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5 がん化学療法に附随する消化器症状への対応 下痢, 便秘および 重篤な消化管症状への対応 後藤歩, 小栗千里, 光永幸代, 市川靖史 小林規俊, 前田愼, 遠藤格

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Academic year: 2021

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5

がん化学療法に附随する

消化器症状への対応

下痢,便秘および

重篤な消化管症状への対応

後藤 歩,小栗 千里,光永 幸代,市川 靖史 小林 規俊,前田 愼,遠藤 格

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88 89 早発性下痢発現 遅発性下痢発現 脱水症状・ 電解質異常 発熱・腹痛等の感染徴候 補液管理 抗生剤投与(広域スペクトラム)または 必要に応じて G-CSF 製剤 アトロピン硫酸塩 予防投与 0.25 ∼ 1.0mg 投与前に点滴静注 早発性下痢 発症の可能性 遅発性下痢 発症の可能性(表 1参照) イリノテカン 使用患者 〈予防投与〉 センノシド 眠前 12mg/ 日を 2 日間 または 半夏瀉心湯 7.5g/ 日を 3 日間  対策 注意点 予防 発現 対策 注意点 予防 発現 フローチャート1:下痢の対応

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・セルフケア教育 ・十分な水分摂取 ・適度な運度 ・緩下剤 〈薬剤介入〉  ・緩下剤   マグミットⓇ  ・大腸刺激性下剤   プルゼニドⓇ   ラキソベロンⓇ ・原因薬剤休止・変更 ・十分な水分摂取 ・新レシカルボン坐剤Ⓡ  ※肛門部や直腸粘膜の傷害に注意 ・グリセリン浣腸 (慎重投与) 注意! 消化管狭窄病変による便秘治療 での刺激が腸管穿孔の原因 と なるため,予防が重要。 便秘の原因 ︵ 表2 参照︶ 便秘発現 重篤な便秘発現 発現 予防 対策 注意! ・便秘は予防が重要! ・便秘による腹部の膨満感 や停滞感や悪心の増強よ り,QOL低下や経口摂取 不良を引き起こす ・重篤な便秘を放置する と,麻痺性イレウスや腸 穿孔の原因となる フローチャート2:便秘 ・口腔内の衛生管理指導 ・イソジンガーグルⓇ ・刺激物を避けた食事 ・クライオセラピー:   フッ化ピリミジン系 ・原因薬剤休止 ・疼痛コントロール ・口腔内の保清 ・原因薬剤投与中止・変更 ・粘膜破綻部からの感染症に注意 口内炎発現 重篤化 口内炎の原因 ︵ 参照︶ 予防 発現 対策 ・保湿 ・栄養介入(食形態・栄養経路) 対症療法主体 フローチャート3:口内炎

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92 93 確定 確定 腹痛・急性腹症 消化管穿孔 腸管閉塞 身体所見 (腹痛,腹部膨満,嘔吐など) 腹部 X 線,CT 早急な外科的穿孔部位の 切除と腹腔内の洗浄 ※一時的な人工肛門増設 の検討 治療:イレウス管挿入(腸管の減圧) ・イレウス管 消化管悪性腫瘍 腹膜播種 抗がん剤の自律神経障害による蠕動低下 抗がん剤投与後の高度下痢に伴うイレウス ・イリノテカン ・ベバシズマブ ・イマチニブ ・消化管悪性リンパ腫   治療 画像診断 患者背景 疑い 治療 画像診断 予防 疑い 注意!:化学療法中の消化管穿孔では不良な全身状態 に加えて,骨髄抑制による白血球減少を合併 している場合が多く,経過が重篤で致死的な 状態へ進行することも予想される。 フローチャート4:消化管穿孔,腸閉塞の診断の流れ

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はじめに

がん化学療法における悪心・嘔吐以外の消化器症状と して,消化管粘膜障害による下痢や口内炎は代表的な症 状である。また,近年の分子標的治療薬の併用により, 消化管穿孔などの重篤な消化器症状も認められるように なっている。 本章では粘膜障害およびそれ以外の重篤な消化器症状 について述べる。

下痢

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フローチャート1

下痢は,その発生機序から,主に①抗がん剤投与直後 から発現する早発性下痢と,②抗がん剤投与後24時間 以上経過してから発現する遅発性下痢に分類される。 特に,抗がん剤による遅発性下痢は,多量の水様便が 突発して始まり,そのままの性状の便を頻回に繰り返す こ と が 多 い。24時 間 以 内 に4回 以 上(NCI─CTCAE grade2以上)発現する場合は,抗がん剤の有害反応で ある可能性が高いために注意が必要である。さらに,人 工肛門増設患者は軟便が常態であることから,下痢の発 見が遅れることもしばしばみられる。そこで,便性状を 常に注意させて,排便量が増加して水様性へ変化した場 合は注意するように指導する。 24時間以内に7回以上の水様便(grade3以上)を認 めるときは(人工肛門増設患者は多量の水様便),ほと んどのケースで脱水や腸管粘膜の傷害を合併しているた め,速やかな対処が必要である。

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早発性下痢への対応 ◆早発性下痢の特徴 ①一過性:多くは投与当日~翌日までに消失 ②抗がん剤によるcholinergicsyndrome(コリン様症 状)により消化管の副交感神経が刺激されて腸管蠕 動が亢進するため ③発現強度は重篤ではないが,患者にとっては不快 ④抗がん剤の他のコリン様症状も附随する場合あり (患者の不快はさらに増す) ⑤コリン様症状を発現する代表的な抗がん剤:イリノ テカン ◆早発性下痢の予防 アトロピン硫酸塩を0.25~1.0mgをイリノテカン投与 前に,予防投与として15~30分で点滴静注する。イリ ノテカン投与中にコリン様症状が発現した場合は,症状 に応じてイリノテカンの投与中もしくは投与後に同様の 用法・用量で追加する。

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遅発性下痢への対応 ◆遅発性下痢の特徴 ①抗がん剤投与後,数日~14日ほど経ってから発現

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96 97 する場合もあるので,絶対にさける。経口抗がん剤・点 滴製剤などの剤型にかかわらず,以下のような治療を行 う。 (1)ファーストライン(止痢剤) ①Grade2以上の水様性の遅発性下痢が発現した場 合:速やかに高用量ロペラミド療法を行う。  ロペラミド4mgを経口投与し,その後は2mgず つを2時間毎に(夜間は4mgを4時間毎に)投与し て,初回の内服開始から12時間後まで投与を継続 させる。 ②Grade1の下痢の場合:ロペラミド1mgを速やかに 内服させて経過観察する。  その後は1回1mgのロペラミドを1日2回内服さ せて,下痢の消失を確認した12時間後まで内服さ せる。 ロペラミド内服開始から2日間たっても下痢が消失し ない場合は,アヘンチンキなどに切り替える必要がある。 注1:アヘンチンキ内服1回0.5mLを1日3~4回経口投与。 注2: 一般的な下痢で行う,乳酸菌製剤の投与は抗がん剤による 下痢に対して単独では有効性に乏しいことに注意。 (2)輸液 腎機能や心機能および体液貯留の状況に応じて,必要 十分な輸液と電解質補正を行う。 (3)発熱・腹痛などの感染徴候 広域スペクトラムの抗菌薬を点滴静注により追加投与 することが多い ②原因:抗がん剤やその代謝物が腸粘膜上皮の絨毛を 萎縮,脱落することによる。表1に下痢を起こしや すい抗がん剤を示す。 ③発現頻度・期間:頻回で数日以上に及ぶ ④要注意点:重篤な感染症を合併し,致死的な症状と なりうる。 ◆治療 フッ化ピリミジン製剤やスニチニブ,ソラフェニブな どの経口抗がん剤を内服中に下痢が発現した場合は,ま ず原因と疑われる抗がん剤の内服を中止する。その後 に,症状消失した場合は,主治医の診察のうえで内服再 開を判断することが重要である。患者の自己判断で内服 を再開させることは,症状の再燃から重篤な症状へ進行  表1  遅発性下痢を起こしやすい薬剤 フルオロウラシル,他フッ化ピリミジン製剤 イリノテカン塩酸塩水和物 シタラビン ドセタキセル エルロチニブ シスプラチン ゲフィチニブ メトトレキサート ソラフェニブ ドキソルビシン スニチニブ エトポシド イマチニブ マイトマイシンC セツキシマブ アクチノマイシンD パニツムマブ

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して,感染症の重篤化を防ぐ。骨髄抑制が合併している 場合は,保険承認用法・用量どおりにG─CSF投与を追 加する。 ◆イリノテカンによる遅発性下痢への予防 遅発性下痢の原因となる腸管内の活性代謝物を停滞さ せないことが予防となる。そこで,投与日および翌日の 眠前にセンノシドを投与することが望ましい。この他, 半夏瀉心湯の投与も下痢の予防に有用であることが報告 されている。 また飲水にアルカリ飲料水を摂取(pH7以上の飲用水 を1000~1500mL/日)することで,下痢をある程度抑 えることが報告されている。 投与薬剤 用法・用量 センノシド (プルゼニドⓇ 12mg/1回眠前 (CPT─11投与日と翌日) 半夏瀉心湯 (CPT─11投与3日前から)7.5g/日分3を3日分 アルカリ飲料水 (CPT─11投与日から)1000~1500mL/日を5日間程度 ※ CPT─11=イリノテカン

便秘

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フローチャート2

がん化学療法の経過中に便秘が発現する頻度は比較的 高い。患者は症状発現により腹部の膨満感や停滞感や悪 心の増強を訴えて,QOL低下や経口摂取不良を引き起 こす。また,重篤な便秘の持続を放置すると麻痺性イレ 遅発性下痢の原因は抗がん剤自体やその代謝物が腸粘膜上皮の 絨毛を萎縮,脱落させることによる。投与後数日から 14 日ほど 経ってから発現する場合が多い。頻回で持続期間も数日以上とな ることから,腸内細菌叢の変化や粘膜の防御機構の低下を引き起 こすため,骨髄抑制の時期と重なった場合は重篤な感染症を合併 して致死的な症状となることもあるので注意が必要である。 遅発性下痢の原因と症状

Column

15 イリノテカンによる早発性下痢は,そのカルバミル基がアセチ ルコリンエステラーゼを阻害し,過剰となったアセチルコリンが ムスカリン受容体に結合することでコリン様症状が引き起こされ ることによる。 一方,遅発性下痢は,イリノテカンの活性体である SN─38 が 肝臓においてグルクロン酸抱合をうけ,SN─38G へ変化して胆 汁に排泄され,その SN─38G が消化管でβグルクロニダーゼに より SN─38 へ変化して再吸収される際に腸管粘膜を障害して引 き起こされる。そこで,不要となった腸管内の代謝物を速やかに 便から排泄させるために,投与翌日に排便を促すことが下痢の予 防として最も重要となる。 本剤は下痢を起こす代表的な抗がん剤であるが,重篤な下痢の 後に難治性の麻痺性イレウスを引き起こす場合があるので,下痢 の管理をまず十分に行う必要がある。 イリノテカンによる下痢

Column

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参照

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