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歩行と発話が困難な障害者の自立支援システムに関する研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 庄司 和晃 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第333号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 機能材料システム工学専攻 学 位 論 文 題 目 歩行と発話が困難な障害者の自立支援システムに関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 小谷 信司 教 授 藤間 一美 教 授 小澤 賢司 教 授 鈴木 良弥 准教授 阪 田 治 准教授 清 水 毅

学位論文内容の要旨

近年,日本では肢体不自由者の数が増加している.厚生労働省の平成18 年調査によると, 現在357 万人の障害者がおり,その中でも肢体不自由者は 181 万人いる.脳疾患がある場 合は,自分の意思による運動が不可能になる随意運動障害が大きな問題となる.特に筋萎 縮性側索硬化症(ALS)の患者である場合,全身麻痺によって歩行と発話が困難になる事例が 多くある.最終的には,眼筋を除くほぼ全ての筋肉を動かせなくなり,支援が無い状態の 自立的な生活は不可能と言える.このような背景があるため,肢体不自由者の生活支援を 目的とした福祉機器やシステムの研究は盛んに行われている.本研究室では,肢体不自由 者の自立生活確立のため,残存機能である視線を入力とした支援システムに関する研究を 行っている.視線入力装置による日本語文章入力を実現するシステムの研究では,「山梨大 学大学院医学工学総合研究部工学系学域ヒトを対象とする研究に関する倫理委員会」の承 認を受けて,養護支援学校での使用評価実験を行っていた.そこでは,肢体不自由者は「移 動」と「コミュニケーション」が円滑に行えないことが,大きなストレスとなっていると いう意見が得られた. 本研究では,視線入力装置による円滑な「移動」と「コミュニケーション」の実現を目 指す.本研究では電動車イスに搭載した視線入力装置によって,安全で効率的な「移動と

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コミュニケーション」を実現するための二つの手法を示す.これらは,先行研究で課題と なっている電動車イスでの安全性を向上させるための地図生成手法と,視線による日本語 入力の効率改善のための手法である. はじめに安全な移動を実現するためのシステムについて述べる.本研究室の先行研究で は,電動車イスの操作における視線入力装置での誤操作が起きにくいインタフェースが考 案され安全性が高い使用感を実現することに成功している.さらに現在,周囲の障害物を 避けて経路生成を行い,絶対に「ぶつからない」ことを目指すアルゴリズムの研究が行わ れている.これは,盲導犬に必須とされる「賢い不服従」と呼ばれる動作を実現するため の研究である.ただし,円滑な操作の実現のためには障害物の位置をリアルタイムで検出 する必要がある.そのため,環境中に存在する障害物を地図情報として保有し,移動経路 計画に利用することが有効である.そこで安全な移動経路計画のための地図生成手法につ いて述べる.この地図を2.5 次元地図と定義する.電動車イスの操作は,最終的には搭乗者 は進行方向,または目的地のみを視線で入力するだけで動作させることを目指す.すなわ ち,電動車イスの動作を半自律動作として考える. 提案する段差の検出手法は,電動車イスが通過できないような大きな段差だけでなく, 通過するだけで電動車イスの挙動や搭乗者に悪影響を与えるような,微小な段差も高精度 で取得することを可能とする.微小な段差を避けた経路を自律移動ロボットに進行させる ことで,安全な経路計画を実現する.さらに,通路上を移動するシステムに即した実用性 のある地図を生成するために,画像センサを用いた環境認識によって通路方位推定を行う 手法も提案する.これにより,通路に沿って前進しながら地図生成を行うことを可能とし た.これらの提案する手法を実装し,2.5 次元地図の生成実験を行った結果,高精度かつ再 現性を有した地図生成を実現したことを示した. 次に本稿では,視線日本語入力のシステムの効率改善についても述べる.これは,電動 車イスに搭載し,人とのコミュニケーションや,文書作成のために用いるものである. ALS などの重度の障害を持つ場合,発話や書字といったコミュニケーションが困難とな る.これを解決するため,肢体不自由者の生活支援に関する研究は多く行われており,そ の中でも残存機能である視線による入力システムの研究は活発に行われているが,入力の 効率は言及されていない.視線入力による円滑なコミュニケーションを実現できれば,社 会的に大きな意味を持つが,視線入力の困難さから現在まで実装されていない.発話不可 肢体不自由者の円滑なコミュニケーションを実現する意義は非常に大きく,さらに,健常 者の日本語入力システムへのフィードバックも大いに期待できる. 本研究室の先行研究により,三通りの日本語入力画面が考案され,使用者に負担の少な

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い日本語入力画面の作成に成功した.しかし,肢体不自由者が使用した場合,日本語を文 章中で正しく1 文字入力するために 30 秒近くを要する課題が明らかになった.本研究では, 高効率な文章入力のために,使用者に蓄積される情報や,周囲の情報を利用して,単語の 予測変換を行なうシステムを提案する.周囲の情報を取得するために,画像センサやマイ クアレイといった各種センサを使用する. 単語のデータベースはツリー構造によるもので実装する.これにより,現在の話題を中 心とした語彙推定が可能となる.本稿では,シミュレーション実験によって,提案するツ リー構造データベースを利用した予測変換の有用性を示す.さらに,外部機関によって公 開されているデータベースを辞書として利用し,評価した結果を示した.これにより,一 般的に利用されている既存の予測変換システムとの比較を行った. 最終的には,電動車イスは目的地を入力するだけで移動可能にすることを目指す.これ には,「文章入力モード」での動作を「移動モード」へフィードバックすることが有用であ る.実現のためには,高精度な2.5 次元地図と高効率な予測変換が不可欠である.

論文審査結果の要旨

本論文は,「歩行と発話が困難な障害者の自立支援システムに関する研究」と題し,4 章 よりなっている. 第 1 章「序論」では,肢体不自由者の現状を整理し,既往の研究を整理し,本研究の背 景および目的について述べている.自立支援システムで重要なのは,「行動」と「視線日本 語入力の効率化」が重要であることを述べている. 第2 章「2.5 次元地図の生成」では,自立支援システムの「行動」に必要な経路計画に ついて整理して,既往の研究を整理して2.5 次元地図の有用性を論じている.俯角方向に設 置したLRF によって物体の立体的な情報を取得する手法を示した.この手法で一つの LRF で段差の位置と高さを取得することを実現した.さらに,自律移動ロボットを移動させな がら段差情報の取得を繰り返すことで,段差情報を含めた地図を生成することを実現した. 異なる天候,異なる日時でもロバストな地図を作成できることを示した. 第 3 章「視線日本語入力効率化」では,既往の視線入力システムの長所短所を明らか にして,肢体不自由者向けの視線入力システムを提案している.さらに,肢体不自由者の 方にとって入力の遅さと修正の困難さを克服するために日本語入力の効率改善を目指すた めの予測変換手法を提案している.提案した予測変換手法は,静的属性,基本属性,動的 属性を利用して周囲状況を把握する画期的なものである.実装のために,視覚センサ,マ

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イクロフォン,天気センサなどを利用し,効率的な実装のためにワードツリーの実装を行 った.評価実験では,Google 日本語入力のサジェスト機能との比較を行い,本研究の手法 はより少ない入力文字数で状況にあった予測変換が可能であることを示した.この評価実 験では,ワードツリー構築のための外部語彙辞書として総務省の日本標準商品部類を利用 した.大分類の一項目の単語をすべて活性化させた場合よりも,小分類の一項目の単語を すべて活性化させた場合のほうが,より話題の内容にあった予測変換が可能であることを 示した. 第4 章「結論」では,本研究で得られた結果を総括して述べている. 本研究は視線入力装置を電動車イスに搭載し,「移動」と「コミュニケーション」の両 面で肢体不自由者を支援するためのシステムの実現を目指したものである.最終的には, 視線入力装置で目的地を入力するだけで目的地への移動を達成するもので,活性化した単 語を日本語文章入力のためだけでなく,システム全体のフィードバックとして利用するこ とで,目的地の選択を周囲状況に合わせることが可能になる.これにより,自立生活の補 助の有用性をさらに高めることが期待できる.これは,情報工学ならびに福祉工学の研究 の発展,貢献にのみならず,肢体不自由者の生活の質向上に貢献するところが大きい. 本論文の研究内容は,学術誌の電気学会論文誌に1 報,権威ある国際会議 PhyCS に 1 報の計2 報に発表している. 以上により,博士論文審査委員全員の合意において,本論文は博士(工学)の学位論文と して十分に価値があるものと認められる.

参照

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