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終末期ケアを中心とした多職種連携に関する教育・研修の現状と課題

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『日本福祉大学社会福祉論集』第 131 号 2014 年 9 月  要 約  保健・医療・福祉の連携が一層強化される背景を踏まえ,はじめに,多職種連携が必 要とされる背景と多職種連携に関する教育についてまとめ,次に,「終末期ケア」を中 心として,多職種連携に関する教育・研修の現状及び到達点を把握するため,文献レ ビューと現任者研修の整理を行った.その結果,終末期ケアの場面では,多職種連携の 実践事例が多く展開されていたが,教育・研修については十分とは言えず,さらに充実 させていく必要性が示唆された.今後の課題として,①多職種で学ぶ機会を増やす,② 教育内容・方法の検討と教育効果の評価をすすめる,③福祉系職種の研究を充実させ る,の3 点があると考えられた. キーワード:終末期ケア,多職種連携,専門職養成教育,現任者研修

 1.はじめに

 わが国の急激な高齢化は,高齢人口の増大をもたらしており,「日本の将来推計人口(平成24 年1 月推計)」によれば,2040 年の死亡者数は 170 万人近くとなる「多死時代」を迎えることが 予想されている.これに伴い,最期を迎える場と看取りの場も,従来の医療機関ばかりではな く,自宅や介護施設等も含め,多様化しはじめている.特別養護老人ホームについていえば, 2006 年の介護報酬改定により看取り介護加算が創設され,施設内看取りでの一定の評価がなさ れることとなった.同時に,看取りを含めた終末期ケアを担う人材は,医師・看護師等の医療職 をはじめ,介護支援専門員や介護福祉士,社会福祉士等,多職種にわたり,看取りの場が広がれ ば,より一層,重層的で,且つ多職種による終末期ケアの展開が予想される.  多職種によるケア,あるいは,職種間の連携や協働といった概念は,近年の保健医療福祉の場 〈研究ノート〉

終末期ケアを中心とした多職種連携に関する

教育・研修の現状と課題

上山崎 悦 代 

篠 田 道 子 

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において,かなり浸透している.実際,多職種連携によるケアの実践報告も多くされており,保 健・医療・福祉の専門職による多職種連携の必要性については疑念の余地はないところとなって いる.この動きは今後も続き,より一層,職種間の連携や協働の推進が図られると考えられる.  また,必然的に,多職種連携が適切に実践できる人材の育成が喫緊の課題となっており,専門 職による現任者向けの教育はもちろん,専門職養成段階からの教育の必要性も示唆されるように なってきた.専門職養成段階からの教育については,「養成教育」や「基礎教育」,「卒前教育」 とさまざまな言い方があるが,いずれにしても,専門職を養成するための教育と専門職として実 践をしている現任者のための教育という一連の流れの中で,どの段階においても人材育成のため の教育や研修の機会が必要とされる.  このような背景を踏まえ,本稿では,特に終末期ケアを中心として,多職種連携に関する教育 や研修の現状について概観し,現時点における到達点と課題について明らかにする.

 2.多職種連携が必要とされる背景

 保健医療領域において,実践レベルの実感としては,多職種連携はもはや当たり前の時代と なってきた.チーム医療やチームアプローチの概念の浸透,全人的医療の理念に基づくサービス の提供などにより,多職種協働によるケアの展開は大きく伸展している.  ここでは,多職種連携が必要とされる背景と,終末期ケアにおける多職種連携の必要性につい て触れる.  (1)多職種連携の必要性  高齢社会の到来は,高齢者に対する医療や介護といったヘルスケアの提供方法やモデルに対す るパラダイム転換を促した.猪飼(2010)によれば,20 世紀は治療及びそれを支える治療医学 の権威が卓越しており,医師・病院に対する高い権威が付与され,健康を守るために医学的治療 が最優先される「医学モデル」が優位であり,このような状況においては,保健・医療・福祉の うち医療の役割が突出し,他は健康にとっては,周辺的な領域に位置付けられざるを得なかっ た,としている.これに対し,今日の高齢化・疾病構造の生活習慣病化により,病気を抱える高 齢者の大集団が形成され,病気と付き合いながらも健やかに生活することを目指し,生活の質を 向上させる「生活モデル」の考え方が高齢者福祉の領域にも浸透してきているとする.そしてこ のことは,医療が,保健や福祉と目標を共有することが可能となった,と述べている(猪飼: 2010).  国の方針を見ても,1997 年の文部科学省審議会答申「21 世紀に向けた介護関係人材育成のあ り方について(21 世紀医学・医療懇談会第 2 次報告書)」において,多職種連携が強調されるよ うになり,ここでは,福祉,医療,保健が連携した総合的なチームケアの推進と,福祉,医療, 保健関係者の緊密な連携が不可欠であることと,各専門職を育成する段階から各職種間に共通の

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価値観を育てることが職種間の連携強化に資する,と指摘している.また,2003 年の厚生労働 省老健局の報告書「2015 年の高齢者介護」にて提言された「地域包括ケアシステムの構築」に おいても,医療を含めた,多職種連携による地域包括ケアが提供されることが強調されている. これ以降,地域包括ケアシステムの考え方は都度改訂されてきているが,現時点では,「2025 年 を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続 けることができるよう,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」ものとさ れている.特に,在宅と急激な高齢化を迎える都市部を主たる対象としたものとなっている点が 重要で,在宅生活の継続のために,医療と介護の関係機関の連携が強調されている.  (2)終末期ケアにおける多職種連携の必要性  2007 年に厚生労働省が示した「終末期医療の決定プロセスに 関するガイドライン」において, 終末期医療及びケアの在り方として,「終末期医療における医療行為の開始・不開始,医療内容 の変更,医療行為の中止等は,多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームによっ て,医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである」とされた.これは,日本医師会生命 倫理懇談会中間答申「終末期医療に関するガイドライン」(2007 年 8 月)や 日本救急医療学会 「救急医療における終末期の医療のあり方に関するガイドライン」(2007 年 10 月)においても, 概ね同じ内容が示されている.  また,2012 年の診療報酬改定では,重点課題の一つとして,「看取りに至るまでの医療の充実 及び医療と介護の円滑な連携」があげられており,同年の同時改定となった介護報酬改定でも, 地域包括ケアシステムの基盤強化 ,医療と介護の役割分担・連携強化がうたわれた.  島田ら(2011)は,終末期こそ多元的な価値観が必要で,地域や施設の多職種連携が試される ケアであり,終末期ケアは,地域や施設の多職種連携が試されるケアであるともいえると述べて おり,日本看護協会が示す「高齢者の意思決定支援」においても,多職種と連携することで高齢 者の意思を尊重することにつながるとしている.樋口ら(2010)は,質の高い終末期ケアの条件 として,①本人や家族の明確な意思表示,②ケアを支える介護力や周囲のサポート,③終末期ケ アを支える医療的ケア,④本人や家族の願いと利用できる資源を結びつけるケアマネジメントを あげており,この4 つを整えるためには,多職種による連携と協働が欠かせない.  終末期ケアでは,一人ひとりが歩んできた,誰とも違う人生の最後の部分をケアしているとい う意味において,ケアの真価が問われるとも言える.看取りを含む質の高い終末期ケアの展開の ためには,多職種連携による実践が特に重要である.

 3.多職種連携に関する教育

 人材育成や教育については,専門職養成の段階から,現任者に向けたものまで幅広いが,どの 段階においても,多職種連携を適切に実践できる専門職の養成は欠かせないことから,まずは,

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多職種連携に関する教育の現状について,歴史的な経過も踏まえて,現時点の状況について整理 する.

 (1)概念整理

 多職種連携に関する教育に触れるに際し,はじめに,用語の概念整理をする.

 多職種連携に関する教育については,英国が先進的な取り組みをしており,一般的にIPE (Interprofessional Education)と呼ばれている.後述する CAIPE によると,IPE とは,「専門 職間の協働やケアの質を高めるために,2 つ以上の専門職が,共に,お互いから,お互いについ て学び合う機会」(CAIPE:1997)と定義づけており,これが世界的にも取り入れられている. この定義に沿えば,IPE とは,複数の領域の専門職者が同じ場所で共に学び合うことにより,互 いのことを学び,自分と自分以外の職種のことを良く知る理解,と捉えることができる.  本稿で多職種連携に関する教育という場合には,「専門職連携実践を可能にする資質の向上と 習得を目指し,異なる領域同士の相互作用を重視する教育活動」(新井:2007)と位置付けて論 を進めていきたい.これは,IPE の定義にある,2 つ以上の専門職が同じ場で互いについて学ぶ ということも含め,さらに広い概念として,多職種連携実践の向上にむけた教育や研修活動を含 む,という主旨である.後述する職能団体による現任者に対する教育・研修などが,必ずしも2 つ以上の専門職が同じ場所,時間を共有することばかりではないという実態を踏まえ,この概念 を採用した.  (2)歴史的展開と発展  多職種連携教育の歴史的な展開と発展については,まずは,英国での状況を確認する必要があ る.英国のIPE の発展の背景には,国民保健サービス(National Health Service:NHS)の成 立と発展,改革があるといわれている(松岡:2013).1946 年に成立した NHS は,英国の保健 医療サービスの根幹を担うものであるが,特に1990 年に成立した「NHS サービス及びコミュ ニティ・ケア法(NHS and Community Care Act)」以降,保健と社会サービスの連携がより重 視されるようになり(健康保険組合連合会:2012),多職種連携が国を挙げての重要課題とされ, それにあわせてより一層専門職の教育や養成が強化されていくこととなった.これは,専門職の 現任教育はもちろん,基礎教育についても変革が求められることとなり,その流れの中で,1987 年には,公共サービスに従事する専門職および組織の連携の促進と,専門職連携教育の開発や推 進を目的としたCAIPE(Center of Advanced Interprofessional Education;専門職連携教育推 進センター)が設立されている.

 WHO でも,1970 年代以降,多職種連携に関する教育の重要性に着目し,様々な報告書が作 成されてきている.特に,1988 年の報告書“Learning Together to work together for heath (健康のために共に働き,共に学ぶ)”は,その集大成のものとして,病院・施設レベルから,国

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 わが国においては,「21 世紀に向けた介護関係人材育成のあり方について」にて,①福祉,医 療,保健が連携した総合的なチームケアの推進,②福祉,医療,保健関係者の緊密な連携が不可 欠であること,③各専門職を育成する段階から各職種間に共通の価値観を育てることが職種間の 連携強化に資する,といった指摘がなされ(松岡:2013),2000 年代に入ると,医学部や保健医 療学部などの複数の学部学科学生に対しIPE への実践的取り組みが始まり(小林ら:2012),教 育現場での実践が推進されるようになった.  小河ら(2012)は,全国の国公私立大学 747 大学 2131 学部 5076 学科(2012 年4月開設予定 含む)のうち,保健医療福祉系専門職の国家資格受験可能な431 大学 615 学部 865 学科に対し, 郵送による質問紙調査を行い,多職種連携教育プログラム導入の有無と実施状況の調査を行っ た.有効回答284 件(32.8% 183 大学,221 学部,284 学科)のうち実施している大学は,51 大学(17%),66 学部(29%),97 学科(34%)で,プログラム開始時期は 2006 年がピークだっ たと報告している.一方,導入予定大学は26 大学(14%),28 学部(13%),36 学科(13%)で あり,そのうち開始時期が決定している大学は5 大学 5 学部 6 学科であった.実施している,あ るいはこれから実施を合わせると,学部の42%,学科では 47%が IPE に取り組んでいる.  このような実態からも,引き続き,専門職養成レベルにおけるIPE の推進はもちろん,現任 者レベルにおいての多職種連携に関する教育・研修も一層不可欠になると考えられる.  (3)研究の到達点  IPE の推進並びに現任者向けの教育・研修活動が重要であると同時に,研究も同時に推進され なければならない.  英国では,実践だけでなく研究についても先進的な取り組みがなされている.大塚(2004)の 研究によれば,IPE を推進する英国でも,専門職教育に IPE を取り入れることに抵抗する人々 もいる現状からも,IPE 評価が不可欠であり,IPE の評価研究が大きな規模でかつ体系的に行わ れるようになっているとある.Freeth らが行った研究報告の概要を,同じく大塚らが報告して いるが,これによれば,①IPE に対する学習者の反応,②態度・認識の変化,③知識・スキル の変化,④行動の変化,⑤組織における実践の変化,⑥対象者の利益の増大の6 点において,概 ね肯定的な評価となっていること,今後の課題として,IPE 評価の信頼性や妥当性を精査する研 究の発展等が挙げられていた(大塚:2004).   山本ら(2013)らも,IPE に関する海外文献をもとに,「IPE の教育効果を検討する論文は, エビデンスレベルが高いとされているRandomized Control Trial(RCT)が研究デザインとし て用いられていなかったり,長期的な効果を検証する研究がないという問題が指摘されている」 と述べている.同時に,IPE の効果を測る研究は,2010 年以降から急激に増えており,IPE の 効果をポジティブに捉える報告がなされているが,IPE の評価研究がどのような効果がもたら されるのか,より一歩踏み込んだ検証が必要とされる段階に来ている(山本ら:2013).  わが国においては,IPE の取り組みそのものの報告は多く散見されるようになってきたもの

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の,IPE の効果や成果についての研究は,まだこれからの研究領域であり,先駆的な取り組み実 績がある埼玉県立大学においても,IPE プログラムの評価は十分にできていない(埼玉県立大 学:2013)と説明されており,今後の課題となっている.

 4.終末期ケアにおける多職種連携に関する教育・研修

 ここからは,多職種連携に関する教育・研修について,本論の主題でもある終末期ケアに関連 するものを中心として,その現状や実態について整理する.その方法として,①関連する文献レ ビュー,②専門職の職能団体等による現任者教育・研修の実態の整理,を行った.これらを通し て,現時点における終末期ケアの多職種連携に関する教育や研修の現状と到達点を分析する.  (1)文献レビューの概要  文献は,2014 年 3 月に CiNii 及び医学中央雑誌 Web(以下,医中誌)を用いて抽出した. CiNii,医中誌ともに「多職種」「連携」「教育」「終末期」をキーワードとした AND 検索をおこ なった結果,CiNii で 2 文献,医中誌は 39 件が抽出された.また,「終末期」を「看取り」に替 えると,CiNii で1文献,医中誌は 41 件となり,「ターミナル」とした検索では CiNii が 0 件, 医中誌で29 件となった.それぞれ重なっている文献を整理し,本論のテーマである終末期ケア における多職種連携教教育や研修ついて述べられている17 文献を対象とした.  文献を整理した結果,終末期ケアにおける多職種連携の「教育上の現状と到達点」,「実践上の 現状と到達点」,「具体的な取り組み内容」の3 つに分類できた(表 1).  1)教育上の現状と到達点  終末期ケアにおける多職種連携に関して,教育上の現状と到達点について触れられている文献 は7 文献あり,専門職養成教育と現任者教育の 2 つに分類できた. 表1 文献の内容と研究対象 文献の内容 研究対象 教育上の現状と到達点 (7 文献) ①専門職養成教育について 看護師養成教育 PT,OT 養成教育 ②現任者教育について 介護老人保健施設 特別養護老人ホームの看護職 実践上の現状と到達点(3 文献) 医療機関 特別養護老人ホーム 在宅 具体的な取り組み内容(7 文献) 医療機関(病院,緩和ケア病棟,診療所) 特別養護老人ホーム

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 ① 専門職養成教育  白坂ら(2013)らは,看護師養成教育における「終末期にある子どもの家族の看護」の講義を 通して,看護学生の学びを分析し教育課題を検討している.その結果,「終末期にある子どもの 特徴の理解」や「生命に携わる看護師の仕事への覚悟など」の理解が深まっていたが,終末期に おけるチーム医療に関する学びは抽出できなかったと分析している.終末期にある子どもをケア するためには,医療職以外の保育士や院内学級の教諭などとも密接に関わっており,今後は,多 職種と連携する重要性について理解を促す教育上の課題があると述べている.  種市ら(2012)は,終末期看護教育の文献検討を実施している.ここでは,2009 年の看護教 育におけるカリキュラム改正を踏まえ,在宅看護論において在宅終末期看護を教育するうえでの 課題を明確にすることを研究目的としており,24 の文献を研究対象として分析を行っている. その結果,在宅看護論において終末期看護を教育するうえでの課題として,「療養者・家族・多 職種との関わりや制度の理解,他の授業での学習や体験を統合する教育方法を明らかにする研究 が必要」としている.  与那嶺ら(2007)は,理学療法士(PT),作業療法士(OT)に対する緩和ケア教育の現状を 明らかにするために,PT,OT の教育機関に対する全国調査を実施している.主として,PT と OT との比較の中で論じられているが,PT より OT のほうが緩和ケア教育の実施している割合 が高く,未実施であっても将来的に実施したいと考え,積極的に取り組もうとする教育機関が多 かった.また,PT,OT 共に,9 割近くが緩和ケア関連科目に「チーム医療」を取り扱っていた. PT については,緩和ケアに関わる意義が持てないことや,教えられる教員がいないといった理 由により,OT ほど積極的に緩和ケア教育に取り組もうとしていなかった.  平原(2008)は,診療所外来にチームアプローチを取り入れ,外来から訪問診療という連続し た診療形態と,医療・ケースマネジメントが両輪となってチームケアを円滑に推進していくこと で,包括的ケアシステムへと発展していったと述べている.加えて,日本においては,チームア プローチの歴史が浅く,その方法が十分に普及していない現状を踏まえ,医療・看護・福祉職の 卒前教育プログラムに他職種の専門性やチームアプローチに関する教育を積極的に導入すること で,学生時代から学びあうことが重要としている.  ② 現任者教育  平川ら(2009)は,介護老人保健施設の介護職員が参加した訪問看護研修における研修の成果 と課題を述べている.あらかじめ参加者に提示している研修目標と,その目標達成度について自 己評価を材料に分析している.結果,社会資源の活用や,保健・医療・福祉の連携システムに関 する理解の達成度が他の項目に比して低く,その背景として,多職種連携の基本的な理解が不十 分であることが示唆されていた.研修の事前準備として,あらかじめ,地域の社会資源に関する 学習や,多職種連携を意識した研修が行えるような支援が必要であると結論づけている.  同じく,介護老人保健施設に関連する研究として,丸山(2013)は,28 の文献レビューから,

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介護老人保健施設の看取りの実態や課題,看護職者の関わりを明らかにしている.各文献の内容 を6 つのカテゴリーに分類し整理したところ,その一つに「看取り体制を改善するための教育」 が抽出されていた.より充実した終末期ケアの提供においては,スタッフに対する教育が重要 で,多職種協働によるケアや家族を含めた看取りカンファレンスを繰り返し実践することが必要 と述べている.  江口ら(2013)は,特別養護老人ホームの看護職を対象とした看取りケア教育プログラムによ り見出された課題と取り組みについて報告している.これは,執筆者らが実施した看取りケア教 育プログラム(計3 回)参加後に配布回収した「看取りケア振り返りシート」の記入内容を分析 したものである.シートは研修の1 回目と 2 回目に記入するもので,1 回目は看取りケアを振り 返って見出された課題とその課題に対する取り組み案を,2 回目は 1 回目で記入した取り組み案 とそれを実際に取り組んだ結果について記入するものであった.その結果,「看護・介護職の看 取り対応力の底上げ」,「入居者家族への支援の充実」,「多職種連携の促進・強化」が課題として 抽出されており,同プログラムに基づく研修を推進する必要性を指摘している.  ここでは,多職種連携教育の場が必要であることと,多職種連携の必要性をどのように教育し ていくのかという課題が抽出された.今後は,専門職養成教育,現任者教育を問わず,教育の機 会をどう作るのかということ同時に,望ましい教育内容や方法の検討を進めていく必要性が示唆 された.  2)実践上の現状と到達点  実践の場における現状と到達点について触れている文献は3 つで,それぞれ介護支援専門員, 看護師,認知症看護認定看護師の実践について述べられている.  原田(2012)は,介護支援専門員に対する調査を行い,在宅ホスピスケアを展開するうえでの 困難や課題について述べている.介護支援専門(ケアマネ)が課題として考えているものは「多 職種との連携」,「本人,家族のケア」,「ケアサービスの調整」,「ケアマネ自身の課題」である が,最も多く抽出されていたのは「多職種との連携」であるとし,円滑な在宅療養へと移行する ためには,病院職員と在宅支援者との退院前連携が重要であると指摘している.  生田ら(2013)は,1 年間のデスカンファレンスの書記録と看護師に対する意識調査を分析し, 今後のデスカンファレンス改善に向けた課題を明らかにしている.その中の一つとして,「デス カンファレンスを他職種連携の場にする」というものがあった.ターミナル期にある患者には, 医師,看護師だけでなく他職種も関わっているものの,デスカンファレンスのほとんどを看護師 だけで実施している現状を鑑み,多職種間でデスカンファレンスを行うことが,学びの場とな り,質の高いチーム医療を目指すことができる,と述べている.  東森ら(2013)は,認知症看護認定看護師のケアの評価指標作成に向け,フォーカス・グルー

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プ・インタビューを行い,臨床におけるケアの実践項目とその具体的内容を明らかにしている. 分析の結果,実践項目は110 に集約されており,その中には,「認知症患者の終末期ケア」や 「多職種との連携と協働」に関連する項目が含まれていた.認知症看護認定看護師として,認知 症患者の病状をスタッフが受け止められるよう支援することや,他の専門職との具体的な協働に よるケアを行っていることが明らかとなっている.同時に,ケア実践の「成果」を示す項目は, 肺炎罹患率,早期退院者数,自己目標の3 つと限られており,実践成果を示す評価の視点や評価 方法は抽出されていなかった.このことから,ケア実践の意味づけと成果を言語化することで, ケアの価値を高める実践へと進化させる必要があるとしている.  ここでは,多職種連携の場として,カンファレンスが用意されているが,それが十分に活用さ れていないことが共通点としてあげられていた.また,多職種連携を実際に行っているものの, その成果を示す評価については抽出されておらず,多職種連携の成果を言語化していく取り組み が今後は必要となってくることも示唆されている.  3)具体的な取り組み内容  今回対象とした文献の中で,最も多かったのが,保健・医療・福祉分野での実践レベルでの具 体的な取り組み内容について述べられたものである.各論の中では,多職種連携について学ぶ機 会の重要性などに触れられているが,論の中心は,多職種連携の実践報告や紹介である.  たとえば,病院での実践について,吉田ら(2012)は,胃癌終末期患者の在宅療養支援につい て,事例を挙げながら,具体的な取り組みを紹介している.高度医療管理を必要とする終末期癌 患者が在宅療養をする際は,入院中は看護師がおこなっているケアを家族が担う必要があるた め,医療者は,患者・家族の抱える問題を明らかにし,それらを多職種で検討していた.多職種 でかかわり,共同カンファレンスを実施することにより,在宅療養が可能になったとしており, 特に多職種でのカンファレンスが有効であったとしている.  また,井上ら(2011)は,がんターミナル期にある患者の思いをくみ取り,長期の旅行を実現 できた一例を取り上げている.この例では,当初医療者は,旅行中の病床悪化を考慮して否定的 な考えであったが,患者の旅行にかける思いや家族の言動の変化などにより,チーム全体の考え が変わり,旅行に向けた取り組みや必要なケアが展開されていた.また,医療者は,患者の希望 の実現に向けてその可能性を追求すべきである,という点も強調されている.  他にも,吉村(2013)は,在宅ホスピスケアを希望する者に対し,多職種からなる緩和ケア チームが介入し,退院支援を行い,退院後も在宅支援チームとの情報を共有していることを紹介 している.また,地域の訪問看護師,ケアマネージャー,訪問薬剤師によるネットワークを立ち 上げ,多職種を対象としたワークショップや出前講座,地域住民啓発のための市民講座等を開催 しており,これらが,短期間で地域の多職種連携を進め,在宅ホスピスケアの質を高めるうえで 非常に有用であったと述べる.実際,在宅看取り率が増加し,地域の在宅支援チームが育つこと

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で,ケアの質が高まってきているとしている.同時に課題として,かかりつけ医のネットワーク への参加が少ないことと,行政による専門の事務部門の設置や運営を挙げており,地域全体を支 えるためには,専門職だけでなく,地域社会全体で支えあうことが必要という課題提起をしている.  診療所の取り組みとしては,小笠原(2011)が,在宅医療を推進するうえでは,看護力がその 鍵になるとして,トータルヘルスプランナー(THP)の役割について述べている.THP には, 医療や介護,福祉の専門職はもちろん,家族やボランティアも含めた多職種チームをまとめ,そ の役割を最大限に引き出し,最善のプランをマネジメントする力量が要求されるとする.実際, この力量を備えたTHP の活動により,在宅看取り率が向上しており,さらに,在宅医療を普及 させるためには,地域全体のレベルアップが必要であるとし,教育的在宅緩和ケアプロジェクト を立ち上げ,周辺の医療機関等に対し,ノウハウやスキルを伝える実践教育を実施している.そ のことにより,より広範囲なところで,緩和ケアが実施できるとしており,THP の視点や在宅 緩和ケアのシステムが広がることにより,地域の在宅看取り率が上がると結論づけている.  他にも,児玉(2012)は,在宅医の立場から,多職種カンファレンスの重要性を示唆してい る.在宅医療を進めるうえでは,Bio-Psycho-Social のアプローチが重要であるとし,それを一 職種のみですべて対応することは困難であり,他職種による連携が欠かせないとする.また,終 末期ケアの場面では,できる限りカンファレンスの開催し,顔の見える関係でのスムーズな連携 が可能となると述べている.  在宅ケアの側面からは,斎藤(2012)が,医療と介護の多職種が協働することで,終末期の在 宅ホスピスケアが実践できると報告している.病院から在宅へ戻る際,病院スタッフ及び在宅支 援を担う多職種によるカンファレンスを会することが必須であるとし,さまざまな事業所や職種 が参加することで,在宅でのケアや生活支援を検討でき,在宅によるホスピスケアが可能として いる.また,地域の多職種協働によるネットワークを構築し,保健や行政なども関わることによ り,在宅ケアが完成するとしている.実際,在宅ホスピスケアにかかわる医療機関で問題が発生 した場合,ネットワークにつながることで,さまざまな不安を解消する役割があると述べてい る.  特別養護老人ホームでの実践としては,戸田(2013)が,ホーム内の多職種連携により,「口 腔ケア,摂食・嚥下委員会の立ち上げ」,「日中オムツゼロへの取り組み」,「特養での看取り」の 3 点が実践できたと報告している.特に,看取りについては,各職種が各々の役割を明確にしな がら連携をすすめており,看護職は,介護職に対して都度相談を受け,そのケアを支える中で, 看取りの実践を積み重ねていた.  ここでは,病院や診療所,在宅診療や特別養護老人ホームでの多職種連携の取り組みが,具体 的な実践報告の形で取り上げられている.いずれも,多職種で関わることで,看取りの数や質が 上がったことや,あらたな取り組みをスタートさせることができたこと等とあり,肯定的な意見 が目立った.

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 (2)職能団体等による現任者教育・研修の現状  次に,保健医療福祉に関連する専門職の職能団体等が実施する研修体系の整理を通して,終末 期ケアにおける多職種連携教育や研修に関する現状把握を試みる.  本稿で対象とした専門職は,医師,看護師,社会福祉士,介護支援専門員である.多職種連携 の担い手としてのバランスを考え,医療系職種から2 つと福祉系職種を 1 つ,そして高齢者ケア や介護保険サービスのケアマネジメントを担う介護支援専門員を取り上げた.各専門職で構成す る職能団体は,公益社団法人日本医師会,公益社団法人日本看護協会,公益社団法人日本社会福 祉士会,一般社団法人日本介護支援専門員協会とし,各団体の現任者教育に対する仕組みや体制 について整理した(表2).  ① 日本医師会  日本医師会は,医師の生涯教育を効率的に行うための支援制度として「生涯教育制度」を設け ている(日本医師会:2013).2009 年には「日本医師会生涯教育カリキュラム< 2009 >」を作 成し,これに準拠する形で生涯教育が展開されている.カリキュラムを概観すると,本論に関連 する部分として,「チーム医療」,「医療と福祉の連携」,「終末期のケア」などがあった.   また,生涯教育制度の中に,「カリキュラムコード」と言われる84 の学習項目が設定されてい るが,ここには「チーム医療」や「医療と福祉の連携」といった多職種連携に関連するものが含 表2 職能団体の研修制度 医 師 看護師 社会福祉士 介護支援専門員 位置づ け 生涯研修教育カリキュ ラム及びカリキュラム コード(87 コード) 継続教育の範囲 ・新人教育 ・ジェネラリスト育成 ・スペシャリスト育成 ・管理者育成 ・教育者・研究者育成 ・基礎研修 ・共通研修 (認定社会福祉士に合 致したカリキュラム) ・基礎研修 ・専門研修Ⅰ ・専門研修Ⅱ カリキュ ラム, 目的 ・チーム医療 ・医療と福祉の連携 ・終末期ケア ジェネラリスト育成: チームでのケアをマネ ジメントする能力を段 階的に育成 スペシャリスト育成: 多職種との協働を促進 するうえでの必要な対 人関係能力や管理能力 等を育成 他 職 種 連 携 や 職 場 内 コーディネートなどの 力量を修得する ・高齢者の疾病と対処 及び主治医との連携 ・サービスの活用と連 携 (改定案) ・看取り等における看 護サービス活用に関 する事例 研修名 ・がん患者・家族の臨 死期のケアと看取り ※下線は多職種連携に関する研修,二重下線は終末期ケアに関する研修が含まれる部分

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まれていた.  ② 日本看護協会  公益社団法人日本看護協会は,2012 年に「継続教育の基準 ver.2」を作成し,看護職の個々の 能力開発やキャリア形成,あるいは,個々のキャリアを支援する組織において,看護職が一定水 準以上の継続教育を受けられるよう,組織の教育提供体制や教育内容を充実にするための指針を 示している(日本看護協会:2012).  基準で示す継続教育の範囲は,①新人教育,②ジェネラリストを育成する教育,③スペシャリ ストを育成する教育,④管理者を育成する教育,⑤教育者・研究者を育成する教育の5 つがあ る.この中で,ジェネラリストを育成する教育の中において,多職種と協働する能力等を育成す ることを,スペシャリストを育成する教育の中で,多職種との協働を促進するうえでの必要な対 人関係能力や管理能力等を育成することを目的としている.  インターネットを利用したさまざまな研修プログラム等が用意されているが,その中には, 「がん患者・家族の臨死期のケアと看取り」といった終末期ケアに関する研修も含まれている.  ③ 日本社会福祉士会  社団法人日本社会福祉士会は,知識や技術,倫理及び資質の向上にかかる自己研さんを支援す るものとして,生涯研修制度を設けている(日本社会福祉士会:2012).この制度は「基礎課程」 と「専門課程」の2 つの課程で構成されており,基礎課程は必須の課程で,専門課程は,基礎研 修修了後に継続して研鑽を重ねるものとして位置付けられており,さらに共通研修と分野別研修 で構成されている.  基礎課程は,初任者向けでもあることから,研修内容は,倫理綱領や研修制度の理解,スー パービジョンの体験といった基礎的な事柄となっている.専門課程の共通研修は,①権利擁護, ②地域,③運営管理,④実習・人材育成,⑤実践研究の5つの項目,分野別研修は,①高齢,② 障害,③児童・家庭,④医療,⑤地域社会・多文化の5 領域に分類され,社会福祉士の実践領域 等にあわせ,より高度な知識や技術の獲得ができるように構成されている.共通研修は「認定社 会福祉士」制度で認証された研修が基本となっているが,この認定社会福祉士制度とは,より高 度な現任者教育を実施するために2012 年 4 月に創設された制度で,現任者としての経験が 5 年 以上の社会福祉士を対象とし,他職種連携や職場内コーディネートなどの力量を修得するための 教育,研修がプログラムされている.  ④ 日本介護支援専門員協会  介護支援専門員の職能団体としては,日本介護支援専門員協会があり,現任者等を対象とした 研修が随時実施されている.ただし,体系的な研修体制のもとで,統一したカリキュラムによる 研修よりは,施設介護支援専門員や主任介護支援専門員を対象とした研修会や,地域ブロックご

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とのもの,あるいは,時事的トピックスにあわせた内容で研修が実施されている.その理由とし て,介護支援専門員の登録そのものが5 年更新となっており,更新ごとに研修受講が必須となっ ていることと,この研修が介護保険法に定められる指定研修実施機関により,全国統一的な研修 体制が担保されているため,職能団体には,参加対象や地域を限定し,より会員のニーズに合わ せた研修が用意されていると想定される.  指定研修は,「実務従事者基礎研修」(就業後1 年未満,33 時間以上),「介護支援専門員専門 研修Ⅰ」(就業後6 カ月以上の者,33 時間以上)「介護支援専門員専門研修Ⅱ」(就業後 3 年以上, 20 時間以上)の 3 つがあり,専門研修Ⅰの中の,「高齢者の疾病と対処及び主治医との連携」(4 時間)及び「サービスの活用と連携」(3 時間・選択課目)の部分で,多職種連携に関すること が触れられているが,これ以外においては,課目として多職種連携について触れられているもの は見当たらない.  なお,介護支援専門員等に関する研修については,2014 年 2 月にカリキュラム変更案が提出 されており(介護支援専門員協会:2014),パブリックコメントの意見集約等を完了した後,新 しいカリキュラムが提案される予定となっている.新カリキュラム案では,専門研修Ⅰで,「ケ アマネジメントに必要な医療との連携及び多職種協働の実践(4 時間)」,「入退院時等における 医療との連携に関する事例(4 時間)」,「社会資源の活用に向けた関係機関との連携に関する事 例(4 時間)」があり,このうち,後者 2 つについては専門研修Ⅱにも同様に含まれる.また, 専門研修Ⅱでは,専門研修Ⅰには含まれない「看取り等における看護サービス活用に関する事 例」が含まれている.  4 団体の研修を整理した結果,多職種連携に関連することを学ぶ機会は,それぞれ違いはある にしても,一定程度確保されていた.一方,終末期ケアに関する研修については,医師や看護師 は,教育カリキュラムが整備されているものの,社会福祉士については十分とは言えず,医療職 と比して,終末期ケアそのものに対する学びの機会は少ない.また,「終末期ケア」と「多職種 連携」の両方が含まれるものは,今回の整理の中からはほとんど見出すことができなかった.  介護支援専門員の新しい研修案については,連携が強調されているところもあり,この中の一 部として,終末期ケアにおける多職種連携に触れる内容も出てくると想定され,この4 職種の中 では,終末期ケアにおける多職種連携について一番学びやすい環境が整いつつあると推察され た.

 5.考察

 以上を踏まえ,終末期ケアにおける多職種連携に関する教育や研修の現状の到達点と課題につ いて,以下の3 点に整理しながら考察する.

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 ① 「多職種で学ぶ」機会を増やす  文献レビューからは,終末期ケアにおける多職種連携の必要性を伝えることの重要性が認識さ れていながらも,それが十分に進んでいない現状がわかった.  専門職養成教育について言えば,小河ら(2012)の報告にもあるとおり,保健・医療に関わる 大学(学部)でIPE 教育を実施,または実施予定のところは全体の約半数近くとなっており, この動きは今後も一層推進されると予想されるが,これは,大学だけでなく,専門学校等も含 め,終末期ケアに関わるすべての専門職養成教育機関において,IPE が推進されることが望まし いと考えられる.しかし,看護教育に関わる時間や教員の不足が生じている(清水:2010)と いった物理的な問題や,そもそもの教育カリキュラムをどうするかということも含め,クリアす べき課題は多い.とはいえ,養成教育段階から,多職種が同じ場で学ぶことが出来る機会が増え ることにより,自然と多職種で連携することの重要性が身に付き,それが,卒後の終末期ケア実 践に活かされるものと考えられる.  現任者教育について言えば,終末期ケアの場面で,多くの多職種連携が推進されている現状を 鑑みると,ケアにかかわるすべての専門職に対して,多職種連携の教育が行き届くことが重要で ある.専門職養成教育レベルでのIPE の取り組みが,この 10 年程度で急激に広がってきたとい うことは,それ以前に専門職教育を受けた者にとっては,多職種連携について学ぶ機会は,今 後,現任者教育・研修に限られる.しかし,職能団体による研修の整理からもわかるように,そ れらは,あくまでも職種ごとによる教育プログラムであり,多職種連携そのものを学ぶ機会は あったとしても,それは職種を超えた研修とはなっていない.また,多職種連携と終末期ケア は,それぞれ単独でのプログラムとなっており,両方を包含するものは.ほとんど無いのが実態 である.  その点では,吉村(2013)や小笠原(2011)の報告にもあるように,一つの医療機関等が中核 となり,周辺地域の医療・福祉ネットワーク作りの一環として,終末期ケアに携わる多職種を対 象とした研修会が展開されていることは,貴重な学びの場であると考えられる.ただ,指摘のと おり,行政の関与も大きなポイントとなる.地域の医療・福祉のネットワーク構築は,一人の専 門職,一つの医療機関の熱意だけでは難しい.行政をうまく巻き込みながら,さまざまな職種が 多職種連携について学ぶ場が提供されるようなシステムづくりが必要である.  現任者研修として,現在,日本医師会を中心として,「在宅医療推進のための地域における多 職種連携研修会」の開催が広がりつつある.これは,2013 年 12 月に,国立長寿医療研究セン ター,東京大学高齢社会総合研究機構,日本医師会,厚生労働省より出された「在宅医療推進の ための地域における多職種連携研修会 研修運営ガイド」に沿った研修で,日本医師会・四病院 団体協議会による合同提言「医療提供体制のあり方」の考え方が踏まえられたものであることな どから,今後,多職種連携を推進するうえでの重要な研修となると考えられる.  研修運営のためのガイドによれば,基本的なカリキュラムとして,多職種連携研修1.5 日(12 時間)+実地研修1 日の 2.5 日間の中で,「在宅医療が果たすべき役割」「在宅ケアにおいてなぜ

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IPW(専門職間協働)が必要なのか?」といった単元と共に,「がん緩和ケア」と「認知症」を 学ぶ領域別セッションが設定されており,この研修会そのものが「多職種連携」に特化したもの となっている.その中で,がん緩和ケアや緩和ケア病棟での多職種連携について学ぶ機会が用意 されているため,終末期ケアにおける多職種連携について学べる絶好の機会の一つとなるだろ う.また,本研修会が,医師,看護師,介護支援専門員,ソーシャルワーカー等の多職種を対象 としたものとなっており,多職種が同じ場所で互いについて理解を深めるというCAIPE が定義 するIPE に合致するところでもあり,多職種連携に関する現任者向けの教育・研修の一つのモ デルとなりうると考えられる.また,主催者の一員として行政機関が加わっている実態もあり, 行政主導での広がりも期待でき,今後,「終末期ケアにおける多職種連携教育」の一つのモデル 的なものとなる可能性を持つのではないだろうか.ただ,全国あまねくこの研修会が実施される かどうかという問題や,研修会の主催者や講師などが,多職種でバランスよく配置されるのかど うかという懸念もある.今後は,この研修会の広がりやこの研修の効果などを見ていくことが必 要と考えられる.  ② 教育内容・方法の検討と教育効果の評価をすすめる  多職種で学ぶ場を増やしていくことと同時に,効果的な教育内容や方法を検討していくことも 重要である.多職種連携教育では,演習,ワークショップ,ディスカッション,カンファレンス の模擬体験などが取り組まれているが,終末期ケアを中心とした場合には,これに加えて,どの ような工夫や配慮を要するかなど,終末期ケア固有の課題に対応した教育を検討する場が必要と なってくるだろう.渡邊(2014)は,専門職教育者同士が何らかの形で集い,実践者として共通 に直面している教育的・実践的課題について,互いの経験や考えを分かち合い協働で探究する活 動が必要と述べているが,このような活動の広がりが,教育者自身の学びの場を増やし,教育の 質を上げることにも寄与すると考えられる.  同時に,その教育がどの程度効果があったのかについて,検証していくことも求められるだろ う.小林ら(2012)によると,日本の保健医療福祉系大学における IPE の動向に関する文献調 査では,IPE の教育効果よりも課題を述べるものが多く,教育効果として実証されている内容は 少なく,科学的に検証されていない教育効果が多く存在していた.IPE の先駆的な取り組み実績 がある埼玉県立大学においても,IPE プログラムの評価は十分にできていない(埼玉県立大学: 2013)と説明されている.森田ら(2013)は,「緩和ケアに関する地域連携評価尺度」を開発し, 連携の評価そのものに着目した研究を進めているが,ここでも指摘されているとおり,現時点で は,緩和ケアに関する地域の医療福祉従事者間の連携の程度を評価する尺度はほとんどないとし ている.  教育効果に関する研究は,1967 年に提唱された Kirkpatric の 4 段階の教育プログラム評価が 基本的なものとして知られ,実際,IPE の評価をこれに基づいて行う取り組みの紹介もある(鹿 児島大学:2010).これらの研究知見を援用しながら,専門職養成,現任者いずれにおいても,

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終末期ケアおける多職種連携教育の評価が取り組まれることが望まれる.  ただし,終末期ケアは,死生観など人の価値に触れる部分が多分に含まれる領域であり,ケア の実践や評価には慎重な対応が求められる.樋口ら(2010)は,終末期ケアの評価について, 「本人や家族の主観的な思いを中心とし,専門職の客観的な指標を加味した多軸で評価すること が現実的」と述べているが,これは,終末期ケアの実践だけでなく,終末期を取り扱う教育評価 についても同様のことが言えるだろう.  終末期ケアにおける多職種連携教育の機会そのものが十分ではない状況で,かつデリケートな 要素を含むため,教育評価の取り組みには困難を伴うと思われるが,教育成果が客観的に評価さ れれば,多職種連携教育の広がりが期待できるし,それが質の高い終末期ケアの展開に繋がる.  ③ 福祉系職種による研究を充実させる  本論で述べた文献レビューにおいて,著者の取得資格,現在の職位,発表された論文の掲載雑 誌を分析すると,それらすべてが医療職によるもので,特に,看護職からの報告が多かった.医 師,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士の立場から,終末期ケアの場面での多職種連携に おける自身の役割述べているが,社会福祉士や介護福祉士といった福祉系職種によるものは,本 研究においては見つけることができなかった.  多職種連携を推進するには,医療,看護職はもちろん,福祉職による連携・協働が欠かせな い.特に,特別養護老人ホームなどの福祉施設においては,日常のケアの担い手は,介護福祉士 をはじめとした福祉系の職員であり,終末期においては,看護職と介護職の連携・協働によりケ アが展開されている.  また,2007 年の「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正では,社会福祉士の定義に関する条 項に手が加えられ,その業務として「福祉サービスを提供する者,保健医療サービスを提供する 者,その他関係者との連絡調整」をすると明記されており,法律上でも職種間の連携がその業務 として規定されている.  杉本ら(2011)は,経済水準の差により終末期ケアの格差が生じている前提を踏まえ,ソー シャルワーカーには,不利な条件にある患者への支援をより丁寧に立案・実施することが必要, と述べているが,例えば,経済的に困窮する人の終末期ケアに福祉職が関わることで,経済問題 に対応可能となり,終末期ケアの質を上げることに貢献できるのではないだろうか.他にも,認 知症などで意思決定が困難な場合の権利擁護や,家族間で意見が異なる場合の合意形成の場面に 寄り添うことなどが福祉職の役割として期待できる.  福祉職の実践が研究に反映されない要因としては,社会福祉士や介護福祉士の現任者に対する 教育の中で,終末期ケアに関する教育が,医療職に比して不十分であることなども影響している と考えられる.今回の研究では,社会福祉士の研修体制調査に限定しており,介護福祉士もこれ と同様と考えることはできないが,医療系職種に比べれば格段に少ないことは容易に推察でき る.介護老人福祉施設職員の80% は終末期ケア教育を強く望んでおり(佐藤:2009)開催され

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る研修はすぐに定員に達するなど,実践者側の研修に対するニーズは高い(正司:2007)といっ た報告もあり,研修に対するニーズが充足されていないことも考えられる.  研修体制が充実することで,福祉系職種計職種がより一層終末期ケアに関わり,チームの一員 として多職種連携に貢献できれば,その分,研究成果の蓄積も進むであろう.そしてそのこと は,終末期ケアの場面において,福祉系職種の存在意義や価値を高め,ケアの質の向上に寄与す ると考えられる.

 6.おわりに

 地域包括ケアシステムの推進などにより,多職種連携がより強調されるようになった.特に, 高齢社会,多死社会の到来において,終末期ケアにおける多職種連携は必須のことであり,多職 種連携無しに来たるべき時代を支えることはできない.  多職種連携は,すでに多くの実践の積み上げと,実践報告されているが,その取り組みを終末 期ケアの場面に広げ,かつ効果的に推進するためには,多職種連携実践を支える教育や研修の充 実が求められる.  今回の研究では,文献検索サイトからのキーワード検索により抽出された文献と,一部の専門 職の研修の実施状況を概観しながら,終末期ケアにおける教育・研修の現状と課題を明らかにし てきたが,ここで取り上げたものは一部分で,すべてを網羅しているわけではなく,本研究の限 界でもあった.また,教育・研修の現状把握に留まり,それらがどのように効果があるのかにま で踏み込んだ研究はできていない.  これらは今後の研究課題としながら,引き続き,終末期ケアにおける多職種連携に関する教育 のあり方について,教育内容や方法の検討等の研究をすすめていきたい.  付記  本研究は,日本福祉大学学内研究助成制度公募型研究プロジェクトにより実施した「要介護校 高齢者の終末期ケアマネジメントの実証的研究」(2013)及び,JSPS 科研費 26590120(2014 ~ 2016 年度科学研究費補助金「多死時代の中のケアマネジメントと専門職間協働」)の助成を受け た成果の一部である. 文献 ・新井利民(2007)「英国における専門職連携教育の展開」『社会福祉学』48 巻第 1 号 pp.142-151 ・荒木利卓(2013)「“看取り”に関する教育プログラムの構築について 多職種合同ワークショップの取 り組み」『ホスピスケアと在宅ケア』21 巻 2 号 p.270

・Center for Advancement of Interprofessional Education(CAIPE)(1997) Interprofessonal education a definition. CAIPE Buetin, 13, 19.

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参照

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