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コンコーネの伴奏の役割

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Academic year: 2021

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(1)Title. コンコーネの伴奏の役割. Author(s). 伊藤, 功俊. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. A, 人文科学編, 48(1): 71-79. Issue Date. 1997-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2075. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部A) 第48巻. 平成9年8月. 第1号. Augus t ,1997. l fEduca i Se i i fHokka i do Un t t lo j on( cロonIA)Vo ver s ourna yo .1 .48 ,No. コンゴーネの伴奏の役割. 伊. 藤. 功. 俊. 北海道教育大学釧路校音楽研究室. 1. はじめに 別稿 「音楽表象の形成をめざした指導の研究」 において, 教育学部における中学校音楽専攻生の音楽学習 について, 音楽への知的な態度を酒養しつつ感性の練磨を目指した指導の方法をコンゴーネ歌唱の指導を中 心として考察した。 それは, 音楽は感性の世界に立脚したものであると同時に深い知性にも立脚しているも のであるという認識に基づいたものであり, クラシック音楽への指向性が薄く, 音楽経験が少なくて読譜力 も乏しい学習者であっ ても豊かな表現力を目指して意欲的に学習が展開されるひとつの方法であった。 その 結果, 心の働きとしての音楽的観照を体験し続けることによって音楽表象がより確 かなものとなり, 歌唱力 の伸展に伴って広く音楽全般に対する理解, 感受が深化し, 学習者の音楽力と指導力の形成に極めて良い影 響を与えることができた。 しかし, 限られた授業時間の中でこのような指導は困難な面もある。 それは説明 に要する時間が増 して実際に歌唱する時間が減少するということである。 一人ひとり について順次発声指導 を行い, コンゴーネと歌曲を歌うという方法では膨大な時間が必要であっ て知的な把握までは指導の手が及 ばない。 結果として技能的な部分が授業の多くを占め, 知的な部分は学習者個人に任されることになりがち であることから授業形態の工夫が不可避となる。 そこで, 歌唱時間を確保するために一括説明の可能な部分 を多くし, 指導内容の焦点化を図ることによってこの難を回避する必要がある。 このようにしても, なお重要な問題が残っ ている。 それは学習者との音楽の直接的な対話としての伴奏の 問題である。 前稿では聴覚以外の感覚も活用し, 言語を通して音楽的な情緒を共通にすることの効果に触れ たがそれも限界のあることである。 やはり音楽を共に同時体験することが何にもまして重要であり, 厳密に 言えば音楽の内容はそれによっ てしか伝えられないものである。 授業時においてコンゴーネの伴奏は多くの 場合指導者によってなされる。 この時が指導者にとって楽譜から感受されるものに指向性と構築性を与え, 生きた音楽としてのフレーズを明示し得る機会であり, 伴奏の重要性に着目し適切に伴奏することで学習者 へフレーズ感の的確な感受を促し, その表現のための技能面への自覚の転換点ともなし得るのである。 それ は音を通してのみ伝達し得る世界であり, 適切な伴奏は学習者のアンサンブルの喜 びと歌唱の満足感を喚起 し, 適正な音楽表象の形成を促進するものである。 そこで, この稿ではコンゴーネの伴奏について考察を進 め たい。. 2. 伴奏者がめざすもの 伴奏を楽曲の主要旋律を補っ たり強調する目的で付加されたものと考えるならその歴史は大変古い。 しか し, 我々が現在思い描く伴奏とは, 17世紀初頭のホモフォニーにおける旋律を下から支える和音伴奏であっ 71.

(3) . 伊 藤. 功 俊. たり, 下っては ピアノの発達と普及やオーケストラの増大した表現力による楽曲の不可決の要素としての伴 奏である。 音楽構成上, 旋律と伴奏がどのように役割を分担しているのかは作品によっ ても相違するとはい え, 現代は独唱 (奏) 者と伴奏者は共同者の関係にあると考えられている。 そのことはジェラルド・ムーア )の第一章において言及されている 即ち 伴奏は音楽の全体構造の基礎をなすも 1 の著書 「伴奏者の発言」( 。 , のであって, 独唱者と対等な関係にあることをムーアは強調した。 当時, 伴奏 ピアニストは独奏 ピアニスト と比較して一段低く評価され, 陰で音楽を支える存在として考えられていたが, 伴奏の仕事の領域の途方も ない広さと何よりも共演者との協力関係 によって音楽を表出する喜びの大きさから, そして楽曲の成り立ち の考察の結果からそのような主張をしたのであっ た。 現在ではこれを疑うということは想像し難いが, この 本が出版された当時は強く首肯し得る主張として新鮮に捕えられたのであった。 ムーアはまた, 伴奏者がそ の役割を果たすために必要なさま ざまな知識や技能について記し, 更に, 独唱者に対する演奏上の配慮や経 験から得たさま ざまな示唆について記している。 当時, 数少ない伴奏の専門家として名演奏家たちと数多く の共演をなし, 伴奏の神様として令名を馳せたジェラル ド・ムーアの言葉は, どの部分を取ってみても貴重 な体験と重要な提言に満ちているが, その基調となっているのはアンサンブルの真の精神として, 演奏時に )であるという演奏の信念であり 最後に結論として提示さ 2 考えるのは 「1人称複数形によるIつの音楽」( , れた 「敏感な耳を持つ」 「敏感な音楽的な頭脳を持つ」 「ハートを持つ」 という言葉は, 音楽を学ぶもの, 演 奏するもの全てが音楽から要求されていることと して同感を強くする。 また, 伴奏をする場合はそのことが 音楽に対してだけではなく, 共演者に対しても向けられるべきであり, ムーアはその意味でこの言葉を使っ 3 )では透徹した楽曲解釈とそ ている。 また, 第4章 「演奏家の練習」 や同じムーアの著書 「歌手と伴奏者」( れを演奏として実現するための共演者への配慮 という形で伴奏者が要求される能力を示し, 著者の名演奏の 秘密を我々に開示する内容となっている。 このよう に伴奏者は共演者と共に役割を分担して一つの音楽世界 を表出するのであるが, それは必ずしも音符通りに演奏し自分の領分を守ってさえいればよいということで はない。むしろ,共演者の演奏に伴奏部の音量,音色な どのバランス をとりながら -音楽を完全な姿に整えたり, 時には, 続く共演者の旋律のために音によっ て適切な場面を設定したりするのであり, いっ てみれば共演者 の演奏を受け入れながら刻一刻と音楽を綴り合わせていく ‐仕事なのである。 更に場合によっては共演者が冒 す突発的なミスや会場がもたらすかもしれないアクシデントにも対応し, 共演者を助け演奏の傷口を修復す る任務も負わなければならない。 そのことを考えるとき, ジェラル ド・ムーアが示した 「敏感な耳・ 「敏感 な音楽的な耳を持つ」 「ハートを持つ」 という言葉は伴奏者にとって改めて大きな意味を持つのである。 ノ. - ー. 3. コンゴーネの伴奏. -. 前述したのは演奏会における伴奏者の役割についてであるが, 授業におけるコンゴーネの伴奏は伴奏者と しての基盤は同じであるとはいえ若干の相違もある。 コンゴーネの伴奏は指導者によっ てなされる場合が多 く, 簡易な伴奏譜であるとはいいながらそこには意外な陥奔がある。 この項では最初にそれらについて考察 し た い。. 第一に指導者は曲のテンポやデュナーミク, 発声法上のポイントなど楽曲やその演奏法, 更には指導すべ き要点も熟知しているので, 楽曲の完成した姿を求めて一直線に伴奏しがちである。 この場合は伴奏者に演 奏上の主導権があり, 学習者はそれに乗って歌唱すれば指導者の意図に叶う意味で一応形は整うということ になる。 伴奏者である指導者は自分の伴奏に添って歌われた歌を容易に容認してしまうから, 歌唱者は伴奏 者の音楽的な道筋をはずさなければそれでよく, 往々にして歌唱表現の不足は見逃されてしまう。 つまり, 伴奏者が演奏に心を込めれば込めるほど自己の演奏上の充実感が増し,その結果,歌唱者の表現の不足を覆っ 72.

(4) . コンゴーネの伴奏の役割. てしまうのである。 これは伴奏をする という行為によって指導者が具備すべき客観性が損なわれ, 伴奏者と してはその立場を逸脱し, 指導者としては指導すべき内容を看過していることであり, 当然, 歌唱者は必要 な指導を得る機会を失うことになる。 このように, 指導者の立場において学習者の音楽表現の適切性への判 断が薄らいだり, 極端な場合は表現意欲の薄弱さを見逃す危険さえある。これは伴奏技術の未熟さ によるか , あるいは自身の演奏の満足感から学習者の歌唱表現を補っ て聴取してしまうことによると考えられる。 第二に指導者自身がよき歌唱者であることから生ずる伴奏の不手際の問題である。 コ ンゴ ー ネ の伴 奏 の多 Y .. 、 ・、. .. ・ ・ ・. 、. ・. ・ .. ・′ -. ‐ごく稀に対旋律を配置するが多くは歌 くは歌唱旋律を支える和音伴奏の形をとり, ときに合いの手を入れ, -デ ュ ナ ニ ミ ク も そ れ に添 っ た 形 にな っ て いる しか し 唱 旋律部 と伴 奏 部 の フ レー ジ ン グは ー 致 してい て, - 。 ,. 伴奏者は心の中では学習者以上に歌っ ているので, フレーズの区切り (=プレス) で伴奏への配慮が突然失 . . . . . . わ れて しまう こ と が往々 に して起 こる。 多く は伴 奏 者 の 美 的な 認 識 と して は de er sc e .であ る の に ピ アノ を演. 奏する手はその配慮を失っ てしまい, 演奏としては粗雑な音を無駄に叩きだした粗野な音の羅列 になる場合 で ある。 こ れで は音 楽 的 内容 とも美 しさ とも 遠く, 歌 唱 者の コ ンゴー ネ の 学習 が目指 して いる 発 声技術 や 呼. 吸法の会得, 表現力の育成に貢献し難いものになる6 伴奏部はその デュ ナーミクにしたがっ て演奏され歌唱 部と合わさって一つの音楽世界を表現するものであるから, 伴奏者としての立場は最後まで貫かれなければ ならない。 もし, 不注意にも途中で歌唱者の立場に転移してしまう と伴奏者の立場が放棄され 音楽の必然 , 的な流れが阻害されて歌唱者の音楽をも巻き添えにしてしまうので注意が必要である。 もちろん 指導者が , 伴奏しながら歌唱することもあるが, その場合は特に伴奏に堪能であることが求められる。 以上 伴奏に際 , して配慮すべき点について述べたが伴奏技術が伴う なら指導者の伴奏には大きな利点がある。 次にそれらに つ いて 考察 したい。. 第一に学習者の音楽表現力が豊かに育成されることである。 よき歌唱者は旋律が内包する音楽的な緊張と 弛緩を過不足なく把握し, 歌唱表現するために適切な曲運びで演奏できる。 それを伴奏に移した場合にはテ ンポや デュナーミクといった音楽表現や発声上の考慮もなされて歌唱しやすい伴奏となる その伴奏に乗っ 。 て歌唱することで歌唱者は音楽としての意味 (まとまり) を認識 し, 自然にフレーズ感は育成されて音楽的 な表象が蓄積される。 優れた伴奏は単に音を合わせるだけではなく 歌唱者に対して音楽の道筋を示すと共 , に, 曲想の指示も可能である。 例えば, 伴奏形の変化は音楽表象の変化であるから 言葉を越えて直接的な , 音楽の誘導が可能である。 また, 長三和音や短三和音など和音の明度に従った音色で伴奏することで 歌唱 , 者の和音感覚の練磨と歌唱表現の幅を広 げることも可能であるし 転調のため に準備された音を伴奏部の中 , から注意深く響かせることで自然な転調感が得られ 必然的な音楽の進行が実現する これらはすべて歌唱 , 。 者の表象と して蓄積される。 第二に歌唱者の声種や技術にふさわしい伴奏がなされることである。 歌唱者はそれぞれ異なる声を持って いる。 声量にふさわしいボリ ュームで伴奏を弾くことは当然であるが 小さな声量に対しては歌唱を励ます , 意味で少し大きめの音量で伴奏を弾く こともあるし 反対にd e c r e s c , ‐を適切 に誘導するためにより弱く弾く こともある。 これらは歌唱者が伴奏に注意しながら歌い 伴奏者が歌唱の状態を判断しながら伴奏を行っ て , いる状態ではよくあることである。 より重要なのは声種が異なる場合の配慮である 特 に低声に対してはテ 。 ンポが早すぎないよう に注意することと, 中声と旋律が異なる部分の表現に配慮が必要である 例えば 第 。 , 4番の最後の4小節を低いほうで歌唱する者 に対してはその部分の伴奏の音量を幾分控えめにすべきである し, 第1 5番の22小節を低い方へ歌唱する場合は声量 に耳を傾け, 旋律の進行 に留意しながら丁寧に4分音符 の和音を添わせるよう に弾くなど, 常に歌唱の状態を観察しながら発声への配慮をもって伴奏することが可 能である。 ここでは学習者は呼吸や発声への配慮が可能となり 歌唱技術と伴奏との共演能力の向上が促進 , される。 この他にも歌唱者の声の状態によっ て伴奏部の低音部を弱く弾いたり 高音部を弱く 弾いたり 時 , , 73.

(5) . 伊 藤 功. 俊. には無伴奏であったりと, 適切な方法を選択することができる。 次にこれらの観点に従った伴奏法について考察する。 (1) 第 2番. t Mod e o ra. ′ (8小節) という小三部形式である。 最初の2小節の 1 2小節) A 曲は全部で28小節でA (8小節) B ( 一度 心 も ち 動 機 は柔 ら かい p i e sc esc ano で 歌 い ださ れ cr ‐decr .が正 しい 呼気調 節 によ っ て 表現 さ れる。 もう. 高揚した表情で同じ形の動機が2度高い音程でくり返される。 三度目はリ ズムを変えて4小節ひとつながり はフ レー ズ のま とめ の 下 降旋 律 と と して 明確 な cr c e s ‐によ っ て A 部 分 の頂 点 が現 れ, 第6小 節 の4拍 目 か ら が長く な して 半 終 始 と なる。 楽 譜 で は2小 節 単位 の cr cde s c esc ‐が指 定さ れ ている が, 同 時 に8小 節 全 体 .de 第 9小 節 か ら16ま で は2小 節 単 位 でよ り 明 だら か な cr es c e sc cr ‐de .に な っ ている こ と に注 目す べ き で ある。 しB を 終 える。 巽 節 確 な cr c cr es c e s ‐をく り 返 しな がら 上行 し, 曲 全体 の頂点 を構成 した のち 4小 で下行 ‐de. の部分はAの半終始部分を完全終始として28小節全曲を終える。 学習者は適切なテン ーポと正しい呼吸法に よって強弱の表現を試み, レガート唱法によってフレーズのバランス を美しく描き出すように歌唱する。 特 に最初の2つの動機では横隔膜による正しい支えを観察しながら強弱と共鳴に留意し, 2小節 ごとにひとつ の音楽世界が感じられるような集中感が重要である。 続く4小節では更に広やかな音楽の世界へ至っ たのち 穏やかに下行して半終始に入り, Bの更に広く高い世界へ上りつめる入り口に立つ。 全体として穏やかで温 かみのある曲であるから, 伴奏は左手のスタッカーティシモを鋭過 ぎないように奏し, 明確なテンポの設定 を行いながら歌唱表現のラインを助け導くように演奏される べきである。 右手の音型は和音を示すだけで だ e s c あ っ て テ ン ポや 音 量 変化 の 表現 に は殆 ど役 立 た ず, 歌唱 旋 律 の cr esc .decr ‐に添 っ た 強さ で演 奏 さ れる. けである。 また, 和音の表現についても右手だけでは和音として不完全な部分が多く, 左手が和音上不足な 音 を補 いつ つ 曲想 進行 の多 く を担 っ て いる の が特 徴 とな っ て いる か ら, ス タ ッ カ ー ティ シモ の4 分音 符 の連. 続は和音を完成しながら旋律進行上の充足感を満たすことになる。 したがっ て左手は2小節 ごと の cresc. や c c decr es .や, 変 化 音 によ る 音 楽 の 流 れの 必 ‐と decres .の音 量 の 変 化 と 8 小 節 のよ り 大 き な 流 れの 中 の cres. 5 3小節,1 1小節, 第1 然性を導くように演奏されるべきである。 特にB部では大らかなc c r s e ‐を導くため, 第1 小節の左手の変化音を段階的に音量を増しながら強調する ことによって歌唱者の大らかな感覚を助長する。 結果として左手は2小節単位でうち寄せる波 が次々と重なり合って第16小節, 17小節で広やかな眺望へと至 amoll ること になる。 その後 は広がっ た風景が急速に閉じられていく ような下行旋律 となり, 第17小節の・ から第20小節のGDurへの道筋を結ぶ適切な和 声進行の響きによっ て歌唱者の高揚した表現が鎮静し, 再 . びp i ano から始まる バ 部へと進む。 以上, この曲は歌唱旋律, 伴奏部共に単純な姿のままであるから, 耳 障りなテンポの揺れを起こさぬように, また, 強弱の変化が適切であるように演奏されなければならない。 74.

(6) . コンゴーネの伴奏の役割. そのため左手の音型は厳格なテンポと音量の変化を示し, 更にフレーズの高揚感や鎮静感を決定する ため十 分 にコ ン トロー ルさ れ た音 で 綴 ら れな け れ ばな らな い。. (2) 第4番. 4分の3拍子によるカンター ビレの表現が学習の中心である。 全体は40小節であるが譜例は第9小節目か ら第20小節まで示した。 曲冒頭から第20小節までは譜点二分音符主体の穏やかな旋律であるが, 9小節目か ら1 3小節にかけては4小節単位の流れがH音によってC音へと5小節目まで延長され, しかもフレー ズと しては8小節が分かち難くつながれて大楽節のまとめを構成している。 旋律はフレーズを大きくつかんで歌 唱 さ れる が前 半 の 旋律 は 穏や か なカ ンタ ー ビ レ, 後 半 は13小 節 目 を目 指 す 堂々 と した cr c e s ‐を築 い た後ゆ っ. たりと Cdurに終止する。 伴奏は弦楽器で旋律をなぞるよう に起伏を表現し, C音の連続は粗雑さを避け るため和音を充実させる強さに止める。 第9小節目からは毅然としたc r e s c ‐を作り第13小節目で歌唱者と同 じく プ レス を し, 続く 弱 起 と フ レー ズ の頂 点をたっぷりと表現したのち 音楽を正確に鎮静させる。 ここで , は右手各拍の表拍が歌唱旋律の起伏を正しく支えるよう に音量を定めることが重要である。 次の4小節は2 つの動機によっているが, 曲の後半はこれらの動機が発展的に使われて小三部形式を形成する。 付点の動機 は先行した大きなc r c e s ‐とは一線を隔して優しく可憐な表現とし, 続く動機の暖かく穏やかな膨らみと対比 させる。 この2つの動機の表情が小三部形式部分の曲想を支配するが, いかにも可憐に身を縮めるスミレと 柔らかにそよ ぐ春風の対話のように表情を2小節ごとに変えて歌唱される。 対話が2度繰り返される8小節 の 伴 奏 は2小 節 単 位 の de re c s c ‐で 右 手 は軽 い 音 でス タ ッ カ ー トがふ さ わ しい。 第25小 節 目 か ら2つ 目 の動 機. をもとにしたふくよかな部分になるが, 第26小節, 第29小節の左手の変化音はテヌートして次の音へしっ か り とつ な ぎ, 和 音 の 変化 をいく ぶ ん強調 して響 かせる こ と が必 要 である。 特 に第29 ,30小 節 はシ ンコペー シ ョ. ンを支えるために更に強調した和音の響きが欲しい。 最後の8小節は付点の動機によっ ていて伴奏型が変わ る。 このアルペジョは全体と しては木の葉がそよ風にそよぐような軽さで弾かれるが, この部分も2小節単 位 の de cr e s c .であ り, 第33 , 35 , 37 , 39小 節 の 第一拍 目 に小 さ な アク セ ン トを付 しそ れ を続く 小 節 で解 決す. るように音量を加減し, 終止部はわずかにテンポを緩めて歌唱部と伴奏部のリ ズムのかみ合わせを正確に構 成するよう配慮する。 この曲の伴奏部はその形から三つの部分に分けられる。 最初は16小節を弦楽器で旋律 の起伏をしなやかになぞって行く部分であり, 第二の部分は第17小節から2小節単位で軽いスタッカートで 75.

(7) . 伊. 藤 功 ・俊. 奏する8小節と第2 5小節からの4小節ひとまとまりのし くぶん重いレガートを支えている変化音を含んだ8 小節で構成される部分, 最後が歌唱旋律の陰で微風にそよ ぐ木の葉たちの歌の三つの部分からなっている。 伴奏は全体的な表情として歌唱者をカンタービレの表情で包みながらこの三つの形を明確に弾き分けること とが重要である。 、 ‐・. ▲ { ▲ --. . ・・. Y{ . ・ ●、 ‐ . ・. {. - - - 、- Y. (3) 第5番 歌唱部の旋律はリ ズムによる曲想の変化がなく強さの変化も緩やかであり, この旋律だけでは音楽的に感 情をかきたられることの少ない平板なものである。 しかし, 背後に伴奏が与えられると平板な旋律線が生命 を吸い込んでゆったりと流れ, 色彩感豊かな和音がその旋律に深さや輝きを与える 、 。 伴奏の三連音符は旋律 に進行感を与え, 旋律の一音一昔がふくよかな力に満たされて連動性を内包し, しなやかな上行進行が心地 よい。 この曲では伴奏の三連音符の進行 が歌唱者の表現を左右してしまうので, 伴奏者自身もじっくりと歌 いながら歌唱表現を助けるテンポと和声進行に伴 った表現法を実現しなければならない。 また, 伴奏者は適 かな表情や 切な進行感によっ て歌唱者の声を音楽的に運ぶことが重要であり , 更に和声から生ずる深く柔ら . . . . ‐明るく締まって輝く音な どで歌唱旋律に色彩を与えることもでき いくぶん陰りをま とった弾力感のある音, . る。 このようにして歌唱者に対してより広く多彩な音楽の世界を提示しながら, 同時に伴奏者自身も歌唱者 とのアンサンブルの楽しさを味わうことが可能である。 ここでは学習者と伴奏者が特に和声進行について直 接的に音楽表現を共有することが可能であり, 学習者にとっては指導者の音楽表象を直接的に受け止めな が ら自己の観照の体験を蓄積することが可能な機会となる。 次に伴奏について具体的に考察する。 外 なode to ra. = 心. 楽譜は全曲32小節のうち8小節のみを提示した。 伴奏形は全曲を通して同形であり, 部分的に三連音符の 分散和音が旋律をなぞっている。 この曲は和声の美しさが特徴であり, ハープを模した音型では時間的な揺 らぎを適切 にして旋律の表現を助けることが重要である。第3,4小節目の和音はFdur m-=, d molI V7(= ‐ l ll ) と な り, 明る く 穏 や か に進 行 す る 第 1, 2小 節 の 後, いく ぶ ん感 傷 的で 膨 らみ を も っ た l‐W -V7 d mo. . 第4小節で深く広がり 第3小節は, バス進行を少し出し加減にしながら三連音符の頭の音で旋律をなぞり, lv7 l のある和音に入り decresc ‐工 とな っ て 第4小 節 で深 みの 中 で広 が っ た感 .する。 第5, 6 小節 目 は g mo じが, いきなり対照的な軽く明るく締まっ た音となり第6小節目でgmoll か ら Fdur へ の 思 い 直 しが行 わ れる。 歌唱旋律のオクターヴの跳躍進行に対しては伴奏しながら心の中で一緒に歌い, 小節線を越すところ で若干時間をかけて円滑な歌唱を助け, 深々と広がる柔らかな和音を響かせる。 こ 、の後も美しい和 声が三連 r e s c 音符で連続し旋律を支える美しいうねりとなる。 第9小節, 第11小節では導音の半音低下が現れてc .を. 76.

(8) . コンゴーネの伴奏の役割. 求め4度上の和音へ進む。 第17小節, 第2 1小節ではc r e s c ‐にしたがって不協和感が高まり次の小節を解決音 として d 3小節で頂点を迎えた後,テヌー im .される。この進行では歌唱の音量変化への注意が必要である。第2 トしたB音に続いて冒頭と同じ8小節の旋律で完全終止とな‐ る。 この曲の伴奏はゆっ たりとした旋律を表 青 豊 かに 支 える ため に, ア ルペ ジー ヨ が深く広 がり のある 音 に対 して は テ ン ポの かす か な揺 れで た っ ぷ り した感. じを与えたり, 微妙なタッチの使い分けによる和音の色彩の変化によっ て歌唱旋律に輝きや陰りを与えたり して, 歌唱者の表象を豊かにし優美で円滑な歌唱を引きだす役割をもりている。 (4) 第12番 d Mo t r e a o. この 曲をこ れまでの曲と比較す れ ば. , ・ .. .. - -. .. ▲. も. 表 現 上 の 要 素 が 多 く な り, 異 な る 表 情 ‐. -の が特徴 で が次々 と 現 れ変 化 して いく. ある。 楽曲は以下のように構成されて いる。 ま ず, 優 美 に上昇 する 8小節の. 旋律で始まり, 次の4小節がその動機 を 用 い た 挿 入 句 と して cmo l lへ 進 ん で Asdur の 準 備 を す る。 つ ぎ の As dur 8小節は冒頭の動機を使っ た挿入. 句 へ の応 答 の旋律 とな っ て いる。 ここ ” べ{. ま で が 前 半 の20小 節 で あ る が 転 調 し ,. <. た後も冒頭の旋律の動機を使っ ている ので調の対立感が薄く, 付点のリズム による音の上下動がもたらす旋律の緊 張と弛緩が表現の中心となる。 和声に よる 表情の 変化 は第9小節 目からの4. 小節の経過句の部分のみである。 後半 は第2 1小節から Asdur の 明る く しな やかな8小節の旋律で始まる。 続く4 匁. 叩‘ <. 小 節 の挿 入句 は厳 格 な 表情 で始まる が. 内包された毅然と した感 じは Asdur か ら C mo l lへ と 変 化 す る 過 程 で 柔 軟. さへ と 変 質 し, Cdur へ 戻る準 備 とな. る。 続く6小節は歌とピアノが応答し つ つ 音 楽 を 鎮 静 さ せ C dur を 確 定 し て. /; ≠. 音楽は進行を止める。 最後に冒頭の旋 律を順次進行 に変化させ, より上昇感 の強い旋律で全曲を締めくくる。 こ の 曲は上 行 フ レー ズ で は早 め に響 く. 〉. くに. にに. き を上 に取 り 続 けて歌 唱さ れる。 そ れ によ っ て フ レー ズ が内包す る 浮揚感 の 表 現 が可 能 になる か ら であ る。 レガー 77.

(9) . 伊. 藤. 功 俊. トによる旋律の上昇と下降が和声に よって起伏を与えられ, 転調と伴奏形 に よ っ て 曲 想 を 変 化 し て い く。 し た が っ て, 上 昇感 の強 い フ レー ズ で は伴. 奏は歌唱旋律に浮力を与えるような演 奏の仕方が必要であるし, 反対の場面 では鎮静感を与えるような伴奏が求め られる。 また転調や伴奏形の変化に よって音楽は次ぎ次ぎと場面を変えて いく の で, そ れらを 弾き分 ける こ とが. 重要である。 次に伴奏を具体的に考察 す る。 最 初 の 2小 節 は C dur l‐V7で. 2小節目に頂点をもつ動機である。 次 の 2小 節 はV7‐1 で 旋 律 は 同 形 で 反復 し, 続く 4小節 の 旋 律の 頂 点へ 向 けて. 上昇している。 この大楽節の頂点は6小節目のF音である‐ 伴奏左手は2小節目を頂点として cresc. し,. 右. 手 は弦 楽 器の ピ チカ ー トを模 した 8 分音 符 の刻 み で cr e sc re s c .を 明確 に形 成す る。 休符 の直 前 の 音 を不 ‐dec lの借用 和 音 を cres 注意に重く, 長く弾いてしまうことのないように留意する。 同形反復の後dmol c . し, im. し, i 第7小 節 の シ ンコ ペー シ ョ ンを 明確 に響 かせ た 後 d nt empo で 音 楽 を て い ね い に納 め る。 続く 4小. 1小節では As音をていねいに響かせて直前の動機との 節 は c mol l w-1と経過的転調をなしているので第1 相違を表現し, 第12小節では歌唱者の転調感を助ける ために心もちテンポを緩める。 第13小節からの As か esc dur は テ ン ポ を戻 し2小 節 の cr e sc e s .で 表 .の 後 第15 .decr , 16小 節 は 第17小 節 の Es 音 に向 っ て 強 い cr l IV7を借用 して昇りつめた 現さ れる。 こ の 旋 律 の 核 と なる 音 は G, As , B, C, Es と流 れ, 頂 点 で b mo. 強い緊張感は第18小節へと持続される。 第184・節の下行旋律で音楽は納められるが, 右手シンコペーション で剰那的に輝きが表現さ れる。 以上の部分では上昇する旋律の浮揚感の表現と歌唱者の共鳴を助けるために 軽やかな演奏を心がけるが, 第6小節及び第17小節の旋律の頂点では歌唱の充実感を表現するために伴奏者 も到達感を持って和音が深く広がる感覚で演奏する。 第21小節は明るい旋律がしなやかに上昇し4小節で頂点を迎え, 第25小節からもう一度上昇し直し豪快な 感じの経過句に入りcmoll lの和音を借用する。 第33小節は減七の和音で突如 としてCdurとなり, 伴奏 との応答を繰り返し音楽は停止する。 以上の部分では右手のアルペジョはかすかな4音ごとのまとまりを持 ちながら旋律の上昇感に添っ て音量を増しながら滑らかに奏され, 左手は短めに切っ た音で弱音は軽く, 強 9小節目から右手の連続音にのって左手は毅然と し 音は重さのある音で歌唱旋律への合いの手を入れる。 第2 た2小節単位の動機となり, 第32小節目の第3, 4拍左手は減七の和音を十分意識して運ぶ。 減七の和音は 堂々とした響きが必要であり, 歌唱者はCdurに転換するための時間として十分な4分休符が必要である。 第33小節からは2小節単位での応答であるが, 常に第1拍目が休符となっているから第33小節の右手の旋律 は第34小 節 の 第1 拍 目ま で とな り 第 2拍 目 は 次 の 旋律 の 冒頭 とな っ て改 め て cr c e s c es ‐decr .が付 さ れる。 こ. こは歌唱旋律と応答を交わしながらテンポが落ち音量も下げられて, ついには音楽が停止してしまい全休符 となる。 全休符の小節を経て最初のCdurの旋律が蘇る が, ここでは跳躍進 テは順次進行に姿を変えより滑 らかな歌唱性をもって全曲を締めくくっている。 伴奏部は冒頭とまっ たく同じ譜面になっ ているが, 歌唱部 の表情ははる かに深くなっているのでそれに合わせた表情の深さになる。 特に第44小節目のF音は一番の頂 78.

(10) . コンゴーネの伴奏の役割. 4 )が行われ 伴奏部の最後の左手は極めて急速なd im 点をなすので 「時の強調」( ‐で終息する。 , この曲の伴奏部は歌唱旋律に影響を与えやすいものとして書かれている。 即ち, 伴奏が8分音符の刻みを 主体としているために伴奏者の意識の有無にかかわらず歌唱旋律の進行の仕方を支配してしまうのである。 このような伴奏形では歌唱部の長音にこめられるべき音楽的な感覚, 内容が伴奏部により具体的に現れてし まうから, 常に歌唱者の表現意図を読み取りながら8分音符の刻みで旋律線を支え, リー ドする細心の注意 を持っ た弾き方が求められるのである。. 4. おわりに この小論は内容的には 「音楽表象の形成をめざした指導の研究」 の続編をなすものであり, ここではコン ゴーネの伴奏について言及したのち4曲について考察した。 もちろん, この記述はとても満足の行くもので はないが, それはもともと音楽がもつ芸術としての美を言葉で表すことが不可能であることに起因するとと もに, その多くは筆者の音楽的な内容を指し示す言葉の不足にもよっている。 しかし, 美を体験する手だて ついての教育の方法については考察が可能であるし, 大いに考察されなければならない。 とは言いつつも美 そのものを言葉によって表現する ことが不可能であることから, 音楽の表現について言及することにはため らいが大きいのも事実である。 だが, 学生たちは音楽の美について常に観照し自ら表現者としての能力を身 につけ, より資質の高い教育者として成長しなければならない。 コンゴーネの伴奏は楽譜上はこの上なく簡 易ではあるが, 伴奏はそれぞれの旋律に対してさま ざまな表情を与え, 旋律が織りなす音楽を助けている。 したがって, 学習者が豊かな音楽を感受し表現することを支援するため には, 簡易な伴奏といえども入念な 配慮が必要なのである。 わずか4曲だけの提示ではあるが, この言葉の貧困な小論からその方向性だけでも ご理解いただけるなら幸甚である。. ( 1 ) 「伴奏者の発言」 ジェラル ド・ムーア著. 大島正泰訳. 音楽之友社 1 956. ( 2 ) 同上 p72 ( 3 ) 「歌手と伴奏者」 ジェラル ド・ムーア著 大島正泰訳 音楽之友社 19 60 「 4 シューベルト三大歌曲集歌い方と伴奏法」 ジェラル ド・ムーア著 竹内ふみ子訳 p17 シ ン フ オ ニ ア 1983 ( ). 《参考文献》 佐瀬 仁 『音楽心理学』 音楽之友社 1972 『標準音楽辞典』 音楽之友社 19 67 『ニューグローヴ世界音楽大事典』 199 3 ジェラル ド・ムーア ジェラル ド・ムーア. 『伴奏者の発言』 大島正泰訳 音楽之友社 1956 『歌手と伴奏者』 大島正泰訳 音楽之友社 1 96 0 『シューベルト三大歌曲集の歌い方と伴奏法』 竹内ふみ子訳. ジェラル ド・ムーア 城多又兵衛 解説 『コンゴーネ50番』 音楽之友社 19 72 永井 潔 編 『コンゴーネ50番』 音楽之友社 199 0. シ ンフ オ ニ ア 1983. 日本声楽発声学会 校訂 『コンゴーネ50番』 音楽之友社 199 4 『 原田茂生 編著 コンゴーネ50番』 教育芸術社 198 7 『CONCONE50LECONS0pus9』 BDIT工ON PETERS. (本学教授 釧路校) 79.

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参照

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