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市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム

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(1)市街化調整区域における都市的土地利用と 農業的土地利用の調整メカニズム 小 嶋 俊 洋. Ⅰ.はじめに. 第 3 節 で は,2000 年 の 都市計画法改正 よ り 導入された区域区分制度の選択制,市街化調整. 本稿は 1968 年の新都市計画法制定から 2000. 区域内での開発を可能とした都市計画法第 34. 年の都市計画法改正までの 30 年間に都市計画. 条 8─3,8─4 の制度内容について述べる.あわ. 区域内の農地がどのような扱いを受けてきたか. せて自治体自らが市街化調整区域内の土地利用. を各時期ごとに考察し,その上で 2000 年都市. 計画について策定する条例・協定方式と,農政. 計画法改正を契機に市街化調整区域に導入され. 側の市街化調整区域内の土地利用計画(振興条. た新たな土地利用計画制度が今後の市街化調整. 例計画)について取り上げ,市街化調整区域内. 区域の土地利用において都市的土地利用と農業. の農地を適切に保全していくために必要な土地. 的土地利用を共存させうるかどうか検討し,特. 利用調整メカニズムを明らかにする.. に農地を適切に保全していくために必要な土地 利用調整メカニズムを明らかにすることを目的. Ⅱ.土地利用計画制度の登場と展開. としている.. 1.新都市計画法制定の背景. 第 1 節では,区域区分制度の策定過程につい. 第 2 次高度経済成長を背景に,東京都とその. て整理するとともに,宅地並み課税反対運動と. 周辺 3 県にわたる南関東の人口増は 1963 年に. 市街化区域に大量に含まれた農地を宅地へ転換. ピークを迎え,「ほとんど制御不能に近い都市. させるための対応策として創設された生産緑地. 化」1)となった.当時の大都市周辺の自治体は,. 法,大都市法による特定土地区画整理事業,農. 急激な人口増に対して団地建設やスプロール対. 住組合法,暫定線引き・予定線引き計画開発方. 策にも取り組まなくてはならなかった.. 式について検討する.. 開発業者は,土地利用計画もないままに野放. 第 2 節 で は,1980 年代 の 地価高騰 や 規制緩. 図な開発を行ったので,農地所有者は土地供給. 和により生じた市街化区域内農地に対する開発. が都心からの距離に関係なく,需要があれば,. 圧力と,市街化区域内の農地を宅地化農地と生. 自らの所有している農地の一定割合を供給せざ. 産緑地に峻別することで宅地供給に結びつけよ. るをえなかった.そのため,土地需要がある限. うとした改正生産緑地法について述べる.バブ. り,都市は膨張していったのである.その反面,. ル経済の崩壊を背景に規制緩和・民活型の施策. 既成市街地の農地所有者は,ある一定の農地を. が 不良債権・不良資産処分 と 不況対策 を 意図. 宅地または住宅として供給すると,残りの土地. し,経済活性化を目的として推進されていく中. は農地として保有するので,宅地需給の不均衡. で,開発の矛先が市街化調整区域へと向かうこ. により地価が上昇し,宅地化前線の拡大を急速. とになった 1990 年代について検討する.. に引き起こすという現象が起こった2)..

(2) 74. 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). (426). このような無秩序な都市の膨張を食い止め,. 図るべき区域」ということになった.. 計画的な市街化を図ることを目的として 1968. 市街化地域において「開発行為は,原則とし. 年に新都市計画法が制定され,都市計画区域を. て相当規模の計画的な開発に指向させるように. 市街化区域と市街化調整区域に 2 区分する区域. 規制する」という土地利用の規制が撤廃された. 区分制が導入された.. ので,市街地開発事業の積極的な導入をはじめ. . とする都市計画法の運用や 1974 年の建築基準. 2.区域区分制度の策定過程とその問題点. 法の道路認定に関する制度改正等により,答申. ⑴ 区域区分制度の策定過程. の市街化地域の「地域趣旨」である「積極的な. 区域区分制度案は,短期間の間に紆余曲折を. 市街地開発の促進」に応えることになったので. 重ねた点がきわめて特徴的である.すなわち①. ある.. 1964 年 の 宅地制度審議会 の 第 5 次答申 は 市街. 一方,農政側においても,既成市街地と市街. 化区域・市街化調整区域 の 2 区分案,② 1966. 化地域の一本化の経緯について次のような経. 年 9 月 の 同審議会 に 提出 さ れ た 5 区分案,③. 緯があった6).「農水省からある時期において,. 1967 年 3 月 の 第 6 次答申 は 4 区分案,そ し て. 既成市街地同様に市街化地域においても農地転. ④ 3 ヵ月後に国会に上程された法案は当初の 2. 用許可制をはずしてもいい,という意向が打ち. 3). 区分案にもどっている .ではなぜ新都市計画. 出され,そうなれば,既成市街地と市街化地域. 法は当初第 6 次答申で提案された 4 区分案では. を分ける必要性がなくなったことが大きな原因. なく,2 区分案を採用したのであろうか.. であり,そのため,市街化区域に一本化され,. 都市計画側は, 「宅地審議会第 6 次答申では,. その全域について転用許可がはずされたのであ. 既成市街地においては,包括的な農地転用の許. る」.. 可を与え, 開発許可規制を行わないのに対して,. なぜ,農政側がこのような意向を示すように. 市街化地域においては,一定規模以上のみに開. なったかについては,当時,土地改良事業を行っ. 発を認めることにより, 計画的に市街化を図る」. たにもかかわらず短期間のうちに宅地に転用さ. 意図だったとされている4).. れたり,あるいは,宅地条件整備のために土地. しかし,第 6 次答申の地域区分における「連. 改良を行うといった制度の悪用といった事態が. 担市街地およびこれに接続して市街化しつつ. 一部に起きており,農政としては市街化調整区. ある地域」という既成市街地の地域の属性と,. 域に農業政策投資を集中したい意向であり,そ. 「一定期間に計画的に市街化すべき」という市. のため市街化地域での農地転用許可を不要にし. 街化地域の地域の属性を切り離して考えるこ. た.. とは,ど ち ら も 将来的には「開発を促進」し. これにより,都市計画側から見れば農業政策. ていく「地域趣旨」のもとでは難しい.また,. や農業投資に配慮して市街化地域においても農. 都市計画側 と し て は,市街化区域 の 計画的開. 地転用許可という土地規制を設けようとしたに. 発 は,開発規模 に よ り 規制 し て い く よ り も,. もかかわらず,それを農政サイドが放棄してし. 5). む し ろ 市街地開発事業 の 積極的導入 に よ り. まったので,都市計画の実務レベルの立案者達. 既成市街地と一体的に達成した方が良いので. にとって既成市街地と市街化地域の区別をする. はないかという考えに至った.その結果,既. ことの意義がなくなってしまったのである.少. 成市街地と市街化地域の両者を「市街化区域」. なくとも立案者においては,「建設省と農水省. として一本化することになり,市街化区域は,. の関係は常識的に考えられていたのとは,むし. 「すでに市街化を形成している区域,及びおお むね 10 年以内に優先的かつ計画的に市街化を. ろ逆だった」. 次に市街化調整地域と保全地域も,制定され.

(3) 市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム(小嶋) (427). 75. た新都市計画法では一本化され市街化調整区域. および市町村長に委託するとともに,新たに公. となったが,それに至った事情は次の通りであ. 聴会,都市計画案の縦覧,意見書の提出など,. る.すなわち保存地域として存続させると将来. 住民参加を認めることとなった.そのため,都. 的に保存地域の土地の買い取りや保存地域に対. 市計画区域の区域区分も住民参加で行われた.. して の 相応 の 措置が必要となる.宅地審議会. しかし,住民は公告・縦覧された計画案に対し. 第 6 次答申は,保全地域の土地利用の規制方針. 意見書を提出することはできるが,その扱いに. として, 「土地利用の著しい支障を来すような. ついては明記されていなかったり,住民に対す. 時には,買い取りに応じることもある」と明記. る説明会も義務づけられていないため,知事や. しているが,都市基盤整備もままならない状態. 市町村長が「必要があると認めるとき」のみに. では,財政的に買い取り請求に応えることは困. もたれるにすぎなかった.たとえ説明会を行っ. 難であり,一般的な保存地域の制度化を図るこ. たところでも,線引きは「5 年で見直されるか. とはできなかった.このため保全地域は市街化. ら,とりあえず市街化区域に入っておいたら…」. 調整地域とともに市街化調整区域に一本化され. といった,いかにも暫定的な措置であるかのよ. ることになった.市街化調整区域は新都市計画. うな誤解を招く行政側の説明事例が多かった7). 法制定後は,農地政策側からの農業振興地域の. ことや市街化区域内に宅地並み課税が課税され. 整備に関する法律の他にも都市緑地保全法など. なかったことにより,結果的に市街化区域内に. が整備され,積極的な保存のために都市計画法. 農地が大量に含まれるという問題が生じること. の他にも,農地法,河川法,森林法等の関係法. となった.. 令の総合的な運用によって対処されることにな り,それぞれの行政目的から保全に関する制度. 都市計画側から見ると,市街化調整区域は, 「一定期間に市街化の可能性のある」市街化調. が整えられていった.. 整地域と「市街化させるべきでない」保全地域. こうして宅地審議会第 6 次答申と現行法を比. が統合されたことで「当面市街化を抑制する」. 較してみると,答申の「既成市街地と市街化地. 区域になってしまった.市街化調整区域に限ら. 域」は,新都市計画法 で は「市街化区域」に,. ず,市街化区域も既成市街地と市街化地域が統. 答申の「市街化調整地域と保全地域」は「市街. 合されたことで,既成市街地の開発方針に合わ. 化調整区域」にそれぞれ一本化することとなっ. せたより強い開発方針が立てられるようになっ. た.このように 4 区域区分の規制内容が 2 区分. た.こうして市街化区域と市街化調整区域を線. に統合されたことにより「当面,開発を抑える. 一本で分けてしまうことが,市街化区域=開発. べき地域」である市街化調整区域的な土地が市. される・開発できる,市街化調整区域=開発さ. 街化区域に取り込まれたり, 「優先的かつ積極. れない・開発できないといった極端な落差が生. 的に市街化を図るべき地域」である市街化区域. じ,農地所有者にとっては区域区分設定の際に. 的な土地が市街化調整区域に取り込まれる可能. 自分の土地を「線の内と外」のどちらへ入れる. 性が出てきた.また, 「種々の条件から市街化. べきかという選択肢しかなくなってしまった.. させるべきでない地域」である保存地域が「計. また,農地所有者にとっては,所有農地を市. 画的に一定以上の開発であれば,開発は認めら. 街化区域に編入せざるを得ない事情があった.. れる」可能性をもつことになった.. 農地所有者の多くが新都市計画法制定以前の都. ⑵ 農地所有者の区域区分制度への対応 . 市の膨張に伴い,不動産経営を始めていたから. ━課題設定の背景━. である.そして,これから先も都市化の進展に. 新都市計画法において,旧法では国に属する. 合わせて農業経営の内容の変更を迫られること. とされていた都市計画決定権限を都道府県知事. を予想しており,農業所得で家計が立てられな.

(4) 76. (428). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). くなったら農地を売却し,家計を補完すること. となることはないといった国会答弁をした.例. で農業を継続していくことを農地所有者自身が. えば,当時の保利建設大臣は,新都市計画法の. 意識していたからである.. 国会審議の時に「市街化区域内に入ったからと. この過大な市街化区域の設定は,もちろん農. いって宅地並み課税は実施しない.道路や下水. 地所有者の開発志向のためだけではなかった.. 道等,都市施設が完備した地区内にある農地に. 田代 は, 「市街化区域内農地の過大な農地編入. ついては,逐次,宅地並み課税を行うが,農地. については,ことごとく農家サイドの要求でそ. として立派に利用されている農地については,. うなった,といわれているが,しかし,それは. 従来通り農地の課税として税制上も扱ってい. あ く ま で 一方(調整区域-引用者)は, 『転用. く」と答弁している11).. 不自由,税金 は 農地並 み』 ,他方(市街化区域. ⑶ 区域区分制度の問題点. -引用者)は『転用自由 で,税金 は 農地並 み』. 予想以上に大きく市街化区域が設定されたこ. というそもそも均衡性を欠く選択肢を与えられ. とについて建設省はむしろ歓迎していた.この. たもとでの選択の結果だったのである」と述べ. 点について簑原は,「結果論であるが,当時の. 8). ている .. ような凄まじい都市化の嵐の中で,第 6 次答申. こ う し て 市街化区域への編入は,当初の旧. で示されたような,ヨーロッパ型のスタティッ. 建設省事務局の想定では 80 万 ha であったが,. クなシステムが,現実の行政として可能であっ. 実際には,120 万 ha を超える面積となった.. たかどうか疑問であり,若干ルーズな形には. さらに田代は,住民が線引きによる土地利用. なったもののダイナミックな都市化へのゆとり. 規制を実施する必要性を「理解し,納得するま. を残した現行の制度によって,法律自体がザル. でに多大な時間と学習の機会が必要である.し. 法化し,法外秩序が形成されてしまうといった. かし,実際の線引きは,法に定められた『細々. 発展途上国現象の発生を防ぎ得たことは,隠れ. とした住民参加の手続き』を嫌って行政のペー. た反面として評価すべきである」12)と述べてい. スで進めてしまった9)」 . と指摘している.. る.. 要するに市街化区域の過大な設定は,⑴当時. 仮に市街化区域への農地編入量が適切だった. の行政が市街化区域に「転用自由,宅地並み課. ならば,市街化区域内農地の残存問題が長期化. 税」という選択肢を設定したこと,⑵行政が区. することはなかったであろう.実際には,過大. 域区分設定する際に住民参加の手続きを軽視し. に編入された農地は,新都市計画法に定められ. た こ と,⑶農地所有者 の 市街化区域編入意向. たように「優先的かつ計画的」に宅地化される. が強かったこと,という 3 つの原因があげられ. ことはなかった.これは,市街化区域は,「す. る.1968 年 の 6 月 に 新都市計画法 が 制定 さ れ. でに市街地を形成している区域,おおむね 10. る 1 ヶ月前の 5 月に土地問題懇談会において市. 年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る区域. 街化区域の利用促進のための空閑地税の導入が. とする」(都市計画法第 7 条第 2 項)と あ る も. 検討されていた10)ことから,建設省は市街化. の の,都市計画側 の 認識 で は,市街化区域 を. 区域の宅地並み課税を想定しており,後に農業. 「計画的な市街化のための個々のミニ開発を規. 団体から「建設省は,市街化区域内農地を将来. 制すべき『地域性(ゾーニング)』であり,10. の宅地として位置づけていた」と批判された.. 年での市街化整備の責任を負うものではない」. しかし,建設省は,宅地並み課税を導入してし. と考えていたからである.あくまで市街化区域. まうと,農地の編入量が激減してしまうことを. を「規制区域」としてとらえていたのである.. 危惧し,新都市計画法の国会審議の過程でも,. それゆえに,都市計画側は,市街化を過大に設. 農業が継続されている限り宅地並み課税の対象. 定したことでフリーハンドを獲得したと歓迎し.

(5) 市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム(小嶋) (429). 77. たが,一方,農政側は,市街化区域を「事業実. 目で,固定資産税の宅地並み課税分を農地所有. 施区域」と考え,都市計画側の市街化整備を期. 者に返還する政策を採った15).. 待していたのである.このようにそもそも区域. このような自治体の宅地並み課税分の返還政. 区分の趣旨をどう理解するかについて都市計画. 策をうけて,政府も 1975 年に租税特別措置法. サイドと農政サイドに認識の差があった.. を施行して,農地に対する相続税の納税猶予政. さらに,区域区分制度の問題点として,都市. 策を創設した.市街化区域にもこの法は適用さ. 計画担当者の一部には,市街化区域に過大に取. れ,20 年以上農業を続けようとしている相続. り込んだ農地についてフリーハンド的に活用で. 人が相続した農地に関しては高額な相続税が猶. きる土地を市街化区域内に確保できたことを評. 予されることとなった.. 価する向きもあるものの,実際には自治体によ. さ ら に 1976 年 に 地方税法改正 に よ り,3 年. る都市施設などの整備能力と市街化区域規模が. 以上農地として保全することが適当とされた農. かみ合っていないのが実情であった. それゆえ,. 地 の 固定資産税 の 条例 に よ る 減額措置 を 可能. 早急に都市的基盤整備をすることが困難であっ. と し,1979 年 9 月 に 地方税法改正 に よ り 宅地. た.また,市街化区域内に含まれた農地所有者. 並み課税の減額措置が 1981 年まで延長された,. は活用形態として,周辺部の都市化の変化,所. 最終的 に 1982 年 に は 長期営農継続農地制度 が. 有者の生活環境の変化などに応じて小口かつ分. 創設された.この制度は,市街化区域内農地の. 散的に売却,転売するので,計画的,面的な宅. うち,現に耕作されており,10 年以上営農す. 地供給も望めなかった.. ることを農地所有者が希望しており,市長の認. 結局,区域区分制の施行により,実態として. 定を受けた農地は,宅地並み課税が猶予され,. は都市化の無秩序な拡大を抑えることはできな. 5 年ごとに相当分課税を納税免除されるという. かったが,その反面,制度上,宅地として供給. ものである.この制度に対して該当する農地の. 可能な場所が市街化区域に限られることになっ. 約 8 割が認定を受けた.. た.都市計画側は,農地転用の自由により大量. この長期営農継続農地制度は,これまでの宅. の宅地供給を期待したが,前述した農地所有者. 地並み課税の減免に関する税制上の措置と同様. の土地利用意向により期待されていた程の宅地. に,農地を宅地供給につなげる要因をまったく. 供給は見られず,首都圏においては,住宅地の. 含んでいなかった上に,都市計画上の位置づけ. 不足は変わらなかった.かえって,開発許可基. もなかった.さらに,都市計画側が市街化区域. 準において 1000 ㎡ 以下の小規模な開発が規制. 内における農地の存在を認める制度として用意. からはずされてしまうなど開発基準の緩和,自. した生産緑地法(後述)も事実上使われないも. 治体の都市基盤整備の遅れから市街化区域内で. のにしてしまったのである.. のスプロール,ミニ開発など土地利用の混乱を. ⑵ 市街化区域内農地への制度対応の諸相. 13). もたらすこととなった .. 市街化区域内農地の根強い残存に対して,都 市計画側から市街化区域内の農業者の営農意欲. 3.市街化区域内農地問題の展開. に妥協しつつ,宅地化を促進する制度が相次い. ⑴ 宅地並み課税反対運動と地方税法改正. で打ち出されることとなった.. 1971 年に実施された宅地並み課税に対して. ①生産緑地法の制定. 1970 年前半に農家,農業団体が中心となり反. 1973 年の地方税法改正の付帯決議に基づい. 対運動が展開された.同じく市街地整備の責任. て生産緑地法が制定された.その内容は,生産. を持つ自治体も反対の立場をとり,都市におけ. 緑地に指定されれば宅地並み課税は免除される. 14). る農業緑地などに対する補助政策. という名. が,建築物の新改築,宅地造成等の転用は,市.

(6) 78. (430). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 町村の許可を受けなければならなくなる,とい. よる特定土地区画整理事業が創設された.. うものである.. 市街化するのに適当な 5 ha 以上の農地など. 生産緑地は第 1 種と第 2 種に分けられてお. を土地区画整理促進地域に指定し,その地域内. り,第 1 種生産緑地は区画整理等の施行地区外. で 2 ha 以上(1995 年改正 0.5 ha 以上)の 特. で,おおむね 1 ha 以上の面積を要し,10 年経. 定土地区画整理事業を実施した場合,施行面積. 過後あるいは農業従事者が死亡したときには自. の 3 割以内,0.2 ha 以上 の 集合農地区 を 定 め,. 治体に時価で買い取り請求することができる.. 農業継続意思を持つ農家の土地をここに換地で. 買い取り請求から 3 ヶ月経過して不成立の時. きるようにしたものである.集合農地区に関し. は,種々の制限は解除される.有効期限は設け. ては第 2 種生産緑地の指定を受けることができ. ない.第 2 種生産緑地は区画整理等の施行区域. るものとした.しかし農政側からは,事業によ. 内 の お お む ね 0.2 ha 以上 で,施行区域 の 3 割. る集合農地区の設定は,農地の宅地化促進の一. 以下の農地について指定され,有効期限は 10. 環,あるいは宅地化の手段として集合農地を認. 年で 1 回だけ更新できる.5 年経過し,買い取. めたものであり,都市計画との整合性は第 2 種. り請求から 1 ヶ月経過して不成立の時は種々の. 生産緑地の指定が受けられるという点にとどま. 制限は解除される16).. り,集合農地区それ自体が都市計画との整合性. 特に第 1 種生産緑地は「有効期限なし」とい. を追求したものではないとの批判があった.な. うこともあり,その限りでは永久に市街化区域. ぜなら,区画整理事業の建前として,集合農地. 内の農地としての存在を認めるものになった.. 区も含め,電気,ガス,水道などの都市基盤整. しかし生産緑地法における農地は,営農という. 備をすることになっており,長期の営農継続が. 意味合いではなく,公害・防災施設,公共施設. 見込まれ,当面,宅地としての利用が見込まれ. 予備地,都市計画予備地としての意味合いを制. ていないのにも関わらず,区画整理を行えば過. 度的に位置づけられていたため,農地を農地と. 大な都市基盤の整備負担を強いられることにな. して残すものではなかった.市街化区域内農地. り,農地保全の制度的担保が設けられていない. を宅地供給の供給源と位置づけている都市計画. からである.. 側にとって,市街化区域内農地を認めうるぎり. 事実,特定土地区画整理事業を実施したとこ. ぎりのラインがこの生産緑地法であったのであ. ろで積極的に集合農地区の指定がなされている. る.. わけではない17).施行者が市町村以外の時は,. しかし,農地所有者はほとんどこの生産緑地. 集合農地区を定めるとき,あらかじめ市町村長. の指定を受けなかった.その理由として⑴面積. の意見を聞かなくてはならないことも集合農地. 要件が厳しかったこと,⑵転用の禁止など厳し. 区の設定がされなかった要因としてあげられて. い規制措置を伴うこと,⑶前述のようにわざわ. いる.ほかにも農地所有者は事業後に区画整理. ざこのような厳しい条件に服さなくても,長期. された名目上「宅地」においても営農継続が可. 営農継続農地制度により宅地並み課税が免除さ. 能であったことや,都市計画側としても都市的. れたからである.. 基盤を整備した「集合農地区」がいつ宅地化で. ②大都市法による特定土地区画整理事業. きるかは,農地所有者の意向に左右されるので. 生産緑地法の制定により市街化区域内の農地. 見通しが立てにくい,という点もこの特定土地. という存在がある意味で認められるようになっ. 区画整理事業において「集合農地区」が設定さ. たことを受けて,土地区画整理事業においても. れなかった原因であると考えられる.. 市街化区域内農地に対応した基盤整備の手法が. ③農住組合法. 必要 に なった.そ こ で,1975 年 に 大都市法 に. 1980 年に創設された農住組合法は,3 ha 以上.

(7) 市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム(小嶋) (431). 79. の小規模な区画整理事業を行い,その 50% 以上. に,それらを実現していくための線引きの運用. を宅地化するが,1 ha 以上の農業地区の設定を. 方策として「予定線引き計画開発方式」と「暫. 認めるという「大都市地域の市街化区域内にお. 定逆線引き」からなる「埼玉方式」を提起し,. ける市街化区域内農地の適正な利用に関する特. 第 2 回の線引き見直しから実施に移されること. 別措置法」を原案にし,それを小規模化したも. となった.. 18). のである .市街化区域内における一定規模以. 「予定線引き計画開発方式」は,ア.市街化. 上のまとまりのある農地について,その所有者. 区域編入予定地における開発行為について市. の意向を尊重しながら交換分合等を用いて営農. 街化調整区域 の ま ま 都市計画法第 34 条 10 号. を継続する区域と宅地化を促進する区域に区分. イを適用して開発許可を行い,良好な市街地. し,計画的に農地の宅地化を図る仕組みの制度. 形成が図れる段階で市街化区域に編入する,イ.. である.. 土地区画整理事業等の市街地開発事業の予定地. そ の 目的 は, 「大都市地域の市街化区域内農. 域にあっては,市街地開発事業の実施が確実に. 地について,必要に応じ,当面の営農を図りつ. なった時点で市街化区域に編入する方式で,そ. つ,住宅へ円滑かつ速やかに転換されることと. れまでの「線引き先行,事業停滞」から「事業. し,当該の農地の所有者等の経済的社会的地位. 先行,線引き編入」へと発想を転換するもので. の向上並びに,住宅地および住宅の供給の拡大. あった.. を図ること」である.このように,当面の営農. ま た,「暫定逆線引 き 方式」は 市街化区域内. を希望する農家は,市街化区域内においても安. 農地の有効利用を図るため,農地等が残り,当. 定的に営農を継続することができる,といった. 分の間計画的な市街地整備が行われる見込みの. 利点があるとされている.. ない地区を,地権者の意向をただした上で,土. 農住組合による土地区画整理事業で集約され. 地区画整理事業等の実施が確実になった時点で. た農地は,区画整理が施行されたにもかかわら. 市街化区域に再編入することを条件として,用. ず第 1 種の生産緑地地区の指定が受けられるな. 途地域の指定を残したまま一旦市街化調整区域. ど,その限りでは,営農の継続性を獲得するこ. 編入する方式である19).. とができる.しかしながら,最終的には,農地. この「埼玉方式」は後に都市計画の区域区分. の住宅供給を目的としている以上,暗渠排水等. において,その趣旨の一部が国の通達に取り入. の農業を継続する上で必要となる本格的な事業. れられた.1982 年の通達では,計画的事業が熟. ができなくなっているので,農業継続の点では. した場合には線引きを随時見直せるようにし,. 問題がある.また,農地の下限面積の設定がな. 見直しの方法として人口増に見合って拡大でき. いことから,畑作はともかく連続性や連担性が. る市街化区域面積の当該量を直ちに市街化区域. 重視される水田においては,農地の永続性に限. に編入せず,調整区域に保留し,そこの区画整. 界があるものと考えられる.. 理事業が具体化した時点で市街化区域に編入す. ④予定線引き計画開発方式,暫定逆線引き. る制度である保留フレームの設定や,土地区画. 区域区分制の実施から 10 年が経過した 1980. 整理事業を実施中の土地や長期営農継続農地の. 年から埼玉県では,当初線引き及び第 1 回見直. 指定を受けた農地など直ちに市街化困難な面積. しの実績と問題点を踏まえつつ,長期的な都市. の一部を市街化区域としてデスカウントするデ. 整備の方向を検討することを目的として『埼玉. スカウント制度がとられるようになった20).. 県都市基本計画策定調査』が実施された.この 調査 で は,2000 年 を 目標年次 と し た「都市基 本構想」と「都市整備計画」を策定するととも.

(8) 80. 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). (432). Ⅲ.バブル経済と土地利用の混乱. 外住宅地へ地価高騰が波及し,地価が高水準の まま推移している理由として,長期営農継続農. 1.地価高騰と規制緩和. 地制度により農家からの宅地供給が先細りする. 1982 年 11 月 に 中曽根康弘内閣が発足した.. 中で住宅地をめぐる需給関係がタイトになり,. 当時の日本の対米貿易は大幅な黒字であった. わずかな新規需要の発生でもすぐさま「地価騰. た め,対外経済摩擦 を 回避 し 日本経済 を 対外. 貴」が引き起こされる構造になっていることも. 依存型から「景気を落とさず貿易不均衡を解消. 挙げられた.. する」内需指導型に変えていく必要があると. さらに,金融機関が不動産会社をはじめとす. され,その 1 つの対策として「都市再開発」が. る大企業に融資し,それらがオフィス床や土地. 位置づけられた.1983 年 3 月に中曽根首相は,. を投機したことにも原因がある.その目的は,. 建設省に対して建築・都市計画規制緩和を指示. 「転売」による差益のみを目的とする土地取引. した.これを受けて建設省は,都市対策推進委. であった.もともとのオフィス床の実需は,前. 員会 を 設 け,1983 年 7 月 に「規制緩和等 に よ. 述の情報化,国際化,サービス化といった経済. る都市再開発促進方策」を公表し,規制緩和・. 構造の変化に伴って引き起こされた業務機能や. 民活路線に突き進んでいくことになった21).さ. 中枢管理機能の東京への集中による「オフィス. らに中曽根首相は, 「アーバンルネッサンス論」. 床需要に始まった実需」であった.しかし,こ. すなわち国際金融,情報などの諸機能を東京に. の実需は, 「投機的需要(仮需)を発生させ,仮. 一極集中させる「一極集中型国土」を推進する. 需がさらなる仮需を喚起する悪循環におちいり,. 立場をとっていたこともあり,1983 年 5 月に. 暴騰にいたること」になった.同業者の間で土. 土地利用規制の緩和と民間活力を導入すること. 地の転売を繰り返し,地価をつり上げて,いわ. で開発や再開発を積極的に推進する政策も発表. ゆる 「土地転がし」が 「末期的状況」になるに至っ. していた 22).その背景には,当時, 「サービス. た26).. 化」 「情報化」の名の下に産業構造が第 2 次産. 地価高騰の一方で規制緩和策として 1983 年. 業中心から第 3 次産業中心に変化してきたこと. 5 月都市計画法行令改訂で市街化調整区域の開. もあり,事務所などの業務機能が東京をはじめ. 発許可面積が 20 ha から 5 ha に引き下げられ. とする大都市に集中する傾向が強まりつつある. た.この引き下げにより,1974 年の日本列島. 23). という事情があった .. 改造計画時に市街化調整区域に不動産会社が大. 「アーバンルネッサンス論」の発表は,東京. 量に買い占めた「塩漬け」された土地の「救済」. 都心部におけるオフィス需要の高まりにつな. がなされた.さらに 1983 年 6 月に市街化調整. 24). がった .1983 年 10 月に東京都都心の地価が. 区域内の宅地化促進のため公共事業費の優先配. 上昇 し 始 め,1984 年 に は,都心商業地 の 地価. 分の方針が決められ,中曽根首相就任前後には,. 上昇を発端として,東京の地価高騰は一部の周. 地方公共団体の開発抑制方針の見直しを求める. 辺住宅地へと波及していった.これは, 「都心. 通達や宅地開発等指導要綱問題に対する是正を. 部において高価格で土地を売却させられた住人. 求める通達が相次いで出されている.. が周辺の住宅地を高値で買い,そこを追われた. 都市計画の規制緩和策は,1970 年の都市計画. 人がもう少し遠くの土地を高値で買い,という. の「流れの特徴である土地利用計画・規制の強. ことを繰り返す『地価の玉突き現象』が起こっ. 化,公有地の拡大・地価抑制,地域住民・地方. 25). たためである」とされている .. 自治体の役割の拡大などと対比してみれば,建. また,今回の地価高騰が一部の住み替え需要. 設省の報告書が示している方向は,1968 年の都. にも関わらず,1986 年に区部,1987 年から郊. 市計画法」ばかりではなく「日本近代都市計画.

(9) 市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム(小嶋) (433). 81. 史全体をつらぬいている都市計画の進歩に対す. 同時に実施された地方税法の改正では,これ. る逆流であるということは明瞭」であった 27).. まで世論の批判の的であった長期営農継続農地. 地価は,1987 年をピークに上昇を続け,高. 制度が廃止され,相続税の納税猶予特例につい. 値安定の状態で地価が維持された.この地価. ても三大都市圏の特定市の中で営農を継続する. 高騰は,単なる人口の社会増を背景にした宅地. 農地について引き続き特例の適用を認めたが,. 需給量による地価上昇ではなく, 「アーバンル. 相続人の 20 年営農による相続税免除の特例は. ネッサンス論」を背景とした企業による資産と. 廃止された.宅地化農地を選択した農地に関し. しての不動産の保有・投機が直接の原因であっ. ては,1992 年以降の相続から相続税の納税猶. たが,サラリーマンの収入が高騰する地価に見. 予特例の適用を廃止することとなった29).. 合うほど伸びなかったため,住宅を取得するこ とは難しく,土地所有の有無による資産格差の. 3.新たな市街化区域内農地問題. 拡大が発生することとなった.そしてその不満. 1992 年 の 改正生産緑地法 に よって 導入 さ れ. の 矛先 は,市街化区域内農地所有者 に 向 け ら. た「生産緑地」と「宅地化農地」の選択は,税. れ,農地を宅地として供給しないから宅地需要. 制の関係から「農家にモラトリアムを起こされ. の均衡化が図られず,地価上昇が止まらないの. たくない」という都市計画側の本音もあり30),. だという「都市農業不要論」が主張され,さら. 短期間のうちに実施されたことや,決定に当. には,宅地並み課税導入論が議論されるように. たって近隣農家との調整がほとんどされなかっ. なった.. たため,結果として市街化区域内における生産 緑地と宅地化農地の混在化という問題が発生し. 2.生産緑地法の改正. た.さらに三大都市圏で約 7 割の宅地化農地が. このような中で次第に市街化区域内農地の税. 出現したにもかかわらず,大量の宅地供給には. 制の問題である長期営農継続農地制度の宅地並. つながらないという結果に終わったのである.. 28). み課税が争点となってきた .宅地並み課税の. この節では,改正生産緑地法でもたらされた宅. 導入論が盛り上がる中,政府も 1987 年から市. 地化農地が宅地供給に結びつかなかった理由と. 街化区域内農地に関する重要な指針を決定する. その峻別が原因で生じた生産緑地と宅地化農地. こととなった.その最初の動きが現に施行され. の混在化の 2 点について検討する.. ている長期営農継続農地制度の運用を見直すこ. では,はじめに,なぜ宅地化農地が出現した. とであった.これまで都市計画側は,市街化区. にもかかわらず,それが住宅供給に結びつかな. 域に根強く残存する農地に対して,市街化区域. かったのか.. 内の農業者の営農意欲に妥協しつつ, 「都市と. 松木によると31)農家の土地所有の行動とし. 農地の共存を望ましいものにする」という考え. て,新都市計画法における市街化区域と市街化. 方に立ち,農住組合法をはじめとする宅地化を. 調整区域の区域区分を各自治体が行っている段. 促進する制度を打ち出してきたが,1992 年の. 階ないし 1973 年のオイルショックまでの段階. 生産緑地法の改正,地方税法の改正で市街化区. で,三大都市圏の主要な特定市および中堅都市. 域内農地を生産緑地と宅地化農地に峻別し,宅. の農家の土地所有の行動は基本的に確立されて. 地化農地に宅地並み課税を課すこととし,三大. いたという.つまり,新都市計画法の区域区分. 都市圏特定市の市街化区域内農地所有者は,農. によって,自らの農地が市街化区域に組み込ま. 地並み課税で農地(=生産緑地)として保全す. れる以前から遅くとも 1973 年までに長期的に. るか,宅地並み課税を受け入れる(=宅地化農. 保存していく農地と都市的土地利用に転用して. 地)かの選択を迫られることとなった.. いく農地との区分けを終え,以後は,都市的土.

(10) 82. (434). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 地利用を図る農地を対象に周辺部の都市化や自. 域内は,生産緑地,営農継続の宅地化農地,駐. らの生活状況の変化に対応する形で土地利用を. 車場,資材置き場など土地利用がモザイク状に. してきたものとされる. 「都市農地不要論」が. 現れることとなった.具体的には,「生産緑地」. 評論家により叫ばれていた 1987 年ごろでさえ,. に隣接した「宅地化農地」や逆に「宅地化農地」. 所有している農地を今後 10 年間どのように利. に囲まれた「生産緑地」が存在し,これらは,. 用するかについて「全部,または,ほとんど農. 街路網から取り残された不整形な形態になって. 地のまま利用する農家」が,61% を占めるな. いるものが多い34).農地は,宅地化する過程で. 32). ど. 都市化や自らの生活状況の変化に合わせ,. 一定期間は駐車場や資材置き場などの空閑地と. 都市的土地利用をする農地を小出しに売却・転. なり,空閑地が媒介になって土地利用が円滑に. 用し,長期的に保存していくというのが農地所. 進むのが通常の姿であったが,生産緑地法改正. 有者の土地利用行動だった.. 以後,道路等の基盤等が不十分なまま市街化が. つまり,宅地並み課税が導入されたにもかか. 進行するという通常とは異なる様相が現れるよ. わらず,結果的に宅地化農地の 3 分の 2 は営農. うになった.すなわち,農地が空閑地になって. が継続され,残りの 3 分の 1 は「駐車場」 , 「賃. も空閑地から住宅地,公共用地への転用が進ま. 貸住宅」 , 「貸店舗・貸倉庫」として利用される. ず,一部が駐車場や資材置き場のまま遊休化し. ほか, 最後には固定資産税の支払いや財産分与,. たものが現れたのである35).そのため,広い範. 相続税の支払いのための「土地売却」に利用さ. 囲で劣悪な市街地が形成されてくることになっ. 33). れており ,結果的には,宅地並み課税された. た.そのため 1994 年には緑住区画整理事業が. ものの,単に長期的に保存していく農地が「生. 創設された.それは生産緑地と宅地化農地の混. 産緑地」になり,前述のような都市的活用を図. 在が発生した概ね 5 ha 以下の地区において小. る農地が「宅地化農地」になったに過ぎなかっ. 規模区画整理事業を実施し,生産緑地と宅地化. たので宅地の大量供給は実現しなかったのであ. 農地の交換分合をすることで,営農環境を整え,. る.. 事業で生じた保留地を宅地供給につなげること. さらに,生産緑地と宅地化農地の混在化が生. で混在化を解決し,宅地化農地の住宅供給につ. じた原因は,農地所有者の土地利用意向として. なげようとするものだった.この事業は,生産. 決して全面買収や全面転売という形にならず,. 緑地と宅地化農地の混在化を解消することもさ. その宅地並み課税の負担に耐えうる措置を個人. ることながら,ゼネコンを中心とした企業の民. 的に講ずるだけだったからである.特に宅地化. 間活力を活用する事業として創設され,ゼネコ. 農地は,相続税の納税猶予が廃止されたことか. ンが薄利多売で事業を推進することも目的とし. ら,相続税の支払いに備えるために大量の宅地. ていた.しかし,蓋を開けてみれば小規模区画. 供給をすることは考えられなかった.農地の売. 整理は,実質的にゼネコンが中心となり少数地. 買等に関しても一般に公道に面したところは,. 権者を対象にした減歩率等の調整作業や事業実. 制度的に開発許可の取得が容易であることや 4. 施にかかる合意形成に苦労することも多かった. m道路に面していれば建築許可が取得できるこ. にもかかわらず,その半面,事業費を捻出する. とから優先して売買された.そのために駐車場. ための保留地の売却が地価下落に伴って困難で. や賃貸住宅などの開発を通して公道に面してい. あったことから,結果的に「労多くて利益なし」. ない農地は袋地などとなり,結果的にスプロー. とゼネコン自体が事業から撤退する結果となっ. ル化が急速に進む可能性が極めて高くなった.. た.. また,生産緑地と宅地化農地の区別が農地所 有者個人ごとになされたことにより,市街化区.

(11) 市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム(小嶋) (435). 4.「規制緩和・規制改革」論の台頭 1990 年代は,都市の開発整備のための種々 の新しい事業制度が導入され,都市計画法や建 築基準法も頻繁に改正されてきたが,そのポイ ントは,バブル経済破綻後の不良債権・不良資 産処理の促進と不況対策を意図した規制緩和・ 民活型の施策の推進におかれている36). また,都市づくりにおける地方分権と住民参 加の重視という方向の制度改正は,一定の前進 はしているが,地方分権一括法をも含めたこれ までの改正内容では,都市計画事務の「自治事 務」化という形式上の変化にもかかわらず,事 業面の分権化は一切なく,実体上ほとんど変化 はなかった.まちづくりに関する地方自治体の 条例権制定権の問題についても都市計画事務の 自治事務化と地方自治の改正とが相乗して「条 例の制定権の範囲が非常に拡大する」という見 方も示される一方で,都市計画中央審議会答申 などの建設省の政策文書では都市計画法の改正 等で認められた委任条例の範囲の拡大は別とし て,法律と条令との関係に関する基本的な考 え方は, 「都市計画が自治事務と構成されても 変わらない」という見解が早くから示されてい る. 都市計画審議会が 1997 年の「中間とりまとめ」 から強調しだした,都市が膨張・拡大する「都 市化社会」か ら「安定・成熟 し た 都市型社会」 への移行という認識を文字通り受け取れば,都 市の持つ生活基盤・環境基盤たる側面を重視し て「都道府県や市町村が地域住民と一体となっ て地域特性に応じた個性豊かな都市整備と次世 代に残すべき貴重な環境保全に本格的に取り組 む環境と整えるという方向に向かうべきはずの ものだ.人口の減少によって開発圧力が弱くな るのだから,規制緩和は妥当である」という特 殊な理解により,都市が持つ経済活動基盤面に 重点をおいた国家主導型の都市開発政策の再構 築を企図する動きがとられるようになった.. 83. Ⅳ.市街化調整区域の土地利用調整と開発許可 制度 1.改正都市計画法の特徴と問題点 ⑴ 改正都市計画法の特徴 1992 年の都市計画法改正から 1999 年 7 月の 地方分権一括法制定に至る過程で実現されてき た都市計画の分権化の促進に係る諸措置を踏 まえ,2000 年に都市計画制度が改正されたが, その特徴として次の 2 点が上げられる. まず第 1 に,都市計画区域の区域区分制度が 三大都市圏の一定の都市計画区域と政令で指定 される大都市等の都市計画区域を除いて,実施 の 要否 を 都道府県 が 判断・選択出来 る よ う に なったことである.第 2 に,市街化調整区域の 開発許可制度の緩和も行われ,市街化区域に隣 接し一体的な日常生活圏を構成するなどの状況 のある地域については,都道府県等の条例で指 定する土地の区域内において行う開発行為で予 定建築物等の用途が,開発区域及びその周辺の 地域における環境の保全上支障があると認めら れる用途として都道府県の条例で定めるものに 該当しないものを許可対象に加えることができ (都市計画法第 34 条 8─3),ま た 都道府県等 の 条例で対象区域と予定建築物を定めておくこと により開発審議会の議を経ずに許可できること となった(都市計画法第 34 条 8─4).さらに都 市計画区域外についても各種産業上の立地上の 制約要因がなくなったため,都市的土地利用が 集中的に進行する区域については,市町村長が 市町村都市計画審議会の意見を聞き,知事との 「同意つき協議」を経た上で準都市計画区域に 指定できることとなった. 以上のようにこの改正は市街化調整区域の土 地利用に関しての規制緩和であるが,その背景 として建設省には地域経済を活性化させるため に規制緩和を推進しなくてはならないという政 治的圧力がかけられていた37). ①区域区分制度の選択制と市街化調整区域の開 発許可制度の緩和.

(12) 84. (436). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 今回の都市計画法の改正で区域区分制度が選択. これまで区域区分制度は,都市計画区域の中. 制へと変更されたが,その背景として,第 1 に. で開発を誘導・促進する区域である市街化区域. 緊急経済対策のために規制緩和を推進する経済. と原則禁止である市街化調整区域に厳格に 2 区. 戦略会議 が「日本経済再生 へ の 戦略」に お い. 分する制度であったため,線引きの内か外かに. て「線引きにおいては,廃止又は縮小を視野に. よって土地の資産価値に隔絶的な差を生じさ. 入れて見直す」と指摘したこと,第 2 に地方分. せ,土地所有者に不公平感をもたらしていた.. 権と規制緩和に配慮した制度改正を進めるべき. その不公平感を補うために,改正以前は開発許. だという都市計画審議会における議論があった. 可を都市計画法第 34 条 10 号イの大規模開発の. こと,第 3 に少子高齢化によりこれから人口が. 規模要件 の 緩和,10 号 ロ の 弾力的運用,都市. 減少していくなかで,これ以上市街地が拡大す. 計画法第 43 条の既存宅地制度により緩和して. ることはなく,スプロール化することを緊急的. きたが,この緩和策に関しては,許可を不要と. に防止するための区域区分制度の役割は終わっ. する農家住宅をはじめ,分家住宅や日常生活に. た,さらに区域区分の廃止により市街化調整区. 必要な店舗など個別に許可されてきた.既存宅. 域から白地地域になったとしても元々人口圧力. 地制度が無秩序な宅地化に拍車をかけ,地域に. がない地域であるから特別な規制は必要ない,. よっては市街化区域とほとんど変わりない市街. との考えがあった.こうして,線引きを外した. 地が見られるケースもあり,まちづくりの視点. 後の補完的な制度を用意することなく線引き制. も欠けていた.. 度の選択制を導入することに対しての危惧は. そこで,2000 年改正の開発許可においては,. あった. 38). が,結果的には選択制となった.. このグレーゾーンの集落地区条例(都市計画法. しかし,実際には区域区分制度が選択制になっ. 第 34 条 8─3)と 例外許可型定型化条例(都市. たことが逆に各自治体において線引きの必要性. 計画法第 34 条 8─4)の 制度 を 創設 し た.特 に. について真剣に考えるきっかけとなり,大多数. 集落地区条例については市街化調整区域の土地. 39). の都市が改正後も線引き制度を継続している .. 所有者の不公平感の原因となっていた既存宅地. 都市計画法改正においては,市街化調整区域. 制度を実質的拡大して都道府県等で条例を制定. の開発許可制度の緩和も併せておこなわれた.. することを条件に開発行為が許容されることに. その背景として,第 1 に市街化調整区域の開発. なった.. 規制を建前通りに厳しく運用することが困難. ②集落地区条例(都市計画法第 34 条 8─3). で,これまでも緩和措置がとられてきたこと,. 都道府県等で条例を制定すれば,市街化区域. 第 2 に市街化調整区域において開発許可の多く. 近傍で周辺環境の保全上の支障をきたさない建. が自治体の運用に任されており,土地所有者間. 築物を許容する都市計画法第 34 条 8─3(通称:. の不公平性,不透明性があるという制度・運用. 「集落地区条例」)は,既存宅地制度を廃止する. 上の問題点,第 3 に市街化調整区域の規制緩和. 代わりにより強力な緩和手段として登場した.. が政府の規制緩和策の 1 つとされていたことが. つまり,その土地が市街化区域に隣接または近. 40). 挙げられる .新都市計画法の創設から 30 年. 接していて市街化区域と一体の生活圏を構成し. が経過し,都市的生活や都市的活動をめぐる社. ている地域内のおおむね 50 以上の建築物が連. 会的情勢の大きな変化が見られ,都市機能を支. 坦している区域であり,なおかつ公共施設が整. え る 各種 の 産業立地 は 交通,情報網 の 整備 と. 備された地域であれば,スプロール対策上も支. モータリゼーションの進展等に伴い,都市計画. 障がないとして市街化調整区域でありながら開. 区域外も含めて立地上の制約要因がなくなりつ. 発可能エリアが面的に指定されることとなった. つあると指摘された.. のである..

(13) 市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム(小嶋) (437). 85. しかし,既に集落が形成され,道路等の公共. のが出てきた点に着目し,そうしたものについ. 施設が整備されていれば新たな公共投資の必. ては都道府県条例で必要な規定をおくことによ. 要性はないことや,道路交通網の発達した実. り個別に開発審査会で許可の妥当性を判断する. 情では「近隣・隣接」の範囲は単に物理的な距. 必要がないとしたものである.. 離だけで区分することは適正を欠くという理由. 例外許可型定例化条例は,市街化調整区域の. から,要件に「市街化区域への隣接,近傍」が. 開発圧力が強い場合には,緩和的機能の強い集. 求められなかった.あわせて条例制定において. 落地区条例を活用せずにこの例外許可型定例化. 自治体の判断基準により条件を付けることが可. 条例(都市計画法第 34 条 8─4)の み を 活用 す. 能であったので,埼玉県のように「都市の機能. る場合と逆に開発圧力も土地利用ニーズもほと. と田園・自然環境とが共生する質の高い居住地. んどないことからこの例外許可型定例化条例を. 域」の形成を目指すといった将来の土地利用の. 活用する場合が考えられる.. イメージを具体的に示し,住民との合意形成を 必要とする踏み込んだ内容にしたり,栃木県で. 2.自治体の条例・協定方式による模索. は,市街化調整区域内の大規模既存集落などの. 我が国の都市計画法は,都市計画区域の設定,. 人口の停滞やコミュニティーの現状維持の困難. そして市街化区域と市街化調整区域との区域区. に対処するため,地域活性化の必要な地域に限. 分制度を基本に構成されている.区域区分制度. 定してスポット的に区域指定を行う活用も行わ. では,市街化区域や用途地域に開発を集約し,. 41). れている .. 市街化調整区域や未線引き白地地域は,純粋な. しかしながら,集落地区条例制度の設計や使. 農村地域として保全することを目的としている. 用方法を誤ると集落条例のもつ緩和的側面が強. が,実際には,市街化調整区域においても無秩. く発揮されることになり,スプロール化を助長. 序なスプロール的な開発が行われ,個別分散的. する問題もある.. な開発が行われている.この無秩序な開発の背. ③例 外許可型定型化条例(都市計画法第 34 条. 景には,都市計画法の不備や農地制度の不十分. 8─4). さがあることは多くの論者が指摘するところで. 都市計画法第 34 条 8─4(通称: 「例外許可型. あり,多くの自治体では,開発指導要綱を策定. 定型化条例」 )は,もっぱ ら 開発許可手続 き の. したり,土地利用条例を策定したりするなど自. 合理化・迅速化を意図した制度である.開発区. 治体レベルで地域,集落レベルの土地利用転換. 域の周辺における市街化を促進する恐れがな. をルール化し,そのルールにもとづき,農地を. く,都市計画法 43 条 10 号ロに該当し,定型的. 保全し,開発をコントロールしようとしている.. に許可 で き る 開発行為は都道府県等の条例で. つまり,「あくまで都市計画法による開発規制,. あらかじめ区域,予定建築物の用途を定めれ. 農地法に基づく農地転用規制,都市計画法や農. ば,開発審査会の議を経ないで許可できるとい. 振法に基づく区域区分=土地利用計画の規制を. うものである.市街化区域より一定の距離があ. 踏まえて,その規制の及ばない分野や,行政的. る既存集落などをその対象区域として想定して. 押しつけによる説得性の弱さを,条例のきめ. いる.また,開発審査会の審査基準として定め. 細やかさと住民参加により補完し,補強する. られていない開発行為についても定型的なもの. 方法」42)が採用されているのである.いずれに. があれば開発審査会の承諾を受けて条例化する. しても都市計画法や農振法の不備を条例で補う. ことも可能である.都市計画法第 34 条 8─4 は,. 自治体の土地利用調整条例については,計画の. 都市計画法 34 条の 10 号ロによる例外許可の運. 決定までの過程の手続きの明確化や透明性が今. 用実績の蓄積により許可要件が定例化されたも. 後ますます重要になるものと思われる..

(14) 86. (438). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). 一方,現実の自治体の土地利用問題を解決す. また,農振法の改正の枠組みについても地方. る手段としての土地利用調整条例と国の法律を. 分権推進委員会第 1 次答申で示されており,①. めぐる問題もある.都市計画法の不備を自治体. 農業振興地域の指定,農業地域整備計画の策定. が補強する目的で土地利用調整条例が制定され. 等を自治事務としてその基準を法令に定める,. ているが,国としては,土地利用調整条例に関. ②国は,農地の確保等の基本指針を策定する,. して住民参加の条例は認めるが,規制強化を伴. ③県に対する国の承認を協議(一部は同意)に. う土地利用調整条例は認めないという立場か. 改めるとされた.農振法のうち市町村農業振興. ら, ①地方分権で都市計画を自治事務としても,. 地域整備計画に対する都道府県の関与及び,法. ②都市計画の本質は私権制限の基準であり,③. 定受託事務の事務区分設定は地方分権一括法と. 私権制限の内容は国が決めることであるから,. して取り上げられ,農用地区域に関する法定化. ④都市計画を地方分権化しても,自治体は条例. などの主要な改正については農振法改正として. による独自の土地利用規制はできない,という. 取り上げられた.その理由は,仮に農用地区域. 主張を行っている43).. の設定に関して地方分権一括法で取り上げられ た場合,農振法の係る事務が自治事務とされ,. 3.農政側からの「振興条例計画」. 国として指定の基準を法定化しなければ都道府. ⑴ 地方分権と農地制度改正. 県・市町村の裁量で農用地区域が指定されるこ. 都市計画サイドにおける地方分権,規制緩和. ととなり,①国の食料安全保障の前提としての. への政治的圧力についてはすでに述べていた. 優良農地の確保,②自治体間の公平感の確保,. が, 農政サイドに対しても同様に圧力があった.. ③土地所有者への透明性の確保が果たせなく. 地方分権推進委員会の第 1 次答申で農地制度の. なってしまうからである46).. 地方分権化が指摘され,これを契機に 1998 年. このように農地制度と農振制度が「農用地の. に農地法が改正され,1999 年に農振法が改正. 確保」を介して密接に結びつくことになり,農. 44). された .農地法改正では,転用許可面積につ. 用地区域の確保が農地政策の中心的位置を占め. いては 2~4 ha の転用許可権限が都道府県に委. ることとなった.逆に農用地からの除外(変更). 譲され,従来は通達によって運用されていた転. についても,①除外し転用することが必要かつ. 用許可基準 が 法定化 さ れ た.こ れ ま で 通達行. 適用であり,他の土地では代替できないこと,. 政・運用によって,その基準が不透明と批判さ. ②除外が農地の効率的・総合的な利用に支障を. れていた転用許可基準を法定化し,規制の法制. 及ぼさないこと,③農用地の保全等に支障を及. 化・客観化・透明化が図られた.同じく保全す. ぼさないこと,④土地改良事業完了の翌年から. べき農地である農用地区域指定の基準も法定化. 8 年を経過していること,の 4 つ条件がすべて. された.. 満たされていることとされた47).. 法定化された転用許可基準における農地の区. 農地制度は,農振農用地区域の転用規制を強. 分を見ると,農用地区域・第 1 種農地・甲種農. 化することで農地総量確保を果たそうとしてい. 地・第 2 種農地・第 3 種農地に区分され,農用. るが,①農用地区域以外のいわゆる白地農地(約. 地区域が原則不許可,甲種農地,第 1 種農地の. 70 万 ha)の転用をどのように規制するのか,. 順に規制が強いものになっているが,農用地区. そして②食料自給率向上のための農地確保すな. 域を明確に位置づけることで農振法との整合性. わち農用地区域の拡大をどのようにして実現す. をとり,都市計画法と競合する市街化調整区域. るのか,さらに③指定された農用地区域が容易. の優良農地の位置づけを高く掲げた点が特徴と. に除外されることなく維持されるのかという点. 45). なっている .. で課題を抱えている..

(15) 市街化調整区域における都市的土地利用と農業的土地利用の調整メカニズム(小嶋) (439). 87. ①について田代は,現実対応としては「農振. は,地域住民の土地利用・農地保全への無関心. 白地の転用は原則禁止の農用地区域が設定され. や耕作放棄地農地の担い手への農地利用集積が. た反射として原則許可にならざるを得ない」よ. 進まないこと,さらに開発利益への期待があり,. うな運用になる危険性を指摘しており48),農振. 農地法等による土地利用規制では十分に対応し. 農用地区域外の白地農地の転用が容易になる可. きれない経済的要因や農地所有者意識の存在な. 能性は否定できない.②農水省が実施した平. どが挙げられている.また,農地法等の個別法. 成 10 年から 22 年にかけての趨勢推計値による. では総合的な土地利用調整ができていないとし. と 農用地区域 は 419 万 ha か ら 367 万 ha に 減. ている.. 少するとされており,目標値 417 万 ha を達成. その解決の方法として提示されているのが,. す る た め に は 19 万 ha の 編入 と 19 万 ha の 担. 住民参加 に よ る 地域 レ ベ ル で の 総合的土地利. い 手集積・条件不利是正対策,7 万 ha の 農地. 用計画・総合的 な 土地利用調整 で あ る.計画. 拡張,耕作放棄農地再活用を必要としている.. づくりの主体は住民であり,「新しいコミュニ. ③ 2003 年 に 農水省は「農地法,農振法の施行. ティー」がその単位となり,より詳細な地区レ. 規制一部改正」で市町村条例に基づく開発計画. ベルでの土地利用コントロールに実効性を持た. であれば,農用地区域からの除外を容易になる. せる仕組みを組み込み,必要な開発も適切に容. 49). よう措置している( 「振興条例計画」 ) .つま. 認できる,新しい農村空間をつくる能動的仕組. り,条例で認められた計画であれば,農用地区. みであり,単なる保全ではないことが強調され. 域からの除外を積極的に認めていこうというも. ている.その制度として注目されている「土地. のである.このことについて農水省は,条例に. 所有者が農林地の保全に積極的に対応できる仕. よって農地転用の場所が集約され,それによっ. 組みの構築」では,市町村と土地所有者,市町. て農振白地農地の保全がしやすくなるとしてい. 村と地域住民との間の合意による農林地保全の. るが,逆に白地農地の転用を誘発する可能性も. 契約・協定を締結し,土地所有者が自発的・積. もっている.. 極的に農林地の保全に取り組める,安定的・継. ⑵ 振興条例計画. 続的な枠組みを導入する市町村土地利用調整条. 地方分権に関して農政サイドは,農地法と農. 例である.個別規制法による農地の保全の限界. 振法において地方分権を受け入れ,転用基準等. を,市町村の土地利用条例とコミュニティーの. の基準を法定化することにより手続的な透明性. 「自治力」に任せることで乗り越えようという. を増すことを主眼とした制度に移行した.しか. のが,研究会報告のポイントであった.. し,その一方で農地制度は規制緩和に追い込ま. この方向性を実現するために検討の場となっ. れた.近年の農政改革の中でも株式会社の農業. たのが,農水省農村振興局の 2002 年における. 参入を積極的に認めようとする立場からの農地. 「農山村地域の新たな土地利用の枠組み構築に. 法改正の主張が強まっているのはその典型であ. 係る有識者懇談会」であり,議論の焦点は,農. る.. 村振興局 が 提示 し た 制度見直 し 案,す な わ ち. 都市計画法改正への農政サイドからの後追い. 「土地利用調整条例に基づく契約的手法が用意. 対応として,2002 年 1 月に農水省による「農. された場合には,農地法・農振法の権利移動統. 山村振興研究会報告」が出されたが,その報告. 制や転用規制に係る諸規定を適用除外する」と. 書の中では, 農山村の 「保全を期待する人」 と 「保. いう考え方をめぐってであった.とりまとめ骨. 全を期待される人」 の間に考え方の相違があり,. 子として「特定地域に許容する開発の内容を明. その調整手段として住民参加による土地利用調. 示した硬直的なゾーニング型の立地規制ではな. 整が必要であるとしている.このような背景に. く,地域特性と開発の態様に応じて規制と誘導.

(16) 88. (440). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 3 号(2007年 9 月). を適切に組み合わせる土地利用調整条例をめざ. さない建築物を許容するものである.それに対. すべきである」 , 「個別法による規制に専ら依存. してこの「振興条例計画」は市町村が条例で位. するのではなく, たとえば市町村と土地所有者,. 置づければ,農用地区域からの除外が容易にな. あるいは市町村と地域住民との間で合意を経た. ることから純農村部の開発を促進しうる可能性. 上で農林地の保全に関する契約・協定を締結す. をもっている.. る」というものである.つまり,市町村条例で エリア区分し,農地所有者等が地区協定を結び. Ⅴ.終わりに─問題点と課題─. それを市町村が認可した場合,協定内の農地に. 1968 年の新都市計画法の創設から 2000 年の. ついては農地法の権利移動,転用規制,農振法. 改正都市計画法までは,都市計画区域の中で市. の開発行為制限等を適用除外とするものであっ. 街化区域内の農地をいかに宅地供給に結びつけ. た50).これは,市町村条例で国の法律の治外法. るかが都市計画サイドの関心であった.しかし,. 権区域を作り,農地を法の適用区域と無法区域. 法改正を境に都市計画サイドの関心は,市街化. に二分するものであり, 国の法律の存在として,. 調整区域,準都市計画区域の地域にシフトして. そのきめの粗さを補完しようとする自治体の土. いるように思われる.その問題点として大きく. 地利用調整条例の試みとは大きく異なる.. 2 点が挙げられる.. その難点が有識者懇談会でも厳しく指摘され. 第 1 に土地制度の問題点が挙げられる.特に. たが,このような議論を経て 2002 年 8 月の「農. 改正内容にある都市計画法第 34 条 8─3(通称:. 山村地域の新たな土地利用の枠組み構築に係る. 「集落地区条例」)は,市街化区域に隣接,近接. 論点整理」がなされた.そこでは市町村条例に. する市街化調整区域において条例で明示的に排. よる土地利用調整を前提に農地法や農振法の個. 除される開発行為以外の開発行為を許可対象に. 別規制法の適用除外地域をつくり,そこに株式. 加えることができる.つまり市街化調整区域に. 会社や都市住民などの多様な参入を許可すると. 本格的に都市計画サイドが侵食することにより. いう方針がそのまま受け入れられることはな. 区域区分を二重にすることともいえる.そのこ. かった51).しかしながら,2003 年に農振法・農. とから市街化区域と市街化調整区域の区分がさ. 地法施行規制が改正され, 「市町村が条例に基. れた後に市街化区域内の土地利用の混在化が生. づき定める地域の農業振興に関する計画におい. じたように,市街化調整区域の集落条例地区に. て,当該計画に係る区域内の農用地等の保全と. おいて同じように将来混在化を生じる可能性を. 効率的な利用を確保するために計画的に農用地. 持っている.. 等以外の用途に供される土地の区域と当該区域. 要するに 2000 年の都市計画法改正は市街化. において設置する施設を定めている場合であっ. 調整区域を対象とした規制緩和である点が問題. て,一定の立地要件を満たす施設の用に供され. で あ る.既存 の 制度 に お い て,市街化調整区. る土地について,農用地区域に含めない土地と. 域における土地利用コントロールが不十分であ. し農地転用許可の例外とする農用地区域の設定. り,その解決が求められたが,今回の制度改正. 基準及 び 農地転用許可基準 の 見直 し を 措置 す. の本質は,「解決の名を借りた規制緩和」であ. る」こととされた.つまり,条例・協定で農用. る.土地利用規制 を 緩和 す る こ と が 自治体 の. 52). 地区域を外すことができるということである .. 土地利用計画の自由度の拡大に繋がり,地域に. 前述 し た 改正都市計画法第 34 条 8─3 の「集. 合ったまちづくりが可能となるという論理であ. 落地区条例」はその趣旨として市街化区域近傍. り,土地利用計画の緩和が企業や地域の経済活. を対象として市街化調整区域の「にじみだし」. 性化に結びつくという理論である.この様な政. の地域を条例で周辺環境の保全上の支障をきた. 策を論理づけているのが,都市計画審議会の「都.

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