アメリカにおける気候変動訴訟とその政策形成およ
び事業者行動への影響(二・完)
著者
大坂 恵里
著者別名
Osaka Eri
雑誌名
東洋法学
巻
56
号
2
ページ
1-24
発行年
2013-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00004083/
はじめに 第一章 気候変動訴訟の展開(以上、五六巻一号) 第二章 気候変動訴訟の政策形成への影響 第三章 気候変動訴訟の事業者行動への影響 おわりに(以上、本号) 第二章 気候変動訴訟の政策形成への影響 一 Massachusetts v. EPA 判決後の展開 1 ブッシュ政権の対応 第 一 章 で 述 べ た と お り、 二 〇 〇 七 年 四 月 二 日、 合 衆 国 最 高 裁 判 所 は、 Massachusetts v. EPA 事 件 に つ い て、 原 判決を破棄してDC巡回区合衆国控訴裁判所に差し戻すという判決を下した。同年九月一四日、控訴裁は、環境保 《 論 説 》
アメリカにおける気候変動訴訟とその政策形成および
事業者行動への影響(二・完)
大
坂
恵
里
護 庁 ( Environmental Protection Agency, EPA ) に よ る 規 則 制 定 拒 否 の 決 定 を 破 棄 し、 E P A に 対 し て 合 衆 国 最 高 裁 の法廷意見に従って手続を行うよう命令し ( 1) た 。 こうした司法手続に遡ること五カ月前の二〇〇七年五月一四日、ブッシュ大統領は、自動車、ノンロード車両、 ノンロード・エンジンからの温室効果ガス排出を規制することに関しては省庁間で協働せよとの大統領令を発して お ( 2) り 、EPAは、他省庁とともに、自動車およびその燃料からの温室効果ガス排出量を削減させることを目的とし た 新 規 則 の 制 定 に 向 け て、 危 険 性 認 定 の 手 続 き を 進 め る こ と と な っ た。 さ ら に、 ブ ッ シ ュ 大 統 領 は、 同 年 一 二 月 一 九 日 に エ ネ ル ギ ー 自 給・ 安 全 保 障 法 ( Energy Independence and Security A ( 3) ct ) に 署 名 し、 自 動 車 に つ き 一 ガ ロ ン あたり二七・五マイル、軽トラックにつき一ガロンあたり二二・二マイルであった企業別平均燃費 ( Corporate Av
-erage Fuel Economy
) ( 4) が 、二〇二〇年までに一ガロンあたり三五マイルに引き上げられることになっ ( 5) た 。 し か し な が ら 、 こ れ ら の 動 き を 除 い て は 、 ブ ッ シ ュ 大 統 領 と そ の 意 向 を 反 映 し た ジ ョ ン ソ ン 長 官 率 い る E P A が 、 気候変動対策に消極的な態度を変えることはなかったのである。実際、第一章で述べたとおり、カリフォルニア州 が、 州 内 で 販 売 さ れ る 二 〇 〇 九 年 モ デ ル の 乗 用 車・ 小 型 ト ラ ッ ク か ら の 二 酸 化 炭 素 の 排 出 量 を 二 〇 一 六 年 ま で に 三 〇 % 削 減 す る こ と を 義 務 付 け る 規 則 を 二 〇 〇 五 年 一 二 月 に 制 定 し て E P A の 承 認 を 求 め て い た の に も か か わ ら ず、二〇〇八年三月六日、EPAは、それを拒否したのであっ た ( 6) 。また、同年四月一七日、ブッシュ大統領は、地 球 温 暖 化 対 策 と し て 二 〇 二 五 年 ま で に ア メ リ カ の 温 室 効 果 ガ ス の 排 出 量 の 伸 び を ゼ ロ に す る と い う ス ピ ー チ の 中 で、 Massachusetts 判決について以下のように評し ( 7) た 。 裁判所の中には、―主に地方や地域の環境影響に対処するために―三〇年以上前に書かれた法律を取り上 げて、地球規模の気候変動に適用しているものもある。大気浄化法 ( Clean Air Act, CAA ) 、絶滅に瀕した種
の保存法、ならびに国家環境政策法は、決して地球の気候を規制することを意図したものではなかった。例 えば、昨年の最高裁判決の下では、CAAが自動車からの温室効果ガス排出を規制するために適用されうる ことになるのである。このことは、我々の経済全体にわたってCAAに基づく温室効果ガス規則を自動的に も た ら す こ と に な り、 先 週、 エ ネ ル ギ ー・ 通 商 委 員 長 の ジ ョ ン・ デ ィ ン ゲ ル が「は な ば な し い 混 乱」 ( glori -ous mess ) と称したものに至ることになるだろう。… そのような広範囲に及ぶ影響を伴う決定は、選挙によって選ばれていない規制者や裁判官に委ねられるべ きではない。そのような決定は公開され―公に討論されるべきである。そのような決定は、それらが影響を 与える人々によって選出された代表者によってなされるべきであ ( 8) る 。 EPAのジョンソン長官も、二〇〇八年七月三〇日に公表したCAAに基づく温室効果ガス排出規制に関する規 則案制定事前通告 (
Advanced Notice of Proposed Rulemaking, AN
( 9) PR ) の前文において、以下のように述べた。 私は、CAAが、元々は直接的な健康影響を生ぜしめる地域的な汚染物質を規制するために制定された古 い法律であり、地球温暖化ガスを規制する目的には適していないということを、ANPRが証明すると信ず る。これまでの分析に基づくと、この行動方針を追求すると、極めて難解で、時間がかかる、そしておそら くは入り組んだ規則になることが避けられないだろう。これらの規則は、温室効果ガス排出を規制するのに 役立つ既存のプログラムを大幅に専占するかそれらに重畳するであろうし、温室効果ガス濃度を減少させる ことにおいて比較的非効率であり、仕事と合衆国経済を損なう可能性のある影響を与えるかもしれな ( 10) い 。
2 政権交代 二〇〇九年一月二〇日、バラク・オバマが第四四代大統領に就任すると、連邦政府の気候変動問題への対応は大 きく変化した。オバマ大統領は、就任から約一カ月後の二月二四日に上下両院合同会議で行った施政方針演説の中 で、以下のように述べた。 経済を真に変革し、安全を守り、気候変動による破壊から我々の惑星を救うためには、究極的にはクリー ンで再生可能なエネルギーを採算性のあるエネルギーにしなければならない。私は、議会に対し、市場原理 に基づく炭素排出規制を導入し、国内での再生可能なエネルギーのさらなる生産を促す法律を私に送るよう 要請す ( 11) る 。 さ ら に、 オ バ マ 大 統 領 は、 同 月 二 六 日 に 公 表 し た 予 算 案 の な か で、 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 を 二 〇 〇 五 年 比 で 二〇二〇年までに一四%、二〇五〇年までに八三%減らすこと、そのためにキャップ・アンド・トレード方式によ る 排 出 量 取 引 制 度 を 導 入 し、 排 出 量 を 有 償 (オ ー ク シ ョ ン) で 割 り 当 て る こ と に よ っ て 生 ま れ る 収 益 を ク リ ー ン・ エネルギー投資と減税の財源にする、という提案を行っ ( 12) た 。 3 カリフォルニア基準の承認 二〇〇九年七月八日、EPAは、カリフォルニア州および同州の大気資源局に対して、CAA二〇九条b項に基 づいて、二〇〇九年以降に発売される乗用車、軽トラック、スポーツ用多目的車からの温室効果ガス排出量の削減 を義務付ける規則を実施する権限を認め ( 13) た 。これは、ブッシュ政権下での決定を覆すものであった。
4 温室効果ガス排出量報告プログラム 二 〇 〇 九 年 一 〇 月 三 〇 日、 E P A は、 二 〇 〇 八 年 統 合 予 算 法 ( Consolidated Appropriation A ( 14) ct ) に 基 づ い て、 温 室 効 果 ガ ス の 主 要 排 出 源 に 対 し て 二 〇 一 〇 年 度 以 降 の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 年 次 報 告 を 義 務 付 け る 規 則 ( 40 CFR Part 98 ) を公表し ( 15) た 。対象となるのは、温室効果ガスを二酸化炭素換算で年間二万五千メトリック・トンを超えて 排出する温室効果ガス直接排出者、化石燃料や工業ガスの供給者、炭素隔離施設等である。施設毎のデータはEP Aのウェブページで公開されてい ( 16) る 。 5 危険性認定および原因・寄与認定 二〇〇九年一二月一五日、EPAは、六種の主要温室効果ガス―二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロ フルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄―の大気中濃度が現在および将来の公衆の健康と福 祉を脅かし、新車およびそのエンジンからの温室効果ガスの排出が公衆の健康および福祉を脅かす温室効果ガス汚 染に寄与するという認定結果を公表し ( 17) た 。 これらの認定に対して、計一〇件の再検討を求める申立てがなされたが、二〇一〇年七月二九日、EPAはそれ らすべてについて棄却し ( 18) た 。 6 自動車からの温室効果ガス排出規制 ( 1)軽量自動車からの温室効果ガス排出規制 燃費の向上は、温室効果ガスの排出抑制の主要な手段である。
アメリカ国内市場で販売される自動車を製造している企業は、自社製の自動車および軽トラックの平均燃費を算 出し、合衆国運輸省の国家道路交通安全局 ( National Highway Traffic Safety Administration, NHTSA ) が定める企業 別 平 均 燃 費 を 下 回 ら な い よ う 義 務 付 け ら れ て い る。 前 述 の と お り、 二 〇 〇 七 年 エ ネ ル ギ ー 自 給・ 安 全 保 障 法 に よ り、二〇二〇年までに一ガロンあたり三五マイルという基準が導入済みであった。 二〇〇九年五月一九日、オバマ大統領は、自動車および軽トラックの企業別平均燃費について、二〇一六年まで に一ガロンあたり三五・五マイルという新基準を二〇一二年モデルから採用することを発表し ( 19) た 。EPAとNHT SAは、この内容に沿う形で、二〇一〇年五月七日、軽量自動車の企業別平均燃費および温室効果ガス排出量に関 する最終規則を公表し ( 20) た 。 さらに、二〇一二年八月二八日、EPAとNHTSAは、自動車および軽トラックの企業別平均燃費について、 二〇二五年までに一ガロンあたり五四・五マイルという新基準を二〇一七年モデルから採用する内容の最終規則を 公表し ( 21) た 。 ( 2)中型車および大型車からの温室効果ガス排出規制 二〇一〇年五月二一日、オバマ大統領は、EPAとNHTSAに対して、二〇一四年モデル以降の中型車および 大型車について、企業別平均燃費および温室効果ガス排出量に関する規則を共同で制定するよう求め ( 22) た 。二〇一一 年九月一五日、EPAとNHTSAは、その要請に応えるべく、ピックアップ・トラックやバン、業務用車両、セ ミトラクターについて最終規則を制定し ( 23) た 。対象となる車両のうち、ピックアップ・トラックやバンの企業別平均 燃費の達成は、二〇一四年モデルと二〇一五年モデルについては任意とされている。
7 固定発生源からの温室効果排出ガス規制 ( 1)PSD許可とタイトルV許可 CAAは、EPAに、環境大気質基準 ( National Ambient Air Quality Standards, NAAQS ) を設定することを義務 付けている。NAAQSの達成地域 ( attainment area ) 、あるいは達成地域か未達成地域かに当てはめることができ な い 未 分 類 地 域 ( unclassifiable area ) に お い て、 大 規 模 な 大 気 汚 染 物 質 排 出 施 設 を 新 設 す る か 大 気 汚 染 物 質 排 出 量 を 大 幅 に 増 加 さ せ る よ う な 改 修 を す る 者 は、 新 規 発 生 源 審 査 ( New Source Review, NSR ) の 対 象 と な り、 規 制 当 局 から顕著な大気質悪化防止 ( Prevention of Significant Deterioration, PSD ) 許可を取得しなければならない (一六五条 a 項) 。 申 請 者 は、 許 可 要 件 の 一 つ と し て、 利 用 可 能 な 最 善 の 排 出 抑 制 技 術 ( Best Available Control Technology, BACT ) を 採 用 す る こ と が 義 務 付 け ら れ て い る。 ま た、 大 気 汚 染 物 質 排 出 施 設 は、 新 規・ 既 存 を 問 わ ず、 C A A 第 五編に基づく操業許可 (タイトルV許可) を取得しなければならない。 ( 2)適用時期規則 二〇一〇年四月二日、EPAは、PSD許可およびタイトルV許可がいつの時点から温室効果ガスを対象とする のかについての最終的な判断である適用時期規則を公表し ( 24) た 。 二〇〇八年一二月一八日、ジョンソン長官は、ある汚染物質がPSD許可プログラムの対象となるのは、CAA または同法に基づく規則が当該汚染物質の排出量に関してモニタリングや報告を義務付けることだけでは不十分で あ り、 実 際 に 抑 制 を 義 務 付 け る 場 合 で あ る、 と い う 内 容 の 通 知 を、 各 E P A 地 方 事 務 所 の 所 長 宛 に 発 信 し て い た ( 25) が 、その後、EPAは、このジョンソン・メモランダムについて再考を求められていた。 適用時期規則は、ジョンソン・メモランダムの内容を大筋で踏襲したうえで、温室効果ガスのような汚染物質が
PSD許可の対象となるのは、当該汚染物質の排出量の抑制に関する規則が制定された時点ではなく施行される時 点 で あ る と 解 釈 し、 軽 量 自 動 車 の 企 業 別 平 均 燃 費 お よ び 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 に 関 す る 最 終 規 則 が 施 行 さ れ る 二〇一一年一月二日であると結論付け ( 26) た 。この解釈はタイトルV許可にも適用されるとして、温室効果ガスがタイ トルV許可の対象となる時点も同日となっ ( 27) た 。 ( 3)調整規則 PSD許可もタイトルV許可も、CAAに基づく規則に服するあらゆる汚染物質に適用されるが、それぞれに排 出閾値が設定されていることから、大規模施設のみが対象とされてきた。PSD許可の排出閾値は年間二五〇トン (施設によっては一〇〇トン) 、タイトルV許可の排出閾値は年間一〇〇トンである。この排出閾値の下では、PSD 許可の対象となっていたのは約三〇〇施設、タイトルV許可の対象となっていたのは約一万五千施設であっ ( 28) た 。 しかしながら、CAA上の大気汚染物質となった温室効果ガスについても年間二五〇トンまたは一〇〇トンとい う排出閾値を用いると、PSD許可については約八万二千施設が、タイトルV許可については約六〇〇万施設が対 象となってしまい、許可発行にかかる行政上の負担が膨大になってしまうことが懸念されてい ( 29) た 。 そ こ で、 二 〇 一 〇 年 六 月 三 日、 E P A は、 そ う し た 困 難 を 調 整 す る た め の 規 則 ( Tailoring Rule ) を 公 表 し ( 30) た 。 P SD許可については、新規施設の排出閾値を二酸化炭素換算で年間十万トン、改修を行う既存施設の排出閾値を二 酸化炭素換算で年間七万五千トンに設定し、タイトルV許可については排出閾値を二酸化炭素換算で年間十万トン に 設 定 し ( 31) た 。 こ れ に よ り、 P S D 許 可 の 対 象 と な る の は 約 一 万 五 五 五 〇 施 設 (う ち 約 一 万 五 千 施 設 は 既 に 他 の 大 気 汚 染 物 質 に 関 し て 許 可 を 得 て い る) 、 タ イ ト ル V 許 可 の 対 象 と な る の は 約 一 六 〇 〇 施 設 (う ち 約 七 〇 〇 施 設 は 既 に 他 の 大 気汚染物質に関して許可を得ている) とな ( 32) る 。調整規則は二〇一一年一月二日より段階的に施行されている。
( 4)新規発電所に関する炭素汚染基準案 二〇一二年四月一三日、EPAは、新規の化石燃料火力発電所からの温室効果ガス排出に関する新規排出源性能 基準 ( New Source Performance Standards, NSPS ) を提案し ( 33) た 。その内容は、二五メガワット以上の化石燃料火力発 電所を新設する場合には、メガワットアワーあたりの二酸化炭素排出量を一〇〇〇ポンド以下にするという、天然 ガス複合発電所と同水準の基準を採用するというものである。この提案は、二〇一〇年一二月二三日にEPAが州 や環境保護団体 ( 34) ら と交わした化石燃料火力発電所からの温室効果ガス排出規制に関する合意に基づいてい ( 35) る 。その 内容は、天然ガス・石油・石炭火力発電所を新設または改修する場合に遵守すべきNSPSと既存の化石燃料火力 発 電 所 か ら の 排 出 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン を 設 定 す る 規 則 を 二 〇 一 一 年 六 月 二 六 日 ま で に 提 案 し、 二 〇 一 二 年 五 月 二六日までに最終規則として公表するという内容であったが、遅延している。 化石燃料火力発電所からの温室効果ガス排出に関する合意を結んだ同日、EPAは、原油精製所業界からの温室 効果ガス排出規制に関しても、州や環境保護団体 ( 36) ら と合意を結んでいた。その内容は、原油精製所内の異なるポイ ントで排出される温室効果ガスを含む汚染物質に同時に対処するための規則を二〇一一年一二月一〇日までに提案 し、二〇一二年一一月一〇日までに最終規則として公表するというものであった。しかしながら、こちらも遅延し ている。 アメリカ国内で温室効果ガスを最も多く排出しているのは発電所業界であり、また、精製所業界からの温室効果 ガス排出量はアメリカ国内の固定発生源のうち二番目に多い。これら二つの業界からの排出量の総計は、アメリカ 国内の温室効果ガス排出量の四〇%近くを占めており、それぞれについて規則が制定されることによって、アメリ カ国内の温室効果ガス排出量は相当に削減されることになるだろう。
二
行政庁に対する気候変動抵抗訴訟―
Coalition for Responsible Regulation v. EPA
事件 連邦の気候変動対策に抵抗する産業団体や州は、EPAが、危険性認定、軽量自動車規則、適用時期規則、調整 規則について、CAAを不適切に解釈した、あるいは、恣意的・専断的であったと主張して、DC巡回区合衆国控 訴裁に異議を申し立てた。それらの申立ては併合して判断されることになった。 二 〇 一 二 年 二 月 二 八 日 と 二 九 日 の 二 日 間 に わ た っ て 口 頭 弁 論 が 行 わ れ た 後、 六 月 二 六 日、 控 訴 裁 は、 全 員 一 致 で、①危険性認定および軽量自動車規則について恣意的でも専断的でもなく、②CAAの関連規定に関するEPA の解釈は曖昧さを残すことなく正しく、③いずれの申立人も適用時期規則および調整規則について申立てを行う資 格がないとして、すべての申立てを退けたのであっ ( 37) た 。 三 連邦議会の動向 1 第一一一議会 第 一 一 一 議 会 (二 〇 〇 九 年 一 月 三 日 か ら 二 〇 一 一 年 一 月 三 日 ま で) で は、 民 主 党 議 員 を 中 心 に、 包 括 的 な 気 候 変 動 対策の立法化に向けた大きな動きがあった。 ( 1)アメリカ・クリーン・エネルギーおよび安全保障法案 二 〇 〇 九 年 五 月 一 五 日、 下 院 エ ネ ル ギ ー・ 商 業 委 員 長 の ワ ッ ク ス マ ン 下 院 議 員 (民 主 党) と 同 委 員 会 エ ネ ル ギ ー・ 環 境 小 委 員 長 の マ ー キ ー 下 院 議 員 (民 主 党) ら に よ る ア メ リ カ・ ク リ ー ン・ エ ネ ル ギ ー お よ び 安 全 保 障 法 案 ( American Clean Energy and Security Act of 2009 )(ワックスマン=マーキー法案、H.R.二四五四) が、下院に提出 され ( 38) た 。
法案は、全五編からなり、第一編「クリーン・エネルギー」には、再生可能エネルギー基準、炭素回収・隔離技 術、新規石炭火力発電所の性能基準、電気自動車の研究開発支援、スマートグリッドの振興などに関する規定が、 第 二 編「エ ネ ル ギ ー 効 率 性」 に は、 建 造 物、 照 明・ 電 化 製 品、 輸 送 の エ ネ ル ギ ー 効 率 プ ロ グ ラ ム 等 に 関 す る 規 定 が、第四編「クリーン・エネルギー経済への移行」には、炭素リーケージの防止、グリーン雇用の創出、気候変動 へ の 適 応 な ど に 関 す る 規 定 が あ っ た。 そ し て、 本 法 案 で も っ と も 注 目 さ れ て い た 温 室 効 果 ガ ス の キ ャ ッ プ・ ア ン ド・トレード・プログラムは、第三編「地球温暖化汚染の削減」と第五編「農林業に関連するオフセット」におい て規定されていた。 本法案で提案されていたキャップ・アンド・トレード・プログラムでは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、 ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄、三フッ化窒素の七種類の温室効果ガスを 年間二万五千トン以上排出する固定発生源、石油燃料の製造者および輸入者、天然ガスの供給者、フッ素系温室効 果 ガ ス の 製 造 者 な ど か ら の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 を、 二 〇 〇 五 年 比 で 二 〇 一 二 年 に 三 %、 二 〇 二 〇 年 に 一 七 %、 二 〇 三 〇 年 に 四 二 %、 二 〇 五 〇 年 に 八 三 % 削 減 す る こ と を 目 標 と し て い た。 排 出 量 の 割 当 方 法 は、 無 償 (グ ラ ン ド・ フ ァ ザ リ ン グ) と 有 償 (オ ー ク シ ョ ン) の 組 合 せ で、 有 償 割 当 の 割 合 を 増 や し て い く こ と が 予 定 さ れ て い た。また、二〇億トンまで国内外のオフセット・クレジットが利用可能とされ、バンキングについては無制限に可 能、ボローイングについても一定の制限の下に可能としていた。 本法案は、同年六月二六日に下院本会議において二一九対二一二の僅差で可決され、上院に回付されたが、会期 切れで廃案となった。
( 2)クリーン・エネルギー雇用およびアメリカ発電法案 二 〇 〇 九 年 九 月 三 〇 日、 上 院 外 交 委 員 長 の ケ リ ー 上 院 議 員 (民 主 党) と 上 院 環 境・ 公 共 事 業 委 員 長 の ボ ク サ ー 上 院 議 員 (民 主 党) ら に よ る ク リ ー ン・ エ ネ ル ギ ー 雇 用 お よ び ア メ リ カ 発 電 法 案 ( Clean Energy Jobs and American Power Act )(ケ リ ー = ボ ク サ ー 法 案、 S. 一 七 三 三) が 上 院 に 提 出 さ れ た。 本 法 案 も、 ワ ッ ク ス マ ン = マ ー キ ー 法 案 と同様に、キャップ・アンド・トレード・プログラムの導入を中核に据えていた。本法案は、同年一一月五日に上 院環境・公共事業委員会において可決されたが、その際に共和党議員の支持を得ることはできなかった。その後、 同法案は、会期切れで廃案となった。 ( 3)アメリカ発電法案 二 〇 一 〇 年 五 月 一 二 日 に は、 ケ リ ー 上 院 議 員 と 上 院 国 土 安 全 保 障・ 政 府 問 題 委 員 長 の リ ー バ ー マ ン 上 院 議 員 (無 所 属) ら に よ る キ ャ ッ プ・ ア ン ド・ ト レ ー ド・ プ ロ グ ラ ム の 導 入 を 含 む ア メ リ カ 発 電 法 案 ( American Power Act ) (ケリー=リーバーマン法案) が公表されたが、連邦議会に提出されることはなかった。 2 第一一二議会 二〇一〇年一一月の中間選挙において民主党が大敗した結 ( 39) 果 、下院では共和党が多数党となった。オバマ大統領 が、 二 〇 一 二 年 の 一 般 教 書 演 説 の な か で、 「包 括 的 な 気 候 変 動 対 策 案 を 通 す に は、 今 は 議 会 内 で の 意 見 の 相 違 が 深 刻 過 ぎ る か も し れ な ( 40) い 」 と 述 べ た よ う に、 ね じ れ 状 態 と な っ た 第 一 一 二 議 会 (二 〇 一 一 年 一 月 三 日 か ら 二 〇 一 三 年 一 月三日) において、気候変動対策立法の成立に向けた動きはなかった。 第一一二議会では、むしろ、EPAの温室効果ガス規制権限を弱めるための法案が数多く提出され ( 41) た 。それらの
なかでも有力視されたのは、二〇一一年三月三日にアプトン下院議員 (共和党) 、ウィットフィールド下院議員 (共 和党) 、インホフ上院議員 (共和党) らが下院に提出したエネルギー税防止法案 ( Energy Tax Prevention Act )(H. R. 九 一 〇) で あ る。 そ の 内 容 は、 C A A の 規 制 対 象 か ら 温 室 効 果 ガ ス を 除 外 し、 E P A に 温 室 効 果 ガ ス に 関 す る 規則を発することを遡及的に禁じるものである。すなわち、EPAが単独で行ったカリフォルニア基準の承認、温 室効果ガス排出量報告プログラム、危険性認定と原因・寄与認定、適用時期規則、調整規則などが無効化されるこ とを意味する。本法案は、同年三月一五日には下院エネルギー・商務委員会で可決され、四月七日には下院本会議 を通過した。しかしながら、上院において法案が可決されるためには六〇票を必要とするため、民主党が僅差では あるが過半数を占める状況において、本法案は成立しなかった。 さらに、第一一二議会では、予算編成過程においてEPAの温室効果ガス規制権限を弱めようとする動きがみら れた。二〇一一年四月一四日の二〇一一年会計年度予算継続決議において、EPAの温室効果ガス排出規制のため の 予 算 は 削 減 を 免 れ た が、 海 洋 大 気 庁 の 気 候 変 動 関 連 プ ロ グ ラ ム で あ る 気 候 サ ー ビ ス ( Climate Service ) お よ び エ ネルギー・気候変動担当大統領補佐官のための予算はゼロとされ、気候変動に関する国際支援のための予算は大幅 に削減された。 四 小括 本 章 で は、 Massachusetts v. EPA 合 衆 国 最 高 裁 判 決 後 の 連 邦 レ ベ ル に お け る 気 候 変 動 政 策 の 展 開 を 紹 介 し た。 オバマ大統領とジャクソン長官率いるEPAは、気候変動対策に積極的な姿勢を示してきた。それを可能にしたの は、温室効果ガスがCAAの「大気汚染物質」の定義に当てはまるとし、かつ、EPAに温室効果ガス規制権限が
あ る と し た Massachusetts 判 決 の 存 在 に ほ か な ら な い。 本 判 決 が あ っ た か ら こ そ、 危 険 性 認 定 お よ び 原 因・ 寄 与 認定から現在に至るまでの温室効果ガス排出規制の流れが出来たと評価できる。 オバマ大統領とEPAを悩ませているのは、連邦議会による抵抗である。二〇一二年大統領選挙においてオバマ 大統領が再選されたことにより、EPAの温室効果ガス規制権限を直接的にはく奪するような法案が可決されたと しても、大統領拒否権を行使することで対抗できるが、気候変動関連予算の削減については、大幅な財政赤字のな かで、EPAが同予算を特別扱いするよう要求していくのは難しいだろう。キャップ・アンド・トレード方式によ る温室効果ガス排出量取引制度を含む包括的な温室効果ガス対策案が立法化されれば、排出量オークションによる 収入も見込めるのであろうが、その目途は立っていない。 第三章 気候変動訴訟の事業者行動への影響 1 気候変動情報の開示に関する指針の公表 気候変動の影響は、異常気象による人や財物への被害といった物理的なものに限られない。第一章および第二章 で見てきたように、気候変動訴訟、そして訴訟を契機とした連邦レベルでの温室効果ガスに対する規制の展開は、 事業者に大きな影響を与えている。近年、こうした規制リスクや訴訟リスクを含めた気候変動リスクに関する情報 の開示が、機関投資家を中心に求められてき ( 42) た 。 二 〇 一 〇 年 二 月 八 日、 証 券 取 引 委 員 会 ( Securities and Exchange Commission, SEC ) は、 気 候 変 動 情 報 の 開 示 に 関 する指針を公表し ( 43) た 。これは、SEC登録企業が作成する年次報告書に記載する非財務情報について規定している
SEC規則S―K ( 44) を 、気候変動問題に適用させることを目的としている。 S E C は、 本 指 針 を 公 表 し た 背 景 を 説 明 す る な か で、 E P A に よ る 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 報 告 プ ロ グ ラ ム の 導 入 と、危険性認定および原因・寄与認定以降の温室効果ガスに対する規制強化について言及している。 2 指針の概要 ( 1)規則S―Kにおける関連条項 指針は、規則S―Kのうち、気候変動に関する開示が要求される可能性のある条項として、以下の四つを挙げて いる。 ①一〇一条 事業の説明 規則S―K一〇一条は、登録企業に、自社および子会社の事業活動について記述することを義務付けている。そ の 中 に は、 環 境 保 護 法 令 の 遵 守 に か か る 費 用 に 関 す る 情 報 も 含 ま れ て い る。 登 録 企 業 は、 環 境 法 規 の 遵 守 に 伴 っ て、資本支出、収益、競争上の地位に重大な影響がある場合、そのことを開示しなければならない。 ②一〇三条 法的手続 規則S―K一〇三条は、登録企業に、自社またはその子会社が当事者である重大な法的手続について記述するこ とを義務付けている。事業に付随して生じる通常の日常的な訴訟については開示する必要はない。 一 〇 三 条 の 解 釈 五 は、 環 境 保 護 法 令 に 基 づ く 行 政 手 続 ま た は 司 法 手 続 が、 ⅰ 登 録 企 業 の 経 営 ま た は 財 務 状 況 に とって重要であるもの、ⅱ損害賠償や金銭的制裁等に関わるものであり、その額が自社およびその子会社の連結上 の流動資産の一〇%を超えるもの、あるいはⅲ政府機関が当事者であり、科されうる金銭的制裁の額が一〇万ドル
を超えるものに該当する場合は、事業に付随して生じる通常の日常的な訴訟とはみなされないとしている。 ③五〇三条c項 リスク要因 規則S―K五〇三条c項は、登録企業に、必要に応じて、自社への投資を投機的または危険なものにする最も重 大な要因を、リスク要因として開示することを義務付けている。登録企業は、そのリスクについて、そして特定の リスクがどのように影響するのかについて、明確に説明することを求められる。 ④三〇三項 経営者による財政状態および経営成績の検討と分析 規 則 S ― K 三 〇 三 条 は、 登 録 企 業 に、 経 営 者 に よ る 財 政 状 態 お よ び 経 営 成 績 の 検 討 と 分 析 ( Managementʼs Dis
-cussion and Analysis of Financial Condition and Results of Oper
ations, MD&A ) に関する開示を義務付けている。 ( 2)開示対象となりうる情報 指針は、以下の四分野において、気候変動に関連する開示対象となりうる情報を挙げている。 ①法令の影響 気候変動関連法令が大いに発展している状況において、登録企業は、現行法令および法案・規則案によるマイナ スの影響だけでなく、新たな機会についても開示することを検討すべきであるとする。気候変動関連法令の影響例 としては、ⅰキャップ・アンド・トレード制度に基づく排出量の購入費用や販売利益、ⅱ規制による上限を遵守す るために排出量を削減するための施設や設備を改良するために必要な費用、または、キャップ・アンド・トレード 制度の財政への影響を緩和するために必要な費用、ⅲ法令から直接的に生じる、あるいは、販売される商品の費用 の変化から間接的に生じる、登録企業が生産する商品やサービスへの需要の増減による損益の変化が挙げられてい る。
②国際的な合意 登録企業は、京都議定書やEUの排出量取引制度のような、気候変動に関する条約や国際的合意が事業に与える 重大な影響について開示することを検討すべきであるとしている。 ③規制またはビジネストレンドによる間接的影響 気候変動に関する法的・技術的・政治的・科学的発展は、登録企業にとって新たな機会やリスクを生み出すとし て、ⅰ温室効果ガス排出量を顕著に増加させる商品の需要の減少、ⅱ競合する製品よりも温室効果ガス排出量の少 ない商品の需要の増加、ⅲ革新的な新製品の開発競争の増加、ⅳ代替エネルギー源からのエネルギーの生成や伝送 に関する需要の増加、ⅴ炭素ベースのエネルギー源に関するサービスの需要の減少などのビジネストレンドやリス クを開示することが要求される可能性があるとしている。 さ ら に、 開 示 が 検 討 さ れ る 気 候 変 動 か ら の 間 接 的 リ ス ク の 例 と し て、 登 録 企 業 の 評 判 へ の 影 響 が 挙 げ ら れ て い る。登録企業の温室効果ガス排出量に関して公表されているデータによって、その評判が損なわれ、事業活動や財 政状態が悪化する可能性を検討しなければならないことがあるとする。 ④気候変動のもたらす物理的影響 過 剰 な 温 室 効 果 ガ ス に よ っ て 生 じ る 気 候 変 動 に よ る 洪 水 や ハ リ ケ ー ン の よ う な 悪 天 候、 海 面、 農 地 の 耕 作 可 能 性、水の入手可能性と水質への影響は、登録企業の操業と業績に影響を与えうるとして、ⅰ海岸沿いに集中して操 業する登録企業にとっては、財産的損害および製造や製品の輸送を含む操業の中断、ⅱハリケーンや洪水のような 悪天候による主要な顧客やサプライヤーの操業の中断によって間接的に受ける財政や操業への影響、ⅲ保険会社お よび再保険会社への保険金請求や責任の増加、ⅳ干ばつ等の天候の変化によって影響を受ける地域における農業生
産能力の減少、ⅴ悪天候の対象となる地域で施設を有するか操業する登録企業にとっては、保険料や免責額の増加 や補償範囲の減少について開示することを検討すべきであるとしている。 おわりに 本稿では、アメリカにおける気候変動訴訟がどのように展開してきたか、そして、それらの訴訟が政策形成や事 業者行動にどのような影響を与えているのかについて検討した。第一章では、行政庁に対する気候変動対策促進訴 訟、公共信託理論に基づく大気信託訴訟、ニューサンス等の不法行為に基づいて温室効果ガス排出量の削減や気候 変動による現在および将来の損害の賠償を求める訴訟、そうした気候変動ニューサンス訴訟から派生する保険会社 を被告とする訴訟といった様々なタイプの気候変動訴訟を紹介した。第二章では、行政庁に対する気候変動対策促 進 訴 訟 で あ っ た Massachusetts v. EPA に お け る 合 衆 国 最 高 裁 判 決 に よ っ て、 ど の よ う な 気 候 変 動 対 策 が 連 邦 レ ベ ルで行われることになったのかを時系列で追った。第三章では、訴訟によって規制が進展し、それが事業者行動に 影響した例として、気候変動情報の開示制度を取り上げた。 第一章で紹介したような気候変動訴訟を日本で提起するならば、行政訴訟においては、やはり原告適格が問題と なるであろうし、民事訴訟―損害賠償請求訴訟・差止訴訟―においては、因果関係や受忍限度、相手方が複数であ れば共同不法行為の成否といった様々な問題について争われることになる。現状では、冒頭で言及した公害等調整 委員会調停申請却下処分取消訴訟 ( 45) と 、一連の温暖化防止情報開示訴 ( 46) 訟 があるのみである。前者については、弁論が 開始されたばかりであり、政策形成や事業者行動への影響を検討するには時期尚早であるが、後者については、温
暖化防止情報を非開示としていた事業所の多くが自主的に開示に転じるという効果をもたらしており、大いに評価 されるべきである。 今後は、これら日本の気候変動訴訟の展開とその課題について、また、本稿で検討できなかったアメリカの気候 変動訴訟の州の政策形成への影響やSEC指針以外の事業者行動への影響について研究していきたい。 【補論一―大気信託訴訟について】 第一章で紹介した大気信託訴訟の一つに Alec L. v. Jackson 事件がある。 二〇一一年一二月、五人の若者と二つの環境保護団体は、EPAなどの気候変動対策に関わる連邦行政機関の長 らを被告として、合衆国政府が公共の信託財産である大気を保護・保全する信任義務を負っていることとそうした 義務に違反していることの確認や、被告らが二酸化炭素排出量を削減するための措置を取ることを求める訴訟を、 DC地区合衆国地方裁判所に提訴した。 二〇一二年五月三一日、地裁は、公共信託理論が主に州法として発展してきたことから連邦問題ではないこと、 たとえ連邦コモ ン・ローの問題であると してもCAAによって排除 されることを理由に、本件 を却下した ( Alec L.
v. Jackson, 2012 U.S. Dist. LEXIS 75791
( May 31, 2012 )) 。 【補論二― Kivalina 訴訟について】 同 じ く 第 一 章 で 紹 介 し た 気 候 変 動 ニ ュ ー サ ン ス 訴 訟 で あ る Native Village of Kivalina v. ExxonMobil Corporation 事 件 に お い て、 二 〇 一 二 年 九 月 二 二 日、 第 九 巡 回 区 合 衆 国 控 訴 裁 判 所 は、 AEP v. Connecticut 合 衆 国 最 高 裁 判 決
注
(
1)
Massachusetts v. EPA, 249 Fed. Appx. 829
( D.C. Cir. 2007 ). ( 2) Executive Order 13432, Cooperation among Agencies in Protecting the Environment with Respect to Greenhouse Gas Emissions
from Motor Vehicles, Nonroad Vehicles, and Nonroad Engines
( May 14, 2007 ). ( 3) Pub. L. 110-140. ( 4)
National Highway Traffic Safety Administration, Summary of Fuel E
conomy Performance ( Mar. 12, 2012 ). ( 5) Section 102 ( b )( 2 )( A ). ( 6)
Decision Denying a Waiver of Clean Air Act Preemption,
73 Fed. Reg. 12156 ( Mar. 6, 2008 ). ( 7) President Bush Discusses Climate Change, available at http://georgewbush-whitehouse.archives.gov/news/releas -es /2 00 8/ 04/20080416-6.h tm l (
last visited Sep. 1, 2012
). ( 8) Id. ( 9)
Regulating Greenhouse Gas Emissions under the Clean Air Act, 73
Fed. Reg. 44354 ( proposed July 30, 2008 ). を 引 用 し、 「一 つ の 訴 因 が 排 除 さ れ る な ら、 排 除 は あ ら ゆ る 救 済 へ と 拡 大 適 用 さ れ る」 の で、 原 告 ら の 損 害 賠 償 請 求権も排除されるとして、 原判決を維持した (
Native Village of Kivalina v. ExxonMobil Corporation, 2012 U.S.
App. LEXIS 19870 ( 9th Cir. 2012 )。一〇月四日、原告らは大法廷での再審理を申し立てた( Native Village of Kivalina
v. ExxonMobil Corporation, Petition for Rehearing En Banc
( 9th Cir. Oct. 4, 2012 )) 。 (本稿は、二〇一一年度住友財団環境研究助成による研究成果の一部である。 )
( 10) Id. ( 11)
Remarks of President Barack Obama – As Prepared for Delivery Ad
dress to Joint Session of Congress
( Feb. 24, 2009 ). ( 12)
Office of Management and Budget, A New Era of Responsibility: Ren
ewing Americaʼs Promise
( Feb. 26, 2009 ). ( 13) California State Motor Vehicle Pollution Control Standards; Notice of Decision Granting a Waiver of Clean Air Act Preemp -tion for Californiaʼs 2009 and Subsequent Model Year Greenhouse Gas Emission Standards for New Motor Vehicles, 74 Fed. Reg. 32744 ( July 8, 2009 ). ( 14) Pub. L. 110-161. ( 15)
Mandatory Reporting of Greenhouse Gases Rule, 74 Fed. Reg. 5626
0 ( Oct. 30, 2009 ). ( 16)
EPA ghgdata, available at http://ghgdata.epa.gov/ghgp/main.do
(
last visited Sep. 4, 2012
). ( 17) Endangerment and Cause or Contribute Findings for Greenhouse Gases under Section 202 ( a ) of the Clean Air Act; Final
Rule, 74 Fed. Reg. 66496
( Dec. 15, 2009 ). ( 18) EPAʼs Denial of the Petitions to Reconsider the Endangerment and Cause or Contribute Findings for Greenhouse Gases un -der Section 202 ( a )
of the Clean Air Act, 75 Fed. Reg. 49556
( Aug. 13, 2010 ). ( 19) Obama Administration National Fuel Efficiency Policy: Good for Consumers, Good for the Economy and Good for the Co un -try, available at http://www.whitehouse.gov/the_press_office/Fact-Sheet-and-Particp ants-at-Todays-Rose-Garden-Event ( last visited Sep. 2, 2012 ). ( 20) Light-Duty Vehicle Greenhouse Gas Emission Standards and Corporate Average Fuel Economy Standards; Final Rule, 75 Fed. Reg. 25324 ( May. 7, 2010 ). ( 21) 2017 and Later Model Year Light-Duty Vehicle Greenhouse Gas Emissions and Corporate Average Fuel Economy Stand -ards ( Aug. 23, 2012 ). ( 22) Presidential Memorandum Regarding Fuel Efficiency Standards, available at http://www.whitehouse.gov/the-press-office/
presidential-memorandum-regarding-fuel-efficiency-standards ( last visited Sep. 4, 2012 ). こ の メ モ ラ ン ダ ム に お い て は、 前 述 の 二〇一七年モデルから二〇二五年モデルまでの軽量自動車の企業別平均燃費の設定も求められていた。 ( 23) Greenhouse Gas Emissions Standards and Fuel Efficiency Standards for Medium- and Heavy-Duty Engines and Vehicles, 76 Fed. Reg. 57106 ( Sep. 15, 2011 ). ( 24) Reconsideration of Interpretation of Regulations that Determine Pollutants Covered by Clean Air Act Permitting Programs, 75 Fed. Reg. 17004 ( Apr. 2, 2010 ). ( 25) EPAʼs Interpretation of Regulations that Determine Pollutants Covered by Federal Prevention of Significant Deterioration ( PSD ) Permit Program ( Dec. 18, 2008 ). ( 26) 75 Fed. Reg. 17019-17020. ( 27) 75 Fed. Reg. 17022-17023. ( 28)
See U.S. EPA, Overview of Proposed PSD/Title V Greenhouse Gas T
ailoring Rule ( Dec. 10, 2009 ). ( 29) Summary of Clean Air Act Permitting Burdens with and without the Tailoring Rule, available at http://www.epa.gov/NSR/ documents/20100413piecharts.pdf (
last visited Sep. 6, 2012
).
(
30)
Prevention of Significant Deterioration and Title V Greenhouse G
as Tailoring Rule, 75 Fed. Reg. 31514
( June. 3, 2010 ). ( 31) Settlement Agreement for Fossil Fuel-Fired Power Plants, available at http://www.epa.gov/airquality/cps/pdfs/boilerghg -settlement.pdf (
last visited Sep. 12, 2012
). ( 32) See supra 29. ( 33) Standards of Performance for Greenhouse Gas Emissions for New Stationary Sources: Electric Utility Generating Units, 77 Fed. Reg. 22392 ( Apr. 13, 2012 ). ( 34) 一一の州、ワシントンDC、ニューヨーク市と、三つの環境保護団体である。 ( 35) Settlement Agreement for Petroleum Refineries, available at http://www.epa.gov/airquality/cps/pdfs/refineryghgsettlement.
(
last visited Sep. 12, 2012
). ( 36) 一二の州、ワシントンDC、ニューヨーク市と、三つの環境保護団体であり、化石燃料火力発電所からの温室効果ガス排出に 関する和解の当事者とは一部異なっている。 ( 37)
Coalition for Responsible Regulation v. EPA, 684 F.3d 102
( D.C. Cir. 2012 ). ( 38) すでに二〇〇九年三月三一日には討議草案が公表されていた。 ( 39) 民 主 党 は 、 上 院 に お い て は 一 〇 〇 議 席 中 五 七 か ら 五 一 へ 、 下 院 に お い て は 四 三 五 議 席 中 二 五 六 か ら 一 九 三 へ と 議 席 を 減 ら し た 。 二 〇 一 二 年 大 統 領 選 挙 と 同 日 に 行 わ れ た 連 邦 議 会 選 挙 に よ り 、 民 主 党 は 、 上 院 に お い て は 改 選 前 と 同 数 の 五 一 議 席 を 確 保 し た が 、 下 院 に お い て は 一 九 一 議 席 と な っ た 。 ( 40)
Remarks by the President in State of the Union Address
( Jan. 24, 2012 ). ( 41) See Center for Climate and Energy Solutions, Climate Debate in Congress, available at http://www.c2es.org/print/federal/ congress (
last visited Sep. 20, 2012
). ( 42) 気候変動情報の開示については、日本においても検討が進められている。中央環境審議会総合政策部会の環境と金融に関する 専門委員会は、二〇一〇年六月に、報告書の中で、金融商品取引法に基づく体系の中において有価証券報告書を通じた環境関連情 報の開示に必要な措置が講じられることを望みたい、と述べている(中央環境審議会総合政策部会環境と金融に関する委員会「環 境と金融のあり方について~低炭素社会に向けた金融の新たな役割~」 (二〇一〇年六月一五日)一七頁) 。その後、環境省は、企 業の環境情報開示のあり方に関する検討委員会を設置し、同委員会は、二〇一一年三月に、中間報告書の中で、環境経営と環境情 報開示の一層の促進を図るため、現状の環境報告ガイドラインと環境会計ガイドラインの改訂について提言した(企業の環境情報 開示のあり方に関する検討委員会「企業の環境情報開示のあり方について~強固で持続可能な社会に向けた環境情報開示~(中間 報告) 」(二〇一一年六月二三日)四八頁) 。 ( 43) Commission Guidance Regarding Disclosure Related to Climate Change, 75 Fed. Reg. 6290 ( Feb. 8, 2010 ). 日本語による紹介 や 評 価 と し て、 野 崎 麻 子「気 候 変 動 情 報 の 投 資 家 向 け 制 度 開 示」 別 冊 会 計 情 報 九 巻 四 〇 ― 四 二 頁(二 〇 一 〇 年) 、 川 原 尚 子「企 業
年次報告における気候変動情報開示―SEC解釈通達『気候変動関連開示に関する委員会指針』の評価」商経学叢五七巻一号三一 ― 六 一 頁(二 〇 一 〇 年) 、 永 野 秀 雄「米 国 の 公 開 企 業 と 気 候 変 動 リ ス ク ― 米 国 連 邦 証 券 取 引 委 員 会『気 候 変 動 に 関 す る 情 報 開 示 指 針』 の 検 討」 人 間 環 境 論 集 一 一 巻 一 号 一 ― 一 九 頁(二 〇 一 一 年) 、 宮 本 薫・ 小 林 優 介「米 国 の 公 開 企 業 と 気 候 変 動 リ ス ク ― 米 国 連 邦証券取引委員会『気候変動に関する情報開示指針』 」NKSJレポートE― 9(二〇一一年)がある。 ( 44) Standard Instructions for Filing Forms under Securities Act of 1933, Securities Exchange Act of 1934 and Energy Policy and
Conservation Act of 1975-Regulation S-K, 17 CFR Part 229
( 2012 ). ( 45) 詳細は、クライメットJのウェブサイト( http://climate-j.org/ )を参照。 ( 46) 温 暖 化 防 止 に 取 り 組 む N G O で あ る 気 候 ネ ッ ト ワ ー ク は、 経 済 産 業 省 に 対 し て、 省 エ ネ 法 第 一 種 指 定 事 業 所 に つ い て、 二〇〇三年度分の燃料別電気の種類別消費量についての定期報告情報の開示を求めたところ、七五三の事業所について不開示と決 定されたことから、それらのうちの代表的な事業所の情報開示を求めて、二〇〇五年七月、東京、大阪、名古屋において訴訟を提 起した。二〇一一年一〇月一四日、最高裁は、それぞれの訴訟において、当該情報が情報公開法五条二号イ所定の不開示情報に当 たると判断した。詳細は、気候ネットワークのウェブサイト( http://www.kikonet.org/research/disclosure.html )を参照。 ―おおさか えり・法学部准教授―