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年次報告書090903_入稿

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Academic year: 2021

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(1)

ごあいさつ

世界的な大不況、世界各地でのナショナリズムの台頭、もてはや

されたグローバリゼーションの影の部分の顕在化などにより、国際

社会は政治的にも経済的にも不安定な時期を迎えたと見受けられ

ます。このような時代にこそ、日本は、地に足の着いた国際協力を行

う必要があることは、疑問の余地がありません。笹川平和財団(

SPF

は、現在の不安定な時代に対応する新しい事業方針を掲げ、日本の

国際協力を民間分野において飛躍的に発展させるための活動を昨

年より展開してまいりました。わずか

1

年という短い期間でしたが、

今後の発展の基礎を作ることができたと自負しています。

まず第

1

に笹川中東イスラム基金の設立です。社会主義からの移行

国であった中欧諸国が

EU

のメンバーとなり、

NATO

に加盟したこと

に鑑み、移行への支援という主要な使命を果たした笹川中欧基金の

目的を変更し、新たに笹川中東イスラム基金を設立しました。今

後の活動の中核の

1

つに中東イスラム地域を加えたことは、当財団

20

数年におよぶ国際交流の歴史の中でも画期的なことであると

思います。設立記念パーティーの際、笹川中東イスラム基金運営委

員長の松尾邦彦氏が「中東には 言葉は雲、行動は雨 という諺があ

る。日本と中東との交流も掛け声はあったが、実行となると今一つ

でありまさにこの諺のとおりであった。しかし、今回の笹川中東イ

スラム基金の設立は、雨を降らせるものであると思う」と述べられ

たように、大きな期待がいろいろな関係者の方々から寄せられてい

ます。

また第

2

番目は、

SPF

が中東に加え、もう

1

つの重点地域としてア

メリカ合衆国を選び、

90

年代の貿易摩擦をピークに、関心が薄れて

きた日本との交流を新たなメニューに基づきスタートさせたこと

です。若手、中堅、シニア各階層の日米双方のオピニオンリーダーに

よる交流を開始し、単なる親日派の形成を越え、環境、エネルギー、

核拡散防止など国際社会に共通する課題について、意見交換、政策

提言のできる関係の形成を目指します。

そのほかにも

SPF

は、東アジアを中心とした人口問題、鳥インフ

ルエンザをはじめとしたパンデミックへの対応、太平洋島嶼国の海

洋管理の問題など世界や地域が直面する深刻な問題を取り上げ、実

践的な調査、研究、試行を経て提言を行い、その解決に貢献する方針

です。もちろんこれらの問題は、直ちに解決が図られるような単純

なものでないことは周知のことですが、

SPF

のミッション・ステー

トメントの第

3

番目に記されている心構え、すなわち「笹川平和財

団は、問題の複雑性や、事業遂行の困難性を厭わず、試行錯誤を重ね

たうえで、漸進的に成果をあげる事業推進の手法を尊重する。」を肝

に銘じ、活動してまいります。皆さまのご指導ご鞭撻を心からお願

いいたします。

笹川平和財団 会長

羽生 次郎

R

E

G

U

L

A

R

P R O J E C T S

[一般事業]

ごあいさつ

(2)

2008

年度 一般事業 事業一覧

(単位:千円) I. 平和と安全への努力 業 助成事業事業 自 自主事業 自主 II. グローバリゼーションの 功罪への挑戦 III. 特定地域の理解促進 I. 多元的価値観の共存に 向けて II. 豊かな社会の創造と 民間非営利活動 ��������� ����������� ���� ������������ ���円円円 ���������� �� 円 ���� ���������� ����� 円 �����������円 合計 合計 �������������� ��� ���円円 ����������円 � � �� � � � � �� �� � 継続事業:合計 新規事業:合計 �������千円 ������千円 �����������円 ����������円 ������ ������� ������� ������� 事業件件数 事業費 事 �� �������� �������年度年度 �� ������� ��� ��������� �������年度年度 �� ������������� �������年度年度 �� �������������� �������年度年度 �� ������� ��� ��������� �������年度年度度度 近年の事業実績

����

年度の事業概要 ※このグラフの事業費は概算です。 新事業方針 前事業方針 2008年度の一般事業は、経常事業を除き、合計15件の 事業を実施し(助成事業11件、自主/自主・委託事業4 件)、事業費総額は1億8,760万円でした。本年度は、6月 の理事会・評議員会において新事業方針が承認されたた め、これに基づいて新規事業を開始するとともに(4件、 4,340万円)、前事業方針(ガイドライン)の継続事業も支 援しました(11件、1億4,420万円)。なお、前事業方針に 基づく事業のうち6件が完了しました。 新事業方針のもと、本年度に立ち上がった事業は、い ずれも時機を得たものでありました。まず、「人口移動に 関わる問題」では、少子高齢化が急速に進む日本にアジ ア各国からの労働者受け入れについて政策提言すること を目的として、自主事業「人口変動の新潮流への対処」 を開始し、本年度は受け入れ国と送り出し国の事例や日 本国内の外国人労働者の現状などを調査しました。本事 業とインドネシア人看護師の来日との時期が重なり、少 子高齢化に悩む日本への看護を目的とした国際的な人口 移動が注目されました。また、アジアン・エイジング・ビ ジネスセンターへ助成した「アジア型エイジング対応支 援」事業では、高齢化に関する日本の経験と知恵をアジ アへ応用するために、国内のエイジング事例の収集や基 礎資料の作成を行いました。 「非伝統的安全保障」分野では、自主事業「新型インフ ルエンザによるパンデミック対策と域内協力」を立ち上 げました。本事業は、アジア地域で深刻となりつつある 新型インフルエンザの脅威を非伝統的安全保障の課題と 位置付け、特に途上国の状況を踏まえた対応策や、より 効果的な地域連携のあり方を調査・分析・提案すること を目的としています。本事業は毒性の強い鳥インフルエ ンザによるパンデミックを想定したものでしたが、メキ シコで豚インフルエンザが発生し、そこで明らかになっ た課題は鳥インフルエンザのパンデミック対策を考える 上で参考になると言えます。このような状況のもと、本 年度は、各国の新型インフルエンザに関する対処能力や 地域協力の現状・課題について調査しました。 「米国との交流事業」については、グローバルな課題に 対する日米の協働が両国関係の緊密化と地域の安定に つながるという認識に基づき、日米両国の専門家間で民 間交流を推進する「日米交流促進に向けて: 日米オピニ オンリーダー交流」事業を開始しました。本年度は、元米 国運輸長官のノーマン・ミネタ氏とウッドロー・ウィル ソンセンターのアジアプログラムディレクターであるロ バート・ハサウェイ氏を招へいし、政権交代期の米国政 治に関するセミナーを開催し、関係者との交流を図りま した。セミナーには多くの聴衆が集まり、新政権におけ る日米関係を考える上で貴重な情報を提供する場を設け ることができました。 一 般 事 業 一 般 事 業 I.平和と安全への努力

1.

安全保障・平和構築  

2.

非伝統的安全保障 新型インフルエンザによるパンデミック対策と域内協力

P10

II. グローバリゼーションの 功罪への挑戦

1.

市場と格差

2.

人口移動に関わる問題 人口変動の新潮流への対処

P11

アジア型エイジング対応支援

P12

3.

科学技術と社会 III.特定地域の理解促進

1.

米国との交流事業

2.

中東との交流事業 I.多元的価値観の共存に向けて

1.

文明の諸問題に対する

総合的理解の試み グローバリゼーションに対する文化指標の開発

P14

先進

4

ヵ国の産学連携メカニズムに関する国際比較研究

P14

知的財産の公共的活用促進のための仕組み作りと評価

P15

技術革新制度における大学の役割とインパクト

P15

イスラム宗教学校におけるカリキュラム改定支援

P16

人間の安全保障指標作成にむけてのイニシアチブ

P16

2.

地域共通問題に関する

対話と交流

3.

情報の共有と地球社会に

向けての発信 アジアのジャーナリズム支援と情報発信

P17

II.豊かな社会の創造と 民間非営利活動

1.

民間非営利組織、企業、

公的セクター間の協力 地球公共財開発のためのプラットフォーム構築支援

P18

非営利活動促進のための環境整備に向けた実践研究

P18

2.

民間非営利活動の機能強化と

社会装置化 「ローカル

NGO

支援スキーム」の開発

P19

非営利セクターの資金基盤強化と債務スワップ

P20

3.

民間非営利活動に関する

調査研究 ※笹川汎アジア基金の事業規模および対象地域の拡大に伴い、  この領域での事業は同基金で実施することになりました。  詳細は37∼50ページをご覧ください。 III.世界の中の日本とアジア

1.

日本の構造変動と東アジア

2.

東アジアの再生と経験の移転

3.

世界経済システムの構築と

日本・東アジアの役割 区 分 事業名 区 分 事業名 前事業方針に基づく事業 新事業方針に基づく事業

NEW

一般事業

概況

2008

6

月に承認された事業方針

I.

平和と安全への努力

1.

安全保障・平和構築

2.

非伝統的安全保障

II.

グローバリゼーションの功罪への挑戦

1.

市場と格差

2.

人口移動に関わる問題

3.

科学技術と社会

III.

特定地域の理解促進

1.

米国との交流事業  

2.

中東との交流事業 日米交流促進に向けて:日米オピニオンリーダー交流

P13

頁 頁

(3)

本事業の目的は、人口構成および労働力市場の変化に 対処するため、外国人労働者の受け入れ国と送り出し国 の事例や日本国内の外国人労働者の現状を調査し、政策 提言を行うことです。本年度は、外国人労働者の受け入 れに関する国内外の制度や実情、国内の外国人労働者の 状況、受け入れ先進地域および労働者送り出し国の現状 と問題点などを洗い出しました。 具体的には、事業全般を運営する事業委員会に加え、 3つのテーマの分科会(人口構成の変化と労働力市場/ 高齢化と移住労働政策/社会統合政策)を設置し、調査 研究活動を実施しました。また2009 年1月には、調査結 果を共有するために、東京で国際ワークショップ「始動 する外国人材による看護・介護受け入れ国と送り出し国 の対話」を開催しました。ここでは、シンガポール、台湾、 インドネシア、オーストラリアから7 名、日本国内から 12 名の専門家による講演および討論がなされ、その結果 は報告書にまとめられました。 (3年継続事業の1年目) H5N1型鳥インフルエンザなど、高病原性のインフルエ ンザ・ウィルスの変異により新型インフルエンザが発生 すると、急激に感染が拡大し、SARSを上回る大規模な感 染者と死者が出る可能性が高いと予想されています。医 療や経済の水準の低い発展途上国ではより深刻な被害 が引き起こされると考えられるため、各国が適切な対応 を行うだけではなく、域内連携を通じて感染被害の拡大 防止も重要です。そこで

SPF

は、この脅威を非伝統的安 全保障の課題と位置付け、域内の政府、NGO、保健・医療 関係者および国際機関による連携を促進する目的で本事 業を立ち上げました。具体的には、アジアにおける新型 インフルエンザの発生を想定し、途上国の状況を踏まえ た望ましい対応策とより効果的な地域連携のあり方を調 査・分析し、提案することを目指しています。本年度は、 東北大学大学院医学系研究科の押谷仁教授を委員長とし た事業運営委員会を立ち上げ、事業の運営方針について 協議するとともに、アジア域内国の対策の現状を把握す るための概括調査を、海外での保健分野の調査経験が豊 富な養父美亜子氏(薬剤師)に委託しました。 (3年継続事業の1年目) 一 般 事 業 一 般 事 業 凡 例

日本の農業と

外国人労働者について

安藤 光義 東京大学大学院  農学生命科学研究科准教授  私の専門は農業政策論で、農家調査を通じて現場の視 点から政策を捉え直す作業をしています。前職(茨城大 学)で県内の農家調査を行いましたが、畑作地帯の大規模 経営農家には必ずといってよいほど外国人が働いていま した。既に日本の農業、特に園芸作は多くの外国人に支え られているのが実情のようです。 農業経営の視点だけからみれば外国人研修生・技能実 習生に低い賃金で働いてもらうのは良いことかもしれま せん。欧州でも農業で雇用されているのは、国による賃金 格差を前提とした外国人です。しかし、低賃金依存を続け ていては産業としての発展はなく、本質的な社会改革に もつながりません。それでいいのでしょうか。 外国人の受け入れは、特定の産業部門の労働力が不足 しているからそこに導入するという単に産業や経済だけ の問題ではありません。彼らの受け入れや定住条件の整 備、それに対する私たち日本人の価値観にも踏み込まざ るを得ない問題であり、日本の社会をどう設計していく かという奥深い問題につながるものです。 SPFの事業には1つの分野だけでなく、さまざまな分野 の専門家が集まっていることに大変意義があります。こ こでひとつの答えを見いだせるのではないかと期待して います。

高齢化社会で求められる

政策とは

石 弘之 東京農業大学教授 本事業の研究チームには若手を中心に、この分野では もっとも気鋭の研究者が参加してくれました。 日本政府は、急激に進む少子高齢化により、今後20年 間で労働者は約1000万人も不足すると予想しています。 その不足を外国人労働者によって補うのか、あるいは受 け入れを抑制すべきなのでしょうか。私たちは二分する 議論の接点を見いだすために、実情の調査・データ収集・ 制度の再検討を通じて、政策を練っています。2009年1 月には、インドネシアからの看護師・介護福祉士の来日を 前にワークショップを開催しました。外国人労働者問題 の包括的な資料集の作成や、国際シンポジウムの準備も 進めています。 今後は日本の将来にかかわるきわめて重要な問題であ る「労働力の縮小による日本経済の行方」や「多数の外国 人の受け入れを通じた活気ある社会の構築」などのテー マに取り組んでゆきたいと思います。

グローバル化社会の

パンデミックに挑む

押谷 仁 東北大学大学院医学系研究科 微生物学分野教授 世界は、いま41年ぶりのパンデミックに直面していま す。グローバル化した社会で人類が初めて立ち向かうパ ンデミックであり、かつてないスピードで世界中に感染 が広がりつつあります。命の危険にさらされる人たちを 守るために、社会機能を維持しながらいかに効果的な対 策を講じるか、そして国際社会が一丸となっていかにこ の問題に対処していくかが問われています。特に、被害の 多くが医療資源に乏しい途上国に集中するともいわれて いますが、途上国での感染拡大は世界中にウィルスを供 給し続けることを意味し、日本を含めた先進国にとって も決して対岸の火事ではありません。 本事業では、昨年度の概括調査を踏まえ、いよいよアジ アの途上国の現場での対策の検討と試行、そして域内連 携の推進により、今回のパンデミックだけではなく、将来 の途上国の感染症対策および国際的な感染症への対応の 枠組みの確立を目指します。グローバルな観点から問題 の所在をとらえ、果敢に立ち向かっていく、民間国際財団 ならではの取り組みとして期待しています。

平和の実現に向けて

∼笹川平和財団による医療・保健 分野への取り組みに期待する∼ 紀伊國 献三 笹川記念保健協力財団 理事長 笹川平和財団は、これまで「医療・保健」にかかわる活 動を直接手がけてはきませんでした。平和の実現にはさ まざまな要素がありますが、広い意味での医療・保健は大 変重要な役割を果たすものだと言えます。そうした医療・ 保健分野への取り組みは専門家に任されがちですが、本 来はそうあるべきではありません。 すべての人が、医療・保健について必要な知識を持って 行動しなければならないと思います。特に、今回の新型イ ンフルエンザへの対応を見ていますと、パニックになり すぎた面があることは否めません。今後、新型インフルエ ンザ対策にしても、医療・保健全般にかかわることにして も、ひとり一人が正しい知識を持って行動することが、社 会のあり方や、ひいてはその国のあり方を望ましいもの にしていくのだと考えます。今後の笹川平和財団には、医 療・保健の専門家と社会をつないでいくような、そして望 ましい社会を実現していくような役割を果たしていって ほしいと思います。

COMMENTS

2日間にわたって開催された国際ワークショップには、合計260名の参加 者が集まり活発な議論がされた

人口変動の新潮流への対処

笹川平和財団、ダイバーシティ研究所 II.グローバリゼーションの功罪への挑戦

2.

人口移動に関わる問題 2010 2008 自主 委託 助成

19,616,724

円 3 1 2 2008 NEW 初年度事業費 ───  2009

COMMENTS

新型インフルエンザによるパンデミック対策と域内協力

笹川平和財団 I.平和と安全への努力

2.

非伝統的安全保障 2010 2008 自主 委託 助成

2,736,439

円 3 1 2 2008 NEW 初年度事業費 ───  2009 事業形態:自主──「自主事業」SPF自らが実施する 委託──「委託事業」他組織に事業・業務を委託して実施する 助成──「助成事業」他組織が助成金を受けて実施する 事業名 事業の実施者名 事業方針の区分 2008 自主 委託 助成 円 3 1 3年目事業費 2006 円 事業費総額 2007 2 本年度事業費 事業費総額 各年度事業費

(4)

本事業は、日米の知的交流を促進するために、両国の オピニオンリーダーの交流を通じ、米国の政策決定に影 響力のある人物と緊密な協力関係を構築し、日米間で効 果的な政策対話が実現できる体制づくりに貢献すること を目的としています。本年度は事業の初年度にあたり、 米国商務長官、運輸長官などを歴任した日系アメリカ人 政治家であるノーマン・ミネタ氏と、ワシントンDCの学 術研究機関・ウッドロー・ウィルソンセンターのアジア プログラムディレクターであるロバート・ハサウェイ氏 を中堅オピニオンリーダーとして招へいし、それぞれ公 開講演会や政策関係者との会合を開催しました。 一連の活動の結果、招へい者の日本理解を深めること に寄与するとともに、日米関係にかかわる人材の相互 交流が進みました。また、若手のオピニオンリーダーを 育成する目的で、コロンビア大学院生と日本人政治家の 懇談会開催や戦略国際問題研究所(CSIS)パシフィック・ フォーラムのヤング・リーダーズ・プログラムへの日米 の若手研究者の参加支援を行うことにより、日米の知的 交流の活性化と発信力のある若手研究者の育成に貢献し ました。       (3年継続事業の1年目) 高齢化は、今や東アジアに共通した課題となりつつあ ります。韓国では2008年7月に日本の介護保険制度にあ たる「老人長期療養保険制度」が施行された一方、膨大 な高齢化人口を抱える中国においては、具体的な対応策 を検討する経験交流に対する関心が高まっています。本 事業は、高齢化に関する日本の経験知のアジアにおける 適用可能性を探るとともに、関係国との間で情報共有を 推進することを目的としています。本年度は、日本の経 験の汎用性を検討するための準備会議を開催し、以下の 基礎資料を作成しました。『日本の高齢社会「解説集」』 は、日本の高齢化問題に関連する専門用語や制度に関す る解説書で、日本語版、韓国語版、中国語版の3種類を作 成しました。また、『日本の高齢社会「事例集」』は、行政、 NPO、民間企業による高齢化に対する取り組みの事例を 収集したもので、次年度以降、アジアへの汎用性を検討 する際の事例として活用される予定です。 (3年継続事業の1年目) 一 般 事 業 一 般 事 業

「日米オピニオンリーダー

交流」事業の意義とは

ジェラルド・カーティス コロンビア大学教授 笹川平和財団の日米交流促進事業は、近年縮小傾向に ある日米交流そのものに風穴をあける画期的なものであ り、今後新たな交流の窓口となることが期待されます。今 回シニア・オピニオン交流で来日したノーマン・ミネタ 氏とは、個別に時間をとっていただき、大変有意義な話を することができました。また、若手オピニオンリーダー交 流の「日米大学院生と若手政治家の懇談会」にはモデレー ターとして参加しました。コロンビア大学国際関係・公共 政策大学院を卒業し、自民党および民主党から政治家に なった私の元学生と現役の学生達が、日米を取り巻く政 治状況をさまざまな角度から検証し、共に考え、活発な議 論を行ったことは、大変印象深いものでした。 日米関係は重要であるからこそ、今後は協働関係をさ らに強化すべきです。たとえば、東アジアの安全保障問題 やよりグローバルなイシューについて日米が中心になっ て考え、政策提言をしていくことが必要です。日本はアジ アの有力国としてより発言権を強め、仲介役や調整役と しての役割を果たしていくべきであり、本事業の成果が その過程で効果的に生かされることを期待します。

SPF

日米交流プログラムに

期待すること

久保 文明  東京大学大学院 法学政治学研究科教授  昨今、日米の知的交流が低調になってきていると言わ れていますが、日本側が意識して知的交流強化に取り組 むことには大変意義があります。 2008年度の活動の中で、シニア・オピニオンリーダー の一環として招へいされたノーマン・ミネタ氏には、今 後、日系人の立場からの日米関係に関する記事の寄稿や、 次の招へい候補者のアドバイスをしていただくといった フォローアップが必要です。また、中堅オピニオンリー ダー交流では、ウッドロー・ウィルソンセンターのロバー ト・ハサウェイ氏を招き、日本人がなかなかフェローと して入りにくいウッドロー・ウィルソンセンターにコン タクトポイントができました。このことは大きな成果と いえ、今後もシンポジウム共催などを通じて、さらなる協 力関係が深まることが期待されます。加えて、ワシントン DCだけではなく中西部や西部の研究所などとのより戦略 的な協力関係を構築する必要もあります。今回の日米大 学院生と日本人の若手政治家との対話のフォーラムにお いては、日米の学生双方に政治的・社会的な新たな関心が 生まれ、実り多きセッションになりました。30代の若手 研究者の支援などを具体的に盛り込みながら、さらに効 果的なプログラム運営をしていくことが期待されます。

日米交流促進に向けて:日米オピニオンリーダー交流

笹川平和財団 III. 特定地域の理解促進

1.

米国との交流事業 2010 2008 自主 委託 助成

16,056,997

円 3 1 2 2008 NEW 初年度事業費 ───  2009

COMMENTS

ノーマン・ミネタ氏(元米国運輸長官・商務長官)による講演会「日米の架け橋となって:Bridging the Divide」(2009年3月、於東京) ロバート・ハサウェイ氏(ウッドロー・ ウィルソンセンター、アジアプログラム ディレクター)を招き、「オバマ大統領の アジア政策と日米関係の展望」と題する 講演会を行った(2009年2月、於東京)

アジア型エイジング対応支援

アジアン・エイジング・ビジネスセンター(日本) II.グローバリゼーションの功罪への挑戦

2.

人口移動に関わる問題 2010 2008 自主 委託 助成

5,000,000

円 3 1 2 2008 NEW 初年度事業費 ───  2009

(5)

本事業は、カリフォルニア大学に本部をおく非営利組 織 PIPRA(Public Intellectual Property Resource for Agriculture) が構築した農業バイオ技術特許を集積したデータベース を活用し、途上国での研究開発と知財理解を促すための 仕組み作りと評価を目的にしています。 本年度は、2008年10月上旬にハノイとホーチミン近 郊で、約70名のベトナム人研究者を集め、知的財産管理 に関するワークショップを開催しました。ハノイのワー クショップでは、農業バイオ研究の商業化等をテーマに

国家技術革新制度(National Innovation System:NIS)にお

ける大学の役割については、先進国を中心に技術移転の 成功例や米国のバイドール法(公的資金を得た大学の研 究を特許化し民間企業が買い取ることを認めた制度)が もたらした影響などについて報告があります。しかし、 工業化が進むアジア諸国における大学の貢献について は十分に調査が行われておらず、NISのあり方の参考と なる情報が乏しいのが現状です。本事業の目的は、アジ ア域内の事例を比較分析することにより、NISにおける 大学の役割について提言することです。シンガポール国 立大学アントレプレナーシップセンターが実施団体とな り、東京大学、東北大学、九州大学、韓国高等科学技術院、 清華大学、香港科技大学、インド工科大学(ボンベイ校・ ムンバイ校)、マレーシア・マルチメディア大学、タイ・ マヒドール大学、台湾大学の11校を対象に、各国・地域 の研究者が参加する共同研究を実施しました。 事業初年度は、シンガポールとバンコクで調査研究の 枠組みづくりと、進捗報告をするためのワークショップ を開催し、2年目には、北京の清華大学で成果発表のワー 議論され、その模様は現地放送局にも取り上げられまし た。また、ベトナム語を用いた米国特許の検索サイトが 構築され、「知財制度支援資料」がウェブサイトに掲載さ れました。そのほか、ハノイ農業大学とバイオ技術研究 所を重点対象として、組織の知財政策の設計や知財教育 教材の支援も行われました。次年度は、本事業を通じて 実施した活動の相乗効果や構築された仕組みの妥当性・ 有用性を評価する予定となっています。 (3年継続事業の2年目) クショップを開催しました。事業参加者のほか、欧米の 大学や政府の科学振興機関、民間企業からの参加を含め 計40名が出席しました。その中には、関連テーマを扱う

SPF

の助成事業「先進4ヵ国の産学連携メカニズムに関す る国際比較研究」を実施する英国産業高等教育評議会の 研究者2名も含まれ、英国・日本・カナダ・米国の企業計 93社に対する聞き取り調査に基づく産学連携の事例も 紹介されました。本事業の調査では、大学発の特許出願 状況等の定量調査に加えて、大学での技術移転室の設置 状況や課題等の定性調査も実施されました。例えば、大 企業が自ら研究開発できる日本や韓国などでは、大企業 との共同研究を通じた産学連携が主流である一方、タイ やマレーシアの大学では、特許出願ができる技術の蓄積 はいまだ少なく、起業家育成に力を入れているといった 特徴があります。また、中国では、制度的なバックアップ が強く、大学が起業支援の中心として研究成果の商業化 に強く関与する取り組みがなされていることが分かりま した。全般的に、自国籍の大企業が少ないアジアでは、ベ ンチャーに期待が集まっていると言えます。しかし、米 国のように大企業が研究開発のアウトソーシング先とし てベンチャーを支える土壌がないため、中国のように国 家の強い主導でベンチャーを推進するケースもあれば、 日本のような共同研究が主流の産学連携もあります。い ずれにせよ、本事業の実施を通じて、各国の状況に適し た制度が求められていることが分かり、まずは多様な事 例に関して情報を共有することが、よりよい選択肢を選 ぶ結果につながることが確認されました。本事業の研究 報告書は、英国の学術出版社エドワード・エルガーから 商業出版されることになっており、科学技術政策にかか わる実務家や研究者、大学・産業界等に配布される予定 です。 (2年継続事業の2年目) 本事業の目的は、グローバリゼーションと文化の関係 を適切に表現する指標を開発し、グローバリゼーション に対する文化政策立案に貢献することです。本年度は、 グローバリゼーションと文化の多様性および創造性に 関して、「環境対策」、「携帯電話やパソコンを使ったブロ グ」、「音楽や舞踊」などを対象に、データ収集や専門家に 対する調査を行い、指標を開発しました。例えば、「環境 対策」では、アマゾン、中央アフリカ、インドネシア、メ ラネシアのような途上国地域ほど、生物多様性と関連し て文化的多様性が豊富であるため、バイオ燃料など近年 の先進国主導の環境対策が、途上国の社会や文化に負の 影響を与える可能性について配慮する必要があることな どが指摘されました。また、急激に普及している「携帯電 話やパソコンを使ったブログ」といった領域では、使用 言語として、日本語、英語、中国語などに加え、アラビア 語もトップ10に入ってきており、さまざまな国や社会の 幅広い層の人々に表現の機会を与えていることなどが分 本事業の目的は、先進4ヵ国(日本・米国・英国・カナダ) での産学連携の実態について調査し、今後の産学連携の 制度設計に貢献することです。英国での調査は、助成先 の産業高等教育評議会が実施し、英国以外の調査には、 東京大学先端科学技術研究センター(日本)、リサーチ・ トライアングル・インターナショナル(米国)、モンジオ ン・コンサルティング(カナダ)が協力機関として参加 しました。本事業では企業側からみた産学連携の実態を 把握するため、4ヵ国合計で93社の企業(製造・サービ ス業など)に対して、共通の調査項目に基づいた聞き取 り調査を実施しました。その分析結果は本事業2年目に 調査対象各国で開催されたセミナーを通じて報告されま した。その結果、産学連携が大学による発明の産業界へ の移転という単純な構図で実施されているのではなく、 共同研究、特許ライセンス、インターン制度、コンサル ティングといった多様な側面を持っていること、そして 最も効果的な技術移転は、知識と技術を持つ学生が企業 へ移動することなどが明らかになりました。また、特許 ライセンスが大学の財源確保の手段として重要視され、 大学側のライセンス条件が厳しいものになっており、そ れが逆にライセンスを困難にしています。こういった状 況から英国では、特許ライセンスのハードルを下げるた めに国がモデル契約書を作成し、その使用を勧めている ことが判明しました。 かりました。 指標の開発・分析にあたっては、文化政策立案者、研 究者、メディア関係者、非営利組織関係者など、世界各国 の200名ほどの専門家から構成さ れるネットワークを活用したほ か、国際アーツカウンシル・文 化機関連盟をはじめとする関 係機関と連携しました。活動 の成果は、文化とグローバ リゼーションに関するシ リーズ本(The Cultural and Globalization Series)と し て、出版される予定 です。 (3年継続事業の2年目) 大学側の技術移転機関では、特許ライセンス件数が産 学連携の成果指標として用いられる傾向にありますが、 こうした指標だけでは産学連携の社会への貢献を測るこ とは不十分であることも指摘されました。 一方、4ヵ国の比較分析結果では、日本の産学連携 の形は他国に比べて共同研究が際立って多いこと、他 の3ヵ国では共同研究以外の形(インターンやコンサル ティング)が多いことが分かりました。日本では企業が 大学との共同研究のイニシアチブを取る傾向が見られま すが、他の3ヵ国では企業からだけではなく、大学から も企業への働きかけが多いことが判明しました。また、 大学における発明に関する日米の法制度(バイドール法) は類似しているものの、その運用は日米で異なっている ことも指摘されました。 本事業の調査研究結果は、2009年3月に米国サンディ エゴで開催された大学・企業・政府関係者を集めた国際 会議で報告されました。また、本事業と関連助成事業「技 術革新制度における大学の役割とインパクト」との相乗 効果を高めるため、同事業に関連するワークショップに おいても、本事業の比較分析結果が報告されました。今 後「技術革新制度」事業と本事業の報告書は、政府・大学・ 産業界の関係者へ広く配布される予定です。 (2年継続事業の2年目) 一 般 事 業 一 般 事 業 の200名ほどの専門家から構成さ れるネットワークを活用したほ か、国際アーツカウンシル・文 化機関連盟をはじめとする関 係機関と連携しました。活動 の成果は、文化とグローバ リゼーションに関するシ

知的財産の公共的活用促進のための仕組み作りと評価

University of California, Davis

(カリフォルニア大学デイヴィス校/米国) I.多元的価値観の共存に向けて

1.

文明の諸問題に対する総合的理解の試み 2009 2007 自主 委託 部分助成

10,942,401

円 3 1 2 2年目事業費───  2008 11,485,732

技術革新制度における大学の役割とインパクト

NUS Entrepreneurship Centre, National University of Singapore

(シンガポール国立大学アントレプレナーシップセンター /シンガポール) I.多元的価値観の共存に向けて

1.

文明の諸問題に対する総合的理解の試み 2008 自主 委託 助成

13,192,144

円 2 1 6,440,119 2年目事業費 2007

6,752,025

円 事業費総額

「The Cultural and Globalization Series」として 発行された文化指標に関する成果物

グローバリゼーションに対する文化指標の開発

Center for Civil Society, UCLA School of Public Affairs

(カリフォルニア大学ロサンゼルス校市民社会センター/米国) I.多元的価値観の共存に向けて

1.

文明の諸問題に対する総合的理解の試み 2009 2007 自主 委託 助成

10,395,490

円 3 1 2 2年目事業費───  2008 18,173,220

先進

4

ヵ国の産学連携メカニズムに関する

国際比較研究

The Council for Industry and Higher Education

(産業高等教育評議会/英国) I.多元的価値観の共存に向けて

1.

文明の諸問題に対する総合的理解の試み 2008 自主 委託 助成

34,846,300

円 2 1 23,660,200 2年目事業費 2007

11,186,100

円 事業費総額

(6)

世界におけるアジアの政治的・経済的ポテンシャルが 増大し、アジアの時代の到来とも言われています。しか し、依然としてアジアに関する情報は欧米の報道ニーズ や視点に偏ったものが多く見受けられ、必ずしもアジア の視点やアジアから直接発信された情報が反映されてい ません。

SPF

は、一般事業「アジアからの情報発信」フェー ズI(2000∼02年 度 )、Ⅱ(03∼05年 度 )、Ⅲ(06∼07年 度)の8年間を通じて、アジアの知識人の声を国際社会で 共有し、アジアに対する正確な認識と世論形成を促進す ることを目的として、知的情報の発信を行ってきました。 また、これらの取り組みと並行して笹川汎アジア基金事 業では、ASEAN諸国のジャーナリスト育成やネットワー ク形成を目指し「アジアのジャーナリズム支援」も実施 してきました。08年度は、これら2つの事業を統合し「ア ジアのジャーナリズム支援と情報発信」として実施しま した。 本年度は以下の活動を実施しました。まず、アジア各 国の社会的リーダーや研究者を対象にインタビューを実 施する「リーダーズ」では、アジアビューズとアジアワー クスに委託し、計7本(各30分)の番組を制作しました。 本年度は、アナンダ・ガラパティ氏(スリランカ)、ナフ シア・エムボイ女史(インドネシア)、帰泳濤・北京大助 教授(中国)など、HIVや環境、国際政治学といったさま ざまな分野で活躍する人物の声をインターネットで配信 しました。また、アジアの有識者の声を欧米に向けて発 信することを目的とした「アジアの声」セミナーでは、「金 融危機や東アジアの安全保障」「オバマ新政権とASEAN」 といったテーマで、ワシントンDCで8回、ブリュッセル では6回のセミナーを開催し、河合正弘アジア開発銀行 研究所長や朱鋒北京大学教授などが講師として招かれ ました。そのほかに、『テンポ』(インドネシア)や『バンコ ク・ポスト』(タイ)など5ヵ国の有力誌の協力により、ア ジアが直面する課題について域内外で共有することを目 的とした『アジアビューズ』(毎月2万部をアジア諸国で 無料配布)の発行とそのウェブサイト(www.asiaviews.org) の運営を支援しました。同誌には前述のセミナーやイン タビューの要旨も掲載されました。さらに、アジア域内 のジャーナリストのネットワーク強化を目的として「ア ジアジャーナリストフォーラム」(08年3月14日、於バン コク)を開催し、インドネシア、タイ、ミャンマーなどの シニアレベルのジャーナリストを集め、過去の8回にわ たるフォーラムの総括を行いました。 これまで、通算で「リーダーズ」のインタビューを31 本、「アジアの声」セミナーをワシントンDCで96回、ブ リュッセルで20回、『アジアビューズ』誌の発刊を64回、 「アジアジャーナリストフォーラム」を8回開催してきま した。 一連の活動を通じて、アジア域内のジャーナリスト間 でのネットワークを強化し、それをさまざまなツールを 通じて情報発信に生かしていったことは、「アジア発」の 情報を効果的に発信してゆける基盤作りに寄与できたと 言えます。      (3年継続事業の3年目) 本事業は、人間の安全保障に関する指標を作成するこ とにより、人間の安全保障にかかわる議論を喚起するこ とを目的としています。事業初年度は、アッサム州をは じめとするインド北東部州を調査対象地域に、人間の安 全保障の指標化に向けた調査を実施し、3つの調査報告 書(「人間の安全保障ランキング」「人間の安全保障イン パクト評価」「紛争地における人間の安全保障マッピン グ」)を作成しました。 本 年 度 は、2008年6月20∼27日、7月23∼27日 の2 回にわたり研究委員会を開催しました。第1回研究委員 会では、アメリカン大学のアミタフ・アチャリャ教授ら によって、調査の目的、対象(調査で取り上げる人間の安 全保障の定義を含む)、実施期間、手法などに関する最終 調整が行われました。この議論を踏まえ、上述の3つの成 果のさらなる精緻化を図るために、オリッサ州での調査 を開始しました。また、同州のポッタポラ、カネイプール、 ガンディパリ、ネルーパリ、およびマルゴダウン地区に おいて、人間の安全保障の観点から保健衛生分野と観光 開発により住民が受けるインパクトに関する追加調査も 実施しました。第2回研究委員会では、進捗中の調査につ いての中間評価を行いました。さらに12月20∼ 21日に、 オリッサ州ブバネシャワールにおいて、調査結果を発表・ 共有するためのワークショップを開催し、作成された指 標の有用性を確保する方法、定性的要素を組み込む方法 論の妥当性などの点について議論しました。これらの調 査結果は委員会のメンバーによるレビューを経た後、報 告書として出版される予定です。 (3年継続事業の2年目) 本事業の目的は、イスラム宗教学校におけるカリキュ ラム改定の支援と宗教学校指導者の能力向上を図るこ とです。本年度はカリキュラム編成委員会の開催、改定 カリキュラムに対する理解促進を目的としたシンポジウ ム開催、イスラム宗教学校指導者を対象とした能力向上 ワークショップの開催などを行いました。 カリキュラムの編成委員会は、プラティープササナ・ イスラム学校をはじめとするタイ南部州の宗教学校で月 2回開催しました。改定中の6つのカリキュラム(イスラ ム学基礎、高等イスラム学、科学、言語〔英語、タイ語、ア ラビア語〕、数学、職業訓練)は、既に第一稿が完成し、そ のうちイスラム学基礎および科学の2つについては、タ イ南部の5つの宗教学校で試験的に実施しました。また 2008年8月23∼25日には、地元住民やイスラム宗教学校 の教師ら約100名を対象として、パタニ州のプリンス・オ ブ・ソンクラー大学において、改定カリキュラムに対す る理解促進のためのシンポジウムを開催しました。 本シンポジウムでは、スリン・ピツワンASEAN事務局 長が基調講演を行ったほか、カリキュラム編成委員会の メンバーが改定中のカリキュラムの詳細について報告を 行いました。 さらに、タイ南部の10都市30の宗教学校における宗 教学校指導者および若手指導者を対象として、教授法な どに関する能力向上ワークショップを計6回実施しまし た。また08年8月3∼10日にかけて、12名の宗教学校指 導者がマレーシアの国立教師養成機関が実施する「変化

をもたらす指導者(The Change Leaders)」コースに派遣さ

れ、専門的な訓練を受けました。 (3年継続事業の2年目) 一 般 事 業 一 般 事 業 月刊誌『アジアビューズ』。環境問題や食 糧危機などアジアが直面する問題を毎 月取り上げた 「東アジアにおける歴史対話と和解」というテー マで、ジョージワシントン大学と共催で開催し た「アジアの声」セミナー(2008年9月、於ワシ ントンDC)

アジアのジャーナリズム支援と情報発信

笹川平和財団、SPF­USA(笹川平和財団米国/米国)、

European Policy Centre(ヨーロッパ政策センター/ベルギー)、

AsiaViews(アジアビューズ/インドネシア)、

AsiaWorks( ア ジ ア ワ ー ク ス / タ イ )、Inter Press Service

Asia-Pacifi c Center Foundation(インタープレスサービス/タイ)

I.多元的価値観の共存に向けて

3.

情報の共有と地球社会に向けての発信 2008 2006 自主 委託 助成

87,906,469

円 3 1 2 29,161,953 3年目事業費 2007 16,785,284

41,959,232

円 事業費総額 タイのパタニ州で開催したシンポジウムの様子 調査結果を共有するためにワークショップを開催し議論を重ねた

イスラム宗教学校におけるカリキュラム改定支援

Prateepsasana Islamic School

(プラティープササナ・イスラム学校/タイ) I.多元的価値観の共存に向けて

1.

文明の諸問題に対する総合的理解の試み 2009 2007 自主 委託 助成

12,164,440

円 3 1 2 2年目事業費───  2008 13,382,165

人間の安全保障指標作成にむけてのイニシアチブ

Asian Dialogue Society

(アジアン・ダイアログ・ソサエティ/タイ) I.多元的価値観の共存に向けて

1.

文明の諸問題に対する総合的理解の試み 2009 2007 自主 委託 助成

13,880,925

円 3 1 2 2年目事業費───  2008 17,294,900

(7)

多くの発展途上国において、貧困削減や社会開発分野 の事業を展開する際、特定の地域の問題解決に専門性を 発揮し、地域の実情に明るいローカルNGOは、非営利セ クター全体の土台を担う貴重な存在です。しかし、これ らのローカルNGOの財政・組織基盤は脆弱なところが多 く、既存のNGO支援スキームや助成プログラムがこうし た団体のニーズに応えているとは言えないのが現状です。 本事業では、ローカルNGOの組織的発展に寄与すること を目的として、従来ドナー機関の支援対象外とされるこ とが多かった「組織/財政基盤の強化のための少額支出」 に焦点を当てた「ローカルNGO支援スキーム」を開発し、 その有効性を検証しました。 本年度は、既にフィリピンで試行されている「ローカ ルNGO支援スキーム」について、昨年度の試行を通じて スキームの審査委員や支援団体から寄せられたコメント に基づき、募集要項の改定や助成サイクルの修正を行っ たうえで、2年目の募集を行いました。その結果、フィリ ピン全土より68件の申請があり、そのうち組織強化や人 材育成に貢献すると判断された27件の事業へ支援が行 われました。また、フィリピン以外でのスキームの有効 性・汎用性を検証するために、近年非営利セクターの発 展が目覚ましいカンボジアを選定し、同国の教育分野で 活動するNGO・SILAKAと協力してスキームを試行しまし た。クメール語に翻訳された実施要項に基づき申請募集 を行ったところ、34件の申請が寄せられ、そのうち12 件が採択されました。 事業初年度はスキームの実施要綱を開発し、その後2 年間にわたって「ローカルNGO支援スキーム」を試行し た結果、計69件の活動へ支援が行われました。これらは すべて1件当たり10万円前後の少額支援でしたが、支援 を受けた団体からは、規模は小さくとも組織基盤を強化 する上で十分意義があったとの評価を受けています。事 業の実施団体である財団支援協会からは、今後本事業の 成果を広く発信し、同種の取り組みの継続を模索したい との報告を受けています。 (3年継続事業の3年目) 市場メカニズムだけでは供給が困難な、エネルギーや 医薬品に代表される公共財類似物(地球公共財)は、政府 調達や税制優遇措置等による開発によって供給される場 合があります。しかし開発途上国では政府の能力不足に より、公共財類似物の供給が困難であるケースが少なく ありません。本事業は、途上国で蔓延しているものの、市 場メカニズムによる開発が難しい寄生虫病(アフリカ眠 り病、リーシュマニア症)の治療薬を地球公共財として 位置づけ、その治療に有効な化合物をアジアの天然物資 源から探索するための技術やプラットフォームの構築を 目的としています。 本事業はスイスの非営利組織DNDiを助成先として、北 里研究所(日本)、中央製薬研究所(インド)、マレーシア 森林研究所、パスツール研究所(韓国)、ノヴァルティス 熱帯病研究所(シンガポール)、上海医薬物研究所(中国)、 細胞分子治療研究所(オーストラリア)の研究機関が参 加しました。また、ロンドン衛生熱帯医学大学院とスイ ス熱帯研究所なども支援機関として参画しました。事業 の1年目には前述の疾患の治療に有効な化合物を探索す るためのマニュアルが作成され、2年目にそれを改訂し た後、3年目にDNDiが本事業用に構築したウェブサイト (http://www.pan4nd.org/)に掲載しました。各国の研究所 に評価の技術を導入するため、参加研究機関の研究者が スイス熱帯病研究所やロンドン衛生熱帯医学大学院で 化合物の情報収集・評価に関する研修を受けました。 また、個別研修を受けた研究者の技術レベルを合わせ るため、インドとマレーシアにおいてワークショップ を開催し、グループ研修を実施しました。3年間の事業 期間中に36名の研究者が研修を受け、約32万4000件に 上る天然物資源サンプルの評価が行われました。その結 果、約1500件の高活性な化合物が発見されました。この ほか、各研究機関の間での情報共有や活動の方向性を議 論するための会議を毎年開催しました。本事業の活動結 果は、国際感染症学会(2008年6月)および国際熱帯医薬・ マラリア学会(2008年9月)で報告されたほか、日本の医 薬専門紙『薬事日報』でも事業活動の様子が紹介されま した。 本事業によって構築された寄生虫病治療に有効な化 合物探索のための基盤は、今後DNDiが他のネットワー クと連携し、さらに拡大・発展することが見込まれます。 また、このプラットフォームを通じて発見された有望な 活性化合物が治療薬として開発されることが期待され ます。 (3年継続事業の3年目) 2001年の米国同時多発テロ以降、テロ活動の温床とな る組織の規制が強化され、テロとは関係のない一般の非 営利活動への制限が顕在化しています。これに対し、非 営利セクターは、組織的かつグローバルな観点からの対 応が必要となっています。本事業は、非営利セクターを 取り巻く状況を客観的に把握するための指標、問題発生 の際にとるべき行動の選択肢などを明らかにすること で、現状の改善を目指すものです。 本年度は、事業初年度に開発された「非営利活動の活 性化・規制緩和推進システム」を、フィリピン、ベトナム、 米国、エチオピア、カザフスタン、レバノン、ソロモンの 7ヵ国で試行し、各国のカウンターパートと協力して、 指標に基づくデータの収集・分析、分析結果の周知を行 いました。試行期間中に、エチオピアでNPO法が制定さ れるといった動きがありましたが、特定分野における非 営利活動(紛争解決、子供の人権擁護など)を制限する内 容が盛り込まれていたため、現地の非営利組織や国際機 関などに対し、具体的な対応策に関する提言や助言を行 いました。 (3年継続事業の2年目) 一 般 事 業 一 般 事 業 「ローカルNGO支援スキーム」の支援を受けたフィリピン のNGOがトレーニングする様子 「ローカルNGO支援スキーム」開発にあたり支援対象NGOに対するヒアリ ングをフィリピン各所で行った。写真はルソン島バギオで実施したヒア リングの参加者たち

「ローカル

NGO

支援スキーム」の開発

Association of Foundations(財団支援協会/フィリピン) II.豊かな社会の創造と民間非営利活動

2.

民間非営利活動の機能強化と社会装置化 2008 自主 委託 助成

17,541,077

円 3 1 4,118,949 3年目事業費 2006

7,071,078

円 事業費総額 2007 6,351,050 2

地球公共財開発のためのプラットフォーム構築支援

Drugs for Neglected Diseases initiative(スイス) II.豊かな社会の創造と民間非営利活動

1.

民間非営利組織、企業、公的セクター間の協力 2008 自主 委託 助成

37,884,425

円 3 1 13,125,210 3年目事業費 2006

12,569,131

円 事業費総額 2007 12,190,084 2

非営利活動促進のための環境整備に向けた実践研究

CIVICUS: World Alliance for Citizen Participation

(市民活動団体の世界連合/南アフリカ) II.豊かな社会の創造と民間非営利活動

2.

民間非営利活動の機能強化と社会装置化 2009 2007 自主 委託 助成

9,960,200

円 3 1 2 2年目事業費───  2008 8,732,413

(8)

T H E S A S A K A W A

P A C I F I C I S L A N D

N A T I O N S F U N D

[笹川太平洋島嶼国基金事業]

債務スワップとは、債務国と債権国の合意により、債 務返済資金を債務国側の貧困削減や教育向上などのた めに活用する債務振り替えの仕組みを言います。

SPF

が 過去に非営利セクターの資金基盤強化のためのさまざ まな取り組みを支援する中で、その債務スワップが非営 利セクターの資金基盤強化につながる可能性があるこ とが明らかになりました。本事業は、南米南部共同市場 (MERCOSUR)諸国の非営利セクターの教育債務スワップ 実現に向けた取り組みを通じて、債務スワップを成功さ せるための条件・要因や交渉締結後の資金管理に関する 評価方法などの分析を行い、債務スワップが非営利セク ターの資金基盤強化にどのように寄与するかを検証・評 価することを目的としています。 3年間の事業期間中に、①非営利セクターが債務ス ワップを効果的に活用するために必要な情報を総括的に 盛り込んだマニュアルやウェブサイトの作成、②債務ス ワップに関する情報や経験を共有する国別セミナー(於 アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア) の実施、③前述の対象5ヵ国の非営利セクターによる債 務スワップ交渉への参画支援、④地域レベルでの連携や 経験・情報共有を目的とする地域会議(1年目:ブラジル、 2年目:チリ、3年目:アルゼンチン)の開催、⑤国連教育 科学文化機関(UNESCO)が設置した教育債務スワップに 関する作業部会へ域内の非営利組織の代表として参加、 などが行われました。 一連の活動の結果、アルゼンチン、ボリビア、パラグア イで、債務スワップ交渉の締結あるいは開始に至りまし た。各国の非営利組織はそれぞれの交渉の過程で重要な 役割を果たし、交渉後の資金の管理・運営を行う政府の 専門委員会への参加も決定しています。特にアルゼンチ ンでは、スペインとの協定により設立された5000万ユー ロの教育基金のうち、その10%が現地の非営利組織の活 動支援に充てられることになり、同国の非営利セクター の資金基盤強化に貢献することにつながったといえま す。また助成先であるSES財団は、本事業を通じて実施し た活動の成果が認められ、UNESCOや経済協力開発機構 (OECD)などのさまざまな国際会議へ域内の非営利組織 の代表として参加するようになりました。SES財団の活 動は、上記5ヵ国に加え、エクアドル、ニカラグア、ホン ジュラス、ペルーなどへも広がりつつあり、今後の活動 のさらなる発展が期待されます。 (3年継続事業の3年目) 一 般 事 業 地域会議に集まったMERCOSUR地域のカウンターパートたち(2008年11月、於アルゼンチン)

非営利セクターの資金基盤強化と債務スワップ

SES Foundation(SES財団/アルゼンチン) II.豊かな社会の創造と民間非営利活動

2.

民間非営利活動の機能強化と社会装置化 自主 委託 助成

23,683,163

2006 8,082,188 1

7,319,153

円 事業費総額 2007 8,281,822 2

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