Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
「連携」するということ
Author(s)
平田, 創一郎
Journal
歯科学報, 113(5): 5i-5i
URL
http://hdl.handle.net/10130/3211
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「連携」するということ
平 田 創一郎
会社組織において,成果主義による人事評価が廃れたのは1990年代頃からと言われている。すでに
20年も前のことである。理由は簡単明白で,評価基準が不明確なため多くの場合,最終プロダクトの
提出者にその成果を与えたために,他の社員が下支えする裏方仕事をやりたがらなくなったからだと
いう。すると,チームで取り組まなければならない大きな仕事はできなくなり,結果,会社組織とし
て大きな成果が得られなくなる。これでは会社組織そのものの衰退につながるのも道理である。
大学という組織における成果物である論文は,仕事の大小にかかわらず,多くの研究者の連携の賜
である。だからこそ共著者も評価される。この点については,評価基準さえ誤らなければ,会社組織
の轍を踏むことはないだろう。
一方,会社のために働いているのは社長だけとよく揶揄される。社員は会社のためでなく,自分と
家族のためだけに働いているというわけだ。しかし,よく考えてみれば会社は社員のためにあり,近
年では CSR などと言われ,社会にも貢献しなければならなくなった。すなわち,社員が働くという
ことは自分のためでもあり,会社のためでもあり,同時に社会のためでもあることになる。ことさら
一流企業ならば,うちの社員であればこそ,このような自負を持って仕事に臨んでもらいたい,と考
えているにちがいない。その成果は,国民に貢献することであり,ひいては会社の利益にも反映され
ることになる。
いわんや医療職をや。Professionalism を持ち出すまでもなく,利他主義は医療の根幹をなすもの
である。医療にかかわる個人であれば,自分のためだけでなく他者のために働くことは当たり前のこ
と,のハズである。が,果たして,歯科界は他の業界に何かを貢献してきたであろうか。もちろん,
多くのことをしてきているのは事実である。東日本大震災における身元確認では,歯科医師会と非常
に多くの歯科医師個人が貢献をした。それこそ,我が身を省みずに。
しかし,結局,公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保してきたと国民
から評価されたであろうか。否,最後が「歯科界のために」であるがために,我田引水,他の業界も
国民も評価してはくれないのではないかと感じている。
昨今,医科歯科連携が盛んに叫ばれているにもかかわらず,遅々として,およそ進んでいるように
は見えない。地域連携パスだ,周術期における口腔機能の管理だと外からあてがわれているものの,
歯科界の動向が大きく変わったとは思えない。
社会歯科学研究会や,行政の歯科関係職種の勉強会である地域歯科保健研究会でも,ここ数年,医
科歯科連携をテーマに何度も議論を重ねてきた。その議論の場でよく投げかけられる,連携を進める
にはどうしたらよいですかという問いに対して,これは行政で働くある歯科衛生士さんの言葉だが,
私はこう答えている。
「他者が必要とするものを,率先して自分が汗をかき,提供する。そうしていると,自分が必要とす
るものを,他者が汗をかいて提供してくれるようになる。」
この言葉は至言であると思う。
連携とは,すなわち利他主義なのだ。必ずしも共通の目的を果たすために協業することとは限らな
いのである。裏を返せば,共通の目的を持っているだけでは,連携ははかれないということだ。まし
てや,誰かが決めた通りにモノや情報を受け渡すだけでは連携とはほど遠い。かいた汗をすべて自分
の成果と欲するのではなく,その先にもたらされる真の成果に目を向けるべきなのだ。
医科歯科連携を推進するにあたり一番簡単な方法は,医科に「歯科が必要です」と言ってもらうこ
とだと私は常々言っている。今,その医科からの追い風を得て,まさに歯科界にとって好機である。
だからこそ,歯科界のために,ではなく,他の業界のために頑張ってみよう。その努力は必ず報われ
る。そういった心持ちで仕事に臨みたいものだ。 (東京歯科大学社会歯科学研究室 教授)
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