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提供 : サノフィ株式会社 座談会 心血管二次予防における LDL コレステロール管理 : Treat to Target vs. Fire and Forget 出席者 座長 木村一雄先生 伊苅裕二先生 横浜市立大学付属市民総合医療センター心臓血管センター教授 東海大学医学部内科学系循環器内科教授

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Academic year: 2021

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(1)

提供 : サノフィ株式会社

座 談 会

出席者

木村 一雄

先生

伊苅 裕二

先生

安田  聡

先生 横浜市立大学付属市民総合医療センター 心臓血管センター教授 座 長 東海大学医学部 内科学系 循環器内科 教授 国立循環器病研究センター 心臓血管内科 部門長

心血管二次予防におけるLDLコレステロール

(2)

木村 動脈疾患におけるスタチンの有用性については豊富なエビデンスが存 在しています。スタチンは急性期でも慢性期でも効果があり、脂質低下作用以 外にも多面的な作用があるといわれています。最近非常にインパクトのあった ことは2013年のACC/AHA の治療ガイドラインで、リスクのある患者さんに は目標値を定めず強力なスタチンを投与する Fire and Forget という概念が提 唱されたことです。これに対して目標値を設定して、そこに向かって治療をし ていこうという従来からの Treat to Target という考え方があり、この2つの考え方をめぐって多くの議 論が展開されています。ただ、LDL-C で 70mg あるいは100mgといった目標値を設定してストロングス タチンを使って治療しても、目標値に到達しないことが多いのも事実です。最近の研究ではLDL-C を低 下させれば一次予防、二次予防いずれも心血管イベントは減少することが証明されています(図1)。今 日は脂質低下療法によって心血管イベントの二次予防の可能性についてお二人の先生にお話をうかがい たいと思います。まず伊苅先生からお願いします。

伊苅 私は Fire and Forget 派として呼ばれることが多いのですが、とにかくLDL-C を下げた方がいい

という Fire の考え方には大賛成です。この概念は2004年に発表された ASCOTとWOSCOPS の論文を 比較したものをきっかけとしていますが、目標値の達成率は前者では70%で後者は 20%程度にも関わら ず、主要エンドポイントはどちらも3割程度下がり総死亡も減少したという結果でした。

LDLは下げれば下げるほど心血管イベントは減少する

(3)

● ● ●● ● ● 40 0 5 10 15 20 25 30 (%) 60 80 100 120 140 160 180 200 (mg/dl) 心血管イ スタチン内服により達成されたLDL-C値 JUPITER-Ros20 JUPITER-pbo SHARP-S20+ez SHARP-pbo ASCOT-rx ALLIANCE-rx PROVE-IT-Prv40CARDS-pbo HPS-pbo AFCAPS-rx MEGA-prv10-20WOSCOPS-rx MEGA-pbo ASCOT-pbo AFCAPS-pboWOSCOPS-pbo ALLIANCE-pbo 4S-Rx LIPID-pbo MIRACL-pbo 4S-pbo POSCH-con TNT-Atv10 LIPID-rx CARE-pbo CARDS-Atv10PROVE-IT-Atv80 TNT-Atv80 HPS-rx MIRACL-Atv80 A to Z-S40-80 A to Z-S20 POSCH-surg CARE-rx IDEAL-Sim20-40 IDEAL-Atv80

一次予防

一次予防

二次予防

二次予防

Secondary prevention Secondary prevention Primary prevention Primary prevention

スタチンによる LDL-C 低下ならびに心血管イベント抑制効果

図 1

一次予防、二次予防いずれも LDL を下げれば心血管イベントは減少する

(4)

伊苅 脂質低下療法の目標値をLDL-Cで 100mg とした場合、本当にそれで二 次予防が可能なのでしょうか。私の経験した 82 歳のACSの患者さんの場合、 LDL が当初 123mg/dl あったので 61mg/dl まで下げましたが、5か月後には また下壁のST上昇を認めてしまいました。このようにガイドラインよりもか なり厳格な脂質低下療法を行ったにもかかわらず再発してしまったこともある ので本当に 100mg/dl という目標値でいいのかという疑問があります。Fire and Forget ではなく、Fire

and Don’t Forget です。やはり患者さんに治療の効果を納得していただくためにはもっと下げる必要が

あるのではないかと思います。ACC/AHA のガイドラインにもあるように、ACSのようなハイリスク患者 さんに対しては、たとえば LDL-C が 78mg/dl 程度の人であってもさらに下げることによって心血管イベ ントを減少させることができるという考え方に私は賛成です。  我々も脂質低下療法を行った自験例 1,000 例についてLDL-C値と二次予防効果の関係を検討しました。治療 前のLDL-C値は平均 116mg/dl で、全体の3分の2の症例が治療により100mg/dl 以下に下がりました。日本のガ イドラインに従うと治療前のLDL-C値が 100mg/dl 未満では脂質低下療法は行えないのですが、治療後 100mg/ dl 以下に低下しその後も治療を続けた群、治療を継続できなかった群、治療を中断してしまった群で予後を比較 すると治療できなかった群と中断群の予後は同じでしたが、治療を継続してさらに LDL-C を減少させた群では心 筋梗塞、脳梗塞、再治療が少ないという結果が得られました。CTT Collaboration でも示されている通り、治療前 のLDL-C 値に関わらず、LDL-Cを減少させることによって心血管イベントは減らせると私は考えています(図2)

急性冠症候群(ACS)などの

ハイリスク患者ではとにかく LDL-C 値を下げる

伊苅 裕二

先生

(5)

<2 mmol/L 元のLDL-C値 ≥2 to <2·5 mmol/L ≥2·5 to <3·0 mmol/L ≥3 to <3·5 mmol/L ≥3·5 mmol/L Total 910 (4·1%) 1528 (3·6%) 1866 (3·3%) 2007 (3·2%) 4508 (3·0%) 10 973 (3·2%) 1012 (4·6%) 1729 (4·2%) 2225 (4·0%) 2454 (4·0%) 5736 (3·9%) 13350 (4·0%) 0·78 (0·61−0·99) 0·77 (0·67−0·89) 0·77 (0·70−0·85) 0·76 (0·70−0·82) 0·80 (0·76−0·83) 0·78 (0·76−0·80) χ2 1=1·08 (p=0·3) 0·45 0·75 1 1·3 Control/less better Statin/more better 99% or 95% CI

治療前の LDL-C 値に関わらず LDL-C 減少による CV 減少率の効果は得られる

Cholesterol Treatment Trialists’ Collaboration. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet 2010; 376: 1670-1681

スタチンによるLDL-C値を1mmol/L(約38.6mg/dL)下げると、

元のLDL-C値に関係なく主要心血管イベントは抑制できる

(6)

伊苅 結論を言えば、心血管疾患二次予防ではスタチンを全例に処方して LDL-Cを下げることが重要 だと考えています。スタチンを使ってできるだけ LDL-Cを下げた群と下がらなかった群を比較すると LDL-Cの低下と心血管イベント二次予防効果は相関します。スタチンを使ってより強力に下げた群にお いて最も二次予防効果がでています。やはり、Bigger reduction is better だと私は考えています。

 しかし、現行の日本のガイドラインではもともとLDL-Cが 100mg/dl 以下の人にはスタチンが使えない ことになります。そうしますと医者は意図があって処方しているにも関わらず患者さんが服用を続けてく れません。「私は正常値で副作用も心配だから中止してください」と言われて続けられなかったことがあ りました。こういう経験をするとLDL - C管理目標値についてのガイドラインの見直しも必要なのではな いかと感じます。

心血管二次予防では LDL-C をどれだけ下げるかが重要

(7)

木村 ありがとうございました。それでは次に安田先生にお話いただきたい と思います。 安田 私は Treat to Target の立場から話をさせていただきます。  動脈硬化の形成進展に関与する因子は喫煙、血糖値、高血圧、炎症と多岐にわ たりますが、その治療法として確立しているのが脂質代謝異常に対する介入であ ることはいうまでもありません。脂質と冠動脈イベントで非常に重要な情報を提供 してくれたのが冠動脈イメージングです。冠動脈イメージングによって脂質代謝改善薬の効果が目に見える形 で提供されるようになりました。これまで行われた数多くの介入試験によりスタチンは心血管イベントの一次、 二次予防において全体としてLDL-Cを20 〜 40%低下させて心血管イベントの発生率を低下させることが報 告されています。とくにハイリスク例においてスタチンは二次予防に有用性があるとされてきました。例えば SATURN 研究は高用量のスタチンで LDLを70mg/dl 以下まで下げた結果、プラークの進展率を退縮させる ことができたという研究です。  Treat to Target の立場から脂質低下療法を考えたとき、伊苅先生も現況目標値の問題点を指摘されまし たが、私は何らかの目標値を設定して、その目標値に向かって治療していくことが患者さんのアドヒアランス にもつながりよい結果につながるのではないかと考えています。一方、二次予防ではスタチンを使用してい るにも関わらず約 20%の確率で再イベントが起こります。スタチンの残存リスクともいわれていますが、当然

安田  聡

先生

目標値を定め、それを目指すことでアドヒアランスも向上

(8)

安田 2014 年に発表された IMPROVE-IT は LDL - Cを強力に低下させることで心血管イベントの二次予 防効果が高かったことを示しています。この研究ではLDL-Cが50〜125mg/dl の ACS 患者をスタチン使 用群とスタチン+エゼチミブ使用群に分けて二次予防効果を比較しました。その結果、スタチン使用群 では 69.9mg/dl、スタチン + エゼチミブ群では 53.2mg/dl まで LDL-Cが下がり、心血管イベントは有意 に後者の方が低かったのです。  この研究により、目標値を設定して治療すべきだという Treat to Target がさらにサポートされること になったわけですが、一方でスタチンによる心血管イベント抑制には限界があるともいわれており、残存 リスクという言葉で表現されています。スタチンでコレステロールを低下させると SREBP2 が活性化さ れ LDL 受容体が産生されますが、同時に PCSK9という蛋白の産生を促進し、それを介したフィードバッ ク経路が動き出します。PCSK9蛋白の産生は LDL 受容体を減少させ、LDL-C値が増加するというメカ ニズムですが(図3)、このような現象を認めるケースは実臨床では決して少なくありません。

スタチン残存リスクのひとつとしての PCSK9蛋白

(9)

アトロバスタチン投与時の LDL受容体と PCSK9

アトロバスタチン投与により血清 PCSK9 値は増加する

6週  Costet et al1) 投与期間 文 献  Careskey et al12週 2) 16週  Welder et al3) 10 20 30 40 50 60 70 80 10 20 30 40 50 (mg/day) アストロバスタチン用量 (%) アストロバスタチン用量 血 清 PCSK9の増加率 血清PCSK9の増加率

1)Careskey HE, Davis RA, Alborn WE, Troutt JS, Cao G, Konrad RJ: Atorvastatin increases human serum levels of proprotein convertase subtilisin/kexin type 9. J Lipid Res 2008, 49:394-398.

2)Welder G, Zineh I, Pacanowski MA, Troutt JS, Cao G, Konrad RJ: High-dose atorvastatin causes a rapid sustained increase in human serum PCSK9 and disrupts its correlation with LDL cholesterol. J Lipid Res 2010, 51:2714-21.

3)Costet P, Hoffmann MM, Cariou B, Guyomarc ’ h Delasalle B, Konrad T, Winkler K: Plasma PCSK9 is increased by fenofibrate and atorvastatin in a non-additive fashion in diabetic patients. Atherosclerosis 2010, 212:246-51.

These results summarize the available data regarding the effect of atorvastatin on human serum PCSK9 levels in controlled clinical trials in which endpoint PCSK9 levels could be compared to baseline levels.

Treatment with increasing doses of atorvastatin resulted in dose-dependent increases in the levels of circulating PCSK9 protein.

(10)

安田 今、PCSK 9は新たな創薬のターゲットとして非常に注目されています。冠動脈疾患の最もハ イリスクな症例は家族性高コレステロール血症(FH)ですが、FH の患者さんには20 年ほど前より LDL アフェレーシスが臨床応用されています。LDLアフェレーシスを行うと FH の患者さんにおいて PCSK9の値を下げることが最近の研究により明らかにされました。それによると PCSK9機能喪失型 の変異において心血管イベントが少ないことを示していますが(図 4)、LDL アフェレーシスの1つの 側面として PCSK9を下げて LDL を低下させ、結果として心血管イベントを抑制させることが期待で きるのではないかと考えています。  私は、Treat to Target の観点からは、特に再発を繰り返す、あるいは多血管疾患の症例などのハイ リスク例二次予防における脂質低下療法においては LDL目標値を50mg/dl 程度とし、スタチンはもち ろん、スタチン以外の脂質低下療法も選択肢に加え、積極的に管理していくべきと考えています。

Treat to Target 戦略への新たな期待

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0 0 50 100 150 200 250 300 (mg/dL) (mg/dL) 10 20 30 (%) PCSK9の機能喪失変異ない場合のLDL-C値 (N=3278) 0 0 50 100 150 200 250 300 10 20 30 (%) PCSK9142XあるいはPCSK9679Xの機能喪失変異ある 場合のLDL-C値 PCSK9142XあるいはPCSK9679Xの機能喪失 イベント発症率(%) (N=85) P=0.008 あり なし 0 4 8 12

PCSK9機能喪失型変異における心血管イベント抑制

Cohen JC, et al. Sequence Variations in PCSK9, Low LDL, and Protection against Coronary Heart Disease. N Engl J Med 2006; 354: 1264-1272

図 4

PCSK9の機能喪失者ではLDL-C値が低く、心血管イベント発症率も低い

PCSK9の機能喪失者ではLDL-C値が低く、心血管イベント発症率も低い

(12)

木村 有難うございました。お二人の意見は Fire and Forget であろうが Treat to Target であろう が、心血管疾患の二次予防においてはより強力な脂質低下療法を行うということでは一致していま す。LDL-Cの減少率であれ絶対値であれ、いずれにしても LDL-C 値をもっと下げなければならない ということです。  強力なスタチン療法があるにも関わらず、下げ切れていない残存リスクのある患者さんがまだまだ いらっしゃるということです。スタチンをもっと上手く使いこなすことによってこれをさらに下げる ことは可能かもしれませんが、ゼロに出来るかというとそれは非常に難しい。脂質低下療法のファー ストラインはスタチンというのは変わらなくても、IMPROVE - IT でエビデンスの出たエゼチミブの ようなスタチン以外の脂質低下療法や、今日お話しの出た PCSK9 蛋白という新たな標的も注目され てくるでしょう。 伊苅 単剤の増量は副作用のリスクがありますので、これからはコンビネーションという時代がやっ てくるように思います。 安田 とくにハイリスク症例に関しては、アンメットなニーズがまだ残されていると思いますし、コ ンビネーション療法がもたらすかもしれない LDL-C で 50mg/dl 以下という世界がどうなるのか非常 に興味があります。 木村 本日は有難うございました。

いずれのアプローチでもLDL-Cを管理することが重要

参照

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