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クロマグロ稚魚のエネルギー代謝に関する研究

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Academic year: 2021

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全文

(1)

生年月日

学位論文審査結果の報告書

大西尭行

本籍(国籍)

学位の種類

学位記番号

学位授与の条件

(博士の学位)

論文題目

四1か・平成 63年10月

奈良県

博士(農学)

農第 206号

学位規程第5条該当

クロマグロ稚魚のエネルギー代謝に関する研究

31日

審査委員

(主査)

(副主査)

(副主査)

(副査)

滝井健二

太田博巳

澤田好史

光永靖

'゛ ^'^ 寒優」..

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(2)

クロマグロ, rhU加USON'ehtah'Sは 3年で 90kg にまで成長し,成長速度はマダイや ブリ稚魚の 5-10倍に達する。本種の完全養殖に成功した 2002年以降は種苗の量産技術 の向上を図る研究が進められ,稚魚(種苗生産)用配合飼料が開発されたことで,稚魚 期の成長や生残率が大きく向上した。しかし,その適正な給餌方法について検討された 報告はこれまでみられない。そこで,本研究ではクロマグロ稚魚におけるエネルギー代 謝やその変動要因を明らかにし,給餌量や給餌回数などを含めた適正な給餌方法を提示 しようとした。 魚類を含めた脊椎動物では,摂取したエネルギー(GE)の一部は利用されずに糞(FE) および尿(UE+ZE)として排池される。次いで,残されたエネルギーは消化吸収・代謝 および自発的活動(H但+珊E)と生存に必要な標準代謝エネルギー(SME)として消費され, 残された部分が成長エネルギー(RE)になる。魚類養殖にとっては露をいかに大きくす るかがポイントである。 第1章エネルギー代謝の把握 酵素処理魚粉を主体にする試験飼料を平均体重 1.18のクロマグロ稚魚と 1.4および 16.6g のマサバ, scom力erjapom'CUS稚魚(マサバ Aおよび B)に飽食給餌し,飼育成績 や酸素消費量億眺)の日内変化の比較から,クロマグロ稚魚のエネルギー代謝の特性を 明らかにした。摂餌後に増加した MO.が摂餌前の値に戻るまで時間はクロマグロ(2 4 h)がマサバ(5 15 h)の半分以下で消化コストの発生時間が著しく短かった。一方,ク

ロマグロ稚魚の 1日の摂取エネノレギー(GE)は 2880 kJ kg BW、' day、'で, FE, UE + ZE,

HiE + HjE, SME および RE ヘの GE の分酉己率は,それぞれ GE の 17.2,5.9,14.9,41.3

および 20.フ%であった。一方,マサバ A の GE は 2780 kJ kg BW 、' day→で,それぞれへ の分酉己率は 9.5,6.6,50.2,11.0 および 22.フ%であった。マサバ B においては GE1が 1474 kJ kg BW 、' day、'で,各分配率は 7.4,8.フ,35.9,23.5 および 24.5%であった。これら の結果から,クロマグロ稚魚はマサバに比ベて D H田+ HjEが極端に少ない反面FEが 約 2倍ある,2) SMEが 2 4倍あることがわかった。 1)は消化しやすい栄養素を早い時 間から優先的に消化し,消化性の低いものを速やかに排紲することで消化管の食塊の滞 留時間を短縮させ,摂餌回数・量を増加させることで大きな露を確保していることを示 唆するのであろう。2)はクロマグロ稚魚が呼吸を遊泳に依存していることや,他の海産 魚より速い成長を維持するために各器官および細胞の代謝回転を亢進していることが原 因だと考えられた。 消化しやすい栄養素を早い時間から優先的に吸収し,消イヒ陛の低いものは速やかに排 池することで消化管の食塊の滞留時間を短縮させ,代わりに摂餌回数・量を増加させる ことで,謡を確保しているのであろう。 号△

文内

ク、 ^

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第Ⅱ章成長とS臨 閉鎖式回流水槽を用いて体重が異なるクロマグロ稚魚の M伍を水温 24-29゜Cのもとで 測定し,成長に伴うSMEの変化について検討した。その結果,クロマグロ稚魚の体重と MO.の関係から y = 506.1×゜・飢(R゜= 0.88)の関係式を得ることができた。この式中の代 謝準位 506.1 は他魚種の約 10倍に相当するが,体重指数 0.61は他魚種(0.9 1.のに 比ベて小さく,体重増加に伴うSME の増加率が小さくなることがわかった。これは,ク ロマグロ稚魚の体型が成長に伴って紡錘形に変化して流水抵抗が減少すること,代謝活 性が高く維持される血合筋および各内臓諸器官の体重比が,成長に伴って減少すること などに基づくのであろう。 第Ⅲ章給餌条件および飼育水温と氏E+H揮 Ⅲ一1.給餌量および餌飼料 体重61gの稚魚に市販配合飼料とイカナゴを給与し,給餌量の違いがH.十HjE に及 ぽす影響を MO.および遊泳速度から明らかにしようとした。 MO.は密閉した円型水槽内 の溶存酸素減少量から,遊泳速度はビデオカメラの映像から求めた。配合飼料を飽食量 (S),0.5S および 0.25S を給餌すると,南0.が摂餌直後に増加し摂餌直前のレベルに戻る 時間は,それぞれ 7.5 h,4.5 h および 2.o h であった。イカナゴ S 区での時間は配合 S 区に近かったことから, H逗十珊E は餌飼料より給餌量の影響を強く受けることが示され た。また,矼0.と遊泳速度との間に正の相関関係が認められた。珊E+H遁は摂餌後におけ る南0.の上昇とみなされるので, MO.を用いて換算したところ,イカナゴ S,配合 S,0.5S および 0.25S 区で,それぞれ GE の 15.0,10.9,10.3 および 5.5%となった。イカナゴ S 区が配合 S 区より増大したのは,イカナゴの粗タンパク質含量が配合飼料より約 15%高 かったためと考えられる。タンパク質に対する H逗は脂質や糖質に対するそれより高い ことが知られている。一方,0.25S 区における低下については,時間当たりの要求量を 下回ると,氏E としてのエネルギー消費を低く抑える機構が存在することを示唆するも のであろう。 Ⅲ一2.飼育水温 前節でMO.と遊泳速度に有意な相関関係が得られたため,水温 20,16 および 14゜Cで 体重70ogの稚魚に異なる餌飼料を与え,摂餌後の遊泳速度の変化から, H暹+HjE に及 ぼす低水温の影響を明らかにしようとした。各水温において配合飼料を体重の 3%の量に 調節して給餌した結果,水温低下に伴って絶食時と摂餌後の遊泳速度は減少するととも に,摂餌後において絶食時の遊泳速度に戻る時間は延長した。水温16゜Cにおいて配合飼 料,イカナゴおよびスルメイカを 50 土 1.5 kJ loog寸で給餌すると,摂餌後の最大遊 泳速度は生餌が配合飼料より速かったが,絶食時の遊泳速度に戻るまでの時間は配合飼 料が長くかかった。水温 14゜Cで体重の 3%の量の凍結(-4゜C)および解凍イカナゴ(5゜C)を 給餌すると,摂餌後における最大遊泳速度に違いはなかったが,絶食時の遊泳速度に戻 るまでの時間はそれぞれ4hおよび2hであった。以上の結果から,酵素処理魚粉を主

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が配合飼料より優れていること,低水温期において生餌を給与する場合は,解凍したも のが好ましいことなどが示された。 第Ⅳ章給餌回数とエネルギー代謝 沖出し前後におけるクロマグロ稚魚の適正な給餌方法を明らかにするため,給餌を 1 日 0 (F),2 (2S),3 (3S),4 (4S)および 5 回(5S),そして,1日絶食した後 4日間毎 日 5 回(4/5S)行う6試験区を設け,給餌回数の違いが飼育成績やエネルギー代謝に及 ぽす影響にっいて検討した。なお,給餌は飽食量を与え 2週間飼育した。その結果,F区

では飼育開始6日後に全ての供試魚がへい死した。比成長率,日間摂餌率,飼料効率,

生残率,見かけの脂質蓄積率および GE は 5S が最も優れ,4S,3S,4/5S および 2S の順 に低下した。一方, RE やみかけタンパク質蓄積率は 3S-5S でほとんど上昇しなくなり, 要求量以上のエネルギーを脂質として蓄積していることが示唆された。GE を 100として

比較すると, FE, UE + ZE, H逗+ HjE に著しい区間差はなかった。しかし, SME そして

RE は,5S,4S,3S,4/5S および 2S 区の順にそれぞれ低下および上昇した。また, GE と RE との関係から体重維持エネノレギーは 110o kJ kg BW、' day、.であった。従って, D 沖 出し直後の成長ステージの供試魚に対して最大成長を望むのなら1日5回以上,最大効 率を求めるのであれば 1日 4・5 回の飽食給餌が適当であること,2) 2 回給餌および絶 食日を設けた給餌方法では飼育成績の悪化にっながることがわかった。 本研究によりクロマグロ稚魚のエネルギー代謝やその変動要因,沖出し期の至適給餌 方法といった種苗量産技術の確立に寄与する知見を多数集積することができた。今後の クロマグロ種苗の量産技術確立に,多少とも貢献できれば幸いである。

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クロマグロ稚魚のエネルギー代謝にっいての研究はこれまで見当たらない。飼養技術 の確立には各栄養素の要求量やバランスだけでなく,エネルギー代謝に関する基礎的知

見が重要になる。本研究は水産研究所で生産した人エクロマグロ稚魚を用いて実施され,

以下に示す貴重で有為な多くの知見を得ている。なお,魚類を含めた脊椎動物のエネル ギー代謝では,摂取したエネルギー(GE)の一部は利用されずに糞(FE)および尿(UE +ZE)として排汝され,次いで,消化吸収・代謝および自発的活動佃遁+H再)や生存に必 要な標準代謝エネルギー(SME)が消費され,残された部分が成長エネルギー(RE)になる。 魚類養殖にとって露をいかに大きくするかがポイントになる 勇△

第1章エネルギー代謝の把握 酵素処理魚粉を主体にする試験飼料を平均体重 1.1gのクロマグロ稚魚と1.4および 16.6g のマサバ, SC0勿6erjap0加'CUS稚魚(マサバ A およびB)に飽食給餌し,飼育成績 や酸素消費量(南0分の日内変化の比較から,クロマグロ稚魚のエネルギー代謝の特性を 明らかにした。摂餌後に増加した南0.が摂餌前の値に戻るまで時間はクロマグロ(2 4 h)がマサバ(5 15 h)の半分以下で消化コストの発生時間が著しく短かった。一方,ク

ロマグロ稚魚の 1日の摂取エネノレギー(GE)は 2880 kJ kg BW、. day、.で, FE, UE + ZE,

H.+ HjE, SME および RE ヘの GE の分酉己率は,それぞれ GE の 17.2,5.9,14.9,41.3 および 20.フ%であった。一方,マサバ A の GE は 2780 kJ kg BW 、. day、,で,それぞれへ の分酉己率は 9.5,6.6,50.2, H.0 および 22.フ%であった。マサバ B においては GE が 1474 kJ kΞ BW 、' day→で,各分配率は 7.4,8.フ,35.9,23.5 および 24.5%であった。これら の結果から,クロマグロ稚魚はマサバに比ベて D H遁+氏Eが極端に少ない反面FEが 約 2倍ある,2) SMEが 2 4倍あることがわかった。 D は消化しや,、い栄養素を早い時 間から優先的に消化し,消化性の低いものを速やかに排池することで消化管の食塊の滞 留時間を短縮させ,摂餌回数・量を増加させることで大きな朗を確保してぃることを示 唆するのであろう。2)はクロマグロ稚魚が呼吸を遊泳に依存していることや,他の海産 魚より速い成長を維持するために各器官および細胞の代謝回転を亢進していることが原 因だと考えられた。 消化しやすい栄養素を早い時間から優先的に吸収し,消イヒ陛の低いものは速やかに排 池することで消化管の食塊の滞留時間を短縮させ,代わりに摂餌回数・量を増加させる ことで, RE を確保しているのであろう。 イ 、 の ^ 0 第Ⅱ章成長とSME 閉鎖式回流水槽を用いて体重が異なるクロマグロ稚魚の南伍を水温 24-29゜Cのもとで 測定し,成長に伴うSMEの変化について検討した。その結果,クロマグロ稚魚の体重と

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謝準位 506.1 は他魚種の約 10倍に相当するが,体重指数 0.61 は他魚種(0.9 1.のに 比ベて小さく,体重増加に伴う SME の増加率が小さくなることがわかった。これは,ク ロマグロ稚魚の体型が成長に伴って紡錘形に変化して流水抵抗が減少すること,代謝活 性が高く維持される血合筋および各内臓諸器官の体重比が,成長に伴って減少すること などに基づくのであろう。 第Ⅲ章給餌条件および飼育水温とH氾+島E Ⅲ一1.給餌量および餌飼料 体重61gの稚魚に市販配合飼料とイカナゴを給与し,給餌量の違いが H遁+HjEに及 ぼす影響を MO.および遊泳速度から明らかにしようとした。南山は密閉した円型水槽内 の溶存酸素減少量から,遊泳速度はビデオカメラの映像から求めた。配合飼料を飽食量 (S),0.5S および 0.25S を給餌すると, MO.が摂餌直後に増加し摂餌直前のレベルに戻る 時間は,それぞれ 7.5 h,4.5 h および 2.o h であった。イカナゴ S 区での時間は配合 S 区に近かったことから, H促+比E は餌飼料より給餌量の影響を強く受けることが示され た。また,薪0.と遊泳速度との間に正の相関関係が認められた。ルE+HjE は摂餌後におけ る MO.の上昇とみなされるので, MO.を用いて換算したところ,イカナゴ S,配合 S,0.5S および 0.25S 区で,それぞれ GE の 15.0,10.9,10.3 および 5.5%となった。イカナゴ S 区が配合 S 区より増大したのは,イカナゴの粗タンパク質含量が配合飼料より約 15%高 かったためと考えられる。タンパク質に対する H氾は脂質や糖質に対するそれより高い ことが知られている。一方,0.25S 区における低下については,時間当たりの要求量を 下回ると, H沍としてのエネルギー消費を低く抑える機構が存在することを示唆するも のであろう。 Ⅲ一2.飼育水温 前節でMO.と遊泳速度に有意な相関関係が得られたため,水温 20,16 および 14゜Cで 体重 70ogの稚魚に異なる餌飼料を与え,摂餌後の遊泳速度の変化から, H但+HjE に及 ぽす低水温の影響を明らかにしようとした。各水温において配合飼料を体重の 3%の量に 調節して給餌した結果,水温低下に伴って絶食時と摂餌後の遊泳速度は減少するととも に,摂餌後において絶食時の遊泳速度に戻る時間は延長した。水温 16゜Cにおいて配合飼 料,イカナゴおよびスルメイカを 50 土 1.5 kJ loog、'で給餌すると,摂餌後の最大遊 泳速度は生餌が配合飼料より速かったが,絶食時の遊泳速度に戻るまでの時間は配合飼 料が長くかかった。水温 H゜Cで体重の 3%の量の凍結(-4゜C)および解凍イカナゴ(5゜C)を 給餌すると,摂餌後における最大遊泳速度に違いはなかったが,絶食時の遊泳速度に戻 るまでの時間はそれぞれ4hおよび2hであった。以上の結果から,酵素処理魚粉を主 体とする配合飼料でも,水温が 20゜C以下に低下すると稚魚の消化吸収能が低下して消化 時間が延長すること,水温 16゜Cでは等エネルギーで給与しても,生餌に対する消化吸収 が配合飼料より優れていること,低水温期において生餌を給与する場合は,解凍したも のが好ましいことなどが示された。 第Ⅳ章給餌回数とエネルギー代謝

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沖出し前後におけるクロマグロ稚魚の適正な給餌方法を明らかにするため,給餌を 1 日 0 (F),2 (2S),3 (3S),4 (4S)および 5 回(5S),そして,1日絶食した後 4日間毎 日 5 回(4/5S)行う 6 試験区を設け,給餌回数の違いが飼育成韻やエネルギー代謝に及 ぼす影響にっいて検討した。なお,給餌は飽食量を与え 2週間飼育した。その結果,F区 では飼育開始6日後に全ての供試魚がへい死した。比成長率,日間摂餌率,飼料効率, 生残率,見かけの脂質蓄積率および硫は 5S が最も優れ,4S,3S,4/5S および 2S の順 に低下した。一方, RE やみかけタンパク質蓄積率は 3S-5S でほとんど上昇しなくなり, 要求量以上のエネルギーを脂質として蓄積していることが示唆された。GE を 100として

比較すると, FE, UE + ZE, H.+ HjE に著しい区間差はなかった。しかし, SME そして

詑は,5S,4S,3S,4/5S および 2S 区の順にそれぞれ低下および上昇した。また, GE と RE との関係から体重維持エネノレギーはⅡoo kJ kg BW→ day→であった。従って, D 沖 出し直後の成長ステージの供試魚に対して最大成長を望むのなら1日5回以上,最大効

率を求めるのであれば1日4・5回の飽食給餌が適当であること,2) 2回給餌および絶

食日を設けた給餌方法では飼育成績の悪化につながることがわかった。 本研究によりクロマグロ稚魚のエネルギー代謝やその変動要因,沖出し期の至適給餌 方法といった種苗量産技術の確立に寄与する知見を多数集積することができた。よっ

て,本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。なお,審査にあた

つては,論文に関する専攻内審査および公聴会など所定の手続きを経たうえ,平成28

年2月ξ日,農学研究科教授会において,論文の価値ならびに博士の学位を授与される

学力が十分であると認められた。

参照

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