ストーマケア講座
~ストーマケア基礎編~
松江赤十字病院 皮膚・排泄ケア認定看護師 石飛 仁美 2012.11.14.15 第17回 地域医療勉強会ストーマケア その昔
• 灌注排便法(洗腸療法)が主流(18世紀頃) • べた貼り型装具(1965年頃:ラパック) • パウチを洗う • ドライヤーで乾燥 • 装具交換=医行為ストーマケア 現在
• 装具類の変遷 ★べた貼り型から皮膚保護材(1980年頃) ★排泄口の変化 ★ガス抜きフィルター内臓 ★消臭潤滑剤 • 装具交換≒医行為(平成23年6月) • ストーマサイトマーキング加算:450点 (平成24年4月)ストーマサイトマーキング
セルフケアしやすく合併症を起こしにくい位置に
ストーマを造設することで、オストメイトのQOLの向上を はかる
肌に接着したストーマ装具の交換については、 原則として医行為ではないと考えられる行為と して明示されていないため、介護現場では 「医行為」に該当するものと考えられている。 介護職がストーマ装具交換が行えない
「ストーマ装具の交換」:医行為
ストーマ装具の交換について
「医行為」からはずされた
平成23年6月5日
• 病状が不安定であること等により専門的な管理 が必要な場合には医行為であるとされる場合が ある。 • 業として行う場合には実施者に対して一定の研 修や訓練が行われることが望ましい。 • 看護職員による実施計画が立てられている場合 は、具体的な手技や方法をその計画に基づいて 行うと共に、その結果について報告、相談するこ とにより密接な連携を図るべきである。 介護職がストーマ装具交換が行えない
ストーマ装具交換
大腸がん治療ガイドライン
【2010】 緩和医療 • 緩和医療とは、がんにかかわる精神的、身体 的さまざまな症状に対する緩和治療の総称 である。 • 緩和医療とは、がんの診断がついた時点か ら終末期までを包括する医療であり、病期や 症状により、実施すべき内容が異なる。大腸がん治療ガイドライン
【2010】 • がん治療は症状緩和が図られた時点で行う ことが原則であり、外科治療や化学療法の当 初から緩和医療を導入すべきである。 • 大腸がん終末期におけるQOL向上のための 緩和医療には以下のものが含まれる。 ⑴疼痛緩和 ⑵外科治療 ⑶化学療法 ⑷放射線療法 ⑸精神症状に対するカウンセリング⑵外科治療
コメント • 疼痛の原因となる責任病巣に対する姑息的 切除、責任病巣のバイパス手術、人工肛門 造設が有効なことがある。 • 腸管閉塞による経口摂取不能状態の改善や 出血のコントロールを目的として、バイパス手 術、人工肛門造設術を考慮する。ストーマ(人工肛門)とは何か
ストーマとは 消化管や尿路を人為的に体外に誘導して 造設した開放孔である (前者を消化管ストーマ、後者を尿路ストーマという。 広義にはその他に生じた開放孔を含む。) 日本ストーマリハビリテーション学用語集ストーマの分類:消化器系
期間による分類 永久的ストーマ 一時的ストーマ 造設部位・臓器による 分類 結腸ストーマ S状結腸ストーマ 上行結腸ストーマ 横行結腸ストーマ 下行結腸ストーマ 回腸ストーマ その他のストーマ 粘液瘻 食道瘻 胃瘻 など 開口部の数による分類 単孔式ストーマ(エンドストーマ) 双孔式ストーマ 係蹄式ストーマ(ループストーマ) 離端式ストーマ ・ 二連銃式ストーマ ・ 完全分離式ストーマ消化管ストーマ造設を必要とする疾患
永久ストーマ • 骨盤内悪性腫瘍 (原発性、転移性) • 骨盤内良性腫瘍 (炎症、狭窄、機能不全、良性腫瘍) • 全結腸に及ぶ疾患 (家族性大腸腺腫症、潰瘍性大腸炎)消化管ストーマ造設を必要とする疾患
一時的ストーマ • 直腸などの大腸切除後縫合不全予防 • 全身状態不良による一期的腸管吻合が困難な場合 • 大腸切除後の縫合不全後 • 直腸膣瘻、難治性痔瘻、肛門の外傷 • 大腸癌によるイレウス • 鎖肛、先天性巨大結腸症などのイレウス時ストーマの分類:泌尿器系
尿の誘導される臓器にカテーテル を留置する方法 腎瘻 膀胱瘻 尿管を腹壁に吻合して尿を体外に 排泄する方法 尿管皮膚瘻 ・両側尿管皮膚瘻 ・両側尿管皮膚瘻(ダブルストーマ) ・一側合流尿管皮膚瘻 腸管に尿管を吻合し腸管の一端を 腹壁に吻合してストーマから尿を 排泄する方法 回腸導管 結腸導管 禁性尿路ストーマ コックパウチ マインツパウチ インディアナパウチ ストーマを造設しない尿路変更術 自然排尿型代用膀胱尿路変向術を必要とする目的
• 尿路の悪性腫瘍などにより膀胱、尿管など尿路の 一部を取り除くとき(膀胱癌、尿路周囲臓器の悪性 腫瘍が尿路まで進展したとき) • 尿路の一部に何らかの閉塞があり腎機能を温存す る場合(隣接臓器の悪性腫瘍による尿管閉塞) • 二分脊椎など先天性疾患の結果、膀胱機能に異常 をきたし、尿失禁などQOLが悪い状態を改善させる 場合ストーマの分類:泌尿器系
ストーマの分類:泌尿器系
同側並列 尿管皮膚瘻 一側合流 尿管皮膚瘻 両側尿管皮膚瘻ストーマの分類:泌尿器系
消化器系ストーマ 尿路系ストーマ 結腸ストーマ 回腸ストーマ 性状 有形 泥状~水様 水様 量 150~ 200g 1000~ 2500ml 1500~ 2500ml pH 6.0~7.0 7.0~8.0 5.0~7.0 排泄間隔 2~3回/日 断続的 持続的 面板の溶解 溶解しにくい 溶解しやすい 溶解しやすい 皮膚障害 急性的経過 発赤、びらん、潰瘍 慢性的経過 浸軟、PEH
排泄物の特徴
ストーマを保有するということ
• 排泄経路が腹壁に変わる (中途障害) • 排泄の自己コントロールが困難になる (失禁状態) • 排泄行動そのものを大きく変更せざるを得な いため、身体的・精神的・社会的苦痛を体験 することになるストーマを保有するということ
• 患者はがん告知と同時にストーマ造設の説 明を受けている • ほとんどの患者はストーマをイメージ出来て いないのが現状であるどんなものを
着けるのでしょう
か?
実物を
持ってきて
見せてください
ストーマリハビリテーションとは
ストーマと合併症の障害を克服して自立 するだけでなく、ストーマ保有者の心身 および社会機能を回復させること、また それを促進する技術と方法 (ストーマリハビリテーション用語集より)リハビリテーションの概念
リハビリテーションの語源 「re:再び」 「habilis:適した、ふさわしい」 「ation:すること」 人間らしく生きる権利の回復 全人的復権 再びふさわしい状態にすることリハビリテーションとは
身体的、精神的、かつまた社会的に最も適した 機能水準の達成を可能にすることによって、各 個人が自らの人生を改革していくための手段を 獲得していくことを目指し、かつまた時間を限定 したプロセスであるストーマリハビリテーションの特徴
① 排泄障害
② ボディイメージの障害 ③ 中途障害
障害の概念
障害とは、身体や精神の機能低下、異常、喪失 あるいは身体の一部の欠損など心身の機能レ ベルの概念である。 身体障害:運動機能障害、感覚機能 障害、内蔵機能障害 精神障害:精神発達遅延、精神疾患疾患と障害の構造
障害 社会的不利 handicap 能力障害 disability 機能・形態障害 impairment 疾患 Disease 一次的 二次的 三次的 やまい(体験としての障害) illness 患者本人の 主観への反映 客観的事実機能・形態障害
• 障害の一次的レベルであり、直接疾患から生 じてくる • 生体学レベルでとらえた障害 • 能力障害、社会的不利の原因となる、または その可能性がある • 機能(身体的・精神的な)または形態の何ら かの異常をいう ストーマ造設能力障害
• 障害の二次的レベルであり、機能・形態障害 から生じてくる • 人間個人のレベルでとらえた障害である • 与えられた地域的・文化的条件下で通常当 然行うことができると考えられる行為を実用 性を持って行う能力の制限あるいは喪失をい う 肛門から便がでない おなかから便がでる社会的不利
• 障害の三次的レベルである • 疾患、機能・形態障害、能力障害から生じてく る • 社会的存在としての人間のレベルでとらえた 障害である • 疾患の結果として、かつて有していた、あるい は当然保障されるべき基本的人権の行使が 制約または妨げられ、正当な社会的役割を 果たすことができないことをいう 臭いが気になる 排便時間がばらばらである体験としての障害
• 3つのレベルの客観的障害に直面した本人 が、社会の「相対的・比較的価値」観の影響 の下で、自分自身の価値に否定的評価を与 えること 仕事ができなくなった 私はもう駄目だ・・・ 何もできなくなった疾患と障害の構造
障害 臭いが気になる 排泄不規則 handicap 肛門から便 が出ない disability ストーマ造設 impairment 直腸癌 Disease 一次的 二次的 三次的 自分は障害者だ もう駄目だ、仕事もできない illness 患者本人の 主観への反映 客観的事実ノーマライゼーション7ヵ年戦略
① 地域で共に生活するために ② 社会的自立を促進するために ③ バリアフリー化を促進するために ④ 生活の質(QOL)の向上を目指して ⑤ 安全な暮らしを確保するために ⑥ 心のバリアを取り除くために ⑦ 我が国にふさわしい国際協力・国際交流 平成8年~バリアフリー
障害の種類と程度、発達段階、役割遂行上の 障害、体験としての障害等々、障害をもつすべ ての人々にとって、活動と社会参加を促進する ことにある。 バリアのない社会の実現は、障害者の自由で その人らしい活動を支えるために社会が果たす べき課題である。バリアフリー
ストーマ医療に携わる者は、ストーマ保有者と 関わるあらゆる場で、反応の中に観察できるで あろうストーマへの思い、ケアに取り組む態度 などから「心のバリアフリー」 につなげる関わ りを心がけることが重要である インフォームドコンセント 正しい知識や技術の獲得 教育・指導 適切な情報提供オストメイトの権利章典(1976)
・手術前のカウンセリングを受ける権利 ・適切な位置にストーマを持つ権利 ・よいストーマを持つ権利 ・手術後に熟練されたナーシングケアを受ける権利 ・精神的な援助を受ける権利 ・個々に応じた指導を受ける権利 ・装具を入手する方法を教えられる権利 ・地域の資源についての情報を知らされる権利 ・退院後のフォローアップと障害にわたる管理指導などを受ける 権利 ・ヘルスケアの専門職員によるチーム指導を受ける権利ストーマリハビリテーションの目標
ストーマを持つという中途障害を受容し、心身 共に支障のない生活を送ることが出来るよう に援助する。 健康とは、肉体的・精神的及び社会的に完全に調和 のとれた状態であって、単に病気でないとか身体が 弱くないということではない。 (1994.WHO 憲章前文)ストーマリハビリテーションの特徴
• 術前から術後に起こりうる障害の程度・ 種類が予測出来る
受容の5段階
① 手術部位の外観を受け入れることができる ② 手術部位に触れ、その変化を探ることがで きる ③ 障害部位のケア方法を学習する必要性が認 識できる ④ 日常生活の中で自立心を高め、生活能力の 啓発が出来る ⑤ 新しいボディイメージを再統合し、生活様式 の変化に適応できるストーマケア
ストーマ局所の皮膚が清潔に保たれ、正常な 皮膚の機能が維持できること 医療者には ストーマ局所の清潔保持の技術と 装具装着の技術の熟達が求められるストーマ合併症
• ストーマ壊死・脱落 • 出血 • 粘膜皮膚離開 • 陥没 • 皮膚障害 • ストーマ傍ヘルニア • 脱出 • ストーマ周囲膿瘍・瘻孔 • 狭窄 • 粘膜皮膚移植 • ストーマ粘膜の過形成 • ストーマ周囲静脈瘤 • 偽上皮腫性肥厚ストーマ壊死
• 腸管の過緊張 • 腸間膜の過進展、捻転、腹壁の圧迫 • 密な縫合 • ストーマ造設する際の皮膚切開のサイズが 小さいことなどによる血行障害 • 動脈硬化、肥満、肝硬変出 血
• 不充分な止血 • 装具による損傷
粘膜皮膚離開
• 感染 • 血行障害 • 引き上げた腸管径に対し腹壁に開けた孔 が大きい • ステロイド使用や低栄養状態• 造設時からストーマの高さが不足 • 循環障害 • 壊死 • 脱落 • 腸管と腹壁との固定不足
陥 没
皮膚障害
• ストーマ位置不良 • 皺・瘢痕 • 排泄物の性状 • スキンケア手技 • ストーマ装具 • 皮膚の脆弱化 などさまざまストーマ傍ヘルニア
• 晩期合併症で頻度が最も多い • 不適切なマーキング(経腹直筋でない) • 過大な筋膜切開 • 脆弱な腹壁 • 肥満・体重増加 • ステロイド使用 • 腹壁内圧上昇 (慢性の咳そう・前立腺肥大・便秘)脱 出
• 晩期合併症の一つ
• 年齢との間に密接な関連性あり • 造設部位(横行結腸が多い)
ストーマ周囲膿瘍
• 汚染した術野での手術操作 • 肥満患者 • 易感染性患者 • 糖尿病 • 炎症性腸疾患(UC、クローン) • ストーマの走行を考慮せず坐薬やカテーテル 挿入した場合狭 窄
• 腹壁を貫くストーマ孔が筋層、皮膚いずれか の層で腸管径に比べ小さい • 肥満で皮下脂肪が厚い • 癒着や癌浸潤 • ストーマ壊死や粘膜皮膚接合部の離開後粘膜皮膚移植
• 晩期合併症の一つ • 腸管粘膜が縫合糸により皮膚に運ばれる • 抜糸の遅れによる粘膜組織の迷入 • 粘膜皮膚接合部に隣接している皮膚への便 の刺激 • ストーマ周囲皮膚に発生した糜爛面に粘膜 組織が迷入ストーマ粘膜過形成
• ストーマ粘膜と装具との接触の繰り返し • ストーマ脱出があると発生しやすい
静脈瘤
• 肝硬変、肝転移などによる門脈圧亢進 • 易出血性