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第16回日本助産学会学術集会集録 一般演題 (口演)(その8)

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Academic year: 2021

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一般 演 題 〈研 究 〉 一 般 演 題 〈研 究 〉母 親 の予 期 せ ぬ体 験

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ダ ウ ン症 の子 どもに続 く妊 娠 ・出産 を

選 択 した女 性 の体 験

慶應義塾大学看護医療学部 ○辻 恵 子 I 緒 言 近 年 の先 端 医 療技 術 の進展 のな か で 、 生殖 補 助 技 術や 遺 伝 医 療 へ の 関 心 は一 層 高 ま り、周 産 期 領域 にお い て は 、遺伝 カ ウ ンセ リ ング の重 要 性 とそ の体 制 の 整 備 の必 要 性 が 認 識 され つ つ ある 。そ のな か で 出 生前検 査 は 、「胎 児 が 特 定 の 医学 的 状 況 にあ り、そ の た め に妊 娠 を 困難 に して い る状 態 を 除外 す る こ とにあ る 」1)と 理 解 され て い る。一 方 で 、先天 性 障 害 を もつ 児 を出 産 し、そ の 児 を養 育 して い る女 性 の 場合 、次 回 妊娠 にお いて 胎 児 は特 定 の医 学 的 状況 に あ る と され 、出 生 前診 断 の選 択 を は じめ 様 々 な葛 藤 を惹起 す る こ とが 予 想 され る。 しか し、 そ のよ うな状 況 におか れ た 女性 が 、 次 回 妊娠 ・出産 にお いて ど のよ うな体 験 を して いる のか は 明 らか に され て い な い。 先 天性 障 害 を もつ児 に続 く妊 娠 を選 択 した 女性 の体 験 を理 解す る こ とは、様 々な 背 景 を もち な が ら妊 娠 ・出産 に臨 む 女 性 の個 人 の選 択 と、 そ の意 味 に即 した 支 援 を行 うため の 助 け とな る もの と考 える 。 したが って 、本 研 究 は 先 天 性障 害 を もつ 児 に続 く妊 娠 を選 んだ 女 性 が 、妊 娠 中 か ら出産 を迎 え る まで に どの よ うな 体 験 を し、 そ の体 験 を ど の よ う に意 味付 け て い るの か を記 述 し 、理解 す る こと を 目的 と した 。 II 方 法 研 究 デザ イ ンは 、質 的記 述研 究 で あ る。 ダ ウ ン症 児 に続 く妊 娠 ・出産 を 終 え た5名 の女性 の語 りを デ ー タ と し、帰 納 的 に分 析 した 。 デ ー タ収 集 期 間 は2000年7月10日 ∼10月12日 で あ り、 非構 成 的 な 面接 方 法 によ って 行 った 。 デー タ分 析方 法 は 、本 研 究 が研 究 協 力者 の主 観 的 な体 験 の記 述 を 目的 とす る た め、現 象 学 的 ア プ ロー チ2)を 参 考 と した 。倫 理 的 配 慮 と し て は、 匿 名性 を確 保 し、 いつ で も研 究 協 力 の 辞 退が で き る こ とを保 証 した 。 本 研 究 へ の協 力 に際 し、 協 力者 と信頼 関係 にあ る相 談 者(医 師 、保 母 等)を 研 究 者 以 外 に確 保 した 。 なお 、 本 研 究 は聖 路 加 看護 大 学 研 究 倫 理審 査 委 員 会 の審 査 を受 け、2000年6月26日 に承 認 された 。 III 結 果 ダ ウ ン症 児 に続 く次 子 出産 を終 え た5名 の女 性 の体 験 、及 び 解 釈 され た 意 味 を以 下 に示 す。 1."普 通 の子"へ の こだ わ りを手 放 す こ とに よ って 獲 得 した 現 在 あ る 自分―Cさ んはダウ ン症 児の出産後 、"普通の子"を 切望 したが、流産 を繰 り返す ことによってそ のこだわ りを手放 し、出産 を終え、"障害 児"・"普通の子"と いう概念か ら解 放されて いる自分に気づいて いく。 162 日本助産学会誌 第15巻第3号(2002.3)

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ダウン症の子 どもに続 く妊娠 ・出産 を選択 した女性の体験 2."普 通"を 奪 還 す る た め の 次 子 が も た ら し た ダ ウ ン症 の 我 が 子 へ の 新 た な 認 識 ― ダ ウ ン症 児 の 出産 に よ り自分 の価 値 が損 なわ れ た と感 じたDさ ん は 、 健 常 児 を得 る こ と に執 着 した が 、 出 産 後 に健 常 児 で あ って も心 配 は尽 きな い こと 、反 対 に第1子 が 普 通 に 育 って いる こ とを実 感 す る 。 3.自 分 を 責 め つ づ け る 閉 ざ さ れ た 日 々 か ら の 解 放 ― ダ ウ ン症 児 の出 産 を機 に世 間 か ら隔絶 され た と感 じて い たEさ ん は 、 次子 出産 を終 え 、心 か ら笑 え て い る 自分 に気 づ く。 そ して 現在 は 、 ダ ウ ン症 の子 ど もを得 た こ とを 人生 の 大 事 な転 機 と振 り返 る 。 4.予 定 外 の 妊 娠 が 双 胎 で あ っ た こ と に よ っ て 了 解 し た 人 生 の 意 味 ―Fさ ん は予 期 せ ぬ 双胎 妊 娠 によ っ て 、 出産 まで 葛 藤 を体 験 す るが 、次 子 出 産 を終 え て 自分 の 人 生 を与 え られ た もの 、意 味 あ る もの と理 解 す る 。 5."ダ ウ ン 症 児 の た め の 次 子"か らか け が え の な い そ れ ぞ れ の 我 が 子 へ ― ダ ウ ン症 児 の た め の 次 子妊 娠 によ り、Gさ ん は羊 水 検 査 に関連 した 葛 藤 を体 験 し、 第1子 の退 行 に悩 む。 次子 妊 娠 が 正 しか っ た と確 信 で きず にい るが 、 現 在 は 、次 子 もか け が え のな い我 が 子 で あ る と実 感 して い る。 IV 考 察 5名 の 体 験 は 固 有 の も の で あ り な が ら 、 個 別 性 を 超 え た 共 通 の 意 味 が 同 時 に 確 認 さ れ た 。 【ダ ウ ン症 児 に 続 く妊 娠 】 を 選 択 し て い く 過 程 に は 、 【ダ ウ ン症 児 の 出 産 】 と い う体 験 が 深 く か か わ っ て い た 。 そ こ に は 、 〈 期 待 して い た 健 康 な 子 ど も の 喪 失 〉 に 加 え 、 〈 自分 自 身 の 価 値 の 喪 失 〉 と い う女 性 独 自 の 体 験 が 見 出 さ れ た 。 これ らの 体 験 は 、 ダ ウ ン 症 児 を 出 産 す る 以 前 の 既 存 の 計 画 に 加 え 、 次 回 妊 娠 に 新 た に3つ の 意 味 を も た ら し て い た 。 そ れ は 〈 本 来 の 自 分 の 価 値 を 取 り戻 す 〉 、〈 普 通 の 育 児 を 体 験 す る こ とへ の 期 待 〉 、〈 ダ ウ ン症 の 子 ど も に き ょ う だ い を つ く る 〉 で あ っ た 。 女 性 た ち は 、 妊 娠 す る 以 前 に そ れ ぞ れ に 次 回 の 妊 娠 を 意 味 づ け 、 〈 羊 水 検 査 を 受 け る か 否 か の 構 え 〉 を 持 っ て い た 。 し か し 、 羊 水 検 査 を 選 択 す る か 否 か に か か わ ら ず 、 実 際 に 妊 娠 を 遂 げ 検 査 に 直 面 す る こ と に よ り、 新 た に 〈 葛 藤 〉 や 〈 揺 ら ぎ 〉 が 体 験 さ れ て い た 。 羊 水 検 査 の 選 択 に 伴 う〈 葛 藤 〉 は 、"胎 児 の 存 在 を 感 じ る こ と"、"ダ ウ ン症 の 我 が 子 の 存 在"に よ っ て 生 じて お り、 検 査 に 関 す る 態 度 は"と る べ き 態 度 を 示 唆 さ れ る"こ と に よ っ て 〈 揺 ら ぎ 〉 を伴 っ て い た 。 しか し 女 性 た ち は 、"障 害 児 で あ っ て も 引 き 受 け る"、"神 に 委 ね る"と い っ た そ れ ぞ れ の 〈 拠 り ど こ ろ 〉 を見 出 し て い た 。 ダ ウ ン 症 児 に 続 く 妊 娠 ・出 産 を 経 て 女 性 が 語 る 自 身 の 変 化 と は 、 〈 普 通 の 育 児 を 経 験 で き る 喜 び 〉 、 〈 ダ ウ ン症 の 子 ど も の 見 方 の 変 化 〉 、 〈 自分 の 価 値 観 の 転 換 〉 で あ り 、 出 産 を 終 え た の ち に 初 め て 認 識 さ れ た も の と し て 、 女 性 自 身 に と っ て 意 義 が 深 い も の と 考 え ら れ た 。 V 文 献

1) WHO; Proposed International Guidelines on Ethical Issues In Medical Genetics and Genetic Service, 1998, 松 田 一郎 監 修, 遺 伝 医 学 と遺 伝 サ ー ビス にお ける倫 理 的 諸 問題 に 関 して 提 案 され た

国際 的 ガ イ ドライ ン, 12, 1998.

2) Leininger, Madeleine M.Qualitative Research Methods in Nursing, Grune & Sttatton, 1985, 近 藤 潤 子, 伊 藤 和 弘 監訳, 看 護 に お け る質 的研 究, 医学 書 院, 106-138, 1998.

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一般 演 題 〈研究 〉 一 般 演 題 〈研 究 〉母 親 の予 期 せ ぬ体 験

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死 産 を体験 した 母 親 の 次 の妊 娠 ・分娩 に

関す る研究

-死 産後か ら次回児出産まで

の心理過程-聖隷学園浜松衛生短期大学 ○國 分 真 佐 代 I 緒 言 死産 を含む周 産期 の死 を体験 した母親 の8割 以 上が 次 の妊 娠 を考 え る といわれ て い るが、死産 後 か ら次の子 ども(以 下次回児と略)の 出産 後 までの 心理過 程 は明 らか に され てい ない。 そ こで、死産 後 に正 常 な新生 児 を出産 した母 親 の死産 後か ら次 回児 出産 まで の心 理過 程 と前 回 死産 の影響 を明 らか に し、次 回児 との よ り良い母 子 関係 を構 築す るための看 護 を考 えたい。 II 研 究方法 対象 は、静 岡県 と神 奈川 県 内の2つ の総 合病院 と1つ の個 人 医院 にお いて過去 に死産 し、次 に 正 常 な新 生児 を 出産 した9人 の母 親で あ る。対象 に は、研究 目的 ・方法、 プ ライバ シー守 秘 、参加 へ の 意思 の尊重 につ い て記 載 した協 力依 頼 書 を郵 送 し、 返信 にて 協力 承 諾 を 得 た。データは、 2000年7月 か ら9月 の期 間に対 象者 の 自宅 な どで、質 問項 目を もとに聞 き取 り調 査 に よ り収 集 し、 イ ンタ ビュー で得 られ た逐語録 を、Henseモ デル を用い て分析 を行 った。 なお、 分析 に は母 性看 護 学の 専門家2名 か らの助言 と指導教 官か らの スーパ ーバ イズ を受 けた。 Henseモデル:前 回死 産 と次 回児 の妊娠 ・出産 に は図1の よ うに母性 性 のつ なが りが あ り、次 回児 出産後 に"死産 児 を認 め"て"次 回児 を受入 れ る"た めに 、死産 とい う①"最 悪 の事態 発 生"での シ ョック状態 、次 回妊 娠 中 に生 じる次 回児 に対 す る②"再発 への 怖れ"と 次回 児 に死 産児 の代 わ りを 望 む③"代替 へ の試 み"、次 回児 と死産児 の 区別 を伴 った 次回児 へ の愛 着 を意味 す る④"次回児 への マ ザ リン グ とい う妊 娠 中の4課 題 を提示 して い る。 III 結 果 1.対 象 者 属性 調査 時 の母 親 の平均年 齢 は、31.8歳 であ った。 死 産時 の状 況 は、3人 が初 産婦 で6人 が経 産婦 で あ り、経 産婦 の内2人 は2度 目の死 産 であ った。 死産 児 の平均 在胎 は24週 、次 回児 妊娠 まで の平均期 間 は約6年 で あ り、次 回児 の平均 分娩時 週数 は37週 で あ った。 2.死 産後 か ら次 回児出 産 までの母親 の 心理過 程 死産 時 には罪意 識や 深 い悲 しみ が共 通 し 「首 か ら上 がな くな った気 が した 」とい う身体 的喪 失感 を も含 む 自分 自身 が押 しつぶ され る よ うな シ ョッ クを全て の母親 が経験 した。 死産後 か ら8人 の母親 が 「で きるだ け早 くに」と妊 娠 を希 望 し、そ の 内2人 は 「(次回妊娠時に)あ の子(死 産児)を 産 んで あげた い」の ように次 回児 に死産 児 の代わ り("代 替 へ の試 み")を望 んで いた。 この2事 例 で は、妊 娠 中 に 「この 子(次回児)には あの 子(死 産児)の 分 164 日本助産学会誌 第15巻第3号(2002.3)

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死産を体験 した母親 の次の妊娠 ・分娩に関す る研究 と命が2つ ある」の よ うに次 回児 と死産児 が重 な り合 っ た状 態 にあ り、出産 後 も区別 してい なか っ た。妊娠 中には 、全 ての母 親が 「また何 か悪 い こ とが起 こ るか も しれ ない 」 とい う"再発へ の怖れ" を持 っていた。 また、 「子 ど ものた め に安 静 にす る」の よ うな次 回児 を保 護す る行動 は ほ とん どの 母親 に見 られ た。 しか し、胎 児 に対 す る愛着 につ いて は 「なぜ か かわ いい と思 え なか った」と抵 抗 感 を示 した母 親 もいた。 出産 後の次 回児 と死産児 の2人 の子 どもの受入 れ方 は、Aグ ルー プ 『別 の 個人 と して受入れ た』(4事例)、Bグ ルー プ 『別 の個人 と して受入れ た が、次回 児 に対す る関心 が薄 かった』(2事例)、Cグ ル ー プ 『別 の個 人 と して受入れ に くか った』(2事例)の3つ に分類 で きた。 3.次 回児の受入 れ方 に よ る母親 の心理 過程 の特徴 Aグ ルー プ は死産後 に 「この 子は も うだ めな んだ。 で も上 の子 もい る し、ま た妊 娠 で きる」の よ うな あき らめ と上 の子 どもの存在や 次 回妊娠 の 可能性 に気持 ち を切 り替 えた。次 回児妊娠 中は"再 発へ の怖 れ"を感 じて い たが、妊 婦 服 を早 めに 着用 して母親役 割 の模 倣 を した り、 どの よ うな子 どもか と想像 してい た。Bグ ルー プは児喪 失の 悲 しみや 次 回児 へ の気持 ち よ りも、 「ち ゃん と したお産(自 然 分娩)が したか った」や 「義母 の反応 が気 にな り子 どもを一番 に考 え られ なか った」と調 査時 に 自分 ので きなか った こ とを繰 り返 し語 っ た。Cグ ルー プは死産 後か ら"死産 児の代 わ り"を望 み、次 回児 と死産児 は重 な り合 った状態 で、出 産 後に も死産児 とは別の個 人 と して受入 れ に くか った。 次回児妊 娠 中には否 定的 な感 情 を持 ち、妊 娠 中の性 器 出血時 には 「も うだ め に して くれた らいいの に」 と次回児 に希望 を抱 かなか った。 IV 考察 死産後の悲嘆 死産 後 の悲 嘆は 、神 仏 か らの罰や 母親 自身の身 体的 喪失感 を伴 う程 に強 く、子 ど もとの未来 を喪失 した と感 じるた めに成人 の死別後 の悲 嘆 とは異 な る内容 を含 ん でいた。 次回 児の受入れ 全て の母親 は、死産 後か らHenseモ デ ルの4課 題 に取組 んでい たが、出産 後 の次 回児 の受入 れ方 には グルー プ別 の異 な りが見 られ た。Aグ ルー プが死産 後 にあ き らめ と気持 ちの切 り替 え を行 い児喪 失 の事 実 を認 めた ことは、 よ り健 全 な生活 を切 り拓 こ うとして いた(Worden、1991) と考 え られ 、次 回児妊 娠 中 に母親 役 割の模 倣や 子 どもを想像 す る ことがで き、 出産後 の次 回児 の 受入れ につ なが った のでは ないか と思われ た。児 へ の愛着形成 に は、母親 自身が無 事 に出産 でき る ことや家族 のサ ポー トに よって守 られ る ことが重 要 といわれ てい る(Rubin、1984)が、Bグ ルー プで は この出産 を した 自分や 家族 につ いて の不全感 を次 回児 出産 後 まで強 く抱 き続 けてい たた め、次回 児 へ の 関 心 に 影 響 を及 ぼ して い た と思 わ れ た 。 Cグ ル ー プが 次 回 児 出 産 後 に も死 産 児 と の 区別 が で き な か った こ と は 、 母親 が 死 産 児 との 絆(binding-in)を 緩 め ず に持 ち 続 け て 、 死 産 児 と次 回 児 を 共 に 見 て い た と捉 え る こ とが で き 、 そ の た め に 次 回 児 の 受入 れ に 時 間 を 要 した と思 わ れ た 。 V 引 用 ・参 考 文 献:省 略 本研究は、聖隷クリス トファー看護大学へ提出 した 修士論文の一部を加筆・修正 したものである。 圖1 Henseモ デ ル

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一 般 演 題 〈研 究 〉 一般 演 題 〈研 究 〉母 親 の予 期 せ ぬ体 験

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早産児を もつ母親 の親役割獲得過程 に

関す る研 究

神戸市看護大学 ○安 積 陽 子 I 緒 言 新 生児 医 療 の進 歩 により、過 去20年 間 にお ける全 出生 数 に対 す る低 出生 体 重 児 の 占め る割 合 は 上 昇傾 向 にある。さらに、出 生体 重500gか ら999gの 超 低 出生 体 重 児 にお ける新 生 児 期 死 亡 率の 全 国 平均 は 、1980年 度55.3%か ら1995年 度 の21.6%に 低 下し、現 在 は8割 近 い児 の 生 存退 院 が 可 能 である1)。しか し、最近 極 低 出生 体 重 児 の母 親 の 養 育態 度 が 、子 どもの認 知 ・適応 能 力 等 に負 の 影 響 をもたらす 、退 院 後 の早 産 児 が発 育 不全 や 被 虐 待 症 候 群 で再 入 院 す る等 の例 が指 摘 され始 め て いる。このことか ら、母 親 にとって早 産児 のわ が子 の 育児 が 、いか に困難 で あるか が推 察 できる。し か し、この ような母 親 に対 す るケアは まだ十 分 とはい えない。本 研 究 で は 、早 産 児 をもつ 母 親 がどの ように親 役 割 を獲 得 してい くかを分析 し、その過 程 に包 含 され る要素 の抽 出 を 目的 とした。 II 方 法 お よび 対 象者 研 究デ ザインは、グラウンデ ッド・セオ リー ・アプ ロー チ を参 考 にした質 的 記 述 的 研 究 で ある。研 究 対象 者 は 、北 海 道でNICUを 有 す る大 学病 院 で早 産 児 を出産 し、家 庭 での 育 児 を始 め て1年 前後 が 経 過 した母親7名 で ある。デ ー タは半構 成 的 面接 法 によって収 集 した。「日常生 活 の 中で 、どうい う時 に母 親 であることを実感 します か 」という質 問を基 に 、対 象 者 が 体験 した 内容 を 自由 に語 ってもらうよ う努 めた。対 象者 へ の倫 理 的 配 慮 につ い ては、母 親 に研 究 内 容 を説 明 し、い つ でも中断 できること 等 を記 載 した同意 書 を渡 した上で 行った。 III 結 果 1.親 役 割 獲 得 過 程 にか か わ る5つ のカテゴ リー 子 どもが退 院 してか ら約1年 まで の間 に対象 者 が 体験 した出 来 事 を分 析 した結果 、以 下5つ の カテ ゴリー が明 らか になった。 《出産 に対 す る期 待 が奪 われ た体 験 》:妊娠 中に抱 い てい た出 産 ・育 児 、わ が子 に対 して抱 いていた イメージと現 実 の体 験 との不 一 致 、およびそれ に対 す る急性 の 情緒 反 応 。 《期 待 喪 失 に対 す る悲嘆 反 応 》:期待 喪 失 の危 機 に対 す る急 性 の 情 緒 反 応 の後 に生 じた悲 嘆 反応 (早産 したことへ の罪 責感 、普 通 の出産 が できなかった喪失 感 、周 囲か らの 孤 立感 等)。 《親 役 割 の適 応 》:わが 子との関係 を通 して親 子 であることを実感 し、親 役 割 の 責 任 を 自ら引き受 ける ようになるまでの 変化 。 《普通 の親 子 へ の希 求 》:自分 とわが 子 は特 別 な親 子 で はないと捉 え 、早 産 したショック・悲 嘆 に対処 166 日本助産学会誌 第15巻第3号(2002.3)

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早産児 をもつ母親 の親役割獲得過程 に関する研究 し、親役 割 に適 応 しようとす るための対 処 方 法。早 産児 の母親 の親 役 割 獲 得 過程 の中核 カテゴリー。 《親役 割 獲 得 に必 要 なサ ポー ト》:対象 者 が 体験 した困 難 を乗 り越 え 、親 役 割 を獲 得 す るため に必 要 なサポー ト。 2.各 カテゴ リー の 関連 性(図1) 《出産 に対 す る期 待 が奪 われ た体 験》は、早産 児 をもつ 母親 の親 役 割 獲得 過 程 にお ける前 提 となるカテゴリー で あった。《出 産 に対す る期 待 が奪 われ た体験 》と《期 待 喪 失 に対す る悲 嘆 反応 》は、「普通 の親 子 」のイメー ジに対 する対象 喪 失反 応 と考 えられ る。子 どもの退院 後約1年 のいずれ の時 点でも、《期待 喪 失 に対 す る悲 嘆反 応 》と 《親 役割 の適 応 》とは、そ の程 度 を変 化 させ ながらも双方 向 に 関 連 し合 って い た。そ して 、《普 通 の 親 子 へ の 希 求 》は 、 圖1 早産児の親役割獲得過程を構成する因子間の関連 《期待 喪失 に対 す る悲 嘆反 応 》を軽 減 させ 、《親 役 割 の適 応 》を進 める影 響 を及 ぼ してい た。 IV 考 察 これまで に、早産 児 の母親 は 正期 産 児 の母 親 に比 して、親 である実 感 を得 る時 期 が遅 い傾 向 が報 告 されている2)。本 研 究 にお い ても、対象 者 が親 であると実 感 したのは 、実 際 に子 どもの世 話 を始 め た時や母 親 の 姿を求 める子 どもの姿 を見 た時で あった。また、対 象 者 は育 児 の不 安 だけで はなく、子 どもは早 産 で生 まれ 特 別 で あると意 識 しなが ら育児 してい た。その ため 、子 どもの成 長 ・発 達 が期 待 通 りではない と感 じる時 、早 産 した罪 責 感 や 子 どもの成長 ・発 達 へ の不 安を想 起 してい た。早く大 きく なってほしい 思 いが 強 く、食 生 活 を子 どもの嗜 好 に合 わせ る、離 乳 食 だ けで は不 安 で授 乳 を続 ける 等 の行 動 がみ られ た。した がって 、「普 通 の親 子 」のイメー ジを失 ったことへ の悲 嘆 反応 は 、《親 役 割 の適応 》に負 の影 響 を与 えてい ると考 えられ る。このような状 態 の時 、自分 達 は普 通 の親 子 と変 わりが ないと考 える試 み がなされ てい た。そ の具 体 的方 法 には 、早 産 には意 味が あると捉 える、子 どもの元 気 に成 長 している部 分 を見 出す 、修 正 月 齢 を用い て、子どもの成長 ・発 達を判 断 す る、同 じような 体 験 をした親 子 と比 べ る等 が あった。このように《普 通 の親 子 へ の 希 求》は、早 産 児 の母 親 が 親 役 割 を 獲 得す る対 処行 動 であったと考 えられ る。 V 結 語 早産 児の 母親7名 を対 象 に、子 どもの 退院 後 約1年 間の親 役 割 獲得 過 程 に含 まれ る要素 とその 関 連 性を検 討 した。そ の結果 、5つの要 素 が抽 出 され た。このうち《普 通 の親 子へ の希 求》は、母 親 の親 役割 獲 得 過 程 にお ける中核 と位 置 づ けられ た。今後 は《普 通 の親 子 へ の希 求》がどの ように用 い られ るかを検 討 し、親 役割 獲 得 過 程 を促 進 す る援 助 の実 践 に役 立てたい。 VI 文 献 1) 日本小児科学会新 生児委 員会新生児医療調査小委員会:わが国の主要医療施設におけるハイ リスク新生 児医療の現状(1996年1月)と 新生児期死亡率(1995年1∼12月).日 本小児科学会雑誌 100(12): 1931 ∼1938、 1996

2) Mary T.Zabielski: Recognition of Maternal Identity in preterm and fullterm mothers. Maternal-Child Nursing Journal. 22(1): 2∼36, 1994.

参照

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