 615  160 155  1.04×1018 2.48×1017 図1  DTBP-トルエン希釈溶液についての DARC の測定結果及 びARC のφ補正後の結果(線:DARC の測定結果,点: ARC の補正結果) 㻝㻜㻜 㻝㻡㻜 㻞㻜㻜 㻞㻡㻜 㻟㻜㻜 㻟㻡㻜 㻝㻜㻙㻞 㻝㻜㻙㻝 㻝㻜㻜 㻝㻜㻝 㻝㻜㻞 㻝㻜㻟 㻿 㼑 㼘㼒 㻙㼔㼑㼍㼠㼕 㼚㼓㻌㼞㼍㼠㼑㻌㼇䉝㻛㼙 㼕㼚㼉 㼀㼑㼙㼜㼑㼞㼍㼠㼡㼞㼑㻌㼇䉝㼉 㻌㻡㻑 㻌㻝㻜㻑 㻌㻝㻡㻑 㻌㻞㻜㻑 㻌㻟㻜㻑 㻌㻠㻜㻑

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「労働安全衛生研究」  ここで,T, t, A, E, R, C0, n, Tf及びΔT は,それぞれ温 度,時間,前指数因子,活性化エネルギー,気体定数, 反応物の初期濃度,反応次数,最終到達温度及び断熱温 度上昇を示す.擬0 次反応速度定数k* を式 (3) のように 定義すると,式(2) は式 (4) のように表される10, 11)    式(3)    式(4)  式(4) は,温度の逆数に対してk* の対数をプロットす ると,そのプロットの傾きと切片から活性化エネルギー と前指数因子を求めることができることを意味する. DTBP の熱分解は 1 次反応で進行することが知られてい るため24),式(4) の濃度項は無視して,傾きから活性化エ ネルギー,切片から前指数因子を算出した.それぞれの 結果を比較すると,5%DTBP-トルエン希釈溶液では,発 熱速度はARC の測定限界付近となり,発熱量,活性化エ ネルギー及び前指数因子の値が大きくずれるが,DARC では感度良く測定できており,活性化エネルギー及び前 指数因子の値のずれも小さい.また,Kersten ら25)が各 種の断熱熱量計による評価によって得た活性化エネル ギーである154.5 ∼ 161.8 kJ/mol 及び前指数因子 2.0× 1017 ∼ 2.0×1018 /min に近い値となっている.このことか ら,微小な発熱を示す反応性物質の熱的危険性評価には ARC よりも DARC が有効であるといえる.10% ~ 20% DTBP-トルエン希釈溶液では,発熱量,活性化エネルギー 及び前指数因子について,ARC と DARC の評価結果は ほぼ一致した.30 ~ 40%DTBP-トルエン希釈溶液では, 活性化エネルギー及び前指数因子はおおよそ一致したが, 発熱量は,DTBP の濃度が高くなるとともに,DARC の 方が大きくなった.これは,ARC と DARC で生じてい る反応の律速反応は同一であるが,DARC の方がより反 応が進行していることを示唆している.  測定後の残留物をGC/MS により分析した際のトータ ルイオンクロマトグラムを図2に示す.図2に示すように, DTBP の濃度が高くなるとともに,各種芳香族化合物の イオンピークが増大した.これらの芳香族化合物は明ら かにトルエンに由来するものであり,DTBP の分解によっ て発生したラジカルによって,希釈剤のトルエン同士が 反応していることを示している.  5% ~ 20%DTBP-ト ル エ ン 希 釈 溶 液 で は,ARC と DARC の残留物を比較すると,ほとんど生成物の組成に 変化は見られなかった.すなわち,両者において中で起 こっている反応及び反応の進行度がほとんど同じである と考えられる.30%,40%DTBP-トルエン希釈溶液では, ARC と DARC の残留物を比較すると,DARC の残留物 の方が残留したトルエンが少なくなり,トルエン同士が 結合した化合物であるビベンジルなどが多く存在した. 同濃度の希釈溶液において,発熱量は,DTBP の濃度が 高くなるとともに,DARC の方が大きくなっているため, 発熱量の増加は,トルエン同士の結合反応と関係がある と考えられる.トルエン同士が結合した化合物の1 つと してビベンジルに注目し,その結合反応が発熱反応であ るかを検討した.DTBP から生成したラジカルにより, トルエン上で水素引き抜き反応が起こり,トルエン同士 が結合してビベンジルが生成する反応を,図3 に示す反 応式として仮定した.  ここで,それぞれの物質の生成熱には文献値26-29)を用 い,図3 の反応式からその反応熱の理論値を計算すると -249.0 kJ/mol となり,発熱反応であることが分かった. すなわち,DARC 内でトルエンの結合反応が増大するこ とにより,DARC で測定される発熱量が大きくなったと 考えられる.一方,40%DTBP-トルエン希釈溶液について, C80 での測定後の残留物を GC/MS により分析した結果, 㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻠㻜 㻡㻜 㻢㻜 㻌 㻠㻜㻑 㻟㻜㻑 㻞㻜㻑 㻝㻡㻑 㻝㻜㻑 㻵㼚 㼠㼑 㼚㼟 㼕㼠 㼥 㻾㼑㼠㼑㼚㼠㼕㼛㼚㻌㼠㼕㼙㼑㻌㼇㼙㼕㼚㼉 㻡㻑 㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻠㻜 㻡㻜 㻢㻜 㻡㻑 㻝㻜㻑 㻝㻡㻑 㻞㻜㻑 㻟㻜㻑 㻌

㻵㼚㼠㼑㼚㼟㼕㼠㼥

㻾㼑㼠㼑㼚㼠㼕㼛㼚㻌㼠㼕㼙㼑㻌㼇㼙㼕㼚㼉

㻠㻜㻑 図2  測定後の残留物を GC/MS により分析した際のトータル イオンクロマトグラム(上:ARC 測定後残留物,下: DARC 測定後残留物) =

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Vol. 8, No.1, pp. 03-12, (2015) 速度より小さくなり,緩和した発熱挙動を示した.  表4 には,ARC のφ補正結果及び DARC の測定結果に より得られた断熱温度上昇から発熱量を算出した結果を示 す.なお,DTBP の比熱は,ARC のφ補正後の結果及び DARC の測定結果の平均温度における比熱の文献値21) 使用した.また,DTBP の熱分解反応が 1 次反応である として反応速度論的解析を行った際の活性化エネルギー 及び前指数因子を併せて表4 に示す.発熱量は,断熱温 度上昇の測定結果からもわかるように,ARC による評価 結果は0.34 g の試料量の結果以外はおおむね一致したが, DARC による評価結果は ARC の評価結果よりも小さく なった.この結果は,DARC 内で DTBP が完全に反応し ていないことを示唆している.また,活性化エネルギー 及び前指数因子については,DARC で測定された試料量 0.34 g 及び 0.52 g の結果から評価された活性化エネル ギー及び前指数因子は,他の評価結果から大きく異なっ た.また,飯塚らによって行われたARC による DTBP の測定では,活性化エネルギーは150.4 ∼ 153.4 kJ/mol, 前指数因子は1.2×1016 ∼ 4.5×1016 /min とされており30), DARC で測定された試料量 0.34 g 及び 0.52 g の結果か ら評価された活性化エネルギー及び前指数因子は,それ らとも大きく異なる.この結果は,試料量が少ない時に DARC で生じている反応は,他の条件で生じている反応 と異なっていることを示唆している.  測定後の残留物をGC/MS により分析した際のトータ ルイオンクロマトグラムを図5 に示す.また,1.54 g の その生成物の組成はDARC のものより ARC のものに近 かった.従って,30%,40%DTBP-トルエン希釈溶液に おいてDARC 内で生じている反応は,他の熱量計内で生 じている反応よりも進み過ぎていると考えられる.この ことから,自己反応性物質の濃度が高い場合,DARC で 測定される断熱温度上昇及びそれから推測される発熱量 の結果は,過大となる可能性があると考えられる. 2) 2) DTBP  図4 に DTBP についての DARC の測定結果及び ARC のφ補正後の結果を示す.ARC の測定結果のφ補正は, Huff 法18-20)によって行った.φ補正時に使用する試料の 平均比熱は,ARC で測定された温度範囲の平均温度にお ける,DTBP の比熱の文献値21)を用いた.試料容器の平 均比熱は,ARC で測定された温度範囲の平均温度におけ るハステロイC の比熱の文献値23)を用いた.DARC の 測定結果において,試料量1.00 g 及び 1.54 g の時の発熱 速度が,約200 ℃以上において約 100 ℃ /min でほぼ一 定になっているが,これはDARC のヒーターの最大昇温 能力が100 ℃ /min 程度であることに由来するものであ る.表3 には,DTBP についての ARC 及び DARC で得 られた発熱開始温度,最終到達温度及び断熱温度上昇を 示す.これらの値は2 回測定した結果の平均値を示して いる.なお,発熱開始温度,最終到達温度及び断熱温度 上昇はARC のφ補正後の結果を示し,自己発熱速度の 最大値はARC の実測値を示している.ARC によって測 定された発熱開始温度がDARC による発熱開始温度より も高くなることはDTBP-トルエン希釈溶液の時と変わら ないが,最終到達温度及び断熱温度上昇は,DTBP-トル エン希釈溶液の時の傾向と異なった.具体的には,φ補 正後のARC の最終到達温度及び断熱温度上昇は,0.34 g の試料量の結果以外はおおむね一致したが,DARC で測 定された最終到達温度は,φ補正後のARC での結果よ り低くなり,断熱温度上昇は小さくなった.また,試料 量が0.34 g 及び 0.52 g において,DARC で測定された 自己発熱速度は,試料量が0.75 g 以上における自己発熱 2) + O O + OH 2 2 2) 㻝㻜㻜 㻞㻜㻜 㻟㻜㻜 㻠㻜㻜 㻡㻜㻜 㻝㻜㻙㻞 㻝㻜㻜 㻝㻜㻞 㻝㻜㻠 㻝㻜㻢 㻝㻜㻤 㻝㻜㻝㻜 㻿㼑㼘㼒㻙㼔㼑㼍㼠㼕㼚㼓㻌㼞㼍㼠㼑㻌 㼇䉝㻛㼙㼕㼚㼉 㼀㼑㼙㼜㼑㼞㼍㼠㼡㼞㼑㻌㼇䉝㼉 㻌㻜㻚㻟㻠㻌㼓 㻌㻜㻚㻡㻞㻌㼓 㻌㻜㻚㻣㻡㻌㼓 㻌㻝㻚㻜㻜㻌㼓 㻌㻝㻚㻡㻠㻌㼓 表3 DTBP について ARC 及び DARC で得られた発熱開始温度,最終到達温度,自己発熱速度の最大値及び断熱温度上昇 DTBP 重量 [g] 発熱開始温度 [℃ ] 最終到達温度 [℃ ] (dT/dt)max*1 [℃ /min] 断熱温度上昇 [℃ ]

 ARC*2 DARC  ARC*2 DARC ARC*3 DARC  ARC*2 DARC

0.34  127 110  342 252 0.04 9.84  215 142 0.52  115 105  469 286 0.19 10.1  354 181 0.75  109 100  490 240 1.69 69.0  381 140 1.00  103 100  507 267 15.0 80.6  404 167 1.54  103 95  454 283 52.3 79.8  351 188 *1  自己発熱速度の最大値 *2  補正値を示す *3  実測値を示す 図3  反応熱の推算の際に考慮したトルエンからビベンジルが 生成する反応式 図4  DTBP についての DARC の測定結果及び ARC のφ補正 後の結果(線:DARC の測定結果,点:ARC の補正結果)

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「労働安全衛生研究」 DTBP を測定した後の気体生成物を GC-TCD で分析した 際のガスクロマトグラム及びGC/MS で分析した際のトー タルイオンクロマトグラムをそれぞれ図6,7 に示す. ARC での測定後の残留物には,未反応の DTBP が 0.34 g 及び 0.54 g の試料量の時にはわずかに存在したが,0.77 g 以上の試料量の時にはほとんど検出されなかった.ま た,他の主要な生成物にはtert- ブタノールを中心とした アルコール類,オキシラン類及びその派生物などであっ た.一方,DARC での測定後の残留物には,未反応の DTBP が多く存在した.特に,0.34 g 及び 0.54 g の試料 量の時には,多くの未反応のDTBP が存在した.他の主 要な生成物には,オキシラン類,アルコール類,ケトン 類及びその派生物などであった.ARC での測定後の残留 物と比較すると,アルコール類が少なくなる一方,ケト ン類は他種類のものが検出された.また,ARC での測定 後の気体生成物はメタンが主成分であったが,DARC で の測定後の気体生成物は,メタンの他にエタンが同程度 生成していた.さらに,ARC での測定の測定後の気相に に残存するDTBP より,DARC での測定後の気相に残存 するDTBP の量はきわめて多かった.  飯塚らにより,液相でのDTBP の熱分解の反応経路が 提示されている30).それによれば,DTBP の熱分解により, メタン,エタン,オキシラン類,アルコール類及びケト 表4 DTBP について ARC 及び DARC で得られた発熱量,活性化エネルギー及び前指数因子 DTBP 重量 [g] 発熱量 [J/g] 活性化エネルギー [kJ/mol] 前指数因子 [/min]

ARC DARC ARC DARC ARC DARC

0.34 486 298 220 62 4.96 × 1025 3.17 × 105 0.52 862 380 136 72 1.01 × 1015 4.43 × 106 0.75 937 294 152 126 1.34 × 1017 1.09 × 1014 1.00 1001 351 159 143 1.03 × 1018 1.94 × 1016 1.54 841 395 154 139 3.45 × 1017 9.68 × 1015 㻜 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢 㻣 㻝㻚㻡㻠㻌㼓 㻝㻚㻜㻜㻌㼓 㻜㻚㻣㻡㻌㼓 㻜㻚㻡㻞㻌㼓 㻜㻚㻟㻠㻌㼓 㻌 㻵㼚㼠㼑㼚㼟㼕 㼠㼥 㻾㼑㼠㼑㼚㼠㼕㼛㼚㻌㼀㼕㼙㼑㻌㼇㼙㼕㼚㼉 㻻㼤㼕㼞㼍㼚㼑㼟 㻭㼘㼏㼛㼔㼛㼘㼟 㻷㼑㼠㼛㼚㼑㼟 㻰㼀㻮㻼 㻜 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢 㻣 㻝㻚㻡㻠㻌㼓 㻝㻚㻜㻜㻌㼓 㻜㻚㻣㻡㻌㼓 㻜㻚㻡㻞㻌㼓 㻜㻚㻟㻠㻌㼓 㻌 㻵㼚㼠㼑㼚㼟㼕㼠㼥 㻾㼑㼠㼑㼚㼠㼕㼛㼚㻌㼀㼕㼙㼑㻌㼇㼙㼕㼚㼉 㻻㼤㼕㼞㼍㼚㼑㼟 㻭㼘㼏㼛㼔㼛㼘㼟㻷㼑㼠㼛㼚㼑㼟 㻰㼀㻮㻼 㻜 㻞 㻠 㻢 㻤 㻝㻜 㻝㻞 㻝㻠 㻯 㻯㻴 㻭㻾㻯 㻝㻚㻡㻠㻌㼓 㻵㼚 㼠㼑㼚㼟 㼕㼠㼥 㻾㼑㼠㼑㼚㼠㼕㼛㼚㻌㼠㼕㼙㼑㻌㼇㼙㼕㼚㼉 㻰㻭㻾㻯 㻝㻚㻡㻠㻌㼓 㻰㼀㻮㻼 O OH O 㻜 㻞 㻠 㻢 㻤 㻝㻜 㻰㻭㻾㻯 㻝㻚㻡㻠㻌㼓 㻌 㻵㼚 㼠㼑 㼚㼟 㼕㼠 㼥 㻾㼑㼠㼑㼚㼠㼕㼛㼚㻌㼠㼕㼙㼑㻌㼇㼙㼕㼚㼉 㻭㻾㻯 㻝㻚㻡㻠㻌㼓 図5  測定後の残留物を GC/MS により分析した際のトータル イオンクロマトグラム(上:ARC 測定後残留物,下: DARC 測定後残留物) 図6  測定後の気体生成物を GC-TCD で分析した際のガスク ロマトグラム 図7  測定後の気体生成物を GC/MS で分析した際のトータル イオンクロマトグラム

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Vol. 8, No.1, pp. 03-12, (2015) ン 類 が 生 成 す る. 一 方,Cafferata に よ り, 気 相 で の DTBP の熱分解の反応経路が提示されている31).それに よれば,DTBP の熱分解により,エタン及びアセトンが 生成する.液相での熱分解による生成物と比較すると, メタン,オキシラン類及びアルコール類は生成しない.  DARC 測定後の生成物には,ARC 測定後の生成物と比 べて,エタン及びケトンが多く存在する一方,アルコー ル類の存在量が少なかった.これは,DARC 測定時の DTBP の熱分解では,ARC 測定時の熱分解と比べて気相 でのDTBP の熱分解がより進んでいたことを意味すると 考えられる.また,DARC 測定後の気相及び液相中の残 留物には,ARC 測定後のものと比べて未反応の DTBP が多く存在していた.このことは,測定中に試料容器内 でDTBP の一部が気相に移行していたことを示している と考えられる.これを確かめるために,DTBP の蒸気圧 から,測定終了時に気相にあるDTBP の量を推測した. ARC 及び DARC の試料容器内の気相における DTBP の 重量m は,式 (5) で表される.    式(5)   こ こ で,p は DTBP の蒸気圧,V は ARC,DARC の 試料容器の内容積(ARC:8.6 ㎤,DARC:16 ㎤),M はDTBP の分子量(146.23),R は気体定数,T は測定 終了時の温度である.DTBP の蒸気圧は,Indritz らによ り提示されたクラシウス-クラペイロン式32)を外挿して 求めた.なお,この計算ではDTBP の分解によって発生 するガスによる圧力及び液体のDTBP の容積を無視した. 式(5) によって計算した,測定終了時に ARC 及び DARC 試 料 容 器 内 で 気 相 に あ るDTBP の重量を,ARC 及び DARC で測定された温度範囲と併せて表 5 に示す.  計算の結果,ARC での測定終了時の温度において,気 相のDTBP 量は充てん量の 11 ~ 17% であるのに対し, DARC での測定終了時の温度において,試料量 0.34 g 及 び0.52 g の時は全量が蒸発していると推定された.また, 試料量0.75 g ~ 1.54 g の時も,53 ~ 68% の DTBP が気 相に移行していると考えられた.この傾向は,GC/MS の 分析によって,ARC での測定後の残留物には未反応の DTBP がほとんど存在しなかったのに対し,DARC での 測定後の残留物には未反応のDTBP が多く存在したこと とよく一致した.以上のことから,ARC 測定時の容器内 の圧力ではDTBP の大半は蒸発せずに液相で分解するが, DARC 測定時の容器内の圧力では DTBP のほとんどが気 相に移行し,気相で分解していたと考えられる.このよ うに,DTBP のほとんどが気相で分解すると,液相に比 べて密度が小さいため,発生した熱の熱伝導も悪くなる と思われる.このことが原因で,DARC で測定された 0.34 g 及び 0.54 g の試料量の時の DTBP 熱分解の発熱速度は, その他の試料量の時の発熱速度よりも小さく検出された と考えられる.  式(5) に示すとおり,気相における DTBP 量は試料容 器の内容積の大きさにのみ依存する.そこで,DARC で 気相に移行するDTBP の量が ARC での気相への移行割 合と同等(15%)になるときの試料容器の内容積を試算 した.この時,DTBP の大半は液相で分解するため,最 終到達温度はARC の補正結果から 400 ℃を大きく超え ることが予想される.DARC の測定温度の上限は 400 ℃ であるため,測定終了時の温度を400 ℃と仮定した.こ の計算でも,DTBP の分解によって発生するガスによる 圧力及び液体のDTBP の容積を無視した.式 (5) によっ て計算した,気相に移行するDTBP の量が ARC での気 相への移行割合と同等(15%)になるときの試料容器の 内容積の試算結果を表6 に示す.以上のように,試料容 器の内容積を極めて小さくしないといけないことが予想 される.また,DTBP の常温での密度は 0.8 であり33) いずれの条件でも充てんするDTBP の容積の方が計算さ れた試料容器の内容積よりも大きくなり,測定自体が不 可能と考えられる.従って,蒸気圧を有する発熱量の大 きい物質の熱的危険性評価には,DARC を適用すべきで はないと考えられる. 4 まとめ  反応機構が既知であり,断熱熱量計の性能評価によく 用いられているDTBP とトルエンの希釈溶液及び DTBP 単体の熱分解挙動を測定し,一般的な熱的危険性評価に 用いられているDSC 及び ARC との比較を行った.また, ガスクロマトグラフィにより反応生成物の分析を行うこ とにより,DARC 内で生じている反応経路を推測した.  その結果,DARC では,ARC では評価が困難であった 5%DTBP-トルエン希釈溶液についても十分に測定が可能 であり,活性化エネルギー及び前指数因子の値のずれも 表5 推測された ARC,DARC 測定終了時の気相の DTBP 量 充てん量 [g] 測定温度範囲 [℃ ] 測定終了時の気相の DTBP 量 [g] ARC 0.34 127-145 0.059 0.52 115-160 0.078 0.75 109-178 0.107 1.00 103-196 0.143 1.54 103-211 0.179 DARC 0.34 110-252 0.570 0.52 105-286 0.835 0.75 100-240 0.491 1.00 100-267 0.679 1.54 95-283 0.809 表6  気相に移行する DTBP の割合が 15% になるときの試料 容器の内容積 充てん量 [g] 試料容器の内容積 [cm3] DARC 0.34 0.4 0.52 0.6 0.75 0.8 1.00 1.1 1.54 1.7

(12)

「労働安全衛生研究」 小さかった.よって,発熱量100 J/g 未満の微小な発熱 を示す反応性物質の熱的危険性評価に,DARC が有効で あると考えられる.  一方,30%,40%DTBP-トルエン希釈溶液については, 活性化エネルギー及び前指数因子はおおよそ一致したが, 発熱量は,DTBP の濃度が高くなるとともに,DARC の 方が大きくなった.測定後の生成物の比較を行った結果, DARC 内で生じている反応は,他の熱量計内で生じてい る反応よりも進み過ぎており,異なった反応を検知して いることが原因と考えられる.よって,自己反応性物質 の濃度が高い場合,DARC で測定される断熱温度上昇及 びそれから推測される発熱量の結果は,過大となる可能 性があると考えられる.  また,DTBP を測定した結果,DARC による発熱量は ARC による発熱量よりも小さくなり,DARC で測定され た試料量0.34 g 及び 0.52 g の結果から評価された活性化 エネルギー及び前指数因子は,試料量が0.75 g 以上の評 価結果と大きく異なった.これは,測定中にDTBP の大 半が容器中で気相に移行し,気相での分解を測定してい ることによると考えられた.気相への移行の割合を小さ くするために試料容器の内容積を小さくしようとすると, 試料の充てんができず,測定が不可能となることが予想 された.従って,蒸気圧を有する発熱量の大きい物質の 評価には,DARC を適用すべきではないと考えられる.  以上をまとめると,DARC を用いた分析により,ARC では評価が困難である微弱な発熱を示す反応について, 熱的危険性の指標となる発熱開始温度や,最大の発熱速 度に至る時間を高精度に評価できる.さらに,その新た なデータを蓄積し,公開していくことによって,化学物 質の蓄熱に伴う爆発災害リスクを評価するための基礎的 情報としての活用が期待できる.また,近年連続して発 生している化学反応による発熱が蓄積することによって 発生する爆発火災事故の災害調査において,事故の原因 を正確に究明するための強力な評価手法となると思われ る. 謝   辞  本研究を進めるにあたり,独立行政法人産業技術総合 研究所の松永猛裕博士の特別な計らいにより示差型断熱 熱量計DARC の使用許可を頂いた.また,独立行政法人 産業技術総合研究所の秋吉美也子氏にはDARC を用いた 実験に協力いただくとともに,測定結果について貴重な コメントをいただいた.さらに,査読者の方々には,本 原稿に対して貴重なコメントをいただいた.ここに深謝 致します. 文   献 1) 東ソー株式会社 南陽事業所 第二塩化ビニルモノマー製造 施設爆発火災事故調査対策委員会.南陽事業所 第二塩化ビ ニルモノマー製造施設爆発火災事故調査対策委員会 報告書; 2012. 2) 三井化学株式会社 岩国大竹工場 レゾルシン製造施設 事故 調査委員会.三井化学株式会社 岩国大竹工場 レゾルシン製 造施設 事故調査委員会報告書;2013. 3) 株式会社日本触媒 事故調査委員会.株式会社日本触媒 姫 路製造所アクリル酸製造施設 爆発・火災事故調査報告書; 2013. 4) 三菱マテリアル株式会社四日市工場爆発火災事故調査委員 会.三菱マテリアル株式会社四日市工場高純度多結晶シリコ ン製造施設爆発火災事故調査報告書;2014. 5) 内閣官房,総務省消防庁,厚生労働省,経済産業省.石油 コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議 報告書;2014.

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Vol. 8, No.1, pp. 03-12, (2015)

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33) 東京化成工業.Di-tert-butyl peroxide 安全データシート. 2013.

(14)

「労働安全衛生研究」

Application range of a differential-type adiabatic calorimeter

in a thermal hazard evaluation

by

Yoshihiko S

ATO*1

and Haruhiko I

TAGAKI*1

  In order to prevent accidents involving fi re and explosions due to the accumulation of heat during the self-decomposition of stored chemical materials, it is important to understand the thermal behavior of stored materials under an adiabatic condition. Recently, a differential-type adiabatic calorimeter (DARC) has been developed. However, the application range of the DARC in a thermal hazard evaluation is not fully understood. Therefore, in order to understand the application range of a DARC in a thermal hazard evaluation, the thermal behavior of di-tert-butyl peroxide (DTBP)-toluene solution and DTBP decomposition were measured. The results measured by the DARC were compared with those of an Accelerating Rate Calorimeter (ARC). As a result, the DARC is considered to be effective in a thermal hazard evaluation for a small exothermic reaction of less than 100 J/g, which is diffi cult to evaluate by ARC. In contrast, a DARC should not be used for the thermal hazard evaluation of the material that has a large reaction heat and vapor pressure.

Key Words: thermal hazards, adiabatic calorimeter, DARC, ARC, di-tert-butyl peroxide, application range

*1 Chemical Safety Research Group, National Institute of Occupational Safety and Health, Japan

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1 はじめに  欧州の機械安全に関する法規制及び社会制度の基本的 枠組みは,1985 年のニュー・アプローチ政策によって確 立したと考えられる.この政策では,①安全上の必須要 求事項である欧州指令とこれを補完する体系的な技術仕 様書であるEN 規格,②モジュール方式による適合性評 価と欧州域内での相互承認,③自己責任に基づき製品の 必須要求事項への適合を自ら宣言するCE マーキングな どが,日本の労働災害防止対策でも大変参考になると考 えられる1 ~ 3).このため,本稿では,上記①~③の法規 制や社会制度を日本の労働安全分野でも活用することに よって,機械に起因する労働災害の大幅な減少が図れる かの検証を進めている.  このような検証を実施する場合,日本と欧州の社会的・ 文化的背景を考慮して比較検討を行う必要がある.例え ば,欧州で設備対策を中心とした保護方策が普及した背 景には,人や物の自由な移動が不可欠な欧州域内で母国 語や文化も異なる多様な労働者を雇用する場合,ガード や保護装置などの設備対策の充実が最も効果的な安全確 保の方法であったためと考えられる.  これに対し,日本では,現場の優秀な作業者や管理・

日本で望まれる機械安全に関する法規制及び社会制度の考察

梅 崎 重 夫

*1

 福 田 隆 文

*2

 齋 藤   剛

*1

 清 水 尚 憲

*1

 木 村 哲 也

*2

濱 島 京 子

*3

 芳 司 俊 郎

*4

 池 田 博 康

*1

 岡 部 康 平

*1

 山 際 謙 太

*1

冨 田   一

*3

 三 上 喜 貴

*2

 平 尾 裕 司

*2

 岡 本 満喜子

*2

 門 脇   敏

*2

阿 部 雅二朗

*2

 大 塚 雄 市

*2 監督者及び生産技術者の技能と注意力に依存して質の高 い安全管理と生産技術に基づく改善を実施している場合 も多いと考えられる.これは,最近の雇用の流動化や就 業形態の多様化などに起因して後退が著しいが,鉄鋼, 自動車,化学,電機などの分野では依然として健在な企 業も認められる.  したがって,日本の強みである“ 現場力 ” に基づく質 の高い安全管理と生産技術を基盤に置いた上で,安全の 先進国と言われる欧州の機械安全技術や社会制度を適切 に活用すれば,多発している機械による労働災害の激減 を図ることも可能と考えられる.また,この成果を基に, 日本の現場力と欧州の機械安全技術を高次の次元で融合 させた新しい枠組みの安全技術を海外に向けて広く発信 できる可能性がある.これは,働く人の安全(労働者保護) だけでなく,日本の国際競争力の強化という観点からも 意義がある.  本稿では“ 現場力 ” を “ 経営者が定めた経営戦略を達 成するために,作業者や管理・監督者及び生産技術者な どが現場の実情に応じた適切な解決策を組織的に提案し 実行する能力” と定義した.ここでいう解決策の中では, 安全・品質・環境の確保,生産性の改善,原価の低減, 納期の遵守などが特に重要と考えられる.この詳細は第 3 章の 2) を参照されたい.  本稿は,以上の観点から,今後の日本で望まれる法規 制及び社会制度のあり方について文献1) ~ 4) の記載も 考慮した上で考察を行う.なお,“ 現場力 ” に基づく安全 管理では,事業者と労働者の間で“ 自分たちの職場から は重大な労働災害を発生させない” とする価値観の共有 が不可欠である.   日本の強みは,現場の優秀な作業者や管理・監督者及び生産技術者が質の高い安全管理と生産技術に基づく 改善を実施していることにある.したがって,この“ 現場力 ” を基盤に置いた上で,技術に基づく安全の先進国 と言われる欧州の機械安全技術や社会制度を適切に活用すれば,日本の現場力と欧州の機械安全技術を高次の次 元で融合させた新しい枠組みの安全技術と社会制度を構築できる可能性がある.本稿では,以上の観点から日本 で望まれる法規制及び社会制度のあり方を検討した.その結果,今後の日本の社会制度では,安全をコストでな く新たな価値創造のための投資として位置づけること,高い当事者意識と安全な職場を構築しようとする共通の 価値観を関係者間で共有すること,及び再発防止から未然防止,件数重視から重篤度重視への戦略転換と想定外 の考慮が重要と推察された.また,実際の機械の労働災害防止対策では,特に経営者及び設計者に対して欧州機 械安全の基本理念と災害防止原則を普及促進するとともに,①ISO12100 に定めるリスク低減戦略,②モジュー ル方式による適合性評価と適合宣言に関する情報伝達を目的としたマーキング,③マーキングの情報に基づく機 械の使用段階での妥当性確認,④機械の設計・製造段階への災害情報のフィードバックが特に重要と考えられた.  キーワード:機械安全 , 法規制,社会制度,ISO12100, 妥当性確認 総  説 † 原稿受付 2014年08月22日 † 原稿受理 2014年10月06日

J-STAGE Advance published date: November 14, 2014 *1 (独)労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ *2 国立大学法人長岡技術科学大学大学院 技術経営研究科 *3 (独)労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ *4 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 前 (独)労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ   連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6   (独)労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ   梅崎重夫*1 E-mail: [email protected] 特集 労働安全衛生の新技術

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「労働安全衛生研究」 令とEN 規格,②機械のリスク低減戦略の概要,③モ ジュール方式による適合性評価,④適合宣言とCE マー キングの概要を文献2) 及び 3) での記載を基に述べる2, 3)  これらの情報は機械安全の専門家にとっては既知であ るが,前提条件の明確化と多くの方々に関連情報を知っ てもらうために記載した.なお,本稿で使用する略語及 び用語の意味は表1 及び表 2 を参照されたい. 1) 1) EUEU 指令の発令と ENEN 規格の制定  1957 年に設立された EEC は,EEC 内での製品の自由 な流通が安全規制という障壁によって阻害されるのを防 ぐために,CEN/CENEREC(欧州の規格制定機関)が 中心となって加盟国相互の規格の整合化を推進してきた. この政策は“ オールド・アプローチ ” と呼ばれる.  また,“ 現場力 ” を過信して設備対策が可能なものに まで無理に人の注意力に依存する対策を実施する場合は, そのような対策自体が労働災害の直接原因となることも ある.したがって,“ 現場力 ” の活用にあたっては,人の 誤りや機械の故障が発生した場合でも事故や災害に至ら ないための設備対策をあらかじめ講じておくことが,安 全な職場を実現する際に不可欠な条件となる.同様に, 安全に関する企業の競争力強化に関しても,働く人の安 全を優先した対応が不可欠である. 2 欧州の機械安全に関する法規制及び社会制度の概要  最初に本稿の前提条件を明確にするために,欧州の機 械安全に関する法規制と社会制度の核心である①EU 指 略  語 日本語での名称 説     明 1 EU 欧州連合  European Union の略称.欧州統合化を目的として従来の EC を 1993 年に名称変 更したもの.参加国はフランス,ドイツ,イギリスなどを始めとする28 か国. 2 EC 欧州共同体  European Communities の略称.欧州での単一共同市場の構築を目的として1967 年に設立された.

3 EEC 欧州経済共同体  European Economic Community の略称.

ECの母体となった経済共同体であり,1957 年に設立された.

4 CE CE マーキング  Comite Europeen の略称.製品が EC 指令の必須要求事項に適合していることを,製造者自らが適合宣言するとき貼付するマーキング. 5 ISO 国際標準化機構  International Standardization Organization の略称.1947 年に電気・電子分野以

外の標準化のための国際機関として設立された.

6 IEC 国際電気標準化機構  International Electrotechnical Commission の略称.1908 年に電気・電子分野の標準化のための国際機関として設立された. 7 CEN 欧州標準化委員会  Comite Europeen de Normalisation の略称.欧州域内の電気・電子分野以外の標

準化のための機関として設立された機構.

8 CENELEC 欧州電気標準化委員会  Comite Europeen de Normalisation Electro-technique の略称.欧州域内の電気・ 電子分野の標準化のための国際機関として設立された機構. 9 EN 欧州規格  European Norms の略称.最終的に確定した欧州規格である. 表1 本稿で使用する略語の意味 用 語 英語表記 定 義 1 機械類機械 MachineryMachine 連結された部品又は構成品の組合せで,そのうちの少なくとも一つは適切な機械アクチュエータ,制御及び動力回路を備えて動くものであって,特に材料の 加工,処理,移動,梱包といった特定の用途に合うように結合されたもの 2 危害 Harm 身体的傷害又は健康障害 3 危険源 Hazard 危害を引き起こす潜在的根源 4 危険状態 Hazardous situation 人が少なくとも一つの危険源に暴露される状況 5 危険事象 Harmful event 危険状態から結果として危害に至る出来事

6 危険区域 Hazard zoneDanger zone 人が危険源に暴露されるような機械類の内部及び/ 又は機械類周辺の空間 7 リスク Risk 危害の発生確率と危害のひどさの組合せをいう.

8 リスクアセスメント Risk assessment リスク分析及びリスクの評価を含むすべてのプロセス

9 適切なリスク低減 Adequate risk reduction 現在の技術レベルを考慮した上で,少なくとも法的要求事項にしたがったリス クの低減 10 保護方策 Protective measure リスク低減を達成することを意図した方策.設計者による本質的安全設計方策, 安全防護及び付加保護方策,使用上の情報の提供,及び使用者による安全管理 組織の整備,安全作業手順の策定,監督,作業許可システムの構築,追加安全 防護物の準備及び使用,保護具の使用,訓練などが該当する.

11 本質的安全設計方策 Inherently safe design measure ガード又は保護装置を使用しないで,機械の設計又は運転特性を変更することにより危険源を除去するか又は危険源に関連するリスクを低減する保護方策 12 安全防護 Safeguarding 本質的安全設計方策によっては合理的に除去できない危険源,又は十分に低減できないリスクから人を保護するための安全防護物の使用による保護方策 13 使用上の情報 Information for use 使用者に情報を伝えるための伝達手段(例えば,文章,語句,標識,信号,記号,図形)を個別に,又は組み合わせて使用する保護方策 14 機械の意図する使用 Intended use of a machine 使用上の指示事項の中に提供された情報に基づく機械の使用

15 合理的に予見可能な誤使用 Reasonably foreseeable misuse 設計者が意図していない使用法で,容易に予測し得る人間の挙動から生じる機械の使用 16 安全防護物 Safeguard ガード又は安全装置

17 ガード Guard (人を)保護するために機械の一部として設計された物理的なバリア 18 保護装置 Protective device ガード以外の安全防護物

表2 ISO12100(JISB9700)で使用する用語の意味

図 4 リードスイッチの安全技術に関する標準化の経緯

参照

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