(東京女医大弓第28巻第7号頁507 一 515昭和33年7月)
超微小電極法にようガマ心筋線維の電気生理学的研究
笛2報活動時膜抵抗の変化について
1.緒
東京女子医科大学 生理学教室(主任 菊地錬二教授) 君 山 ヤマ 申 ナカ 妙 ター[ 子 コ(受付昭和33年5月22日)
一般に興奮性細胞は活動時においてその形質膜 のイオン透過性が変化レ,このために活動電位が 発生すると考えられてきたが,ユ939年に至って ColeらAvはヤリイカの巨大紛維にて活動電位の発 生時に形質膜のインピーダンスが著明に減少する ことを報告した。その後Hodgkinら16∼ユ9・は詳 細な実験成績を基礎として,注・にそれがNaイオ ン,次いでKイオンに対する膜透過性の増大によ るものであるとして,興奮に関するNaイオン説 (Sodium theory)を提出した。また他の細胞(ニ テラ2) 5’,カエルの骨酪筋線維10),カエルの有髄 神経線維51/55),及びシビレエイの発電器官11, 24) など)についても活動時の膜インピーダンスの変 化が実験的に検討された。 心筋については,古くは1927年にRapport, Ray 27)がカメの心室壁のインピーダンスが収縮 斯に低下することをみたが,早瀬均14もガマや ラッチの心筋で同様の結;果をえた。しかしROEe−nblueth, del Pozo 28)はカメの心臓についての実
験で,収縮期にはインピーーダンスが増加するとい い,Eyster,7/Gilson,9)及びCranefie]d, Eyster, Gilsonもまた,犬の心臓で,収縮期に心筋のイン ピーダンスは減少することなく増加を示すと述べ ている。 これらの研究は,いつれもその方法上,活動時 心筋形質膜のインピーダンスの変化を時間的に, 或いは量的に,充分示しているとは老え難い。こ の間題は1951年に至り,Weidmann 55)がヤギの 仮着索(Purkinje線維)の単一線維について行っ た実験により初めて定量的知見を得たといえる。 即ち遍電及び電位誘導に用いるための2本の超微 小電極を同一線維に刺入し,心週期を通じて矩形 流通電を行いながら膜電位の変化を記録し,得ら れた結果よりケーブル回路解析を行い,各時点の 膜抵抗の相対値を計算した.その結果,膜抵抗は 活動電位発生の初期に著しく低下し,その後漸次 上昇してPlateau相の後期から再分極相の初ま り(ehoulder)にかけて静止時の約3倍以上とな り,その後再分極相にて:再びもと(静止Pl寺の値) に戻ることを報告した。即ち,plateau及び再分 極相にわける膜インピーーダンスの変化はヤリイカ の活動電位における揚合と全く異なる結果が示さ れたわけである。更に最近,Tasaki, Hagiwara (1957)52によりTEAを作用させて活動電位の持 続を延長せしめたヤリイカの巨大線維についての 活動時膜インピーダンスの変化が,Weidmannが Purkinie線維で得た結果と非常に類似している という注目すべき報告がなされた。 このように心筋の再分極相にわける膜インピー ダンスの変化は,心筋についてはいうまでもない が一般の興奮性組織における活動電位発生の機構 を論ずる上にも注目すべき問題であると考えられ る。著者59♪は先にガマ心房筋線維に細胞内電極法 を適用し,静.止電位と活動電位の大きさ,活動電 位の波形,及びそれに対する温度効果についてし らべ,その成績を報告しt: ’09)。今回は引続き同じ 材料を用いて活動時(特にplateau及び再分極
Taeko YAMANAKA (Department・of. PhysioJogy, Tokyo Women’s Medical College) : Electrophysio− logical investigations on the cardiac musc]e fibers of Toad with superfine microelectrode. Part 2. On the changes in the membrane resistance during activity.
相)の形質膜を介してのイオンの伝導度を知るこ とを主な唱的として、”反覆する細胞内矩形流通電 により活動時における膜抵抗の変化,及び直流通 電時(脱分極或いは高分四時)の活動電位の波形 の変化をしらべ,その結果を報告し,若干の考察 を行う次第である。 なおこの実験においては,線維の直径が非常に 小さく,かっ活動時の動きが大きいので,分極用 及び誘導用電極を接近して刺入することが殆んど 不可能であるため,他の比較的小さい細胞や,顕 微鏡下で細胞を確認できない揚合について既に試 みられている1.) 20)25Z 29)よ、うに,細胞内に刺入さ れた1本の微小電極によって,「通電及び電位の誘 導を行った。 2.実験方法
1) 実験動物としてはガマ(Bufo vulgaris formo− sus)を用い,その心房部から歩調取り部(Pacemaker) を除いた全く自動性を有さない条片標本を作製した。 この標本をRinger漏話(組成は第1報59)に示した ものに同じ、の満してあるプール中のコルク板にピン で固定し,上から実体顕微鏡下でミクMR“=プレ・・一タ t・一ノより微小電極を刺入した。刺激用電極は第1報の 場合と同様にセットされ,活動電位の観察及び記録が 必要なときだけ,観察記録用Braun管の掃引に同期 させて標木に刺激電流を与えるようにした。 2)Ling, Gerard26)による超微小電極(電極抵抗は 15・…30 M,Q)を誘導電極とし, Ringer溶液プールに おかれたAg−AgCl X極(不関電極)に対する電位を 誘導した。導かれた電位は細胞内電極用前置増巾羅 (第1図Pre−amp・)’から主増巾器(D.C. amp.)をへ て,2現象Braun管オッシ・グラフの一方のチャンネ ルに入れ,他方のチャンネノレは細胞外の電位及びtime markの標示に用いた。使用した前置増巾器,主増巾 器及び記録装置は第1報で述べたものと同じである。 3)細胞内微小電極の先端がRinger溶液プール中 にあり,かつ細胞内に未だ刺入されない状態におい て,この電極と不関電極との間に存する抵抗を第1図 に示すようにホd 一tトストン橋の一辺にわき,矩形波 発生装置(Square pulse generator)から100 Mnの
抵抗を介してパルス持続25msec,1秒に約20回の 頻度の,電極先端から流入する方向(正方向)の直角 矩形パルス(1×10−9A)を与え,図のR.Lを加減す ることによりブリッヂのバランスをとった後電極先端 を細胞内に進めた。電極が細胞内に刺入されたならば 再び同様の通電を行い,その際の反応(形質膜による 電圧降下)を記録することにより形質膜の抵抗を算出 した。 ブリッヂ回路に挿入された電位差計(第1図,Pot− entiometer)は,微小電極が細胞内に入った後に静止 電位などによってブリッヂ回路を流れる電流を補正す るのに用いられた。また,細胞内直流通電は電位差計 により100MΩの抵抗を介して誘導電極に任意の直流 電圧を与えることにより行った。この際の通電量は最
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Pre−amp. Potential recording Delay circuit巨竺圭、
第1図:細胞内通電のための実験装置,r.e・:超微小電極, s.e.:刺激電極, Rコ:100 MΩ, R2;10MΩ, R3:超微小 電極の電気抵抗,R .t:0∼1111Ω,本文参照高6×10”9Aの程度であった。 4)既に述べkように,細胞内電位誘導と通電とを 1つの超微小電極によって行った。ここで問題となる のは通電中,まナこは通電後における電極の電気抵抗の 変化で,このことは既に2,3の研究者12?20♪21によ って指摘されているように一般に電極抵抗の高い程, また,通電電流の大きい程この変化は著しい。著9’so , らめ実験結果によると50・Mn.以下の抵抗値をもつ電 極の大部分は正生垣(電極先端より流入する方向)の 通電で5×10rS,A迄の通電量では殆んど抵抗値に変化 を認めないが,負方向(電極先端より流出する方向) の通電では1×10−9Aより大なる電流を通ずると電極 抵抗の増大が顕著となることが認められた。故に矩形 流通電によって膜抵抗を測定する実験は,予め目的に 副うような電極を撰ぶと共に,通電は正方向,かつ通 電最は約1×10’f’9Aとした。 5)プーノレ中のRinger液は適Nli新しいものと置換 し,95%Ou+5%CO2混合気体を絶えず供給した。 実験時液温は15℃∼18。Cであった。
3.実験結果
1) 超微小電極を細胞の外側迄進めた状態で, 第1図で示したような方法により持続25msec, ユ5ecに約20回の頻度で陽極矩形流通電(強度1 ×10『9−A)を行い,ホイートストン橋のバランスを とり,その後細胞内に電極を1諦めて同様の矩形流 通電を行った際の電位変化(即ち細胞の実効抵抗 による電位降下)を静止時及び活動時において記 録した。その代表的1例は第2図に示すごとくで ある。この図の上段は対照として通電を行わない 口合の静止電位及び活動電位の時間的経過を示し たものであり,下段が通電時の記録である。下段の 図にわいて蛸恩波の上辺を結んだものが対照の活 動電位に相当するわけである。記録における陽性 矩形波の立上りの相はtw msec以内であり,その 短導波は充分に最終値に達している。そこで最終 値における矩形波の振巾(電圧)と通電電流(pulse current)の値から静止時世び活動時(plateau及 び再分極相)の実効抵抗の相対的変化を知ること ができる。つまり記録の三訂の変化が線維の実効 抵抗の相対的変化に比例していると考えられる。 この実効抵抗の相対的変化は,plateauの初期でき は減少し,その後次第に増加してplateau後期 (plateauから』下降相に移行する部分, shou工der) で最:大値を示し,その後再分極相において漸次減 少して静止時の値に復するごとき経過を示す。1
100mV
!o o.2 o.4 e.6 sEe.
第2図:活動時における膜抵抗変化, 其の一,本:文参照。 線維の内部抵抗は活動時に変化しないと老えら れるから,これを一定とし第2図よりえられた活 動時の実効抵抗より活動時の各時点における膜抵 抗値を算出(附録11式参照)し静止時単位面積当 りの膜抵抗値を!00として,各時点の変化を表わ したものが第3図であるρこれによると膜抵抗の 極大に達するplateauの後期で静止畔の約2倍, plateauの初期では静止時より小さい。 mV tea 50
・ ノ。◎
1
1 X 150
, vl
l X 120%
loo l N/
諭
し一一一一t一一一・bL一一一一一一”一・一一L・一e一一L・一一・・L一一・一一S・一60 IOO
k4so
e O.2 O.4 O.6 SEC.
第3図:活動電位の各時点における膜抵抗の相 対的変化,第2図の実験例より計算したもの, 木文参照。 更に細胞内に電極を刺入した状態(静止時)に おいて線維の実効抵抗を含めてホイートストン橋 の平衡をとって同様の矩形流通電をした場合の記 録を示すと第4図のごとくである。同図の上段は 通電を行う前の静止電位及び活動電位を対照とし て示したもので,下段が通電時の記録である。矩 形流通電による電位の変化をみると,plateauに おける最初の矩形波は逆向き(図においては上向
き)に生じており,2及び3番目のものはほぼ平 衡の状態で4番目以後,活動電位の終り近くまで のものが下向きに示されている。つまり静止時に 較べて初期は実効抵抗が減少し,その後は増大し て静止時に復することを示し,その各電位変化の 最終値からみた膜抵抗の相対的変化はほぼ第2図 の場合と等しい関係にある。 一般に静止時の綜維の実効抵抗は5∼10MΩで あり,膜抵抗の大凡の値は2000∼EOOO ncmZと 思われる(附録参照)。
1
100mV
J
〇 O.2 O.4 O.6 SEC.
第4図:活動時における膜抵抗の変化, 其の二,本文参照 ノ 活動時における膜抵抗の変化は以上に示したよ うなものが代表酌な例であるが,plateau後期に おける抵抗増大が著明でなく,殆んど静止時の値 であるような例もあった。 なお,矩形流通電時にわける導電電流が定常流 とみなしうることは実測の上確認した。 2) 直流通電時における活動電位の変化を第5 図に示した。ききに記載したような方法で直流通 電を行ない静止時膜電位を種々に変化させて活動 誌位を発生させている。この図で示された数値は 通電電流の大きさ(×エ0−9A)である。この際に おける静止時の電位は通電電流が比較的大きいた め正確な値が得られなかったと思われるめでこれ に関する記載を省略する。左例上から通電を行う 前の活動電位(0),その下は+tt.0及び+4.0×10 −9`通電時(高分極時)のもので活動電位の大き さは増:大している。通電しない状態で活動電位を 記録(中例上,0)した後,種々の強さの陰極通電 時(脱分極時)における活動電位を記録し,最後 に正常活動電位(右列,下)を示した。通電前後 における対照としての活動電位には殆んど非がな い(終りのものには,只明瞭なinitiai spikeヵゴ 認められない点が異なるのみである)。
o
+2.0 +4.0o
一2.0 一4.0 OP’一一P;E’E:’9ic.05−lioomv 一 5.0 一5.5 一6.0o
第5図:直流通電効果,数値は通電電流の強さ(×10’9A),本文参照。 この例における陰極通電時の活動電位の時間的 経過を比較するために重畳して図示したものが第 6、図である。この図は陰極通電に際して通電電流 が大きくなるにしたがって活動電位の大きさは initial spikeからplateauの前半期にわいて減 少し,その後は逆に増大することを示している。 この傾向はplateauの後半から再分極相にかけて 膜抵抗が増大するという陽極矩形流通電の結果と 一致するような所見であるがこのことに関しては 老察の項で述べる。更に活動電位は通電電流が大 きくなるにしたがって著明となる陰極相を伴って おり,このため活動電位の持続が著しく延長したようにみえる点が特徴である。 mV t50 :oo 麹o xo x o 一2 一4
ユ
j一o O.2 O.4 O.6 SEC,
第6図:陰極通電による波形変化,第5図の 例を重ねて図示したもの,数値は通電電流 (×10−9A), R.P.:対照(0)における静止 電位を示す。 4.考 察 活動電位の発生時に形質膜のインピ=一一ダンスが 低下することは,緒言に述べたように多くの興奮 性細胞で明らかにされている。Hodgkinら16) 一一 18) の実験によれば,活動電位の立上りに相当してNa イオンの透過性が増大し,膜電位は約1m鈴。後に Naイオンの平衡電位(ENa)に達すると考えられ る。ヤギのPUrk{nje糸牙1維においても膜抵抗は活 動電位の脱分極相からinitia1と・pikeの相にかけ ては減少し,膜電位がNaイオンの平衡電位に向 うものと憩、われる(Weidmannら8)・56)・5T」 )。本 実験においては,活動電位の脱分極相乃至initlal spikeに相当する凍い相の膜イ.ンピーダンスの変 化は求めなかったが,活動電位の大きさを他の組 織における成績ユ6)と比較老察することによりこの 相での膜抵抗は下しい減少を示し,かっこれは撰 択的に:Naイオン透過性が増加するによる1ものと 老えるのが妥当と思われる。また,短諺流通電に よる実験結果(第2,.3図の比較)からみて.も,. この部分での抵抗値は減少していることが類推さ れる。更に静止時については形質膜はKイオン及 びC1イオンに対して透過性であり,静止電位に ついてはKイオンの平衡電位(EK)に近いものと 老えてよい。 この実験で問題にしているplateau及び再分極 .相について考えると,実験成績から,脱分極相よ.り plateau初期にかけて増大した形質膜の〃見かけ の総イオン透過性〃(膜抵抗の逆数)は静止時の 値に戻り,その後plateau経過中漸時減少して shoulder附近に至って静止時の↓ろ位までになり, 再分極相で増大して静止時値に復する。しかしこ の中,εlhoulder附近における〃見かけの総イオ ン透過性rfの一過性減少にに関しては,実際には 透過性が減少していないとも算えられる(Weid− mann58})が,いつれにせよplateau後半から再 分極相にかけての膜のイオン透過性は静止時に較 べて大きくはない。Plateau友び脱分極相におけ る膜電位(E)をみると
EK >E> ENa
であり,静止時及び活動電位が最大を示す時点に 較べてKイオン透過性とNa・イオン透過性がより 近い値を有しているものと老えられる。.ここで plateau相における総イオン透過性が減少してい ることから,脱分極相におけるNaイオン透過性 の増大の後にKイオン透過性が増大するとは考え 難い。即ちinitia1[spikeの後にNa. Cオン透過 性は滅嫁すると考えるべきである。 本実験の結果のうち,膜抵抗の活動時における 相対的変化については方法上,. ?キについて考慮 する必要は少ないが,膜抵抗め絶対値に関しては 正確な値を求めることは困難である。その理由は 附録に詳述しているように第一に用いた心筋早耳 がシンシチウム的つながりをもって隣iりの綜維と 電気的に連絡しあっていることを訴えねばならな い。しかし大凡の値を求めることなできる。この大きさは2000Ωcm2から80eO Qcm7位と思わ
れるが,特定の仮定のもとにおける計算値は4000 Ωcm 2であった(附録参照)。この値は種々の無 髄神経綜維.(ヤ.リイ.カ:ユ0005ノ, コウイカ:90CO 54,エビ:200019ノ,ヵ二:3eeo2s)及び80COIs) Ωcm2),カエル骨酪筋線維(4COOΩc皿21。)), Purkinje緯維(ヤギ.:20eo56 i,仔牛及びヒツジ: 12006・1cm2)などと同じerderである。 矩形流通電における矩形波の時三三経過につい ては,この実験の目的外であったので詳しく論じ なV.’が・これの最終値に達するまでの暁闇は数 ms㏄以内でありKahn22,)がカエルで得た値より ゃや小さい傾向を示す。 直流通電効果についてはやはり陽極矩形流通電 の結果と同様にPIateaUに.おいて膜抵抗が増大し ていることを示しており,また再分極相及びその 後の陰極直流通電に際してもu.ndershootは全く みられず,逆に著明な陰極相が生じている。即ち,この結果からplateauより再分極相にかけての著 明なKイオン透過性の増大は考え難い。ただしこ のような直流通電実験から,各Ievelに脱分極さ れた状態で癸生した活動電位を比較して活動電位 の各時点における膜抵抗を算出し,矩形鱗虫電の 結果と正確に上ヒ欲することは,脱分極により活動 電位の時聞的経過が異ってくるので困難である。 活動時の膜抵抗の変化について,この実験の 結果と温!血動物のPurkinje線維よりえられた Weidman 55の結果とは類似しており,また最近 TEAにより活動電位の持続時間を延長せしめた ヤリイカの巨大神経線維に関するTasaki, Hag− iwara52・iの成績とも近似の関係にある。 Weldm−
annによる反覆興奮時のPurkinie線維の場合
は,静止時(弛緩期)にわいて次の興奮の初まる まで膜抵抗は静止時の値より次第に⊥昇して約 1. 75倍に達するが,この膜抵抗の漸増はゆるやか な脱分極(前電位)に伴うもので伝導系線維に特 有なものであろう。 心筋においては,Plateau及び再:分極相におけ るイオン別の電流一主としてNaイオン流(IN) 及びKイオン流σK)一一について詳しく論ずる 材料はないが,Weidmann(1957)7J8・が温血動物 のPurkinje線維について得た結果からHodgkin らのイオン説を修正してINa及びIKについて論 じているところは甚だ示唆に富むものと考える。 またTasaki, Hagiwara(1957)52)はTEAに より持続を延長せしめた無髄神経線維の活動電位 について,正常リンゲル壷中における活動時のイ オン電流と外液のNaイオン濃度を変えた際のイ オン電流とをVoltage cIampにより測定した結 果からINa及びIKを計算により.求めている。心 筋線維の活動電位もこれと質的に同一一の関係があ ると考えてよいと思われるので心筋線維の活動電 位,特にPlateau及び再分極相におけるイオン流 について参考とすることができる。 なお陰極通電時の活動電位について注目すべき ことは,initial sPikeの直後(plateau前期)に 一度活動電位が減少すること,及び陰極後電位を 生ずることである。また第1報で述べたような initial spikeの認められる折合,及び認められな い蜴合についての脱分極相からinitial spikeに かけての膜抵抗の比較は興味ある問題と思われる が,これらの点に関してはなお研究を要するもの と考える。 5.結 語 1) ガマ心房筋紳維に細胞内超微小電極を適用 して,陽極矩形流通電及び直流通電を行うことに より,活動時(p】ateau及び再分極相)における 形質膜の抵抗の変化を求めた。通電に際しては電 国法により一一・つの微少電極を通電及び誘導の目的 に用いた。 2)陽極矩形流通電により,活動電位の各時点 における膜抵抗の相対的変化がえられた。膜抵抗 は活動電位発生の初期(脱分極時)に静止時より 減少し,plateaU中期より次第に増加し,再分極 相で再び減少しやがて静止時の値に艮ることを知 った。この結果はWeidmannがヤギのPurkinje 綜維でえたものと相似していた。 陽極及び陰極直流通電時における活動電位から もplrateau 4E期及び再分極相において膜抵抗が増 大するような所見をえた。 3)得られた成績から,形質膜の抵抗(絶対値), 活動時におけるイオン流などについて若干の考察 を行った。 附 録 膜抵抗値の計算: 神経や筋肉等の興奮性線維は,細胞内部抵抗と外部 抵抗との間に高抵抗の細胞形質膜抵抗と,膜容堂とが 並列に分布している等価回路でおきかえることができ るユ9)。これを図示すると第7図のようになる。この図 で点Aの側は細胞内部を,B側は細胞外部を示してい る。r。は単位長当りの細胞外部抵抗を,riは単位長当り の紬胞内部tt(原形質)の抵抗, r・nは同様に単位長当 りの細胞形質膜の抵抗であり,c皿は膜容量である。 この外に形質膜に並列に挿入された電位が存在し,細 胞内部は一般に外部に対し負の電位(静止電位)をも っているわけであるが,この計算においては省略して 差しつかえがない。 今,定常状態における電位及び電流について考えれ ば,細胞外液に対してA点にある電位(E)が与えら れ,それにより細胞内部より外部に向って流れる電流 (total current)を1とすれば, A, B間の実効抵抗(・ffec・・ve・e・・…n・・恥)は早で表わされる・また 線維にそってのA(またはB)からの任意の距離xな る位置において,△xの間隔を有する2点間に生じた 電位差△Vi,△V〔、(Viは内部における電位差, V。は 外部における電位差を示す)は AVi ==: lxri Ax
dy Vo == lr〈 ro A× となる。ただしこの位置における線維の中を流れる電 流を1・とした。故に外側を流れる電流は一1・となる。 故に次の式がなりたつ。 .d−Y/1.一 lxrt’ ’! t d.g )一一一一一一F一一一一一一一一一一一一一一一,一一一一一(1) 警一一・剥
B
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A
病』 ri Ix 一一一一一te oe 第7図:興奮性線維の形質膜の電気的等価回路 本文参照。 第7図に示すごとく,τmを線維の内外間に介在す る単位長当りの膜抵抗(膜抵抗)とするとrmを流れ る電流(△1)は .1 = Ax(Vi−V.). rlll となる。故に ”ttk一 =: rl.1,’.一 (vi rm vo) ’一一・・ となる。(2)を更に微分すると, 農÷(畷’一t、VitL (3)式に(1)式を代入すると,農ぞ・評)1・一〇
となる。 とおくとv
r皿 .一:ttt.一.一.. ==A ・ ri十ro 農一一吉・・一・ ・(2) ) 一・・一・一(3) これを積分するとIx= aeX/X +beLx/A .........
(a,bは常数) (5)式はxが無限大のときは 1。。=a♂/入 故に .a ==O ’ xが0のときは In ::= b 故に Ir = 1,.e’XIK となる。 これを(1)式に代入すると 一・・一・一一・一・i5)
叢一一挿♂唄
・llt:, 一tioree一・ハヂ’●’”0’””””’㈲、 となる。 (6)式の各々を積分すると V1=_入Io rie一/λ十。 Vo=入1。re−x/λ十d (c,dは常数) となる。 xが0の時はV。=0であるから d == 一Aloroe−XIX 故に Vo==Aloro (1−eLX!X) ・・一・・・… (7) xが無限大のときはVが定電位Eに限りなく近づ ものとすると, Vi==一E C :== E +AlerieLXIX 故に Vi == E 一 Alori (1 一emH/X ) ・一一・一・ ( s ) (8)式より(7)式を減ずると Vi−V、,=E一入1。rL(1−e−xハ)一λ1。r。(1−emx/λ) =E一入1。(ri+r。)÷λ1。e−x!λ(ri+r。) Xを無限大とするとVi−Vo==: o, e−x/X == o
故に
E=?tlo(ril−ro)
これより実効抵抗(R})は
R・, =一一i」一 :=一 A (ri {一 ro)
(4)式より 恥》藷「(r・÷ru) =》r・n(ri+r・) 容量導体中に細胞があるときは,r・がriに較べて 充分小さいと考えてよいから .一 Re=::’v/’一Ell−Trr ’’’’”H’’’”…””’(9) のような関係が成立すると考えられる。第7図におけ るA,B間の実効抵抗とは,線維が容量導体中にある 場合,(9)式に示されるようなものである。 通常の実験においては超微小電極の刺入されている 細胞内の一点と外液間の実効抵抗を考える場合には, 一般に神経線維についても,また骨賂筋線維について も,Xが正の無限大迄のみでなく負の無限大まである と考えねばならない(第8図,A参照)。故にこの場 合の実効抵抗R♂は R?, ’ =: >fi V 一’ i−n”…fi となる。またシンシチウムである心筋線維では第8図 におけるA以外の場合を考えなければならないと思わ
れる。そこで一一・・般に R]==kl/一il’一ilEr ’”’’”“’””w’(10) と表わすことができると押えてよいQここにkは電極 が刺入された点に特有な常数である(本実験の例につ いては%<k<亮と考えられる。後述).。 M .F
A ・ B ・ ’C
第8図:心筋線維に電極が刺入きれた3つの場 食を示す模型図・.M.:微小電極, F:.細胞線維,. 本文参照。 今,心筋活動時を通じてriが変化しないと仮定す ると,実験によって一定点より得.られた.心筋’活動時を 通じての各時点のReは R・,一Av“nRl・II一一一一一’. 或いは Re2==A2Rm ’’”……’’’”‘’’’””’”‘(11) (Aは常数,Rmは単位面積.当りの膜抵 抗) となる。第2図に示したよ.うな実験結果からRmの相 対的変化(第3図参照)を知りうる。 Rmの絶対値を知るためには少くともk,細胞内部 の比抵抗(Ri)及び線維の直径(.d)が与えられなけ ればならない(10式参照)。.RLはKatzら10)により蛙 のsartorius fiberより得られたもの(230Ω)を便宜 上用いることにし,dは実測によるとしても問題とな るのはkである。kは例.えば第8図Bのごとくに線維 に電極が刺入された場合は%,Cのような場合には% .という.ことになる。ガ々心筋に関しては,.電極が挿入 された点より最も近い両側の分岐のみを考慮すれば, それより更に先の線維の枝分れによる誤差はそれ程大 きくないものと考えられる』kは%より大.き.な値をと る場.合は.考えられず,.また最小はT/z位と考え.てよいで あろう。つまり,この例における大凡の組織構造と長 さ常数を考え合せるとkが.とりうる範囲を 1..く.K<%. のごとく仮定しうる。このような仮定めもとに.,実験 結果における第2.図の例について静・止時におけるRm の値のとりうる.範囲を求めると1000rv3000 〈 Rin 〈 6000t一一vlOOOO .o.,cm2
と.なる。k=%とした場合のRrpの川州値は Rtn 一v 4000 o.cm2 ・ である。 曾於するにあたり,終始御鞭達を賜わりました菊 地畔二教授,並びに御懇篤なる御指導御校閣を頂き ました田中亭郎講師に深甚なる謝意を表しま.す。 交 献
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