184 (31) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ハヤシ トシ ユキ林俊之(昭和3
博士(医学) 乙第1278号平成4年5月15日
学位規則第4条第2項該当(博土の学位論文提出者)
肝細胞癌の肝内進展病態と非癌血肝組織の線維化の程度との関連に関する研
究 (主査)教授 羽生富士夫 (副査)教授 小幡 裕,橋本 葉子論 文 内 容 の 要 旨
目的 肝硬変の併存が,‘肝細胞癌の発育および肝内進展様 式に及ぼす影響を検討した. 対象および方法 1985年から1989年までに教室で経験した肝細胞癌切 除例243例を対象とした.まず243例を肝硬変群113例 (三宅の分類における甲型肝硬変7例・乙型80例・甲’型 26例)と非肝硬変群130例(三宅の乙’型および慢性肝炎 118例,正常肝12例)の二群に分けた.そして,腫瘍径 と細胞異型度および被膜進展・門脈侵襲・副結節の陽 性率を二群間で比較し,肝硬変の併存が肝細胞癌の発 育と肝内進展様式に及ぼす影響を検討した.なお,有 意差検定には百分率の差の検定法を使用した. 結果および考察 1)腫瘍径については,肝硬変群では径2.Ocm以下 の小さな肝細胞癌が42.5%を占め,非肝硬変群の 27.7%に比して有意に多かった(p<0,025).教室では 非肝硬変群の大部分を占める慢性肝炎に対しても肝硬 変群と同様の間隔でスクリーニングを施行しているこ とを考慮すると,肝硬変群の肝細胞癌は非肝硬変群に 比べて発育が緩徐である可能性が高いと考えられた. 一方,細胞異型度については,肝硬変群・非肝硬変群 の間に差は認められなかった.肝細胞癌の発育速度に 関与する腫瘍側の因子である細胞異型度が両群間で差 がないという結果は,肝硬変群の肝細胞癌の発育の緩 徐さに対して,腫瘍側の因子よりも,腫瘍の周囲環境 の因子すなわち高度の肝硬変の併存が影響を及ぼして いる可能性を間接的に示唆しているものと考えられ た. 2)肝内進展様式に関しては,肝硬変群は非肝硬変群 に比べて,腫瘍径2.Ocm以下で被膜進展の陽性率(肝 硬変群45.8%に対して非肝硬変群27.8%)および副結 節の陽性率(肝硬変群54.2%に対して非肝硬変群 36.1%)が,それぞれ有意に高かった(p<0.05).さ らに腫瘍径2.1cm以上5.Ocm以下では肝硬変群は非 肝硬変群に比べて,門脈侵襲の陽性率(肝硬変群31.1% に対して非肝硬変群15.5%)および副結節の陽性率(肝 硬変群53.3%に対して非肝硬変群36.2%)が,それぞ れ有意に高かった(p〈0.05).つまり,高度の肝硬変 が併存している腫瘍径5.Ocm以下の肝細胞癌は,肝内 進展因子を有している率が非肝硬変群に比べて有意に 高かった. 以上より,高度の肝硬変が併存している場合,肝細 胞癌は,腫瘍が小さい時期には,膨張性の発育よりも, 被膜に浸潤して門脈に腫瘍栓をつくり,肝内転移を生 じてゆく浸潤性の発育をとりやすい傾向があると考え られた. 結語 高度の肝硬変が併存している肝細胞癌は,小さいも のでも,肝内進展を生じて既に進行癌の様相を呈して いることが多く,肝細胞癌の病態を考える上で新しい 視点が必要と考えられた. 一818一185