• 検索結果がありません。

Compassion for Others Scale中学生版作成と信頼性・妥当性の検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Compassion for Others Scale中学生版作成と信頼性・妥当性の検討"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-79

276

-Compassion for Others Scale中学生版作成と信頼性・妥当性の検討

○玉城 和沙1)、安仁屋 美香2)、塩川 満理香2)、伊藤 義徳3) 1 )株式会社LITALICO、 2 )琉球大学大学院人文社会科学研究科人間科学専攻、 3 )琉球大学人文社会学部人間社会学科 【背景】 Compassionとは,日本語で思いやり,哀れみ,慈し みと邦訳される概念であり(伊藤,2010),その出自 は 仏 教 に あ り,「 慈 悲 」 に 相 当 す る 概 念 で あ る。 Compassionの定義は諸説あるが,最も包括的なものと してJinpa(2010)による「苦しみに気づくという認知 的な側面,苦しみによって情動的に動かされるという 情動的側面,苦しみが軽減するように願う意図的な側 面,苦しみを和らげるための準備性・反応性である行 動的な側面」が挙げられる。また,Gilbert(2014)は Compassionにおける 3 つの方向性を示しており,特に 自 分 自 身 に 対 し て 向 け る C o m p a s s i o n は S e l f -Compassion(以下SC)と呼ばれ,精神健康との関連を 示す研究が数多く行われている。SCと比較すると少な いが,他者へのCompassion研究も行われており,幸福 感 の 増 加 や 精 神 的 苦 痛 を 和 ら げ る 事(Steffen & Masters, 2005),Compassionの涵養により,向社会的 行動の生起頻度が増加する事も示されている(e.g., Condon,et al 2013)。他者へのCompassionに関する知 見は蓄積されつつあるが,その多くは成人を対象とし ており,子供を対象とした研究は少ない。しかし,こ のような知見は青年期においても有効ではないだろう か。例えば,他者へのCompassionは,近年深刻化する いじめ問題の予防などとも関連することが想定され る。 実 際,Hurely(2014) は い じ め 予 防 を 目 的 に Compassion and Analytical Selective Focus Skills (COMPASS)を考案し,大学生を対象にパイロットスタ ディーを実施した結果,抑うつや不安,ストレス,無 関心の減少を報告している。今後のCompassion研究の 発 展 が 望 ま れ る が, 本 邦 に お い て は 青 年 期 の Compassionを測定する尺度は見当たらない。そのた め, 本 研 究 に お い て は,Compassion for Others Scale(以下COS)中学生版を作成し,信頼性,妥当性 を検討することを目的とする 。 【方法】 原 項 目 の 作 成  本 邦 に お い て は, 他 者 へ の Compassionを測定する標準化された尺度は,成人版も 中学生版も見当たらない。そこで,Compassion for Others Scale中学生版を作成するにあたり,年齢や世 代を限定せず,他者へのCompassionの構成概念を反映 すると考えられる項目を広く収集し,項目が整った後 に,中学生に理解しやすいよう表現を改めるという流 れで原尺度の作成を行った。まず,Compassion研究に 携わる計10名の研究者に,Jinpa(2010)の定義を念頭 に10から20程度の項目を各々作成するよう依頼した。 その結果,85項目が作成され,操作的定義に即してい ないと判断されたものを削除し,類似の内容と判断さ れた項目を統合,修正した。次に,当該操作的定義に 基づく概念との整合性や,理解のしやすさを確認し, 適宜修正した。そして,尺度作成及び瞑想の経験が15 年以上あり,当該分野に精通している臨床心理学研究 者 1 名に,定義に基づく概念との整合性の観点から項 目案を検討してもらった。最終的に43項目がCOS原尺 度として採用された。その後,中学生にとって理解が 平易な表現に修正を加えた。筆者と,同上の臨床心理 学研究者 1 名とで項目の表記を検討した上で,中学生 2 名,小学生 4 名に回答してもらい,理解が困難な表 現がないかを確認した。回答が困難な表現に関して は,更に修正を重ね,文言の最終確認を行い,完成し たものを調査用原尺度とした。 対象者  A 中学校に通う 2 年生, 3 年生,各 4 クラ ス の 計301名( 男 子151名, 女 子150名,M=13.94, SD=0.73)を対象に調査を実施した。 指標 ( 1 )COS中学生版:上述した手続きで作成し た43項目の原尺度であり「 1 :まったくない」から 「 6:非常によくある」の 6 件法で回答を求めた。( 2 )

Self-Compassion scale short form 中学生版(仲 嶺・甲田・伊藤・佐藤,2015): 2因子計11項目で構 成され, 5 件法で回答を求めた。( 3 )クラスメイト を「下に見る」経験チェックシート(坂本,2016): 本尺度はクラスメイトを「下に見る」気持ち尺度とク ラスメイトを「下に見る」行動尺度で構成される。前 者は 4 因子16項目,後者は 2 因子 7 項目で構成され, 3 件法で回答を求めた。( 4 )いじめ加害・被害調査 票(国立教育政策研究所,2010) 6 項目で構成され, 5 件法で回答を求めた。( 5 )中学生用心理的ストレ ス反応尺度(奥野・小林,2007): 4 因子18項目から 構成されており, 5 件法で回答を求めた。( 6 )児童 用精神健康パターン診断調査(西田・橋本・徳永, 2003):「生活の満足度」因子のみを用いて 5 項目 4 件 法で回答を求めた。 手続き 各学級担任によって調査の実施,回収が行 われ,集団一斉方式で回答を求めた。なお,調査にあ たり,各学級担任に教示シートを用いて回答する際の 注意点を教示して頂いた。調査時間は約20分ほど要し た。

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-79 277 -倫理的配慮 本調査にあたり,質問紙への回答は強 制でなく,調査結果は統計的に処理され,個人が特定 される事はない事,学校の成績とは一切関係がない 事,また,調査中に気分を害した場合はいつでも中止 して構わない事を学級担任を通して教示してもらっ た。 【結果・考察】 分析対象者 本研究では,記入漏れや欠損値,回答 に明らかな不備のあった者を除く245名(男子119名, 女子126名,M =13.94,SD =0.73)を分析対象者とし た。 因子構造及び信頼性の検討 ( 1 )天井効果及び床 効果:COS中学生版43項目について,各項目の平均値 と標準偏差を算出し,天井効果及び床効果の有無を確 認した。その結果, 2 項目が該当し,それらを削除し 分析を行った。( 2 )探索的因子分析:COS中学生版41 項目について最尤法・Promax回転による探索的因子分 析を行なった。累積寄与率,解釈可能性の観点から, 3 因子構造を仮定した。その後,因子負荷量及び多重 負荷が.40未満の項目を除外し,再度探索的因子分析 を行なった。最終的に,32項目が十分な負荷量(.42 -.92)を示し,適合度も十分な値が得られた。第 1 因子は,18項目で構成されており,「誰かが困ってい る時に,それは人間誰でも経験するものだからと思 い,その人を応援したくなる」といった,苦悩する他 者に対して,その苦しみが減るよう願ったり,気遣い, 思いやりを示すような内容であった。そこで,第 1 因 子は「苦痛への温かな対応」と命名した。第 2 因子は, 8 項目で構成されており,「他人の苦しんでいる気持 ちに自分も巻き込まれる」といった,苦悩する他者に 共感したり,共感することで自分自身も苦しくなるよ うな内容であった。そこで,第 2 因子は「共感的苦痛」 と命名した。第 3 因子は, 6 項目で構成されており, 「誰かが困っていたとしても自分には関係ないと思 う」といった,苦悩する他者に対して,非共感的な態 度をとるような内容であった。そこで,第 3 因子は 「冷淡さ」と命名した。 また,内的整合性の検討のために,各因子について Chronbachのα係数を算出したところ,苦痛への温か な対応(α=.95),共感的苦痛(α=.86),冷淡さ(α =.75)であり,十分な信頼性を有していることが確 認された。さらに,適合度を算出したところ,十分な 値が得られた(CFI =.92; RMSEA =.06)。 構成概念妥当性の検討 COS中学生版と関連が想定 される各尺度との相関分析を行った。一部結果を抜粋 して記載する。COS中学生版全ての因子がSCS中学生版 の「自己への思いやりの態度」と有意な相関を示した (「苦痛への温かな対応」(r =.39,p <.01);「共感的 苦痛」(r =.24,p <.01);「冷淡さ」(r =-.41,p <.01))。Compassionの出自における仏教において も,自身を慈しむことができなければ,他者を慈しむ ことはできないと述べられている(中村,2010)。こ のように,他者へのCompassionとSCは関連していると 考えられ,本尺度においても同様の結果が得られた。 次に,ストレス反応に関しても有意な相関を示し,概 ね先行研究(e.g., Beaumont,et al.,2015)と一致す る結果が得られた。加えて,COS中学生版全ての因子 が,クラスメイトを「下に見る」体験の「援助行動」 と有意な相関を示し,Compassionが援助行動と関連し ていることが示され,青年期においてもCompassionが 有用である可能性が示唆されたと考える。 以上より,作成されたCOS中学生版は,十分な信頼 性と妥当性を有していることが示された。また,認知 的 側 面 や 感 情 的 側 面, 行 動 的 側 面 ま で 包 括 的 に Compassionを測定できる構成となっている点は非常に 有意義な点であるといえ,今後のCompassion研究の発 展に寄与できると考える。 【主な引用文献】

Hurley, W. (2014). Enhancing a Positive School C l i m a t e w i t h C o m p a s s i o n a n d A n a l y t i c a l Selective-Focus Skills (COMPASS). Journal of Education and Practice, 5( 7 ), 1-15.

参照

関連したドキュメント

既存の尺度の構成概念をほぼ網羅する多面的な評価が可能と考えられた。SFS‑Yと既存の

方法 理論的妥当性および先行研究の結果に基づいて,日常生活動作を構成する7動作領域より

び3の光学活`性体を合成したところ,2は光学異`性体間でほとんど活'性差が認め

Our translation L M can be extracted by a categorical interpretation on the model Per 0 that is the Kleisli category of the strong monad 0 on the cartesian closed category Per!.

Development of an Ethical Dilemma Scale in Nursing Practice for End-of-Life Cancer Patients and an Examination of its Reliability and Validity.. 江 口   瞳 Hitomi

3.5 今回工認モデルの妥当性検証 今回工認モデルの妥当性検証として,過去の地震観測記録でベンチマーキングした別の

両側下腿にpitting edema+ pit recovery time 5sec SとOを混同しない.

このような状況の下で、当業界は、高信頼性及び省エネ・環境対応の高い製品を内外のユーザーに