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物づくりを通して学ぶ理科の実践研究 : 電磁気教材を中心として

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(1)物づくりを通して学ぶ理科の実践研究 一電磁気教材を中心として一 教科・領域教育専攻 自然系コース(理科). M99608E 大久保秀樹 1。 はじめに. 取り組んでいないという現状がある。このことか. 「理科」という教科は、人類の科学の進歩の歴. ら「電流」単元において、物づくりの題材として. 史を遡って体験する教科であるといえる。科学の. 電磁気教材を取り入れ、単元を通して「物づくり. 発達の動機として、自然に対する興味の他に「物. 学習」をする実践研究を行うことにした。. づくり」を目的とすることも挙げられるだろう。. 日本における、科学の発展を考えると、「物づ くり」に関係するものが目立つ。また、「物づく. り」に関する長い歴史と文化がある。日本の発展 は、「物づくり」とそれに関わる科学の発達によ り支えられてきたと考えられる。. 科学の方法として「物づくり」があるというこ とと、β本の発展を「物づくり」が支えてきたこ とを考えると、義務教育の中で科学を扱う中学校 理科で、「物づくりを通して学ぶ」という学習法 があるべきではないか。このことが、本研究で「物. づくり」を取り上げる背景である。. 4. 「物づくりを通して学ぶ理科」とは. 本研究で提案する「物づくりを通して学ぶ理 科」を次のように定義した。. 生徒に「物づくり』のための材料を与え、その 材料を実験器具として、単元の学習内容の実験を 行い、材料のつくりやしくみを学習しながら物づ くりをし、物づくりで完成させたものを使って実 験などを行い学習を継続する。また、つくったも のは、授業での学習終了後も自学自習に使え、日 常生活にも生かせるものとする。. また、「物づくりを通して学ぶ理科」を、公立中. 学校における通常の教育活動の中で授業実践す るために、次のような条件を設定した。. 2.研究の目的 本研究は、このような「物づくり」に対する思 いから、「物づくり学習」と中学校理科との整合 性および、物づくりを通して学ぶ学習法の有効性 を実証するのが目的である。. 3.研究対象の単元について. ・従来の一般的な学習で行う全ての学習内容を 網羅する。. ・「物づくり」を取り入れた場合の授業時数が、 従来の一般的な学習と比べて差がない。 ・「物づくり」でつくったものが一つの単元を通 して使え、他の単元にも応用可能であること。 ・従来の学習と比べて授業者の負担が大きくな らないこと。. 本研究では、中学校理科の「電流」単元につい て実践研究を行う。「電流」単元の内容は、「電 流」という生活に欠く事のできない身近なもので. 5.研究の経緯. あるにもかかわらず、中学校の理科の中では、難. はじめに、理科の学習に対する生徒の実態と. しいものとされ、生徒が必ずしも意欲的に学習に. 「電:流」単元の学習についての現状について明ら.

(2) かにし、教科書における「電流」単元の扱いの変. 眉=般的な学習をしたS中学校前学年141名(%N [■物づくり学習をしたS中学校現学年151名 (%)1. 遷も調べた。これらのことから、従来から一般的 に行われている学習法が、普遍的ではないことや、 改善すべき問題点のあることがわかった。. そこで、「電流」単元において、「物づくり学. 習」を取り入れ、4で述べた定義と条件に基づい て物づくり教材(発電機・モーターづくり 図1). 厘麹づくり学習をしたE中学校68名(%) 100. 80. 60 40. 一 一 一 一 罰 ㎜ 一 一. 20. @. 2校目の授業実践は、1二目での反省を基に、改. 一. . } 一 一. 冒. } 一 . 一 一. u. L. 0. 問題1平均 問厘2平均 問03平均 問題4平均 悶題5平均. の選定と学習計画等の作成を行い、東京都内の2 校の公立中学校にて授業実践を実施した。なお、. 」. ▲図2 事後テストの正答率の比較 問題1、2、3…基本問題、問題4、5…応用問題. 良した学習計画等で実施した。. この学習法についての評価を行うために「電. ④. 流」単元における「物づくり学習」をした2校の 生徒と、従来の一般的な学習をした生徒に、「電. 「物づくり学習」では、生徒の物づくりの成 否が、その後の学習に影響する。. ⑤. 「物づくり学習」は、教材を授業ですぐ使え. 流」単元の学習に関するアンケートと学習内容の. るようにするために準備に手間がかかるが、. 理解を問う事後テストを実施した。. 授業自体は、学習計画等を工夫すれば、従来 の一般的な学習法と比べて、授業者の負担を 大きくすることなく実践できる。 また、次のような今後の課題も明らかになった。. ①餌づくり教材のコストをどのように負担し ていくか。. ▲図1 「発電機・モーター」の部品と内部. ②黒づくり教材の他単元での利用や総合的な 学習への対応、他教科との連携に関する課題。. 6.研究の結果と今後の課題 本研究の結果、以下に挙げるように「物づくり を通して学ぶ理科」の有効性を「電流」単元にお いて実証することができた。. ①アンケート結果などから、生徒の学習に対す る意欲が向上したことが明らかになった。. ②従来の一般的な学習と差がない授業時数で学 習内容を網羅できた。. ③事後テストの結果(図2)から「物づくり学 習」をした生徒の学習内容の理解は、従来の. 7. おわりに. 最近、「物づくり」という言葉をよく聞くよう. になった。新学習指導要領にも関連することが盛 り込まれている。しかし、「畑づくりを通して学. ぶ」ことは、決して新しいことではなく、むしろ 古典的で基本的な方法である。本研究は、今後こ. の学習法が数多く実践され、「物づくり」が一般. 的な学習の中に組み込まれるようになるための 試金石と成り得たと考えている。. 一般的な学習をした生徒に比べ、応用的な内 容での理解において向上した。. 主任指導教官 山下伸典 教授 指導教官. 佐藤 光 教授.

(3) 学位論文題目. 物づくりを通して学ぶ理科の実践研究. 一電磁気教材を中心として一. 兵庫教育大学大学院. 学校教育研究科 教科・領域教育専攻 自然系コース(理科). M99608E 大久保 秀樹 主任指導教官 山下 伸典 教授. 指導教官 佐藤 光 教授.

(4) 目次 第1章 序論. 1. 第2章. 3. 「電流」単元について. 第2.1節 「電流」単元の学習における生徒の実態. 3. 1.生徒が意欲的に取り組める実験の調査. 3. 2. 「電流」単元の学習に関する調査. 6. 3, 「電流」単元の学習に対する生徒の実態調査のまとめ. 8. 第2.2節 「電流」単元の教科書での扱いの変遷. 9. 1.現状の一般的な学習法での「電流」単元の学習順序. 9. 2. 「電流」単元の学習順序の変遷. 9. 3. 「電流」単元の教科書での変遷のまとめ. 11. 第3章. 「電流」単元における『物づくりを通して学ぶ理科」. 第3。1節 「物づくりを通して学ぶ理科」とは. 12 12. 1.従来の一般的な理科学習の問題点. 12. 2. 「物づくりを通して学ぶ理科」の提案. 12. 3. 「物づくりを通して学ぶ理科」を実践する上での条件. 13. 4.単元の選定と構成. 13. 5. 「物づくり」の題材について. 14. 6. 「電流」単元における「物づくり学習」と穎学習指導要領との関連. 14. 第3.2節 「物づくり」教材について. 16. 1. 教材選定の条件. 16. 2.教材選定の経緯. 16. 3.授業実践での生徒の製作上の問題. 21. 4.製作上の問題への対策. 22. 第3.3節. 学習計画の作成. 23. 1. 学習計画作成上の留意点. 23. 2. 各学習項目と学習順序の検討. 23. 3, 学習計画の概要と従来の一般的な学習との比較. 26. 4. 作成した学習計画. 27. 第3.4節 学習計画の再検討と改良. 33. 1.学習計画改良の留意点. 33. 2. 改良した学習計画. 33.

(5) 第3.5節 生徒用ワークシートの作成. 35. 1. 生徒用ワークシート作成の留意点. 35. 2.製作したワークシートの概要. 35. 3.生徒用ワークシートの再検討と改良. 37. 第4章 授業実践. 38. 第4.1節 S申学校での授業実践. 38. 1. S中学校での授業実践の経過. 38. 2. 生徒、保護者への説明. 38. 3. S中学校での授業実践の様子. 38. 4. S中学校での授業実践のまとめ. 42. 第4.2節 E中学校での授業実践. 43. 1. E中学校での授業実践の経過. 43. 2. E中学校での授業実践の様子. 43. 3. E中学校での授業実践のまとめ. 44. 4. 2校での授業実践を終えて. 44. 第5章 授業実践の評価. 45. 第5.1節 中間アンケートについて. 45. 1.. 中間アンケート実施の目的. 45. 2.. 実施時期と方法. 45. 3.. アンケートの内容と結果. 45. 4.. アンケート結果の分析. 46. 5.. アンケート結果分析のまとめ. 50. 第5.2節 事後テストについて. 51. 1.. 事後テスト実施の量的. 51. 2.. 実施時期と方法. 51. 3.. テスト問題作成上の留意点. 51. 4.. テスト問題の内容. 51. 5.. テストの正答率. 52. 6.. 正答率の比較と分析. 52. 7.. 「電流」単元の学習全体についての感想アンケートの内容と結果. 53. 8。. 感想アンケートの比較と分析. 54. 9.. 事後テストの結果分析のまとめ. 55.

(6) 第6章研究のまとめ. 56. 1.研究の経緯. 56. 2.研究の結果. 56. 3. 「物づくりを通して学ぶ理科」の問題点と今後の課題. 58. 4.おわりに. 59. 謝辞. 61. 参考文献等一覧. 62. 資料. 63.

(7) 第1章 序論 本研究「物づくりを通して学ぶ理科の実践研究一電磁気教材を申心として一」では、理 科の学習に「物づくり」を取り入れる背景として、「電流」単元における生徒の学習の状況 や生徒が意欲的に取り組める実験の条件などをあげる。武田一美は、「科学技術教育」1>の. なかで「ものづくり学習は、観察・実験、野外学習などと一緒に児童・生徒の直接活動に 訴える学習であって、つくることによって物の構造や機能を理解し、つくる過程で創造的 能力を伸ばすことのできる能動的な学習のできる重要な学習活動である。」と述べている。. これは、本研究で明らかにしょうとすることと一致している。また、新学習指導要領にも 物づくりに関連する記述がある。これらのことについては、本論で詳しく述べるが、本研 究で「物づくり」を取り上げるのは、それだけの理由ではない。. 「理科」という教科は、人類の科学の進歩の歴史を、遡って体験する教科であるといえ る。中学校の理科で学習する内容でも、発見・発明された当時は最先端の科学であったは ずである。生徒達は、理科の学習を通して、その発見・発明の過程を辿り、再発見してい るのである。科学の発展の契機として、自然に対する興味から端を発する場合以外にもう 一つの要因があると考えられる。それは、「物づくり」である。人には、「こういう物が欲. しい」とか「こういう物をつくってみたい」という欲求がある。その欲求に答えるために 科学が発展してきたという面がある。ドイツ人で、ヒットラーを説得してV2型ロケットを 開発し、戦後アメリカに渡り月ロケットを開発したフォン・ブラウンは、「月へ行きたかっ た」のである。2)また、どうしても「月へ行くためのロケット」がっくりたかったのである。. そのために、あらゆる妥協をし、犠牲すら止む無しと考えてきた。このことの功罪は別と して、「ロケットづくり」という大きな目標に関係して、このときあらゆる分野の科学が総 動員され、進歩したはずである。このように、自然に対する興味からと同様に、「物づくり」 も科学の発展の大きな動機の一つであるといえる。 縞馬における、科学の発展を考えると、「物づくり」に関係するものが目立つ。例えば、. 昭和39年に開業した新幹線は、1000人以上の人を乗せた時速300km近い高速の列車が数 分間隔で走るという世界一の鉄道である。このようなものが36年前につくられ今日まで発 展してきた。このとき、新幹線というものを起爆にしてあらゆる科学が総動員され、進歩 したことだろう。このころから、日本の物づくりは世界最高水準になり、先進国になった ことは衆知のことである。また、日本には物づくりに関する長い歴史と文化がある。これ らの物づくりは、職人といわれる人達の経験と勘に支えられていると考えられがちである が、現代の科学に通じるような裏づけがあるといわれている。このようなことから、日本 の発展は、「物づくり」とそれに関わる科学の発展により支えられてきたと考えられる。. 科学の方法として「物づくり」があるということと、β本の発展を「物づくり」が支え てきたことを考えると、義務教育の中で科学を扱う中学校の理科で、「物づくりを通して学. 一1・.

(8) ぶ」という学習法があるべきではないか。本研究で「物づくり」を取り上げる背景には、 物づくりに対するこのような思いがあることをここに記しておく。. 本研究は、このような「物づくり」に対する思いから、以下に列挙することを明らかに して、「物づくり学習」と中学校理科の内容との整合性と、物づくりを通して学ぶ学習法の 有効性を実証するのが障的である。. ①「物づくり学習」は、生徒が理科の学習を意欲的に取り組めるようにするために有効で あること。. ②「物づくり学習」は、公立中学校の通常の教育活動として、理科の授業の中に取り入れ ることが可能であること。. ③「物づくり学習」によって生徒の学習内容への理解が向上できること。 本研究では、中学校理科の「電流」単元について実践研究を行う。「電流」単元の内容は、. 「電流」という生活に欠く事のできない身近なものであるにもかかわらず、中学校の理科 の中では、難しいものといわれ、生徒が必ずしも意欲的に学習に取り組んでいないという 現状がある。また、「電流」単元に関連する教材開発や指導法の工夫についての実践研究例 は数多くあるが、「物づくり」を取り入れたものは見当たらない。これらのことから「電流」. 単元において、物づくりの題材を電磁気教材として、単元を通して物づくり学習をする実 践研究を行うことにした。. 本研究の根幹となる背景や研究の目的について述べたが、本論文では以下のように議論 を進める。. 第2章では、理科の学習に対する生徒の実態調査を基に、生徒が意欲的に取り組める実 験の条件や「電流」単元の学習についての現状を述べる。また、「電流」単元の教科書にお. ける扱い方の変遷について、過去の例から、現在広く行われている学習法が普遍的なもの ではないことを明らかにする。. 第3章では、「電流」単元における「物づくりを通して学ぶ理科」の定義と実践のための 条件を設定し、この学習法についての具体的な提案をする。また、新学習指導要領との関 連にも触れる。その上で、授業実践のための物づくり教材や学習計画等について述べる。. 第4章では、「電流」単元における「物づくりを通して学ぶ理科」を2つの中学校で授業 実践した経緯と授業の状況について述べる。. 第5章では、「物づくり学習」をした2校の生徒に実施したアンケートや、一般的な学習 をした生徒と同じ問題で実施した「電流」単元学習後のテストの正答率の比較により、こ の学習法を評価する。. 第6章では、本研究の結果、「電流」単元において「物づくりを通して学ぶ理科」の有効 性が実証できたことについて、その根拠とともに述べる。また、「物づくり学習」について 問題点、今後の課題、最近の情勢について議論する。. 一2・.

(9) 第2章 第2ユ節. 「電流」単元について 「電流」単元の学習における生徒の実態・). 1.生徒が意欲的に取り組める実験の調査 「電流」単元の学習における生徒の実態について調べる前に、理科の学習について生徒 がどのように感じているかについて調べた。. (1)調査の方法. 理科の学習に対する生徒の実態を調べるためには、まず、どのようなことを生徒に質問. したら良いか決めなくてはならない。そこで、S中学校3年生の代表10名(各クラスの理 科係)に集まってもらった。ここでの話し合いでは、生徒達は、理科の学習は、実験が中 心であり、実験や実験結果等の扱い方しだいで、その内容に対する印象が決まってくると いう意見でまとまった。理科の学習について生徒がどのように感じているかについて調べ るのならば、授業で行っている様々な実験について、どのように感じているかを調べれば 良いということだった。また、生徒達は、自分達なりの書葉で実験を条件別に分類してい ることもわかった。アンケートは、その分類で質問することにした。また、意欲的に取り 組めた時は、「楽しかった」と感じるということなので、生徒達が分類した実験が「楽しか. った」かどうかについて選んでもらうことにした。また、いままで行った実験で「楽しか. った」ものについて書いてもらうことにし、このアンケートをS中学校3学年全員190 名を対象に実施した。. (2)アンケートの内容と結果 アンケートの内容と結果は、以下の通りである。. ▼表2−1 「楽しかった」実験の条件(複数回答可) ア.やり方が単純な実験 イ.やり方が複雑な実験 ウ.やり方が決まっている実験 エ.やり方を工夫してやる実験 オ.危険がなく安心してできる実験 カ.少し危険そうな実験 キ.はじめる前から結果がわかっている実験 ク.結果がどうなるかわからない実験 ケ.食べられるものができる実験 コ.持ち帰って家でも使えるものができる実験. 嘩3一. 27.4% 11.1%. 1α6% 19.5% 15.3%. 62.6% 4.2%. 52.1% 69.5% 21.6%.

(10) ▼表2・2 「楽しかった」実験(複数回答可). 1位 2位 3位. 4位 5位. 72.6%. カルメ焼き 食物連鎖のシュミレーション 水の電気分解 アンモニアの噴水 酸化銅の還元. 13.2% 7.4% 6.8% 4.2%. (3)アンケート結果の分析. 実験の条件ア∼クまでは、対になっている質問であるが、生徒にはそのことに関係なく 選んでもらった。ア、エ、カ、ク、認、が「楽しかった」実験の条件になるだろう。ア、 エ、カ、については、生徒にとって、自由度の大きい方が選ばれている。礫しかった」実 験については、特に選択肢を設けず、自由記述で書いてもらった。「楽しかった」実験の上 位に挙げられたものと、「楽しかった」実験の条件を併せてみていくと、生徒達が理科の学 習に対して望んでいるものがわかってくる。. 「カルメ焼き」は、「楽しかった」実験の1位である。これを食べられるからだと簡単に 片付けることはできない。「カルメ焼き」は、炭酸水素ナトリウムの熱分解の実験の一環と. して行っている。実験のやり方は、濃い砂糖液を加熱して炭酸水素ナトリウムを加えてか. き混ぜるだけなので単純である。しかし、加熱のし方やかき混ぜ方に3ツがあり、工夫す る余地がある。熱した砂糖液は高温であり、火傷の恐れがあり、少し危険である。やり方 により失敗したり味がちがうので、どうなるか結果がわからない。もちろん食べることが でき持ち帰りも可能である。. 2位の「食物連鎖のシュミレーション」は、磁石を肉食動物とし、クリップを草食動物 として、磁石にくっついたクリップを肉食動物に食べられた草食動物として、食物連鎖の. シュミレーション実験を行うものである。だいたい1回の授業時間内で20年分のシュミ レーションができ、自然界の肉食動物と草食動物の数の変化とほぼ同様の結果を得ること ができる。やり方は、磁石をころがしてクリップにつけるので単純である。磁石のころが し方やクリップの並べ方は工夫しなければならない。危険はないが、結果はどうなるかわ からないし、同じ結果はでない。この実験も、食べられたり、持ち帰ることはできないま でも、その他の「楽しかった」実験の条件はほぼ満たしている。. この2つの実験についてさらに考えてみると、生徒達にとって自由度が大きい条件がそ ろってはいるが、全体としては共通の目標に向かって進んでいるといえる。「カルメ焼き」. の実験では、どのグループも、炭酸水素ナトリウムが熱分解して二酸化炭素を発生するこ とを利用して「カルメ焼き」をつくっている。要はいかにうまくつくるかで、うまくつく るコツには共通点があり、砂糖や炭酸水素ナトリウムの性質と関係がある。「食:物連鎖のシ. ュミレーション」では、どのグループもまったく同じ結果はでないが、どのグループでも 先に草食動物が増えると肉食動物が増えることや、数が増えすぎると急に減ることがある など、自然界と同じ傾向を見つけることができる。つまり、生徒達は、自由度とともに、. .4一.

(11) 少しずつ異なる結果から共通するものを見つけ、ある傾向や法則を導くことができる実験 を「楽しかった」実験としているのである。. (4)生徒が意欲的に取り組める実験の条件. アンケート結果の分析をまとめると、生徒が意欲的に取り組める実験の条件は以下の通 りになる。なお、ケとコの条件は、実験の成果を生活に生かせることと解釈してまとめた。 ・やり方が単純 ・やり方を工夫してやる実験 ・少し危険が伴う実験 ・結果が決まりきってない実験 ・実験の成果を生活に生かせる実験 ・結果をまとめると、傾向が見つかり、法則性を導くことができる実験. (5) 「電流」単元の実験と生徒が意欲的に取り組める実験の条件との関係. 前述の「楽しかった」実験に、「電流」単元の関係の実験は挙がらなかった。「電流」単. 元の代表的実験ともいえる、電圧と電流の関係を調べるオームの法則を導く実験を例にし て、生徒が意欲的に取り組める実験の条件に照らして考えてみる。 ・やり方. 電流計、電圧計、抵抗、電源装置などを正しくつないで、電圧、電流を測定する。電流 計や電圧計の使い方、読み方を事前に学習しておかなければならない。回路をつなぐの に何本ものコードが必要。…やり方が複雑な実験 電圧を変化させていき電流を測定する…やり方が決まっている実験(特に工夫する余地 はない). ・危険度. 過剰に電流を流すと抵抗が高温になることがあるが特に危険なことはほとんどない。. …危険がなく安心してできる実験 ・結果. 電圧と電流は比例する。オームの法則。同じ条件なら局じ測定結果が得られる。教科書 等に結果例がある。…はじめる前から結果がわかっている実験 電圧と電流の関係を調べる実験では、「カルメ焼き」とは反対に、いわば、「楽しくない」. 実験の条件を兼ね備えているとさえいえる。実験の準備や測定に手間がかかり、教科書等 の結果例とまったく同じ結果をだすだけではつまらないのだろう。この実験についてある 生徒から「こんな決まったことを求めるだけの実験だったらやる必要はない。教科書の通 りかどうか確かめているだけで、つまらない」といわれたことがある。また、ある生徒は、. このような実験では、授業中、実験している振りだけしていて、レポートは、教科書等の 結果例を写して提出しているのだということも聞いた。このような実態では、生徒が「電. 。5・.

(12) 流」単元の学習について意欲的に取り組んでいないということになる。 中学校の理科の中で、「電流」単元は他の単元と比べると難しいといわれている。また、. わからなかったという生徒が多い。「電流」単元の学習はよほど生徒が意欲的に取り組める. ような工夫をしなければならない。しかしながら、生徒が意欲的に取り組める実験の条件 からすると、電圧と電流の関係の実験例は、これに当てはまっていない。f電流」単元の他 の実験にしても、現状の一般的な方法では同様である。ここでは、生徒が理科の授業の中 心と考えている実験についてのアンケート結果から述べたが、「電流」単元に関して、生徒 が意欲的に学習できるようにするための何らかの工夫が必要なことは明らかである。 2. 「電流」単元の学習に関する調査. 前述の実態調査では、理科の学習のなかでギ電流」単元の学習が生徒に意欲的に取り組 まれていない現状が明らかになったが、ここでは「電流」単元の学習に関することに絞っ て調べてみることにする。. (1)調査方法. S中学校の、本研究の授業実践を実施する1学年上の一般的な学習で電流単元の学習を. 終えた3年生141名に対して、電流単元の学習についての感想と実験についてのアンケ ート(資料4参照)を実施した。「電流」単元で扱った主な実験について選択肢にあげ、「楽 しかった」か「つまらなかった」かを選んでもらった。. (2)調査結果. 「電流」単元の学習についての感想と実験についてのアンケート結果は以下の通りである。. ▼表2・3感想アンケートの内容と結果 むずかしかった. 73.8%. つまらなかった. 46.8%. ふつう. 26.2%. ふつう. 41.1% 12.1%. 31.9% 62.4%. やさしかった わからなかった. 56.0%. 楽しかった 嫌いになった. ふつう. 40.4%. ふつう. よくわかった. 0.7%. 3.5%. 好きになった. 5.0%. ▼表2−4 「電流」単元の実験に関するアンケートの結果 学習順 1. 2 3. 実験の内容 抵抗に電流を流し、測定値から電圧と電流 フ関係(オームの法則)を導く 2本の抵抗で、直列のときと並列のときの d流・電圧の関係や合成抵抗をしらべる 電熱線で水をあたため、電流による発熱を オらべる. 一6・. 楽しかった. つまらなかった. 15.6%. 50.4%. 7.1%. 41.1%. 10.6%. 31.2%.

(13) 4 5. 6. 磁石や電流による磁界のようすを鉄粉を ワいて観察する 磁石による磁界と電流による磁界の相互 ?pをコイルの動きで調べる オシロスコープや発光ダイオードを使っ ト直流と交流のちがいをしらべる. 46.8%. 11.3%. 39.7%. 24.8%. 34.8%. 21.2%. 80. (3)アンケート結果の分析. 感想アンケートの結果からは、「電流」単. 60. 元に対して生徒達が良い印象を持っていな いことがわかる。「むずかしかった」、「わか らなかった」、「つまらなかった」の割合がそ. 髄40 20 o 転ずかしかった. れぞれの「ふつう」より多い。「嫌いになっ. た」割合も少なくない。電流の学習は、むず. かしい→わからない→つまらない→嫌いに. ふつう. やさしかった. ▲図2・1 電流単元の感想アンケート① 80. なるの悪循環をしているようにも見える。し. u. 「一. かし、「むずかしかった」の割合より「わか らなかった」「つまらなかった」の割合は小 さくなってきている。このことは、必ずしも、 「むずかしかった」ことは「わからなかった」. 鴨40 ⑳ 0. わからなかった. 「つまらなかった」に結びつかないというこ. とである。つまり、ある割合の生徒達は「む ずかしかった」ことを克服して、電流の学習. ふつう. よくわかった. ▲図2−2 電流単元の感想アンケート② 80. をすることができたということになる。この ⑤o. あたりに電流単元の学習を改善するための 可能性があるようだ。「むずかしい」ことを. 鮪40. 克服するには、意欲的に学習しなければなら. 20. ない。また、「むずかしさ」のハードルを低. 0 つ塞らなかった. く感じさせることも必要だろう。これらのこ. ふつう. 申しかった. ▲図2・3 電流単元の感想アンケート③. とについて、学習法を工夫して改善すれば、 「わからなかった」、「つまらなかった」を減. らして、「よくわかった」や「楽しかった」. 80 60. を増やすことができるかもしれない。. 9640. 「電流」単元の学習は、電流回路関係と電. 20. 磁気関係の大きく2つに分けられる。電流単. 0. 嫁いになった. 元の実験に関するアンケートの結果からは、. 一般的な学習法では、はじめに学習する電流. 一7・. ふつう. 野9になった. ▲図2・4 電流単元の感想アンケート④.

(14) 回路関係の実験が「つまらなかった」が多く、後半に学習する電磁気関係の実験について は、「楽しかった」の割合が多かった。特に、単元の一番はじめに扱うオームの法則の実験. が最も「つまらない」実験になっていることは注目しなければならない。このことは、現 状の一般的な「電流」単元の学習では、一番はじめに生徒が最も「つまらない」と感じる 実験をやって生徒の意欲を失わせていることになる。単元のはじまりに生徒がどのような 印象を持つかということは重要である。特に理科においては、各単元のつながりが少ない ので、前に学習した単元がよくわからなかった生徒でも、無理なく新しい単元の学習に入 れる。そのため、新しい単元に入るときには、多くの生徒が意欲的になれる。ところが、 電流単元においては、生徒が意欲的になっているときに、最もその意欲をそぐような実験 をもってきてしまっている。このことが、「電流」単元全体の印象を悪くして、この単元を 「わからない」、「つまらない」ものにしているといえる。. 3. 「電流」単元の学習に対する生徒の実態調査のまとめ. 生徒が意欲的に取り組める実験の調査や「電流」単元の学習に関する調査から以下のよ うなことがいえる。. ①他の単元の実験に比べて「電流」単元の実験に生徒は意欲的に取り組んでいない。 →生徒が意欲的に取り組める実験の条件を考慮して改善する必要がある。 ②現状の一般的な学習法での「電流」単元の学=習順序は、生徒を意欲的にさせるようには なっていない。. →生徒の実態に合わせて、学習順序を検討する必要がある。. ・8一.

(15) 第2.2節 「電流」単元の教科書での扱いの変遷 1.現状の一般的な学習法での「電流」単元の学習順序 授業実践を行うS中学校で使用している教科書4)では、以下の表の順序で「電流」単元の 内容が展開されている。一般的な学習では、この順序に従っている。 ▼表2−3 東京書籍「新しい科学1分野下」(平成9年発行)の電流単元・) 内容. 学習項目. 1章 電流の流れ……13時間 P.電流はどのように流れるか…4時間. 電流の流れる道筋、電流の強さ. 2.電圧と電流の関係…3時間 3.回路のちがいと電流、電圧…4時間. オームの法則. 4。電流の正体…2時間 2章 電流のはたらき……9時間 P.電流による発熱…3時間 2.電流と磁界…5時間. d流を流すはたらき 直列回路の電流と電圧、合成抵抗 タ列回路の電流と電圧、合成抵抗 放電と電流、金属線中を流れる電流 d子の流れ、自由電子 電力、発熱量 磁石のまわりの磁界、電流による磁界 d流が磁界の中で受ける力. d磁誘導 3.直流と交流…1時間. 直流と交流のちがい. 自由研究、予備…5時間. 簡単なモーターづくり、問題練習等. この教科書では、「放電」や「電子」に関する内容が、「電流の流れ」の章に含められて いる。また、「電流のはたらき」の章の中に「電流による発熱」と「電流と磁界」を一緒に 含めている。これらの点で特徴がある。「放電」や「電子」については、単元の最後の方で 学習・)することにしていたり、「電流と磁界」で独立した章を設けている教科書7)もある。. また、「電圧と電流の関係」の学習項艮の前に、「回路のちがいと電流、電圧」の項目を持 ってきている教科書8)もある。しかし、現行の教科書では、どれも、「電流回路」→「電流 のはたらき」→「電流と磁界」という流れは共通している。. 2. 「電流」単元の学習順序の変遷. 6・3制といわれる現行の義務教育制度が昭和22年に発足した以降の中学校の理科の教科 書について、「電流」単元がどのように扱われているかを入手できた教科書について調べた。. 一9一.

(16) ・昭和25年大同本図書「電気はどのように利用されているか」9} いわゆる、生活単元学習時代の教科書である。家庭での電気の利用を例にして、「電力」. を先に学習している。乾電池について学習する部分があり、化学分野の内容が含まれてい る。電磁気関係については、モーターのしくみを中心に扱っている。単元名が「電気はど のように利用されているか」になっている他、「健一は家の電気の故障が直せるようになっ た」「発電所を見学しょう」「電車のモーター」「精米所のモーター」など生活感のある見出. しが目立つ。特に、直流モーターと交流モーターのちがいを電車のモーターと精米所のモ ーターで説明しているところが印象的だ。また、家庭の電気器具の分解や物づくりを取り 入れている。. ・昭和35年大日本図書「理科の世界2年」電流・・). 1956年の「スプートニクショック」の影響をうけた「現代化」時代の教科書である。単 元名は、「電流」になり、1.電気と電流、2.電流の熱作用、3.電流の化学作用、というよう. に生活感のある見出しはない。生活単元学習の教科書にくらべると整然としている。「電流 と磁界」については、別に独立した単元で学習するようになっている。「電流回路」→「電 流のはたらき」という流れができている。また、静電気について、「1.電気と電流」のはじ. めで学習することになっている。静電気をはじめに学習するのは電磁気学の専門書と同じ であり、科学的な系統性を重視しているのがわかる。 ・昭和39年 大日本図書「理科2年」電流・・). 昭和35年の教科書と内容的にはほとんど差がない。「電流と磁界」が別単元扱いなのも 同じである。ただし、電流単元のはじめにあった「静電気」が、「電流のはたらき」のあと. になっている。このあと、「電流と水溶椥で、イオンについて学習するので、その直前に 「静電気」をもってきて、電子について「静電気」を基にして説明する意図がわかる。昭 和35年の教科書でも、電流単元の中に「電流の化学作用」ということで、イオンがてでく るが、「静電気」は、単元のはじめで学習するので、両者の位置がはなれていた。「静電気」 をどう扱うかで、試行錯誤しているのがわかる。. ・昭和46年大日本図書「理科2年」電流鋤 この教科書では、「電流回路→電流のはたらき」という流れは変わらないが「回路のちが いによる電流、電圧」を「電圧と電流の関係」の前に学習することにしている。「直流と交. 流」が「電流のはたらき」の前にきている。この「直流と交流」も定位置が定まらないも のの一つである。「電流と磁界」については、別単元扱いである。静電気関係が扱われなく なった。また、電池などの化学分野の内容は、「電流」単元に含まれていない。. ・昭和52年 大β本図書「理科1分野下」電流13). 理科の教科書が学年別ではなく、物理・化学分野の1分野、生物・地学分野の2分野で 分かれるようになる。「電流回路」→「電流のはたらき」という流れは変わらない。「電流 と磁界」については別単元扱いである。. .10一.

(17) 教科書発行年度 学習順序昭和25年昭和3碑昭和39年曙和46年昭和52年斯 1. →一■流回路. 2. +電圧と電流の関係. 3. 一一. 4. 一一一一一一. 一一一一一一一一一. +■流のはたらき. 5. 6 7. 踏のちがいと■流、 ■圧 →←電子の流れ. 一一一一一一一一. 一一. Z一一一. +電流と磁昇 +直流と交流. 怦鼈. 8. 一一. テ■気. 9. 輔一. d流の化学作用. ▲図2−5 電流単元の学習順序の変遷. 3. 「電流」単元の教科書での変遷のまとめ. 図2−2に見るように電流単元における学習内容や順序は必ずしも一定ではないことがわ かる。「静電気」や「電子」、「電池」などは、単元内での位置が一定していない。新指導要. 領では、現行の電流単元にまた「静電気」が含まれることになっているが、どの位置に入 るのだろうか。しかし、現行の一般的な学習での「電流回路」→「電流のはたらき」→「電. 流と磁界」という流れは、昭和35年の現代化の教科書から定まってきたことがわかる。. 教科書としておもしろいのは、昭和25年の生活単元学習時代のものである。身近なこ とを多く扱い、生徒の興味をひくように書かれている。ただし、学習の順序が身近にある ものの順のようになっているので、電流の学習としてのつながりがわかりづらい点がある。 しかし、身近なものから取り上げるというこの教科書の扱い方は参考になる。. 年代によって、教科書における「電流」単元の扱いかたが異なるのは、その教科書をつ くる時のいわば「テーマ」が異なるからである14)。身近なものから学ぶ「生活単元」と科. 学的な系統性を重視した「現代化」では、大きな違いがある。しかし、その「テーマ」も 試行錯誤の繰り返しでさえある。. 前述したように、現行の「電流」単元の扱い方や学習順序は必ずしも生徒を意欲的にさ せるものではなく、検討する必要がある。本研究では、新たに「物づくり」という「テー マ」をもって、電流単元の扱い方や学習順序について再構築することにした。. .11・.

(18) 第3章 「電流」単元における「物づくりを通して学ぶ理科」 第3.1節. 「物づくりを通して学ぶ理科」とは. 1.従来の一般的な理科学習の問題点 第2章で述べたように、従来の一般的な学習法での「電流」単元の学習には、実験のや り方や、学習順序に検討すべき問題があった。さらに、この他に一般的な理科の学習全般 において以下のような問題点がある。. (1)理科の実験は、理科室で行われ、授業時間内に終了することになっている。実験に使 つた器具などは、返却または処分され、生徒のもとに残るものはない。. 前述したように、生徒達が、理科の学習の中心と考えている実験は、従来の一般的な 学習では、このように行われているといえる。実験器具などが理科室備え付けで、実験 終了後返却するのは当然であるし、再利用できないものは処分する。ところが、他教科 において、実験のように作業を伴うものでは、たいてい学習の成果が具体的に形あるも のとして生徒のもとに残る。また、興味をもった生徒の中には、自分でもう一度やって みるために実験器具の貸し出しを希望する者や、実験の結果できたものを持ち帰ろうと する者がいる。この希望には、学校では簡単に応じるわけにはいかない。そのためか、 多くの生徒は、理科の実験は理科室という特別な場所で行われる限定されたものと考え ている。本来、学習というのは、継続して行うべきものであるのに、理科の学習では、 その申心である実験がいわば、その場限りのものになってしまっている。このようなこ とは、理科の学習の宿命ともいえる特徴かもしれないが、何らかの方法でこの問題を乗 り越える手段があれば、理科の学習法を大きく改善することになる。. (2)理科の実験内容と、日常生活との関連が見出しにくい。. 理科の実験法について次々と新しい方法が開発され、さかんに発表されている。実験 というのは、自然現象を単純化して理想的な形にして再現するものである。そのためか、. 洗練された実験法ほど現実味が薄くなり、日常生活との関連が見出しにくくなってしま う傾向がある。このことは、(1)で述べた問題点とあいまって、ますます理科の実験を. 限定された世界のものにしてしまっている。理科の実験で行うことをもっと生徒に身近 に感じさせるような工夫が必要である。. 2. 「物づくりを通して学ぶ理科」の提案. これまで述べてきた、一般的な理科の学習の問題点を解決する一つの方法として以下の ように「物づくりを通して学ぶ理科」を定義して提案する。. .12・.

(19) 生徒に「物づくり」のための材料を与え、その材料を実験器具として、単元の学習内容 の実験を行い、材料のつくりやしくみを学習しながら物づくりをし、物づくりで完成させ たものを使って実験などを行い学習を継続する。また、つくったものは、授業での学習終 了後も自学自習に使え、日常生活にも生かせるものとする。. 「物づくり」を第2章2.1節で述べた、生徒が意欲的に取り組める実験の条件に照らし合 わせて考えてみる。理科の学習で扱う物づくりなので、「物づくり」の優劣を評価するもの. ではないので、ある程度簡単にできるもので、やり方が単純といえる範囲内のものにした い。いくら簡単につくれるものであっても、うまくつくるには識ツがあり、工夫が必要で ある。また、工業製品と違って生徒がつくるものであるので、ひとつひとつに差がでるの は当然で、全員が同じ出来映えということはあり得ないだろう。しかし、生徒ひとりひと りが別々のものをつくるわけではないので、つくったものを利用した実験では、それぞれ 異なる結果がでても、同じ傾向を見つけることができるだろう。このことから、規則性や 法則を導くことができる。もちろん、できあがったものは、持ち帰ることができる。この ように考えると、物づくりは、生徒が意欲的に取り組める実験の条件に当てはまっている ことがわかる。また、「物づくり」ででき上がるものが、生徒にとって興味のもてる魅力的 なものであれば、さらに意欲を高めることができるだろう。. 3. 「物づくりを通して学ぶ理科」を実践する上での条件. この「物づくりを通して学ぶ理科」を、公立中学校における通常の教育活動の中で授業 実践するために、以下のような条件を設定した。この条件は、「物づくりを通して学ぶ理科」. を研究として終わらせないで、一般化していく上で大切なことである。授業実践のための 学習計画や教材等の作成は、2で述べた「物づくりを通して学ぶ理科」の定義とこの条件の 範囲で行うことにする。. ・従来の一般的な学習で行う全ての学習内容を網羅する。 ・「物づくり」を取り入れた場合の授業時数が、従来の一般的な学習と比べて差がない。 ・「物づくり」でつくったものが一つの単元を通して使え、他の単元にも応用可能である こと。. ・従来の学習と比べて授業者の負担が大きくならないこと。. 4.単元の選定と構成 ある程度長期間に渡るもので一貫性のある単元として「電流」を選ぶことにした。新学 習指導要領にもあることも理由の一つである。「電流」は、9常生活において身近で必要不. 可欠なものであるにもかかわらず、内容としてはむずかしいものといわれている。第2章 2.1節でのべたように「電流」単元の実験は、生徒が必ずしも意欲的に取り組んでいないと いう現状がある。この単元を、「物づくり」を通した学習法で活性化しようとする思いもあ. 一B一.

(20) る。単元の構成としては、2で述べた、従来の一般的な学習法での時数で授業を行えるよう にしたこと以外は、独自のものとし、単元内での学習順序を思いきって変えることにした。. これは、第2章で述べた生徒アンケートの結果と「物づくり」を円滑に行うことを基にし ている。. 5. 「物づくり」の題材について. 「電流」単元におけるギ物づくりを通して学ぶ理科」の題材として、生徒達に発電機・ モーターをつくらせることにした。発電機・モーターの材料には、磁石やコイルがある。. これらを使って、電流と磁界の実験ができる。発電機やモーターのしくみの学習は、製作 しながら行える。モデル化した実験器具などで学習するよりわかりやすいだろう。できあ がった発電機・モーターは、電源として、電流回路の実験に使える。生徒ひとりひとりが つくった発電機を電源にするので、画一的な実験結果は出ないだろう。これらのことから、 この単元における「物づくり」の題材として、発電機・モーターを取り上げることは、2、. 3の「物づくりを通して学ぶ理科」の定義や実践のする上での条件に合っている。また、生 徒が意欲的に取り組める実験の条件(第2章2.1節)にも当てはまっていることがわかる。 6. 「電流」単元における「物づくり学習」と新学習指導要領との関連 平成10年12,月文部省告示の中学校学習指導要領では、「電流」単元をどのように扱って. いるだろうか、本研究で提案する「電流」単元における「物づくり」学習との関連性につ いて考えてみる。 ・中学校学習指導要領 理科15). ▼教科の目標. 自然に対する関心を高め、目的意識をもって観察、実験などを行い、科学的に調べる能 力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め、科学的な見方や考え 方を養う。. ▼第1分野の内容(3)電流とその利用16). 電流回路についての観察、実験を通して、電流と電圧との関係及び電流の働きについて 理解させるとともに、日常生活と関連付けて電流と磁界についての初歩的な見方や考え方 を養う。. ・解説一理科編一. ▼(イ)電流の利用について ・・. 痰ヲば、簡単なモーターの製作を通して、電流と磁界について理解を深めることも考え. られる。. …誘導電流を得る発電機とモーターは同じ仕組みであることを装置を実際に動かし、相互 に関連付けてとらえさせる。. .14一.

(21) 本研究は、「物づくり」を取り入れることによって「電流」単元の学習をより生徒が意欲. 的に取り組めるものにしようとするものであって、はじめから、新学習指導要領を意識し たものではない。しかし、今回の新学習指導要領から新たに教科の目標に付け加えられた、 「目的意識をもって」は、「物づくり」をすることで、実験に対する目的意識を強めること ができるので関連性があるといえる。また、「日常生活と関連付けて」、「簡単なモーターの. 製作を通して」、「発電機とモーターは同じ仕組みであることを装置を実際に動かし」など. 本研究で行おうとしていることが謳われている。よって、本研究は、この新学習指導要領 の趣旨に沿ったものであるといえる。. 一15一.

(22) 第3.2節. 「物づくり」教材について. 1.教材選定の条件 第2.1節で述べた通り、電流単元で「物づくりを通して学ぶ理科」を実践するために、発. 電機・モーターをつくることにした。生徒が「電流」単元の学習しながら製作し、実験に 使えるようにするために以下のような条件の基に教材を選定した。 ・発電機・モーターのしくみがよくわかるもの ロイル、整流子、ブラシの組み立てが簡単にでき、動作の様子が観察できるもの。 ・電流回路の実験に必要な電流を発電できること. 0.1A、1∼3V程度の発電能力 ・実験に耐えられる耐久性 ・組み立てが簡単なこと. 組み立てに接着剤、半田付けを使わない ・学習計画で決めた時間内で完成できるもの ・単価が安価なもの. 2.教材選定の経緯 (1)市販の直流モーターの利用. できるだけ現実に使われているものと同じものを教材として扱いたいので、市販の小型 直流モーターを部品の状態で購入して使えないかと考えた。また、教科書等にも、市販の 小型直流モーターを分解した図が載っている。そこでメーカー数社と交渉した。メーカー 側からの解答は以下のようだった。. ・モーターは完成品の状態で、標準解しての品質管理をしている。完成途中の部品の出荷 は想定していない。. ・完成途中の部品抜き取りは、生産ラインを一時的に停止させることになる。 ・完成品にくらべて、完成途中の部品での供給は高い値段になってしまう。 ・モーターの製造は国外の工場で行っている。. ・数個であれば見本として対応できる。つくるとなると最低万の単位。100の単位というの は困る。. ・現在のモーターの部品はごく小さく精密なので生徒が扱うには難しいだろう。 要するに、「電流」単元における「物づくりを通して学ぶ理科」に対してモーターメーカー. は協力できないということだった。特に、製造が国外であることは致命的である。製造途 中での部品をメーカーの好意で分けてもらってきた経験があるが、いろいろなものの製造 が国外に移転するようになってきて、このようなことは難しくなってきている。. 一16一.

(23) (2)既存の教材の利用. 小学生用の各種の学習キットを扱っている教材メーカーがある。ここから科学クラブ用 のキットとして、手回し発電機が販売されている。これは、学校教材としてだけでなく一 般向けに模型店などでも販売されているものである。. D社製・発電機の概要 ・セットの内容. 鉄心用金属板15枚、心棒、エナメル線、整流子用銅版3枚・プラスチック製円筒、 ブラシ用銅版、磁石2個、プラスチック製ブラシ留め具、コード、歯車、シャフト、ハ ンドル、プラスチック製ケース・フタ、取り付け用ネジ、麦球、潤滑油、説明書 ・組み立て方法. 金属板を15枚重ねて鉄心にする。小さく薄い銅版3枚をプラスチックの円筒にはめ、. 整流子とする。これらを丸棒に通してエナメル線を100回ずつ鉄心にまいてコイルにし て、電機子ができあがる。電機子をプラスチックの台に載せ両側に磁石をはめる。整流 子を両側からブラシではさみ、留め具で固定する。ブラシの一端にコードをつける。歯 車を組み合わせてハンドルとつなぐ。コードを外に出すようにしてケースに収め、フタ をネジ止めして完成である。. ・キットの長所と問題点. 購隈_.. 募1三海難1難lll豊「. 薄 暑. ただし、金属板を重ねて心棒を通したり、ξ 整流子になる小さな銅版をプラスチックのジ. 湖 らないとはみだしてしまう.歯車を取零葬_ ... けるプラスチックにゆがみがあり、ふたを. Q謹. ▲図3−1発電機の内部. 強く締めるとハンドルが回転しづらくなるも (整流子とブラシが見える). のがあった。このキットと実験に使う豆電球 などを含めると生徒一人分が約1000円となり、やや高価になってしまうのも問題である。. (3)発電機・モーターの教材への利用のためのテスト. D社製の発電機のキットは、若干の問題点があるものの、授業実践のための教材として 使えそうなので、以下の点についてテストした。 ・発電能力. 実験用2.2V、0.11A、20Ω豆電球に接続し発電して電圧、電流を測定した。. ・17・.

(24) ▼表3・1 発電機の発電能力 回転. ゆつく り・・・・・・・・・・・・… 〉 亭まやく. 電圧(V). 0.0. 0.5. 1.0. 1.5. 2.0. 電流(A). 0.00. 0,025. 0,050. 0,075. 0.10. 最大2.4V程度 発電機に添付されている説明書には、5V、1Aまで発電可能とあるが、実験等に使う予 定の豆電球につないだところ、上記のような結果で、発電性能としては、十分実験に使 えることがわかった。. ・モーターの回転. ハンドルに自転車用速度計のセンサーをつけ、電圧を上げていったときの回転数の変化 を測定した。. ▼表3−2モーターの回転数の変化の測定結果 電圧(V). 0.0. 1.0. 2.0. 3.0. 4.0. 5.0. 電流(A). 0.0. 0,215. 0,250. 0,290. 0,325. 0,360. 0.0. 0,224. 0,255. 0,360. 0225. 0,255. 0,310 0,305. 0,340. 0.0. 0,350. 0,370. 0.0. 0,224. 0,255. 0,305. 0,360. 0,400. 0.0. 0,226. 0,255. 0,335. 0,370. 0,410. 0.0. 0,223. 0,254. 0,303. 0,349. 0,380. 0.0. 4.65. 8.00. 10.34. 12.31. 13.89. 0.0. 4.46. 7.84. 9.68. 11.76. 13.89. 0.0. 4.44. 7.84. 9.84. 11.43. 13.51. 0.0. 4.46. 7.84. 9.84. 11.11. 12.50. 0.0. 4.42. 7.84. 9.84. 10.81. 12.20. 平均 抵抗(Ω). 平均 電力(W). 平均 回転数1秒. 平均. 0.0. 4.49. 7.87. 9.91. 11.48. 13.20. 0.0. 0,215. 0,500. 0,870. 1,300. 1,800. 0.0. 0224. 0,510. 0,930. 1,360. 1,800. 0.0. 0,225. 0,510. 0,915. 1,400. 1,850. 0.0. 0,224. 0,510. 0,915. 1,440. 2,000. 1,005. 1,480. 2,050 1,900. 0.0. 0,226. 0.0. 0,223. 0,510 0,508. 0,909. 1,396. 0.0. 0.48. 1.25. 1.74. 1.93. 2.24. 0.0. 0.48. 1.25. 1.72. 1.97. 2.20 2.20. 0.0. 0.48. 1.25. 1.74. 1.93. 0.0. 0.52. 1.29. 1.78. 1.96. 2.13. 0.0. 0.54. 1.29. 1.74. 1.97. 2.20. 0.0. 0.50. 1.27. 1.74. 1.95. 2.19. 電流…測定値:. 抵抗・電磁…電圧、電流より計算 回転数…測定値 測定は各電圧ごとに5回計測、抵抗・電力・回転数の数値は表の順に対応. 48一.

(25) ハンドルに取り付けた小型磁石が回転によ り通過するのを、センサーが感知してデジ 審5’・. タル表示する。(自転車用のため、km1時表. 甲曙. 示になっているので、回転数1秒に換算して. 鋼. いる。). ▲図3−2自転車用速度計センサーを使ったモーターの回転数の測定. 表3−2の測定結果をグラフにすると以下のようになる。 ;1. 2.5 ◎’. 2. 一据. ◎. 魯L5. 藏. 量・. ○. 塔 1. 腺:. 回. 0.5. 包. 0 0. 1. 2. 0. 3. 1. 2. 3. 電力(W). ■カ(W). ▲図3−4電力と抵抗の関係. ▲図3−3電力と回転数の関係. ;1. 0.5 0.4. 一;:. 安0.3. 量・. 爆 鯉0・2. 羅1. 0.1. 二 〇. 0 1. 2. 0. 3. 回転教/秒. 2. 4. ■圧(V). ▲図3−6電圧と電流の関係. ▲図3−5回忌数と抵抗の関係. 一19・. 6.

(26) 図3・3から電力と回転数の関係が、電圧が3.OV程度までならほぼ比例しているといえ る。電圧を大きくしていき、回転数が上がって行くと、機械的な抵抗が大きくなって、電. 力が増大しても、回転数はあまり上がらなくなる。このことは、電力と発熱量の関係を調 べるために行う、「電熱線で水を温める実験」と、同様の傾向である。電力を増大して発 熱量を大きくしても、水の上昇温度はそれに比例して高くならなくなる。これは水の温度 が上昇するに従い、周囲との温度差が大きくなり、逃げる熱が増加するためである。電流 のはたらきが電力と関係することを調べる実験として、電圧をあまり大きくしないうちは、 このような、モーターの回転数を測定する実験が使えそうだということがわかった。 ・製作時間. このD社製の発電機を授業実践するために生徒が製作するときの所要時間を推定しな ければならない。そこで、授業実践をする授業者(八木)に事前の説明なしでっくって もらい、製作時間を測定することにした。. 電機子の組み立て……20分 電機子にエナメル線を巻く……25分 電機子に整流子とブラシをつける……15分 歯車とハンドルをつけて完成させる……20分 このキットの長所と問題点に関しては、授業者もほぼ同意見であった。生徒が授業で扱 うとなると、準備や説明の時間を考えて4時間が必要になることがわかった。. (4)教材の決定と改良. 既存のキットを使うことにためらいはあるものの、条件を満たすものが他にないため、. このD雪質の発電機キットを選定することに決定した。ただし、授業実践に使うために以 下のように、若干手を加えることにした。 ・あらかじめ電機子を組み立ておく. 学習計画上製作は3時間で行うことになった。(後述)また、鉄心用の金属板を重ねて 心棒を通す作業は、電流と磁界の学習との関連があまりないので、図3−7の形にあらかじ め組み立てておいたものを生徒に渡し、コイルを巻くことにした。 ・レンズ付き豆電球の追加. 麦球が付属品として入っているが、実験用と しても、学習後の利用のためにも不十分なので、. 2.2V、0.11A、20Ωの豆電球をフィルムケース. に収め、凸レンズをつけたものをつくった。こ れは、実験に使用したのち、発電機のケースに 組み込んで、図3・8のような手回し発電機付き 懐中電灯にすることができる。. ▲図3−7 磁石・電機子・豆電球. ・20・.

(27) ・生徒に部品ごとに取らせる. このキットは、全ての部品が一つの箱に収めてある。 個人で製作するためにはこれでよいが、授業で個々の. 部品を説明しながら製作するには不向きである。箱か ら全ての部品を取り出して、部品ごとに整理し、生徒. がその授業で製作するのに必要な分だけ取らせるよ うにした。. ▲図3−8手回し発電機付懐中電灯. 3.授業実践での生徒の製作上の問題 S中学校での授業実践では、発電機の製作に関して以下のような問題が生じた。. ▼表3・3 製作上の問題とその原因と対策 問題. 原因. 対応. ・コイルが電機子からはみ. ・コイルの巻き方がゆるい。. ・セロテープで巻いてはみ 出ているエナメル線を押. だす。. ・コイルの巻き数100回が 難しい。. し込む。. ・巻き数を80回にする。. ・電機子の回転が重い。 ・ハンドルが回らない。. ・はみでたエナメル線が磁. ・歯車がかける。. ・潤滑油を必要なところに. 石に接触している。 注していない。. ・プラスチックが歪んでい るためブタをきつくネジ 止めすると歯車のかみ合 わせが悪くなる。. ・発電能力が極端に低い。. ・はみでたエナメル線が磁 石に接触し被服がはげる ことにより短路している る。. ・3ヶ所巻いたコイルの内 1ヶ所が逆に巻いてある。. 一21一. ・セロテープで巻いてはみ 出ているエナメル線を押 し込む。. ・潤滑油を注す。. ・ハンドルが軽くまわるの を確かめながら少しずつ ネジを締めきつく締めな い。. ・取り付けた電機子をはず し、コイルを巻きなおす。.

(28) ・突然ハンドルが回らなく なる。. ・回しているうちにだんだ んコイルの巻きつきがゆ るくなりエナメル線がブ ラシなどに引っかかって 回らなくなる。. 詳しくは、授業実践のところで述べるが、ほとんどの問題は、コイルの巻き方に起因して いる。コイルを巻くことは、発電機づくりの最初の作業である。ここでの製作に問題があ るのを見逃すと発電機づくりは失敗し、はじめからやり直すことになる。. 4.製作上の問題への対策 S中学校での製作上の問題点は、ほとんどコイルの巻き方に起因するものである。授業 者は、生徒を個別指導してコイルの巻き方を見ているのだが、うまく巻けているかという 基準がなかった。また、一人の授業者で全員の生徒の巻き方をチェックするには無理があ る。そこで、以下のような対策を考えた。 ・ゲージの利用. 図3・9のようなゲージを木板でつくり馬添1枚ず つ用意した。この中にコイルを巻いた電機子を通し、 余裕をもってこのなかで電機子が回ればよいとした。 ・班員同志でのチェック. 班員同志で、このゲージを使って、コイルの巻き. 電機子の直径. 方を確認し合うことにした。潤滑油を注したかどう ▲図3・9ゲージ. かについても同様にした。. ・対策後の授業実践. これらの対策をして、E中学校にて再度の授業実践を行った。詳しくは後述するが、 コイルの巻き方に関する問題はほとんど起こらず、円滑に製作の授業を進めることがで きた。「物づくり」においては、うまくつくるための明確な基準が必要なことがよくわか った。. 一22。.

(29) 第3.3節 学習計画の作成 1. 学習計画作成上の留意点. 「物づくりを通して学ぶ理科」を「電漁単元で実践するために以下のような点に留意 して学習計画を作成することにした。. ・各学習項目の内容を検討し、学習順序を見直す。. ・「物づくり」と学習内容を関連させて生徒の関心・興味を高める工夫をする。 ・授業時数が、従来の一般的な学習法と差がないこと。. 2.各学習項胃と学習順序の検討 (1) 「電流と磁界」をはじめに学習する. 「電流」単元の一般的な学習順序は、「電流回路」、「電流のはたらき」、「電流と磁界」で. ある。実践校で使用している教科書でも、「電流」単元は、大きく2つの章に分かれていて、. 今回、物づくり学習で取り上げる発電機・モーターに関係ある「電流と磁界」は、第2章 の後半である。しかし、発電機・モーターをつくるのは、その製作を通して電流と磁界の 学習をすることは勿論だが、でき上がった発電機・モーターを電流回路などの実験に利用 するという意図がある。そのため、現状の学習順序を入れ替えて、「電流と磁界」をはじめ に学習する必要がある。. また、一般的な学習を行った前学年の生徒のアンケート結果では、第2章2.2節で述べた ように「電流と磁界」に関する部分の実験については楽しかったという感想が多く、逆に 「電流回路」に関する部分の実験については不人気であった。「電流」単元のはじめの方で、. 電熱線に電流を流してみるというだけの無味乾燥な実験に定量的な測定や計算を要求され、 電流の学習に対する意欲が継続できないという現状がある。はじめは、生徒の興味を引く ような、楽しいもの」定性的な扱いで済むものを学習し、最後のほうで定量的な扱いや計 算するような学習順序の方が良いと考えた。. 学習順序を入れ替えて、電流と磁界を先に学習することにすると、学習内容のつながり が途切れて、生徒にとってわかりにくくなるのではないかという心配がある。しかしなが ら、「電流と磁界」の部分で、「電流回路」での学習が前提になっているところは少ない。. また、小学校でも電流回路や電磁石の学習をしているので、中学校での「電流」単元のは じまりが「電流と磁界」であっても支障はないと考えた。. (2)各学習項目の検討. 実践校で使用している教科書では、「電流」単元は以下のような順序で学習することにな. っている。(1)で述べた通り、電流と磁界は単元のはじめにもつていくことにしたが、そ の他の部分でも現行の学習順序ではいくつかの問題点があることがわかつので、これにつ いても、学習順序を検討した。. 一23一.

(30) ▼表3・3 教科書での「電流」単元の学習順序. 「電流」単元 合計27時間 …学習項目. 、章繍の流れ_、3醐. i. i1.電流はどのように流れるか…4時間 i電流の流れる道筋・電流の強さ. 2.電圧と電流の関係…3時問. 内容. i電流を流すはたらき. 1オームの法則. 3.回路のちがいと電圧、電流…4時間 i直列回路の電流と電圧、合成抵抗 @ i並列回路の電流と電圧、合成抵抗 4電流の正体…2時間 i放電と電流、金属劇中を流れる電流 … Q章 電流のはたらき……9時間. i1.電流による発熱…3時間. 2.電流と磁界…5時間 @. i電流が磁界の申で受けるカ. @. i電力、発熱量. i磁石のまわりの磁界、電流による磁界 …. }電磁誘導. a齢と交流…塒間. 墨流と交流のちがい. i簡単なモーターづくり、問題練習等自由研究、予備…5時間. …. …. ・電流はどのように流れるか. 豆電球と乾電池の回路で、電流計や電圧計をつかって、乾電池の数を変えるなどして 電流、電圧を測定しているが、小学校の復習や基礎操作の確認といった面が大きい。 ・回路のちがいと電流、電圧. 「直列回路の電流と電圧」、「並列回路の電流と電圧」という順序で実験するため、複. 雑な回路の中に、電圧計と電流計を一緒に扱うために操作が煩雑である。1時間の授業 の中で両方一度にできないため、直列回路と並列回路を比べながら実験することができ ない。「直列回路と並列回路の電流」、「直列回路と並列回路の電圧」といったように学習 した方がよい。. ・電流の正体. 電圧と電流の関係をしらべる実験、回路のちがいによる電流、電圧の実験と電流の学 習に慣れてきたときに、電流の流れとその正体である電子の流れは逆であることを扱う のは、ことあと電流のはたらきを学習することを考えると、生徒の理解を混乱させてし まう。最後にもってくるべきである。 ・電流による発熱. 電流のはたらきを熱に置換える実験は、結果の処理や計算が複雑であり、実験として 生徒の興味を引くようなものではない。今後、熱量:の単位としてcalを使わなくなること. からも、電流のはたらきを別の形で測定することを考えなければならない。. 一24一.

(31) (3)学習項目の整理・統合. 「電流と磁界」をはじめに学習することと、各学習項目の問題点を検討した結果、以下 のように整理・統合することにした。. ・「電流はどのように流れるか」と「回路のちがいと電流、電圧」の統合する. 「電流はどのように流れるか」で、いろいろな回路をつくって電流、電圧を測定して みることになっているので、ここに「回路のちがいと電流、電圧」の合成抵抗を除いた 内容を統合する。回路ごとに電流、電圧を測定するのではなく、直列回路と並列回路の 電流、直列回路と並列回路の電圧という順で、電流、電圧ごとに実験することにする。 ・「電流のはたらき」のあとに「電圧と電流の関係」を学習する 生徒が自作した発電機・モーターについて、そのはたらきをしらべてみるために、「電. 流のはたらき」をさきに学習する。電流による発熱の実験の前に、新しく電流のはたら きを自作したモーターの回転数に置換えて調べる実験を入れる。ここで、電流と電圧の 積がモーターの回転数の変化とほぼ比例することから電力について学習する。このあと、 電熱線で水をあたためる実験をする。このときの電圧、電流の測定値を利用して、電流、 電圧の関係(オームの法則)を学習する。「電流のはたらき」を先に学習しているので、. 抵抗が大きいほど電流が流れにくくなることが、理解しやすくなるのではないかと期待 できる。このことと関連づけて、合成抵抗について学習する。 ・「電流の正体」に「直流と交流」を統合する. 「電流の正体」のなかで、直流と交流のちがいを学習し、最後に電子の流れと電流を 学習することにして、「電流」単元の途中で電流のながれと、その正体である電子の移動 が逆になるという生徒の混乱を防ぐようにする。. (4)発電機・モーターをつくることに関連した新実験と工夫 ・電流のはたらきをモーターの回転機で測定する. 製作したモーターに電流を流し、電圧・電流と回転数を測定することにより電流のは たらきが電流と電圧の積である、電力に比例することを見出す。(図2−2参照) ・発電機を回す手応えで、電流の強さを体感する。. 定量的な実験をする前に、自作した発電機を電源として電流を流してみて、その手応 えから電流の強さを体感する。抵抗の大きいものほど電流が流れにくく、強く電流が流 れないため、手応えが軽くなる。この体験が、電流、電圧、抵抗、電力の関係を理解す るのに役立つとのではないかと期待できる。. (5)授業時数の調整. 従来通りの一般的な学習と同じ時間数で「電流」単元を行うことになっている。発電機・. モーターの製作、新しい実験を入れた分の時間数を生み出すために、整理・統合した学習 項目を中心に時間数の見直しをした。. 一25一.

参照

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