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京 都 精 華 大 学 紀 要 第 三 十 八 号 135 また 雑 誌 の 口 絵 では ヨーロッパで 絵 を 学 んだ 挿 絵 画 家 などによって 神 秘 的 な 魅 力 を 持 つ 存 在 としての 少 女 像 が 表 現 されていた そうした 少 女 イメージは 必 ずしも 当 時 の 教

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「少女」などの言葉に対する大学生の意識について −134−

「少女」などの言葉に対する大学生の意識について

秦  美 香 子

HATA Mikako

1 問題と目的

 本研究の目的は、現在の日本社会における「少女」の一様相について考察することである。 この目的のもとで、本稿では、大学生に対する質問紙調査の分析を行い、その結果に示された 「少女」などの言葉に対する回答者の意識について考察する。  本稿では「少女」を、明治期以降に構築された、若い女性の類型のひとつと考える。この意 味での「少女」は、若い女性に対する規範の象徴という側面と、理想的女性像のひとつという 側面を持っている。  規範という視点から見れば、「少女」は明治期に教育制度が整備されるなかで登場した「女子」 というカテゴリーに深く関わって構築されてきたといえる。近代的な国家形成という明治政府 の目標の下で、国家を富強する「男」になるべき者に対する教育と、人材を育成する「女」に なるべき者に対する教育は、明確に区別されていった(大越 1997, 久米 1997)。後者の教育で ある「良妻賢母」教育を受けるべき対象を指す語が「女子」であった。「女子」には、将来的 には「妻」「母」になることが期待されつつ、そのための学習期間中には「妻」「母」になって はならないという規範が課された。そして「少女」とは、主に「女子」を読者対象とし、学校 教育の方針に基づいて編集された雑誌のなかで、「女子」とほぼ同義として使用されてきた呼 称である。  ただし「少女」にまつわるイメージは、必ずしも雑誌編集者や教育関係者の思惑のもとで一 方的につくりだされたわけでない。明治末期から大正期に多く創刊された「少女」雑誌のなか では、女子の守るべき規範が喧伝されていた部分もあったが、読者はそのような模範的女性像 をただ受動的に学習していたとは限らない。佐藤[佐久間]りかによれば、雑誌読者同士の交 流のなかで「少女らしさ」なるものが積極的に見出された側面もあった(佐藤[佐久間] 1996)。 その積極性は、大正期に少女雑誌の編集者であった渋沢青花によれば、ときに編集者を困惑さ せるほどの力強いものであった(渋沢 1981)。

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京都精華大学紀要 第三十八号 −135−  また雑誌の口絵では、ヨーロッパで絵を学んだ挿絵画家などによって、神秘的な魅力を持つ 存在としての「少女」像が表現されていた。そうした「少女」イメージは、必ずしも当時の教 育方針のもとでつくりだされていたわけではなく、むしろ女子教育の文脈とは別に、ヨーロッ パ的な「少女」観を再現していた。そのイメージは、読者が積極的に語ろうとした「少女らしさ」 に影響を及ぼしていただろう。そのような点で、「少女」には理想的女性像のひとつとしての 側面もあった。  教育や雑誌で語られることを通して、「少女」は、おおむね十代を中心とする女性を指す語 となり、その担い手や国家、メディアなどのさまざまな力のせめぎ合いのなかで、「純潔」で あり、美しく、愛情にあふれているというイメージ(渡部 2007)が構築されていった。明治 末期から大正期にかけて創刊された少女雑誌の多くは1950年代までには廃刊したが、そこでつ くられた「少女」イメージは、一定程度は後続の「少女漫画誌」に引き継がれた。  しかし1970年代になると、このような近代的「少女」の意味は大きく変化した。若者文化の 台頭や、少女漫画が積極的にセクシュアリティを主題化するようになったことに関係し、「少女」 に対する「セクシュアリティを禁じられた存在」という意味付けは拡散していった。現在の少 女漫画の主要なテーマのひとつが恋愛であることからは、1970年代以降「少女」がセクシュア リティと強く結びつけられている可能性も推測される。  現在の「少女」については、木村涼子による少女小説の分析(木村 1999)や藤本由香里に よる少女漫画の批評(藤本 1998)などによって考察されており、マス・メディアの作品に描 かれた「少女」イメージの変化が明らかにされつつある1。それらの研究では、前述したよう に小説や漫画のなかで「少女」が必ずしも「純潔」と結びつけて語られなくなったという変化や、 その半面で「少女」イメージが依然として若い女性に対する規範の再生産という機能も担って いることなどが指摘されている。  一方、表象だけでなくマス・メディアの受け手側が持つ「少女」観なども考慮に入れた「少 女」研究は、横川寿美子による、小説やマンガのタイトルの分析を通した考察(横川 1991)や、 永田麻里子・児玉好信による、女子大学生の持つ「少女」イメージについての研究(永田・児 玉 2006, 2007, 2008, 2009)などがある。とはいえ、「少女」の意味付けについての、マス・メ ディアに描かれた「少女」表象以外を分析の対象とした研究の蓄積は、管見によれば未だ十分 でない。  「少女」を、若い女性に課された規範と、少なくとも一部の若い女性にとっての理想の象徴 と考えるならば、「少女」の表象に対する分析と同時に、「少女」なるものの受け止められ方に ついての分析も必要であると思われる。そこで本稿では、大学生を対象とした質問紙調査を行 い、回答者の「少女」観について考察することで、現在の「少女」観の一端を明らかにするこ

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「少女」などの言葉に対する大学生の意識について −136− とを試みた。

2 方法

 2010年4月、京都にある2大学の芸術系学部に通う大学生のうち、筆者の担当する講義「マ ンガ専門英語」または「メディア・リテラシー」に出席している学生を対象に質問紙調査を実 施した。有効回答数は109名(女性78名、男性27名、性別不明4名、回収率97.3%)で、所要時 間は10分程度であった。  質問紙は、フェースシートを含む9の大項目から構成されていた。大項目は「ティーン」「少 年」「少女」「女の子」「男の子」「乙女」「男子」「女子」であった。それぞれ5の質問文から構 成されており、各言葉について、使用頻度、性別イメージ、回答者がその言葉で名指されるこ とに対する好ましさ、年齢イメージについて尋ねていた。

3 結果

3.1 各言葉の使用頻度に対する意識について  「誰か(個人でも集合でも)のことを言い表すとき、この言葉を使いますか」(以下、〈人〉と表記) および「人以外のこと(服、雑貨、本など)を言い表すとき、この言葉を使いますか」(以下、 〈物〉と表記)という質問に対しては、「全然使わない」「あまり使わない」「ときどき使う」「よ く使う」の4段階から評定してもらった。質問の意味が分かりにくい可能性があるため、口頭で、 〈人〉については「『あの人はティーンだ』とか『ティーンの人たち』などとよく言っていると 思うかどうか、ということ」、〈物〉については「ティーンっぽい服、ティーン向けの雑貨、テ ィーンの本、などとよく言っていると思うかどうか、ということ」という例を示した。  「全然使わない」を1点、「あまり使わない」を2点、「ときどき使う」を3点、「よく使う」 を4点とし、各項目ごとに有効回答数で除算し平均値を算出した。その結果、〈人〉に関して は「女の子」(平均値3.32)が最も高い値を示し、以下、表1に示した通りの順に高かった。そ こで一元配置分散分析を行った結果、有意水準0.1%未満で有意な差が認められたため(F(7,749) =99.56)、検定後に多重比較を行った。多重比較の結果は表2に示した通りであり、「ティーン」 の平均値が他の全ての言葉に対して有意に低かった。また、「男子」「女子」いずれの平均値も 「少年」「少女」「乙女」より有意に高く、「少女」の平均値は「少年」「女の子」「男の子」「男子」 「女子」より有意に低かった。  また、〈物〉に関しては「女の子」(平均値2.48)が最も高い値を示し、以下、表3に示した

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京都精華大学紀要 第三十八号 −137− 通りの順に高かった。一元配置分散分析を行った結果、有意水準0.1%未満で有意な差が見られ (F(7,749)=14.079)、検定後の多重比較によれば、表4に示した通り、「ティーン」の平均値が 他の全ての言葉に対して有意に低く、「女の子」の平均値は「ティーン」以外にも「男の子」「乙 女」に対して有意に高かった。  次に、「少女」の〈人〉と〈物〉の平均値を比較するためにt検定を行ったところ、両者の間 には有意な差は見出されなかった(t=1.28、 df=108)。一方、他の言葉については、どの言葉も 有意水準1%未満で〈人〉と〈物〉の平均値の間に有意な差が見出された。「ティーン」のみ については〈物〉の平均値が有意に大きく(t=3.23、 df=108)、それ以外の言葉については〈人〉 の平均値が有意に高かった。各言葉の〈人〉と〈物〉の平均値に関する検定結果は、「少年」 はt=3.61、「女の子」はt=8.71、「男の子」はt=8.36、「女子」はt=9.73、「男子」はt=10.07、「乙女」 はt=3.31、であった(いずれもdf=108)。  「少女」と対照的な言葉であると考えられる「少年」の〈人〉〈物〉についての平均値をそれ ぞれ「少女」の結果と比較したところ、「少年」の〈人〉の平均値は「少女」の〈人〉の平均 値より有意水準1%未満で有意に高かった(t=3.50、df=108)。一方、〈物〉に関しては、両者 表1 各言葉の人に対する使用頻度に ついての意識の平均値(n=109) 表2 〈人〉についての多重比較の結果 平均値 SD 女の子 3.32 0.84 女子 3.24 0.82 男子 3.21 0.85 男の子 3.12 0.91 少年 2.54 0.92 乙女 2.32 0.96 少女 2.28 0.85 ティーン 1.33 0.65 表6 各言葉の年齢パターンについて の回答上位3例 年齢 度数 女の子 0-19歳 35% 全年齢 18% 0-24歳 14% 男の子 0-19歳 40% 全年齢 16% 0-24歳 11% 女子 全年齢 21% 5-19歳 14% 10-24歳 12% 男子 全年齢 21% 5-19歳 15% 10-24歳 14% 少女 5-19歳 25% 5-14歳 22% 0-14歳 13% 少年 5-14歳 29% 5-19歳 25% 10-19歳 9% ティーン 10-19歳 55% 15-19歳 17% 全年齢 5% 乙女 全年齢 39% 15-24歳 12% 10-24歳 9% 表5 各言葉の性別イメージについて ティーン 59% 31% 9% 106 少年 13% 24% 63% 109 少女 6% 17% 77% 109 女の子 8% 20% 72% 109 男の子 11% 17% 72% 108 乙女 41% 27% 32% 108 男子 4% 14% 83% 109 女子 6% 13% 81% 108 表3 各言葉の物に対する使用頻度に ついての意識の平均値(n=109) 平均値 SD 女の子 2.48 1.13 男の子 2.29 1.14 女子 2.23 1.11 男子 2.2 1.08 少年 2.19 1.05 少女 2.17 1.06 乙女 2 0.96 ティーン 1.53 0.8 a<b,c,d,e,f,g,h c<b<d,e,h c<d,e e,f<d f<e b,c,f<g,h (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」 (注)「たぶん∼」とは、「たぶん女性」もしくは「たぶん男性」という回 答を指す。 表4 〈物〉についての多重比較の結果 a<b,c,d,e,f,g,h e,f<d (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」 「両方」と答 えた人の比 率 「たぶん∼」 (注)と答え た人の比率 明 確 に 性 別を答えた 人の比率 有効回答数

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「少女」などの言葉に対する大学生の意識について −138− の平均値の間に有意な差は認められなかった。 3.2 各言葉の性別イメージに ついて  「この言葉で呼ばれる人は、 女性だと思いますか、男性だと 思いますか」という質問に対し ては、「女性」「たぶん女性」「両 方」「たぶん男性」「男性」の5 つの選択肢から評定してもらっ た。なお「両方」は意味が分か りにくいため、「男女の区別な く使われると思うとき」という 但し書きを添え、口頭でも同様 のことを説明した。  その結果、一般的に推測され る性別である、「少女」「女の子」 「乙女」「女子」は女性、「少年」 「男の子」「男子」は男性、と異 なる性別を選んだ回答(前者の 場合「たぶん/男性」、後者の 場合「たぶん/女性」)は極め て少数であった2。表5に示し た通り、明確な性別イメージを 持った回答の比率が最も高かっ たのは、「女子」(81%)および「男 子」(83%)であった。  一方、語義としては両性を指 すと考えられる「ティーン」に ついての回答の比率は、「両方」 とした回答の比率は59.4%であ り、他の言葉についての「両方」 という回答の比率と比較すると 表1 各言葉の人に対する使用頻度に ついての意識の平均値(n=109) 表2 〈人〉についての多重比較の結果 平均値 SD 女の子 3.32 0.84 女子 3.24 0.82 男子 3.21 0.85 男の子 3.12 0.91 少年 2.54 0.92 乙女 2.32 0.96 少女 2.28 0.85 ティーン 1.33 0.65 表6 各言葉の年齢パターンについて の回答上位3例 年齢 度数 女の子 0-19歳 35% 全年齢 18% 0-24歳 14% 男の子 0-19歳 40% 全年齢 16% 0-24歳 11% 女子 全年齢 21% 5-19歳 14% 10-24歳 12% 男子 全年齢 21% 5-19歳 15% 10-24歳 14% 少女 5-19歳 25% 5-14歳 22% 0-14歳 13% 少年 5-14歳 29% 5-19歳 25% 10-19歳 9% ティーン 10-19歳 55% 15-19歳 17% 全年齢 5% 乙女 全年齢 39% 15-24歳 12% 10-24歳 9% 表5 各言葉の性別イメージについて ティーン 59% 31% 9% 106 少年 13% 24% 63% 109 少女 6% 17% 77% 109 女の子 8% 20% 72% 109 男の子 11% 17% 72% 108 乙女 41% 27% 32% 108 男子 4% 14% 83% 109 女子 6% 13% 81% 108 表3 各言葉の物に対する使用頻度に ついての意識の平均値(n=109) 平均値 SD 女の子 2.48 1.13 男の子 2.29 1.14 女子 2.23 1.11 男子 2.2 1.08 少年 2.19 1.05 少女 2.17 1.06 乙女 2 0.96 ティーン 1.53 0.8 a<b,c,d,e,f,g,h c<b<d,e,h c<d,e e,f<d f<e b,c,f<g,h (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」 (注)「たぶん∼」とは、「たぶん女性」もしくは「たぶん男性」という回 答を指す。 表4 〈物〉についての多重比較の結果 a<b,c,d,e,f,g,h e,f<d (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」 「両方」と答 えた人の比 率 「たぶん∼」 (注)と答え た人の比率 明 確 に 性 別を答えた 人の比率 有効回答数 表1 各言葉の人に対する使用頻度に ついての意識の平均値(n=109) 表2 〈人〉についての多重比較の結果 平均値 SD 女の子 3.32 0.84 女子 3.24 0.82 男子 3.21 0.85 男の子 3.12 0.91 少年 2.54 0.92 乙女 2.32 0.96 少女 2.28 0.85 ティーン 1.33 0.65 表6 各言葉の年齢パターンについて の回答上位3例 年齢 度数 女の子 0-19歳 35% 全年齢 18% 0-24歳 14% 男の子 0-19歳 40% 全年齢 16% 0-24歳 11% 女子 全年齢 21% 5-19歳 14% 10-24歳 12% 男子 全年齢 21% 5-19歳 15% 10-24歳 14% 少女 5-19歳 25% 5-14歳 22% 0-14歳 13% 少年 5-14歳 29% 5-19歳 25% 10-19歳 9% ティーン 10-19歳 55% 15-19歳 17% 全年齢 5% 乙女 全年齢 39% 15-24歳 12% 10-24歳 9% 表5 各言葉の性別イメージについて ティーン 59% 31% 9% 106 少年 13% 24% 63% 109 少女 6% 17% 77% 109 女の子 8% 20% 72% 109 男の子 11% 17% 72% 108 乙女 41% 27% 32% 108 男子 4% 14% 83% 109 女子 6% 13% 81% 108 表3 各言葉の物に対する使用頻度に ついての意識の平均値(n=109) 平均値 SD 女の子 2.48 1.13 男の子 2.29 1.14 女子 2.23 1.11 男子 2.2 1.08 少年 2.19 1.05 少女 2.17 1.06 乙女 2 0.96 ティーン 1.53 0.8 a<b,c,d,e,f,g,h c<b<d,e,h c<d,e e,f<d f<e b,c,f<g,h (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」 (注)「たぶん∼」とは、「たぶん女性」もしくは「たぶん男性」という回 答を指す。 表4 〈物〉についての多重比較の結果 a<b,c,d,e,f,g,h e,f<d (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」 「両方」と答 えた人の比 率 「たぶん∼」 (注)と答え た人の比率 明 確 に 性 別を答えた 人の比率 有効回答数

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京都精華大学紀要 第三十八号 −139− 最も高かったものの、「女性」が9.4%、「たぶん女性」が28.3%であったのに対し、「たぶん男性」 は2.8%、「男性」は0であり、どちらかというと女性的なイメージが持たれていた。  「少女」については、「女性」という回答が77%であった。この比率は、各言葉について明確 な性別イメージを持っていた回答(「女性」もしくは「男性」という回答)の比率のなかでは、「男 子」「女子」に続いて高かった。また「少女」についての、「両方」という回答、「たぶん女性」 という回答、「女性」という回答それぞれの比率は、「女子」および「女の子」の各回答の比率 と有意な差は認められなかったが、「乙女」の各回答の比率とは有意な差が示されていた(カ イ二乗値51.13、自由度2)。  なお、各言葉に対する回答のうち、回答数の比率が高かった「女性」と「たぶん女性」、あ るいは「男性」と「たぶん男性」という回答だけを言葉別に選出し、回答者を性別による群に 分けて回答の比率について検討したところ、回答者の性別による回答比率の有意な差は、いず れの言葉についても認められなかった。 3.3 各言葉の年齢イメージについて  「もし誰かがこの言葉で呼ばれたら、その人を何歳くらいだと思いますか。あてはまると思 うもの全てに○をつけてください」という質問に対しては、「何歳でもあてはまる・年齢は関 係ないと思う」「0~4歳」「5~9歳」「10 ~ 14歳」「15 ~ 19歳」「20 ~ 24歳」「25 ~ 29歳」「30 歳以上」から評定してもらった。結果は回答パターンごとに集計し、各言葉の回答パターン上 位3例を表6に示した。  比率の高かった回答パターンは、表6に示したとおり、「女の子」と「男の子」、「女子」と「男子」 では共通していた。「女の子」および「男の子」に対する回答として多かった年齢パターンは、「女 子」および「男子」よりも低い年齢層を含むものであった。また「女の子」「男の子」「女子」「男 子」「乙女」の回答パターンは、「少女」「少 年」「ティーン」よりも幅が広かった。  各年齢層別の集計では、表7に示したと おり、「女の子」「男の子」「少年」「少女」 では「5~9歳」および「10 ~ 14歳」、「女子」 「男子」「ティーン」については「10 ~ 14歳」 および「15 ~ 19歳」、「乙女」については「15 ~ 19歳」および「20 ~ 24歳」を「あては まる」とした回答の比率が高かった。  「少女」の具体的な年齢については、 図 図 「少女」の年齢

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「少女」などの言葉に対する大学生の意識について −140− のような回答が得られた。ここから、おおむね小学生から10歳代が「少女」であると回答され ていることが分かる。ただし、表7に示したとおり、個別の年齢層ごとの集計結果では、「0 ~4歳」については28%、「5~9歳」については79%の回答が、各年齢層を「少女」であると していた。また、「15 ~ 19歳」という年齢層については、回答が二分されている。  表8には、各言葉について、「15 ~ 19歳」がその言葉のイメージにあてはまるとした回答の 比率を示した。他の言葉に比べて「少女」「少年」は明らかに低い比率を示しているが、「少年」 と「少女」の回答の間には有意な差は認められなかった(カイ二乗値0.23、自由度1)。  「15 ~ 19歳」を「少女」であると回答した者は、1991年以降に生まれた者(回答時点で18 ~ 20歳) のうち41%(有効回答数32)であるのに対し、1990年以前に生まれた者(回答時点で20 ~ 24歳) では53%(有効回答数70)であった。ただし、今回の調査は回答者の年齢にばらつきがあるため、 年齢による適切な比較を行うことはできない3 3.4 各言葉で呼ばれることへの好意度について  「自分がこの言葉で呼ばれることについて、どう思いますか」という質問に対しては、「かな りいや」「少しいや」「中間」「まあまあ好ましい」「とても好ましい」の5段階から評定しても らった。また口頭で、「絶対呼ばれたくない、という場合は『かなりいや』、呼ばれても全然か まわない、という場合は『とても好ましい』」と説明した。  「かなりいや」を1点、「少しいや」を2点、「中間」を3点、「まあまあ好ましい」を4点、「と ても好ましい」を5点とし、各項目ごとに有効回答数で除算し平均値を算出した。結果は回答 者の性別で2群に分けて分析を行った。  女性回答者のなかでは、「女の子」(平均値3.18)が最も高い値を示し、以下、表9に示した通 りの順に高かった。一元配置分散分析を行った結果、有意水準0.1%未満で有意な差が見られ(F (7,518)=32.016)、検定後の多重比較によれば、表10に示した通り、「少女」の平均値は「男の子」「男 子」の平均値に対して有意に高く、「女の子」「女子」の平均値に対して有意に低かった。また、 表8 「15∼19歳」が下記の言葉に あてはまると答えた人の比率 表10 女性回答者が各言葉で呼ばれ ることへの好意度についての多重比較 の結果 平均値 有効回答数 少年 46% 106 少女 50% 107 男の子 84% 106 ティーン 90% 105 女の子 90% 107 乙女 92% 106 女子 97% 107 男子 97% 108 表7 各言葉の、年齢層別の比率(○の回答の比率のみ) 0∼4歳 5∼9歳 10∼14歳 15∼19歳 20∼24歳 25∼29歳 30歳以上 女の子 79% 91% 93% 90% 41% 24% 17% 男の子 81% 91% 90% 84% 33% 21% 16% 女子 35% 61% 88% 97% 64% 35% 25% 男子 33% 60% 88% 97% 61% 36% 27% 少女 28% 79% 92% 50% 5% 6% 6% 少年 19% 81% 92% 46% 10% 8% 9% ティーン 8% 13% 74% 90% 12% 8% 8% 乙女 42% 45% 70% 92% 82% 54% 46% 表9 女性回答者が各言葉で呼ばれる ことへの好意度の平均値(n=78) 平均値 SD 女の子 3.18 0.95 女子 3.08 0.72 ティーン 2.77 0.88 少女 2.59 0.76 乙女 2.56 1.21 少年 2.17 0.89 男の子 1.88 0.87 男子 1.63 0.75 表11 男性回答者が各言葉で呼ばれる ことへの好意度の平均値(n=27) 平均値 SD 男子 3.22 0.93 ティーン 3.15 1.90 少年 3.11 0.85 男の子 3.00 0.83 少女 1.70 1.10 女の子 1.63 1.08 女子 1.62 1.04 乙女 1.54 0.84 b,e,g<a e,g<b<d,h e,g<c<d,h e,f,g<d e,g<f<h e,f,g<h (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」

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京都精華大学紀要 第三十八号 −141− 「少女」の平均値と「少年」の平均値の間には有意な差は認められなかった。  男性回答者のなかでは、「男子」(平均値3.22)が最も高い値を示し、以下、表11に示した通 りの順に高かった。一元配置分散分析を行った結果、有意水準0.1%未満で有意な差が見られ (F(7,168)=22.198)、検定後の多重比較を行ったところ、「ティーン」「少年」「男の子」「男子」 の平均値が「少女」「女の子」「乙女」「女子」の平均値よりそれぞれ有意に高かった。

4 考察

4.1 「少女」「女の子」「女子」の相違点について  人を言い表す言葉としては、「女の子」「男の子」、「女子」「男子」は回答者にとってなじみ のある言葉であるといえる。今回の調査では「女の子」と「女子」の平均値、および「男の子」 と「男子」の平均値の間に有意な差は見出されなかったため、どちらの言葉が回答者にとって よりなじみのある言葉であるかは不明である。一方、「少女」についての回答の平均値は「女 表8 「15∼19歳」が下記の言葉に あてはまると答えた人の比率 表10 女性回答者が各言葉で呼ばれ ることへの好意度についての多重比較 の結果 平均値 有効回答数 少年 46% 106 少女 50% 107 男の子 84% 106 ティーン 90% 105 女の子 90% 107 乙女 92% 106 女子 97% 107 男子 97% 108 表7 各言葉の、年齢層別の比率(○の回答の比率のみ) 0∼4歳 5∼9歳 10∼14歳 15∼19歳 20∼24歳 25∼29歳 30歳以上 女の子 79% 91% 93% 90% 41% 24% 17% 男の子 81% 91% 90% 84% 33% 21% 16% 女子 35% 61% 88% 97% 64% 35% 25% 男子 33% 60% 88% 97% 61% 36% 27% 少女 28% 79% 92% 50% 5% 6% 6% 少年 19% 81% 92% 46% 10% 8% 9% ティーン 8% 13% 74% 90% 12% 8% 8% 乙女 42% 45% 70% 92% 82% 54% 46% 表9 女性回答者が各言葉で呼ばれる ことへの好意度の平均値(n=78) 平均値 SD 女の子 3.18 0.95 女子 3.08 0.72 ティーン 2.77 0.88 少女 2.59 0.76 乙女 2.56 1.21 少年 2.17 0.89 男の子 1.88 0.87 男子 1.63 0.75 表11 男性回答者が各言葉で呼ばれる ことへの好意度の平均値(n=27) 平均値 SD 男子 3.22 0.93 ティーン 3.15 1.90 少年 3.11 0.85 男の子 3.00 0.83 少女 1.70 1.10 女の子 1.63 1.08 女子 1.62 1.04 乙女 1.54 0.84 b,e,g<a e,g<b<d,h e,g<c<d,h e,f,g<d e,g<f<h e,f,g<h (注)a:「ティーン」、b:「少年」、c:「少女」、 d:「女の子」、e:「男の子」、f:「乙女」、g: 「男子」、h:「女子」

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「少女」などの言葉に対する大学生の意識について −142− の子」や「女子」の平均値よりも有意に低かったため、「女の子」や「女子」に比べれば「少女」 という言葉はあまり使わないと感じられていることが分かる。同様に、「少年」についても、「男 の子」「男子」よりは人に対して使わない言葉であると感じられているといえる。  物を言い表す言葉としては、「女の子」は「乙女」よりもよく使うという回答の傾向が見ら れたものの、「女子」や「少女」よりもよく使うと感じられているかどうかについては、有意 な差が見出されなかった。なお、「女の子」という言葉については、物に関する使用頻度につ いての回答の平均値よりも人に関する使用頻度についての回答の平均値が有意に高かった。と はいえ、今回の調査で用いた「人以外のことを言い表すとき」という質問文は、意味が不明瞭 だと考える回答者がいたことも推測される。口頭で「~向け」などという言い方をするかどう かという意味であることを説明したものの、「~向け」という表現は人を言い表したものとも いえるためである。したがって、「女の子」は人に対する呼称としても、本や雑貨といった物 を区別する際の言葉としても、よく使われると感じられる言葉であると考えられる。  使用頻度についての意識と同様に、「女の子」および「女子」についての平均値が女性回答 者の間で有意に高く示されたのが、各言葉で呼ばれることへの好意度についての質問であった。 男性回答者の間では一般に女性を指すと思われる「少女」「女の子」「女子」「乙女」の平均値が、 一般に男性を含むと思われる「男子」「ティーン」「少年」「男の子」の平均値よりそれぞれ有 意に低かった。男性回答者は、一般に自分と異なった性別の者に対して使用される呼称をより 好まないという回答を示したといえる。  一方、女性回答者の間では、一般には女性を指すと考えられる言葉の中でも、「女の子」お よび「女子」の平均値が、「少女」「乙女」の平均値よりもそれぞれ有意に高かった。  なお今回の調査では、男性回答者数と女性回答者数の間に差があるため、性別による回答の 違いを比較することは困難である。とはいえ、少なくとも女性回答者の間では、回答者自身の 性自認と同じ性別を言い表す言葉とされる「女子」「女の子」「少女」に関して、好ましいと感 じる度合いが異なることは注目しておきたい。  横川寿美子は、「女の子」と「少女」という言葉について、論考の発表された1990年代初頭には、 若年層の女性が口語では「女の子」、文語では「少女」と呼ばれていることを指摘した。その うえで、「人々の想念の中にある概念としての〈少女〉」が、「女の子」/「少女」という呼称 が使い分けられることによってむしろ固定化されてしまうことを批判している。ここで〈少女〉 とは、たとえば「純潔で無垢な存在」と意味付けられたイメージのことである。横川によれば、「日 常生活という最もダイナミックな場」で「女の子」が変化していったとしても、〈少女〉が「女 の子」と区別されていれば、「女の子」の変化は〈少女〉には影響を及ぼさない。〈少女〉が論 じられる際に「女の子」と「少女」という呼称が使い分けられるならば、〈少女〉が本質主義

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京都精華大学紀要 第三十八号 −143− 的に語られることがただちに問題になるとはいえない。しかし横川は、「少女」が口語である「女 の子」と対をなす文語として使用されているために、「その〈少女〉論は結果的に生身の女の 子をも規定することにつながっていくに違いない」として、固定的に〈少女〉が語られること に潜む問題を指摘した(横川 1991: 8-15)。  今回の調査では、平均値の高さや「少女」の平均値との有意差から、「女の子」と「女子」 が同等の言葉として認識されていると考えられる。また、「少女」は「女の子」や「女子」よ りも印象の薄い言葉であると感じられていることがうかがえ、横川の指摘した状況からの変化 が推測される。すなわち、現在では回答者にとって口語が「女の子」、文語が「女子」として 位置付けられている可能性がある。そうであるとすれば、現在では、たとえ横川が述べたよう に「概念としての〈少女〉」が本質主義的に語られ続けたとしても、それが必ずしも若い女性 を何らかのかたちで規定するような力にならないことが考えられる。この点については今回の 調査から検証することはできないが、「女の子」と「女子」の使い分けられ方を今後より明ら かにしていくことで、横川が指摘した状況からの変化について考察することができるのではな いかと考える4 4.2 各言葉の性別および年齢イメージについて  今回の調査からは、各言葉の性別イメージについて、「乙女」および「ティーン」を除いては、 性別が限定される言葉とみなされる傾向が読み取れた。また年齢イメージについては、「乙女」 を除いていずれの言葉も約8割もしくはそれ以上の回答が、年齢限定的であるとみなしていた。  とはいえ、これは各言葉についてのイメージが、性別や年齢という軸に関して詳細に規定さ れていることを示しているわけではない。「女子」「男子」については、性別について約8割の 回答が明確に女性、男性とみなしており、年齢についても約8割が限定的とみなしていた。し かし、いずれについても年齢に関する最も多い回答パターンは「何歳でもあてはまる・年齢は 関係ないと思う」であった。  「女子」や「男子」という言葉は、教育の場では「児童」「生徒」という言葉とともに使用さ れる。性別を特定しない場合に使用される「児童」「生徒」に対し、「女子」および「男子」は、 「女子生徒」「男子生徒」など、性を分別する必要がある際に主に使用される言葉である。今回 の調査では、こうした使用方法が回答者に想起され、「女子」「男子」がとくに性別の限定され た言葉とみなされたのではないかと推測される。しかし同時に、年齢パターンについての回答 からは、学校を離れても「女子」「男子」といった呼称を使用できると回答者が考えたことが 推測できる。回答者が各言葉で呼ばれる際の好意度についての質問からも、「女子」「男子」と いう言葉が大学生である現時点で比較的好んで使用されている様子がうかがえる。

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「少女」などの言葉に対する大学生の意識について −144−  また「女の子」「男の子」の結果についても「女子」「男子」の結果と同様の傾向が見られた。「女 の子」「男の子」については「女子」「男子」よりも性別イメージを明確に答えた回答の比率が 低かったが、これは「女の子っぽい」「男の子っぽい」などといった、男性に対しても女性に 対しても言われる用法があるためではないかと推測される。  一方「少女」については、20歳以上を含むとする回答は有効回答の約7%、さらに「何歳で もあてはまる・年齢は関係ないと思う」と回答したのは有効回答の5%にとどまり、回答者は「少 女」を「女の子」「女子」「乙女」よりも狭い年齢層にのみあてはまるとみなす傾向にあったと いえる。なお、永田・児玉の調査でも、「“少女”に年齢制限はあると思いますか」という質問 に対し被験者の72%が「はい」と答えたとされる(永田・児玉 2006: 75)。  今回の調査で示された「少女」の年齢は、歴史研究によって示された、近代の「少女」の年 齢層とも、永田・児玉によって示された年齢層とも、おおむね十代が中心という点では重なる。 明治期や大正期の「少女」は、おおむね初等・中等教育を受ける、5・6歳頃から十代の終わ り頃までとされている。また、永田・児玉の2006年および2007年の調査では、各回答者が何歳 から何歳までを「少女」とみなしていたかについては明らかにされていないものの、下限年齢 は0・3・6歳の比率が高く、上限年齢は12・15歳の比率が高かったとされている(永田・児 玉 2006, 2007)。  ただし、今回の調査ではより年齢の高い「15 ~ 19歳」という層について、おおむね半数が「少 女」であるとみなしていた。永田・児玉が指摘するように、「女性被験者にとって“少女”は 過去の自分自身である」(永田・児玉 2007: 42)といえるならば、その「過去」は、今回の調 査回答者にとっては極めて近い過去を指している可能性がある。とはいえ、今回の調査では一 般的な「少女」の年齢イメージについて尋ねたため、回答者自身との関係については考察する ことは出来ない。 4.3 「少女」と「乙女」について  ここで、使用頻度や女性回答者の各言葉に対する好意度については平均値がそれぞれ類似し ていたにもかかわらず、性別および年齢イメージについては全く異なった結果が示された「少 女」と「乙女」にとくに注目しておきたい。  川村邦光は、明治末期に創刊された、10代後半から20代初めの女性を主たる読者対象とした 雑誌『女学世界』(1901-1925)の読者投稿欄を分析し、当時の乙女(川村の言葉では「オトメ」) について考察している。川村によれば、読者投稿欄では、女学校生・その卒業生・職業婦人な ど多様な読者の間で、「年齢や未婚/既婚を問わず、オトメの世界が確固としたひとつの世界 として、イメージ豊かに創造されて」いた(川村 1993:48)。ここから川村は、年齢限定的に用

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京都精華大学紀要 第三十八号 −145− いられる「少女」という言葉と「オトメ」とを区別している。  今回の調査では、約4割の回答が「乙女」の年齢は限定されないとみなしており、川村の示 した「オトメ」観と合致している。加えて、今回の調査では、性別について非限定的なイメー ジを持つ回答も約4割見られた。ここから、現在の大学生が「乙女」という言葉に対して、年 齢や性別を限定できるカテゴリーというよりも、ひとの態度などに関わる言葉として認識して いる可能性が推測される。すなわち、川村が近代の「オトメ」について指摘したような、「オ トメにまつわる、複合的な要素やイメージ/観念から織りなされた構成体」(川村 1993:111) という「乙女」イメージに近いイメージを持っているのではないかと思われる。  ただし、各言葉で自分が呼ばれることに対する好意度は、女性回答者の間では、「乙女」の 平均値は「女の子」「女子」それぞれの平均値より有意に低かった。また男性回答者の間でも、「男 子」「ティーン」「少年」「男の子」それぞれの平均値より有意に低かった。ゆえに、「乙女」を 年齢や性別について固定的ではないイメージで捉えているものの、自分自身を説明する際には 「乙女」というイメージは好ましくないと考えていることが推測される。

5 まとめと今後の課題

 今回の調査では、「女の子」「男の子」「男子」「女子」という言葉が回答者にとってなじみ深 く、自分自身を言い表す言葉としても好意的に受け止められる言葉として位置付けられている 可能性が読み取れた。また「少女」や「乙女」については、いずれもあまり使用頻度が高くな い言葉であり、とくに女性回答者にとっては回答者自身を言い表す言葉として「女子」よりも 好ましくない言葉であるとみなされているものの、「少女」は性別や年齢が比較的限定され、「乙 女」はあまり限定されない言葉であると考えられていることが分かった。さらに「少女」「少年」 については、15歳から19歳という年齢層の間に、少女−非少女、少年−非少年を分別する境界 があることが推測された。今後は、質問紙調査および雑誌などの言説分析を行うことで、とく に「女子」「女の子」「少女」「乙女」という言葉の用法の相違について、より明らかにしてい きたい。 1  マスメディア作品についての研究だけでなく、若い女性が担い手である文化についての研究のなかで、 「少女」なるものが考察される例も見られる(一例は、水野 2004)。 2  「女子」について「どちらかというと男性」、「男子」について「どちらかというと女性」、「乙女」につ いて「男性」とした回答が、それぞれ1ずつ見られた。

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「少女」などの言葉に対する大学生の意識について −146− 3  なお、カイ二乗検定の結果、両条件の比率の間には有意な差は認められなかった(カイ二乗値1.32、 自由度1)。 4  また、永田・児玉は、質問紙調査を通して、女子大学生の「少女」イメージには「男性の視線から見 出される〈商品〉や〈玩具〉といった受動的なイメージは存在し難い」と述べ、「少女」イメージが変 化していることを指摘している(永田・児玉 2006: 77)。「少女」イメージの変化は「女の子」や「女子」 という言葉の使われ方や、各語に対するなじみ深さの相違とも関連していることが推測される。この 点についても、今後明らかにしていきたい。 文献 大越愛子、1997、『近代日本のジェンダー』三一書房 川村邦光、1993、『オトメの祈り──近代女性イメージの誕生』紀伊国屋書店 木村涼子、1999、「少女小説の世界と女性性の構成」花田達朗・吉見俊哉・コリン・スパークス編『カルチ ュラル・スタディーズとの対話』新陽社、343-59 久米依子、1997、「少女小説──差異と規範の言説装置」小森陽一・紅野謙介・高橋修編『メディア・表象・ イデオロギー──明治三十年代の文化研究』小沢書店、195-222 佐藤[佐久間]りか、1996、「『清き誌上でご交際を』──明治末期少女雑誌投書欄に見る読者共同体の研究」『女 性学』4、114-41 渋沢青花、1981、『大正の「日本少年」と「少女の友」──編集の思い出』千人社 永田麻里子・児玉好信、2006、「女子大生から見た"少女"のイメージ特性」『共立女子短期大学生活科学科紀要』 49、73-9 永田麻里子・児玉好信、2007、「大学生から見た"少女"らしい行動」『共立女子短期大学生活科学科紀要』 50、39-44 永田麻里子・児玉好信、2008、「女子大生が考える"少女"のような人――具体的な容姿から"かわいい"こと との関連性まで」『共立女子短期大学生活科学科紀要』51、1-11 永田麻里子・児玉好信、2009、「"少女"のような人のイメージ構造分析」『共立女子短期大学生活科学科紀要』 52、29-35 藤本由香里、1998、『私の居場所はどこにあるの?──少女マンガが映す心のかたち』学陽書房 水野麗、2004、「『女の子らしさ』と『かわいい』の逸脱―『ゴシック・ロリィタ』におけるジェンダー」『女 性学年報』25、107-35 横川寿美子、1991、『初潮という切札──〈少女〉批評・序説』JICC出版局 渡部周子、2007、『〈少女〉像の誕生──近代日本における「少女」規範の形成』新泉社

参照

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