地理学習に ESD (持続可能な開発のための教育) を組み込むための方法
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Tex;tbooks f (or Sustainable Development・ A Guide to Embedding を手掛かり に一
A Method for Embedding Education for Sustainable Development into
Geography Learning: Based on the “To:x;tbooks f
(or Sustaznable Deve1opment・ A
G zde fo
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阪 上 弘 彬*
SAKAUE Hiroaki
平成29年告示の小 ・ 中学校およ び平成30年告示の高等学校学習指導要領の前文では, 児童 ・ 生徒が学校教育 を通 じ て持 続可能な社会の創 り 手 と な るこ と が求めら れ, ESD (持続可能な開発のための教育) に対す る一層の取組が必要と さ れる。 本稿の目的は, 2017年 に UNESCO と M GIEP が共同で編集 し , 刊行 し た 『持続可能な開発のための教科書 一組み込みのための指針 (Tex;tbooks f(or Sustainable Development・ A Guide to Embedding) 』 の 1 章 「導入」 およ び 4 章 「地理」 の抄訳
を示 し なが ら , ESD を組み込むための視点 およ び手順 を整理 し , ESD が組み込ま れる こ と によ る地理教育の変化 につい て考察す る こ と で あ る。 単元, 授業 レベ ルに組み込む際のア プロ ーチ と し て, ESD に寄与す る地理的内容 ・ 教授法に基 づ い て学習内容 を選択, ESD の教授原理 ・ 指針に沿 っ て学習課題 を方向付け る 2 つが示 さ れてい た。 地理教育 に組み込 ま れる こ と で, 「人間不在」 や教養主義 と 呼ばれる学習から の転換 だけ で な く , 地理学者のよ う に思考す る こ と や地理的 概念の活用 を よ り 一層強化す る こ と に も つなが る だ ろ う 。
キーワ ー ド : ESD, 教科書, 地理学習, Textbooks f(or Sustainable Development・ A Guide to Embedding
1 . は じ めに 1 ) 学習指導要領と ESD 平成29年告示の小 ・ 中学校およ び平成30年告示の高等 学校学習指導要領 (以下, 新学習指導要領と す る) の前 文 では, 児童 ・ 生徒が学校教育 を通 じ て持続可能 な社会 の創 り 手 と な る こ と が求め ら れた。 持続可能 な社会 を目 指 し てその創 り 手 を育む ESD (Education for Sustainable Development, 持 続可能 な開発 の ための教育) は, 平成 20年およ び平成21年告示の学習指導要領 (以下, 現行学 習指導要領 と す る) から 意識 さ れてお り , そこ ではESD と い う 用 語 その も の に対 す る言及は な か っ た も のの, 本 文 や解説におい て 「持続可能 な社会」 あ るいは 「持続可 能性」 に関す る用語が社会系教科, 理科, 家庭科 を中心 に登場 し た ' )。 現行学習指導要領におけ る ESD への取 り 組みの背景には, ユネ ス コが主導機関と な り 実施 さ れ た 国 連持 続 可 能 な 開 発 の た め の教 育 の 10年 2) (u N- DESD) が関係 し , UNDESD では 「持続可能な開発の原 則 , 価値観, 実践 を教育 と 学習のあ ら ゆる側面に組み込 む」 (佐藤 ・ 阿部監訳, 2006, p.174) こ と が目指 さ れた。 ま た UNDESD 終了後以降のさ ら な る ESD の推進 ・ 拡 大 を日指 し た GAP (The Global Action Programme on Education for Sustainable Development, 持続可能な開発
のための教育 (ESD) に関す る グロ ーバル ・ ア ク シ ョ ン ・
プロ グラ ム) が, 2015年の国連サ ミ ッ ト では 「持続可能
な 開 発 の た め の 2030 ア ジ ェ ン ダ ( Transform ing our
world: the 2030 Agenda for Sustainable Development) 」 が採択 さ れた。 そ こ では2001年の MDGs3) (M illennium * 兵庫教育大学教員養成高度化セ ンタ ー設置準備室 助教 Development Goals, ミ レ ニ ア ム開発目 標) の後継 に当 た り , 17 の 国 際 日 標 で あ る SDGs4) (Sustainable Development Goals, 持 続可能 な 開発日 標) が中核 と な る。 MDGs が発展途上国 を対象に し てい たのに対 し て, SDGs はすべ て の国 を対象 と し て お り , 教育分野で は 「質 の高い教育 を みんなに (Quality Education) 」 と い う 目標が掲げ ら れてい る。 ま た, 17の国際目標の下には16 9 タ ーゲ ッ ト が設定 さ れてお り , ESD への取組は教育分 野に おけ る タ ーゲ ッ ト 4.7 5) の中で示 さ れてい る。 こ のよ う に持続可能 な開発 に対 し て世界 レ ベルでの取 り 組みが求め ら れる中で, 新学習指導要領では ESD あ るいは sDGs と い う 用語が本文やその解説におい て登場 し た。 例え ば, 中学校社会科の学習指導要領解説で は ESD が 社 会 科 の学習 に お い て 重 要 な 位 置 に あ る こ と (文部科学省, 2018, p ie) , 地理的分野の地球的課題の 扱い では 「 グロ ーバル化 す る国際社会におい て, 人類全 体で取 り 組ま なけ ればな ら ない課題, 例え ば, 持続可能 な開発目標 (SDGs) な どに示 さ れた課題のう ち か ら , 生徒が地理的 な事象 と し て捉えやすい (中略) 課題 を取 り 上げるこ と」 (文部科学省, 2018, p 47) が示 さ れた。 「ESD の最大の魅力は 『持続可能性』 と い う 考え そ のも のにある」 (唐木, 2017, p.195) と指摘 さ れるよ う に, ESD 最大の特徴は SD あ るいは持続可能性 と い う 概 念で あ り , 教科学習におい ては SD の原則 , 価値観 を踏 ま え た ESD の授業づ く り が求め ら れる。 その一方で , SD の 「 こ の概念の難解 さ ・ 曖昧 さ が ESD の普及 を妨げ てい る部分が大 き い」 (桑原, 2011) と の指摘 も あ る。 平成30年 7 月11 日受理
こ の点 か ら も持 続可能 な社会の形成 の た めには, SD の 考え方 も含めて ESD を どのよ う に教科 (学習) に取り 入 れるべ き かと い う 課題が指摘 で き る。 2 ) 本稿の目的 冒頭 で述べ た よ う に, ESD はユ ネ ス コ が主導機関 と なり 普及 ・ 推進が進めら れてき た。 その中で, 2017年に UNESCO and MGIEP (Mahatma Gandhi Institute of Education for Peace and Sustainable Development) が執 筆 ・ 編集 し た 『持続可能 な開発のための教科書 一 組み込 みのための指針 (Tex:tbooks for Sustainable Development・ A Guide to Embedding) 』 (以下, 『SD の教科書』 と す る) が公刊 さ れた。
「本書の目的は, ESD を一体化す る教科書 を作成す る た めに , 教科書 の執筆者 お よ び出版社 を支援 す る」
(UNESCO and MGIEP, 2017, p l 3 ; 以下断 り がない限
り ペ ー ジのみの表記は UNESCO and M GIEP のべ一 ジ を指す) も ので あ る。 そ れゆえ に, 『SD の教科書』 では 教科 (学習) の中に どのよ う に ESD を組み込むか と い う 手順 が端的 に整理 , 説明 さ れてい る。 そ こ で本稿は 『sD の教科書』 の 1 章 「導入」 およ び 4 章 「地理」 の 抄訳 を示 し な が ら , ESD を組み込む ための視点 や手順 を 整理す る と と も に, ESD が組み込ま れる こ と に よ る 地理教育の変化につい て考察す る こ と を目的 と す る。 2 . 『持続可能な開発のための教科書』 の概要 1 ) 章構成およ び執筆陣の特徴 「前書 き」 およ び作成過程 を述べた 「責任者の挨拶」 を除 く と , 『sD の教科書』 は ESD 全体の動向およ び取 組の フ レ ー ムワ ー ク が示 さ れた 「 導入」 , 4 つの教科の 事 例 ( 数 学 (Mathematics) , 科 学 (Science) , 地 理 (Geography) , 言語 (Language) ) の 2 つの部分から 構成 さ れてい る。 なお教科の事例 と し て こ の 4 教科が選択 さ れた理由 は, 「 地理」 を 除 く 3 教科 に つ い てはナ シ ョ ナ ル ・ カ リ キ ュ ラ ム (学習指導要領) におい て通常 コ ア と な る必修教科で あ る こ と , 「 地理」 に関 し ては ESD に役 に立つ教科であ り , かつ他教科に対 し て役に立つであ ろ う 組み込 みに つい ての豊かな見識 を提供 し てい る ためで ある (pl 3) 。 本稿で抄訳を示す 1 章 「導入」 およ び 4 章 「 地理」 の章構成は, 表 1 に示す と お り であ る。 ユネ ス コ によ る特定の教育課題の推進に向け た教科書 や教師等に対す る指導書づ く り は, 戦後ユネ ス コが設立 さ れて以来取 り 組ま れて き た活動 であ る。 例え ば, 社会 科教育学 ( 地理教育論) におい ては, ユネ ス コ と IGU- CGE ( International Geographical Union - Commission on Geographical Education, 国際地理学連合 ・ 地理教育委員 会) が連携 し , 地理教育におけ る国際理解 (教育) の推 進 を目的 と し た教師向け指導書が出版 さ れてい る (志村, 2014) 。 ま たユネ ス コは ド イ ツ の教科書研究機関で あ る Georg Ecker Institut と と も に, 長期 にわた っ て教科書改 訂に関する合同委員会を務めており , 教科書の質的向上 を連携の柱 に おい てい る (p 3) 。 ユ ネ ス コ が M GIEP と 表 1 1 章お よ び 4 章の章構成 一 性 襲 理 献 か の 例 て 貢 の 達 学 方 事 の い 授 育 し か 調 ル 教 の
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で あ る Jorg-Robert Schreiber 氏 (Engagement Global) , 同 じ く ESD ア ド バ イ ザ ー で あ る Hannes E. Siege 氏 (Engagement Global) が そ の 3 名 で あ る 。 と り わ け Schreiber 氏 と Siege 氏は, 2016年 に ド イ ツ におい て刊行
さ れた 『学習 領 域 グロ ーバ ル開発 の た めの フ レ ー ムワ ー
ク ー ESD の枠 組 み に お い て ( 0 rientierungsr,ahmen f iir
den em erezc G oba e n zc m g・ zm a men ezner z m g r nac a fzge n zc ung) 』 の 編 集 ・ 執 筆 に
education for sustainable development が 『SD の教科書』
に お い て も 引用 さ れて い る。 ま た ド イ ツ の ESD が環境
教育の影響 を大き く 受け る中で, グロ ーバル学習 を基盤 に ESD を推進す る 2 人が担当 し てい る点は興味深い。 加え て , UNDESD の ド イ ツ国内委員 会代表 を務 めた
Gerhart de Haan 氏 (Freie Universitat Berlin) をは じ め,
ドイ ツ人研究者の文献が多 々引用 さ れてお り , ドイ ツ色 が色濃 く 出 た文書であ る と 捉え る こ と がで き る。 2 ) 作成意図 『SD の教科書』 の タ イ ト ルにあ る 「教科書」 は 2 つ の側面 から捉え る こ と がで き , 本書の作成意図は 2 点あ る と 考え ら れる。 1 つ目は SD を “教 え る” た めの 「 教科書」 を どのよ う に作成す るか と い う 点 で あ る。 「本書の目的は, ESD を一体化す る教科書 を作成す るために, 教科書の執筆者 お よ び出版社 を支援す る こ と」 (p.13) と あ る よ う に, 教科書の作成 ・ 支援のための ツ ールと い う 性格 を も つ。 そのために, 章 「 地理」 で は, 教科の本質 と その SD へ の貢献 , ESD を教科書に組み込む ための理論, モ デル そ し て事例 と い う 順序 でその方法が示 さ れてい る。 2 つ日 の点は, SD を “達成す る” ための 「教科書」 を示 す と い う も ので あ る。 「 こ う (執筆者 と 出版社 を支 援 : 筆者注) す る こ と よ り , 学習 を重要で効率的な も の に し てい る。 こ れはま た, 2015年 に193の国連加盟国が 承認 し た持続可能 な開発のための2030ア ジェ ン ダの実施 に対 し て も 貢 献 し て い る 。 こ の ア ジ ェ ン ダの コ ア は SDGs であ る」 (p.13) と あ るよ う に, 教育 と い う 手段 を 通 じ て SD を達成す る方略 を示 し た手引書で ある と 解釈 で き る。 要約す れば, ①教科書の改善 を通 じ た ESD 実践の推 進, ②教育改善 を通 じ た SD の達成, が 『SD の教科書』 の作成意図 で あ る と 筆者は受 け 止め てい る。 3 . ESD の組み込みが意図す るこ と 1 ) ESD と 教科と の関係 i 組み込みが意図す る こ と 『SD の教科書』 では ESD を教科書の中に, 言い換え れば, 教科 (学習) に組み込むこ と を意図 し て作成 さ れ てい る。 図 1 は教科 と ESD と の関係性 につい て示 し た も のであ る。 ESD は 「 独立教科 と し て で は な く , カ リ キ ュ ラ ム全 体に組み込ま れるべき である (UNESCO, 2006, p.17)」 と い う 国際的 な共通認識 (p.17) を も と に, 教科への ESD の組 み込 みは考 え ら れな け れば な ら な い 。 で は , ESD は どの よ う に 組み込 ま れるべ き だ と 考 え ら れて い る のか 6)。 『SD の教科書』 では, SD の課題への対 応 を 示 し た ス テ イ ー ブ ン ・ ス タ ー リ ン グ (Stephen Sterling) のモ デル (表 2 ) がこ の問題 を考え る際に役に立つ と 提 示 し てい る (p.18) 。 「本書では, 『組み込み』 と い う 用語 を, ESD を 『機 能 の追加 (add on) 』 と し て で は な く , カ リ キ ュ ラ ムや 独立教科としてのESD 教科積断としてのESD / ESD(弱い構造) 図 1 ESD の弱い構造と 強い構造の比較
出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pl7) を筆者邦訳
公教育のその他の側面の統合的要素 と し て入 れる こ と と い う 意味 で使用 し てい る」 (p.17) 。 ま た表 2 から , 一口 に ESD を教科へ組み込む と い っ て も , 行動 し ない (no action) を除き , ESD の機能 を加え る追加 (adding on) , 既存 の枠 組みの中に ESD を統合す る 組み込 み (embed- ding) , ESD に よ っ て既存 の枠組みの抜本的 な組み換え をす る注入 (infusion) , の 3 段階あ る こ と がわかる。 表 2 SD の課題に対 する 4 つの対応およ び付随する ESD の主流化のための方略 まかし 一
0
(b ) 部 ●l 「 の部分」 のカ リ キュ ラムや教青 プロ グラ ムへの道加 (c ) I 我々が実l l している こ と 全てに総合する こ と の● l 性 いる ことの●a の算出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pl8) を筆者邦訳
『SD の教科書』 では, 「社会に深 く 統合 さ れ, 目立た ず, 内在的 な価値志向 と 社会的規範と な るよ う に, あ ら ゆる教育 を通 じ て SD が浸透す る 『注入』 段階が究極の 目標」 (p.18) と 示 さ れてい るよ う に, 「注入」 段階に至 る こ と が最 も 望 ま し い在 り 方 で あ る。 し か し な が ら , 「注入」 に当 た っ ては, 教科書だけ で な く , 教育政策や カ リ キ ュ ラ ム, 教師教育等 を含 めた 「 ホ ールス ク ールア プロ ーチ」 での取 り 組みが必要で あ る (p.18) 。 短期間 で の抜本的 な改革は現実的 で は な い こ と か ら , 本書 は 「 注入」 の前段階で あ る 「 組み込み」 の考え方 を採用 し てい る と 考え ら れる。 現時点 では , 教科書 を含 め既存 の枠組みの中に ESD を い かに統合 さ せ る かが焦点 と な る。 そ の際に , SD あ の概念や原則 , ESD の目標, 学習内容や教授法 を組み 込むかが重要にな るが, こ の点は次節以降で提示す る。
ii ESD を教科へ組み込むこ と によ る影響 組 み込 み と は, 「 な か な か解決せず, 新 た に発生す る 身近で地球規模の課題に対処す る ための動機, 備え, 力 があ る若者 と と も に, 持続可能で, 公正で平和 な世界に 向け て貢献す る と い う 社会的 で地球規模の重要な目的 に 適う よ う に教科 を新たな方向に向け させるこ と」 (p.19) を指 し ており , 簡潔に言えば, SD の達成に向け た教科 の変 革 を 促 す も の で あ る 。 そ の な か で , 組 み込 みは SDGs の領域お よ び教科の両方におけ る学習成果に貢献 し ており , その内容は以下であ る (p.19) 。 UNESCO (2004) によ っ て定義 さ れた①学習者の認 知的発達の促進, ②市民的資質に必要な技能, 知識, 価 値 観 お よ び態 度 の育 成 と い う 教 育 の質 の保 証 (SDGs の側面) 試験志向の制度下での伝統的 な学習から の転換に伴 い教科の知識やスキルの獲得 と 同時 に社会の持続可 能 な変革へ貢献す る方法 を学ぶこ と がで き る こ と ( 教科の側面) ま た 『sD の教科書』 では, 教育者が公教育に ESD を 組み込みこ むこ と を検討すべき理由が少 な く と も 2 点あ る と 述べ ら れてい る。 1 点目が, 多 く の国で主要教科の 指導 に おけ る探究重視の カ リ キ ュ ラ ムへ と 移行す る機運 が高ま っ ており , 教科中心で試験志向の制度 をその内側 から変革で き る ため (pp.19-20) , も う 1 点が, PISA を は じ め と す る コ ン ビ テ ン シ ー を 評価す る需要が高 ま る 中 で, 複雑化 さ を増す世界 を方向づけ, 創造的で責任 を も っ て こ れに 関わ る こ と が で き る 具体的 な コ ン ビ テ ン シ ー を 育成す る機会 を提供 で き る ためで あ る (p 20) 。 伝統的 な教科中心で試験志向の制度から の転換, コ ンビテ ンシー の育成は現代の教育事情あ るいは改革の流れの中で教科 での取組が求め ら れてい る も のであ り , こ の 2 つは密接 に関係す る内容 で も あ る。 こ の よ う に, ESD が教科への組み込 ま れる こ と の影 響は, SDGs と 教科の本質的 な目的の保証 と い う 点 に と どま ら ず, 現代的 な教育改革に対応 し て, 教科の在り 方 に変容 を も た ら す と い う 点 に も 及 んでい る こ と がわかる。 2 ) SD と は どのよ う な概念か SD に関す る定義は多様に存在 し てい る。 そのなかで, 『SD の教科書』 をは じ め, ユネ ス コ が刊行 し た ESD に 関す る文献では 「 将来の世代のニ ーズ を満 たす能力 を損 な う こ と な く , 現在の世代のニ ーズ を満たす開発」 と い う ブルン ト ラ ン ト 委員会が1987年に提出 し た 『 ブルン ト ラ ン ト 報告 (The Brundtland Report) 』 が用 い ら れて お
り , ま た こ の定義は広 く 認知 さ れてい る も ので あ る 7)。 「開発」 は経済成長 と の関連付け ら れてい る用語 であ る (p.16) 。 一方で, 『 ブルン ト ラ ン ト 報告』 は環境や開 発 に かかわ る問題は密接 に結 びつい てい る ため, 環境か 開発の どち ら か一方のみで議論す る こ と は も はや意味が ない と い う こ と を も た ら し た点 で重要 で あ る (阿部, 2010) と みな さ れてい る。 そ れゆえ に SD と い う 概念は, 生活の質 の向上およ び人権 と い っ た普遍的 な価値の追求 におい て, 環境, 経済, 社会間のバラ ンスが保たれた開 発 を 考 え る た め のパ ラ ダイ ムで あ る 8) (p.16) 。 図 2 は SD を捉え る際の 3 側面 (環境, 経済, 社会) を図示 し た も ので あ る 9)。 環境 図 2 SD の典型的な側面
出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pl6) を筆者邦訳
加 え て , SD はあ る目標に向 かう プロ セ ス と し て も 捉 え ら れて お り , 良い 政治 (good governance) の意識 の 高 ま り と と も に, 環境, 経済, 社会の 3 側面に加え て, 政治 の側面が追加 さ れる (p.16) 。 図 3 は, 4 側面から SD を捉 え た も ので あ る。 図 3 SD の側面と主な目標
出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pl6) を筆者邦訳
SD あ る いは持 続可能 な 社会が 4 側面 の均 衡 ( バ ラ ン ス) が取 れた状態 だ と す れば, SD の諸問題あ るいは持 続可能ではない社会の根本は, 4 側面間の不均衡, 言い 換え れば, 4 側面に関連す る ス テ ー ク ホル ダー (利害関 係者) 間での利害 ・ 主張の対立があ るこ と が指摘で き る。 こ のよ う に SD は, 3 側面 あ る いは 4 側面 から , 現代 あ るいは将来社会, SD の諸問題の構造 ・ 原因 を捉え る ための フ レ ー ムワ ー ク で あ る と 考え ら れ, と り わけ 4 側 面 で は , ス テ ー ク ホ ル ダーの行動 や振 る舞 い , そ れ を支 え る価値観に焦点が当 て ら れてい る。 3 ) ESD の教授法的方略 『sD の教科書』 では 「ESD の教授法は, 教育実践の 基 本 と し て の 思 考 , 価 値 観 と 行 動 を 優先 し て い る (Reid, 2002) 」 (p 26) と 述べ ら れ, 思考, 価値観, 行 動の 3 つに対応 し て 『SD の教科書』 では, そ れにかか
わる以下の方略が提示 さ れてい る (pp 27-29) 。
① 認 知 ス キ ル と し て の 批 判 的 探 究 と シ ス テ ム思 考
(critical inquiry and systems thinking)
②感情や態度等に関 し て視点 を取 り 込 んだり , 変化 さ せ た り す る こ と (perspective taking and changing
perspectives) ③ 行 動 に 関 す る 現 実 世界 と の つ な が り (real-world connections) ①の批判的探究は 「既存の前提 を調べ, 知識の脱構築, 再構築, 構築 を行う プロ セス」 (p 27) のこ と であり , シス テ ム思考は 「問題 を個々に考察す る よ り も よ り 効果 的 な問題解決のア プロ ーチ」 (p 28) を意味 し てい る。 と り わけ批判的探究 では, 「全体的 な視野から 緊張 と 葛 藤 を分析 し , 相互関係にあ る環境, 経済, 社会と 政治的 側面 を考慮 に入 れるこ と で, 学習者の批判的で体系的思 考能力 を育む」 (p 28) こ と がで き る。 ②は環境, 経済, 社会 と 政治 に関連す る ス テ ー ク ホル ダー の価値観に気付 い たり , 疑問 を も っ たり す る こ と を指 し , ③は学習が教 室あ るいは教科学習の中で完結す るのではな く , 課外学 習 や学校外 の ス テ ー ク ホル ダー と の連携 (p 29) と い っ た, 教科学習 と 社会 と のつ ながり が意識 さ れた も のであ る 。 4 . な ぜ地理 で ESD を扱 う のか 前章 ま での検討 を踏まえ て, 本章お よ び次章 では地理 に焦点 を当 て, ESD を組み込む意義につい て検討す る。 1 ) SD に対す る地理学的貢献 と は どのよ う な こ と か 地理教育の基盤の一 つで あ る 地理学 におい て も SD は 重要な課題 で あ る と みな さ れてい る。 図 4 は SD に対す る地理学の貢献 を, 図 5 は地理学が世界 を捉え る 3 つの ス テ ッ プ を示 し た も の で あ る。
一
変 化一
図 4 SD 貢献に対する地理学の特徴出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pie9) を筆者邦訳 ・
-部加筆 注 : 図中の斜字は地理的概念 を示 し てい る。 SD に対す る地理学の貢献点は, 以下の 3 点が示 さ れ ている (p ie9) 。 ① さ ま ざま な空間 スケ ールでの社会 と 自然環境 と の相 互作用およ び相互依存 に注目す る こ と に よ る人文 と 自然地理の結合, それゆえ に SD 固有のホ リ ス テ イ ツ ク な ア プロ ーチ を有 し てい る点 SDへの買献 図 5 空間的変動性への補完的ア プロ 一 チ 一 記述的地理 か ら プロ セ スの地理への移行出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pie8) を筆者邦訳
②場所の記述, 空間パ タ ー ンの分析, 当事者 (actor) が形成す る空間 プロ セ スの研究 を結合す る こ と で あ り , 持続可能性に関す る問題 をよ り 良 く 理解す るた めに世界 を 「読む」, SD に向け て空間 を形成す る選 択肢 を提案するう え で世界を 「書 く 」 と いう 方法で な さ れてい る点 , ③ ( 例 え ば, 多 様 な 空間 ス ケ ー ルで み る と い っ た) SD の ために で き る具体的 な貢献 を強調す る 地理に 適応可能 な コ ア要素 に着目 し てい る点 ①に関 し ては, 現代社会や SD の問題の構造的 ・ 全体 ( シス テ ム) 的 な把握, ② に関 し てはそ の地理的事象 に 関連す る当事者の価値観や利害関係の把握, ③場所, 空 間, ス ケ ール, 環境 と い っ た地理的概念'°) を学習 で駆 使す る こ と であり , それによ り 「個人や集団の行動の持 続 (不) 可能性 をよ り よ く 理解 し , 日々の生活におけ る 身近な地域から 地球規模での社会, 環境, 政治的変化の 空間的関連性を解釈す るこ と ができ る」 (p ie9) 。 2 ) ESD に対す る地理教育の貢献 地理教育は どのよ う な地理的内 容が, そ し て どのよ う な教授法で実践 さ れる か次第で , ESD に対 し て中心的 な貢献 を果たす可能性があ る'') (p i le) 。 では, どのよ う な学習内容, そ し て教授法によ っ て学習 を設計す る こ と が望 ま し い と 考え ら れてい るのか。 ESD に と っ て望 ま し い 地理的内 容 と は, 「自然 シス テ ムと 人間の シス テ ムの相互関係 に焦点 を当 て た も ので あ り , (当事者の役割 を含む) 空間的変動性の さ ま ざま な 側面に着目 し, 主要な地理的概念を中心と し た空間的知 識 を一 つ にま と め る こ と で あ る」 (p i le) 。 こ のよ う に 地理学が SD に貢献で き る と し て示 さ れた点が, 学習内 容 と し て反映 さ れてい る。 ま た望 ま し い地理教授法 と し て以下の 3 点が提示 さ れ ている (p i l l ) 。 ①調査の中心的役割 ②地理学者のよ う に考え る学習 ③人々自身の経験を基礎と するこ と (学習者主体)
ESD に望 ま し い と さ れてい る点に関 し て, ①は フ ィ ー ル ド ワ ー ク (野外調査) のこ と であ り , 自身 で知識 を探 究す る方法 を信頼す る こ と , フ ィ ール ド に出 る こ と で身 近 な問題 と の関連 を作 る点 や ESD に対す る当事者意識 と 責任感に寄与 で き る点 (pp.111-112) , ②は複雑な間題 を構造 ( シス テ ム) 的にみる こ と で, 対立す る利害関係 (者) 間で調整がで き る可能性が開け る点 , 地理的 に行 動す るこ と (acting geographically) の内容を検討す るこ と がで き る点 (p i t2) , そ し て③は, 身近で 起こ っ てい る問題 と 地球規模 の問題 と のつ な が り が見 い だせ る点 (p i t2) であり , ま たこ の点は地球規模で考え , 身近な と こ ろで行動す る (think globally, act locally) と い う 考
え に と っ て重要 な も ので あ る。 表 3 は, ESD に対 し て 地理教育 が貢献 で き る点 を整 理 し た も ので あ る。 表 3 ESD に貢献で き る地理教育の特徴 通教科的だが地理的視点がある も の 地理固有の もの 地理学 者のよ う に思 考す る 方法 ・ 問いを立て、 重要な問題を特定す る、 その結果、 現状 を疑 う ・ 違 っ た、 多様 な視点か ら 物事 をみ る ・ 身近な経験 を地球規模の現象 と 関 連付け る ・ 詳 し い見解 を立て、 態度 を明確に す る ・ 将来の意見 を想像す る、 予想外の 結果や計画 し た行動の結果を考察 す る ・ 個人、 集団、 政治 レベルで行動 を 起こ す ・ 場所性の研究と 説明 ( なぜそれが そ こ に あるのか) ・ 空間にお け るパ タ ー ン と プ ロ セ ス の可視化 ・ 人間 と 自然が相互関連す る シス テ ム と し ての多様な空間の考察 ・ 当事者と その空間への影響、 並び に私的、 社会的、 政治的な場所の 特徴 (価値の影響) の特定 ・ 多様な ス ケールで問題や各々の ス ケ ールでの人々 と 環境 と のかかわ り への着目 方法論 的技能 最新の知識 を獲得す る : ・ 情報収集と 構造化 ・ (矛盾す る情報で さ え も ) 処理、 解釈、 評価 ・ 一般化 ・ (続計) データ の表現 ・ フ ィ ール ド に出て、 探究す る ・ 間題が起 こ っ た文脈の影響 を考慮 し なが ら 、 多次元の環境や社会問 題 を視覚化 し た地図、 空間的モ デ ル、 他の図 を用いた表現を読んだ り 、 作成 し た り す る
出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pi t3) を筆者邦訳
5 . 学習 レベルでESD を ど のよ う に組 み込 むの か 1 ) 学習単元 ・ 授業 レベルにおけ る ESD の組み込み 『sD の教科書』 は, 事実的知識に重点 を置 く 国も あ れば, コ ン ビ テ ン シ ーに重点 を置 く 国 も あ る と 述べ , ESD と の関連か ら 地理的内容 を扱 う お よ び ESD の教授 原理 ・ 指針に沿 っ て地理の学習課題 を方向付け る 2 つの ア プ ロ ー チ を 提 示 し て い る (p i t5) 。 し か し な が ら 「ESD のための地理教育の可能性 を最大化 さ せ る ために も , 両者の ア プロ ーチは相互に関連付け ら れて考え ら れ なけ ればな ら ない」 (p i t 5) と あ る よ う に, 両者は補完 関係にあり , 2 つのア プロ ーチ を組み合わせた学習単元 ・ 授業 の設計がで き て初めて, 本書が意図す る ESD が組 み込 ま れた こ と に な る。 2 つ の ア プ ロ ー チ で は , ス パ イ ダ ー ウ エ ブ (spider- webs) が用 い ら れ る ( 図 6 ) 。 ス パ イ ダ ー ウ ェ ブ と は 「 地理教科書に ESD を組み込みたい と 考え る教科書執筆 者のためにその方向性 を提供す る」 (p i t5) も のであ る。 こ の スパイ ダー ウ ェ ブ を用 い る こ と で , 使用 さ れた地理 的内容の種類およ び教授法全体を把握するのに役立ち, 内容あ るいは教授法が抜け落ち ない よ う に, ま た補完で き る よ う に な っ てい る (p i t 6) 。 学習内容 を扱 う ア プロ ーチ のスパイ ダー ウ ェ ブ 1 の各 項目は, 表 3 に基づい て設定 さ れてい る。 地理の学習課 題 を扱 う ア プロ ーチ におけ る スパイ ダー ウ ェ ブ 2 の各項 目は, ESD の教授原理 ・ 指針に沿 っ て設定 さ れてい る。 地理的パターン とプロセス 身 までの ケール 場所性と位置
「Ra
0 全くに入れない、
1 わずかに入れる 2 部分的に入れる 3 考度に入れる 4 十分にいれる 4 空間における人間一白然 境の相互関係 者(空間における視点 間題、転換) スパイダー ウエブ1 : ESDのための地理的内容の選択方法 環境と共同体との結びつきやそれに 対する◆任感をもつための機会を開く 参画と行動のため 価値を明確にさせ、 実行可能な実 9 をする それ‘:,に関して熟考を促す ヵ;
二 , 2 4 、 観 向上させる をさせる 創造力 を も っ て学習者 ステムとその動態を に将来に向かわせ る 学習者に理解させる 知識の獲得 を促進する スパイダーウェブ2 : ESDの教授原理を活用した地理の学習課題の作成方法 図 6 スパイ ダー ウ ェ ブ出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pi t8, 124) を筆者邦訳 ・
再構成 2 ) ESD の考え に沿 っ た思考 ツール 学習者が主体 と な り 学習が展開 さ れる ESD におい て, 学習者が自 ら SD につい て考え る こ と ので き る思考 ツ ー ルは学習 に欠かせない も ので あ る。 地理の学習課題 を方 向付 け る ア プロ ーチ にお い ては, ESD の教授原理 ・ 指 針 を踏ま え た思考 ツ ールと し て以下 の 3 つが提示 さ れて いる (図 7 ) 。 ①持続可能性の コ ンパス (sustainability compass) ②氷山モ デル (iceberg model) ③ ピ ラ ミ ッ ド モ デル (pyramid model) こ れ ら は 地理 を含 め た通教 科的 な思考 ツ ー ルで あ り (p.130) , ESD の一領域で あ る開発教育等 におい て も 用 い ら れて き た も ので あ る'2)。 3 つの ツ ールは表 4 に整理 し たよ う に, ESD の教授法的方略で示 し た思考, 価値 観, 行動 にそ れぞれ対応 し た も のに な っ てい る こ と がわ か る。 地理学習 と の関係 では, ① と ②は人間 環境関係 を シス テ ムと し て捉え , その背後にあ る価値観や利害の 対立 を考察 さ せ る学習 におい て, ③は学習者に SD の問 題 を空間スケ ールを変化 さ せて捉え させ る中で, 各スケー ルで と るべ き望 ま し い, かつ実行 で き る解決策 を提案 さ せ た り , あ るいは実際に行動 さ せた り す る学習 にお い て 活用で き る と 考え らえ る。
表 4 3 つの思考 ツ ールの概要 と 教授原理 持続可能性の コ ンパス 氷山モ デル ピ ラ ミ ッ ド モ デル 検討の対象 持続可能性の問題 根本的な原因 学習 と 行動 思 考 ツ ー ル の概要 自然、 経済、 社会、 そ し て (個人の) 幸福の 4 つの ラ ベルが置かれて お り 、 活用者が特定 の ト ピ ッ ク を取 り 巻 く 持続可能性の問題に関 す る完全な見通 し が も て る よ う に、 持続可能 性の多様な側面 を統合で き る よ う に支援す る ツールで あ る , 教育者や学習者がよ り 良い シ ス テムの思考者に な り 、 彼 らのまわ り の人間 と 自然 シ ス テ ムの相互関係 を よ り 良 く 理解 し たと きに、 変化する と こ ろがわかる能力によ つ て 、 こ れ ら の シ ス テ ム を 持続可能性の拡大へ と 導 く こ と がで き る , 氷山モ デルは、 あ る出来事 と それに付随 し 推 進す る価値観の根本的 な原因 を検討す る方法 で ある , 氷山の先端に出来事 を置 く こ と で、 水面下にある出来事の原因と な った行動パタ ー ン を特定す る こ と がで き る , そ こ か ら 、 こ れ ら の行動パタ ー ン を促 し た体系的な構造 を よ り 理解す るために下層部へ移る こ と がで き る , 最後に 、 出来事の基礎で あ る 社会の精神モ テルにた ど り 着 く , 精神 レベルにおけ る介入 が最 も 影響力があ る と い う 考えのモ デルで あ る , ピ ラ ミ ッ ド モ デルは、 持続可能性の問題に対 する解決策を検討す る方法で ある , ピラ ミ ッ ドの底か ら出発 し 、 何が起 こ っ て い るのか、 なぜ それが起 こ っ て い る のか、 我々がで き る こ と 、 そ し て どの よ う に で き るのかに着目す る モ デルで あ る , ESD の 教 授 原 理 と の 関 係性 こ の ツ ールは シス テ ム を 扱 う も の で あ り 、 個 人 と 3 側面に着目 し た幅広い文脈 と の関連 を つ く り な が ら 、 人間一環境の相互関 係 と い う 中核的な地理的概念に取 り 組む方法の 1 つで ある , そ う する と き、 対立する利害が出現す る可能性があるので、 批判的思考が促進す る , シス テムの構成要素が変化 し た と 仮定 し て、 それに よ っ て 考 え ら れ る シナ リ オ を 考 え る 必 要がある と い う 課題が学習者に追加 さ れた と す る と 、 創造力 を も っ て将来に立 ち向か う と い う 考 え も ま た発揮 さ れ る , 最終的に 、 知 識獲得 と い う 本質にむけて 、 学習者が取 り 入 れ る こ と がで き る方法 と し て コ ンパスが考え ら れ う る , こ の ツールは価値に関す る省察、 批判的思考 だ けで な く 、 シス テ ムに扱 う こ と に も 対処す る もので ある , 根底にある推進力を示す際に、 問題の根本に着目 し た創造的な代替案 を作 り 出すか も し れな い , シス テムの構成要素が変 化 し た と 仮定 し て 、 それに よ っ て 考 え ら れ る シナ リ オ を考え なければな ら な い と い う 課題 が学習者に追加さ れた と する と 、 創造力を も つ て将来に立ち向か う と い う 考えが発揮 さ れる , 世界の さ ら な る学習 / 探索のために モ テ ルが 使われ る こ と があれば、 知識獲得 と い う 本質 にむけて再度貢献で き る , こ の ツールは、 地球規模の問題 と 身近な行動 と のつなが り を支援 し なが ら 、 創造力 を も つ て将来に立 ち向か う こ と お よ び参画に取 り 組 む と い う 考 え を も っ た も ので あ る , ま た こ の ツ ールで は、 批判的思考、 シ ス テ ム を扱 う こ と 、 価値に関す る省察 を活用す る こ と で、 現 状 を よ く 理解す る こ と が求めて いる , 再度、 こ のよ う に活用 さ れる こ と で、 知識獲得へ貢 献す る こ と がで き る ,
出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pl30-133) から筆者作成
/ 1 .出来事、 2 行動' t ターン 3 会体a 4 精 モデル
A
てみよ 4 我_々lまどのよう に できるの 3.我々は何 ができるの 2 なぜ起こっているの 1 何が起こ っているの 持続可能性のコンパス 氷山モデル ピラミッドモデル 図 7 ESD の考え にう つた 3 つの思考 ツ ール 出典 : UNESCO and MGIEP (2017, pi t8, 124) を筆者邦訳一部修正 6 . お わ り に すで に多 く の文献 におい て地理教育が ESD に貢献で き る と い う 指摘 が な さ れてい る'3)。 そ の な か で 『s D の 教科書』 は ESD 実践の理論的背景か ら単元 ・ 授業 レベ ルに おけ る組 み込 みの た めの手順 を示 し てい る点 で , 意 義のあ る文献 で あ る。 ESD を教科に組み込 むこ と で , 教科 (学習) の在 り 方 に も少 な か ら ず変化 が も た ら さ れる と 考え ら れる。 こ こ では ESD が組み込 ま れる こ と に よ る地理教育の変化 に つい て若干 の考察 をす る。 『SD の教科書』 におい て も示 さ れてい た よ う に地理 (学習) の特徴は, 人間 と 自 然 (人文 と 自然地理) の相互関係, 地理的事象 を記述, 事象のパ タ ー ンや事象が存在す る背景にい る当事者に着 日 し , 分析で き る こ と は, 地理教育が ESD に貢献で き る点 で あ る。 に も かかわら ず, 日本の地理教育 を取 り 巻 く 状況に関 し て, 地理的事象の成立背景にあ る人間の行 動 やそ れを支え る価値観が学習 におい て捨像 さ れやす い (児玉, 1989 ; 伊藤, 1998) と い う 課題が指摘 さ れてい
る'
4)。 ESD が学習 に組み込ま れる と , 多様 な人々の行動 やその価値観に焦点 を当 て, 学習が展開 さ れなけ ればな ら ない し , 場所 につい て知 る だけ で な く , 法則性 を追求 し たり , 事象が成立す る背景にい る人間の行動やその価 値観 を分析 し たり す る過程が必然的に設定 さ れる。 ESD が地理教育 に組み込ま れる こ と で, 「人間不在」 あ る い は教養主義 と 呼ばれる学習か ら の転換 だけ で な く , 地理 学者のよ う に思考す る こ と や地理的概念の活用 を よ り 一 層強化す る こ と に も つ なが る だ ろ う 。 注 1 ) 濱野 (2011) は小学校, 中学校, 高等学校と 段階 を 経 るにつれて用語の記載箇所が増加 し てい る と 述べ, こ の背景 には 「生徒の発達段階が上が る に つ れて, よ り多岐 にわた る場面で, よ り 高次元での指導が求 め ら れてい る た め」 で あ る と い う 見解 を示 し た。 2 ) UNDESD は2005から2014年まで実施 さ れた。 3 ) M DGs と は開発分野におけ る国際社会共通の目標で あ る。 M DGs では 「目標 1 : 極度の貧困 と 飢餓の撲 減, 目標 2 : 初等教育の完全普及の達成, 目標 3 : ジェ ン ダ一平等推進 と 女性の地位向上, 日標 4 : 乳 幼児死亡率の削 減, 日標 5 : 妊産婦の健康の改善, 目標 6 : HIv / エ イ ズ, マ ラ リ ア, その他の疾病の 蔓延の防止, 目標 7 : 環境の持続可能性確保, 目標 8 : 開発 の た めの グロ ーバ ル な パ ー ト ナ ー シ ッ プ の 推進」 の 8 日 標が掲げ ら れた。 「 ミ レ ニ ア ム開発目標」 http://www.mofa.go.jp/mofaj /gaiko/oda/doukou/mdgs.htm1 (2018年 5 月19 日閲覧) 4 ) 17の国際目標は 「目標 1 : 貧困 をな く そう , 目標 2 : 飢餓 を ゼロ に, 日標 3 : すべ ての人に保健 と福祉 を, 日 標 4 : 質 の高い教育 を みんな に, 日 標 5 : ジ ェ ンダ一平等 を実現 し よ う , 目標 6 : 安全な水と ト イ レ を 世界中 に , 目標 7 : エ ネ ルギ ー を みんな に, そ し て ク リ ー ンに, 目標 8 : 働き がい も 経済成長 も , 目 標 9 : 産業 と技術革新の基盤をつ く ろ う , 目標10 : 人や国の不平等 を な く そう , 目標11 : 住み続け ら れ るま ちづ く り を, 目標12 : つ く る責任つかう 責任, 目標13 : 気候変動に具体的な対策を, 目標14 : 海の 豊か さ を守 ろ う , 目標15 : 陸の豊かさ も守 ろ う , 目 標16 : 平和 と公正 をすべての人に, 目標17 : パー ト ナ ー シ ッ プで目標 を達成 し よ う 」 で あ る。 「 持 続可能 な開発目 標」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/ gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html (2018年 5 月19 日閲覧) 5 ) タ ーゲ ッ ト 4.7の内容は 「2030年 ま で に, 持続可能 な開発のための教育及 び持続可能 な ラ イ フ ス タ イ ル, 人権, 男女の平等, 平和及び非暴力的文化の推進, グロ ーバル ・ シチ ズ ン シ ッ プ, 文化多 様性 と 文化の 持続可能な開発への貢献の理解の教育 を通 し て, 全 ての学習者が, 持続可能 な開発 を促進す る ために必 要な知識及び技能 を習得 で き るよ う にす る」 (三宅,
2016, p 67) である
6 ) ま た 『SD の教科書』 は, w afs (2009, p 49) を引 用 し, 「ESD を公教育の主流化には, 既存の学校制 度 や構造 に適合 さ せ る 「 従来的 ア プロ ーチ (con-ventional approach) 」 か ら , 既存 の制度構造 を改革 す る根本的な力 を も っ た 「革新的 ア プロ ーチ (inno-vative approach) 」 ま で , さ ま ざま な ア プ ロ ーチ が 含ま れてい る」 (p.18) と 説明 し てい る。 7 ) 『中学校学習指導要領解説 社会編』 では, 公民的 分野の解説におい て 「持続可能 な社会 を形成す る に つい ては , こ こ で は, 将来の世代 のニ ーズ を満 たす よ う に し なが ら , 現代の世代のニ ーズ を満 たす よ う な社会の形成を意味 し てい る」 (文部科学省, 2018, p.164) と 示 さ れ, ブル ン ト ラ ン ト 委員 会の定義が 引用 さ れてい る。 8 ) ス ト レ ン ジ ・ べイ リ ー (2011, p 26) も 「私た ちが 決断 を下す際には, 社会, 環境, 経済への潜在的影 響 を配慮 し つつ, 私た ちの行動が他の場所に影響 を 及ぼす こ と , そ し て私たちの行動が将来に も影響 を 及ぼす こ と を意識 し てお かなけ ればな ら ない」 と 述 べ, SD を環境, 社会, 経済の側面から捉え る必要 性 を指摘 し てい る。 9 ) SD が多 様 に定義 さ れる な かで , 環境, 経済, 社会 間の捉え方 も, 各側面が等関係にあると いう 考え方, や経済, 社会の基盤が環境であ る と い う 考え方があ る。 こ れら の考え に基づ く SD のモ デルは阪上ほか (2018) におい て検討 さ れてい る。 10) 図 4 の中では, 「 プロ セ ス」 は地理的概念 と し て示 さ れてい ないが, 『sD の教科書』 の本文 (p ie9) では, プロ セス も ま た地理的概念の一つであ る こ と が説明 さ れてい る。 11) し か し ながら 『SD の教科書』 では, 十分に活用 さ れ て は い な い と も 指 摘 さ れ て お り , そ の背景 に は 「sD, 生態およ び社会的関係, 責任あ る市民的資質 と い っ た諸問題に焦点 を当 てた論理的で教育学的 な も のが過去60年 にわた っ て地理教育 の発展 におい て 導入 さ れた (Soltman, 2006) が, 教科書がこ れら に対応す るのに時間がかかる と い う 課題 (Sunny, 2006) , (中略) ESD には望ま し く ない 「地名物産」 の地理教育がい ま だに推進 さ れてい る」 (p i le) こ と が挙げ ら れてい る。12) ①お よ び②は Atkinsson Group (http://www compass education.org/) , ③は Goodman (1997) によ っ て開発 さ れたも のであ る (p.130) 。 13) 代表的 な も のが IGU-CGE が公表 し た 「地理教育国 際意章」 や 「持続可能 な開発のための地理教育 に関 す る ルツ ェ ル ン宣言」 で あ り , 章 「 地理」 におい て も た びた び参照 ・ 引用 さ れてい る。 14) こ の 課 題 に対 し て 取 り 組 ん だ 研 究 と し て 草 原
(1999) がある。
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