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(1)

精神腫瘍学

(Psychoonchology)

2010.10.22 自治医科大学緩和医療講座 岡島 美朗 1

(2)

Agenda

(1) 精神腫瘍学とは?

(2) 精神症状のコントロール

①うつ病・適応障害

②せん妄

③希死念慮・自殺企図

(3) スピリチュアルケアの可能性

(4) 悪い知らせを伝える際のコミュニケーション・スキル

2

(3)

(1) 精神腫瘍学とは?

(4)

精神腫瘍学 (サイコオンコロジー)

がん患者を対象とする、精神医学的・心理学的活動 臨床的課題 ・がん患者における精神障害の診断・治療 ・がん患者の心理的苦痛に対するケア ・がん治療のサポート(患者の判断能力の査定、自己決定へ の援助、スタッフへの心理的ケア、医師のコミュニケーション スキルの指導など) ・家族・遺族のケア 4

(5)

L.R.Dorogatisら(1983) 215例のがん患者のうち、101例(47%)に精神障害。 適応障害が69%、不安と抑うつを伴うものが最多。 うつ病性障害が13%、不安性障害は4%。 M.J.Massieら(1987) 精神科コンサルテーションを受けたがん患者546名。 不安性障害4%、大うつ病9% 適応障害54%(抑うつ気分を伴うもの26%、不安を 伴うもの11%、不安と抑うつを伴うもの17%)

がん患者にみられる精神障害

5

(6)

①うつ病・適応障害

(2) 精神症状のコントロール

(7)

大うつ病、適応障害の有病率 -国立がんセンター

がんの部位 症例数 有病率 129 107 223 55 140 148

14% / 5%

13% / 4%

5% / 4%

35% / 7%

19% / 9%

18% / 5%

適応障害

大うつ病

進行肺がん 初回治療前 全病期頭頚部がん 初回治療前 早期肺がん 術後1か月間 再発乳がん 診断後3か月 終末期がん 死亡前約2ヶ月 術後乳がん 外来通院中 17% 9% 19% 23% 42% 28% 合計 7

(8)

大うつ病エピソード(DSM-Ⅳ) A.以下の症状のうち、5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在 し、病前の機能から変化を起こしている;これらの症状のうち、尐なく とも1つは、(1)抑うつ気分または(2)興味または喜びの消失である。 (1)患者自身の言明(例えば、悲しみまたは、空虚感を感じる)か、他者 の観察(例えば、涙を流しているように見える)によって示される、ほとん ど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。 (2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての 活動における興味、喜びの著しい減退(患者の言明、または他者の観 察によって示される) (3)食事療法をしていないのに、著しい体重減尐、あるいは体重増加 (例えば、1ヶ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食 欲の減退または増加 (4)ほとんど毎日の不眠または睡眠過多 (5)ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察 可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚 ではないもの) 8

(9)

(6)ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退 (7)ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感 (妄想的であることもある)、(単に自分をとがめたり、病気になった ことに対する罪の意識ではない)。 (8)思考力や集中力の減退、または、決断困難がほとんど毎日認め られる(患者自身の言明による、または他者によって観察される。 (9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画は ないが反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっき りした計画 B.症状は混合性エピソードの基準を満たさない。 C.症状は臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的、または他の 重要な領域における機能の障害を引き起こしている。 D.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、ま たは一般身体疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない。 E.症状は死別反応ではうまく説明されない。 9

(10)

適応障害 (DSM-Ⅳ) A. はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレ ス因子の始まりから3ヶ月以内に、情緒面または行動面の 症状の出現。 B. これらの症状や行動は臨床的に著しく、それは以下のど ちらかによって裏付けられている: (1)そのストレス因子に暴露されたときに予測されるものを はるかに超えた苦痛. (2)社会的または職業的(学業的)機能の著しい障害. C.ストレス関連障害は他の特定の第一軸障害の基準を満た していないし、すでの存在している第一軸障害または第二 軸障害の単なる悪化でもない. D. 症状は、死別反応を示すものではない。 E. そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、 症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない。 10

(11)

がんに対する心の反応

0 2週 3 ヶ月

日常生活に支障なし

時間

がん

検査 衝撃 否認 絶望 怒り 集中力低下 食欲低下・不眠 不安 悲嘆・落胆・うつ •現時的対応 •情報収集 •孤立感 •疎外感 •楽観的見通し 「自分のがんは 治るのでは?」 11

(12)

Are you depressed? (Chochinov et. al., 1997)

進行ガンで緩和ケアを受けている197人の患者に対し、

1) 抑うつ気分を問う一問法

2) 抑うつ気分と興味の喪失を問う二問法

3) 13項目からなるBeck Depression Inventory

4) 抑うつ気分に対するvisual analog scale (≧55mm)

を施行し、うつ病に対する半構造化面接の結果と比較した。

(13)

抑うつ気分 「気分が沈んだり,憂うつな気持ちになったりすることが よくありましたか?」 「悲しくなったり,落ち込んだりすることがありますか?」 興 味 または 喜びの喪失 「どうしても物事に対して興味がわかない, あるいは心から楽しめない感じがよくありましたか?」 たとえば 「友達と会って話すのが好きだったのに,会ってもおもしろくない」 「運動や音楽が好きだったのに,熱中できない,感動しない」 「テレビでスポーツやドラマを見ていても,おもしろくない」 社団法人 日本医師会編. 自殺予防マニュアル:一般医療機関におけるうつ状態・うつ病の早期発見とその対応, 2004, 明石書店 鈴木竜世, 他. 精神医学 2003; 45(7): 699-708. 上記のいずれかの状態が1か月以上続く場合,以下の項目を確認し,うつ病の診断を行う □ 食欲の減退・増加または体重の減尐・増加 □ 睡眠障害(不眠,早朝覚醒または睡眠過多) □ 精神運動機能の障害 □ 疲れやすさ・気力の減退 □ 強い罪責感 □ 思考力や集中力の低下 □ 自殺への思い

うつ病のスクリーニング(2質問法)

13

(14)

・薬物療法

フルボキサミン(ルボックス) 25~75mg 分1~分3 SSRI、嘔気・嘔吐、他剤との相互作用に注意 パロキセチン(パキシル) 10~20mg 分1 SSRI、嘔気・嘔吐 セルトラリン(ジェイゾロフト)25~50mg 分1 ほてりに有効? ミルナシプラン(トレドミン) 25~50mg 分1~分2 SNRI、尿閉に注意 ミルタザピン (レメロン、リフレックス) 15~30mg 分1 不眠、嘔気・嘔吐に有効 トラゾドン(デジレル) 25~75mg 分1~分3 不眠患者に有効 セチプチリン(テシプール) 1~3mg 分1~分3 14

(15)

支持的精神療法の3原則

傾聴・共感

支持

保証

(16)

②せん妄

(17)

せん妄の評価 ~診断基準~

1.

意識障害:ボーっとしていて周囲の状況を良く

わかっていない

2.

認知機能・知覚の異常:見当識障害、幻覚、妄

想など

3.

日内変動:1日の中で症状のむらがある、夜

間に悪化

4.

原因となる薬物、あるいは身体要因が存在す

上記を全て満たす場合、せん妄の診断に該当する

米国精神医学会診断基準 DSM-IV 17

(18)

環境変化 心理的不安 性格傾向 鎮静系薬物の離脱 中枢性抗コリン薬 睡眠・覚醒リズム障害 脳血流低下 内分泌障害 代謝障害 鎮静系薬物 辺縁系の過剰興奮 (不安緊張の亢進) 安静覚醒閉瞼時の 急速眼球運動頻発 REM睡眠の影響 中脳・視床・皮質系の活動低下 (意識の軽度混濁) 脳波の徐波化 入眠過程の影響 脳 機 能 の 脆 弱 性 精神症状、問題行動 認知機能低下症状 妄想 覚醒保持の障害(傾眠) 幻覚(幻視、幻聴) 注意集中の障害 不穏 見当識の障害 錯乱 記憶障害 興奮 錯覚 せん妄の発症 多動性 寡動性 (一瀬ら、1998) 18

(19)

せん妄の診立て

・特有の現象 ①(軽度の)意識障害・・・注意機能の障害 例)注意散漫、些細な刺激で注意がそれたりして、 話がかみあわない 些細な単語の言い間違い、語性錯語が多い 連続の引き算、桁の繰り下がりを間違える・・・・・など ②認知障害 幻覚(幻視)、妄想 記憶障害(特に即時記憶、近時記憶) 遠隔記憶は比較的保たれる 失見当識 19

(20)

せん妄の原因

A. 頭蓋内疾患 1. 脳腫瘍, 癌性髄膜炎など B. 薬剤 1. オピオイド 2. 向精神薬 他, ステロイド, H2阻害薬など C. 離脱 1. アルコール 2. 薬剤 D. 全身疾患 1. 臓器不全:肝, 腎, 呼吸 2. 感染 特に 尿路, 呼吸器 3. 血液 貧血, DIC 4. 代謝性・脱水 高Ca血症 低Na血症, 低Mg血症, 高血糖 E. 死の前のせん妄 F. 尿意, 便意, 疼痛 20

(21)

・せん妄発症は臨床的に多要因で起こり、特に高齢者ではその 傾向が強まる。 ・ 「男性であること」、「高齢者であること」、「認知機能障害があ ること」がせん妄の発症率を高める。 ・ Lipowskiせん妄発症因子を3つの要素に分類。 「直接因子」「誘発因子」「準備因子」

せん妄の発症因子

「せん妄の診断・予防・治療」 監修:産業医科大学 精神医学教室 教授 中村 純 21

(22)

直接因子

●中枢神経系疾患 脳血管障害、脳腫瘍、脳外傷、脳・髄膜炎 etc ●内科的疾患 代謝性疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患) 内分泌疾患(甲状腺疾患、副腎疾患)etc ●依存性薬物からの離脱 アルコール、睡眠薬、抗不安薬 etc ●中枢神経系に作用する薬物の使用 抗コリン薬、抗不安薬、睡眠薬、H2ブロッ カー etc 「せん妄の診断・予防・治療」 監修:産業医科大学 精神医学教室 教授 中村 純 22

(23)

誘発因子

・入院による環境の変化 ・ICU、CCUなどにおける過剰刺激 ・睡眠妨害要因(騒音、不適切な照明 etc) ・心理的ストレス(不安) ・身体的ストレス(痛み、かゆみ、頻尿 etc) ・感覚遮断(眼科手術後 etc) ・拘禁状況 「せん妄の診断・予防・治療」 監修:産業医科大学 精神医学教室 教授 中村 純 23

(24)

準備因子

・高齢

・脳血管障害(慢性期)、 アルツハイマー病 etc

(25)

せん妄の下位分類

・過活動型・・・幻覚、妄想を伴い、動きが活発、しばしば興奮 ・低活動型・・・不活発、無気力、混乱

・混合型

(26)

せん妄の三大特徴

1. 急性発症

2. 日内・日間変動

3. 可逆性

(27)

医療者のせん妄の認識

対象 新規に入院した70歳以上の患者(N=797)

方法 看護師によりせん妄の有無を臨床的に評価(隔日)

Inouye et al., Arch Intern Med 2001

観察総数(N=2721) せん妄あり (N=239) せん妄なし (N=2482) せん妄あり せん妄なし 医療者の評価 19 % 81 % 4 % 96 %

せん妄の認識率

27

(28)

進行がんのせん妄の原因の治療可能性

12% 0.23 [0.08-0.64] 感染症 0.46 [0.21-1.02] 0.32 [0.15-0.70] n.s. 6.7 [1.5-30] Lawlor PG  回復のOdds比 高カルシウム血症 38% 他       <10% 代謝性 <10% 低酸素 <10% 脱水 37% 薬物 Morita T  回復率 治療可能性が高い:薬物、高カルシウム血症          低い:低酸素、感染症、肝腎不全 28

(29)

せん妄治療の基本戦略

・直接因子の除去 薬物の影響(離脱対策、オピオイドの検討を含む)、脱水、 代謝異常、感染、低酸素症、脳浮腫など ・準備因子への対処 睡眠・覚醒リズムの確保、不安の緩和、感覚遮断対策など ・せん妄自体の是正 29

(30)

薬物療法の考え方

・せん妄自体の改善と、睡眠・覚醒リズム確保が目的 ・可能であれば経口・定時投与が望ましい (非経口投与は選択肢が尐なく、睡眠リズムを乱しやすい) ・個人差が大きい。 ・せん妄の治療薬自体の副作用に注意。 (持ち越し、抗精神病薬によるアカシジアなど) 30

(31)

主なせん妄治療薬

非経口投与 haloperidol 2.5~5mg d.i.v. flunitrazepam 0.5~2mg d.i.v 経口投与 ・抗精神病薬 haloperidol 0.75~3mg risperidone 0.5~1mg quetiapine 12.5~25mg (DMには禁忌) olanzapine 2.5~5mg ( 〃 ) ・抗うつ薬 mianserin 5~30mg trazodon 12.5~50mg (半減期短い) 31

(32)

せん妄の発症と増悪には

環境因子が複雑に影響を及ぼす。

せん妄患者の環境整備とケア

環境整備など適切な患者ケアが

予防、効果的な治療につながる。

「せん妄の診断・予防・治療」 監修:産業医科大学 精神医学教室 教授 中村 純 32

(33)

せん妄患者の環境整備とケアのポイント1

●睡眠の確保 ・せん妄のベースには睡眠障害 →しっかりとした睡眠を確保する ことが大切。 ・昼夜逆転を防ぐ。 ●環境整備 ・時間や場所、日付などの見当識を保てる 工夫(カレンダー、時計などの設置)。 ・慣れ親しんだ日用品を身の回りに置く。 ・日中は感覚刺激を与える。 ・現実検討能力の維持に努める。 「せん妄の診断・予防・治療」 監修:産業医科大学 精神医学教室 教授 中村 純 33

(34)

せん妄患者の環境整備とケアのポイント2

●危険防止 ・転落転倒防止のため、ベット柵 は高く。 ・万一の転落に備えてベットの床 の高さを最低まで下げる。 ●過剰刺激の改善 ・点滴ボトルやカテーテルが 見えないように工夫。 ・身体拘束の期間は最小限に。 「せん妄の診断・予防・治療」 監修:産業医科大学 精神医学教室 教授 中村 純 34

(35)

せん妄患者の環境整備とケアのポイント3

●心理的サポート ・身体面のみならず、 精神面に対する配慮 も重要。 ・なるべく一定の 看護スタッフが関わり、 不安を緩和し、穏やか で わかりやすい会話を 心がける。 「せん妄の診断・予防・治療」 監修:産業医科大学 精神医学教室 教授 中村 純 35

(36)

終末期のせん妄

・進行がんの終末期患者の88%に出現 ・一般に睡眠・覚醒のコントロールでは対応困難 ・対応は症例により異なる 鎮静の適応となることも 36

(37)

③希死念慮・自殺企図

(38)

悪い知らせと日本人がん患者のストレス

自殺との関連

時期 一般人口との比較(95%Cl) がん診断後 3-5ヶ月以内 4.35 倍(1.87-8.58) がん診断後 5年以内 男性 1.62 倍(1.03-2.43) 女性 2.13 倍(1.22-3.47) 50代 1.93 倍(1.19-2.95) 遠隔転移 4.66 倍(2.12-8.84) 女性性器がん 3.58 倍(1.54-7.06) 男性性器がん 5.86 倍(1.58-15.05) 38

(39)

終末期がん患者の希死念慮

(Chochinovら, 1995)

痛 み

家族のサポート

うつ状態

絶望感

希死念慮

39

(40)

自殺に追い込まれる人に共通する心理

(高橋、2006)

1.極度の孤立感 2.(自己に対する)無価値感 3.強度の怒り 4.窮状が永遠に続くという確信 5.心理的視野狭窄 6.諦め “どうでもいい” “何が起きてもかまわない” 7.全能の幻想 “自殺は自分が今できる唯一残された 行為だ” 40

(41)

「自殺したい」と打ち明けられたら

①誰でもいいから打ち明けたのではない(と思う)。 ②生と死の間で激しく揺れ動いている(んだと思う)。 ③時間をかけて訴えを共有する。 ④沈黙を共有してもよい。 ⑤してはいけないこと 話をはぐらかす、批判がましいことをいう、 当たり障りのない励ましをいう、世間の常識を押し付ける ⑥悩みを理解しようとする態度を伝える。 ⑦十分に話を聴いたうえで他の選択肢を示す。 ⑧いつも「自殺」の話題から打ち明けてくるわけではない。 41

(42)

(3) スピリチュアル・ケアの可能性

(43)

全人的痛み Total pain 身体的痛み Somatic pain 精神的痛み Mental pain スピリチュアルペイン Spiritual pain 社会的痛み Social pain 43

(44)

スピリチュアルケア 超越者(絶対者)との関係の欠落・喪失、 病気の中で生きる意味・目的・価値の喪失、 苦難の人生の無意味感、 自己との和解の欠如、自己の否定・拒否 (人生の共感者) 死後の命・天国・地獄・極楽浄土・ 永遠の命などの確信の喪失、 病気回復の祈願・宗教的勧誘・ 宗教的典礼からの疎外感 (宗教者・信徒) 宗教的ケア 人間関係での怒り・悲しみ、 病気の不安・恐れ・後悔・ いら立ち・孤独・疎外感などの 感情・情緒的問題 (心理学者・看護者) 精神的・心理的ケア 心のケア (窪寺、1997) 44

(45)

霊的(spiritual)という言葉の定義 「霊的」とは、人間として生きることに関連した経験的一側面 であり、身体感覚的な現象を超越して得た体験を表す言葉で ある。多く人〄にとって「生きること」がもつ霊的な側面には宗 教的な因子が含まれているが、「霊的」は「宗教的」と同じ意 味ではない。霊的な因子は身体的、心理的、社会的因子を包 含した人間の「生」の全体像を構成する一因子とみることがで き、生きている意味や目的についての関心や懸念とかかわっ ていることが多い。特に人生の終末に近づいた人にとっては、 自らを許すこと、他の人〄との和解、価値の確認などと関連し ていることが多い。 WHO「がんの痛みからの解放とパリアティ ブ・ケア」(1990) 45

(46)

スピリチュアル・ペインの構造(村田)

1)時間存在として a. 将来がない、残された時間がないという切迫感 b. 命が限られているという自覚のなかで生じる疑問 2)関係存在として a. 他者との関係が変化するにしたがって、自分が変わっていく b. 家族と社会に何らかの貢献をし、足跡をのこしておき たいという気持ち c. 死に伴う喪失感と孤独感。何かにすがりたいという気持ち。 死後の世界はあるのか。 3)自律存在として a. 自分のことができなくなっていく。自分のことがわからなくなる b. 自分の病で他人に迷惑をかけたくない。 46

(47)

(4) 悪い知らせを伝える際の

コミュニケーション・スキル

(48)

コミュニケーションスキル ≠ “うまい言い方をすること” 聴くスキル : 質問するスキル : 応答/共感するスキル : 話したいことをよく聴き、 さらに思いを語ってもらい、 その思いに近づき、寄り添 おうとしていることを伝える。 基本的コミュニケーションスキルとは・・・ 48

(49)

悪い知らせを伝える

=困難なコミュニケーションスキル

なぜ?なにが困難?

伝えた内容が相手を傷つけてしまう

→ 基本的コミュニケーションスキルの使用が困難

49

(50)

(大腸がんの手術をしてから半年) 医師: 採血で腫瘍マーカーが上昇していたので、検査をしたと ころ、肝臓に転移が見つかりました。 患者: そんな・・・先生は手術は成功したって言ってたじゃな いですか!あれはうそだったんですか!? 医師: Ⅱ期の大腸がんの場合、70%は再発しないんですが、 30%には再発が見られます。がんは主に血液にのって 転移するので、場所としては肺、肝臓、骨などが多いので す。 患者: ・・・・・・・・・・・・ 50

(51)

「再発が確認されました。」 「手術が成功したって言った のはうそだったんです か!?」

こころの中では・・・・・

「このがんは70%は大丈 夫ですが、30%は再発す るんです。」 客観的、中立的に事実を伝える。 予想しない事態に衝撃を受ける。 やりばのない怒りを誰に向けれ ば・・・・ 非難されたように感じる。 “自分が間違っていないことを示そう。” 51

(52)

がん患者が告知について抱いている不満

・ もっとわかりやすくかみ砕いて説明してほしい。 ・ 一般論でなく、自分はどうなのかをきちんと教えてほしい。 ・ そこまで言わなくてもいいのでは、と思った。 ・ 説明が専門的すぎる。 ・ もう尐し闘病の励みになるような希望や保証のある、親身 になった説明がほしい。 ・・・・・・・などなど 52

(53)

バッドニュースを伝えるコミュニケーションスキル

・ 事実を正確に、相手に理解できるように伝え、 ・ 同時に衝撃をできる限り和らげる配慮をし、

・ (厳しい現実に)傷ついた相手をサポートする。

(54)

コミュニケーションに対するがん患者の意向

の構成概念:SHARE

• 対象:がん患者571名、医師7名 • 方法:半構造化面接、質問紙調査 • 解析:内容分析、および因子分析 • 結果:619の発言内容から70項目、及び4つの構成要素 が抽出された S upportive Environment H ow to deliver the bad news

A dditional information R eassurance and E motional support H A RE RE RE RE S H Fujimori et al. 2005; 2007 54

(55)

Supportive environment

支持的な環境を設定する

• 十分な時間を設定する

• プライバシーが保たれた、落ち着いた環境

を設定する

• 面談が中断しないように配慮する

• 家族の同席を勧める

55

(56)

How to deliver the bad news

悪い知らせを伝える

• 正直に、わかりやすく、丁寧に伝える

• 患者の納得が得られるように説明をする

• はっきりと伝えるが「がん」という言葉を繰

り返し用いない

• 言葉は注意深く選択し、適切に婉曲的な

表現を用いる

• 質問を促し、その質問に答える

56

(57)

Additional information

付加的な情報を提供する

• 今後の治療方針を話し合う

• 患者個人の日常生活への病気の影響に

ついて話し合う

• 患者が相談や気がかりを話すよう促す

• 患者の希望があれば、代替療法やセカン

ド・オピニオン、余命などの話題を取り上げ

57

(58)

Reassurance and Emotional Support

安心感と情緒的サポートを提供する

• 優しさと思いやりを示す

• 患者に感情表出を促し、患者が感情を表出した

ら受け止める

– 例:沈黙 「どのようなお気持ちですか?」 うなずく

• 家族に対しても患者同様配慮する

• 患者の希望を維持する

• 「一緒に取り組みましょうね」と言葉をかける

58

(59)

悪い知らせを伝えるコミュニケーション技術

起 面談までに準備する ・事前に重要な面談であることを伝えておく ・家族の同席を促す ・プライバシーが保たれた部屋、十分に時間を確保する ・面談の中断を避ける ・身だしなみや時間遵守など基本的態度に留意する 面談を開始する ・面談の始めからいきなり悪い知らせを伝えない ・経過を振り返り病気の認識を確認する ・現実とのギャップの埋め方の戦略を立てる ・気持ちを和らげる言葉をかける ・聴くスキルを使用して患者の気がかりを聞く ・家族にも同様に配慮する 承 悪い知らせを伝える ・心の準備のための言葉をかける ・写真や検査データを用いる、紙に書く ・わかりやすく明確に伝える ・患者の理解度を確認し、速すぎないか尋ねる ・感情を受け止め、気持ちをいたわる ・質問や相談があるかどうか尋ねる 転 治療を含め今後のことについて話し合う ・標準治療、とりうる選択肢について説明する ・推奨する治療法を伝える ・がんの治る見込みを伝える ・セカンドオピニオンについて説明する ・患者が希望の持てる情報も伝える ・患者の日常生活や仕事について話し合う 結 面談をまとめる ・要点をまとめる ・患者の気持ちを支える言葉をかける ・説明に用いた紙を渡す ・責任を持って診療にあたること、見捨てないことを伝え る SHAREを時系列に並べ替えたもの 59

参照

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