子どもが意欲的に取り組める授業
一一人一人の知的好奇心を支える場の構成からー 専 攻 高度学校教育実践 コース 氏 名 教 員 養 成 特 別 酒 匂 綾 乃 実習責任教員 山 田 芳 明 1 課題設定の理由と研究の方法 いる子,塾などでやっている子など,学力差・ 1年次の実習では主に6年生に入っていたの 能力差を越えて,どの子も意欲的に取り組める だが,机間指導・個別指導の中で「既習漢字が 授業を追究したいと考え,実践研究課題を「子 読めない・書けなし、Jr
かけ算九九が言えない」 どもが意欲的に取り組める授業Jと設定しT。こ 「かけ算の筆算ができないJなどの子どもたち さらに,知的好奇心ということが深く関係して がいた。その子どもたちは,既習漢字が読めな いるのではないかと考え,中でも「一人一人の いことで「教科書が読めないJr
問題がわから 知的好奇心を支える場の構成要素」について明 なし、」と内容に入る前から投げだしたり,かけ らかにしていきたい。 算の九九ができないことで「分数同士のかけ算 なんて無理」とあきらめたりと,授業自体に意 2 一人一人の知的好奇心を支える場の構成 欲を持てないでいた。また逆にr
“こんなのも わからないのか"と,みんなをパカにするJr
“進 みが遅い"と,他のことをする」といった子ど もたちもいたロその子達は,確かに問題を解く ことはできるが,同じく授業自体に意欲を持っ ているとは言えないように感じた。 実際筆者が行った授業では,子どもたちは真 面白に取り組み,発表もよくじてくれた。しか (1)意欲について 意欲とは,目標や物事に積極的に取り組もう とする気持ちであると捉え,その意欲が働いて いる様子が意欲的であると考える。逆説的に言 うと,意欲を持たせるには「目標」や「物事J. つまり目的やきっかけ,すなわち「動機づけJ が欠かせないと考えることができる。 この動機づけは,外発的動機づけと内発的動 し,それは「メンターの学級経営を前提として 機づけの大きく 2つに分けられる。本研究では, いるJr
実習生の授業であったため」というこ 学習意欲において内発的動機づけが重要だと捉 とが要因として考えられる。これが学級担任と える。 して毎日・毎時間行っている授業の一部であれ (2)知的好奇心について ばどうだったのであろうか。どの子も意欲的に 好奇心は,珍しいものや未知のものに興味を 取り組める授業だったのだろうか。このような 持つ心のことであると考える。また,広く回り 不安が筆者を取り巻いている。 に情報を求め,今まで持っている自分の知識と これらのことから,学習支援が必要な子,特 常に比較を行なっていこうとするということで 別なニーズ、を抱えている子,その教科が好きな ある。そして,知識と違うものに遭遇したとき, 子・嫌b、な子,得意な子・苦手な子,予習して わかるまで追究していこうとすることである。そして,知的好奇心とは,人聞が始めから持 集団の中で切瑳琢磨し向上していこうとするこ っているものであり,回りの人や物に関心を向 とである。 け,あるものの特性を見つけ関わっていこうと することである。 このように,内的動機づけには 4つの種類 があり,それらは[図1]のように,密接に関わ さらに知的好奇心について波多野は拡散的 りあっている。好奇心・知的好奇心を考えると 好奇心」と「特殊的好奇心」という 2つのタイ き,他の 3種類も欠かすごとができないという プ分けて捉えている(波多野、 1973)。 ことである。 波多野の言う拡散的好奇心とは.
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情報の飢え から生ずるもので,はっきりとした方向性を持 たない」ものである。「とにかく何カサ青報を得ょ う」としている状態が,拡散的好奇心が働いて いる状態だと言える。 一方,特殊的好奇心は.r
われわれの知識が不 十分であるとiわかったときに生ずる」ものであ 図 1 r,知的好奇心とは』 る。出された問題につまずいたとき,拡散的好 (3)知的好奇心を引き出すには 奇心により収集した情報に,新奇性,驚き,矛 先行文献や実習学級の担任の実践を元に,知 盾,困惑などの気持ちを持ち,それを明確にし 的好奇心を引き出すポイントを[表1]のように たいと思ったときに生ずる。 広岡は,先に述べた内発的動機には.r
好奇心」 「上達意欲Jr
理想人物への憧れJr
仲間との相 互作用」の4つの種類があると述べている(広 岡、 1977)0r
好奇心Jについては,先に述べた 通りである。 「上達意欲」とは,好奇心が持続している状 態で取り組んでいる中で,その取り組んでいる ものが上達したり,深まったりして「もっと上 手くなりたしリ「もっと知りたい」と更に上を目 指そうとすることである。 捉え t~o 表1"r知的好奇心を引き出すポイントj 先行文献 実習学級 広岡 稲垣 菊 野 の (1977) (1973) (1994) 担 任 子ども 認知的 今までの信じ 驚きの利用 の持つ信 葛 藤 ていたものが通 念舟先入 用しない場面の 疑問をもたせる 見の利用 設 定 足がか 祇宮:的 具体物を示す 不確かな問題の提起 りになる 葛藤 知識を与 困難さとの噛畠 える 既存の 矛盾の提示 知識のず れに気づ カνせる 「理想人物への憧れJ
左は, 目標とする人物 3 実践 の能力に自分の能力を近づけたいと思うことで ある。つまり,上達意欲が「あの人のようにな りたし、Jと理想人物へ向けられたときに働く動 機である。 「仲間どの相互作用」とは,人は集団からは み出すことが嫌いなので集団にあわせようとし, (1)実践授業 前項で示した,知的好奇心を引き出す可蒋成要 素を元に,次の実践を行った。 単元 かけ算(1) かけ算 (1) 和時 なんこのいくつ分 かけ算の問題を作ろう授業Aや授業Bの協働の場や他者の意見を聞 なの意見として 1枚の分類表を完成させること く場の設定は,仲間と一緒ならできる(=自分 ができた。そして,片仮名の言葉が書かれた付 にもできそう)という思いを持てたり,自分と 築紙がどこに分類されるのか,根拠を持って考 は同じ意見・違う意見を聞くことで確認や思、考 えることができた。 が深まったりと有効に働いた。 授業Eの身の回りからから片仮名を見つけ分 また,授業Aの挿し絵の乗り物や乗り物に乗 類して貼る場面では,自分の書いた言葉を仲間 っている人を目で捉え,ワークシートに同じょ に見せたり,仲間の書いた言葉に納得したりす うにブロックを乗せていき,そこから法則性を る様子が見られた。 見つけ出すという操作活動は,子どもの興味・ 授業Fの片仮名が入った文を出題者が読み, 関心を引くだけでなく,理解をも促した。 他の仲間が文の中のどこを片仮名で書くのか当 そして,授業Bのヒントとなるものを使って てるとしづ片仮名クイズでは,仲間に出題する もよいこととしたり,できた子がさらにチャレ ということで,一生懸命に問題文作りをしてい ンジできるものを用意しておいたりしたことは,た。短い時間の中で多い子は,言葉を8つ,文 子どもが「自分にもできそうだ
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もっと頑張り を10個以上も書くことができていた。また, たしリという思いを持てることにつながった。 実際に片仮名クイズをする場面では,一人一間, (2)実践に基づく授業改善の方針 全部で21
聞の答えを一生懸命に考えていた。 授業Aおよひ寝業B・Cの考察から,一人一 人の知的好奇心を支える場の構成要素は仲間4
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本研究で得られた成果と課題 との相互作用Jr
体験的活動Jr
個による選択J (1)本研究で得られた成果 の三つにまとめられると考えた。 改善の方針に基づき,改善授業(授業D ・授 (3)改善授業 業E ・授業 F) を行なったところ,先に示した 先に示した授業改善の方針を元に,次の実践 ような子どもの姿を見ることができた。それら を千子った。 教科 単元 本時 D 国語 かたかなで書くことば どんな時にかたか なで書くのかな E 国語 かたかなで書くことば かたかなで書いて みよう F 国語 かたかなで書くことば れんしゅう 授業Dの授業者が読み上げる文を文字にした 自分の解答と,授業者の示す解答を比較する場 面では,自分とは明らかに違う授業者の表記に 違和感を示し,積極的に間違いを指摘していた また,片仮名で書く言葉の仲間分けや4つに分 類する場面では,分担して付婆を貼ったり,意 見を出し合いながら張り替えたりして,班みん を検討することで,次のような成果がみられた。 ①仲間との相互作用 本研究では,まず班活動を取り入れることで, その有効性を検討した。班活動を取り入れるこ とで,正解に向けてみんなで lつのことに取り 組もうという意識が働き,成員は意見を交換し あっていた。 次に,全体で仲間一人一人の意見を聞く場を 設定することで,有効性を検討した。仲間の意 見を聞こうとする意識や,仲間に挑戦する意識 が働いており,集団としての力を高めるのに有 効であったと考えられる。 これらのことから,仲間との相互作用が知的好奇心を高めることに有効であったと言える。 ② 体 脚 情 動 本研究では,まず比較するという活動を取り 入れることで,その有効性を検討した。ここで は,子どもの中に葛藤や「今までやってきたか 効性を検討した。「どの班がし、っぱい見つけられ るかなJや