テーラードブランクによる
性能と歩留りの改善
最適な位置に最適な部材を配置
図 1-1-1 に示すブランク形状の設計において、製品の各 4 面への要求仕様が異
なる場合でも、最大公約数的な考えで、1 つの材料からの加工を想定するのが一
般的です。その結果、ブランク形状の各 4 面の中には板厚や材質の仕様が不十分
になる場合や、反対に十分すぎる場合が生じました。
また、ブランク形状の中央部の材料はそのほとんどが廃材となるため、加工素
材の歩留りが悪化して製品コストの増加に繋がっていました。
図 1-1-2 に示すように、ブランク形状の各 4 面に異なる部品(A、B、C)をあ
らかじめ切断し、これらの部品を溶接して 1 つの製品にすることが行われていま
す。この組み合わす部品(A、B、C)は、板厚の違い、材質の違い、表面処理
の違いなどを想定しています。
さらに、各部品の溶接にレーザ溶接を適用した場合は、溶接部の熱影響が少な
く、高い溶接強度が得られます。そのため軟鋼やステンレス鋼などが被加工物の
場合、溶接後のプレス成形加工も可能です。このようなレーザ溶接を可能にした
のは、各部品をレーザ切断することで切断面精度が向上し、それにより突合せ継
手の精度が向上したためです。板金のシャー切断ではその切断面に発生する肩ダ
レが突合せ継手でのキャップ発生を招き、良好なレーザ溶接が行えません。レー
ザ切断ではダレのない切断面精度の高い品質が得られるため、良好なレーザ溶接
が可能になりました。さらに図 1-1-3 に示すように、A、B、C の部品形状を素
材からレーザによって切り出す場合には、その部品を効率良く配置できるため、
歩留りの向上を図ることができます。
この適用例として知られているのが、図 1-1-4 に示す自動車ボディーのテーラ
ードブランク工法です。必要な強度に応じて板厚を変更し、必要な耐食性に応じ
て亜鉛メッキ材の種類を変更しています。それぞれの部位に最適な板厚、材質、
強度、表面処理、成形性などの素材を配置するための技術です。このようにテー
ラードブランクでは各部位をきめ細かい最適な仕様に仕上げることができます。
ただし、この方法は工程が増えることから少量生産ではコストが増加するため、
生産量の多い製品が対象になります。
POINT
ブランク材からの廃材を削減
素材の加工歩留りを改善
構造に合わせて素材を最適に配置
1.1
従来工法
着眼点&効果
テーラードブランクによる
性能と歩留りの改善
最適な位置に最適な部材を配置
図 1-1-1 に示すブランク形状の設計において、製品の各 4 面への要求仕様が異
なる場合でも、最大公約数的な考えで、1 つの材料からの加工を想定するのが一
般的です。その結果、ブランク形状の各 4 面の中には板厚や材質の仕様が不十分
になる場合や、反対に十分すぎる場合が生じました。
また、ブランク形状の中央部の材料はそのほとんどが廃材となるため、加工素
材の歩留りが悪化して製品コストの増加に繋がっていました。
図 1-1-2 に示すように、ブランク形状の各 4 面に異なる部品(A、B、C)をあ
らかじめ切断し、これらの部品を溶接して 1 つの製品にすることが行われていま
す。この組み合わす部品(A、B、C)は、板厚の違い、材質の違い、表面処理
の違いなどを想定しています。
さらに、各部品の溶接にレーザ溶接を適用した場合は、溶接部の熱影響が少な
く、高い溶接強度が得られます。そのため軟鋼やステンレス鋼などが被加工物の
場合、溶接後のプレス成形加工も可能です。このようなレーザ溶接を可能にした
のは、各部品をレーザ切断することで切断面精度が向上し、それにより突合せ継
手の精度が向上したためです。板金のシャー切断ではその切断面に発生する肩ダ
レが突合せ継手でのキャップ発生を招き、良好なレーザ溶接が行えません。レー
ザ切断ではダレのない切断面精度の高い品質が得られるため、良好なレーザ溶接
が可能になりました。さらに図 1-1-3 に示すように、A、B、C の部品形状を素
材からレーザによって切り出す場合には、その部品を効率良く配置できるため、
歩留りの向上を図ることができます。
この適用例として知られているのが、図 1-1-4 に示す自動車ボディーのテーラ
ードブランク工法です。必要な強度に応じて板厚を変更し、必要な耐食性に応じ
て亜鉛メッキ材の種類を変更しています。それぞれの部位に最適な板厚、材質、
強度、表面処理、成形性などの素材を配置するための技術です。このようにテー
ラードブランクでは各部位をきめ細かい最適な仕様に仕上げることができます。
ただし、この方法は工程が増えることから少量生産ではコストが増加するため、
生産量の多い製品が対象になります。
POINT
ブランク材からの廃材を削減
素材の加工歩留りを改善
構造に合わせて素材を最適に配置
1.1
従来工法
着眼点&効果
C 部品
A 部品 B 部品
抜いた内側は廃材
1 つの材料から 1 つの形状加工を想定
図 1-1-1 従来設計によるブランク加工
A 材料
A 材料
B 材料
C 材料
図 1-1-2 レーザ加工の提案
A 材料
C 材料
B 材料
歩留り向上
図 1-1-3 部品の効果的な配置
差厚材の
突合せ溶接部
自動車のボディー
図 1-1-4 テーラードブランクの例
管構造における部品点数の削減
流体の流れる管構造の生産性を改善
水やガスなどの流体の通過する管が複数存在し、その固定を必要とする構造で
は、一般的に図 1-1-5 に示すような、固定治具によって管を固定する構成になり
ます。このような管構造の製品を設計・製造する課題には、製造工程での管部品
や固定治具部品の管理、固定作業に要する作業時間の増加、最終製品の大型化や
重量増加などが挙げられました。いずれも部品点数が増加することに起因するも
のです。
このような流体が通過する複数の管を必要とする構造に、レーザ溶接を適用し
て課題の解決を図ることが可能です。
(1)フレア継手溶接
レーザ溶接が非接触加工であること、溶融幅が狭く深溶け込みが可能であるな
どの特徴を活かして、図 1-1-6 に示すような、管の外周面を合せたフレア継手の
溶接が可能です。ただし、合せ面のギャップを小さくする必要から管の外形寸法
の精度が要求されます。この条件が整えば、光による溶接は管材の曲面形状がレ
ーザ光を接合面に誘導するように作用するため、狙いずれの裕度を改善させる効
果があります。管の外周面を合わせたフレア継手溶接は、レーザ溶接の特徴をよ
り発揮できる継手形状と言えます。
(2)仕切り板のT字貫通溶接
図 1-1-7 に示すような、管内に流体の仕切り板を挿入し管の外側からレーザ光
を照射し貫通溶接する方法があります。管内に挿入する仕切り板の端面形状は管
材の内面形状に合わせた精度や継手の裕度を向上させる形状を必要としますが、
レーザ溶接が開始されると管の内面が仕切り板を固定する作用となり、熱変形は
ほとんど発生しません。流体の種類を増やす必要のある場合は、挿入する仕切り
板の数を増やす構造で対応することも可能です。
(3)ハイドロフォーミング
図 1-1-8 は、板金のレーザ溶接と流体加圧による変形を利用したハイドロフォ
ーミングによる成形方法です。製造方法は、①板の重ね、②レーザによる重ね溶
接、③流体による加圧の工程で行います。レーザ溶接後に流体の加圧による変形
効果を応用した加工方法です。そのため、レーザ溶接による接合部には十分な溶
POINT
フレア継手はレーザ光を誘導
仕切り板により流路を分割
流体加圧により管構造を形成
1.2
従来工法
着眼点&効果
管構造における部品点数の削減
流体の流れる管構造の生産性を改善
水やガスなどの流体の通過する管が複数存在し、その固定を必要とする構造で
は、一般的に図 1-1-5 に示すような、固定治具によって管を固定する構成になり
ます。このような管構造の製品を設計・製造する課題には、製造工程での管部品
や固定治具部品の管理、固定作業に要する作業時間の増加、最終製品の大型化や
重量増加などが挙げられました。いずれも部品点数が増加することに起因するも
のです。
このような流体が通過する複数の管を必要とする構造に、レーザ溶接を適用し
て課題の解決を図ることが可能です。
(1)フレア継手溶接
レーザ溶接が非接触加工であること、溶融幅が狭く深溶け込みが可能であるな
どの特徴を活かして、図 1-1-6 に示すような、管の外周面を合せたフレア継手の
溶接が可能です。ただし、合せ面のギャップを小さくする必要から管の外形寸法
の精度が要求されます。この条件が整えば、光による溶接は管材の曲面形状がレ
ーザ光を接合面に誘導するように作用するため、狙いずれの裕度を改善させる効
果があります。管の外周面を合わせたフレア継手溶接は、レーザ溶接の特徴をよ
り発揮できる継手形状と言えます。
(2)仕切り板のT字貫通溶接
図 1-1-7 に示すような、管内に流体の仕切り板を挿入し管の外側からレーザ光
を照射し貫通溶接する方法があります。管内に挿入する仕切り板の端面形状は管
材の内面形状に合わせた精度や継手の裕度を向上させる形状を必要としますが、
レーザ溶接が開始されると管の内面が仕切り板を固定する作用となり、熱変形は
ほとんど発生しません。流体の種類を増やす必要のある場合は、挿入する仕切り
板の数を増やす構造で対応することも可能です。
(3)ハイドロフォーミング
図 1-1-8 は、板金のレーザ溶接と流体加圧による変形を利用したハイドロフォ
ーミングによる成形方法です。製造方法は、①板の重ね、②レーザによる重ね溶
接、③流体による加圧の工程で行います。レーザ溶接後に流体の加圧による変形
効果を応用した加工方法です。そのため、レーザ溶接による接合部には十分な溶
POINT
フレア継手はレーザ光を誘導
仕切り板により流路を分割
流体加圧により管構造を形成
1.2
従来工法
着眼点&効果
接強度が必要になります。流体により成形させる条件のため、厚板の製品加工に
は適用できませんが、熱交換器などの薄板の製品には適用が始まっています。図
1-1-9 にはレーザ溶接した板厚 1mm のステンレスをハイドロフォーミングによ
り成形した例を示します。
図 1-1-5 流体管路固定の例
固定バンド
固定治具
管
図 1-1-6 管外周面の溶接
フレア継手
レーザ
提供:倉敷レーザー株式会社
図 1-1-7 仕切り板の溶接
レーザ
T 型貫通継手
図 1-1-8 レーザ溶接とハイド
ロフォーミング
① 板の重ね
② 重ね溶接
③ フォーミング
レーザによる重ね溶接
流体による加圧
図 1-1-9 ハイドロフォーミング
による加工例
提供:倉敷レーザー株式会社
レーザ切断時の材料歩留りの改善
材料費削減のための歩留り向上
一般的な板金部品の切断では、図 1-1-10 に示す定尺材の素材から部品を切り
出す方法をとります。各部品間には切り残し幅が生じ、この切り残し幅が製品に
寄与しない無駄な部分になるため、その削減が課題になります。レーザ切断にお
ける切り残し幅は加工対象の板厚によって異なり、板厚が大きくなるほど切り残
し幅を大きくする必要があるため、歩留りは悪化します。また素材単価の高い合
金鋼ほど歩留り悪化の影響は大きくなります。さらに、レーザ切断では切断方向
によって切断面粗度やテーパ度、ドロスの状態などの切断品質が異なるため、部
品の切断方向を一定にする必要がありました。
現在のレーザ加工機は、切断方向による切断品質の差異が大幅に改善されたこ
とで、以下に示す歩留りの改善が行われています。
(1)共通線切断
図 1-1-11 は、切断する形状の一辺を他の部品と共通にした切断方法です。1
つの切断軌跡が 2 部品の加工経路を共用して形成するため、切残し幅が減少しま
す。さらにレーザ切断の経路長や、ピアシング(加工開始穴の開孔)の回数も減
るため、加工時間も大幅に削減できます。曲線形状では隣り合う部品の共用した
合わせ面が生じないため共通線切断は使えませんが、直線部からなる形状では直
線距離の長い辺を共通線に配置します。図 1-1-12 は図示する形状の共通線有り
無しでの配置の比較です。歩留りは 73.2%が 89.7%に改善しました。しかし、こ
の方法での注意点は、加工品が切り離す際に加工品が傾き、加工ヘッドと加工品
が接触する可能性があります。加工プログラムにおける加工順序や加工方向が適
正であることの事前確認が必要です。
(2)フラットバー(平鋼)の切断
図 1-1-13 は、切り出す部品の幅と同じ幅の素材(フラットバー)による加工
方法です。フラットバー幅と加工部品の幅とを共通化することで、レーザ切断長
さを短縮でき、さらに切断の開始が素材の端部からになるためピアシンング回数
を減らす効果があります。
この方法での注意点は、フラットバーと加工部品の位置決めを高精度に行う必
要があります。また、加工開始部はフラットバー端面から内部に切込むため、切
POINT
切断形状の一辺を他製品と共通にする設計
素材幅に合わせた設計
設計製品の幅に合わせた素材の手配
1.3
従来工法
着眼点&効果