IRUCAA@TDC : 一般化学Ⅰの授業改善に向けて : 学生による自己評価アンケートを通して
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(2) 1. 一般化学Ⅰの授業改善に向けて 学生による自己評価アンケートを通して 小澤. 誠1). (1)はじめに 本学に赴任して以来、学生に合った化学の授業を模索しつつ 3 年が終わろうとし ている。高等学校の授業では、 「高等学校学習指導要領」に、 「化学Ⅰ」 「化学Ⅱ」の、 性格、目標、内容とその扱いそして指導上の留意事項が示され、各科目の標準単位 数や履修について、改訂の趣旨を生かすよう各学校が適切な履修科目、順序、単位 数を定めて教育課程を編成するよう定められている。目標は「化学Ⅰ」では、 「化学 的な事物・現象についての観察、実験などを行い、化学的に探求する能力と態度を 育てるとともに基本的な概念や原理・法則を理解させ、科学的な自然観を育成する」 とあり、「化学Ⅱ」では「化学Ⅰ」の「観察、実験など」に更に「課題研究を行い」 と課題研究を課しているので勤務している高校の実態に沿って検討し、実践し評価 し更に検討して・・となるわけである。中学では全員が同じ教科書で学習してきて いるし学力検査で同程度の生徒が入学してくることになるので指導がしやすいが、 本学では「化学Ⅰ」 「化学Ⅱ」の履修者は多いが、化学を未履修で入学してくる学生 が現出している。 こうした事態に対処するため、基礎と一般に分けるコース別授業を実施し、基礎 科目と専門教育との有機的な連携に努める必要から、準備教育モデル・コア・カル キュラムが制定されている。 現行では授業改善の資料にするため学生による授業評価が行われ、その結果を分 析し改善に資することができるが、授業内容についての理解度は全体的問われてい るので、細部が不明で学生の自己評価の結果から授業改善を試みようと考えた。ア ンケート項目については、シラバスに関連したコアカリキュラムの具体的内容と学 習した学術用語の理解度について評価 1 は「できない」、評価 5 は「できる」の1∼5 段階で調査した。今回はコアカリキュラムについて報告する。. (2)調査の対象・時期、及び目的 今回の調査の対象は、平成 19 年度入学生の一般化学Ⅰ履修者の男子38名、女 子22名の合計60名(当日の欠席と休学を含めた計5名は除く)である。調査を実 施した時期は後期の授業の初日である。前期試験のあとであり化学Ⅰを総括的に見 ることができる時期であると考えたからである。しかし項目が多すぎたのは反省点 1). 東京歯科大学化学研究室.
(3) 2. である。(末尾に参考資料としてアンケートを付した。) 調査の目的としては、 (1)自分の授業改善の資料とすること (2)本学学生の理解しにくいところを知ること (3)本学学生の実態を知ること である。この調査結果を活かして後期の授業に取り組んでいる。. (3)自己評価項目と図表の番号、平均値と順位 調査項目 23 と表の番号、その評価の平均値、順位を下表Aに示した。 表A 表番号. コアカリキュラムによる調査項目と結果 項目. 評価の平均値. 順位. 1. 原子量の定義を説明できる. 3.2. 16. 2. 放射性同位元素を. 〃. 3.1. 20. 3. 分子を. 〃. 3.4. 13. 4. 分子量を. 〃. 3.5. 11. 3.6. 8. 3.2. 18. 5. 〃. モルの定義を. 6. モルの意義を. 〃. 7. アボガドロ数の定義を. 〃. 3.8. 1. 8. アボガドロ数の意義を. 〃. 3.3. 15. 9. 電子の配置から周期律を. 〃. 3.4. 14. 10. 周期表により原子の大きさを. 〃. 3.2. 16. 11. 〃. 〃. 3.5. 10. 12. 〃. 〃. 3.7. 6. 13. 電子の軌道を. 2.9. 21. 14. 電子のスピンとパウリのルールを〃. 2.1. 23. 15. 原子核の構造を概説できる. 3.1. 19. 16. イオン結合を説明できる. 3.6. 9. 17. 共有結合を. 〃. 3.6. 7. 18. 水素結合を. 〃. 3.7. 2. 19. ファンデルワールス力を. 3.5. 12. 20. ボイルの法則を. 3.7. 2. 21. シャルルの法則を. 3.7. 2. 22. アボガドロの法則を. 3.7. 5. 23. 溶解度についてヘンリーの法則を〃. 2.9. 22. 電気陰性度を イオン化エネルギーを 〃. 〃. 〃 〃 〃. 同じ平均値でも順位が違うのは小数点以下第 2 位の値による.
(4) 3. 表に示すように調査番号順に表番号を決め、番号により項目がわかるようにした。 平均値は小数第 1 位までで示したが、順位については第2位まで比較した。評価の 値は、2.1∼3.8 であり、基礎がしっかりと理解されていない結果となり、大いに反 省している。高校で学んだ事柄だからと分かっているという扱い方ではいけないこ とが判明した。. (4)自己評価結果と分析 1.改善を要する 5 項目 表Aの 23 の調査項目のうち自己評価が最も低かったのは「14 電子のスピンとパ ウリのルールを説明できる」で 2.1 であった。度数分布を表 14 に示した。 表14 電子のスピンとパウリの規則を説明できる 30 25. 人. 20 頻度. 15 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 大学で初めて教える内容であるが、このルールにより各軌道に入る電子のエネルギ ー準位を説明し電子配置を演習したのでこの値には落胆した。定期試験では硫黄、 カリウム、カルシウムの電子配置を出題し正解率は 9 割だったので内容は理解して いたと思われるが、細部まで教えてもう一度全体をまとめて理解するようにしなけ ればならないと考える。指名して要領良くまとめて説明させる時間を与えていかな ければならない。小テストに穴埋め問題として出題して理解度を確かめたい。 ワースト2は「13 電子の軌道を説明できる」と「23 溶解度についてヘンリーの法 則を説明できる」の平均 2.9 であった。表 13 と表 23 に度数分布を示した。.
(5) 4. 表13 電子の軌道を説明できる 25 20. 人. 15 頻度 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 表23溶解度についてのヘンリーの法則を説明できる 25 20. 人. 15 頻度 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 度数分布から見るとあやふやな知識であることが推察されるので分かり易く教え なければならないと反省した。気体の溶解度は計算問題の演習まで実施したので内 容は理解していると思われるが、計算演習で終わらず、法則を簡潔に的確に表現す ることを求めたい。 ワースト4は「2放射性同位元素を説明できる」であった。表2に度数分布を示 した。.
(6) 5. 表2 放射性同位元素を説明できる 25 20. 人. 15 頻度 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 説明できない学生が 6 名もいることは残念であるし、易しく分かり易く教えなけ ればならない。説明できない学生が数名はいるという認識で授業に当たらなければ ならない。文章で表現することが苦手な学生が多いので実習レポートの提出等で指 導する。下から5番目は、「15 原子核の構造を概説できる」であった。表 15 に度数 分布を示した。 表15 原子核の構造を概説できる 25 20. 人. 15 頻度 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 2の放射性同位元素と比較すると、内容的には原子核の構造なので同じ傾向が現 れると思われるが、原子核の構造では放射性同位元素の評価4が減って、5 が増え.
(7) 6. ている。原子核の構造は授業初日の内容であるので、鮮明に記憶しているように、 工夫しなければならない。. 2. 評価の高い5項目. 評価の高かった5項目は、平均値 3.8∼3.7 であり、いずれも高校時代に学びしっ かり演習問題を解いてきた重要事項であるので、値がもっと高くて当然と思われる。 アボガドロ数、ボイルの法則、シャルルの法則、アボガドロの法則がそれに当たる。 順位1の「表7アボガドロ数の定義を説明できる」を度数分布で示した。比較のた め表8の「アボガドロ数の意義」も示した。 表7 アボガドロ数の定義を説明できる 25 20. 人. 15 頻度 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 表8 アボガドロ数の意義を説明できる 30 25. 人. 20 15. 頻度. 10 5 0 1. 2. 3. 4 評価. 5. 次の級.
(8) 7. アボガドロ数の意義が 0.5 ポイント下がるのであるが、意義が分からないと理解し ていないことになる。 次に高い値であったボイルの法則、シャルルの法則の度数分布を「表 20」 「表 21」 で示した。. 人. 表20 ボイルの法則を説明できる 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0. 頻度. 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 表21 シャルルの法則を説明できる 20 18 16 14 人. 12 頻度. 10 8 6 4 2 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 同じく2位だった水素結合が共有結合より良かったのは、意外であった。生物な どでも学習しているためであろうか。表 18 に度数分布を示し、比較参照するために 表 17 の共有結合を載せた。.
(9) 8. 表18 水素結合を説明できる 25 20. 人. 15 頻度 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 表17 共有結合を説明できる 30 25. 人. 20 頻度. 15 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. 3. 基本的事項. 調査項目はいずれも基本的事柄であり、確実に説明できなければならない化学の 学術用語であるので、いかに日頃高校で学んだことを分かっているつもりで教えて いるか反省させられた。基礎基本をしっかり理解させ、積み上げていくことをおろ そかにしていた。学生も学習習慣で、基本を軽視する傾向が感じられた。 (4)1以 外で「原子量」 「分子」 「分子量」 「原子の大きさ」などは、平均値が 3.5 に到らず確 実に説明できるように教材研究をし、実践していく。これらのうち表3の「分子を.
(10) 9. 説明できる」の度数分布を次に示す。 表3 分子を説明できる 30 25. 人. 20 15. 頻度. 10 5 0 1. 2. 3. 4. 5. 次の級. 評価. (5). 今後の方策. 全般的にいえることであるが、学生が高校時代に学習したことを理解していると 思いこんで授業をしていたことを反省している。したがって、学生に対する要求水 準も高くその日の授業の終了前に行う小テストも難しいという声が聞かれた。コア カリキュラムについては、後期から該当項目をその日の授業プリントのはじめに目 標として掲げ、何を理解すべきか明らかにしているし、小テストにコアカリキュラ ムについての定義等の問題を出題している。 今後の方策を列挙する。 (1)教材研究をして、新しい授業プリントを作成する。 (2)コアカリキュラムに基づいた重要基礎用語を簡潔に表現できるか出題する。 (3)指名により重要基礎用語の説明を求める。 (4)定期試験の問題を検討し、基礎力を問う良問を出題するよう努め、結果を分 析し、教材に反映する。 (5)化学実習などを通して、文章表現力を養う。 (6)コース分けの際、基礎から一般へのコース変更を認めているが検討したい。. (6). おわりに. 2008 年4月から大学でもFD(ファカルテイ・デイベロップメント)実施が義務化さ れ本学でもFD委員会規程(案)が示され、教授法や授業運営などの改善や知識・技 能・能力の獲得または向上を図るための組織的な研修及び研究が始まろうとしてい.
(11) 10. る。それは大切なことであるが、他方大学教員の自主的・主体的取り組みも必要で あり、今回学生の自己評価により、問題点を浮き彫りにした。自己評価では、心理 的に自己防衛が働くし、学習者が過大評価や過小評価をする傾向があるが、大まか な傾向を求めた。23 項目のうち半数の 12 項目について評価度数分布を示したが、 これで良かったのか疑問である。指導を頂きより良い授業の実践に努めたい。. 参考文献 文部省:高等学校学習指導要領. 大蔵省印刷局. 文部省:高等学校学習指導要領解説. 1983. 理科編理数編. メディア教育開発センター:メディア教育研究. 実教出版. 4巻1号. 2007. 1984.
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