家庭科教育におけるキャリア教育の可能性
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(2) 馴主格甜菜 一北海旭教育大字訓搭校研究配慮一 策39号(平成19年J. KushiroRonshu,−JoumalofHokkaidoUniversityofEducationat Kushiro−No.39(2007):121−128.. 家庭科教育におけるキャリア教育の可能性 鎌 田 浩 子・LU 田 千 絵 北海道教育大学釧路校家政科教育研究室. Possibility of the career educationin home economics Hiroko KAMATA,Chie YAMADA Department of Home Economics Education、Kushiro Campus Hokkaido University ofEducation. 要 旨 近年、高校生や大学生に限らず若者のフリーター急増、ニートの顕在化などにより、フリーター志向やモ ラトリアム傾向の拡大が見られ、小・中学校においては、「小1プロブレム」や「中1ギャップ」等が問題と されている。このような多岐にわたる問題を抱える現代社会において、キャリア教育の必要性が認識され、 行政関係諸機関は様々な活動を行っている。生活習慣の変化等の子どもたちを取り巻く環境の変化に伴い、 子どもたちの学ぶこと・働くことへの意欲や態度、職業観・勤労観の形成が望まれている。キャリア教育と は、児童・生徒の職業観・勤労観を育てることであり、端的に言えば生き方の教育であると言える。キャリ アとは、生活や人生のなかで一人ひとりがどのように「働くこと」を意味づけていくかという、各個人の価 値観・勤労観・職業観の育成と深く結びついており、自らの人生を主体的に選択・決定していくために必要 な意欲・態度や能力のことである。これまでキャリア教育は、進路指導の一環であるとされてきたが、進路 指導に限らずキャリア教育を行うことが求められており、職業観・勤労観を育成し、生涯にわたって将来に 向けてキャリアを形成するために必要な能力や態度を養うことが重要である。そのためには、より積極的に 職業体験やインターンシップ等を取り入れ、体験的・経験的活動を通して、自らの将来について考える機会 を増やす必要があると考えられる。しかし、キャリア教育を本当に根付かせるためには、関連各教科の学習 内容に位置づけることも重要である。そこで、本稿では、アメリカの家庭科教育において行われているキャ リア教育を参考として我が国の家庭科教育と関連する職業について検討を行った。. ア活動」もNEETとして挙げられるほどでありL)、日本のよ. 1 キャリア教育の背景. うに「ひきこもり」や「働く気のない若者」といったマイ ナスイメージはない。しかし我が国は、イギリスと異なる. (1)キャリア教育の必要性. 現代の日本社会は、少子高齢化社会の到来、子どもた. 社会状況であることから、いわゆる日本型ニートとして、. ちの精神的・社会的自立の遅れ、産業・経済の構造変化. 2つの省庁から再定義されている。その一つは、厚生労働. や雇用形態の多様化、高学歴社会におけるモラトリアム. 省の定義であり「非労働人口のうち、15∼34歳、通学・家. 傾向の増長等により若者の職業観・勤労観に変化が起こっ. 事もしていないもの」であり、さらに2004年にはこれに『労. ている。その結果として、特に近年の社会問題のひとつと. 働経済白書(労働経済の分析)』での定義に「1.学籍はあ. して挙げられるのがニート「NEET(Notin Education,. るが、実際は学校に行っていない人、2.既婚者で家事を. Employment or Training)」である。ニートは、欧米先進. していない人」2)が加わった。一方、内閣府の定義は、『青少. 国でも共通する社会問題で、イギリス政府が労働政策上の. 年の就労に関する研究調査』(2005)によれば「高校や大学. 分類として定義したものであり、「16∼18歳の教育機関に所. などの学校及び予備校・専修学校などに通学しておらず、. 属せず、雇用されておらず、職業訓練に参加していないも の」とされている。場合によっては、「離職中・求職中・育. 配偶者のいない独身者であり、ふだん収入を伴う仕事をし ていない15歳以上34歳以下の個人」としている。この調査. 児又は家族の世話・無給休暇中・病気や障害・ボランテイ. では、専業主婦(夫)は非対象で、家事手伝いについては. ー121−.
(3) 鎌田 浩子・l_Ll田 千絵. ニートに含めている。. 1982年に50万人程度であったフリーター数は、2003年に. 厚生労働省の調査では、1993年には40万人であったニー. 217万人に達して以降、減少傾向にあるが、20年間で4倍に. ト数であるが、10年間で64万人に増加しており、2002年か. 増加した。(図2). らは横ばい状態にある。(図1). 図2 フリーター数の推移. 図1 ニート数の推移. 出典:厚生労働省『労働経済自若』(2006) 出典:厚生労働省『労働経済白書』(2006). バブル経済期において、フリーターが急増し、若者にとっ. 一方、フリーターは、フリーアルバイターの略であり、. てフリーターであることがかっこいいとまで言われた時期. アルバイトで生計をたてる人をさすが、厚生労働省では、. もあったが、1980年代以降のグローバリゼーションの進行. 総務省統計局「労働力調査」により、15∼34歳で、男性は. により、世界で大企業はより安い労働力を求めて先進国か. 卒業者、女性は卒業で未婚のうち、①雇用者のうち「パー. ら発展途上国へと工場を移すようになり、正規雇用がます. ト・アルバイト」の者、②完全失業者のうち探している仕. ます減少した。我が国もこの例外ではなく、現地生産方式. 事の形態が「パート・アルバイト」の者、③非労働力人口. を採用する業種も後をたたず、さらに長引く不況の中で企. の「その他の者」として集計している。. 実は、正社員に比べ、企業が負担する費用が少ないアルバ. フリーターといってもその意識や行動は多様であるが、. イトやパートなどの非正社員を増やし、正社員の人数を削. リクルートリサーチが行った調査では、フリーターを①俳. 減した。よって、フリーター増加の要因は、個人の意識等. 優、資格を要する職業など、確固とした将来の目標を目指. の問題だけではなく、社会的な問題でもある。. してそれに向けた努力をしているが、日常の生活のために. 厚生労働省では、2005年より年間20万人のフリーターの. 収入を得るためにフリーターをしている「自己実現型」、②. 常用雇用化を目指して、ジョブカフェ等による就職支援、. 正社員になることなど将来の漠然とした目標はあるが、そ. トライアル雇用による就職支援、日本版デュアルシステム. れに向かって取り組みは特に行っておらず、現状に対する. 等実践的な能力開発の実施等によって就職支授の充実強化. 不安を抱きつつ、当面はフリーターをしている「将来不安. を図っている。4). 型」、(卦今後も継続してフリーターをしていくとする「フリー ター継続型」、さらに「将来不安型」のうち、フリーターを. (2)キャリア教育. している理由として、「正社員として採用されなかったから」. 「キャリア」という語は、ラテン語の「CarruS(車)」お. 又は「正社員として採用される見込みが低く、就職をあき. よび「currere(走る)」を語源とし、そこからその道に沿っ. らめたから」を選択している「非自発型」、④家庭に入りた. て人が進むこと、生涯、経歴という意味に発展したといわ. いから等の「その他」に分類している。そしてその構成は. れる。我が国においてはこれまで「キャリア」という語は、. 「自己実現型」が25.3%、「将来不安型」39.4%、「フリー. 一般的には、キャリアウーマンやキャリア官僚といったよ. ター継続型」7%、「非自発型」11.3%、「その他」28.2%. うに職業の経歴や専門職に就いている人のことを指してい. となっており、男女別では、男性では「将来不安型」の割. た。「キャリア」とは、広義には「一人ひとりの人生、生き. 合が、女性では「その他」の割合が高い。3). 様」であり、狭義には「個々人が具体的な職業や仕事、職. ー122−.
(4) 家庭科教育におけるキャリア教育の可能性 場や活動の場などの選択・決定を通し、また仕事上の役割. (3)キャリア教育の現状. 文部科学省、厚生労働省、経済産業省及び内閣府の関係. と家庭や地域社会の役割とを統合させながら、一生涯にわ たって一歩一歩努力しながら創造していく生き様」のこと. 4府省では、2003年4月に、関係4大臣(文部科学大臣、厚. である。したがって、「キャリアは生活や人生のなかで、一. 生労働大臣、経済産業大臣、経済財政政策担当大臣(2004. 人ひとりがどのように「働くこと」を意味づけていくかと. 年6月より内閣官房長官も参画))による「若者日東・挑戟. いう、人それぞれの価値観・勤労観・職業観の形成と深く. 戟略会議」を発足させ、同年6月には、教育・雇用・産業 政策の連携強化等による総合的な人材対策として「若者自. 結びついている」5)とされる。. 近年、ニートやフリーターの増加などの社会的問題が顕. 立・挑戦プラン」を取りまとめた。そして同プランに基づ. 著になるにつれて、キャリア教育の必要性が認識され、若. き関係府省が連携して、若年者の雇用問題に積極的に取り. 者のキャリア形成が求められている。「キャリア教育(Career. 組んでいる。さらに2005年6月「経済財政運営と構造改革. Eeducation)」の出発点は、アメリカテキサス州ヒュースト. に関する基本方針2005」において「若者の働く意欲を喚起. ンで開かれた1971年の全米中等学校長協会年次大会におい. しつつ、その職業的自立を促進し、ニート・フリーター等. て、当時の連邦教育局シドニー・P・マーランド長官が初. の増加傾向を反転させるため、【F若者の自立・挑戦のための. 等中等教育に通ずる教育改革の重点施策として、全ての児. アクションプラン』を強化・推進する」こととし、これを. 童・生徒を対象として、第1学年から第12学年(日本での. 踏まえ2005年10月には、「『若者の自立・挑戦のためのアク. 小学校1年から高等学校3年)の全段階を通じて実施する. ションプラン』の強化」を取りまとめた。文部科学省では、 これらのプランに基づき、若者が勤労観、職業観を身に付. ように提唱したことにあるといわれている。6). 我が国において、キャリア教育が紹介されたのは、1984. け、明確な目的意識をもって職に就くとともに、仕事を通. 年『中学校・高等学校進路指導の手引き「体験的・探索的. じて社会に貢献することができるよう、中学校を中心とし. な学習を重視した進路指導一啓発的経験編−」』においてで. た5日間以上の職場体験「キャリア・スタート・ウイーク」. あった。この中では、学校と社会及び学校間の円滑な接続. の推進等を通じ、キャリア教育の充実などに取り組んでい. を図るためにキャリア教育を実施する必要性が述べられて. る。2006年度には、各学校段階を通じた体系的なキャリア. いる。しかし、1999年中央教育審議会答申『初等中等教育. 教育・職業教育を引き続き進めるとともに、新たに、専修. と高等教育との接続の改削こついて』において、望ましい. 学校や公民館等を活用してニート等を対象とした「学び市. 職業観・勤労観及び職業に関する技能や知識を身に付けさ. し」の機会の提供に取り組んだ。. せるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択. (表1). する能力・資質を育てる教育として、学校横間における接 続に限らず、学校教育と職業生満との接続の改善も視野に. 2 家庭科教育におけるキャリア教育の歴史. 入れ、小学校段階から発達段階に応じてキャリア教育を実 施する必要があると提言されて以降、急速に進行した。. 家庭科教育は、例えば1950年代中学校で「職業・家庭科」. キャリア教育とは、「職業に従事する上で必要とされる知. という教科が成立していたことからもキャリアとの関連の. 識・技能・態度を習得させることを目的として実施される. 大きさがわかる。戦後我が国の家庭科教育とキャリア教育. 教育」とされ、狭義には「専門教育における各教科のうち、. の歴史については、河崎により、職業キャリアと生活キャ. 農業、工業、商業、家庭、看護、福祉など職業に関する教. リアの視点から小・中・高等学校における学習指導要領の. 科の学習を通して行う教育」とされ、職業教育との関連に. 変遷より時代のその特徴を以下の4つに区分されている。9). ついては、「ともに将来の職業や仕事と深くかかわって行わ れている教育活動であることから、両者の活動内容や目標. (1】第1期 職業キャリアの一環としての生活キャリアの育. 等に様々な共通点がある。情事臥 二啓発的経験および相談を. 成期. 通じて、生徒がみずから、将来の進路の選択、計画をし、. 第1期は、第二次世界大戦直後、1945年に「女子教育刷. 就職または進学して、将来の生活における職業的自己実現. 新要綱」、1946∼1947年には「新教育指針」が出され、1947. に必要な能力や態度を育成する教師が組織的、継続的に指. 年「学習指導要領 家庭編(試案)」が示されて以降1956年. 導・援助する過程をいう」7)とされている。. に「中学校学習指導要領 職業・家庭編」が告示されるま. 文部科学省は、キャリア教育を「児童・生徒一人一人の. での時期とされる。そしてこの時期は「戦後の家庭科は、. キャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを. 家庭建設の教科としての生活キャリア教育を基本とする一. 形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」. 方で、中学校では職業科として位置づけられてガイダンス. であり、端的には「児童・生徒一人一人の勤労観、職業観. 的性格を有する職業キャリア教育の方向性が認められた。. を育てる教育」としている。8). 1957年まで、家庭科では、職業キャリアの一環としての生 活キャリアの育成が、意図されていた」とされる。. 一123一.
(5) 鎌田 浩子・山田 千絵 表1 文部科学省におけるフリーター・ニート対策等に関する取り組みについて. ≪文部科学省におけるフリーター・ニート対策等に関する取租について≫ 通じた指 ・小・中・高校で一千したキャリア教育の指導内容・方法等について 地域ぐるみで実践研究を実施. t5日間以上の鴨場体験の実施(キャリア・スタートウィーク). ・専修学校において、ニートに対する聴葉教育 を支援 ・公民館等において、ニートを持つ保護者等を 対象として講座を開講. ・特色ある取組を行う専門高校等への支援(スーパー専門高校). ・専門高校等への「日本版デュアルシステム」の推進. ・8ラーニングを活用した学習支援システム. ・大学等におけるインターンシップ等のキヤー」ア教育に対する支援. (草の根○ラーニングシステム)の構築. ・専門学校における「日本版デュアルシステム」の推進 ○産苧連携を通じた高度・専門的な人材の育成 専門職大学院の優れた取り組みについて重点的に支捷 大学院生を対象lこ高度専門人材育成のためのモデル事業の実施. 「先年的な汀スペシャリスト」の育成を行う拠点形成を支援・推進 勤労観・職業観の育成、技術・技能の習得、自立した人間としての成長 共に自立し社会に貢献する若者の育成 出典:http://wwv.mext.go.jp/a−menu/ikusei/wakamono. 学習指導要領」「高等学校学習指導要領」告示の現行の学習. (2)第2期 性役割にもとづく女子の生活キャリアの育成 策2期は、1958年告示の「小学校学習指導要領」、「中学 校学習指導要領」以降、1978年告示の「高等学校学習指導. 指噂要領の時期である。家庭科におけるキャリア教育は特 に高等学校でその特徴が顕著にみられるが、このことにつ. 要領」の時期であり、この時期は、「従来の日本の伝統と、. いて「高等学校の専門課程の家庭科は、普通課程から分離. 高度経済成長を支える家族システムの必要性から、1958年 の学習指導要領改訂以降は、性役割観に基づく女子用教科. して、スペシャリストの育成をめざした、高い専門性をも つ職業キャリア教育の充実を掲げている。すなわち、普通. へと変化していった。普通課程では女子に生活キャリア教. 課程では生活キャリアに、職業課程では職業キャリアに重. 育を行い、職業課程では主婦を職業の1つとみなし、主婦. 点を置くようになった」としている。しかし、小・中学校. 養成としての生活キャリア教育という側面を強調していっ. の段階では、むしろそれらを統合して学習することが必要. た」とされる。. と本論では考える。. (3)第3期 男女の生活キャリアの育成 第3期は、1989年告示の「小学校学習指導要領」、「中学. 3 アメリカの家庭科におけるキャリア教育. 校学習指導要領」、「高等学校学習指導要領」の時期であり、. (1)アメリカの家庭科ナショナル・スタンダードにおける. この時期は「男女平等を求める国際的動向と教育現場から. キャリア教育 アメリカにおけるわが国の家庭科にあたる教科の名称は、. の批判をもとに、1989年の学習指導要領より家庭科は男女 ともに履修する家庭生活教育となった。その内容は、男女. 1994年のアメリカ家政学会の名称変更により、ほとんどの. の生活キャリアを重視する教育内容とみなされる」とされ. 州の中・高等学校で「HomeEconomics(HE)」から「Family. る。. and Consumer Sciences(FCS)」に変更されている。一 方、アメリカの初等・中等教育は、これまで、州や郡ごと. (4)第4期 生活キャリアと職業キャリアの育成 第4期は、1998年告示の「小学校学習指導要領」「中学校. に、義務養育の年齢や年限をはじめ、教育の内容が決めら れており、共通の基準が定められていなかった。しかし、. −124−.
(6) 家庭科教育におけるキャリア教育の可能性 学力の低下や治安の悪化が問題となり、全国共通目標によ. (2)アメリカの家庭科教科書『Teen Guide(ティーンのた. り9教科にナショナルスタンダードが作成された。家庭科. めのガイド)』におけるキャリア教育. は、その教科には入らなかったが、1995年家庭科教育行政. アメリカの教科苓『Teen Guide』は、アメリカの中学. 官全国組織とアメリカ職業教育学会の家庭科教科教育者が. 校段階の家庭科のテキストである。教師と生徒に人気のあ. 協力して、1998年「NationalStandards for Family and. るテキストとして日本でも翻訳されている。11)12). Consumer Sciences Education」(以下FCSナショナル. 初版は、. 1961年に出版されており、内容や体裁、写真などをそのつ. スタンダード)が作成された。FCSナショナルスタンダー. ど時代に合わせて改定されている歴史のある教科弄である。. ドは初等中等学校すべてに通じるものであり、わが国の学. 【FTeen Guide』は、「Unitl人間関係」、「Unit2家族」、. 習指導要領のように学年ごとにその目標や内容が示された. 「Unit3住生活」、「Unit4資源」、「Unit5被服」、「Unit6. ものではない。しかし本葬は、アメリカでは発刊以来一定. 食物」と続いており、各Unitにおいて、自分のこと、家族. の支持を待ている。. のこと、地域のこと、自分の今後のことという流れで学習. FCSナショナルスタンダードには、まず、教科としての. が進められている。そのまえがきに「自分自身を理解する. 背景と全体目標と内容目標が示され、全体目標において「家. ことから始まり、他人を理解し、人と人との関係を理解し、. 族」「職場」「コミュニティ」がキーワードであり、わが国. 家族の人々について理解するというステップは、アメリカ. の家庭科が家庭生活を中心としているのに比べ、アメリカ. の家庭科では、一般に必ずたどられる展開である。」13〉とあ. のFCSは、家庭というよりむしろ家族一人一人を対象とし、. るように、例えば人間関係については、自分について自分. しかも職場やコミュニティとの関連を強く意識しているこ. 自身で考え、次に他人は自分をどのように見ているかにつ. とがわかる。10). いて、自分の見かけと内面について、大人になることにつ. 学習領域は、16に分類され、アルファベット順に示され. いて、友達について、男の子と女の子について、そして人々. ているが、1の全体総論の部分を除いた15領域のうち、全. を援助する職業についてという順に学習が進められる。そ. 体目標に「キャリア」が含まれていたのは9領域、含まれ. の他の学習についても、自分自身から周困に視野を広をヂて. ていないものは6領域であり、キャリアを大きく取り扱っ. いき、最後に関連する職業について学習するように構成さ. ていることが特徴である。(表2). れている。関連する職業については、具体的に紹介され、 どのようなステップでその職業に就くことができるかが記 載されている。また、レベル別に、初級レベル、準専門職. 表2 FCSナショナルスタンダードの学習領域におけるキャリ. 訓練を受けるレベル、大卒程度の専門資格を持つ職業など. アの有無. に分けられているため、子どもたちが進路を考えるきっか けにもなり得ると考える。そして、すべてのUnitにおいて. ○全体の総論. 職業に触れる機会が設けられている。(表3). 1 キャリア、コミュニティ、家族のつながり Ⅰ群 学習領域の全体目標に「キャリア」 あり群. そのため、子どもたちが将来就きたいと考えている職業 や憧れの職業にはどのようにして就くことができるかとい. Ⅱ群 学習領域の名称、目標と もに「キャリア」なし群. うイメージを持つことが可能である。また、学習後にその 職業に就きたいと考える場合もあると考えられる。ここで 得た知識は、どのような進路を選択すべきかを理解するこ. 3 消費者サービス 4 幼児、教育サービス 5 設備の管理およびメンテナン. とができ、進路選択の際にも役立つ。このようにステップ. 2 消費者および家族の リソース. を踏んで学習することは、子どもたちが職業観・就業観を. 6 家族. 身に付けるために大変有効であると考える。. 12 人間発達. ス. 7 家族およびコミュニティサー ビス 8 食品製造およびサービス. また、以下のクイズ形式の学習例のように、その学習内. 13 人間関係. 容に関連する職業に向いているかを判断できるようにもなっ. 14 栄養と健康. ている。. 15 親になるということ. 9 食品科学、食事療法、栄養 10 接待、観光、レクリエーショ ン. 11住居、インテリア、家具 16 織物およびアパレル産業 出典:日本消費者教育学会、t「消費者教育 第25号』、拙著、「消 費者教育におけるキャリア教育」pp162−163、2005. −125−.
(7) 鎌田 浩子・山田 千絵 表3 ティーン・ガイドにおける職業に関する内容とその関連. に関連する領域でもキャリアに関する学習は可能であると. 1 人間関係 9.人々を援助する職業/美容に関する職業. 考える。そこで、アメリカの教科書『ティーン・ガイド』 を参考にして、アメリカと日本の違いを考慮しながら、現. /人事管理/少年クラブの運営指導者 2 家族. 16.ベビーシッター. 行の学習指導要領の家族と家庭生活に関する内容、地域に. 17.家族・子どもに関する職業/手始めの夏. 関する内容、消費生活と環境に関する内容について関連し. 休みの仕事/リクリエーション指導員/. て学習できると考える職業について以下のような構想を作. 保育所保育士. 成した。. 3 住生活 18.住まいの設計・建築に関する職業/室内. 小学校 家庭科学習指導要領解説. 装飾の職業/住まいの管≡哩の職業/不動. 第2章 第2節 各学年の内容. 産鑑定士/建築監督/インテリアデザイ. 中学校 技術・家庭科学習指導要領解説. ナー/不動産取引業者. 第2章 第3節 家庭分野 2内容. 30.自分自身の仕事を創る. 4 資源. 1 家族と家庭生活に関する内容(1). 35.地域に関する職業/消費者に関する職業 /金銭に関する職業/環境に関する職業/. 小学校 各学年の内容. 消費者業務/管理者/銀行員. (1)家庭生活に関心をもって、家庭の仕事や家族との触れ. 5 衣生活 40.衣装コンサルタント. 合いができるようにする。 ア 家庭には自分や家族の生活を支える仕事があること が分かること。 イ 自分の分担する仕事を工夫すること。 り 生活時間の有効な使い方を考え、家族に協力するこ と。 エ 家族との触れ合いや回らんを楽しく工夫すること。. 49.研究と開発に関する職業/デザインと製 造/販売促進/仕立て/仕入れ/化学者/. 型紙製造業 6 食生活 73.食品サービス/食品加1工/家政学/履歴 菩/依頼状/レストラン経営/栄養士 出典:ヴァレリー・チェンバレン著、牧野カツコ監訳、. 中学校 内容. 『ティーン・ガイド』1992、pp,4−5. B 家族と家庭生活 (1)自分の成長と家族や家庭生活とのかかわりについて考え させる。 ク イ ズ形式の学習例. 中学校 内容. B 家族と家庭生活. 職業適性クイズ:あなたは人を助けることが楽しい. (3〕家族と家族関係について、次の事項を指導する。. ですか。. ア 家庭や家族の基本的な機能を知り、家族関係をよりよ. 1.他の人の問題に関心がありますか。. くする方法を考えること。. 2.物や材料や事実に関する仕事より、人に関する. イ 家庭生活は地域の人々に支えられていることを知るこ. 仕事が好きですか。. と。. 3.どんなタイプの人とでも気持ちよく働きますか。 4.あなたは聞き上手ですか。. これらの質問に一つ以上「はい」と答えたら、人 と一緒に働いたり、人々の個人的な関係にかかわる 職業に向いていると言えるでしょう。. アメリカの教科J普に記載さ. 日本で関連して教えること のできる職業. れている職業 (【Fティーン・ガイド』『続・. 出典ニヴァレリー・チェンバレン著、牧野カツコ監訳、. ティーン・ガイド』より). 『ティーン・ガイド』1992、P92. 4 アメリカの家庭科のキャリア教育の導入例 現在、家庭科においてキャリア教育を行っている事例は. ホームヘルパー ベビーシッ. 家の仕事の手伝い. ター 牧師. 地域の清掃活動等のボラン. 医師 看護師 介護福祉士. ティア活動 助産士 理学療法士 作業. 少ない。しかし、家庭科は生活と密着した教科であり、児. 療法士. 童・生徒の家庭生活に関わって学習する教科であるので、. 薬剤師 歯科技工士 マッ. 児童・生徒のキャリアを育成する場として重要な役割を担っ. サージ師. ていると考えられる。. アナウンサー 気象予軸土. 家庭科は、調理や裁縫といったイメージが強い。しかし. トリマー ペットシッター. それだけでなく、家族や家庭生活、地域、消費生活と環境. 126.
(8) 家庭科教育におけるキャリア教育の可能性 2 家族と家庭生活に関する内容(2). アメリカの教科書に記載さ 日本で関連して教えること. 中学校内容. れている職業. B 家族と家庭生活. のできる職業. (【Fティーン・ガイド』『続・. (2)幼児の発達と家族について、次の事項を指導する。. ティーン・ガイド』より). ア 幼児の観察や遊び道具の製作を通して、用事の遊び の意義について考えること。. ホームヘルパー ケースワー 消防士 救急救命士 介護. イ 幼児の心身の発達の特=徴を知り、子どもが育つ環境. カー. 福祉士. 警察官 看護師. 自衛官海上保安官警備. としての家族の役割について考えること。. 貝. 中学校内容 B 家族と家庭生活 (5)幼児の生活と幼児との触れ合いについて、次の事項を指. 導する。 ア 幼児の生活に関心をもち、課題をもって幼児の生活に 役立つものをつくることができること。 イ 幼児の心身の発達を考え、幼児との触れ合いやかかわ. 4 消教生括と環境に関する内容 中学校 内容 B 家族と家庭生活. り方の]二夫ができること。. (4)家庭生活と消費について、次の事項を指導する。. アメリカの教科書に記載さ. 日本で関連して教えること. れている職業. のできる職業. ア 販売方法の特徴や消費者保護について知り、生活に 必要な物資・サービスの適切な選択、購入及び活用 ができること。 イ 自分の生活が環境に与える影響について考え、環境 に配慮した消費生活を工夫すること。. (『ティーン・ガイド』『続・. ティーン・ガイド』より) ホームヘルパー ベビーシッ. 玩具店 助産士. ター. 常備員 守衛 交通指導員. 保育士・幼稚園教諭 各種 学校の教諭・職員. プール監視員. アメリカの教科書に記載さ 日本で関連して教えること れている職業. のできる職業. (『ティーン・ガイド』lF続・. 学習塾・予備校講師. ティーン・ガイド』より). 医師 看讃師 童話・絵本 作家. 消費者相談員 銀行員 金 融プランナー ツアー・コンダクター. ザー. 弁護士消費生括アドバイ. 廃棄物処理業リサイクル 業者. 3 地域に関する内容 小学校 内容 (8)近隣の人々との生活を考え、自分の家庭生活について. ここでは、ごく少数の職業しか挙げていないが、職業に. 環境に配慮した工夫ができるようにする。. は限りないほど多くの種類がある。それぞれの職業には、 中学校 内容. 中学校卒業後に就くことができるもの、高等学校卒業後に. B 家族と家庭生活. 就くことができるもの、大学を卒業後に就くことができる. (6)家庭生活と地域のかかわりについて、次の事項を指導す. もの、さらにそれだけではなく専門的な知識や技術、技能. る。. を必要とするもの、特別な免許や資格を必要とするもの等. ア 地域の人々の生活に関心をもち、高齢者など地域の人々. がある。進路を選択する際、あるいは職業を選択する際に. とかかわることができること。. 後悔しないために、早い段階から様々な職業について知る. イ 環境や資源に配慮した生活の工夫について、課題をもっ. 必要があると考える。例えば、高等学校を卒業した後にな. て実践できること。. りたい職業に就くために必要な免許や資格等を知っても遅 いのである。小学生のうちに自分の将来を決めるというこ とではなく、将来のためにより多くの選択肢を得るという ことが重要であると考える。. 127.
(9) 鎌田 浩子・山田 千絵 アメリカでは「子ども参観日」というものを実施してい. 7)文部科学省、『キャリア教育の推進に関する総合的調査. る学校があり、子どもたちが自分の親の職場見学に行き、. 研究協力者会議報告書』、2004、P6. 働く姿を見るというものである。実際に親の働いている姿. 8)前掲7)P7. を見て、仕事について考える良い機会になっている。この. 9)風間書房、『家庭科におけるキャリア教育の開発に関す. ような取組を家庭科の中で取り入れ、家族と家庭生活に関 わって、家庭での自分の仕事、家族の仕事について学ぶ場. 10)日本消費者教育学会、『消費者教育 第25号』、拙者、「消. る研究』河崎智恵2004、pp.56−57. 面において、実施することが有効であると考える。家族が. 費者教育におけるキャリア教育」pp.162−163、2005. 働いて得た給料で生拝していることや社会におけるその仕. 11)ヴァレリー・チェンバレン著、牧野カツコ監訳『ティー. 事の役割等、様々なことを感じ取り、キャリアを育成する. ン・ガイド一人間と家族について学ぶアメリカの家庭. ことができると考える。. 科教科吾−』、家政教育社、1992. このため、職業に関して/ト学校、中学校、高等学校と各. 12)ヴァレリー・チェンバレン著、牧野カツコ監訳『続ティー. ン・ガイドー衣生活と食生活に学ぶアメリカの家庭科. 学校段階において、また各学校段階間において、スパイラ ル方式に学習し、児童・生徒が自らのキャリアについて考. 教科書−』、家政教育社、1994. 13)前掲11)Pl. えることが有効であると考える。さらに発達段階に応じて 職業の数を増やす等の工夫をしながら、家庭科において学 習内容と関連する職業について二哩解する機会を設けること が望ましいと考える。この時に、地域の人材の活用や職業 体験を取り入れていくことが学習の幅を広げるために有効 であると考える。 また、職業についての学習の前段階として、職業に結び つく活動を行うことができると考える。例えば、これまで のボランティア活動では、高齢者の施設や保育園を訪問し ているが、農家や酪農家など他産地消と関連する所を訪問 する。家庭科の学習の時間に限らず、その他の時間におい ての括動であっても、家庭科でフィードバックすることが できる。異なる教科間において相互に繰り返して学ぶこと によって、児童・生徒はより自らのキャリアについて考え ることができると考える。 キャリア教育は、特別な教育ではなく全ての子どもたち に必要な教育である。そのため、普通教育としての教科に 位置づけることが重要である。アメリカの家庭科における キャリア教育を参考にすることによって、家庭科教育はキャ リア教育実現の可能性が大きい教科であることは明らかで あろう。. 注). 1)http:〟ja.wikipedia.org〝wiki/%E3%83%8B%E 3%83%BC%E3%83%88#.E8.AA.9E.E6.BA.90 2)厚生労働省、【F労働経済白書 平成18年度』、2006、. P21 3)日本労働機構機関、労働省編『労働自害』、2001、pp164− 166. 4)前掲2)pp.21−22 5)教育開発研究所、『教職研修Vo132,NO.2』、渡辺三 枝子「なぜキャリア教育がもとめられるのか」、2003、 pp.32−35 6)文部省、『体験的・探索的な学習を重視した進路指導』、. 1984、pP.150−151. −128一.
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