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摂食方法および運動のタイミングが成長期ラットの体脂肪と血清脂質に及ぼす影響(第2報) : 給餌時刻および給餌回数との関係

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はじめに  現在,肥満は,心臓病,脳卒中,糖尿病などの生活習慣病のリスク要因とされている. 肥満は体脂肪の過剰な蓄積であり,摂取エネルギーと消費エネルギーの不適切なバランス によってもたらされる.さらに,体脂肪の蓄積は,食事の量(摂食量)と質(栄養素バラ ンス)だけでなく,食事の取り方,タイミングによっても大きく影響を受けることが指摘 されている.また,体脂肪の蓄積は,運動によりエネルギーを消費することによって減少 させることができるが,食事と運動のタイミングが重要であるともいわれている.  筆者らは,前報1)において,種々の摂食方法および摂食と運動のタイミングが,体脂 肪量および血清脂質濃度にどのような影響をもたらすかを明らかにする目的で,成長期 ラットを用いた実験を行い,次のような結果を得た.  自由摂食(ad libitum)実験において,暗期の始めあるいは終わりに自走回転運動を負 荷することによって,ラットの体脂肪蓄積および血清中性脂肪濃度が有意に低下すること, また摂食時間制限(meal-feeding)実験において,摂食の直前あるいは直後に運動を負 荷することによって,体脂肪蓄積は有意に減少することが示された.特にいずれの実験に おいても,摂食直後の運動負荷がより効果が大きいことが分かった.  そこで,今回は,給餌時刻を暗期の始め(朝食)あるいは終わり(夕食)に 1 回だけ 給餌した場合と朝夕の 2 回に分けて給餌した場合において,自走回転運動負荷が体脂肪 蓄積および血清中性脂肪濃度に及ぼす影響を 2 回の実験で調べた. 実験方法 1.実験動物および飼育方法・飼料  すべての実験に 5 週齢の Wistar 系雄ラット(日本クレア(株))を用い,ステンレス 製金網五連ケージで飼育した.飼育室は,温度 22±1℃,湿度 55±5%に設定し,また, 明暗周期を昼夜逆転の 12 時間周期(実験 1: 暗期 7:00 ~ 19:00,明期 19:00 ~ 7:00 ま

摂食方法および運動のタイミングが成長期ラットの

体脂肪と血清脂質に及ぼす影響(第 2 報)

― 給餌時刻および給餌回数との関係 ―

笠 原 利 英

キーワード: 摂食方法,運動,成長期ラット,体脂肪,血清脂質

(2)

たは実験 2: 暗期 8:00 ~ 20:00,明期 20:00 ~ 8:00)とした.飼料は,予備飼育期間お よび実験期間を通じて,市販固形飼料(飼育繁殖用 CE-2,日本クレア(株))を用いて飼 育した.飼料の栄養成分含量は,粗たんぱく質 25.2%,粗脂肪 4.6%,炭水化物 50.7%, 粗繊維 4.4%であり,その他各種ミネラル,ビタミンを必要量含んでいる(日本クレア(株) 分析値). 2.摂食方法と運動方法  本実験では,摂食方法と運動のタイミングを異にする 2 回の実験が行われた.ラット への運動負荷は,前報1)と同様に,ラット回転式運動量測定装置 KN-79((株)夏目製作 所,回転直径 30cm,写真 1)を用いて自走回転運動させた.回転ケージを用いた自走運 動はトレッドミルによる強制運動と比較して,その運動強度の制御の困難さが予想される ものの,被検動物に与えるストレスが少ないため運動適応の実験モデルとして用いられて いる2).なお,自走回転運動中の給水は行わなかった. 写真 1 ラット回転式運動量測定装置 (1)実験 1:給餌回数との関係  ラットを 9 日間,給餌時間を 8:00 ~ 12:30 の 4 時間半に制限した meal-feeding に馴 化させるべく予備飼育した後,1 群 4 匹ずつ 5 群に分け,1 群は 0 日用(C0 群)とし て直ちに屠殺した.残り 4 群は次のように給餌回数を異にし,また運動負荷の有無を異 にする群に分け,引き続き同じ飼料を 17 日間給与した.すなわち,給餌時間を 8:00 ~ 12:30 の 1 回とし何も運動させない 1 回食非運動群(C 群)と給餌後に 2 時間(12:30 ~ 14:30)の運動をさせた 1 回食運動群(C-E 群)および給餌時間を 8:00 ~ 10:30 と 写真 1 ラット回転式運動量測定装置

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17:00 ~ 19:00 の 2 回に分け何も運動させない 2 回食非運動群(TM 群)と 1 回目の給 餌後に 2 時間(10:30 ~ 12:30)の運動をさせた 2 回食運動群(TM-E 群)とした(図 1). 実験期間中,運動を実施した期間は実験期間の後半 14 日間である.  実験期間中,C 群と C-E 群は 4 時間半の給餌時間内で自由に摂食させたが,TM 群と TM-E 群は C 群の毎日の摂食量に対する pair-feeding として給餌した.すなわち,1 回目 の給餌で C 群の摂食量の半分に相当する量を給餌し,2 回目の給餌で C 群の摂食量と同 じになるように給餌量を調整した.水は自由摂取とし,体重測定は,毎日,最初の給餌前 に行った. 図 1 実験 1 スケジュール (2)実験 2:給餌時刻および給餌回数との関係  ラットを 9 日間,摂食時間を 8:30 ~ 12:00 の 3 時間半に制限した meal-feeding に馴 化させるべく予備飼育した後,1 群 4 匹ずつ,次のように給餌時刻および給餌回数を異に し,また運動負荷の有無を異にする 6 群に分け,引き続き同じ飼料を 21 日間給与した. すなわち,給餌時間を 8:30 ~ 12:00 の 1 回とし何も運動させない朝食非運動群(B 群) と給餌後に 1 時間半(12:00 ~ 13:30)の運動をさせる朝食後運動群(B-E 群),給餌時 間を 16:30 ~ 19:30 の 1 回とし何も運動させない夕食非運動群(D 群)と給餌前に 1 時 間半(15:00 ~ 16:30)の運動をさせる夕食前運動群(D-E 群)および給餌時間を 8:30 ~ 10:00 と 18:00 ~ 19:30 の 2 回に分け何も運動させない 2 回食非運動群(T 群)と 2 回の給餌の中間に 1 時間半(13:30 ~ 15:00)の運動をさせる 2 回食運動群(T-E 群)と した(図 2).実験期間中,運動を実施した期間は実験期間の後半 14 日間である.  実験期間中,B 群と B-E 群は 3 時間半の給餌時間内で自由に摂食させたが,D 群と D-E 群, および T 群と T-E 群は B 群の毎日の摂食量に対する pair-feeding として給餌した.ここで, T 群および T-E 群は 1 回目の給餌で B 群の摂食量の半分に相当する量を給餌し,2 回目 の給餌で B 群の摂食量と同じになるように給餌量を調整した.水は自由摂取とし,体重 測定は,毎日 14:00(B 群,B-E 群,D 群,D-E 群)あるいは 16:00(T 群,T-E 群)に行った.

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図 2 実験 2 スケジュール 3.動物の解剖  すべての実験において,飼育期間終了後,ラットを 1 夜絶食した後,ネムブタール麻 酔下で開腹,下大静脈より採血した後に,肝臓,腎臓,脾臓,精巣および脂肪組織(腎周 囲,精巣周囲)を摘出し,重量を測定した.採血した血液は直ちに遠心分離(3000 回転 × 15 分間)を行い,血清を分離し,分析まで- 80℃で凍結保存した. 4.血清脂質の分析方法  血清脂質(中性脂肪,総コレステロール,HDL- コレステロール)および血清グルコー スの測定は,市販の試薬キット(和光純薬工業(株))を用いて,すべて酵素法で行った.   5.統計処理の方法  実験データはすべて平均値±標準偏差で表し,統計解析には,「エクセル統計 2002」((株) 社会情報サービス)を用い,一元配置分散分析により行い,Fisher の最小有意差法(LSD) で群間の有意差を判定した. 実験結果 1.実験 1:給餌回数との関係 (1)体重増加量および摂食量  実験期間におけるラットの体重変化および体重増加量を群毎の平均値として図 3 および 図 4 に示した.体重増加量は,C 群,C-E 群および TM 群,TM-E 群それぞれ 96.3±7.8g, 75.8 ± 3.3g および 84.5 ± 5.4g,92.0±5.0g であり,1 回食運動群(C-E 群)が最も小さ かった(C 群に対して p < 0.001,TM-E 群に対して p < 0.01)が,2 回食非運動群(TM 群)も小さい傾向にあった(C 群に対して p < 0.05).また,実験期間における 1 日平均

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の 摂 食 量 は, そ れ ぞ れ 16.3 ± 1.04g,14.5±0.72g,16.3±0.03g,16.2±0.08g で あ り, TM 群および TM-E 群の pair-feeding は上手くいっていた.しかし,1 回食運動群(C-E 群) の摂食量が少ないことが認められた(C 群に対して p < 0.001,TM 群および TM-E 群に 対して p < 0.01).この結果は,前報1)で示された,摂食時間制限(meal-feeding)の実 験において,制限給餌後の運動負荷によって摂食量が減少することと同様の傾向であった. 図 3 体重変化(実験 1)      有意差 ***:p < 0.001,C:C-E, **:p < 0.01,C-E:TM-E,        *:p < 0.05,C:TM  図 4 体重増加量(実験 1)

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 この実験における 2 時間の運動量(回転数)は,1 日当たりで,C-E 群が平均で 980± 328 回転,TM-E 群が 1113 ± 397 回転であり,統計的には群間に差はなかったが,動物 個々で見た場合は,746 ~ 1546 回転(C-E 群),486 ~ 1586 回転(TM-E 群)と 2 ~ 3 倍の開きがあった. (2)臓器重量および脂肪組織重量  解剖時の体重 100g あたりの各臓器重量および脂肪組織重量を表 1 および図 5 に示した. 腎周囲脂肪重量は成長に伴って明らかに増加している(C0 群 0.00g に対して C 群 0.80g, TM 群 1.07g)が,運動負荷を加えることによって,有意に(p < 0.001)その増加が抑 制されることが示された(C-E 群 0.35g,TM-E 群 0.55g).また,給餌回数を 2 回にする ことによって,腎周囲脂肪重量は有意に(p<0.01)増加した(C 群 0.80g に対して TM 群 1.07g).  一方,精巣周囲脂肪重量についても同様に成長とともに増加している(C0 群 0.24g に 対して C 群 0.59g,TM 群 0.62g)が,ラットに運動負荷を行った場合,C-E 群 0.51g, TM-E 群が 0.55g とその増加は C-E 群で抑制さる傾向にあった(p < 0.05)が,TM-E 群 では TM 群に対して有意な差はなかった(表 1,図 5).  また,その他の臓器については,肝臓および精巣において,1 回食運動群(C-E 群)で 低下する傾向にあった(肝臓:TM-E 群に対して p < 0.05,精巣:C 群に対して p<0.01) 表 1 体重 100g あたりの各臓器・脂肪組織重量(実験 1) 群 終 体 重 肝 臓 腎 臓 脾 臓 精 巣 腎周囲脂肪 精巣周囲脂肪 C0 110.8 ± 2.1 3.77 ± 0.30 1.02 ± 0.08 0.28 ± 0.02 1.44 ± 0.06 0.00 ± 0.00 0.24 ± 0.02 C 214.0 ± 11.8 3.75 ± 023 0.80 ± 0.05 0.25 ± 0.04 1.25 ± 0.05 0.80 ± 0.13 0.59 ± 0.03 有意差 A A,B,C A C-E 193.8 ± 5.4 3.43 ± 0.10 0.85 ± 0.04 0.24 ± 0.01 1.40 ± 0.08 0.35 ± 0.09 0.51 ± 0.06 有意差 A A A,D A,a TM 202.3 ± 6.7 3.80 ± 0.15 0.81 ± 0.05 0.24 ± 0.03 1.33 ± 0.05 1.07 ± 0.07 0.62 ± 0.04 有意差 A B,D,E a TM-E 209.8 ± 3.9 3.76 ± 0.21 0.82 ± 0.04 0.26 ± 0.03 1.33 ± 0.05 0.49 ± 0.08 0.55 ± 0.04 有意差 C,E 数値:平均値±標準偏差(g) 有意差:同じアルファベット間に有意差がある(大文字 p < 0.01,小文字 p < 0.05)(C0 群は除外)

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       有意差:表 1 参照 図 5 体重 100g あたりの脂肪組織重量(実験 1) 以外は有意な差は見られなかった(表 1). (3)血清中性脂肪濃度  血清中性脂肪濃度および血清グルコース濃度を図 6 および図 7 に示した.血清中性脂 肪濃度については,給餌を 2 回食にすることによって(TM 群)他の 3 群に対して有意に(p < 0.001)高い値を示した.また運動を負荷した場合,1 回食(C-E 群)では C 群に対し て有意差がないが低下の傾向にあったが,2 回食(TM-E 群)では TM 群に対して有意な(p < 0.001)低下が認められた(図 6).  また,血清グルコース濃度,血清総コレステロール濃度および血清 HDL- コレステロー ル濃度については,血清グルコース濃度において,運動負荷による C-E 群で低い傾向にあっ た(TM-E 群に対して p < 0.01,TM 群に対して p < 0.05)(図 7)が,血清総コレステ ロールおよび HDL- コレステロールにおいては,群間による差はなかった. 2.実験 2:給餌時刻および給餌回数との関係 (1)体重増加量および摂食量  実験期間におけるラットの体重変化および体重増加量を図 8 および図 9 に示した.体 重増加量は,朝食非運動群(B 群)61.5 ± 8.9g,朝食後運動群(B-E 群)60.5±4.7g, 夕食非運動群(D 群)58.5 ± 3.8g,夕食前運動群(D-E 群)57.0±4.1g および 2 回食非

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      有意差:p < 0.01,C0:TM,C:TM,C-E:TM,TM:TM-E       p < 0.05,CE:TM-E

図 6 血清中性脂肪濃度(実験 1)

        有意差:p < 0.01,C-E:TM-E p < 0.05,C-E:TM

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運動群(T 群)56.3 ± 3.0g,2 回食運動群(T-E 群)52.8±4.9g であり,いずれも有意差 は認められなかったが,B 群および B-E 群に対して,他の 4 群が小さい傾向にあった(図 9).  また,実験期間における 1 日平均の摂食量は,それぞれ 14.4±0.71g,13.7±0.57g, 14.4 ± 0.05,14.3 ± 0.16g,14.5±0.04 お よ び 14.5±0.07g と,B-E 群 を 除 い て ほ と んど同じであり,D 群,D-E 群および T 群,T-E 群の pair-feeding は上手くいっていた. 朝食後運動群(B-E 群)の摂食量が朝食非運動群に対して少ない傾向が認められ(p < 0.05),制限給餌後に運動負荷した場合に,摂食量が減少する傾向は,前報 1)および本 報の実験 1 の結果と同様であった.  この実験における 1.5 時間の運動量(回転数)は,1 日当たりで,B-E 群が平均で 481 ± 158 回転,D-E 群が 1054 ± 275 回転,T-E 群が 954±629 回転であり,統計的には 群間に有意な差がなかったが,ばらつきが大きく,B-E 群は 300 ~ 714 回転,D-E 群は 797 ~ 1511 回転,T-E 群では 328 ~ 1999 回転と約 2 ~ 6 倍の開きがあった. (2)臓器重量および脂肪組織重量  解剖時の体重 100g あたりの各臓器重量および脂肪組織重量を表 2 および図 10 に示し た.腎周囲脂肪重量については,朝食非運動群(B 群)0.63g,朝食後運動群(B-E 群)0.31g, 図 8 体重変化(実験 2)

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      有意差:なし 図 9 体重増加量(実験 2) 夕食非運動群(D 群)0.77g,夕食前運動群(D-E 群)0.50g であり,2 回食では,非運動群(T 群)0.90g,運動群(T-E 群)0.88g であった.非運動群において,朝食給餌の場合に対して, 夕食給餌および 2 回食給餌では統計的に有意な差は認められなかったが,大きい傾向に あった.また,運動負荷をした場合には,朝食後運動群(B-E 群)の場合のみ,有意差が 認められ(B 群に対して p < 0.05),夕食前運動群(D-E 群)の場合には有意差がないが, 低下傾向が認められ,2 回食運動群(T-E 群)では差がなかった.一方,精巣周囲脂肪重 量については,ほとんど群間で有意な差が認められなかった(表 2,図 10).  また,その他の臓器については,肝臓,腎臓において,各群間に有意な差が見られるも のがあったが,特に一定の傾向はみられなかった(表 2). (3)血清中性脂肪濃度  血清中性脂肪濃度および血清グルコース濃度を図 11 および図 12 に示した.血清中性 脂肪濃度については,D 群および T-E 群で有意に高い傾向にあり(p < 0.01),また,運 動負荷によって低下したものは,D-E 群(D 群に対して p < 0.01)であり,逆に T-E 群 では増加した(T 群に対して p < 0.05).  また,血清グルコース濃度については,夕食群(D 群および D-E 群)で高い傾向にあっ た(図 11)が,運動負荷による変化には一定の傾向が見られなかった.一方,血清コレ ステロールにおいては,群間に有意な差は見られなかった.

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表 2 体重 100g あたりの各臓器・脂肪組織重量(実験 2) 群 終 体 重 肝 臓 腎 臓 脾 臓 精 巣 腎周囲脂肪 精巣周囲脂肪 B 212.9 ± 7.2 3.51 ± 0.22 0.80 ± 0.03 0.26 ± 0.01 1.37 ± 0.09 0.63 ± 0.09 0.61 ± 0.05 有意差 a a B-E 211.0 ± 4.1 3.36 ± 0.06 0.81 ± 0.01 0.25 ± 0.01 1.39 ± 0.07 0.31 ± 0.17 0.61 ± 0.07 有意差 a,b A,,B,C,a D 210.3 ± 1.7 3.59 ± 0.13 0.81 ± 0.02 0.26 ± 0.03 1.35 ± 009 0.77 ± 0.12 0.70 ± 0.07 有意差 a,c b A A D-E 208.8 ± 12.1 3.58 ± 0.07 0.87 ± 0.04 0.25 ± 0.01 1.26 ± 0.23 0.50 ± 0.22 0.66 ± 0.08 有意差 b,d a,b b,c T 209.8 ± 10.3 3.34 ± 0.10 0.82 ± 0.04 0.25 ± 0.02 1.43 ± 0.08 0.90 ± 0.18 0.69 ± 0.07 有意差 c,d B,b T-E 196.5 ± 4.4 3.46 ± 0.04 0.85 ± 0.04 0.23 ± 0.01 1.45 ± 0.07 0.88 ± 0.21 0.57 ± 0.09 有意差 C,c A 数値:平均値±標準偏差(g) 有意差:同じアルファベット間に有意差がある(大文字 p < 0.01,小文字 p < 0.05) 考察  本実験の目的は,前報1)の制限時間給餌(meal-feeding)の給餌時間が 7.5 時間と長く, 厳密には meal-feeding になっていなかったので,給餌時間をより短くして,実験 1 では 4.5 時間,実験 2 では 3 ~ 3.5 時間に制限して給餌したラットにおいて,自走回転運動負 荷による体脂肪蓄積への影響を見ること(暗期の始めの給餌:朝食と暗期の終わりの給餌: 夕食)および給餌を朝夕の 2 回に分けた場合の体脂肪蓄積の変化を見ることであった.  その結果,朝食後に運動負荷をした場合には,前報1)および今回の実験 1 において明 らかなように,運動負荷によって,体重増加量,摂食量および腎周囲脂肪重量は有意に低 下していた.実験 2 においては,体重増加量に有意差は見られなかったが,摂食量およ び腎周囲脂肪重量には同様に有意な低下が認められた.また,運動負荷によって血清中性 脂肪濃度の低下も認められた.血清グルコース濃度(血糖値)の変化も血清中性脂肪濃度 と同様の傾向を示し,運動負荷によって低下する傾向にあった.

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      有意差:表 2 参照 図 10 体重 100g あたりの脂肪組織重量(実験 2)  一方,夕食を想定した給餌の場合(実験 2),非運動群において,給餌量を朝食に合わ せた pair-feeding することによって,体重増加量および摂食量は朝食と同じであったが, 有意差はないが,若干腎周囲脂肪重量が増加する傾向が見られた.同様に血清中性脂肪濃 度および血糖値が高い傾向も認められた.それに対して,運動を負荷することによって, 体重増加量および摂食量には変化がないが,腎周囲脂肪重量および血清中性脂肪濃度は低 下したが,血糖値には変化がなかった.摂食量が同じにも係わらず,朝食 1 回の給餌と比 べて,夕食 1 回の給餌の値が高い傾向にあることは興味深いことである.このことは人と の類似において,朝食より夕食を過多にした方が肥満になりやすいことと同義であろう.  朝食あるいは夕食の 1 回食に対して,同量の餌料を朝夕の 2 回に分けて給餌した場合 については,どのような傾向が見られるであろうか.実験 1 および 2 は同様の実験であ るが,2 回の給餌時間(実験 1:朝食 1.5 時間,夕食 2 時間,実験 2:朝食 1.5 時間,夕 食 1.5 時間)および運動負荷の時刻・時間(実験 1:朝食給餌直後 2 時間,実験 2:2 回 食の中間 1.5 時間)を異にするものであるが,給餌回数を 2 回に分けることによって,朝 食 1 回の給餌の場合に比較して,有意差の有無はあるが,腎周囲脂肪重量および血清中 性脂肪濃度と血糖値も高値を示す傾向にあった.それに対して,運動負荷をすることによっ て,実験 1 では,腎周囲脂肪重量および血清中性脂肪濃度が有意に低下し,血糖値には 変化がなかった.一方,実験 2 においては,腎周囲脂肪重量および血糖値には変化がなく,

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有意差 p < 0.01,B:T-E,B-E:D,B-E:T,B-E:T-E, D:D-E,D-E:T-E p < 0.05,B:D,T:T-E        図 11 血清中性脂肪濃度(実験 2) 有意差 p < 0.01,B:D-E,B-E:D,B-E:D-E,B-E:T-E,D-E:T 図 12 血清グルコース濃度(実験 2)

(14)

血清中性脂肪濃度は増加の傾向に合った.この実験 1 と実験 2 における運動負荷の影響 の差違は,摂食と運動のタイミングによるものかは更に検討が必要である.  一方,実験 2 において,夕食 1 回の給餌の場合と比較すると,2 回食給餌は腎周囲脂肪 重量が同じ位の値を示し,血清中性脂肪濃度および血糖値は低い傾向にある.これは夕食 1 回の給餌のそれらが朝食 1 回の場合に比較して高いことによる.  朝食 1 回の給餌に対して,朝夕 2 回の給餌の場合に体脂肪(腎周囲脂肪重量)が増加 する傾向にあることはどのように解釈できるのであろうか.人の場合,同じエネルギーを 摂取するならば,1 回に全部を食べる(いわゆる “どか食い”)より,1 日 3 回と分けて 食べた方が体脂肪の蓄積は少ないとされている.この人と今回のラットによる動物実験の 違いは,ラットの 1 回食に問題があるのかもしれない.本来ラットは,夜行性の動物であり, 暗期に 1 日分のほとんどの餌料を断続的に摂食するので,短時間 1 回に 1 日に必要な餌 料を摂食することは難しい.時間制限給餌(meal-feeding)をする場合でも,ある程度 時間をかけないと摂食できない.それでも自由摂食(ad libitum)に比べて摂食量は 6 割 くらいに低下する.このことが,1 回食と 2 回食に対する人とラットの結果の違いをもた らすのかも知れない.更なる検討が必要である.  本実験において,運動負荷による腎周囲脂肪重量の減少と血清中性脂肪濃度の低下には 関係があるように見える.そこで,実験に用いられたすべてのラットにおける腎周囲脂肪 重量と血清中性脂肪濃度との相関を調べた結果(図 13),その間には有意な(p < 0.01) 相関が認められた.  また,本実験では,体脂肪として,腎周囲脂肪重量と精巣周囲脂肪重量を測定した.腎 周囲脂肪重量と精巣周囲脂肪重量の間には実験 1 では有意な(p < 0.01)相関があったが, 実験 2 では有意性がなく,実験 1 および 2 で使われたすべてのラットでは p < 0.05 で有 意性が認められた(図 14).それと関係するのかも知れないが,今回の実験では,運動負 荷による体脂肪蓄積の抑制効果は精巣周囲脂肪重量では余り見られなかった.このことは 体脂肪が減少していく場合,精巣周囲脂肪よりも,腎周囲脂肪のような腹腔内脂肪が優先 的に減少していくものと考えられる.  鈴木(伸)ら3)は,ラットに 2 種類の歩行運動を行わせ,増体重,飼料摂取量と飼料効 率および体脂肪に及ぼす影響を調べ,運動によってそれらが低下し,また粗脂肪(体脂肪) 割合も減少することを示している.  鈴木(正)ら4)は,運動により体脂肪が減少する理由として,筋肉のリポ蛋白リパーゼ活 性の増大が関与していると示唆している.これは,脂肪分解酵素であるリポ蛋白リパーゼ が脂肪を分解するには,ノルアドレナリン,アドレナリン,副腎皮質ホルモンなどのホル モンの働きが不可欠であり,またそれらのホルモンは中程度の運動を一定時間行うことで 分泌されるからである.このことから,運動を行うことでノルアドレナリン,アドレナリ ンなどのホルモンが分泌され,それによってリポ蛋白リパーゼが体内の脂肪を分解するこ とで,体脂肪と血清中性脂肪を減少していると考えられる.

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       有意性: p < 0.01

図 13 腎周囲脂肪重量と精巣周囲脂肪重量の相関(実験 1・2)

       有意性: p < 0.05

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 また,鈴木(淳)ら5, 6)は,持久的な運動トレーニングによりラット骨格筋の脂肪酸代謝 に係わる酵素活性が上昇し,脂肪酸代謝能力が高まり,ひいては脂肪組織からの脂肪酸の 遊離を増加させる可能性を示唆している. 要約  5 週齢の Wistar 系雄ラットに,17(実験 1)あるいは 21(実験 2)日間,給餌時刻を 暗期の始め(朝食)あるいは終わり(夕食)に 1 回だけ給餌した場合と朝夕の 2 回に分 けて給餌した場合において,実験期間後半 14 日間の自走回転運動負荷が体脂肪蓄積およ び血清中性脂肪濃度,血清グルコース濃度(血糖値)に及ぼす影響を 2 回の実験で調べた.  その結果,朝食後に運動負荷をした場合(実験 1・2)においては,運動負荷によって, 摂食量および腎周囲脂肪重量は有意な低下が認められた.また,運動負荷によって血清中 性脂肪濃度の低下も認められた.血糖値の変化も血清中性脂肪濃度と同様の傾向を示し, 運動負荷によって低下する傾向にあった.  一方,夕食を想定した給餌の場合(実験 2),非運動群において,給餌量を朝食に合わ せた pair-feeding することによって,体重増加量および摂食量は朝食と同じであったが, 若干腎周囲脂肪重量が増加する傾向が見られた.同様に血清中性脂肪濃度および血糖値が 高い傾向も認められた.それに対して,運動を負荷することによって,体重増加量および 摂食量には変化がないが,腎周囲脂肪重量および血清中性脂肪濃度は低下し,血糖値には 変化がなかった.  朝食あるいは夕食の 1 回食に対して,同量の餌料を朝夕の 2 回に分けて給餌した場合 については,朝食 1 回の給餌の場合に比較して,腎周囲脂肪重量および血清中性脂肪濃 度と血糖値も高値を示す傾向にあった.それに対して,運動負荷をすることによって,実 験 1 では,腎周囲脂肪重量および血清中性脂肪濃度が有意に低下し,血糖値には変化が なかった.一方,実験 2 においては,腎周囲脂肪重量および血糖値には変化がなく,血 清中性脂肪濃度は増加の傾向に合った.また,実験 2 において,夕食 1 回の給餌の場合 と比較すると,2 回食給餌は腎周囲脂肪重量が同じ位の値を示し,血清中性脂肪濃度およ び血糖値は低い傾向にあった.

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文献

1) 笠原利英,谷川莉緒子 「摂食方法および運動のタイミングが成長期ラットの体脂肪と血清脂質 に及ぼす影響」 桜美林論集 32, 107-122 (2005)

2) 中里浩一,宋洪善,中嶋寛之 「回転ケージを用いた自発運動がラット骨格筋系組織に与える影響」  体力科学 51, 561(2002)

3) Suzuki,S. Sukemori,S. Ikeda,S. Kurihara,Y. Ito,S.: “Effects of walking exercise on body weight gain and body composition of rats. 1.Effects of two exercise protocols on body fat deposition” Jpn. J. Livest. Management, 37, 105-111(2002)

4) Suzuki,M. Doi,T. Lee,S.J. Okamura,K. Simizu,S. Okano,G. Sato,Y. Shimomura,Y. Fushiki,T.: “Effect of meal timing after resistance exercise on hindlimb muscle mass and fat accumulation in trained rats” J Nutr Sci Vitaminol 45, 401-409(1999)

5) 鈴木淳一,平塚勇介,田口晴也 「持久的な運動トレーニングが若年ラット骨格筋の脂肪酸代謝 能力におよぼす影響」 冬期スポーツ研究(北海道教育大学冬期スポーツ教育研究センター紀要)  8, 9-19(2005) 6) 鈴木淳一,香西雅之,東浦拓郎 「持久的トレーニングがラット骨格筋のカルニチンアシル基転 移酵素(CPT)活性に及ぼす影響」 冬期スポーツ研究(北海道教育大学冬期スポーツ教育研究 センター紀要) 9, 1-7(2006)

図 2 実験 2 スケジュール 3.動物の解剖  すべての実験において,飼育期間終了後,ラットを 1 夜絶食した後,ネムブタール麻 酔下で開腹,下大静脈より採血した後に,肝臓,腎臓,脾臓,精巣および脂肪組織(腎周 囲,精巣周囲)を摘出し,重量を測定した.採血した血液は直ちに遠心分離(3000 回転 × 15 分間)を行い,血清を分離し,分析まで- 80℃で凍結保存した. 4.血清脂質の分析方法  血清脂質(中性脂肪,総コレステロール,HDL- コレステロール)および血清グルコー スの測定は,市販の試薬キット
図 6 血清中性脂肪濃度(実験 1)
表 2 体重 100g あたりの各臓器・脂肪組織重量(実験 2) 群 終  体  重 肝 臓 腎 臓 脾 臓 精 巣 腎周囲脂肪 精巣周囲脂肪 B 212.9 ± 7.2 3.51 ± 0.22 0.80 ± 0.03 0.26 ± 0.01 1.37 ± 0.09 0.63 ± 0.09 0.61 ± 0.05 有意差 a a B-E 211.0 ± 4.1 3.36 ± 0.06 0.81 ± 0.01 0.25 ± 0.01 1.39 ± 0.07 0.31 ± 0.17 0.61 ± 0.07 有意
図 13 腎周囲脂肪重量と精巣周囲脂肪重量の相関(実験 1・2)

参照

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