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Fri. アダカラム治療が解明してきた CMV 感染の機序 講演 1 潰瘍性大腸炎における CMV 再活性化と GMA の役割 サイトメガロウイルス ( C M V ) 感染は潰瘍性大腸炎 ( U C) の増悪因子であり ステロイドがウイルスの再活性化を促進することが知られている

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Academic year: 2021

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潰瘍性大腸炎における

CMV再活性化とGMAの役割

1

講 演

 サイトメガロウイルス(CMV)感染は潰瘍性大腸炎(UC)の増悪因子であり、ステ ロイドがウイルスの再活性化を促進することが知られている。今回、ステロイド非投 与の早期 UC 患者でもCMV 再活性化が高頻度に認められることが明らかになった。 このため、CMV 感染を増悪させない治療法が求められ、顆粒球吸着療法(GMA)の 有用性を検討した結果、CMV 陽性 UC においても優れた効果を発揮することが明ら かになった。早期 UC における CMV 再活性化を抑制、寛解導入を促進するために は、GMAをステロイド治療に先行して実施する治療戦略が望ましい。

福知 工

先生 大阪府済生会中津病院 消化器内科  サイトメガロウイルス(CMV)の構造と特性を【図1】に示す。  日本では成人の約 70%が CMV に不顕性感染しており、 通常は潜伏感染の状態で推移するが、種々の免疫力低下を きたす条件下で増殖、再活性化する。潰瘍性大腸炎(UC)に おいては、ステロイドが CMVを再活性化させ深掘れ潰瘍と なり、UC を難治化させることが知られている。ところが近 年、炎症組織のウイルスを高精度に検出しうるPCR 法によ る研究が進み、UC においてCMVの再活性化が起こるの は、必ずしもステロイド投与後の深掘れ潰瘍を有するUC だ けではないことが明らかになっている。しかし、UCにおいて いつからCMVの再活性化が起こっているかは判っていない。  今回、当院で実施したステロイド非投与の活動期 UC 患者 を対象とした調査によれば、炎症粘膜におけるCMV 陽性率 は 29.4%(15/51例)であった。また、CMV 再活性化に関 係する背景因子を検討したところ、意外にもCMV 陽性群は 初発症例が多かった。その為、罹病期間においてもCMV 陰 性群との差が有意な結果となった。よって、CMVの再活性 化は、ステロイドが投与されていない早期患者でも相当の頻 度で起こっていると考えられる。また、CMV 再活性化を伴 うUC では「深掘れ潰瘍」と呼ばれる高度な病変が多発する というのが従来の定説であるが、この調査で高度な潰瘍が 認められたのは CMV 陽性15 例中1例にすぎず、ほとんど は【図2】に示すように、小潰瘍やびらんを呈する症例であり、 内視鏡像で CMV 陽性、陰性を鑑別することは困難であった。  このように早期 UC でもCMV 再活性化が高頻度に起こっ ているとしたら、それに気付かずにステロイドを投与して病

早期UC 症例の30%で CMVが再活性化

図1

図2

(3)

状の増悪をきたす恐れがあり、CMV 感染を考慮した治療法 の構築が必要である。  なお、CMV 再活性化を抑制する治療の選択肢として抗ウ イルス薬であるガンシクロビルがあり、CMV 陽性の難治性 UC をガンシクロビルで治療した成績が報告されている。効 果はおおむね良好であるが、添付文書に記載されているよう に副作用発現率が 30%以上と高く、安全性に対する懸念が 払拭できない。そこで CMV 再活性化に悪影響を及ぼさない 治療法として、顆粒球吸着療法(GMA)の可能性に着目した。  GMA は末梢血を酢酸セルロース製ビーズが充填されてい るカラムに通過させて顆粒球、単球を選択的に吸着除去する ことにより炎症活性化を抑制する体外循環療法である。使 用薬剤が抗凝固薬のみで、顆粒球、単球の除去量も生理的 範囲内であり、治療中、治療後の合併症が少ないことが知ら れている。問題点として寛解導入に比較的長時間を要するこ とが指摘されてきたが、数年前から週1回施行する従来法に 代えて週2回の治療を数週間継続する集中治療が行われる ようになり、GMAの早期寛解率が著明に向上した。

集中治療によりGMAの治療成績が向上

CMV 陽性の早期UCに対するGMAの有効性

図3

 ステロイドを含む免疫抑制治療に抵抗性の UC における GMAの有効性について【図3】に示す。CMV 陽性例に対して は、まず抗ウイルス薬を投与し、寛解に至らなかったものの CMV 活性が安定化した症例に対し GMAを行ったところ、

図4

図5

約半数が寛解導入した。この研究の主な対象はステロイド 治療に抵抗性の UC 患者であったが、前述のようにステロイ ド非投与の早期 UC でもCMV 陽性例は相当の頻度で存在 する。そこで今回、ステロイド非投与の UC51例(CMV 陽性 15 例、CMV 陰性 36 例)を対象に GMA による集中治療の 有効性と安全性を検討した。GMA 及び治療効果判定のスケ ジュールを【図4】に示す。  CMV 陽性群、同陰性群に対する GMA の寛解導入率を 【図5】に示す。両群とも2週後にはほぼ半数、6週以降約 70%が寛解導入された。

(4)

4  CMV 陽性群15 例の転帰を【表1】に示す。寛解導入されな かった4例では治療後もCMVの活性が高く大腸粘膜の炎症 も残存していたのに対し、寛解に至った11例では CMV 再活 性化が抑制され、粘膜病変もほぼ治癒していた。 

GMA を先行実施する治療戦略を

図6

表1

図7

 ステロイド非投与の CMV 陽性UCに対するGMA 集中治 療は、CMV 陰性UCと同等の良好な効果を示したが、これは GMA が CMVの再活性化を増悪させないためである。その 奏効機序として、第一に、GMAは顆粒球、単球を選択的に吸 着除去し、CMVの再活性化を抑制するリンパ球をほとんど 除去しないことがあげられる。また、CMVは単球に潜伏して いるとみられることから、細胞吸着の選択性が CMVの除去 にも役立った可能性がある。さらに、単球などから放出される 炎症性サイトカインであるTNF-αはUC の炎症を増悪させる だけでなく、CMVの再活性化も促進するが、GMAは単球の TNF-α産生能を低下させることが報告されており、その作用 もCMV 陽性UC の治療に寄与すると考えられる。  現在、UC の治療指針(難治性炎症性腸管障害に関する調 査研究班 平成 23 年度 総括・分担研究報告書)は初期治療 薬として5-ASA 製剤の使用を推奨し、治療強化が必要な場 合の第二薬にステロイドを位置付けている。しかし、ステロイ ド非投与の発症後早期のUC患者でもCMVの再活性化が高 頻度でみられることを考えると、CMV感染を増悪させるステ ロイドの使用には慎重さが求められ、早い段階からCMVの 再活性化を懸念した治療法の組み立てが非常に肝要である。 炎症粘膜におけるCMV 再活性化は PCR 法により高い精度 で検知可能だが、PCR による検査が可能な施設は限られて おり、その判定結果に応じてステロイド使用の可否を決定す るというのは現実的でない。むしろ、第二段階の治療として GMAの集中治療を施行し、それでも効果が不十分な場合に は、病態に応じて生物学的製剤、免疫調節剤、ステロイド、抗 ウイルス薬などを選択することが適切と考えられる。当院では しばらく前から【図7】のような治療戦略を採用しており、今後、 逐次、治療成績を報告していく予定である。  内視鏡所見の評価法であるMayo の内視鏡スコアの平均 値は治療前2点以上であったが、両群とも治療後には1点前 後に改善、粘膜治癒率は約 70%であった【図6】。なお、重篤 な副作用は1例も発現しなかった。

(5)

CMV感染潰瘍性大腸炎モデルは

何を教えてくれるのか?

-臨床から基礎へ-

2

講 演

 サイトメガロウイルス(CMV)感染が潰瘍性大腸炎(UC)の病変を増悪させること は多くの臨床成績から示されているが、そのメカニズムについて基礎的な検討を行っ た。PCR 法によるウイルス検査は CMVの再活性化が UC の早期から起こることを 示しているが、UC の動物モデルを用いた研究からは CMVの潜伏感染や再活性化の 部位などに関する情報が得られつつある。ここでは、CMVの感染動態に関する最新 の知見を紹介する。

仲瀬 裕志

先生 京都大学医学部附属病院 内視鏡部

CMVの初感染、潜伏感染と再活性化

 サイトメガロウイルス(CMV)の初感染における標的は上 皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞である。これらの細胞に 感染した CMV は免疫系によっていったん排除されるが、そ の後、単球などに入りこみ、終生、潜伏感染するとされてい る【図1】。CMVは潜伏感染した単球がマクロファージに分化 する過程で炎症性サイトカインなどの刺激を受けて再活性化 するが、特に TNF-αがウイルス遺伝子の発現を強く促進す ると言われる。また、再活性化した CMVはマクロファージを 炎症表現型に変化させることも明らかになっている。再活性 化し増殖した CMV は組織を形成する多くの細胞で検出され るようになる。腸管では上皮細胞、血管内皮細胞のほか間質 細胞にも存在すると言われており、例えば CMVにより血管 内皮で炎症が亢進すれば腸管粘膜に潰瘍を引き起こす可能 性がある。  CMV 感染の診断には【表1】に示す数種類の検査法が用い られるが、Antigenemia 法や特異抗体を測定する方法は血 中の活動的感染をとらえることはできても、それが必ずしも 消化管臓器における CMV 再活性化を反映するわけではな い。組織では免疫染色により細胞封入体を検出する方法が あるが、典型的な巨細胞封入体を確認できるのは CMVの活 動性が非常に高い場合に限られ、形態学的に正確な判定を 行うことは容易でない。そこでより鋭敏に CMV 再活性化を とらえるために、再活性化に必須の前初期遺伝子(IE gene)

粘膜PCR 法により正確な診断が可能に

図1

表1

(6)

6 に特異的なプライマーを用いたPCR 法による検討を行った。 そして、この方法で腸管粘膜の CMV-DNAを定量的に測定 することにより、潰瘍性大腸炎(UC)患者における CMV 再 活性化を早期に診断できることが判明した。その成績を報告 したのは6年前であるが、最近では粘膜 PCR 法を採用する 施設が増えており、海外のガイドライン(European Crohn’s and Colitis Organisaiton Guidline)でも同法を推奨する記 述がみられるようになった。  粘膜 PCR 法によりCMV 再活性化を診断した最新の成 績を【表2】に示す。ステロイド・免疫調節薬を投与されたに もかかわらず寛解導入が困難、あるいは再燃をきたした UC 患者を対象に調査したものだが、陽性率は 48.4%であり、 Antigenemia 法や通常の組織検査に比べきわめて鋭敏で あることが確認された。CMV 再活性化陽性患者では全例、 炎症所見が認められ、炎症が CMV 再活性化の引き金になっ ていることが示唆された。 トカインの刺激を受けて再活性化するが、初期には血中で活 動性ウイルスが検出されることはない。しかし、ウイルスの 増殖が続くと血行を介して全身に広がっていき、血液の PCR 所見も陽性化する【図3】。CMVによる炎症の増強が持続す ると血管障害を引き起こし、その結果、大腸粘膜では高度な 潰瘍性病変を生じる。粘膜 PCR 法で CMV 陽性でも粘膜病 変が軽度であることも少なくないが、これは再活性化を初期 の段階でとらえていると考えれば理解できる。  UC においてCMV はどのような機序により再活性化する のであろうか。それを考えるうえで参考になる症例データを 【図2】に示す。粘膜病変は比較的軽度であったが、粘膜局所 でも血中でも CMV-DNA が検出され、DNA 量は腸管が圧 倒的に優位であった。この患者には抗ウイルス薬を投与して 経過を観察したが、血中の CMV-DNA 量は腸管粘膜に比べ て少ないだけでなく、治療による消失も速やかであった。同 様の所見は他の多くの症例でも認められており、UC におけ るCMV 活性化の特徴を示していると思われる。この知見か ら、UC における CMV 活性化の舞台は粘膜局所であると考 えられる。CMVはここで TNF-αをはじめとする炎症性サイ

図3

CMV再活性化は粘膜で始まり、血中に移行する

表2

図2

(7)

 再活性化した CMVが腸管の炎症を促進すると述べたが、 その作用の詳細を明らかにするため、UC の動物モデルによ る研究を行った。UC を自然発症するモデルとしてはT細胞 受容体α鎖(TCR-α)をノックアウトしたマウスが知られて いる。その特徴を【表3】に示すが、サイトカインの発現がヒト の UC によく似ており、UC モデルとして確立している。この TCR-α欠損マウスにマウスCMVを感染させ、経過を観察し たところ、ウイルス抗原は1週後に大腸、脾臓、肝臓で検出さ れたが、4週後には消失した。さらに感染動態を追跡すると、 12 週後になってウイルス抗原は大腸にのみ再度出現した。 急性感染から潜伏感染に移行し、その後、大腸で再活性化 するというパターンはヒトの UC に類似している。CMV 感染 はTCR-α欠損マウスの腸炎を増悪させたが、炎症は近位大 腸でより著明であった。回盲部、近位大腸に病変を形成しや すいヒトCMV 腸炎に一致する所見である。炎症の増強に関 与するサイトカインについても検討したが、各種インターロイ キン(IL)、TNF-α、インターフェロン(IFN)-γなどが軒並み 増加したが、とくに増加が顕著であったのは IL-6 とIL-17 で あった【図4】。  CMVが潜伏感染する細胞は長い間不明であったが、詳細 な免疫学的検索の結果、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、周 皮細胞など血管周囲の細胞に集積することが明らかになっ た。このことから、腸管における CMV 再活性化は炎症性の 血管障害を引き起こし、UC の粘膜病変をさらに増悪させる と考えられる。  以上の成績に基づき、UCにおけるCMV感染の経過を考察 すると【図5】のようになる。単球・マクロファージがCMVの運搬 体であることは間違いない。感染したCMVは単球・マクロファー ジにより全身に運ばれ、おそらく血管周囲の細胞に入りこんで潜 伏感染に移行する。その後、炎症が惹起されると、それをきっか けにCMV 再活性化が起こり、これに伴いCXCL12などのケモ カインやPDGF受容体などの発現が亢進し、免疫細胞の遊走が 促される。ここに示したのは感染と再活性化の概要であるが、そ の詳細が解明されれば、治療につながる知見も得られるであろ う。例えば、CMVが潜伏する細胞を標的としてUC治療薬の作 用を解明したり、顆粒球吸着療法(GMA)のような再活性化を抑 制しうる治療のメカニズムなどを探っていきたいと考えている。

潰瘍性大腸炎の動物モデルが示すCMV感染の影響

CMVの再活性化はいかにして起こるか?

表3

図4

図5

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参照

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