将来展望の明瞭さに応じた大学生の学習行動
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(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第49号(平成29年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.49(2017):87-92. 将来展望の明瞭さに応じた大学生の学習行動 半 澤 礼 之 北海道教育大学 教育学部 釧路校. Learning behaviors in Undergraduates : With a Focus on clarity of the future perspective. HANZAWA Reino Hokkaido University of Education 要旨 本研究は,大学生460名を対象として,彼らを「職業展望の明瞭さ」と「大学での学びを将来の職業に結びつけたいと いう意識」に応じて分類し,その分類によって「積極的な学習行動(授業プロセス・パフォーマンス)」に違いが生じるか どうかを検討することを目的としていた。大学生を分類した結果,「職業展望探索群」「理想-現実不一致群」「理想-現 実一致群」「職業展望不明瞭群」の4群に分類された。「学習行動」について群間の比較をおこなったところ,将来の職業 展望が明瞭で自分の学びと将来の職業を結び付けたいと思っており,更に現実にそれらが結びついていると認識している 「理想-現実一致群」が最も「積極的な学習行動」を表す授業プロセス・パフォーマンスの得点が高いという結果であっ た。この結果から,大学での学びに積極的に関わっていくためには,職業展望が明確であること,また,学びと職業の接 続を理想とし,かつそれが現実のものになっていることが重要であることが示唆された。. 問題と目的. ついては様々な議論が存在すると考えられる。しかし,こ. 大学生の学びと将来の職業の接続. の接続が大学生の適応の問題と関わるのであるならば,学. 大学教育が彼らのキャリアに「直接的に」結びつくこと. 生支援という観点から,大学生を対象としてこの接続に対. が社会的な要請として強調されるようになって久しい。近. する意識やその有無が彼らに与える影響について検討する. 年における学士力や社会人基礎力といった現代の日本にお. 必要があると言えるだろう。. ける様々な「新しい能力」概念の提唱(松下,2010)や,. ここで,大学での学びを将来の職業に結び付けたいとい. 大学設置基準の改正に基づく職業指導の義務化(文部科学. う意識について半澤(2011)は,「明確な将来展望・職業. 省,2009)はその一例としてあげることができるだろう。. 展望を持つものから,そのような展望がなく学校から社会. また,そのような社会的な要請にくわえて,大学教育の中. への移行期を過ごす場としての大学に対する漠然とした期. にいる大学生もまた同様に,大学での学びと自分の将来. 待に基づくものまで様々であると考えられる」と述べ,そ. の職業の接続を意識しているという調査結果も様々に報告. の意識は多様であることを指摘した。前者の学びと将来の. されている(たとえば京都大学高等教育研究開発推進セン. 結びつきの明確さを有する大学生については,例えば溝上. ター・電通育英会,2008;全国大学生調査コンソーシアム・. (2009)において大学でよく学びに取り組みかつ将来設計. 東京大学大学経営・政策研究センター ,2008) 。そして,学. が高い大学生群が見出されていたり,高い学習成果を出し. 生が大学での学びと将来の職業を結び付けたいと思ってい. ている学生は将来の生活と現在の日常を結び付けていたり. るにも関わらず,それが現実の大学生活において適わな. すること(溝上,2010)が明らかにされている。また,後. かった場合,彼らの職業レディネスや目標意識,学業意欲. 者のような大学生に関しては,半澤(2007,2008)が「大. が低下する可能性が指摘されている(半澤・坂井,2005) 。. 学生の生徒化」という概念を用いながら, 「大学では将来. ここから,大学での学びと将来の職業の接続の問題は,学. につながりそうなことをおそわりたい」とする受動的な学. 生のキャリア形成に関わるものであるのと同時に,彼らの. 習観を持つ大学生の存在を指摘している。. 大学適応に関わるものとしても理解することができるだろ. これらの先行研究から,学びと将来の結びつきに対する. う。. 意識については,将来展望や職業展望が明瞭であるかどう. 先に述べた,「大学での学びと将来の職業も含めたキャ. かという視点から検討を行うことが可能であるように思わ. リアとの接続」を大学教育において強調すべきかどうかに. れる。将来展望や職業展望の明瞭さはアイデンティティ. 4. - 87 -. 4. 4. 4. 4. 4.
(3) 半 澤 礼 之 や進路選択の実際の状況といった要因と関連を持つ(都. このような学習行動は,近年大学生の学びを考える上で重. 筑,2007)。そしてこれらの要因は,大学生の適応の問題と. 要視されている,主体的な学び(梶田,1996)や自律的な. 関連を持つと考えられるだろう(都筑,2007;杉村,2008) 。. 学び(金子,2007)にもつながるものである可能性がある. したがって,学びと将来の結びつきに対する意識を検討す. だろう。一方で,半澤(2011)が指摘した, 「(明瞭な将来). る上でこの視点を導入することには意味があると考えられ. 展望がなく学校から社会への移行期を過ごす場としての大. る。. 学に対する漠然とした期待(括弧内筆者) 」に基づいて学. ここで,明瞭な将来展望・職業展望を持っているかどう. びと将来の職業の接続を求める大学生は,上記のような目. かを検討するにあたっては,職業成熟度(Crites,1965)と. 標への関与が生じず,結果として学習行動が生じない,も. いう考え方を基盤にもつ,職業レディネスという概念が参. しくは主体的・自律的にはならない可能性がある。. 考になる。これは, 「職業選択に対する心理的準備状態(下 村・堀,1994) 」と定義できるもので, 下村・堀(1994)は「明. そこで本研究では,大学での学びを将来の職業と結び付. 瞭性」 「関与」 「非選択性」の三因子からなる尺度を開発し. けたいと考えている程度と,現実の結びつきの認識,そし. ている。明確な将来展望や職業展望を持っているかどうか. て職業展望の明瞭さによって大学生を分類し,その分類に. を検討するにあたっては,この三因子のうち, 「職業選択. よって彼らの学習行動に違いがみられるかどうかを検討す. において白分の目標,興味,手段などをよく理解し,明確. ることを目的とする。. に把握している程度」である「明瞭性」が判断の指標とな るといえるだろう。. 方法. ここで,先にもあげた半澤・坂井(2005)において,大. 調査対象者:近畿地区の四年制大学2校に所属する大学生. 学での学びと将来の職業を結び付けたいと思っているにも. 460名(男性193名,女性267名)。平均年齢20.2(SD =1.15) 。. 関わらず,それが現実の大学生活において適わなかった場. 調査時期:2010年7月~ 9月. 合,彼らの職業レディネスや目標意識,学業意欲が低下す. 調査項目:. る可能性が指摘されていることから,これまで議論してき. (1)現在の学びを将来の職業に結び付けたいという意識. た結び付けたいという意識や明瞭性だけではなく,学びと. 学業と職業の接続意識尺度(半澤・坂井,2005.2009a)を. 将来の職業が現実場面において実際に結びついているかど. 用いた。この尺度は,学業と職業の接続を理想としている. うかという点についても検討する必要があるように思われ. かどうかを問う因子である「接続理想」と,学業と職業が. る。明瞭性が高く,大学での学びを将来の職業と結び付け. 現実に接続していると認識しているかを問う因子である. たいと思っていても,現実にそれらが結びついていない場. 「接続認識」からなっていた。両因子とも同じ内容の7項. 合,半澤・坂井(2005)に従えば,様々な側面で問題が生. 目からなっており, 「大学での学業が将来の仕事の理解と. じる可能性があるからである。. 関係している」 「大学での学業は将来の仕事の実践におい. 以上の議論より,本研究では,大学での学びを将来の職. て生かすことができる」といった質問に対して,それを「理. 業に結び付けたいという意識(接続を理想としているかど. 想とするかどうか」 「現実にそのようになっているのか」. うか),学びと職業が実際に結びつけているかどうか(現. の二側面から尋ねるものであった。. 実に結びついていると認識しているかどうか) ,そして,. (2)将来展望の明瞭さ. 将来展望・職業展望の明確さ(職業レディネスにおける明. 職業レディネス(下村・堀,1994)の下位尺度である,. 瞭性)の3つの観点から大学生を分類し,大学での学びと. 職業選択において白分の目標,興味,手段などをよく理解. 将来の職業の接続の問題を検討することとする。. し,明確に把握している程度を問う因子である「明瞭性」 を用いた。この因子は5項目からなり,「自分の就きたい職. 学びと職業の接続と大学生の学習行動. 業の範囲は,かなり絞れている」,「自分が興味を持ってい. これまでに,大学生が持つ,学びを将来の職業と結び付. る職業の内容は,十分に知っているので,就職のためにど. けたいという意識について先行研究を整理してきた。それ. のような条件が必要であるかは,よくわかっている」 といっ. では,この意識は彼らの大学生活のどのような側面に影響. た質問によって構成されていた。. を与えるだろうか。ここでは影響を与える要因として,学. (3)学習行動. 習行動を取り上げる。なぜなら,目標研究において目標の. 大学生の授業における積極的な学習行動を問う「授業プ. 明確さが関与を高める(Hollenbeck&Klein,1987)という. ロセス・パフォーマンス(畑野,2010)*1」を用いた。この. 指摘が行われていることからわかるように,将来展望が明. 尺度は9項目からなり,「課されたレポートや課題を少しで. 瞭で,かつ学びと将来の職業を結び付けたいという意識が. も良いものに仕上げようと努力する」,「授業には意欲的に. 高い場合には,それに向けた学習行動への関与が高まるこ. 参加する」といった質問によって構成されていた。. とが想定されるからである。そしてそれは,現実に学びと 職業が結びついているという認識を高めるかもしれない。. 本研究では,いずれの項目も「1.まったくあてはまらな. - 88 -.
(4) 将来展望の明瞭さに応じた大学生の学習行動 い」~「5.とてもあてはまる」の5件法で尋ねた。. 第2クラスターは,「接続理想」や「明瞭性」の得点は比. 結果. 較的高い一方で, 「接続認識」の得点が低く,将来展望は. 尺度の構成. 明瞭で,学びと職業を結び付けたいと思っている一方で,. 本研究で使用する尺度は既存の尺度であるため,α係数. 実際にはそれらが結びついていないと認識している群であ. を算出してその値が十分であれば元尺度の構成を用いるこ. ると考えられ,「理想-現実不一致群(N=64)」とした。. ととした。その結果, 「接続理想」α=.88, 「接続認識」α. 第3クラスターは, 「接続理想」と「接続認識」, 「明瞭性」. =.85, 「明瞭性」α=.85, 「プロセス・パフォーマンス」α=.87. がいずれも高かった。将来展望が明瞭であり,学びと職業. であった。この結果から,本研究では元尺度の構成をその. を結び付けたいという理想が高く,かつ,現実にそれらが. まま用いることとした。. 結びついているという認識を強くもっている群であると考 えられたため,「理想-現実一致群(N=79)」とした。. 調査対象者の分類. 第4クラスターは, 「接続理想」と「接続認識」, 「明瞭性」. 「接続理想」「接続認識」 「明瞭性」の合計得点を標準化. のいずれも低かったため,職業に関して明瞭な展望を持つ. したものを用いてクラスター分析(Ward法)を行った。. ことができていない群であると考えられ, 「職業展望不明. 各クラスターの人数や解釈可能性などを考慮し,4クラス. 瞭群(N=81) 」と名付けた。群ごとの男女,学年の人数を. ターを抽出することとした(Figure1) 。. Table2に示す。 Table2. 群ごとの男女,学年の人数(人). 群による学習行動の差 Figure1.接続理想,接続認識と明瞭性に基づくクラス ター分析の結果. 4つのクラスターを独立変数,授業プロセス・パフォー マンスを従属変数とした一要因の分散分析(多重比較 Tukey法)をおこなった。その結果をTable3に示す。 「授. 4つのクラスターを独立変数, 「接続理想」 「接続認識」. 業プロセス・パフォーマンス」は, 「理想-現実一致群」. 「明瞭製」の得点を従属変数とした一要因の分散分析(多. の得点が最も高く, 「職業展望不明瞭群」の得点が低いと. 重比較Tukey法)を行った結果,いずれの因子において. いう結果であった。. も第3クラスターの得点が高いという結果が得られた(T Table3.群による授業プロセス・パフォーマンスの差(括. able1) 。 . 弧内はSD) Table1.群による接続理想,接続認識,明瞭性の平均値 の差(括弧内はSD). 考察 本研究は,大学での学びを将来の職業と結び付けたいと 考えている程度と,現実の結びつきの認識,そして職業展 望の明瞭さによって大学生を分類し,その分類によって彼 第1クラスターは, 「接続理想」の得点は比較的高い一方. らの学習行動に違いがみられるかどうかを検討することを. で, 「接続認識」の得点は中程度, 「明瞭性」の得点は最も. 目的としていた。 「接続理想」 「接続認識」 「明瞭性」を用. 低い群であり,学びと職業を結び付けたいという理想は. いてクラスター分析を行ったところ,学びと職業の接続に. 持っているものの,それは明確な職業展望に基づくもので. 対する意識と将来展望・職業展望の明瞭性に応じて4つの. はなく,またそうであるからこそ現実の接続意識も高くな. クラスターが得られた。クラスターによる学習行動の違い. らない群であると考えられ, 「職業展望探索群(N=229) 」. を明らかにするために,「授業プロセス・パフォーマンス」. とした。. を用いて検討をおこなったところ, 「接続理想」と「接続. - 89 -.
(5) 半 澤 礼 之 認識」 , 「明瞭性」がいずれも高い「理想-現実一致群」の. な職業の活動と結びつけることに困難を感じている可能性. 「授業プロセス・パフォーマンス」の得点が群間で最も高. もあるだろう。大学で学びを進める中で,自分が進学した. いという結果が得られた。それに対して, 「接続理想」と「接. 大学・学部と自分が希望する進路との間にズレを感じた学. 続認識」 , 「明瞭性」がいずれも低い「職業展望不明瞭群」. 生もいるかもしれない。いずれの理由にせよ,このような. は「授業プロセス・パフォーマンス」の得点が最も低かっ. 不一致感が授業に対して積極的な取り組みを生むことがで. た。この結果をもとに,各群の特徴や介入・支援の可能性. きない背景になっている可能性があるだろう。. について以下に示し,最後に今後の課題を述べる。. 以上に述べてきたように,理想-現実不一致群について は,その不一致の理由が多様である可能性がある。 従って,. 職業展望探索群. 背景をふまえた介入や支援が必要になるといえるだろう。. この群は,「接続理想」は群間の比較だと中程度である が,Table2にあるように5件法で平均値が3.74と学びと将. 理想-現実一致群. 来の職業の接続を理想としている程度は高い群であること. この群は, 「接続理想」 「接続認識」 「明瞭性」いずれの. が推察される。それに対して「接続認識」や「明瞭性」の. 得点も他の群と比較して高かった。職業展望が明瞭であ. 得点は高いとは言えず,特に「明瞭性」については4群の. り,学びを将来の職業と結び付けたいという理想も高く,. 中で最も低く,平均値も2.20となっている。この群には,. そして,実際にその両者が結びついているという認識も高. 半澤(2011)が指摘した「 (職業)展望がなく学校から社. い群であった。先述した,将来展望が明瞭で,かつ学びと. 会への移行期を過ごす場としての大学に対する漠然とした. 将来の職業を結び付けたいという意識が高い場合にはそれ. 期待」をもって学びと将来の職業の接続を理想としている. に向けた学習行動への関与が高まり,そしてその結果とし. 大学生が含まれていると考えることができるだろう。そし. て,現実に学びと職業が結びついているという認識を高め. て,この群の「授業プロセス・パフォーマンス」の得点は. る可能性があるという本研究の想定を示唆する結果であっ. 高い値ではなかった。職業展望が明瞭ではなく,現在の学. たということができるだろう。学業と職業の結びつきにお. びも将来に結びついていないと考えているため,授業に対. いては,結び付けたいという気持ちだけではなく,将来展. して積極的に取り組むことが難しくなっている可能性があ. 望が明瞭であるということが重要だと考えられるのではな. ると考えられる。. いだろうか。この群に対しては,このような「接続理想」. この群に対しては,まずは職業展望を明瞭にすることが. や「接続認識」,「明瞭性」の高さを維持できるような支援. できるようなアプローチが必要になるだろう。それには,. や,大学生活を送る中で自分の希望進路が変更になった場. 大学で様々に行われているキャリア教育を活用することは. 合に,その移行をスムーズに行えるような支援を検討する. もちろんのこと, 半澤(2011)が加藤(2007)や中間(2008). 必要性があると言えるだろう。. を参照しながら述べているように,大学生のキャリア意識 の発達はキャリア教育だけに限らない様々な大学での学び. 職業展望不明瞭群. との関連によって促される側面があるため,共通教育や専. この群は,「接続理想」,「接続認識」,「明瞭性」のいず. 門教育の中でも職業展望を明瞭にするようなアプローチを. れの得点も最も低い値であった。学びを将来と結びつけた. とることが可能であると考えられる。. いという意識が低く,実際に結びついていると認識してい ない,また,職業展望も明瞭ではない群として理解するこ. 理想-現実不一致群. とができる。そして,この群は積極的な授業行動を示す 「授. この群は,「接続理想」や「明瞭性」の得点の高さに対. 業プロセス・パフォーマンス」の得点も4群の中で最も低. して,「接続認識」の得点が低い群であった。学びを将来. かった。ここからこの群については,キャリア形成や学業. に結び付けたいという意識は高く,職業展望も明瞭になっ. 適応など様々な側面から支援が必要である可能性が推察さ. ているにも関わらず,実際に大学で学んでいることは将来. れる。溝上(2009,2010)で指摘されているように,現在. の職業に結びつかないと認識している群だといえるだろ. と将来を結びつけており,そしてよく学びよく遊ぶ学生が. う。この理想と現実の不一致には様々な理由が考えられ. 大学生活の充実感や知識・技能の習得,将来設計など適応. る。例えば低い学年であれば,将来展望や職業展望といっ. に関わる諸変数が高いことを考えると,この群はキャリア. た見通しは十分に持っていたにも関わらず,大学選択にお. や学業だけに関わらない,大学不適応の可能性も視野に入. いて受験偏差値による決定などその大学が自分の期待を満. れた支援が必要になるかもしれない。. たすことができるかどうかを十分に検討することなく進学 先を決めてしまったため,半澤(2009b)が指摘するよう. 今後の課題. な「大学に入学してみたら現実は違った」という学業に対. 最後に,今後の課題として以下の三点をあげる。. するリアリティショックの状態になっている可能性がある. 一点目として,学年差の検討があげられる。本研究では,. かもしれない。また,抽象度の高い大学での学びを具体的. 学業と職業の接続に対する意識と明瞭性に基づいた分類に. - 90 -.
(6) 将来展望の明瞭さに応じた大学生の学習行動 27-36.. よる授業プロセス・パフォーマンスの差について検討を 行うという目的から,学年差については分析を行わなかっ. 畑野快・溝上慎一(2013). 大学生の主体的な授業態度と. た。しかし,キャリアという視点から考えた場合,大学2. 学習時間に基づく学生タイプの検討 日本教育工学会. 年生と4年生では違いがある可能性もある。今後は学年差. 論文誌,37(1), 13-21. Hollenbeck, J. R., & Klein, H. J.(1987). Goal commitment. も含めた検討が必要になるだろう。 二点目として,「接続理想」 , 「接続認識」 , 「明瞭性」の. and the goal-setting process : Problems, prospects,. 背景にある要因の検討の必要性があげられる。これらの変. and proposals for future research. Journal of Applied. Psychology, 72, 212-220.. 数は,何に影響を受けて変化するのだろうか。影響を与え る要因が分かれば,それに基づいた支援が可能になる可能. 梶田叡一(1996).「自己」を育てる―真の主体性の確立. 性があると言えるだろう。. 金子書房. 三点目として,学習行動をより多面的に捉えることの必. 金子元久(2007). 大学の教育力-何を教え,学ぶか 岩. 要性があげられる。本研究では授業に対する積極性に関わ. 波新書 . る尺度である「授業プロセス・パフォーマンス」を用いた. 加藤敏明(2007). キャリア教育の現場から-日本型コー. が,大学教育研究の文脈においては,自主学習や授業外学. オプ教育の実践と指導法,評価- 立命館高等教育研. 習の重要性(溝上,2009 ; 蒋,2010)も指摘されている。今. 究,7,41-59.. 後は,授業外の学習も組み込んだ形での研究が必要になる. 京都大学高等教育研究開発推進センター・電通育英会. と考えられる。. (2008). 大学生のキャリア意識調査2007調査報告書 京 都大学高等教育研究開発推進センター・財団法人電通. 注). 育英会. 1.本尺度は,畑野・溝上(2013)によって「主体的な授業. 松下佳代編著(2010).“新しい能力”は教育を変えるか-. 態度尺度」として再概念化されている。今後の当該概念の 検討にあたっては,畑野・溝上(2013)を参照のこと。. 学力・リテラシー・コンピテンシー 溝上慎一(2009).「大学生活の過ごし方」から見た学生 の学びと成長の検討 ―正課・正課外のバランスのと. 引用文献 Crites,J.O (1965).. れた活動が高い成長を示す― 京都大学高等教育研 Measurement of vocational. maturity in adolescence : 1. Attitude test of the. 究,15,107-118. 溝上慎一(2010). 現代青年期の心理学-適応から自己形. Vocational Development Inventory. Psychology. Monographs, 79(2), 1-36.. 成の時代へ 有斐閣選書 文部科学省(2009). 大学における社会的・職業的自立に. 半澤礼之・坂井敬子(2005). 大学生における学業と職業. 関する指導等(キャリアガイダンス)の実施について(審. の接続に対する意識と大学適応:自己不一致理論の観. 議 経 過 概 要 )http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/. 点から 進路指導研究,23(2),1-9.. chukyo/chukyo4/houkoku/1288248.htm( 参 照 日 2017 年6月1日). 半澤礼之(2008). 大学生の生徒化と学業適応(1) :縦断 的面接調査による質的検討 日本パーソナリティ心理. 中間玲子(2008). キャリア教育における教育効果の検討 -キャリアに対する態度と自己の変化に注目して- . 学会第17回大会発表論文集,232-233. 半澤礼之(2007). 大学生の学業適応を捕らえる視点: 「学 業における大学生と大学のミスマッチ」と「生徒化」. 京都大学高等教育研究,14,45-57. 蒋 姸(2010). 授業外学習を促す授業実践 大学教育学会 誌,32,1,134-139.. から初期適応を捉える試み 大学院年報-文学研究科. 下村 英雄・堀洋道(1994). 大学生の職業選択における情. 篇:中央大学,36,107-117.. 報収集行動の検討 筑波大学心理学研究16, 209-220.. 半澤礼之(2009a). 大学生の“学業と職業に対する意識”. 杉村和美・宮下一博 (2008). 大学生の自己分析 : いまだ. と大学観 中央大学大学院論究 文学研究科篇41,61-70.. 見えぬアイデンティティに突然気づくために, ナカニシ. 半澤礼之(2009b). 大学1年生における学業に対するリ. ヤ出版. アリティショックとその対処-学業を重視して大学に 入学した心理学専攻の学生を対象とした面接調査から. 都筑学(2007). 大学生の進路選択と時間的展望 -縦断 的調査にもとづく検討- ナカニシヤ出版. - 青年心理学研究,21,31-51 半澤礼之(2011). 大学生の学びとキャリア意識の発達 :. 全国大学生調査コンソーシアム・東京大学大学経営・政策. 大学での学びによる発達を前提としたキャリア研究と. 研究センター(2008). 全国大学生調査 http://ump.. いう視点 心理科学,32(1), 22-29.. p.u-tokyo.ac.jp/crump/resource/kiso2008_01.pdf( 参 照. 畑野快(2011).「授業プロセス・パフォーマンス」の提 唱及びその測定尺度の作成 京都大学高等教育研究,17,. - 91 -. 日 2017年6月1日).
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