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畦面被覆の微気象に関する研究 VI. 甘藷の植被と黒色ポリエチレンフィルムが地温に及ぼす影響-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学農学部学術報忠 常34巻∴節1号13∼22,Ⅰ982

畦面被覆の微気象に関する研究

Ⅵ甘藷の植被と黒色ポリエチレンフィルヰが地温に及ぼす影響*

鈴 木 晴 雄,広 喜 功 行**,宮 本 硬一

STUDIES ON THE MICROCLIMATE OF THE MULCHED ROW SURFACE

ⅥEffects of sweet potato canopy and mulchingWithblack

POlyethylene film on the soiltemperature

Ha工uO SuzuKI,KatsuyukiHIROYOSHl**and KoichiMIYAMOTO

ThepurposeofthispaperaretoinvestigatetheeLfectoffilmmulchand sweet potato canopy on the

microclimate near the row sulface

Themulchmaterialwasblack polyethylenefilmO04thick・The variety ofsweet potato was named

‘K(汰eiNo14,.

Expe‡imental董bur plotsweredesigned as氏〉110W‥No・1plotⅥ〉aSnOt plantedandnotrnulched,No.2 WaS planted and not mulched・No・3wasnotplantedandmulched・andNoI4wa軍plantedandmulched・

The observ去tion of microclimate andthe cultivation of sweet potato weie per・fbrmed from May to

October in 1980

TheIeSults werIe Obtained asfo110W:

1)Sumofthelatentand sensibleheat fluxeson the rowsurfaceofmulched plot(No.3)at night WaSincreased34%than thatofunmulchedplot(Noul)onJuly22 Dailyamountofthesuminmulched

Plotwasalsoincreased15%than thatofunmulchedploL

2)Asfor’theeffbctofcanopy on the heat balance at the planting plots(No.2,4).when the stepl革

andleaves of sweet potatoes have considerably grown the proportion on the values ofheatbalance

COmPOnentS areCOnStant regardless ofmulched orLnOt

3)Thee地ctsofsweetpotatocanopyand the totaleffectsofcanopyplus董ilmmulching on thF声Oil

temperatureinmulchedandunmulched plots were gainedas relation between ratioofdiurnalrangeof

SPiltemperatureat5cm depth(daily rangein treatment Plot/thatofcontrolled)and ratio ofcovered

area byplant to row surface one.

Asfbr the canopyeffbct,the ratiosofdiurnalrangeofsoiltemperatuIeinmulched′(No.4/Nム..3) andunmulchedplots(No2/No。1)becamesmal′1as theratioofcoveredareaby plants to rowsu油ce incTeaSed・The decreaSe Of canopy effectinunmuldledplotwas aboutl2timesthatofmulched plot Thee地ctofcanopyand the totaleffectsofcanopyplus filmmulchingare someequalu

本実験の目的ほ,畦面被覆栽培におけるフイルムマルチと甘藷の植被が地温に及ぼす影響を,欲気象的に明らかに することである畦の被覆には黒色ポリエチレンフィルム(厚さ004mm)を使用し,甘藷の品種は代高系14号?を 用いた.実験区は,被覆の有無で2大別し,さらにそれらに植生の有無を加え,計4秤類としたいすなわち,無マル チの場合,植生の汀無により,納棺生無マルチ区.(No.1)と植生鰍マルチ区(No2)とし,被覆をした畦について も植生の有無によって,無植生マルチ区(No.3)と相互マルチ区(No.4)とした∴実験は1980年5月から10月’にか *昭和56年4月3日 日本虚栄気象学会全国大会にて発表 **現在:北九州市東部農業協同組合

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香川大学農学部学術報告 第34巻 罪1号(1982) 14 けて行い,微気象観測および甘藷の生育調査のそれぞれを実施した,得られた結果は下記のとおりである・ 1)フイルムマルチによって,夜間における港・顕熱伝達盈は無マルチの場合(Noul)より大きくなり(34%増, 7月22日),日概算値においても,マルチ区(No.3)では無マルチ区の15%増となった・・ 2)植被の効果としては,フイルムマルチの有額常かかわらず,植被がある大きさに達すると熱収支各項の割合が −・定になるパ 3)植被単独の効果,およびマルチと植被両者による披合効果を地温日較差比(−5cm)と地被率との関係から 求めたい植被単独の効果は,フイルムの有鮒こかかわらず,地被率が高くなるにつれて日較差比は低下する・ただ, その低下皮は無マルチ区の方が,マルチの約112倍大きかった.マルチと植被の投合効果は,マルチ区における植被 単独の場合とあまり差がなかった. 1い ま え が き これほ,前報(1)にひき続き,畦面被覆栽培における被覆資材と作物の植被が地温に及ぼす影響を,欲気象的に明 らかにすることを目的としたものである.前回までほ,寒冷妙による植生の模型(2)と大豆の植生(1)を用いて栽培期 間中,黒色ポリエチレンフィルムによるマルチングの効果,植被自身の地温に対する影響,および植被とフイルムマ ルチの複合効果について報告した本報では,畦面上を水平的に繁茂する作物の代表的な甘藷を供試作物に選択し た. 2実験設備および測定方法 実験は,香川大学虚学部構内圃場に次のような実験区を設け,1980年5月より10月にかけて行った・ al無マルチ区 No‖1:無植生無マルチ区,No…2:植生無マルチ区 b.、マルチ区 No.3:無植生マルチ区, No小4:植生マルチ区 畦(畦長7m,畦幅75cm,畦高25cm)はすべて東西方向として,討8畦作成し,そのうち4畦には黒色ポリエチ レンフィルム(幅135cm,厚さ0104mm)による被覆を行い(No・3,4),残りの4畦はそのま■まの無マルチ(No・ 1,2)とした‖また,マルチ,無マルチの各4畦のうち,それぞれ3畦ほ甘藷の植生があり,1畦は無植生とした・ なお,今回は,植生のあるNo.2,No.4でのフイルムの植穴がスリット状であるため,露出面積は無視できるもの と判断し,それに対応する無植生のNo‖1,No.3では特に植穴をあけなかった. 実験期間中(5月∼10月),地温,土壌水分,蒸発思および植被内畦面上での日射透過率を連日観測した・地温は熱 電対(鋼−コンスタンタン,径05mm)を使用し,土壌水分はガラスブロック製電気抵抗弟子(2l6×1‖9×0一8cm, 島津製作所)により,どちらも地下5cmに埋設した..土壌水分は連日8時に値を読み,含水率への換静ほ,地温の 変化を考慮した検定曲線から読みとった… 未発盈は,平田式紙面未発討を畦面に設置し,連日8時と18時に測定してその差から当日の蒸発盈とした・・日射透 過率は,管型日射計(中野製作所)を用い,株間(畦の中央部)に設置して測定し,静出した・ 熱収支項の測定は,区どとに畦の中央部付近で行ったいすなわち,アルベドは畦面上,または植披面上50cmの高 さで農試竃試型日射計(中野製作所)によって測定した1純放射鼠は,純放射計(CN−2型,CN−6型,英弘楷械) を用い,同じ50cm高において求めた.地中伝導熟鼠は,地中熟流板(CN−8型,CN−81型,英弘相磯)に約1mm 覆土して使用し,それぞれ自動平衡記録割に自記させた・ また,熟収支と微気象の日変化を得るため,実験期間中,2日間(7月22日,9月4日)の24時間観測を実施し た‖徽気象の測定にあたって,地温は名区とも地表面,地下2い5,5,10,20cmを,気温は畦面上30cmをそれぞれ 測定し,さらにマルチの表面温度も測った. 甘藷は,飲高系14号”を用い,植え付桝ま5月30日に植生無マルチ区(No・2)と植生マルチ区(No・4)で行い (20×40cm),収穫調査(10月16日)まで,慣行に準じて肥培管理をした.生育調査ほ主に主茎長とエ孔「について 行い,地被率も期間中,南中時に測定したい

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鈴木晴雄・広書功行・官本硬一・:畦面被覆の欲気象に関する研究(Ⅵ)

3.結果および考察 3.1実験期間中の気象概況

実験期間中における気象状況の概略を,rablelに示した(3)

Tablel.Weather conditions forexperimentalperiod(Takamatsu,1980)

15

Jun Jul. Aug“ Sep。 Oct一

Mean air temperature 22.8 24.8

(OC) (21.6) (26.1) Precipitation l14。5 225.5 (mm) (165.5) (153.2) Solar radiation 383 372 (calcm ̄2day−1) (402) (435) 24.8 (26.8) 226.5 (93.1) 308 (451) 22.1 17.2 (22.9) (16.7) 122.0 165.0 (175.8) (112小8) 332 274 (352) (306)

Valuesin parentheses denote the normals.,

それによると,気温ほ7,8月においては平年値より13∼20℃も低かったり降雨も7,8月に多く平年より47 ∼143%も増加した.日射畠は,各月とも平年の5∼32%低く経過した.このように,本実験期間中の一・般気象条件 ほ,平年に比して低温寡照・多雨であった. 3.2 被覆甘藷畑の熟収支 観測当日は両日ともに晴天で,7月22日は日射鼠が454calcm−2day−1,9月4日は445calcm−2day−1であった. 甘藷の生育状況については,7月22日(生育調査日)の場合,植え伺け後53日目にあたり,その時の主茎長は植生 区のマルチ,無マルチ区(No.4,2)でそれぞれ145cmと126cmであった.しかし,その後,両区間の生育差 (エAJ)は幾分ひろがったが,、・主茎長については9月中旬になるとほぼ同じ程度(約263cm)となったn 3.2.1 アルベド 各区のアルベドとLAZとの実測値をTable2に示すと共に,それに基づいて作成したTable3をかかげ,アル ベドに対するフイルムマルチと植被の効果をみることにする巾 Table2によると,両E=こおける無植生マルチ区(No.3)のアルベドほ13%と8%で最も低く,反対に最も高い のは植生マルチ区(No.4)で31%と21%を示し,高低はいずれもマルチ区に生じた、これは,無植生下の場合,裸 地より黒ポリ・のアルベドが低いのは当然であり,植生下についてみるとエA∫に示されたように,無マルチ区よりマ ルチ区の生育が全般的に良好であったことから,マルチ区の高いアルベドは,ほとんどが植被によるものと考えてよ い。 これらの結果をさらにTable3 よりみると,マルチのアルベドに対する効果は,無植生区(No.3−No.1)の場 合,両日とも減少の方向に作用した..しかし,植生区の比較(No.4−No.2)では逆にアルベドを上昇させる結果と なった.これも植被の影響によるもので,この時期の地被率はかなり大きく(7月22日のNo.・4で86.4%),したが

Table2.Daily averages ofalbedo on the row surface and sweetpOtatO

CanOPy,anditsLAIin the experimentalplots

Jul.22 Sep.4

No mulch Mulch No mulch Mulch

Noい1 No..2 No。.3 Noい4 Noい1 No.2 No.3 No..4 Albedo (%) 11 13 8 21 2.3 5.7 18 15 13 31 エAJ −・ 2.3 −・ 3..4

No小1plot was not planted and not mulched, No.2 was planted and not mulched, No.3 was not plantedand mulched, Noり4 was planted and mulched..LAIwas meas11red onJuly22andon September4.

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香川大学農学部学術報告 第34巻 欝1号(1982)

Table3.Effects of film mulch and sweet potato canopy on albedo(%) in the experimental plots

1も

Efiectofplantcanopy E董fect of mulch

Jul…22 Sep 4 Tul..22 Sep..4 No mulch (Non2−No.1) Mulcbed (No.4・−No。.3) No plan七 (No..3−No小1) Plarlted (Noり4−Noり2) ー 5 − 3 16 8 − 3 2 18 13 Plots are the same asin Table2

っでフイルムの影矧まはとんどなかったものと考えられる 次に植被のアルベドに対する効果は,無マルチの場合(No.2−No.1),はっきりした傾向はみられなかった−こ れは大豆−の植生の場合(1)もほぼ同様であった.しかし,マルチの場合は(No.4−Nol.3),植被がアルベドを上昇さ せる傾向を示した このような,マルチ,植被のアルベドヘの影静は,若干の差はあるものの,大豆の植生の場合と傾向的に−・致して いる.ただ,植生区におけるフイルムの効果(No.4−No〃2)については,大豆の場合,アルベドが負の値,つま り,植被がアルベドを下げる作用を示したのに対して,甘藷の場合ば正の値となり,この点で,両櫨被はアルベドに 対して異なった影響を考えているこれほ,比較した両植生の繁茂度に大きな差があることと,そのほかには植生の 種類も関係しているものと考えられる(4〉 き.2.2 熱収支項 各区の熟収支項は,Table4のネうになるなお,熟収支各項の符号は,純放射の場合,天空から地面に与えられ るときを正に,他の項でほ地表面から地上地下の両側へ熱が流れるときを正とした.顕熟伝連盟と潜熱伝連盟の和 は,熟収支式め残余として算出した.被覆資材と植生による貯留熟盈の項は,今回の瘍合,比較的小さいものと想定 し,..特に考慮しなかった

Table4.Daily amounts of heatbalance components(calcm−2day ̄1)

Rn:Net radiation,B:Soilheatflux,L:Sensible heat flux,V:Latent heat flux,∑:Daily total

ofeachcompon?ntn Plotsarethesamea!inTable2.

a)純放射 フイルムマルチの縄放射に対する効果として,昼間(正借)と1日の値(∑)をみると,7月22日の場合,マルチ 区(No.3,Noり4)の方が無マルチ区(Nol・1,No・2)より多く,既報(1)と同じ傾向であった19月4日の場合も, 昼間においてマルチ区が無マルチ区より大きかったが,日給盈では被覆の効果が植生マルチ区(Nb‖4)においては 認められなかった.また,夜間(負債)の値は,7月22日の場合,マルチ区(No・3,No・4)と無マルチ区(No・1,

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鈴木晴雄・広書功行・宮本硬−・:畦而被覆の微気象に関する研究(Ⅵ) 17 No.2)との差はそれほど大きくはなかったが,無植生下ではマルチ区(No・3)が裸地(No・1)より18%も射出盈 が多かった.9月4日では両者の関係が逆転しており,夜間の傾向は必ずしも−・定しなかった 次に,純放射に対する植生の有無による影響をみると,アルベドの場合と造っでマルチと植生ほやや被雉に関係し ているまず,日中の値では,7月22日の場合,無マルチの植生区(No.2)が無植生区(No・・1)より約17%増であ り,アルベドの大小関係に対応していた,−・方,マルチをした場合,純放射盈ほ植生区(No.4)の方が無植生区 (No.3)より約20%増えたが,この傾向はアルベドの大小関係とは必ずしもよく対応していなかった‖ これは主と して,無植生マルチにおけるマルチ表面の温度(10時では55u5℃)が植生マルチ(No・・4)のものより(同41、5℃) 高かったことによる両区の有効放射盈の差によるものと考えられる また,9月4日の場合,無マルチ区においては,植生と無植生における純放射爵とアルベドとの大小関係の対応が よくなかったが,マルチ区においてほ反対に,両者はよく対応していた」これほ当日の気象条件により!畦表面温度 と,無マルチの畦表面付近の水分状態によるアルベドとの関係が,7月22日の場合と若干異なっていたためであろ う. さらに夜間では,7月22日の無マルチの場合,植生(No‖2)の方が裸地(No・1)より13.2cal、Cm ̄2min‘ ̄1ほど放 熱盈が多かった.これは,大豆の時と同様,植生区(No.2)の夜間における植被表面温度が裸地〈No・1)の地表面 温度より高かったので,その結果,放熱昆が多くなったものと考えられる小なお,無マルチ区では,実験区付近から の移流熟も関係したかも知れない 山方,マルチの場合でも,植生区(No.4)が無植生区(No.3)より約25%純放射鼻が多かった. b)地中伝導熟鼠 無植生区(Noい1,No..3)について,地中伝導熟鼠に対するマルチの有鰍こよ.る影響を比較すると,7月22日の場 合,マルチ区(No3)は無マルチ区(Noい1)より昼間ほ42%,夜間は5%,それぞれ減少したこの日申の傾向 は,9月4日でもみられたが,夜間では逆にマルチ区が無マルチ区の2倍弱であって,結局,日枝界鼠として−は,マ ルチ区は無マルチ区の1/3程度となり,7月22日の場合より区間差は縮少した. 次に,植被の効果を無マルチ区(No・1,No−2)で比較す寧と,昼間にば植生区(No・2)が無植生区(No・1)の 約1/2で,しかも夜間の放熱は無植生区,植生区ともにほとんど差がないので結局,正凍の伝導熟盈は無植生区が 22∩8calcm−2day ̄1はど植生区より大きくなった.こうした傾向は,大豆の場合と・・・・・小致して−いる マルチの場合では,昼間は植生区(No.4),無植生区(No.3)の伝導熱意はほぼ等しく,夜間においても両区間 に大きな差はなかった また,9月4日の場合,無マルチ(No.1,No.2)を日横罫盈で比較すると,植生区(No・2)がゼロであるのに 対して,無植生区(No.1)ではそれが48calcm−2day−1であり,マルチをした場合では(Noリ3,No・4),植生区 (No.4)は無植生区(No.3)の約1/2(7.2calcm−2day ̄−1)となって,いずれも植被は伝導熟盈を仰制する C)潜熱顕熱伝達鼻 フイルムマルチの効果として無植生(No.1,No.3)の2区を比較すると,7月22日の場合,昼間の伝達盈はマル チ区(No.3)で多く,無マルチ区(Noひ1)より17%増になり,夜間でも34%増加した結局,日横罫値ではマルチ 区の方が無マルチ区より15%増となり,前報(1〉と傾向ほ−激している. 次に植彼の効果をみると,無マルチ(No.1,No.2)の場合,7月22日の昼間および夜間の伝達盈は植生区(No・ 2)で大きく,日積弊値としては植生区(No..2)の方が無植生区(No、.1)より28%程度大きくなった‖ こうした植 生区の昼間における伝達盈が,無植生区のものより大きいという傾向は,マルチのある場合(No・3,4)でもみられ, 9月4日の観測値でも同じ傾向が示されている 最後に,各区どとの熟収支項の盈的割合をみると,裸地状態(No.1)の場合,純放射鼠の15∼21%が地中伝導熟 晶で,残りは潜熱顕熟伝達畠として消費されているtところが,これに植生が加わると(No・芦),地中伝導熟盈の割 合が減少して(7月22日で4%),その分だけ潜熱顕熟伝達盈が増加する.こうした傾向ほ,茎葉繁茂の増大につれ て著しくなる(9月4日の地中伝導熱盈は0%) 一方,マルチがある場合,無植生区(No.3)では裸地状態(No・1)より,さらに地中伝導熟塩の割合が小さくな り(3∼5%),純放射孟の95∼97%が潜熟顕熟伝達藍として消費されることになる.また,マルチに植生が加わっ た場合(No.4)も,無植生(No.3)の場合とそれらの消費割合ははぼ等しい. 以上,フイルムマルチと植被が熱収支の各項に与える影響について述べたが,全体としては前報(1〉の大豆の植生

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香川大学農学部学術報告 節34巻 欝1号(1982) 18 による場合と一一激している.すなわち,甘藷の植生においても,その効果は,繁茂皮によってかなり影響をうけ,マ ルチの有鮒こかかわらず,植被がある大きさに達すると熟収支項の割合が−・定する結果が得られた 3.8 マルチと植被の地温効果 3.3.11日の温度変化における効果 実験期間中の1日観測によって,各区における地温を比較してみると,いずれもマルチおよび植被の影響が示され ている まず,フイルムマルチの効果として地温の垂直分布 をみると,Fig.1のようになる.日中(10時)の温度 を無植生の2区(No.1,No.3)でみると,全体的に マルチ区(No.3)の方が無マルチ区(No.1)より高 く,両区間に最大で2.5℃,最小で1.4℃の温度差が生 じ,マルチによる顕著な温度上昇がみられた. ・また,夜間でも無植生における両区(No・1,3)の 地温差が大きく,しかもマルチ区(No・3)における 地温ほ仝4区中においても最も高温となり,フイルム マルチによる保温効果が示された. 次に植生のある区(No.2,4)の比較では,日中の 場合,地温は全体的に醸植生(No・1,3)より低く, しかも植生区間の地温差はきわめて小さく、地下10 cm以下では両区ともほぼ等温となった.また,夜間に はマルチ(No.4)の方が無マルチ(No“2)より,わ 10:00 5 0 2 5 25 30 35 40 45 Soiltemperature, Oc Fig」.Verticaldistributionsofthesoiltemperature in each plot(Julい22,1980).

Plots are the same asin Table2.

ずかではあるが(0小2∼10℃)高温であった. これらのことから,植生の存在は,日中の地温を大きく低下させていることが認められた‖ さらに地温について,7月22日を例にとって調和分析をし,マルチと植被の影響壕検討するとTable5のようにな る.なお,α。は各探さでの平均値,動は1日項の振幅,ど1は位相角である.これから日平均値をみると,無植生下 では全般的にマルチ区(No.3)の地温が無マルチ区(No.、1)より各深さ平均で約3.0℃高温であるが,植生があると (No.2,No..4),ほとんど差ほみられなくなる. ・一方,変動幅(振幅α1)では,マルチ区と無マルチ区の差が明りようで,マルチ区でほ植生の有鰍こ関係なく, 地表面から地下20cmにいたる変動は,無マルチより小さく,既報(1)の結果と一′致している. 3.2.2 半句地温における効果 実験期間中における黒ポリフイルムによる地下5cmの地温上昇の効果を,無植生の場合(No・1,No・3)につい て日射盈との関係(半句値)で求め,次式に示した.

Table5.Harmonic coef董icients for the daily cycle of soiltemperatureat 5cm depth(Jul.22,1980) No mulch 6 1 9 6 2 0 1 9 5 2 2 2 1 1 1▲ 3 5 2 4 6 2 2 2 ﹁⊥ 0 7 7 7 4 1 4 4 4 4 4 2 2 2 2 2 9 2 3 7 9 2 3 1 9 5 2 2 2 1 1 8 1 7 1 7 3 4 2 2 0 9 1 4 7 5 4 5 4 4 4 2 2 2 2 2 1 8 9 1 4 3 2 1 0 5 2 2 2 2 1 8 7 8 1 4 9 9 8 6 2 5 6 ﹁⊥ 6 7 1 1 1 0 00 3 3 3 3 2 4 4 9 2 QU 4 4 2 1 6 2 2 2 2 1 0 0 9 7 2 0 0 ア 5 2 1 1 8 8 0 00 8 7 7 7 6 5 2 2 2 2 2 5 0 0 0 0 2 5 0 0 ﹁⊥ 2

a。:Mean value(OC),al:Rangeoftheday(OC),81:Phase angle(deg)り Plots are the same as Table2.

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鈴木晴雄・広告功行・宮本硬−・:畦面被覆の徽気象に関する研究(Ⅵ) 19 (γ=0.39*) (1) (γ=0.56**) (2) ㍍〃∫=0‖71・10 ̄’2.属,+0.74 了㌦¢〃〝=0.68・10 ̄2け屈ざ+0.43 ただし,㍍。∬,㍍β〃〝ほそれぞれ最高,平均地温の差(No.3−No.1,℃),屈ぶは日射盈(calcm ̄2min ̄1)を示 す. すなわち,最高地温と平均地温の場合は日射鼠と相関関係があって,日射盈が多いほどマルチによる地温効果が顕 著になる.一一・方,最低地温については日射盈との関連性は明確でなかったが,フイルムマルチは裸地に対して実験期 問の平均で1,9±0.1℃の保温効果を示した.これらは,既報(2)と同じ傾向である. ただ,日射鼠の増加による地温の上昇度に対す・る影響は既報に比べて低かったが,これは気象条件の違いによるも ので,本年は雨天日が掛こ多かったことにより(Tablel),土壌水分が各区とも多くなった結果(Fig・2),地温差 によるマルチ効果が顕著に発現されなかったものと考えられる. 次に,各気象要因の総合化されたものとみなせる未発盈(5)と地温差との関係を求めると,次式のようになる. (γ=0.22) (3) (γ・=0..35*) (4) (γ=0.47**) (5) (れnax=019・g∫+3.65) ㍍雨 =0.18・訊十1.53 7㌦βαル=0.24・茸ざ+2り88 ただし,7㌦α∬,㍍J〝および㍍β。〝は最高,最低,・平均の地温差(No.3−No.1,℃),g。は裸地状態(No・1) の畦面上における講究患(紙面,mm)である. これによると,蒸発鼻の多い気象条件下であるほど,どの地温差も大きくなり,マルチの効果が顕著になると言え る. なお,この傾向は,植穴のあるフイルムによる場合(1)とは最低地温以外ほ逆の関係となり,マルチの欲気象的効果 もフイルムの植穴の有無で変わってくるので,この点については,別途問題にしていきたい. 3.3.3 土壌水分に対する影響 畑地での土壌水分昆の多少は,そこで 地温成立を大きく左右し,特に黒ポリフ イルムのマルチによる土壌水分保持効果 の大きいことほすでに報告した(2).本実 験の期間中における土壌含水率の変化は Fig.2のようになる.これによると,マ ルチ区(No.3)は無マルチ区(No.1)より 期間中の平均で約2%(No.3:28‖3%, No.1:26.1%)高く経過しており,マ ルチによる水分保持の効果が示されてい る.ただ,6月の3,4半句,7月の6 半句より8月の2半句にかけては,無マ ルチ区の方がマルチ区より土壌水分が多 35 30 25 20 15 10 訳 び旨屈○∈l叫OS 12 3 4 5 6 5 612 3 4 5 6 12 3 4 5 612 3 4

Jun Jul Augl Sep…

Fig。2.Seasonalvariation of soilmoisture at5cm depth in each plot.

Plots are the same asin Table2.

かったが,これはその時期に多毘の降雨があり(Tablel),マルチが降雨遮断(6〉として大きく作用したためであろう. 次に,植生のある区(No.2,4)の土壌水分は,マルチの有鰍こかかわらず無植生(No.1,3)のものより約5% 低く経過しており,甘藷の茎葉による兼散鼠の大きいことが示されている.また,マルチ(No.4)と無マルチ(No・ 2)の比較では,期間平均でマルチ区:22.9%,無マルチ区:21石2%とわずかにマルチ区の方が高く,植生下におい てもフイルムマルチによる水分保持の効果は認められる(7). 3.3.4 地温差によるマルチと植被の効果 植被のみの効果、および植被とフイルムによる効果を,二つの区の地温差と対照区の地温との関係でみた(Fig.3). 図申の直線は,それぞれ植生と無植生間の地温差と,対照区の地温(No.1,3)との関係を示している.たとえ ば,実線は,無マルチについて植被による地温差(No.2−No.1)と,無植生区の地温(No.1)との関係である.

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香川大学農学部学術報告 第34巻 第1号(1982) 20 同様に,1点鎖線ほマルチ区におりる植被単 独の効果(No.4−No.3)であり,破線ほマ ルチと植被の両者による効果(No.4−No.1) を意味する.また,それらの最高,最低,平 均の各直線のうち,太線は実測値の範囲を示 している. 最高地湿ではいずれの直線も,植え付け後, 対照区以上の地温上昇(1†3℃)がみられた が,その後の季節の進展にともなって,植被 による地温低下は次第に大きくなり,最大13 ℃にも達するようになる. 植被単独効果を無マルチとマルチでみると (実線と一・点鎖線),両区の繁茂程度は多少追 うが(Table2),植え付け直後は無マルチ区 (No.2−No.1)の方がマルチ区(No.4・−No 3)より地温差が約2℃ほど大きかった.し かし,地温が上昇するにともなって,両区の 羞ほ縮少し,38℃になるとその差ほ消滅する ようである. 次に,植披にフイルムマルチの影響が加わ った復合効果をみると,植え付け直後は鰍マ ルチの植被単独の場合とほぼ等しい地温の上 昇をみとめるが,地温が26℃を超えるころか ら対照区より低下し,その地温差は最大14℃ にも及んだ. 最低地温について−みると,砥被単独の効果 としては,無マルチの場合,植え付け直後両 区の地温差(No.2−No..1)は約2℃で,マル チの場合(No.4−No.3)におけるより大き かった.また,地温が無マルチ区では24℃, マルチ区では19℃になる■まで,植被はそれぞ れ,最低地温の低下を抑制する方向で影響し, しかも植被の保温作用は無マルチ区の方が顕 著であり,こうした傾向ほ寒冷紗の植生模型 に.よる実験結果とも一哉している.次に,植 .︶.・こ〓二こ一⊆t︶・J・≡−一ご主≡・ノL Soiltemper・ature,OC

Fig。3.Effectsof sweetpotato canopy and董ilm mulch on thesoiltemperaturedif董erencein each plot

Solidline(No.2−No.1)and chainline(No..4,No。3)

showtheeffectsofcanopyonthesoiltemperatureat

nomulchplot and thato董mulchedplotrespectively Dottedline(No√4−No。1)showsthee董fectsof canopy plus mulch一Plotsare the sameasinTable2.

被にフイルムマルチが加わった場合は,保温効果が特に大きく,植え付け直後は4℃をこえている・しかし・地温が 26℃になるころから,効果は消滅するようである. 最後に,平均地温についてみると,植被の単独の効果ほ,無マルチ,マルチとも全体的に地温低下として示され, 対照区の地温が上昇するとともに,植被による地温低下が大きくなり,無マルチにおいて特に顕著であった・植被に フイルムが加わった場合では,植被単独の場合より地温の低下は小さく,鰍マルチの植被によるより約2℃高かった・ また,地温が19∼23℃附近までは,保温効果を示しており,このことから,植被単独の場合に比較して,効果の出現 する対照区の地温(季節の推移に相当)が若干異なっている. 3.3.5 地温の日較差比によるフィルムマルチと植被の効果 フイルムマルチおよび植被の地温におよぼす効果について,半句平均の日較差比を用いて検討した・すなわち, 各区の地温どとに比較した日較差比の季節変化は,Fig・4のようになる・ なお,図申のNo.3/No.1はフイルムマルチの効果,No・2/No・1とNo・4/Noり3は植披の単独効果,そし

(9)

21 鈴木晴雄・広告功行・官本硬−・:畦面被覆の欲気象に関する研究(Ⅵ) てNo.4/Nol1は植被とマルチの複合 1・4 効果をそれぞれ意味する. これによると,マルチの効果を示す日 、 −・ ltヽ 較差比は期間中の平均で1・13となり・平 1い0 均的には裸地状態(No.1)よりわずか

○ に高い程度である・しかし・時期的な経 焉0.8

過をみると,5月6半句より9月3半句 出

。−−No3/Nol

、、\\・一一・−・No2/Nol l† ■ /ヽ▼ ′1

Y−…−XNo√4/No′3 ムーーANo4/Nol ご− までの臼較差比は10以上であり(最高 1.35),それ以後,10月3半句までは1.0 以下(最低0小83)となった.これは,前 報〈1)と同様,夏季に大きい傾向である. 次に,植被の効果をみると,無マルチ 区における植被の日較差比(No.2/Noハ 1)は,大豆の場合と同様,マルチ区 (No.4/No…3)より全体的に大きな値で ユl、 、 ¢ 叫 L ′一●・−−○叫/●・、○ 言 、ヨ三 三≡転至蒜 ・★−り・・,一!−・!二 、ニ.〆‘、 孟=温,○㌫t ⊥ 一 ■ I_..L_.」 ■ l・・⊥一」・l 56123 4 5612 3 61234561234561234

MayJun

Jul

Aug

Sep

Oct

Fig.4.SeasonalvariationsonTatios of diurnalrangeo董soil

temperatureat5cm depth

Plots are the same asin Table2.

経過している.これほ植生の繁茂皮が関 係していることを意味し,例えば,7月22日のエA∫ほ無マルチ区の方(No一ト2:228)が,マルチ区(Noい4:336) より小さく,したがって地温の日較差に対する影響は無マルチの方がより少ない.一方,マルチ区でほ,甘藷の生育 もはやく,それを反映して7月2半句より6半句までの日較差比の低下ば,マルチ区でより著しく現われている・ さらに,植被とフイルムマルチの複合効果(NJ.4/No・1)をみると,これほ他の日較差比の変化より多少小さい が,植被単独のもの(No.4/No.3)にほぼ平行的に変化している. −・方,椎被単独の効果を地被率と日較差比との関係で求めると,次式のようになる・ (γ=−095**) (6) (γ・= 090**) (7) (γ=−092*り (8) No.2/Noい1 j?=−134C+1・30 No.4//No.3 月=一1.10nC」−1・30 No.4/Noい1 月=−115C+1・28 ただし,月は各式の左端に示した各区間の地温日較差の比(地下5cm),Cは地被率を示す・

これによると,いずれの場合も植生の繁茂がすすむほど,すなわち地被率が10に近づくほど,地温の日較差比は

比例的に小さくなっていく.そして,植被単独の効果を,鰯マルチ,マルチ下で比較すると,全体的に無マルチ区で

の植被による地温の日較差比ほ,マルチ区のものより大きな値で経過(低下皮で約1小2倍)している・これは,植被

の地温日較比に及ぼす影響をみると,無マルチの方がマルチの場合より小さいことを示している・マルチと無マルチ

の地被率が同じであっても,こうした差異の生じる原因は,前報(1〉で述べたように,マルチ,無マルチ両区の土壌水

分に差のあることが大きいと考えられる・また,植被とフイルムマルチの復合効果ほ,マルチ,無マルチにおける植

被単独の効果の中間にあると思われる.

以上のように,甘藷の植被による被覆の効果をみてきたが,茎其の繁茂が水平的であることから,大豆の場合に比

べて繁茂皮と微気象要因との関連個は明らかでない点が多い.しかし,フイルムマルチと植被が熟収支に及ぼす影

響,地温差並びに地温の日較差比からみたマルチの効果については,これまでの実験結果と基本的に−・致し■ている・

今後ほ,甘藷等のような,マルチ潮来を微気象要因との開運でとらいにくい栽培作物について,さらに植被やフイ

ルムマルチの影響を定温的に明らかにし,畦面被覆栽培を微気象的に検討していきたい. 引 用 文 献 (2)鈴木晴雄・桜井英二小官本硬一・:畦面被覆の欲気 象に関する研究,Ⅳ寒冷紗の遮蔽と黒色ポリエチ レンフィルムの被覆による地温効果,農業気象, 35,243−248,1980. (1)鈴木晴雄・宮本硬−‥松尾直幸:畦面被覆の微気 象に関する研究,Ⅴ大豆の植生と黒色有孔ポリエ チレンフィルムが地温に及ぼす影響,恩威気象 (印刷中).

(10)

香川大学農学部学術報告 欝34巻 第1号(1982) 22 (3)高松地方気象台編集:香川県気象月表,昭和55年 6月−10月,1979. (4)Rosenberg,N.J.:Microclimaie,AWiley−Inteト SCience Publication,26−31,1974. (5)富士岡義一‥松田松ニ,市村一男・中山敬一‥山 本雄二郎:水稲の生育に伴う徽気象要素とE−T について(1ト蒸散藍と繁茂度との関係−・,鹿土論 別冊,10,36−42,1965. (6)小宮苔之助・石倉秀次:農業気象,12ト132,束 京,地人啓館,1961 (7)犬山 茂:グレインソルガムの早ばつ軽減対策と してのマルチの効果,日作紀,50,217−222, 1981. (1982年5月31日受理)

参照

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