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子どもが意欲的に取り組める授業- 一人一人の知的好奇心を支える場の構成から - 

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Academic year: 2021

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子どもが意欲的に取り組める授業

一一人一人の知的好奇心を支える場の構成からー 専 攻 高度学校教育実践 コース 氏 名 教 員 養 成 特 別 酒 匂 綾 乃 実習責任教員 山 田 芳 明 1 課題設定の理由と研究の方法 いる子,塾などでやっている子など,学力差・ 1年次の実習では主に6年生に入っていたの 能力差を越えて,どの子も意欲的に取り組める だが,机間指導・個別指導の中で「既習漢字が 授業を追究したいと考え,実践研究課題を「子 読めない・書けなし、J

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かけ算九九が言えない」 どもが意欲的に取り組める授業Jと設定しT。こ 「かけ算の筆算ができないJなどの子どもたち さらに,知的好奇心ということが深く関係して がいた。その子どもたちは,既習漢字が読めな いるのではないかと考え,中でも「一人一人の いことで「教科書が読めないJ

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問題がわから 知的好奇心を支える場の構成要素」について明 なし、」と内容に入る前から投げだしたり,かけ らかにしていきたい。 算の九九ができないことで「分数同士のかけ算 なんて無理」とあきらめたりと,授業自体に意 2 一人一人の知的好奇心を支える場の構成 欲を持てないでいた。また逆に

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“こんなのも わからないのか"と,みんなをパカにするJ

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“進 みが遅い"と,他のことをする」といった子ど もたちもいたロその子達は,確かに問題を解く ことはできるが,同じく授業自体に意欲を持っ ているとは言えないように感じた。 実際筆者が行った授業では,子どもたちは真 面白に取り組み,発表もよくじてくれた。しか (1)意欲について 意欲とは,目標や物事に積極的に取り組もう とする気持ちであると捉え,その意欲が働いて いる様子が意欲的であると考える。逆説的に言 うと,意欲を持たせるには「目標」や「物事J. つまり目的やきっかけ,すなわち「動機づけJ が欠かせないと考えることができる。 この動機づけは,外発的動機づけと内発的動 し,それは「メンターの学級経営を前提として 機づけの大きく 2つに分けられる。本研究では, いるJ

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実習生の授業であったため」というこ 学習意欲において内発的動機づけが重要だと捉 とが要因として考えられる。これが学級担任と える。 して毎日・毎時間行っている授業の一部であれ (2)知的好奇心について ばどうだったのであろうか。どの子も意欲的に 好奇心は,珍しいものや未知のものに興味を 取り組める授業だったのだろうか。このような 持つ心のことであると考える。また,広く回り 不安が筆者を取り巻いている。 に情報を求め,今まで持っている自分の知識と これらのことから,学習支援が必要な子,特 常に比較を行なっていこうとするということで 別なニーズ、を抱えている子,その教科が好きな ある。そして,知識と違うものに遭遇したとき, 子・嫌b、な子,得意な子・苦手な子,予習して わかるまで追究していこうとすることである。

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そして,知的好奇心とは,人聞が始めから持 集団の中で切瑳琢磨し向上していこうとするこ っているものであり,回りの人や物に関心を向 とである。 け,あるものの特性を見つけ関わっていこうと することである。 このように,内的動機づけには 4つの種類 があり,それらは[図1]のように,密接に関わ さらに知的好奇心について波多野は拡散的 りあっている。好奇心・知的好奇心を考えると 好奇心」と「特殊的好奇心」という 2つのタイ き,他の 3種類も欠かすごとができないという プ分けて捉えている(波多野、 1973)。 ことである。 波多野の言う拡散的好奇心とは.

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情報の飢え から生ずるもので,はっきりとした方向性を持 たない」ものである。「とにかく何カサ青報を得ょ う」としている状態が,拡散的好奇心が働いて いる状態だと言える。 一方,特殊的好奇心は.

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われわれの知識が不 十分であるとiわかったときに生ずる」ものであ 図 1 r,知的好奇心とは』 る。出された問題につまずいたとき,拡散的好 (3)知的好奇心を引き出すには 奇心により収集した情報に,新奇性,驚き,矛 先行文献や実習学級の担任の実践を元に,知 盾,困惑などの気持ちを持ち,それを明確にし 的好奇心を引き出すポイントを[表1]のように たいと思ったときに生ずる。 広岡は,先に述べた内発的動機には.

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好奇心」 「上達意欲J

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理想人物への憧れJ

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仲間との相 互作用」の4つの種類があると述べている(広 岡、 1977)0

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好奇心Jについては,先に述べた 通りである。 「上達意欲」とは,好奇心が持続している状 態で取り組んでいる中で,その取り組んでいる ものが上達したり,深まったりして「もっと上 手くなりたしリ「もっと知りたい」と更に上を目 指そうとすることである。 捉え t~o 表1"r知的好奇心を引き出すポイントj 先行文献 実習学級 広岡 稲垣 菊 野 の (1977) (1973) (1994) 担 任 子ども 認知的 今までの信じ 驚きの利用 の持つ信 葛 藤 ていたものが通 念舟先入 用しない場面の 疑問をもたせる 見の利用 設 定 足がか 祇宮:的 具体物を示す 不確かな問題の提起 りになる 葛藤 知識を与 困難さとの噛畠 える 既存の 矛盾の提示 知識のず れに気づ カνせる 「理想人物への憧れ

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左は, 目標とする人物 3 実践 の能力に自分の能力を近づけたいと思うことで ある。つまり,上達意欲が「あの人のようにな りたし、Jと理想人物へ向けられたときに働く動 機である。 「仲間どの相互作用」とは,人は集団からは み出すことが嫌いなので集団にあわせようとし, (1)実践授業 前項で示した,知的好奇心を引き出す可蒋成要 素を元に,次の実践を行った。 単元 かけ算(1) かけ算 (1) 和時 なんこのいくつ分 かけ算の問題を作ろう

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授業Aや授業Bの協働の場や他者の意見を聞 なの意見として 1枚の分類表を完成させること く場の設定は,仲間と一緒ならできる(=自分 ができた。そして,片仮名の言葉が書かれた付 にもできそう)という思いを持てたり,自分と 築紙がどこに分類されるのか,根拠を持って考 は同じ意見・違う意見を聞くことで確認や思、考 えることができた。 が深まったりと有効に働いた。 授業Eの身の回りからから片仮名を見つけ分 また,授業Aの挿し絵の乗り物や乗り物に乗 類して貼る場面では,自分の書いた言葉を仲間 っている人を目で捉え,ワークシートに同じょ に見せたり,仲間の書いた言葉に納得したりす うにブロックを乗せていき,そこから法則性を る様子が見られた。 見つけ出すという操作活動は,子どもの興味・ 授業Fの片仮名が入った文を出題者が読み, 関心を引くだけでなく,理解をも促した。 他の仲間が文の中のどこを片仮名で書くのか当 そして,授業Bのヒントとなるものを使って てるとしづ片仮名クイズでは,仲間に出題する もよいこととしたり,できた子がさらにチャレ ということで,一生懸命に問題文作りをしてい ンジできるものを用意しておいたりしたことは,た。短い時間の中で多い子は,言葉を8つ,文 子どもが「自分にもできそうだ

J

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もっと頑張り を10個以上も書くことができていた。また, たしリという思いを持てることにつながった。 実際に片仮名クイズをする場面では,一人一間, (2)実践に基づく授業改善の方針 全部で

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聞の答えを一生懸命に考えていた。 授業Aおよひ寝業B・Cの考察から,一人一 人の知的好奇心を支える場の構成要素は仲間

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本研究で得られた成果と課題 との相互作用J

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体験的活動J

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個による選択J (1)本研究で得られた成果 の三つにまとめられると考えた。 改善の方針に基づき,改善授業(授業D ・授 (3)改善授業 業E ・授業 F) を行なったところ,先に示した 先に示した授業改善の方針を元に,次の実践 ような子どもの姿を見ることができた。それら を千子った。 教科 単元 本時 D 国語 かたかなで書くことば どんな時にかたか なで書くのかな E 国語 かたかなで書くことば かたかなで書いて みよう F 国語 かたかなで書くことば れんしゅう 授業Dの授業者が読み上げる文を文字にした 自分の解答と,授業者の示す解答を比較する場 面では,自分とは明らかに違う授業者の表記に 違和感を示し,積極的に間違いを指摘していた また,片仮名で書く言葉の仲間分けや4つに分 類する場面では,分担して付婆を貼ったり,意 見を出し合いながら張り替えたりして,班みん を検討することで,次のような成果がみられた。 ①仲間との相互作用 本研究では,まず班活動を取り入れることで, その有効性を検討した。班活動を取り入れるこ とで,正解に向けてみんなで lつのことに取り 組もうという意識が働き,成員は意見を交換し あっていた。 次に,全体で仲間一人一人の意見を聞く場を 設定することで,有効性を検討した。仲間の意 見を聞こうとする意識や,仲間に挑戦する意識 が働いており,集団としての力を高めるのに有 効であったと考えられる。 これらのことから,仲間との相互作用が知的

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好奇心を高めることに有効であったと言える。 ② 体 脚 情 動 本研究では,まず比較するという活動を取り 入れることで,その有効性を検討した。ここで は,子どもの中に葛藤や「今までやってきたか 効性を検討した。「どの班がし、っぱい見つけられ るかなJや

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書ける人は 2枚目に行ってみよう」 としづ声掛けを行い,付筆紙やワークシートを 多く準脂しておくことで

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もっと頑張りたしリ というような上達意欲が喚起されたと考えられ ら,次もできる」という上達意欲が働いていた る。 と考えられる。 これらのことから,個による選択が知的好奇 次に,操作活動を取り入れることで,その有 心を高めることに有効で、あったと言える。 効性を検討した。それぞれ「どんな時に片仮名 (2)今後の課題 で書くのか知りたいJ

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片仮名で書く 4つの場合 先に述べた通り,本研究では「仲間との相互 が分かったから,他の言葉も分けられるはずだJ 作用J

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体験的活動J

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個による選択」という要 「授業者が示した片仮名の言葉を分類すること 素に留意しながら授業を行なうことが,知的好 ができたから,自分で見つけたものでもで‘きる 奇心を支えることに有効であると考えることが はずだ」としづ

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上達意欲Jが喚起されていた できた。 と考えられる。 じかし,実践研究において「班活動において, これらのことから,体験的活動が知的好奇心 仲間まかせにしている子どもがいたことJ

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操作 を高めることに有効であったと言える。 活動において,操作道具により別思考が始まっ ③伺による選択 てしまうことJ

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操作活動を有効に行なうための 本研究では,まず知的好奇心を妨げるものを 授業構成や教具の工夫J

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別に用意するワークシ 除くことで,その有効性を検討した。片仮名表 記に対する嫌悪感を除くために片仮名表を樹脂 した。また,文を作ること自体に抵抗を示す子 どもがいることから,絵にあう文になるように ( )を片仮名で埋めるだけになったワークシ ートを準備した。これらをもらった子どもたち は,それらを有効に利用し,言葉や文を書くこ とができた。 次に,考えるヒントを与えることで,その有 効性を検討した。片仮名で書く言葉を見つけた ートの渡すタイミングJ

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別プリントという形で はない個による選択の可能性Jなど,様々な課 題が出てきた。このことから,知的好奇心を支 える上で有効な要素は,他にも見つけることが 必要そうである。 さらに,今回の研究は実習生という立場で, 実習学級の担任が経営している学級(第 2学年) で実践研究をした成呆である。実際に学校現場 に出て,他の学校・学年・自分が経営する学級 で授業をするとなれば,また違った知的好奇心 り,片仮名で書く言葉が入った文を作ったりす を支える構成要素が出てくるかもしれない。 る場面において,教科書や黒板に示しであるも これらのことを考えれば,この実践研究課題 のを自由に使ってよいこどとした。子ども達は, はこれからも追究していくべきであると考える。 それらを有効に利用し,言葉や文を書くことが これからも常に向上を目指し,実践に当たって できた。 いきたい。 そして,上の目標を設定することで,その有

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