- 79 -
中学生における非行傾向とセルフコントロールおよび感情言語化能力との関連
人 間 教 育 専 攻
臨床心理士養成コース
荒 居 知 佳
1
.
問題と目的
平成
27
年上半期少年手肖刊育勢(普窮
T
,
2
0
1
5
)
によると,少年の検挙人員およて湘導入員は減
少傾向にある一方で,マスコミにより大きく報
道されるような,少年による凄惨な事件が多数
発生している。さらに闇路率の上昇,少年非
行の低年齢化が続いており,少年桝子を取り巻
く情勢は厳しい状況にあるとされている。手尚子
は深化する織川,
19
鈎)ことから,より重
篤な樹子の発生を防ぐためには,非伺空の軽微
な時点での介入が必要であると考える。
これまでの研究で,手同刊〉年の知能指数につ
いて,言語性
IQ
の低さ
(
G
l
u
e
c
k
&
G
l
u
e
c
k
,
1
9
5
0
;緒方,
2
∞>8)や言語的スキルの乏しさ
仙
n
む
ews&
Bo
n
胞,
1
9
9>8)が指摘されてき
た。藤岡 (2∞1)は,この言語能力の不足が犯
罪行動の重要な要因である可能性を指摘してお
り
,
r
言葉によって自分の考えや気持ちを表現し,
他に伝えたり,他のそれらを理解し,コミュニ
ケートする力の不足が,手尚子・犯罪という行動
化につながる」としている。非行化した少年は,
嫌悪と悲しみの表情を認識し辛い(佐藤,
2
0
0
0
)
という指摘から,他者の感情を正しく認識でき
ないと考えられるが,これは言語能力が低いた
めに自分の樹育を正しく理解できないことが一
つの理由ではなし功吃考える。
また,村岡ら@∞6)では, r.感情への気づ
き
J
および「言語化能力
J
が低いと,身体守安
指導教員 葛 西 真 記 子
情を使って怒りを表出しやすいことが示された。
姉小路・越智
(
2
0
0,扮では,感
f
育詑識及び言語
化の不全が攻撃性を促進する効果を持っている
ことが明らかになった。このように,自身の感
情に気付き,言葉にすることの苦手さが身体的
な表現ヰ噛若への攻撃へと繋がる可能性が考え
られた。
さらに,手尚子と関連する要因としてセルフコ
ントロづレの低さが指摘されている鈴木ら,
I
鈎
6;
河野・岡本,
2001;
金子,
2
0
1
2
)
。この
セルフコントロールの低い人というのは「種動
的で鈍感,肉榊句(精神的倒的,官側句,近視
眼的で非言語傾向」がある(Oo拙
e
d
s
o
n
&
日r田
b
i
,
1
9
9
0
)
とされることから,セルフコ
ントロールの低さは感情を言語化する力の低さ
に起因すると推測される。したがって,感情を
言語化する能力の不足がセルフコントロールを
低め,そのセルフコントロールの低さが非有傾
向を促進すると考えられる。
以上より,自己や他者の感情を同定し表現す
る能力が低いと,セルフコントロールを低め,
手向子のリスクが高まると考えられる。しかし,
このことについて調査した実証自慨究は, 日本
においてみられない。よって本研究では,感情
言語化能力とセルフコントロールおよて舟肖子傾
向との関連を明らかにすることを目的とした。
2
方法
A県内 B
地区の公立中学校
2
校の
1
"
"
'
-
'
3
年生
- 80 -
621
名を対象とし,アンケート調査を行った。
クラスごとの一斉調査を実施した結果,回収率
は
9
6
.
9
%
であった。全調査対象のうち回答内容
に不備のあったものなどを除き,
587
名分のデ
ータ
(
1
年生男子
8
1
名,女子
84
名,
2
年生男
子
1
0
5
名,女子
1
0
7
名,
3
年生男子
1
0
2
名,女
子
1
0
6
名,不明
2
名)を分析対象とした。調査
内容には,①フェイスシート,②感情言語化能
力に関する尺度
(
1
4
項目
5
件法;得点が高いほ
ど,感情言語化能力は低くなる),③セルフコン
トローノレに関する尺度
(
1
2
項目
4
件法;得点が
高いほど,セルフコントロールは低くなる),④
手尚子傾向に関する尺度(1
5
項目
3
件法), ~感
情言語イ織力に関する自由言謎 (2項目)を含
めた。なお,本研究では,統計解析ソフト
f
f
i
M
SPSS2
1
.
0および計量テキスト分析ソフト阻E
Co
吋
.
e
r
を用いた。
3
.
結果
感情言語化能力とセルフコントロールおよ
て舟肖刊頃向との関連を明らかにするために,相
関分析を行った。その結果,感情言語化能力と
セルフコントロールとの聞に弱い正の相関
(r-=.2
3
,p<
.
0
1
)
,セルフコントローノレと非行傾
向との聞に中程度の正の相関
C
r-=
.
4
2
,pく
.
0
1
)
が認められた。一方で,感情言語化能力と非行
傾向との聞に相関は認められなかった(r-=
.
0
8
,
p<.05)
。
さらに,感情言語化能力の自由言自主について,
感情言語化能力の高低,セルフコントロールの
副丘,非行傾向の有無による特徴を明らかにす
るために,計量テキスト分析を行った。その結
果,感情言語化能力およびセルフコントロール
が低い群は高い群よりも,一人当たりの表出す
る語棄激が少なく,よく分化された樹育語を表
出する害j合が高かった。一方で、、感情言語化能
力およびセルフコントロールの高い群では、未
分化の感情語や樹育の幅を示す語が抽出され,
状況や自身の心境を説明する語を表出する害j合
が高かった。また,ポジティブ感情を喚起する
場面においては,手将刊頃向の無い群は有る群よ
りも一人当たりの表出する語嚢数が多く,よく
分化された劇育語や制兄を説明する語を表出す
る割合が高かった。その一方で,ネガティブ感
情を喚起する場面においては,非伺頃向の有る
群は無い群よりも一人当たりの表出する語葉数
が多く,よく分化された劇育語を表出する割合
が高いとしづ結果が得られた。
4
.
考察
本研究において,感情言語化能力と非有傾向
との関連は認められず,感情言語帥巨力は桝子
傾向と直張関連があるとはいえないことが明ら
かになった。一方で、,非行の先行要因であると
されてきたセルフコントロールと感情言語化能
力との関連が見られたことから,感情言語化能
力の不足が他の手尚子のリスク要因と重複した時
に,非行という形で表出される可能性が高くな
ると考えられた。また,感情言語化能力に関す
る自由記述の結果的献すると,感情言割強
力の不足による,感情を詳細に叙述することの
難しさがセルフコントロールに影響し,非千司頃
向等の衝動的な行動を引き起こしやすいことが
示唆された。したがって,非行予防や再指子の
防止には,自身に生じた樹育と向き合い,籾兄
や思考に焦点を当てながら理解し,ありのまま
に言葉にしていく力を育てることが重要である
と考える。
今後,非行について検討する際には,手持子の
段階キ種類によって区別し,さらに対象者を増
やして検討していくことで,手尚子の要因につい
てより詳細に明らかにしていくことが望まれる。