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親の養育態度が大学生の不登校傾向に与える影響 ―賞賛獲得欲求・拒否回避欲求および対人ストレスを媒介変数として―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-70 258

-親の養育態度が大学生の不登校傾向に与える影響

―賞賛獲得欲求・拒否回避欲求および対人ストレスを媒介変数として―

○堀 綾華1)、長谷川 晃2) 1 )東海学院大学大学院人間関係学研究科、 2 )東海学院大学人間関係学部 【目的】 近年,大学生といった義務教育ではない年代にも不 登校者や不登校傾向の高い者が増加してきている。こ のような状況を踏まえ堀井(2013)は,「登校回避感 情」と「登校回避行動」の 2 側面を測定する大学生不 登校傾向尺度を開発した。これまでの研究で大学生の 不登校傾向には他者に対する不安や個人の心理的な問 題が関連する(五十嵐, 2011; 堀井, 2014; 堀井, 2016)ことなど,大学生の不登校を規定する要因につ いてさまざまな検討が行われている。しかし,規定因 として個人内の要因を取り挙げたものが多く,これま での養育環境などについて検討している研究はない。 そこで本研究では,大学生の不登校傾向に及ぼす親 の養育態度の影響に着目し,検討を行う。親の養育態 度については,過干渉と温かさの 2 側面が取り上げら れることが多い。Sato et al. (1997)は,過去にう つ病の経験がある人はPBIの母親の温かさの得点が低 いことを明らかにし,過去の育児機能媒介障害が成人 の抑うつ症状を引き起こす可能性を見出した。 また,本研究では,親の養育態度が大学生の賞賛獲 得欲求および拒否回避欲求や対人ストレスを介して不 登校傾向に影響を及ぼすと想定する。賞賛獲得欲求と は,他者から賞賛されたい欲求であり,拒否回避欲求 は他者から拒否されたくない欲求である。このうち賞 賛獲得欲求は対人不安傾向を低くし,拒否回避欲求は 対人不安傾向を高くすることが示唆されている(佐々 木他, 2001)。このことから,賞賛獲得欲求は適応的 な欲求であり,拒否回避欲求は不適応的な欲求である ことが窺える。また,対人ストレスは,対人関係に起 因するストレスである(橋本,1997)。橋本(2000)は, 対人ストレスと精神的健康には正の関連があることを 見出した。 親の養育態度はその後の対人関係の基盤となると考 えられる。また,先行研究を踏まえると賞賛獲得欲求 は不登校傾向に負の影響を与え,拒否回避欲求と対人 ストレスは不登校傾向に正の影響を与えると考えられ る。このことから本研究では,親の養育態度が賞賛獲 得欲求,拒否回避欲求および対人ストレスを介して大 学生の不登校傾向に与える影響について検討する。 【方法】 4 年制大学に在籍する大学生を対象とした調査を行 い,有効回答者は204名(男性90名,女性114名,平均 年齢19.95歳,SD = 3.33)であった。大学の授業終了 後に,その授業の受講者に対して調査参加の協力を依 頼した。その際,調査への参加は任意であり,参加し ないことによって不利益な対応を受けることはないこ と,回答中に都合で止めても構わないこと,調査の データは数量化されるため,個人の情報が公開される 恐れはないことを説明した。これらの内容に同意した 者 に 対 し て, 以 下 の 質 問 紙 に 回 答 を 求 め た。1. Parental Bonding Instrument (PBI; Kitamura & Suzuki 1995):子どもから見た親の養育態度に対する 自己評価スケールであり,「過干渉」と「温かさ」の 2 因子から構成される。2. 賞賛獲得欲求・拒否回避 欲求尺度(小島他, 2003):「賞賛獲得欲求」と「拒否 回避欲求」の程度を測定する尺度。3. 対人ストレス イベント尺度(橋本, 1997):対人関係に起因するス トレスを測定する尺度である。本研究では全項目の合 計得点を算出し,分析の対象とした(本尺度の合計得 点を「対人ストレス」と表記)。4. 大学生不登校傾向 尺度(堀井, 2013):大学生の不登校傾向(大学の正 課活動に対する回避傾向)を測定する尺度であり,大 学への登校を回避する感情的側面を表す「登校回避感 情」と,行動的側面を表す「登校回避行動」の 2 因子 から構成される。 【結果】 母親の過干渉と温かさを外生変数,賞賛獲得欲求, 拒否回避欲求および対人ストレス合計を媒介変数,登 校回避行動および登校回避感情を従属変数とした最尤 法によるパス解析を行った。外生変数からすべての媒 介変数,従属変数にパスを引き,媒介変数からすべて の従属変数にもパスを引いた。また,外生変数,媒介 変数の誤差変数間,および従属変数の誤差変数間に相 関を仮定した。このモデルは飽和モデルであるため適 合度は算出されなかった。その結果をFigure 1に示し た。また,父親の過干渉と温かさを外生変数とした分 析の結果をFigure 2に示した。 【考察】 母親の過干渉は,賞賛獲得欲求,拒否回避欲求およ び対人ストレスに正の有意な影響を与えていた。母親 の過干渉を受けた者は母親に拒否されないよう母親の 意見を受け入れて行動することが多かったために,他 者に対しても拒否されないような行動をとるようにな るのだろう。また,社会に出ると自身の意見を聞かれ

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-70 259 -る場面や言われるがままに行動するだけではうまく やっていけない場面が多くなるため,他者とうまく付 き合っていくことが難しくなり,対人ストレスが多く なると考えられる。一方,母親が過干渉であると,自 分で意思決定することが少なく,自分の意見を親に褒 めてもらうことも少ないため,かわりに他者からの賞 賛を求めるようになるのだろう。また,母親の温かい 養育態度は賞賛獲得欲求と拒否回避欲求に正の影響を 与えていた。母親からの温かい養育を受けた者は,母 親と同じように他者にも受け入れてもらいたいという 欲求が強くなる一方,他者から受け入れられなくなる ことを恐れ,拒否回避欲求も高くなると考えられる。 賞賛獲得欲求は登校回避感情に負の影響を与える が,登校回避行動に正の影響を与えることが示され た。賞賛獲得欲求が高い者は人から賞賛を得るために 学習などにおいて努力を行っているが,少なからず周 囲の期待や圧力を感じており,それらが身体症状とし て表出するために登校回避行動が増加したと考えられ る。拒否回避欲求は登校回避行動に正の影響を与える 一方,登校回避感情に負の影響を与えることが示され た。登校を回避することで仲間と距離ができ,仲間か ら拒否されることを恐れるため,拒否回避欲求が高い 者は登校回避行動が低くなると考えられる。また,対 人ストレスの多い者は,対人関係上のストレスをなく すために他者との関わりを避けようとし,登校回避感 情および行動が高くなると考えられる。 結果より,母親の養育態度が登校回避感情,登校回 避行動に正の影響を及ぼすメカニズムもあれば,負の 影響を及ぼすメカニズムもあることが示された。これ は,母親の過干渉および温かい養育態度は賞賛獲得欲 求と拒否回避欲求の両方を強めるが,一方で,賞賛獲 得欲求と拒否回避欲求は登校回避感情と登校回避行動 の一方には正の影響を,もう一方には負の影響を及ぼ すためである。 また,母親の養育態度は父親の養育態度よりも影響 が強いことが示された。父親は昼間働きに出ており母 親に比べると子どもとかかわる時間が少なく,そのた めに,母親に比べ養育態度の影響が弱くなると考えら れる。

参照

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