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健常者および慢性腰痛者における股関節伸展時の腰椎骨盤運動制御

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健常者および慢性腰痛者における

股関節伸展時の腰椎骨盤運動制御

2016

吉備国際大学大学院

保健科学研究科

保健科学専攻

D311302 末廣 忠延

(2)

- 2 - 目 次 定 義 , 省 略 文 字 等 の リ ス ト ... - 5 - 序 章 序論(総合) ... - 6 - 第 1 節 研 究 背 景 ... - 6 - 第1項 腰痛の疫学 ... - 6 - 第2項 腰椎骨盤の安定性 ... - 6 - 第3項 腰椎骨盤の安定性のための試験 ... - 7 - 第4項 股関節伸展運動時の筋活動パターン ... - 7 - 第 2 節 研 究 目 的 ... - 9 - 第 3 節 論 文 の 構 成 ... - 10 - 第 1 章 腰椎骨盤の安定化手技の違いが腹臥位での股関節伸展時の 脊 椎 の 動 き と 体 幹 筋 活 動 に 与 え る 影 響 ... - 11 - 第 1 節 序 論 ・ 背 景 ... - 12 - 第 2 節 方 法 ... - 13 - 第1項 被験者 ... - 13 - 第2項 実験手順 ... - 13 - 第3項 EMG の記録とデータ解析 ... - 14 - 第4項 脊椎の動き ... - 14 - 第5項 統計解析 ... - 15 - 第 3 節 結 果 ... - 17 - 第1項 脊椎の動き ... - 17 - 第2項 筋活動 ... - 18 - 第 4 節 考 察 ... - 19 - 第 5 節 結 論 ... - 21 - 第 2 章 健 常 者 と 慢 性 腰 痛 者 に お け る 股 関 節 伸 展 時 の 背 部 筋 及 び 股 関 節 伸 筋 群 の 活 動 開 始 時 間 の 比 較 ... - 22 - 第 1 節 序 論 ・ 背 景 ... - 23 - 第 2 節 方 法 ... - 24 - 第1項 被験者 ... - 24 -

(3)

- 3 - 第2項 疼痛の評価と筋電図テクニック ... - 24 - 第3項 実験手順 ... - 25 - 第4項 データ処理 ... - 26 - 第5項 統計解析 ... - 26 - 第 3 節 結 果 ... - 27 - 第1項 被験者の基本属性 ... - 27 - 第2項 健常群内での相対的な筋活動開始時間の差 ... - 28 - 第3項 下肢の反応時間と群間の相対的な筋活動開始時間の差 ... - 29 - 第 4 節 考 察 ... - 30 - 第 5 節 結 論 ... - 32 - 第3 章 慢性腰痛者における腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の背部筋及び股関節伸筋 群 の 活 動 開 始 時 間 と の 関 係 ... - 33 - 第 1 節 序 論 ・ 背 景 ... - 34 - 第 2 節 方 法 ... - 35 - 第1項 被験者 ... - 35 - 第2項 腹臥位での股関節伸展運動時の筋活動開始時間の測定 ... - 35 - 第3項 腰部の臨床不安定性試験 ... - 36 - 第4項 実験手順 ... - 37 - 第5項 統計解析 ... - 37 - 第 3 節 結 果 ... - 38 - 第1項 正規性の結果 ... - 38 - 第2項 被験者の基本属性 ... - 38 - 第3項 腰痛の重症度(NRS・ODI),腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の筋活動開 始 時 間 と の 関 係 ... - 40 - 第4項 腰部の臨床不安定性と腰痛の重症度 (NRS・ODI)との関係 ... - 41 - 第 4 節 考 察 ... - 42 - 第 5 節 結 論 ... - 43 - 第 4 章 総合考察 ... - 44 - 終 章 ... - 45 - 第 1 節 結 論 ( 総 合 ) ... - 45 -

(4)

- 4 -

(5)

- 5 -

定義,省 略文字 等の リスト

本 研 究 で 使 用 す る 用 語 の 定 義 , 省 略 文 字 は 以 下 の も の と す る .

用 語 の 定 義

腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 : 腰 椎 骨 盤 の 方 向 を 制 御 し て , 椎 間 の 中 間 位 を 維 持 す る 能 力 .

Abdominal hollowing (AH):腰椎骨盤の動きなしで腹部を引き込ませ,腹横筋,内腹斜筋, 腰 椎 多 裂 筋 , 横 隔 膜 と い っ た 深 部 筋 を 選 択 的 に 収 縮 さ せ る 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 .

Abdominal bracing (AB):特定の筋活動に焦点を当てず,深部筋を含む体幹筋全体の収縮 を 行 う 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 .

臨 床 不 安 定 性 : 脊 椎 の 安 定 化 シ ス テ ム の 機 能 不 全 の 徴 候 .

省 略 語

AH: abdominal hollowing AB: abdominal bracing

MVC: maximum voluntary contraction (最 大 随 意 収 縮 ) NRS: numeric rating scale

ODI: Oswestry low back pain disability Index PIT: prone instability test

(6)

- 6 -

序 章

序論(総合)

第1節 研究背景 腰 痛 の 疫 学 第1項 腰 痛 の 生 涯 有 病 率 は ,60~90%と報告されている1). 平 成25年の厚生労働省による国民 生 活 基 礎 調 査 に よ る と ,自 覚 症 状 が あ る 者( 有 訴 者 )の 症 状 で は 腰 痛 が ,男 性1000人中92.2 人 で 第1位,女性は1000人中118.2人で第2位であった.さらに,通院者率は,男性1000人 中42.2人で疾患別では第4位,女性は1000人中58.4人で第2位であった.また欧米の腰痛に お け る 医 療 費 は900億ドルで,生産性の低下による間接経費は,235億ドルと試算されてお り2), 世 界 的 に 腰 痛 対 策 お よ び 予 防 法 の 確 立 は 急 務 で あ る . 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 第2項 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 は , 腰 椎 骨 盤 の 方 向 を 制 御 し て , 椎 間 の 中 間 位 を 維 持 す る 能 力 と 定 義 さ れ る3). 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 は , 椎 体 , 椎 間 板 , 椎 間 関 節 , 靭 帯 な ど の 他 動 サ ブ シ ス テ ム と 筋 に よ る 自 動 サ ブ シ ス テ ム , そ し て 筋 群 の 制 御 を 行 う 神 経 コ ン ト ロ ー ル サ ブ シ ス テ ム の 3つにより獲得される4).ま た 自 動 サ ブ シ ス テ ム に 関 与 す る 体 幹 筋 は ,構 造 的 に 腹 横 筋 ,腰 部 多 裂 筋 ,内 腹 斜 筋 な ど 体 幹 の 深 部 に 位 置 し ,脊 椎 個 々 の 分 節 に 付 着 す る ロ ー カ ル 筋 群 と , 腹 直 筋 , 外 腹 斜 筋 , 脊 柱 起 立 筋 な ど 体 幹 の 表 在 に 位 置 し , 多 分 節 間 を 横 断 す る グ ロ ー バ ル 筋 群 に 分 類 さ れ て い る5). ロ ー カ ル 筋 の 機 能 特 性 は , 脊 柱 分 節 の 剛 性 お よ び 椎 間 の 運 動 を 制 御 し ,ま た 固 有 受 容 器 と し て の 働 き が あ る と 報 告 さ れ て い る5, 6).こ れ に 対 し グ ロ ー バ ル 筋 群 は 脊 柱 の 方 向 性 を コ ン ト ロ ー ル し , 体 幹 に 加 わ る 外 的 負 荷 と の バ ラ ン ス を と り , 胸 郭 か ら 骨 盤 に 負 荷 を 伝 達 す る 働 き が あ る5) 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 シ ス テ ム の 機 能 不 全 に よ る 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 の 低 下 は , 神 経 組 織 の 圧 迫 や 伸 張 , ま た 靱 帯 お よ び 疼 痛 感 受 性 組 織 に 異 常 な 変 化 を も た ら し 腰 痛 や 腰 痛 の 再 発 の 原 因 に な る と 報 告 さ れ て い る7, 8) .従って腰椎骨盤の安定性低下の原因 究明やその治療方法 の 確 立 は 重 要 で あ る .

(7)

- 7 - 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 の た め の 試 験 第3項 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 の た め の 試 験 で は , 腹 臥 位 で の 股 関 節 伸 展 , 側 臥 位 で の 股 関 節 外 転 , 自 動 下 肢 伸 展 挙 上 な ど の 四 肢 運 動 中 の 腰 椎 骨 盤 を 中 間 位 に 保 持 す る 能 力 と そ の 際 の 筋 の 活 動 パ タ ー ン が 評 価 さ れ る . こ の 中 で 腹 臥 位 で の 股 関 節 伸 展 運 動 は , 腰 痛 者 の 中 で 最 も 症 状 を 呈 し や す い 腰 椎 の 伸 展 や 回 旋 を 制 御 す る 能 力 を 評 価 す る こ と が で き , 腰 痛 者 で は 股 関 節 伸 展 に 伴 い 骨 盤 の 前 傾 や 腰 椎 の 過 度 の 動 き が 観 察 さ れ る9). こ れ ら の 過 度 な 腰 椎 骨 盤 の 動 き は , 腰 部 の 反 復 微 細 損 傷 に つ な が り 腰 痛 の 悪 化 や 再 発 に つ な が る3). 従 っ て 股 関 節 伸 展 運 動 中 の 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 を 向 上 さ せ る 訓 練 方 法 の 検 討 は 重 要 で あ る . し か し な が ら 股 関 節 伸 展 時 に 効 率 的 に 腰 椎 骨 盤 を 安 定 化 さ せ る 方 法 に つ い て は 十 分 に 明 ら か と な っ て い な い . 股 関 節 伸 展 運 動 時 の 筋 活 動 パ タ ー ン 第4項 健 常 者 に お け る 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 を 調 査 し た 研 究 は 3 本報告 さ れて おり 10-12)Vogt ら 12)は , 股 関 節 伸 展 時 に 背 部 筋 と 股 関 節 伸 筋 群 の 一 貫 し た 活 動 開 始 順 序 を 明 ら か に し た が ,一 方 で Lehman ら 10) Pierce ら 11)は ,股 関 節 伸 展 時 の 一 貫 し た 活 動 開 始 順 序 は な い こ と を 報 告 し て い る . こ の よ う に 健 常 者 に お け る 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 の 先 行 研 究 は , 研 究 間 で 異 な る 結 果 を 示 し て い る . こ の 異 な る 結 果 は , 先 行 研 究 の 股 関 節 伸 展 速 度 が ゆ っ く り で あ っ た 為 と 思 わ れ る .Hodges ら 13, 14)は ,四 肢 の 低 速 で の 動 き は 体 幹 筋 の 反 応 頻 度 を 減 ら し , 変 動 性 を 増 加 さ せ る と 報 告 し て い る . 従 っ て , 健 常 者 に お け る 正 常 な 筋 活 動 開 始 時 間 を 明 ら か に す る た め に は 速 い 速 度 で の 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 を 調 査 す る 必 要 が あ る . 腰 痛 者 に お け る 筋 の 活 動 パ タ ー ン の 研 究 で は , 外 腹 斜 筋 や 広 背 筋 な ど の グ ロ ー バ ル 筋 群 の 過 活 動 が 報 告 さ れ て い る15, 16).一 方 で 腰 痛 者 の 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 の 研 究 で は ,腰 痛 者 で 大 殿 筋 の 筋 活 動 開 始 が 遅 延 す る と 報 告 し て い る 論 文17)と 腰 痛 者 で 筋 活 動 開 始 時 間 は 変 化 し な い と す る 報 告18, 19)が あ り ,一 定 の 見 解 が 得 ら れ て い な い .こ れ に 関 し て は 先 述 の 健 常 者 で の 活 動 開 始 時 間 が 十 分 に 明 ら か と な っ て い な い こ と が 原 因 の 一 つ と 挙 げ ら れ る . こ れ ま で の 腰 痛 者 の 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 の 研 究 で は , 腰 部 の 分 節 的 な 安 定 性 に 関 与 す る 腰 部 多 裂 筋 は 調 査 さ れ て い な い . し か し な が ら , こ の 腰 部 多 裂 筋 は , 腰 痛 者 の 肩 挙 上 で 活 動 遅 延 が 報 告 さ れ て お り20),股 関 節 伸 展 時 で も 活 動 遅 延 が 生 じ 腰 部 の 安 定

(8)

- 8 -

性 低 下 の 原 因 に 関 与 し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る . 従 っ て 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 低 下 に 対 す る 治 療 の 洞 察 を 得 る 為 に , 健 常 者 お よ び 慢 性 腰 痛 者 の 股 関 節 伸 展 時 の 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 の 違 い の 有 無 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る .

(9)

- 9 - 第2節 研究目的 本 研 究 の 目 的 は , 股 関 節 伸 展 時 の 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 機 序 を 明 ら か に し , 腰 痛 者 に お け る 股 関 節 伸 展 時 の 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 を 向 上 さ せ る 訓 練 方 法 を 検 討 す る こ と で あ る . そ の た め , 我 々 は 腰 椎 骨 盤 の 動 き と 筋 の 活 動 パ タ ー ン の 両 面 か ら 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 を 検 討 し た . 具 体 的 に は ま ず , 過 剰 な 腰 椎 骨 盤 の 動 き を 抑 制 す る 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 を 検 討 し た . そ の 後 , 健 常 者 と 慢 性 腰 痛 者 に お け る 筋 活 動 開 始 時 間 を 測 定 し 差 の 有 無 を 検 討 し た . 最 後 に 腰 痛 者 に お け る 特 徴 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 と 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 と の 関 係 を 明 ら か に し , 股 関 節 伸 展 時 の 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 を 向 上 さ せ る 訓 練 方 法 を 検 討 し た .

(10)

- 10 - 第3節 論文の構成 本 研 究 の 論 文 構 成 に つ い て 以 下 に 示 す ( 図 1). 第 1 章で は, 腹 臥位 での 股関 節 伸展 時に 効 率的 に 腰 椎 骨盤 を安 定 化さ せる 方 法 を 検討 し た . 第 2 章で は, 股 関節 伸 展 時の 健 常者 と慢 性 腰痛 者の 筋 活動 開始 時 間 を 測定 し ,慢 性腰 痛 者 に お け る 特 徴 的 な 筋 の 活 動 パ タ ー ン を 明 ら か と し た . 第 3 章で は, 股 関節 伸展 時の 慢 性腰 痛者 の 筋活 動開 始 の遅 延が 腰 部の 臨床 不 安定 性 に 関 与 す る か を 検 討 し た . 終 章 で は , 本 研 究 の 1 章 , 2 章 , 3 章 の 結 果 か ら 腰 痛 者 に お け る 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 を 改 善 さ せ る 訓 練 方 法 に つ い て 考 察 し た .

な お , 本 論 文 の 第 1 章は Journal of bodywork and movement therapies21)に , 第 2 章

は Journal of electromyography and kinesiology22)に ,第3 章は理学療法科学 23)に そ れ ぞ

れ 出 版 も し く は 受 理 さ れ た 論 文 を 基 に 加 筆 ・ 修 正 し た も の で あ る . 各 出 版 社 か ら 出 版 さ れ た 論 文 も し く は 受 理 さ れ た 論 文 を 博 士 論 文 の 一 部 と し て 使 用 す る こ と に つ い て 著 作 権 上 の 問 題 が な い こ と を 確 認 し て い る .

(11)

- 11 -

1 章

腰椎骨盤の安定化手技の違いが腹臥位での股関節伸展時の

脊椎の動きと体幹筋活動に与える影響

(12)

- 12 - 第1節 序論・背景

股 関 節 伸 展 時 の 腰 椎 骨 盤 の 過 剰 な 動 き は 腰 部 の 反 復 微 細 損 傷 に つ な が る た め , 股 関 節 伸 展 運 動 時 に 腰 椎 骨 盤 を 中 間 位 に 保 持 し 安 定 化 さ せ る こ と は , 腰 痛 の 予 防 に お い て 重 要 で あ る .

Abdominal hollowing(AH)と Abdominal bracing(AB)は,一般的な腰椎骨盤の安定化

手 技 で あ る .AH は腰椎骨盤の動きなしで腹部を引き込ませ ,腹横筋,内腹斜筋,腰部多 裂 筋 と 横 隔 膜 と い っ た 深 部 筋 を 選 択 的 に 収 縮 さ せ る 運 動 で あ る 3, 24, 25). 腹 横 筋 の 機 能 は , 骨 盤 底 筋 と 横 隔 膜 と 協 調 し て 腹 腔 内 圧 を 上 昇 さ せ 安 定 性 に 貢 献 す る 26-28).ま た 腹 横 筋 と 内 腹 斜 筋 は ,胸 腰 筋 膜 の 緊 張 と 仙 腸 関 節 の 圧 迫 を 生 じ ,腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 に 貢 献 す る 3, 29, 30) 多 裂 筋 は 腰 椎 の 分 節 的 な 安 定 性 に 寄 与 す る 3) 対 照 的 に AB は,特定の筋活動に焦点を当てず,深部筋を含む体幹筋全体の収縮を行う こ と で あ る .AB は,脊柱剛 性を増加させることによって全方向で安定性を増加させると 報 告 さ れ て い る 31-34) 先 行 研 究 35-38)で は ,AH と AB が下肢の運動 時に,脊柱の動きを抑制する と報告してい る .ま た AH と AB を比較している先行研究 32, 34)で は ,突 然 の 後 方 へ の 負 荷 や 椎 体 を 後 方 か ら 前 方 へ 圧 迫 し た 際 の 腰 椎 の 動 き を 調 査 し て い る . し か し な が ら 股 関 節 伸 展 時 の AH や AB で,どちらがより効果的に 腰椎骨盤の動きを減少させるかについて は定量的に解析し た 報 告 は な い . そ こ で 本 研 究 の 目 的 は , 腹 臥 位 で の 股 関 節 伸 展 時 の 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 の 違 い が , 脊 椎 の 動 き と 体 幹 筋 活 動 に 与 え る 影 響 に つ い て 調 査 す る こ と と し た . 我 々 の 仮 説 は 腰 部 の 安 定 化 手 技 な し と 比 較 し て AH と AB が有意に腰椎骨盤の動きが減少し ,AH と比較して AB で 有 意 に 腰 椎 骨 盤 の 動 き が 減 少 す る と し た .

(13)

- 13 - 第2節 方法 被 験 者 第1項 本 研 究 の 被 験 者 は ,14 人の健常な男性大学生(年齢 21.2 ± 2.6 歳,身長 170.8 ± 4.2cm, 体 重 66.6 ± 8.7 kg)であった .腰椎骨盤の安定性が性差の影響を受けるため我々は男性成 人 の み を 被 験 者 と し た 35). 除 外 基 準 は 過 去 12 ヵ月以内の筋骨格系の疼痛 ,下肢・脊椎・ 骨 盤 の 手 術 の 既 往 , 股 関 節 の 屈 曲 拘 縮 と し た . 本 研 究 は 川 崎 医 療 福 祉 大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 ( 承 認 番 号 :356)を 得た上で , す べての 被 験 者 に 対 し て は , 事 前 に 研 究 趣 旨 に つ い て 十 分 に 説 明 し た 後 , 書 面 で の 同 意 を 得 た 上 で 実 験 を 行 っ た . 実 験 手 順 第2項 測 定 条 件 は 何 も 意 識 し な い 状 態 のControl,通常の呼吸を継続したまま下腹部を引き込む AH,腹部の引き込みや押し出しなしで腹部と背部の全ての体幹筋を収縮させる ABの3条件 と し た . デ ー タ の 収 集 前 に 被 験 者 は , 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 を 使 用 し た 股 関 節 伸 展 運 動 を 約15分間練習した .それから 腹臥位で股関節の伸展角度が10°となるように目標バーを設 置 し , 膝 窩 部 が 目 標 バ ー に 触 れ る ま で 膝 伸 展 位 で 股 関 節 伸 展 を2回ずつ実施した.なお, 股 関 節 を 伸 展 す る 脚 は 利 き 足 と し て , 利 き 足 は ボ ー ル を 蹴 る 側 の 足 と し た . す べ て の 被 験 者 は 右 足 が 利 き 足 で あ っ た . 測 定 順 序 は , 自 然 な 体 幹 筋 の 収 縮 方 法 に 影 響 を 与 え る の を 回 避 す る た め に ,AHとABの前にControlを試験した.その後のAHとAB は,ランダムな順 序 で 行 な っ た . 疲 労 の 影 響 を 回 避 す る た め に2分間の安静は各試行の間に取った. 測 定 時 の 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 の パ タ ー ン の 強 度 を 制 御 す る た め にAHとABは,表面筋 電 計 の バ イ オ フ ィ ー ド バ ッ ク モ ー ド (Myosystem1200,Noraxon社製)を使用した33, 34) 視 覚 的 な 筋 電 図 バ イ オ フ ィ ー ド バ ッ ク は 右 側 の 内 腹 斜 筋 と 外 腹 斜 筋 を モ ニ タ ー し た . 内 腹 斜 筋 の 強 度 はAHとABでの努力量を一定にするために最大随意 収縮(Maximum Voluntary Contraction:MVC)の15%に調整した.この強度 は,日常活動のための 体幹筋の同時収 縮 レ ベ ル が10-15%と報告33, 34, 39, 40)さ れ て お り ,こ れ を 参 考 に 決 定 し た .そ し て 外 腹 斜 筋

(14)

- 14 - 最 小 の 外 腹 斜 筋 の 活 動 で 深 部 の 腹 筋 を 同 時 に 活 動 す る こ と で あ っ た . な お , 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 が 正 確 に 実 施 さ れ た か を 確 認 す る た め に , 右 側 の 内 腹 斜 筋 と 外 腹 斜 筋 の 活 動 比 率 を 算 出 し た34, 41). 内 腹 斜 筋 と 外 腹 斜 筋 の 活 動 比 率 がABよりもAHでより高値の場合,AH とABが正確に実施できたと判定した. EMG の記録とデータ解析 第3項 体 幹 筋 の 筋 活 動 量 の 測 定 に は 表 面 筋 電 計(Myosystem1200,Noraxon社製)を用い,サ ン プ リ ン グ 周 波 数 は1000Hzとした.測定筋は右側の腹直筋(臍 部外 側の 約2~ 3 cm),両 側 の 外 腹 斜 筋(第8 肋骨外側下縁),内腹斜筋(上前 腸 骨棘 の2cm内側,2 cm 下方),右 側 の 腰 部 脊 柱 起 立 筋(L1レベルで棘突起の外側2 ~3 cm),腰部多裂筋(L5/S1レベルで 棘突 起の す ぐ外 側)とした.表面電極にはディスポーザブル電極 (Blue Sensor M-00-S, Ambu社製)を用い,十分な皮膚処理を行った後,貼付した.電極間距離は 2.5cmとし,ア ー ス 電 極 は 右 側 の 尺 骨 茎 状 突 起 に 貼 付 し た . 体 幹 筋 の 筋 活 動 の 測 定 は , 腹 臥 位 の 股 関 節 伸 展 最 終 域 で5秒間実施した. 得 ら れ た 筋 電 波 形 は , バ ン ド パ ス フ ィ ル タ ー (20~500 Hz)処理を行った後,全波整流 し ,5秒間の平均振幅を求めた.各測定筋について,ばらつきを減少させるために,各課 題 の2試行分を平均した値をそれぞれ代表値とし,MVC時の平均振幅で正規化し%MVCの 値 と し た .MVCの測定は,各体幹筋に対応したダニエルスらの徒手筋力検査法42)に 従 っ て 行 な っ た . 脊 椎 の 動 き 第4項 脊 柱 彎 曲 角 の 測 定 に は ,Spinal Mouse( I n d e x 社 製 ) を用い,直立立位と 股関節伸展時 の 脊 柱 彎 曲 角 度 を 測 定 し た ( 図 1).多くの運動は腰椎が中間位に近い程 ,より安定して い る と 解 釈 さ れ る .し た が っ て 直 立 立 位 で 測 定 さ れ る 彎 曲 を 中 間 位 と し て 定 義 し 12-14),直 立 立 位 と 股 関 節 伸 展 時 の 脊 椎 彎 曲 角 の 差 を 脊 椎 の 動 き と し た . そ の た め 胸 椎 の 動 き は , 直 立 立 位 と 股 関 節 伸 展 時 の 胸 椎 後 彎 角 の 差 と し た . 同 様 に 腰 椎 の 動 き は , 直 立 立 位 と 股 関 節 伸 展 時 の 腰 椎 前 彎 角 の 差 と し た . 胸 椎 の 動 き と 腰 椎 の 動 き は , 正 の 数 値 が 伸 展 の 動 き を 示 し , 負 の 数 値 が 屈 曲 の 動 き を 示 す . 仙 骨 傾 斜 角 は 仙 骨 背 側 表 面 と 鉛 直 線 と の な す 角 度 と し

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- 15 - て 計 測 さ れ る . そ の た め , 骨 盤 の 動 き は 直 立 立 位 の 仙 骨 傾 斜 角 か ら 股 関 節 伸 展 時 の 仙 骨 傾 斜 角 の 差 に 90°を足した値を骨盤の動きとした.骨盤の動きは正の数値が骨盤の後方傾斜 を 示 し , 負 の 数 値 が 前 方 傾 斜 を 示 す . 図 1 測定風景 21) (a) 内 腹 斜 筋 の 下 部 線 維 と 外 腹 斜 筋 は 筋 電 図 バ イ オ フ ィ ー ド バ ッ ク 装 置 に て 視 覚 的 に 制 御 さ れ た . (b) 脊 柱 彎 曲 角 は , 脊 椎 の 動 き を 算 出 す る た め に 「 ス パ イ ナ ル マ ウ ス 」 を 使 用 し て 測 定 さ れ た . 統 計 解 析 第5項 統 計 解 析 は SPSS Ver. 21 を 用 い て 解 析 し た . 脊 椎 の 動 き と 各 体 幹 筋 の 正 規 性 は Shapiro-Wilk 検定を使用し ,脊椎の動きと 体幹筋活動に対する腰椎骨盤の 安定化手技の影 響 は ,p 値(p < 0.05)と差の 95%信頼区間の算出によって分析した.効果量と検出力を 算 出 す る た め に G-power software(Franz Faul, Univesitat Kiel, Germany)を使用し た.

脊 椎 の 動 き

反 復 測 定 分 散 分 析 は ,脊 椎 の 動 き に 関 し て 3 条件間で差を検出するのに用いられ,その

b

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- 16 - 後 Tukey の多重比較検定を行った.有意水準は 5%未満とした . 筋 活 動 Friedman 検定は,体幹筋活動に関して 3 条件間で差を検出するのに用いられ ,その後, 多 重 比 較 検 定 と し て Wilcoxon の 符 号 付 き 順 位 検 定 を 行 っ た . こ の と き の 有 意 水 準 は Bonferroni の補正を加味し,1.67%に設定した.

(17)

- 17 - 第3節 結果 脊 椎 の 動 き 第1項 表 1 で示すように,腰椎の伸展は AB 条件が最も小さく,次いで AH 条件であった.ま た Control 条件では最も腰椎の伸展が大きかった .腰椎の伸展は Control 条件と AH 条件 (p < 0.001),Control 条件と AB 条件(p < 0.001)の間で有意差を認めたが,AH 条件と AB 条件間では有意差を認めなかった (p < 0.05). 骨 盤 の 前 傾 は AH 条件が最も低く,次いで AB 条件であった.また Control 条件は骨盤 の 前 傾 が 最 も 大 き か っ た . 骨 盤 の 前 傾 は Control 条件と AH 条件(p < 0.001),Control 条 件 と AB 条件の間で有意差を認めたが(p < 0.001),AH 条件と AB 条件間で有意差を認 め な か っ た (p < 0.05).腰椎と骨盤の動きの検出力は 1.00 で,効果量はそれぞれ 2.09, 1.47 であった.また胸椎の動きは有意差を認めなかった. Control AH AB 比較 下限 上限 Control-AH* 4.9 8.7 Control-AB* 5.3 9.1 Control-AH* -7.3 -3.4 Control-AB* -6.8 -2.9 平均 ± 標準偏差, *p < 0.001

AH:abdominal hollowing, AB: abdominal bracing 負の値は脊椎の屈曲,骨盤の前傾の動きを示す. 正の値は脊椎の伸展,骨盤の後傾の動きを示す. 腰椎 7.3 ± 3.5 0.5 ± 3.8 0.1 ± 3.4 骨盤 -5.4 ± 3.3 0.0 ± 4.0 -0.5 ± 3.1 表 1 腹臥位の股関節伸展時の脊椎の動き(°) 95% 信頼区間 胸椎 2.5 ± 9.2 4.1 ± 8.1 5.0 ± 8.9 None 21)

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- 18 - 筋 活 動 第2項 表 2 で示すように ,腹筋群は,AB 条件が最も高い筋活動で続いて AH 条件,Control 条 件 の 順 で あ っ た .ま た Control 条件と AB 条件(p < 0.001),Control 条件と AH 条件(p < 0.001)の間に有意差を認めた.さらに,外腹斜筋の筋活動は,AH 条件より AB 条件で 有 意 に 高 値 を 示 し た (p < 0.017). 右 の 脊 柱 起 立 筋 は Control 条件が最も高い筋活動で続いて AB 条件と AH 条件の順であ っ た . ま た Control 条件と AH 条件(p = 0.006)の間に有意差を認めた. 内 腹 斜 筋 と 外 腹 斜 筋 の 活 動 比 率 は ,AB 条件と比較して,AH 条件で有意に高値を示した. 外 腹 斜 筋 , 内 腹 斜 筋 , 脊 柱 起 立 筋 の 検 出 力 は 0.99~1.00 で,効果量は 0.64~1.82 であっ た . 腹 直 筋 の 検 出 力 は 0.46 で,効果量は 0.34 であった. Control AH AB 比較 下限 上限 Control-AH* 0.2 0.6 Control-AB* 0.2 0.8 Control-AH* 2.4 6.0 Control-AB* 6.0 14.1 AH-AB* 2.6 8.5 Control-AH* 10.8 13.8 Control-AB* 11.4 14.0 Control-AH* 0.8 3.5 Control-AB* 1.7 6.5 AH-AB† 0.4 4.2 Control-AH* 8.3 15.4 Control-AB* 9.3 17.6 -1.7 右内腹斜筋/右 外腹斜筋 1.8 (3.0) 2.3 (1.9) 1.3 (0.8) AH-AB* 0.1 2.1 中央値(四分位範囲), *p < 0.001, †p = 0.006

AH:abdominal hollowing, AB: abdominal bracing, CI: confidence intervals 右腰部多裂筋 21.7 (10.6) 23.3 (11.2) 23.8 (16.7) None -7.2 左外腹斜筋 1.1 (1.0) 2.9 (3.3) 4.3 (5.5) 左内腹斜筋 2.2 (4.6) 13.5 (9.0) 16.3 (6.8) 右脊柱起立筋 14.0 (10.2) 5.7 (13.8) 6.5 (10.1) Control-AH† 右外腹斜筋 1.1 (1.5) 6.1 (4.7) 11.1 (5.2) 右内腹斜筋 2.0 (2.3) 14.8 (1.5) 15.3 (2.2) 表2 股関節伸展時の筋活動量 (%MVC) 95% 信頼区間 右腹直筋 0.7 (0.8) 0.9 (1.0) 1.1 (1.8) 21)

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- 19 - 第4節 考察 腹 臥 位 で の 股 関 節 伸 展 運 動 の 異 常 な 運 動 は 腰 椎 過 伸 展 と 骨 盤 の 前 方 傾 斜 が し ば し ば 観 察 さ れ る . こ の 過 剰 な 腰 椎 骨 盤 の 動 き は , 椎 骨 や 周 囲 の 軟 部 組 織 に 圧 迫 や 伸 張 ス ト レ ス を 引 き 起 こ し , 腰 痛 の 原 因 に な る と 考 え ら れ て い る3, 43). そ こ で 股 関 節 伸 展 運 動 時 の 腰 椎 骨 盤 の 過 剰 な 運 動 を 制 御 す る た め に ,多 く の 著 者 が 腹 筋 の 促 通 を 推 奨 し た9, 37).し か し な が ら , 股 関 節 伸 展 時 にABとAHでどちらがより腰椎 骨盤が安定するかは調査されていない.そこ で 本 研 究 で は 腹 臥 位 で の 股 関 節 伸 展 運 動 時 に 腰 椎 骨 盤 の 過 剰 な 動 き が 少 な く , よ り 中 間 位 を 維 持 で き る 適 切 な 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 を 検 討 し た . AHとABが正確に実施されたかを確認するために, ローカル筋である内腹斜筋とグロー バ ル 筋 で あ る 外 腹 斜 筋 の 活 動 比 率 を 算 出 し た と こ ろ ,ABと比較して,AHで有意に高値を 示 し た . こ の 結 果 は ,AHとABが正確に実施できたことを示 めす. AH は Control よりも有意に腰椎の伸展と骨盤の前傾を減少させ,AH でより安定性が高 い こ と を 示 唆 し た . こ れ は ,Oh ら 37)の 研 究 の AH と腰椎骨盤の安定化手技なしでの骨盤 の 動 き を 比 較 し た 結 果 と 同 様 で あ っ た . そ し て 彼 ら は , 同 時 に 脊 柱 起 立 筋 , 大 殿 筋 , 内 側 の ハ ム ス ト リ ン グ ス の 筋 活 動 を 計 測 し て お り ,AH で大殿筋・内側ハムストリングスの活 動 の 増 加 と 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 量 の 低 下 を 報 告 し て い る . 本 実 験 で は AH を行うことで有意 に 内 腹 斜 筋 を 中 心 と し た 腹 筋 群 の 有 意 な 筋 活 動 の 増 加 が 見 ら れ た . こ れ に よ り 腰 椎 の 伸 展 と 骨 盤 の 前 方 傾 斜 が 減 少 し た と 考 え る .ま た 先 行 研 究 35)は ,下 肢 動 き の 間 AH が腹横筋と 内 腹 斜 筋 の 下 部 線 維 の 活 動 を 増 加 さ せ て , 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 を 増 加 さ せ る こ と を 示 し た . 本 研 究 に お い て も ,AH による腹横筋と内腹斜筋の筋収縮の増加は,腰椎骨盤の安定性を 高 め る た め に 腹 腔 内 圧 を 上 昇 さ せ た と 考 え る . また AH で脊柱起立筋の活動が減少した原 因 と し て ,下 肢 筋 の 活 動 は 測 定 し て な い が Oh ら 37)の 研 究 と 同 様 に 腰 椎 と 骨 盤 の 過 剰 な 運 動 を 抑 制 し た 状 態 で 目 標 バ ー ま で 股 関 節 を 伸 展 す る た め に 股 関 節 伸 筋 群 で あ る 大 殿 筋 ・ 内 側 ハ ム ス ト リ ン グ ス の 活 動 が 増 加 し た と 推 察 さ れ る . こ れ に よ り 股 関 節 伸 展 を 代 償 す る 作 用 が あ る 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 は 減 少 し た と 考 え ら れ る . さ ら に AH 時の腰椎骨盤の動きの減 少 は ,Bruno ら 44) Chance-Larsen ら 45)の 発 見 に よ っ て 説 明 す る こ と が で き る .Bruno

ら は 44),健 常 者 を 対 象 に 腰 椎 の 過 剰 な 動 き と 筋 活 動 開 始 時 間 を 調 査 し ,股 関 節 伸 展 時 の 腰

椎 の 過 剰 な 動 き は 大 殿 筋 の 活 動 遅 延 に 関 連 す る こ と を 証 明 し た .ま た Chance-Larsen らは

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- 20 - た が っ て , 本 研 究 の AH による腰椎骨盤の過剰な動きの減少は ,大殿筋のより速い収縮に 起 因 し た 可 能 性 が あ る . AB も Control 条件よりも有意に骨盤の前方傾斜と腰椎 伸展の減少を示した.これは, 腹 筋 群 の 活 動 量 の 増 加 に よ り 腰 椎 の 伸 展 と 骨 盤 の 前 方 傾 斜 の 減 少 を 導 い た と 考 え る . AHとABを比較したとき,脊椎の動きと骨盤の動きに有意な差は認めなかった .このこ と は 腰 椎 骨 盤 の 動 き がAHよりABで低いという仮説を否定した.Vera-Garciaら34)は , 後 方 へ の 突 然 の 動 揺 に 対 し て ,AHとAB間でどちらがより安定しているかを腰椎の動きと安 定 化 指 数 を 用 い て 検 証 し た . そ の 結 果 ,ABの方がより安定していることを示した.また Grenierら31)も ,立 位 で 重 り を 負 荷 し た 状 態 で のAHとAB間でどちらがより安定しているか を シ ミ ュ レ ー シ ョ ン し た .そ の 結 果 ,ABの方がより安定性が高かった.これらの研究 結果 は , 我 々 の 研 究 結 果 と の 相 違 で あ っ た . こ の 原 因 は , 動 作 時 の 負 荷 量 の 相 違 に よ る と 考 え る .McGill46)は す べ て の 筋 に よ る 安 定 性 の 貢 献 度 は 課 題 に よ り 異 な る と し て お り ,我 々 の 研 究 で は ,股 関 節 伸 展 運 動 の た め 比 較 的 負 荷 量 が 少 な く ,AHのような体幹筋のわずかな活 動 量 で 腰 部 を 安 定 さ せ る こ と が で き た と 考 え る . そ の た めAHとAB間で脊椎の動きに差が 生 じ な か っ た と 考 え る . 股 関 節 伸 展 時 の 脊 椎 の 動 き は ,AHとAB間で有意差を示さなかった.加えて ABは,AH よ り も グ ロ ー バ ル 筋 群 で あ る 外 腹 斜 筋 の 活 動 に お い て 有 意 に 筋 活 動 が 高 か っ た . 先 行 研 究 で は , グ ロ ー バ ル 筋 の 筋 活 動 の 増 加 は , 脊 椎 の 圧 迫 負 荷 を 増 大 し 腰 痛 を 増 加 さ せ る と 述 べ て い る47, 48).さ ら に ,腰 痛 者 は 股 関 節 伸 展 の 間 に 脊 柱 起 立 筋 の 過 活 動 が 報 告 さ れ て い る15) 脊 柱 起 立 筋 の 過 活 動 は 筋 自 体 で 疼 痛 を 生 じ る こ と が あ り , 疼 痛-攣縮-疼痛サイクルにつな が る と さ れ て い る15). こ れ ら の こ と か ら 運 動 療 法 と し て 股 関 節 伸 展 を 行 う と き ,腰 椎 骨 盤 の 過 剰 な 動 き を 抑 制 し , 外 腹 斜 筋 や 脊 柱 起 立 筋 の よ う な グ ロ ー バ ル 筋 の 過 剰 な 筋 活 動 が な いAHを行うことが 適切であると考える. 本 研 究 に は , い く つ か の 限 界 が あ る . は じ め に , サ ン プ ル サ イ ズ が 少 な く , 本 研 究 の 被 験 者 が 健 常 成 人 男 性 で あ っ た の で , 我 々 の 結 果 は 他 の 集 団 に 一 般 化 す る こ と が で き な い . 2つ目に我々は腹横筋,股関節屈筋群や伸筋群の筋活動を測定しなかった .3つ目に股関節 伸 展 運 動 時 の 腰 椎 骨 盤 の 動 き は 矢 状 面 の 動 き だ け で な く , 水 平 面 や 前 額 面 で の 動 き も 見 ら れ る . し か し 本 研 究 で は 矢 状 面 上 で の 動 き の み し か 検 討 で き て い な い .

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- 21 - 第5節 結論 本 研 究 は , 股 関 節 伸 展 の 間 , 腰 椎 骨 盤 の 安 定 化 手 技 の 違 い が 腰 椎 骨 盤 の 動 き と 体 幹 筋 活 動 に 与 え る 影 響 を 調 査 し た . 脊 椎 の 動 き は ,AH と AB の間に差を認めなかったが ,グロ ー バ ル 筋 群 で あ る 外 腹 斜 筋 は ,AB より AH で筋活動が より低かった.従って股関節伸展 の 間 ,AH の使用は効率的に腰椎骨盤を安定化することができ ,推奨される.

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- 22 -

2 章

健常者と慢性腰痛者における股関節伸展時の背部筋及び

股関節伸筋群の活動開始時間の比較

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- 23 - 第1節 序論・背景 第1 章では股関節伸展 時に AH を行うことで 効率的に腰椎骨盤の過剰な動きを制御する こ と を 示 し た 21).し か し な が ら 腰 痛 者 に お い て 腰 椎 骨 盤 の 動 き に 関 与 す る 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 パ タ ー ン に つ い て は 明 ら か と な っ て い な い . そ こ で 第 2 章の目的は,健常者と慢性腰痛者の 股関節伸展時の 筋活動開始時間を比較し, 慢 性 腰 痛 者 の 股 関 節 伸 展 時 の 背 部 筋 お よ び 股 関 節 伸 筋 の 活 動 開 始 時 間 を 明 ら か に す る こ と と し た .

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- 24 - 第2節 方法 被 験 者 第1項 本 研 究 の サ ン プ ル サ イ ズ は ,10 人の被験者(慢性腰痛者 5 名,健常者 5 名)の予備研究 か ら 決 定 し た .G-power 3.1.7 software を使用して ,有意水準 0.05,検出力 0.9,予備研 究 か ら 算 出 し た 効 果 量 1.08 で各群のサンプルサイズは 20 人と決定した. 40 人の参加者(慢性腰痛者 20 名,健常者 20 名)は,岡山県と愛媛県のクリニックか ら 口 こ み と ポ ス タ ー に よ っ て 集 め ら れ た . 被 験 者 の 取 り 込 み 基 準 は ,20 歳から 40 歳まで で 片 側 か 両 側 の 痛 み が 第 12 肋骨から尾骨の間に 3 ヶ月以上ある者とした .健常群は慢性 腰 痛 群 の 年 齢 ,性 別 ,BMI でマッチングした.除外基準は(1)股関節伸展時の痛み,(2) 股 関 節 屈 曲 拘 縮 ,(3)神経障害,(4)胸椎・下肢の痛み ,(5)腰椎や股関節の骨折や手術 の 既 往 ,(6)2 年以内の妊娠 ,(7)仙腸関節の機能不全 ,(8)重篤な脊椎疾患(炎症性脊 椎 疾 患 , 骨 折 , 悪 性 腫 瘍 , 馬 尾 症 候 群 , 感 染 ) の 診 断 や 疑 い が あ る 者 と し た . 本 研 究 は 川 崎 医 療 福 祉 大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 受 け た 後 , 書 面 で の 同 意 を 得 た 上 で 実 験 を 行 っ た ( 承 認 番 号 438). 疼 痛 の 評 価 と 筋 電 図 テ ク ニ ッ ク 第2項

現 在 の 腰 痛 の 程 度 は Numeric rating scale(NRS)を使用して評価された.NRS は高い 信 頼 性 と 妥 当 性 を 持 つ 49, 50). 腰 痛 に よ る 能 力 障 害 は ,Oswestry low back pain disability

index(ODI)を使用して評価 し,これは 10 項目アンケートで能力障害の程度を決定するた め に 使 用 さ れ る 51)

表 面 電 極 を 貼 付 す る 前 に 皮 膚 処 理 と し て 剃 毛 と ア ル コ ー ル に よ る 摩 擦 を 行 っ た . 表 面 電 極 は , 銀/塩化銀電極(Blue Sensor, Mets, Inc., Tokyo, Japan)を使用して,2.5cm の電極 間 距 離 で 設 置 し た .な お ,被 験 筋 は 両 側 の 脊 柱 起 立 筋( 第 1 腰椎棘突起の外側へ 2 横指), 両 側 の 多 裂 筋( 第 1 腰椎と第2腰椎の間と上後腸骨棘の延長上で第 5 腰椎棘突起のレベル ), 下 肢 伸 展 側 の 半 腱 様 筋( 坐 骨 結 節 と 大 腿 骨 内 側 上 顆 の 間 ),下 肢 伸 展 側 の 大 殿 筋( 仙 骨 と 大 転 子 の 間 )と し た .基 準 電 極 は 第 2 仙椎に設置した .また股関節伸展時の腹筋群が最大随

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- 25 -

る た め 19, 52),本 研 究 で は 腹 筋 群 の 分 析 を 除 外 し た .筋 活 動 は 表 面 筋 電 計(Vital Recorder

2, Kissei Comtec, Nagano, Japan)を使用して,サンプリング周波数は 1000Hz とした. 下 肢 の 動 き の 開 始 は ,筋 電 計 と 同 期 す る 圧 セ ン サ ー(Foot switch, Kissei Comtec, Nagano, Japan)を足関節の前方に設置し測定した. 実 験 手 順 第3項 測 定 肢 位 は , 腹 臥 位 で 上 肢 を 体 側 に し , 股 関 節 と 骨 盤 は 中 間 位 と し た . 各 被 験 者 は 膝 伸 展 位 で 股 関 節 を 0°から10°まで伸展した(図 1).腰痛者では下肢を伸展する足を腰痛が よ り 強 い 側 と し , 健 常 者 で は 非 利 き 足 と し た . な お ボ ー ル を 蹴 る 際 の 支 持 脚 を 非 利 き 足 と し た . 先 行 研 究 で は 速 い 四 肢 の 動 き は 体 幹 筋 の 反 応 頻 度 を 増 加 し , 変 動 性 を 減 少 す る と 報 告 さ れ て い る 13, 14).し た が っ て , 眼 の 前 に 設 置 さ れ た LED ランプが点灯した後,被験者 は で き る だ け 速 く 股 関 節 を 伸 展 し , 合 図 が あ る ま で 股 関 節 の 伸 展 を 維 持 し た . 股 関 節 伸 展 の 間 , 股 関 節 の 内 外 旋 中 間 位 と 膝 関 節 伸 展 は 視 覚 的 に 確 認 さ れ , 股 関 節 の 回 旋 が 観 察 さ れ る 場 合 は デ ー タ を 除 外 し た . 被 験 者 は 股 関 節 伸 展 に 慣 れ る た め 数 回 の 練 習 を 実 施 し , そ の 後 3 回 股 関 節 伸 展 を 実 施 し た . な お 各 施 行 間 に は 1 分 間 の 休 息 を と っ た . 図 1 腹臥位での股関節伸展 22) 各 被 験 者 は 光 刺 激 の 後 ,最 大 速 度 で 0°か ら 10°ま で 股 関 節 伸 展 を す る よ う に 指 示 さ れ た .圧 セ ン サ ー は 脚 の 動 き の 反 応 時 間 を 決 定 す る た め に 設 置 さ れ た . LED ラ ン プ 圧 セ ン サ ー

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- 26 - デ ー タ 処 理 第4項 得 ら れ た 筋 電 波 形 は バ ン ド パ ス フ ィ ル タ ー(10 ~ 500 Hz)処理を行った後,全波整流 し た . 筋 活 動 の 開 始 は 安 静 時 の 平 均 値 か ら 2 標 準 偏 差 を 足 し た 値 を Microsoft Excel 2010 を 使 用 し て 算 出 し , 筋 の 活 動 振 幅 が 50ms の間安静時の平均値から2標準偏差を超えた時 と 定 義 し た 53-55).股 関 節 と 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 を 調 査 す る た め に ,各 筋 と 主 動 作 筋( 半 腱 様 筋 ) の 間 の 開 始 時 間 の 相 対 的 な 差 を 以 下 の 式 で 算 出 し た 10, 45, 56) 相 対 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 = 筋 活 動 開 始 時 間 - 半 腱 様 筋 の 活 動 開 始 時 間 (ms). し た が っ て , 負 の 値 は 半 腱 様 筋 の 前 に 活 動 し た こ と を 示 す . ま た LED ランプの点灯から 下 肢 の 動 き 始 め ま で の 下 肢 の 反 応 時 間 も 評 価 し た . 統 計 解 析 第5項 Kolmogorov-Smirnov 検定にて全てのデータの正規性が確認されたため ,パラメトリッ ク 検 定 を 使 用 し た . 群 間 の 属 性 ( 性 別 , 年 齢 ,BMI)の差は,χ²検定と対応のないt検定 を 使 用 し て 評 価 し た . ま た 健 常 群 内 の 相 対 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 の 差 は 反 復 測 定 分 散 分 析 を 使 用 し , 多 重 比 較 検 定 と し て Bonferroni 法を実施した(p < 0.05).群間の脚動きと相対 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 の 差 は 対 応 の な い t 検 定 を 使 用 し 決 定 し た .α = 0.05 のⅠ型ファミリ ー ワ イ ズ エ ラ ー 率 を 保 持 す る た め に , す べ て の 対 応 の な い t 検 定 と χ²検定は p = 0.0045 (0.05/11)の有意水準を使用した .統計解析は,SPSS(version 21.0, IBM Inc, Chicago, IL) を 使 用 し た . 効 果 量 と 検 出 力 は ,G-power 3.1.7 software を使用して算出した .

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- 27 - 第3節 結果 被 験 者 の 基 本 属 性 第1項 健 常 群 と 慢 性 腰 痛 群 の 基 本 属 性 は , 表 1 にまとめられる .年齢,体重と BMI で健常者 と 慢 性 腰 痛 者 の 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た . 表1 被験者の基本属性 22) 健 常 者 (n=20) 慢 性 腰 痛 者 (n=20) p-Value 男 性 : 女 性 14 : 6 13 : 7 0.74 年 齢 (years) 24.5 ± 5.8 24.2 ± 4.9 0.88 身 長 (cm) 165.7 ± 7.0 168.3 ± 8.8 0.32 体 重 (kg) 56.9 ± 6.8 59.9 ± 14.2 0.40 BMI (kg/m2) 20.7 ± 1.9 20.8 ± 2.9 0.78 NRS 35.3 ± 13.1 ODI (%) 16.9 ± 7.6 平 均 ± 標準偏差

NRS: Numeric Rating Scale; ODI: Oswestry low back pain disability index.

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- 28 -

健 常 群 内 で の 相 対 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 の 差 第2項

健 常 群 で の 相 対 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 は , 図 2 に示される .5 つの筋の相対的な 筋活動開 始 時 間 は ,股 関 節 伸 展 の 間 ,有 意 差 を 認 め た(p < 0.001, effect size f = 0.92, power =1.00). 多 重 比 較 検 定 に て , 大 殿 筋 の 活 動 開 始 が 同 側 の 多 裂 筋 (p < 0.001),対側の多 裂筋 (p < 0.001),同側の脊柱起立筋(p < 0.01)と対側の脊柱起立筋(p < 0.001)の活動開始と比較 し 有 意 に 遅 延 し た . さ ら に 同 側 の 多 裂 筋 は , 同 側 の 脊 柱 起 立 筋 よ り も 速 く 活 動 し た (p < 0.01). 図 2 健常者での主動作筋(半腱様筋)との相対的な筋活動 開始時間 22) 0 は 半 腱 様 筋 の 活 動 を 示 す . 正 の 値 は 半 腱 様 筋 の 後 に 活 動 し た こ と を 示 す . *p < 0.001, p < 0.01 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 大殿筋 対側多裂筋 同側多裂筋 対側脊柱起立筋 同側脊柱起立筋 相対的な筋活動開始時間(ms)

*

*

*

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- 29 - 下 肢 の 反 応 時 間 と 群 間 の 相 対 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 の 差 第3項 股 関 節 伸 展 の 間 ,群 間 の 下 肢 の 反 応 時 間 に は 差 を 認 め な か っ た( 健 常 群: 230.1 ± 39.3 ms, 慢 性 腰 痛 群: 238.8 ± 47.3 ms, p = 0.538).群間の筋活動 開始時間は,図 3 に示す.同側の 多 裂 筋( 健 常 群: -6.6 ± 12.7 ms, 慢性腰痛群: 21.2 ± 16.9 ms, p < 0.001, effect size d =1.25, power = 0.82),対側の多裂筋 (健常群: 4.2 ± 13.0 ms, 慢性腰痛群: 23.2 ± 17.1 ms, p < 0.001, effect size d =1.86, power = 1.00),対側の脊柱起立筋 (健常群: 5.4 ± 13.5 ms, 慢 性 腰 痛 群: 25.7 ± 21.3 ms, p = 0.001, effect size d =1.14, power = 0.71)は健常群と比較し て 慢 性 腰 痛 者 で 有 意 に 活 動 が 遅 延 し た .大 殿 筋( 健 常 群: 47.2 ± 49.8 ms, 慢性腰痛群: 56.3 ± 37.8 ms, p = 0.32)と同側の脊柱起立筋(健常群: 20.1 ± 22.6 ms, 慢性腰痛群 : 30.5 ± 17.7 ms, p = 0.11)の活動開始時間は群間で有意差を認めなかった . 図 3 主動作筋(半腱様筋)との相対的な筋活動開始時間の群間比較 22) 0 は 半 腱 様 筋 の 活 動 を 示 す . 正 の 値 は 半 腱 様 筋 の 後 に 活 動 し た こ と を 示 す . *p < 0.001, p = 0.001 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 大殿筋 対側多裂筋 同側多裂筋 対側脊柱起立筋 同側脊柱起立筋 相対的な筋活動開始時間(ms) 健常者 慢性腰痛者

*

*

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- 30 - 第4節 考察 本 研 究 は , 健 常 者 と 慢 性 腰 痛 者 で 股 関 節 伸 展 時 の 背 部 筋 と 股 関 節 伸 筋 の 活 動 開 始 時 間 に 差 が あ る か を 検 討 し た . 本 研 究 の 主 な 結 果 は , 健 常 群 と 比 較 し て 慢 性 腰 痛 群 で 両 側 の 多 裂 筋 と 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 が 遅 延 し た こ と で あ っ た . 先 行 研 究 で は , 健 常 者 に お い て さ え 股 関 節 伸 展 時 の 一 致 し た 筋 活 動 の 順 序 を 発 見 す る こ と が で き な か っ た が ,大 殿 筋 の 活 動 遅 延 だ け は 特 定 す る こ と が 可 能 で あ っ た 10, 12, 55).我 々 の 健 常 者 の 結 果 は , こ れ ら の 先 行 研 究 と 一 致 し , 大 殿 筋 が 両 側 の 脊 柱 起 立 筋 と 多 裂 筋 と 比 較 し て 有 意 に 遅 延 し た . ま た , 先 行 研 究 57, 58)で は 主 動 作 筋 の 活 動 開 始 の 100ms 前から 50ms 後までの筋活動は,フィードフォワード制御と定義しており,本研究においても脊 柱 起 立 筋 と 多 裂 筋 の 活 動 は , フ ィ ー ド フ ォ ワ ー ド プ ロ グ ラ ム に よ る 制 御 で あ っ た こ と が 確 認 さ れ た . こ の こ と は 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 向 上 の た め に 股 関 節 伸 展 に 関 与 す る 下 肢 の 動 き を 予 想 し て 脊 柱 起 立 筋 と 多 裂 筋 が 活 動 し た こ と を 示 唆 す る . 加 え て , 同 側 多 裂 筋 の 活 動 開 始 が 同 側 脊 柱 起 立 筋 よ り 速 く 活 動 し た こ と か ら , 腰 椎 の 動 き が 生 じ る 前 に 多 裂 筋 が 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 の 獲 得 に 関 与 し た と 考 え る . 群 間 の 比 較 に お い て , 下 肢 の 反 応 時 間 は 慢 性 腰 痛 患 者 と 健 常 者 で 差 を 認 め な か っ た に も 関 わ ら ず , 慢 性 腰 痛 者 は 両 側 の 多 裂 筋 と 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 で 活 動 が 遅 延 し た . 従 っ て , 慢 性 腰 痛 者 は 腰 椎 骨 盤 を 安 定 さ せ る た め 健 常 者 と 異 な る 筋 の 活 動 パ タ ー ン を 使 用 し た . こ の こ と は 急 速 な 肩 の 挙 上 や リ ー チ 動 作 時 の 多 裂 筋 や 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 を 報 告 し た 先 行 研 究 と 類 似 し て い る 20, 59) 本 研 究 で の 慢 性 腰 痛 者 の 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 と 両 側 の 多 裂 筋 の 活 動 は ,先 行 研 究 57, 58)の 基 準 か ら フ ィ ー ド フ ォ ワ ー ド プ ロ グ ラ ム で の 活 動 で あ っ た . フ ィ ー ド フ ォ ワ ー ド 制 御 で は , 小 脳 で の 内 部 モ デ ル が 関 与 し て い る と 報 告 さ れ て い る 60).さ ら に 先 行 研 究 で は ,腰 部 の 侵 害 刺 激 や 疼 痛 が 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 を 変 化 さ せ る と 報 告 し て い る 20, 61, 62). こ れ ら の こ と か ら , 腰 部 の 侵 害 刺 激 や 疼 痛 に よ り 小 脳 で の 内 部 モ デ ル が 変 化 し フ ィ ー ド フ ォ ワ ー ド に 関 す る 運 動 プ ロ グ ラ ム が 変 更 し た と 推 察 さ れ る . 健 常 者 に お い て 両 側 の 多 裂 筋 と 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 は 骨 盤 の 前 傾 を 増 加 す る と 報 告 さ れ て い る 52).ま た 多 裂 筋 の 機 能 は 腰 椎 伸 展 ト ル ク を 産 生 し て い る 間 ,圧 縮 力 を 通 し て 腰 椎 骨 盤 を 安 定 さ せ ,脊 柱 分 節 的 な 制 御 に 貢 献 す る 63-65).従 っ て ,慢 性 腰 痛 群 の 多 裂 筋 の 活 動 遅 延 は , 股 関 節 伸 展 の 間 , 脚 の 動 き は じ め で 腰 椎 の 分 節 的 な コ ン ト ロ ー ル と 骨 盤

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- 31 - 安 定 性 を 低 下 す る と 推 察 さ れ る . そ し て 下 肢 運 動 中 の 腰 椎 骨 盤 の 安 定 性 の 低 下 は 脊 柱 へ の 反 復 ス ト レ ス を 与 え 腰 痛 の 悪 化 や 再 発 の 原 因 と な る 3) 本 研 究 に お い て 大 殿 筋 は 群 間 で 差 を 認 め な か っ た . こ の 結 果 は , 股 関 節 伸 展 の 間 , 慢 性 腰 痛 者 を 対 象 に 筋 活 動 開 始 時 間 を 分 析 し た 2 つの研究 18, 19)と 一 致 し て い る . こ れ に 対 し て ,Bruno ら 17)の 研 究 で は 股 関 節 伸 展 の 間 ,腰 痛 者 で 大 殿 筋 の 活 動 遅 延 を 示 し た .こ の 先 行 研 究 と の 差 は , 股 関 節 伸 展 運 動 時 の 腰 椎 の 異 常 な 動 き の パ タ ー ン に 関 与 し た と 考 え ら れ る .Bruno ら 44)の そ の 後 の 研 究 に お い て 大 殿 筋 の 活 動 遅 延 は , 腰 痛 の 有 無 に か か わ ら ず , 異 常 な 腰 椎 の 動 き に 関 与 す る と 報 告 し て い る . こ の こ と か ら , 本 研 究 で 腰 椎 骨 盤 の 動 き を 調 査 し て い な い が , 本 研 究 結 果 と 大 殿 筋 の 活 動 遅 延 を 示 し た 先 行 研 究 と の 違 い は , 腰 椎 の 異 常 な 動 き の パ タ ー ン を 示 し た 腰 痛 者 の 割 合 が 異 な っ て い た こ と に 起 因 す る と 思 わ れ る . 本 研 究 で 慢 性 腰 痛 者 の 股 関 節 伸 展 時 の 背 筋 群 の 活 動 は 遅 延 し た . そ の た め 慢 性 腰 痛 者 の 治 療 で は 筋 の 活 動 パ タ ー ン の 改 善 を 目 的 と し た 治 療 介 入 が 必 要 で あ る . 本 研 究 の 結 果 は , 慢 性 腰 痛 者 の 腰 椎 骨 盤 の 不 安 定 性 の た め の 運 動 プ ロ グ ラ ム の 作 成 時 に 有 用 で あ る . 本 研 究 に は , い く つ か の 限 界 が あ る . は じ め に , 本 研 究 で は 股 関 節 伸 展 時 の 速 度 を 測 定 し な か っ た .こ の こ と は 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 を 変 化 さ せ る 可 能 性 が あ っ た 14).し か し 先 行 研 究 で は ,健 常 者 と 腰 痛 者 で 股 関 節 伸 展 時 の 速 度 に 差 を 認 め な か っ た 66).ま た 本 研 究 に お い て 群 間 で 下 肢 の 反 応 時 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た . こ れ ら の こ と か ら 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 が 股 関 節 伸 展 時 の 速 度 に 影 響 を 受 け た こ と は 考 え に く い .2 つ目に,先行研究で は 多 裂 筋 の 深 部 線 維 が 腰 部 の 分 節 的 な 安 定 性 に 関 与 す る と 報 告 し て い る が 63, 64),本 研 究 で は 侵 襲 性 の 問 題 か ら 表 面 筋 電 計 を 使 用 し た . そ の た め に 多 裂 筋 の 深 部 線 維 か ら の 筋 活 動 を 捉 え る こ と が よ り 難 し か っ た と 考 え ら れ る . し か し な が ら , 表 面 筋 電 計 が 使 用 さ れ た 時 で も 自 動 動 揺 作 業 時 の 慢 性 腰 痛 者 の 多 裂 筋 の 活 動 遅 延 は 検 出 さ れ て い る 20, 59).従 っ て ,本 研 究 で の 股 関 節 伸 展 時 の 慢 性 腰 痛 者 の 活 動 遅 延 の 結 果 は 妥 当 で あ る と 思 わ れ る .3 つ目に, 本 研 究 で は 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 の み の 検 討 と な っ て い る た め 筋 活 動 量 に つ い て は 検 討 で き て い な い . 最 後 に 慢 性 腰 痛 者 に お け る 股 関 節 伸 展 時 の 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 と 両 側 の 腰 部 多 裂 筋 の 活 動 遅 延 が ど の よ う な 因 子 に 関 与 し て い る か は 十 分 に 明 ら か に で き て い な い .そ の た め 今 後 は ,慢 性 腰 痛 者 の 背 筋 群 の 活 動 遅 延 に 関 与 す る 因 子 の 検 討 が 必 要 で あ る .

(32)

- 32 - 第5節 結論 本 研 究 は 健 常 者 と 慢 性 腰 痛 者 で 股 関 節 伸 展 時 の 体 幹 筋 と 股 関 節 伸 筋 の 活 動 開 始 時 間 に 差 が あ る か を 検 討 し た . そ の 結 果 , 慢 性 腰 痛 者 が 健 常 者 と 比 較 し て 両 側 の 多 裂 筋 と 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 が 遅 延 し , 慢 性 腰 痛 者 が 健 常 者 と 異 な る 筋 の 活 動 パ タ ー ン を 示 す こ と を 明 ら か に し た .

(33)

- 33 -

3 章

慢性腰痛者における腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の

背部筋及び股関節伸筋群の活動開始時間との関係

(34)

- 34 - 第1節 序論・背景 第 2 章では,股関節伸展時の両側の多裂筋と対側の脊柱起立筋の活動開始が健常者より も 慢 性 腰 痛 者 で 遅 延 す る こ と を 明 ら か に し た 22).し か し な が ら ,慢 性 腰 痛 者 に お け る 股 関 節 伸 展 時 の 両 側 の 多 裂 筋 と 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 が ど の よ う な 因 子 に 関 与 し て い る か は 明 ら か と な っ て い な い .Silfies ら20)は ,不 安 定 性 を 有 す る 腰 痛 者 が ,肩 屈 曲 時 の 多 裂 筋 と 脊 柱 起 立 筋 で 遅 延 す る こ と を 明 ら か に し ,Hodges ら 67)は , 疼 痛 に よ り 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 が 遅 延 す る こ と を 報 告 し て い る . し た が っ て 慢 性 腰 痛 者 の 股 関 節 伸 展 時 の 両 側 の 多 裂 筋 と 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 も , 脊 柱 の 安 定 化 シ ス テ ム の 機 能 不 全 の 徴 候 で あ る 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 68)と 腰 痛 の 重 症 度( 疼 痛 の 程 度・能 力 障 害 )に 関 与 す る 可 能 性 が 考 え ら れ る . し か し な が ら , こ れ ら の 関 係 に つ い て 調 査 し て い る 研 究 は 見 ら れ な い . そ こ で 第 3 章の目的は,慢性腰痛者における腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の 筋活 動 開 始 時 間 と の 関 係 お よ び 腰 痛 の 重 症 度 と 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 と の 関 係 を 明 ら か に す る こ と と し た . 本 研 究 の 結 果 は , 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 を 有 す る 慢 性 腰 痛 患 者 へ の 治 療 プ ロ グ ラ ム の 作 成 に お い て 有 用 と な る .

(35)

- 35 - 第2節 方法 被 験 者 第1項 25 人の慢性腰痛患者は ,本研究に参加した .被験者の取り込み基準は,20 歳から 40 歳 ま で で 片 側 か 両 側 の 痛 み が 第 12 肋骨から尾骨の間に 3 ヶ月以上ある者とした .除外基準 は (1)股関節伸展時 の痛み ,(2)股関節屈 曲拘縮 ,(3)神経障害 ,(4)胸椎・下肢の痛 み ,(5)腰椎や股関節の骨折や手術の既往 ,(6)2 年以内の妊娠 ,(7)仙腸関節の機能不 全 ,(8)重篤な脊椎疾患(炎症性脊椎疾患 ,骨折,悪性腫瘍,馬尾症候群 ,感染)の診断 や 疑 い が あ る 者 と し た . 対 象 者 に は ヘ ル シ ン キ 宣 言 に 則 り , 研 究 の 趣 旨 , 目 的 お よ び 方 法 を 十 分 に 説 明 し , 文 章 に よ っ て 同 意 を 得 た . 本 研 究 は 川 崎 医 療 福 祉 大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て 行 っ た ( 承 認 番 号 438). 腹 臥 位 で の 股 関 節 伸 展 運 動 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 の 測 定 第2項 腹 臥 位 で の 股 関 節 伸 展 運 動 は , 両 上 肢 を 体 側 に 位 置 さ せ た 腹 臥 位 と な り , 被 験 者 の 前 方 に 置 か れ た ラ ン プ が 点 灯 後 ,股 関 節 を 0°から 10°まで最大努力速度で股関節を伸展した . な お , 下 肢 を 伸 展 す る 足 は 腰 痛 が よ り 強 い 側 と し た . 股 関 節 伸 展 運 動 時 の 筋 活 動 の 測 定 に は ,表 面 筋 電 計(Vital Recorder2:キッセイコムテ ッ ク 株 式 会 社 製 ) を 用 い , サ ン プ リ ン グ 周 波 数 は 1000Hz とした.表面電極は ,両側の脊 柱 起 立 筋 ( 第 1 腰椎棘突起の外側へ 2 横指),両側の多裂筋(第 1 腰椎と第2腰椎の間と 上 後 腸 骨 棘 の 延 長 上 で 第 5 腰椎棘突起のレベル),下肢伸展側の半腱様筋(坐骨結節と大 腿 骨 内 側 上 顆 の 間 ),下 肢 伸 展 側 の 大 殿 筋( 仙 骨 と 大 転 子 の 間 )に 貼 付 し ,基 準 電 極 は 第 2 仙 椎 と し た .な お ,電 極 間 距 離 は 2.5cm とした.得られた筋電波形はバンドパスフィルタ ー(10 ~ 500 Hz)処理を行った後,全波整流した .筋活動の開始は,筋の活動振幅が 安 静 時 の 平 均 値 か ら 2 標 準 偏 差 を 超 え た 時 と し た 53-55).股 関 節 と 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 を 調 査 す る た め に , 各 筋 と 主 動 作 筋 ( 半 腱 様 筋 ) の 間 の 開 始 時 間 の 相 対 的 な 差 は , 以 下 の 式 で 算 出 さ れ た 22, 45, 69) 相 対 的 な 筋 活 動 開 始 時 間 = 筋 活 動 開 始 時 間 - 半 腱 様 筋 の 活 動 開 始 時 間 (ms). し た が っ て , 正 の 値 は 半 腱 様 筋 の 後 に 活 動 し た こ と を 示 す .

(36)

- 36 - 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 試 験

第3項

腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 の 試 験 は ,Prone instability test(PIT)と腰椎屈曲時の異常な動き で 評 価 し た . 先 行 研 究 で は , こ れ ら の 不 安 定 性 検 査 の 陽 性 の 患 者 は , 腰 部 安 定 化 運 動 に よ り 症 状 が 緩 和 し ,臨 床 不 安 定 性 の 指 標 で あ る と し た 68, 70).各 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 の 結 果 は

陰 性 が 0,陽性が 1 として数値化された.

Prone instability test

被 験 者 は,ベッド上に腹臥位となり,両股関節より末梢をベッドから出し足部を地面につ け た 肢 位 と し た . 検 査 者 は 各 腰 椎 棘 突 起 に 徒 手 的 に 後 ろ か ら 前 へ 圧 迫 し , 疼 痛 が 出 現 す る か を 確 認 し た . 疼 痛 が 一 つ 以 上 の 腰 椎 で 起 こ る 場 合 , 被 験 者 に 両 下 肢 を 挙 上 さ せ , 再 度 各 腰 椎 に 圧 迫 を 実 施 し た . 安 静 時 に 誘 発 さ れ た 疼 痛 が 両 下 肢 を 挙 上 し た 位 置 で 軽 減 さ れ る 場 合 , 陽 性 と 判 定 し た 71) 腰 椎 屈 曲 時 の 異 常 な 動 き 腰 椎 屈 曲 時 の 異 常 な 動 き の 存 在 は , 立 位 で 最 終 域 ま で 体 幹 を 屈 曲 し 直 立 位 ま で 戻 す 際 の 異 常 な 動 き を 評 価 し た . 判 定 基 準 は 下 記 の 中 の 1 つ 以 上 の 異 常 な 動 き の 存 在 で 陽 性 と 定 義 さ れ て い る 71, 72) (1) instability catch : 体 幹 の 動 き の 突 然 の 加 速 や 減 速 ま た は 側 屈 や 回 旋 の 動 き が 生 じ る . (2) Gower’s sign(thigh climbing):

体 幹 屈 曲 位 か ら 戻 る 際 に,被験者は大腿部を手で押す . (3) reversal of lumbopelvic rhythm :

体 幹 屈 曲 位 か ら 戻 る 際 に, 垂直の姿勢を獲得する前に膝を屈曲し骨盤の前方移動が起こる. (4) painful arc of motion:

(37)

- 37 - 実 験 手 順

第4項

被 験 者 の 疼 痛 と 能 力 障 害 の 程 度 は ,Numeric rating scale(NRS)と Oswestry low back pain disability index(ODI)を用いて評価した.その後,各被験者は腹臥位での股関節伸 展 運 動 を 数 回 練 習 し た 後 に 3 回 実 施 し た . な お , 施 行 間 に は 1 分 間 の 休 息 を 取 っ た . 次 い で 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 試 験 と し て PIT と腰椎屈曲時の異常な動きは,評価された.なお, こ れ ら の 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 試 験 は , 被 験 者 の 特 徴 と 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 の 結 果 に つ い て 盲 検 化 さ れ た 1 人の検査者により実施された . 統 計 解 析 第5項 統 計 解 析 は SPSS Ver. 21 を 用 い て 解 析 し た . す べ て の 連 続 デ ー タ の 正 規 性 は Kolmogorov-Smirnov 検定を用いて検討した.腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の 筋活 動 開 始 時 間 , 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 と 腰 痛 の 重 症 度 (NRS・ODI)との関係には, データが 正 規 分 布 し た 場 合 は 点 双 列 相 関 係 数 を 使 用 し た . デ ー タ が 正 規 分 布 し な い も の は Rank-Biserial Correlations を使用した.また股関節伸展時の筋活動開始時間 と腰痛の重 症 度(NRS・ODI)との関係は,データが正規分布した場合は Pearson の相関係数を使用 し ,デ ー タ が 正 規 分 布 し な い も の は Spearman の順位相関係数を使用した.なお,有意水 準 は 5%未満とした.検出力は,G-power 3.1.7 software を使用して算出した.

(38)

- 38 - 第3節 結果 正 規 性 の 結 果 第1項 連 続 デ ー タ の 正 規 性 は ODI,股関節伸展時の両側の脊柱起立筋,同側の多裂筋の開始時 間 で 確 認 さ れ た .NRS,股関節伸展時の対側の多裂筋,大殿筋は正規性が確認できなかっ た . 被 験 者 の 基 本 属 性 第2項 被 験 者 の 基 本 属 性 ,NRS,ODI,腰部の臨床不安定性の結果は表 1 に示す .また股関節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 は 表 2 に示す. 表1 被験者の基本属性 23) 変 数 慢 性 腰 痛 者 (n=25) 男 性 : 女 性 (n) 17:8 年 齢 (years) 24.2 ± 4.5 身 長 (cm) 168.6 ± 7.9 体 重 (kg) 60.3 ± 10.4

Body mass index (kg/m2) 21.1 ± 2.2

NRS 3.5 ± 1.4

ODI (%) 16.2 ± 7.5

PIT の陽性 (n) 11

腰 椎 屈 曲 時 の 異 常 な 動 き の 陽 性 (n) 12 平 均 ± 標準偏差

NRS: Numeric rating scale; ODI: Oswestry low back pain disability index; PIT: Prone instability test.

(39)

- 39 - 表2 腹臥位での股関節伸展時の 筋活動開始時間 23) 筋 活 動 開 始 時 間(ms) 同 側 脊 柱 起 立 筋 28.6 ± 17.1 対 側 脊 柱 起 立 筋 23.9 ± 19.9 同 側 多 裂 筋 19.7 ± 15.1 対 側 多 裂 筋 24.9 ± 18.3 大 殿 筋 57.6 ± 42.3 平 均 ± 標準偏差

(40)

- 40 - 腰痛 の 重症 度 (NRS・ODI),腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の 筋 第3項 活動 開始 時 間 と の関 係 表 3 に腰痛の重症度(NRS・ODI)と股関節伸展時の筋活動開始時間,腰部の臨床不安 定 性 と 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 と の 相 関 の 結 果 を 示 す .NRS・ODI ともに股関節伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 と 有 意 な 相 関 を 認 め な か っ た (p > 0.05).PIT の陽性結果は股関節 伸 展 時 の 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 (rpb = 0.533, p = 0.006, power = 0.81),同側の多裂筋(rpb = 0.58, p = 0.003, power = 0.88),対側の多裂筋(rrb = 0.60, p = 0.002, power = 0.91)の活 動 遅 延 と 正 の 相 関 を 示 し た . 腰 椎 屈 曲 時 の 異 常 な 動 き と 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 と の 間 に は 有 意 な 相 関 を 認 め な か っ た(p > 0.05). 表3 腰痛の重症度(NRS・ODI),腰部の臨床不安定性と 股 関 節伸 展 時の 筋活 動開 始 時間 と の相 関係 数 23) NRS ODI (%) PIT 腰 椎 屈 曲 時 の 異 常 な 動 き 同 側 脊 柱 起 立 筋 -0.05 -0.04 0.28 0.06 対 側 脊 柱 起 立 筋 0.01 -0.08 0.53* 0.13 同 側 多 裂 筋 -0.09 -0.03 0.58* 0.11 対 側 多 裂 筋 -0.06 -0.27 0.60* 0.13 大 殿 筋 -0.04 -0.08 0.13 0.02 *p < 0.01

NRS: Numeric rating scale; ODI: Oswestry low back pain disability index; PIT: Prone instability test.

(41)

- 41 - 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 と 腰 痛 の 重 症 度 (NRS・ODI)との関係 第4項 表 4 に腰部の臨床不安定性と腰痛の重症度(NRS・ODI)との関係を示す.腰椎屈曲時の 異 常 な 動 き の 結 果 とNRS との間に正の相関を認めた(rrb = 0.60, p = 0.001, power = 0.91). PIT と腰痛の重症度(NRS・ODI)との間には有意な相関を認めなかった. 表4 腰部の臨床不安定性と腰痛の重症度との相関係数 23) PIT 腰 椎 屈 曲 時 の 異 常 な 動 き NRS 0.02 0.60* ODI (%) 0.02 0.34 *p < 0.01

NRS: Numeric rating scale; ODI: Oswestry low back pain disability index; PIT: Prone instability test.

(42)

- 42 - 第4節 考察 本 研 究 は , 慢 性 腰 痛 者 に お け る 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 と 股 関 節 伸 展 運 動 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 と の 関 係 お よ び 腰 痛 の 重 症 度 と 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 と の 関 係 を 調 査 し た . 本 研 究 の 主 な 結 果 は ,PIT の陽性の結果が両側の多裂筋と対側の脊柱起立筋の活動遅延と相 関 す る こ と で あ っ た . 本 研 究 に お い て 腰 痛 の 重 症 度 (NRS・ODI)と股関節伸展時の筋活動開始時間 との間に 有 意 な 相 関 は 認 め ら れ な か っ た . 先 行 研 究 で は , 実 験 的 に 誘 発 し た 疼 痛 で , 体 幹 筋 の 活 動 開 始 時 間 が 遅 延 し た と 報 告 し て い る 67).し か し な が ら ,最 近 の 研 究 で は ,再 発 性 の 腰 痛 患 者 の 肩 屈 曲 動 作 で 疼 痛 が 緩 和 し て い る に も 関 わ ら ず , 多 裂 筋 の 活 動 遅 延 は 改 善 さ れ な い ま ま で あ っ た 73).更 に 急 性 腰 痛 者 と 慢 性 腰 痛 者 を 対 象 と し た 疼 痛 軽 減 の 実 験 モ デ ル で は ,疼 痛 が 軽 減 し た に も 関 わ ら ず , 脊 柱 の 自 動 運 動 時 の 多 裂 筋 と 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 開 始 時 間 は 遅 延 し た ま ま で あ っ た 74). こ れ ら の 先 行 研 究 67, 73, 74)か ら , 筋 の 活 動 遅 延 は 疼 痛 が き っ か け と な っ て 生 じ た 後 , 疼 痛 が 軽 減 し て も 残 存 す る と 考 え る . 従 っ て , 疼 痛 は 筋 の 活 動 遅 延 の 原 因 と な り 得 る が , 疼 痛 の 程 度 と 股 関 節 伸 展 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 と の 間 に 直 線 的 な 相 関 関 係 を 示 さ な か っ た と 考 え る . 本 研 究 でPIT の陽性の結果が両側の多裂筋と対側の脊柱起立筋の活動遅延と正の相関を 示 し た . こ の 結 果 は 肩 屈 曲 時 の 腰 部 の 不 安 定 性 を 有 す る 腰 痛 者 が 不 安 定 性 の な い 腰 痛 者 よ り も 多 裂 筋 と 脊 柱 起 立 筋 が 遅 延 す る と 報 告 し た 先 行 研 究 20)と 類 似 し て い る .本 研 究 は ,相 関 分 析 を 用 い た た め 因 果 の 方 向 性 は 特 定 で き な い が ,PIT の陽性の結果と両側の多裂筋お よ び 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 が 相 関 を 認 め た 理 由 と し て 下 記 の 2 点が推察される.は じ め に ,Tateuchi ら 52)は , 股 関 節 伸 展 時 の 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 と 両 側 の 多 裂 筋 の 活 動 遅 延 が 骨 盤 の 前 傾 を 増 加 さ せ る と 報 告 し て い る . し た が っ て ,PIT の陽性の結果と両側の多裂 筋 お よ び 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 が 相 関 し た 理 由 と し て , 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 と 両 側 の 多 裂 筋 の 活 動 遅 延 に よ り 過 剰 な 腰 椎 骨 盤 の 動 き を 反 復 し , 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 に 至 っ た 可 能 性 が 考 え ら れ る . ま た 両 側 の 多 裂 筋 お よ び 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 が 相 関 を 認 め た 二 つ 目 の 理 由 と し て , 腰 部 の 臨 床 不 安 定 性 が 腰 部 に 対 す る 有 害 刺 激 を 与 え , こ の 有 害 刺 激 に よ り 両 側 の 多 裂 筋 と 対 側 の 脊 柱 起 立 筋 の 活 動 遅 延 を 生 じ さ せ た 可 能 性 が 考 え ら れ る . Richardson ら 3)は ,腰 部 の 不 安 定 性 は ,神 経 組 織 の 圧 迫 や 伸 張 ,ま た 靱 帯 お よ び 疼 痛 感 受 性 組 織 に 異 常 な 変 化 を も た ら し ,有 害 刺 激 を 与 え る こ と を 報 告 し て い る .加 え て ,Hodges

図 1  本 研 究 の 全 体 図

参照

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