インターネットライブ配信における聴衆の存在感伝達のための実験的検討
Experimental Investigation on Presence Transmission of the Audience in Live Stream Broadcasting
鈴木
慶
†
伊瀬
一貴
†
吉村
宏紀
†
松村
寿枝
‡
清水
忠昭
†
Kei Suzuki
Kazuki Ise
Hiroki Yoshimura Toshie Matsumura Tadaaki shimizu
1 11 1 . . . . はじめにはじめにはじめに はじめに 近 年, Ustreamや ニ コ ニ コ 生 放 送 と い っ た ラ イ ブ ビ デ オ ス ト リ ー ミ ン グ サ ー ビ ス が 普 及 し, インターネット接続さ れ た PC と マ イ ク, ウ ェ ブ カ メ ラ さ え あ れ ば, 誰 も が ラ イ ブ 配 信 を 行 え る よ う に な っ た. 今 日 では企業のカンファレ ン ス や 就 職 説 明 会 等 も ラ イ ブ 配 信 さ れており, ライブ配信 に 触 れ る 機 会 が 増 え て い る. 一 般 的 な 講 演 で は, 話 者 は 聴 衆 の 雰 囲 気 を 感 じ と り な が ら 話 を 進 めていく. ライブ配信 に お い て, 話 者 (配 信 者 )は カ メ ラ に向かって話す必要があ る た め, 聴 衆 ( 視 聴 者 )の 雰 囲 気 や 存 在 感 を 感 じ に く く, 話 を し に く い と い っ た 問 題 が あ る. 従 来の存在感の伝達に関 す る 研 究 に は,「 一 般 的 な 講 演 中 に 視 聴 者 か ら 話 者 に 送 ら れ る 拍 手 に 着 目 し, ラ イ ブ 配 信 中 の 話 者 の 近 く に 設 置 した 拍 手 マ シ ン を 通 し て, 擬 似 的 な 拍 手 で 話 者 へ 存 在 感 を 伝達 す る 研 究[1]」,「 人 間 に 近 い 容 姿 の ア ン ド ロ イ ド ・ ロ ボ ッ ト を 遠 隔 操 作 す る こ と に よ っ て 話 者 に 存 在 感 を 伝 達 す る 研 究[2]」 等 が あ る. し か し こ れ ら の 研 究 で は, 拍 手 マ シ ン や ア ン ド ロ イ ド ・ ロ ボ ッ ト と い っ た 特 別 な 装 置 が 必 要 で あ り, 一 般 に 使 用 す る こ と は 難 し い. さ ら に ラ イ ブ 配 信 の 場 合, 配 信 者 が 一 人 な の に 対 し 視 聴 者が複数人存在するた め, 比 較 的 簡 単 な 装 置 で あ っ て も 視 聴者と同じ数の装置を 用意することは困難である. 本 研 究 で は 一 般 の ラ イ ブ 配 信 者 に 視 聴 者 の 存 在 感 を 伝 達 し, 話 を し や す く す る シ ス テ ム の 構 築 を 目 指 す. そ の た め に 存 在 感 の 伝 達 要 素 を 単 純 化 し た 比 較 実 験 シ ス テ ム を 複 数 用 意 し, そ れ ら を 比 較, 話 者 が 視聴者の存在感を感じ, 最も話をしやすくする要素を明らかにする. 2 22 2 . . . . 存在感存在感存在感 の伝達存在感の伝達の伝達 の伝達 本 研 究 で は 特 別 な 装 置 を 必 要 と し な い, ソフトウェアで 存 在 感 を 伝 達 す る シ ス テ ム を 実 験 的 に考案する. ソフトウ ェアとして存在感を伝達するにあたり, 次の 2つの課題が 挙げられる. 課題1: 視聴者の存在感として何をどう伝達するのか 課題2: 配信者へ提示する存在感の表現方法をどうするか 配 信 者 に 視 聴 者 の 存 在 感 を 感 じ さ せ る 要 素 は 多 々 考 え ら れ る. 中 で も 場 の 盛 り 上 が り は, 視 聴 者 の 存 在 を 強 く 伝 え る 要 素 で あ る. 場 全 体 の 盛 り 上 が りは一人ひとりの気分 の高揚(テンション)の総和として考えることができる. こ の 考 え に 基 づ き, 本 研 究 で は 各 視 聴 者のテンションを 配信者に伝達することを存在感の伝達とする. 提案システムは, 伝達部と表現部の2つの部分から成り, 伝達部と表現部それぞれが課題1, 2を解決する. 提案シス テムの流れを図1に示す. 視聴者 配信者 伝達部 表現部 提 案 シ ス テ ム 存在感をPC で伝達できる 形式のデータにする 伝達されたデータを人間が 認識できるように表現する ビ デ オ 配 信 図1. 提案システムの流れ 3 3 3 3 . . . . 提案提案提案 システム提案システムシステムシステム 3 3 3 3 . . . 1. 111 伝達部伝達部伝達部伝達部 伝達部とは視聴者の存在感を PCで伝達できる形式のデ ー タ と し て, 配 信 者 に 送 信 す る 部 分 で あ る. ラ イ ブ 配 信 に お い て は 視 聴 者 が 複 数 い る た め, 視 聴者を撮影した映像や マ イ ク か ら の 音 声 を そ の ま ま 配 信 者 に 伝 達 す る こ と が で き な い. し た が っ て 提 案 シ ス テ ム で は, 視 聴 者 が 能 動 的 に 現 在 の テ ン シ ョ ン を 選 ぶ こ と に よ っ て, 配信者への存在感 の 伝 達 を 行 う こ と と し た. テ ン シ ョ ンには「高い・やや高 い・普通・やや低い・低い」の 5段階の評価を用いる. つ まり伝達部は, この 5段階の評価値をデータとして表現部 に 送 信 す る. 比 較 実 験 シ ス テ ム に は, テ ン シ ョ ン の 選 択 方 法が異なる3種類の伝達部を設定した. 伝 達 部 伝 達 部 伝 達 部 伝 達 部1 ラ ジ オ ボ タ ン を 用 い た 方 法ラ ジ オ ボ タ ン を 用 い た 方 法ラ ジ オ ボ タ ン を 用 い た 方 法ラ ジ オ ボ タ ン を 用 い た 方 法 伝 達 部 1 は, ラ ジ オ ボ タ ン に よ り 段 階 的 な 選 択 操 作 を す る こ と で, 視 聴 者 が 自 分 の テ ン シ ョ ン を 明 確 に 表 現 で き る こ と を 意 図 し て 設 定 し た. こ の ラ ジ オ ボ タ ン を用いた存在感の伝達方法を伝達部 1 と する. 伝達部1の実行画面を図2に示す. 視聴 者 は 自 分 の テ ン シ ョ ン に 応 じ た ラ ジ オ ボ タ ン を選択することによりテンションを 配 信 者 に 伝 え る. ラ ジ オ ボ タ ン に は 「 高 = 高 い 」,「 や や 高 = や や 高 い 」,「 中 = 普 通 」,「 やや低=やや低い」, 「低=低い」のようにテン ションを示すラベルが直接付されている. 図2. 伝達部1 の実行画面 † 鳥取大学大学院工学研究科情報エレクトロニクス専攻 ‡ 奈良工業高等専門学校情報工学科
FIT2013(第 12 回情報科学技術フォーラム)
Copyright © 2013 by Information Processing Society of Japan and The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers All rights reserved.
17
RJ-001
伝 達 部 伝 達 部伝 達 部 伝 達 部2 ク リ ッ ク の 頻 度 を 用 い た 方 法ク リ ッ ク の 頻 度 を 用 い た 方 法ク リ ッ ク の 頻 度 を 用 い た 方 法ク リ ッ ク の 頻 度 を 用 い た 方 法 伝 達 部 2 は ボ タ ン の 連 打 と い う 直 感 的 な 頻 度 操 作 を 行 う こ と で, 自分のテン シ ョ ン を 単 純 に 選 択 す る よ りも, より直 感 的 に テ ン シ ョ ン の 上 昇 を 伝 え ら れ る こ と を 意 図 し て 設 定 し た. こ の ク リ ッ ク の 頻 度 を 用 い た 存 在 感 の 伝 達 方 法 を 伝達部2とする. 伝達部2の実行画面を図3に示す. 視聴者は自分のテン シ ョ ン に 応 じ て ボ タ ン を 連 打 す る こ と に よ り テ ン シ ョ ン を 配 信 者 に 伝 え る. ク リ ッ ク 頻 度 と テ ン シ ョ ン の 対 応 付け は「0回/秒=普通」, 「1~3回/秒=やや高い」,「4回~/秒= 高 い 」 と し た. こ の 方 法 で は プ ラ ス 評 価 の み を 用 い, 「 や や 低 い ・ 低 い 」 の マ イ ナ ス 評 価 を 行 わ な い. こ れ は ク リッ ク し な か っ た 場 合 に 必 ず し も マ イ ナ ス 評 価 で あ る と は 限 ら な い か ら で あ る. ク リ ッ ク し な い 状 態 を マ イ ナ ス と 評価 し て し ま う と, 視 聴 者 が ラ イ ブ 配 信 を 普 通 だ と 感 じ て いて も マ イ ナ ス 評 価 さ れ て し ま い, 配 信 者 に マ イ ナ ス 評 価 の視 聴者が多いと誤認識させてしまう恐れがあるからである. 伝 達 部 伝 達 部伝 達 部 伝 達 部3 ス ラ イ ド バ ー を 用 い た 方 法ス ラ イ ド バ ー を 用 い た 方 法ス ラ イ ド バ ー を 用 い た 方 法ス ラ イ ド バ ー を 用 い た 方 法 伝達部 3は, 伝達部 1のように自分の テ ン シ ョ ン を 明 確 に 伝 え る よ り も, 連 続 的 に テ ン シ ョ ン を 選 択 で き た ほ う が, 視 聴 者 が 抵 抗 感 な く テ ンションを伝えられ る こ と を 意 図 し て 設 定 し た. こ の ス ラ イ ド バ ー を 用 い て 存 在 感を伝達する方法を 伝達部3とする. 伝達部 3の実行画面を図4に示す. 視 聴 者 は ス ラ イ ド バ ー を 上 下 に 操 作 す る こ と で, 対 応 付 け ら れ た テ ン シ ョ ン を 配 信 者 に 伝 え る. ス ラ イ ド バ ー を 上 に す る ほ ど テ ン シ ョ ン が 高 く, 下 に す る ほどテンションが低くなるように設定した. 以 上, 比 較 実 験 シ ス テ ム に お け る,視 聴 者 の テ ン シ ョ ン を伝達する3種類の伝達部を表1にまとめる. 表1. 伝達部のまとめ 実装方式 意図した操作性 伝達部1 ラジオボタン 段階的な選択操作 伝達部2 クリックの頻度 直感的な頻度操作 伝達部3 スライドバー 意図的な指示操作 3 33 3 . . . 2. 222 表現部表現部表現部表現部 表 現 部 と は 伝 達 部 か ら 送 信 さ れ た デ ー タ を, 配 信 者 が 存 在 感 と し て 認 識 で き る よ う に 表 現 す る 部 分 で あ る. 提 案シ ス テ ム で は 視 聴 者 一 人 ひ と り か ら デ ー タ を 受 信 す る た め, 視 聴 者 の 人 数 分 の デ ー タ を 受 信 す る こ と に な る. 視 聴 者の 人 数 が 増 え る と, 一 人 ひ と り の デ ー タ を 配 信 者 が 認 識 でき る 形 で 表 現 す る こ と が 難 し い た め, 一 人 ひ と り の デ ー タを 視 聴 者 全 体 と し て ま と め, 配 信 者 が 視 聴 者 全 体 の 存 在 感と し て 認 識 で き る 形 で 表 現 す る. 比 較 実 験 シ ス テ ム に は, 存 在感の表現方法が異なる3種類の表現部を設定した. 表 現 部 表 現 部 表 現 部 表 現 部1 デ フ ォ ル メ さ れ た 顔 画 像 を 用 い た 方 法デ フ ォ ル メ さ れ た 顔 画 像 を 用 い た 方 法デ フ ォ ル メ さ れ た 顔 画 像 を 用 い た 方 法デ フ ォ ル メ さ れ た 顔 画 像 を 用 い た 方 法 表現部 1は, 人間の感 覚 系 の 中 で 最 も 多 く の 情 報 を 得 ら れ る の は 視 覚 で あ る[3]た め, 存 在感 を 表 現 す る に は 視 覚 的 な 作 用 が 有 効 で あ り, 更 に 人 間 の 顔 に 近 い 方 が, 話 者 が よ り 人 間 ら し い 存 在 感 を 感 じ ら れ る こ と を 意 図 し て 設 定 し た. こ の デ フ ォ ル メ さ れ た 色付き顔画像を用いる方法を表現部1とする. 表現部1の実行画面を図5に示す. 12個の顔画像は視聴 者 個 別 の テ ン シ ョ ン を 表 し て い る の で は な く, 視 聴 者 全体 の テ ン シ ョ ン を 割 合 で 表 示 し て い る. 顔 画 像 と テ ン シ ョン の対応は「笑い顔(強):ピンク=高い」, 「笑い顔(弱):赤 = や や 高 い 」, 「 平 常(黄)= 普 通 」, 「 不 満 顔(弱): 青 =や や 低い」, 「不満顔(強):紫=低い」と設定している. 顔画 像 の 表 示 箇 所 は 色 ご と に 優 先 順 位 が あ り, 左 上 か ら 右 下に 向 か っ て 「 ピ ン ク → 赤 → 黄 → 青 → 紫 」 の 順 で 表 示 し て い る. こ れ に よ っ て 同 じ 顔 画 像 が 近 く に 固 ま り, 配 信 者 に と っ て 見 や す く な っ て い る. 顔 画 像 の 色 と 表 情 を 変 化 さ せる ことで, 受信したテンションを存在感として表現する. 表 現 部 表 現 部 表 現 部 表 現 部2 色 の 変 化 の み を 用 い た 方 法色 の 変 化 の み を 用 い た 方 法色 の 変 化 の み を 用 い た 方 法色 の 変 化 の み を 用 い た 方 法 表現部 2は, 存在感を表現するにはデフォルメされた顔 の 画 像 を 使 用 す る よ り も, 色 の 変 化 だ け を 用 い た 方 が 場全 体 の 雰 囲 気 と し て 話 者 に 存 在 感 が 伝 わ る こ と を 意 図 し て 設定した. 色の変化を用いる理由は表現部1と同様, 視覚的 な 作 用 が 有 効 で あ る と 考 え た か ら で あ る. こ の 色 の 変 化の みを用いる方法を, 表現部2とする. 表現部2では, 比較実 験 シ ス テ ム の 画 面 全 体 の 色 を 変 化 さ せ る こ と で, 受 信 した テ ン シ ョ ン を 存 在 感 と し て 表 現 す る. 図 色 は 大 き く 分 けて 7種 類 で, テ ン ションとの対応付けは「ピンク(テンション 高)> 赤 > 黄 > 緑 > 水 色 > 青 > 藍 色(テ ン シ ョ ン 低)」 で あ る. 視 聴 者 一人ひとりの細かなテンションはわからないが, 場全体の雰囲気を感じることができると考えられる. 表 現 部 表 現 部 表 現 部 表 現 部3 音 高 の 変 化 を 用 い た 方 法音 高 の 変 化 を 用 い た 方 法音 高 の 変 化 を 用 い た 方 法音 高 の 変 化 を 用 い た 方 法 表現部3は, 音高の変化は耳から自然に入ってくるため, 話 者 が 場 全 体 の 存 在 感 を 感 じ つ つ 話 に 集 中 で き る こ と を 意図して設定した. また表現部1,2のように, 存在感を感じ る た め に PCの 画 面 を 見 る と い う 行 為が不自然であり, 配 信 者 が 話 に 集 中 で き な い と 考 え た. こ の 音 高 の 変 化 を 用い る方法を, 表現部3とする. 表現部3では, ヘッドホンで音 を 鳴 ら し, そ の 音 の 高 さ を 変 化 さ せ る こ と で 受 信 し た テン シ ョ ン を 存 在 感 と し て 表 現 す る. 音 に は 周 波 数 の 異 な る 5 種 類 の 正 弦 波 を 用 い る. 全 て の 正 弦 波 は, サ ン プ リ ン グ レ ート44100Hz, ビットレート16bit, ステレオの音源であり, 図3. 伝達部2 の実行画面 図4. 伝達部3 の実行画面 図5. 表現部1の実行画面
FIT2013(第 12 回情報科学技術フォーラム)
Copyright © 2013 by Information Processing Society of Japan and The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers All rights reserved.
18
第 3 分冊
周波数は高い音から660Hz, 521. 5Hz, 440Hz, 347. 7Hz, 293. 3Hzである. これらの周波数には, 楽器のチューニングに用 いられる周波数440Hzの音を真中として, ピタゴラス音律 における前後 2音ずつの周波数を用いている. 周波数とテ ン シ ョ ン と の 対 応 付 け は 「660Hz= 高 い 」,「521. 5Hz=や や 高 い」,「440Hz=普通」,「347. 7Hz=やや低い」,「293. 3Hz=低い」である. 以 上, 比 較 実 験システムにおける,視聴者のテンションを 表現する3種類の表現部を表2にまとめる. 表2. 表現部のまとめ 表現方法 意図した存在感の表現 表現部1 視覚的 人間らしい存在感 表現部2 視覚的 視覚的な場全体の雰囲気 表現部3 聴覚的 聴覚的な場全体の雰囲気 4 44 4 . . . . ライブビデオストリーミングライブビデオストリーミングライブビデオストリーミング の実装ライブビデオストリーミングの実装の実装 の実装 ラ イ ブ ビ デオストリーミングには Adobe HTTP Dynamic Streaming を 使 用し, HTTP ベースでストリーミング配信を 行う. サーバにはAdobe Flash Media Serverを使用し, プラ イベートなLANで実装する. 配信者はAdobe Flash Media Live Encoder を 用 い て, リ ア ル タ イ ム で サ ー バ に ス ト リ ー ミングを行う. 図6に視聴画面, 図7に配信画面を示す. 比較実験システム (伝達部)を実行 ブラウザでアクセス ライブ配信画面 FMSのIPアドレス 図6. 視聴画面 比較実験システム(表現部) を実行 FMEでライブ配信 図7. 配信画面 5 55 5 . . . . 評価評価評価 実験評価実験実験実験 5 55 5 . . . 1. 111 実験方法実験方法実験方法実験方法 比 較 実 験 シ ス テ ム に よ っ て 配 信 者 が ど の 程 度 存 在 感 を 感 じ, 話 を し や す く な っ た か の 評 価 実 験 を 行 っ た. 被 験 者 は 20代の男女11名であり, 実験中は常に視聴者が 8~10 人 い る 状 態 で 行 っ た. 被 験 者 は 1 分 程 度 の ラ イ ブ 配 信 を, 「 比 較 実 験 シ ス テ ム の 組 み 合 わ せ を 変 更 し た す べ て の 場 合 」 と 「 比 較実験システムを使わない場合」の計 10回行 う. 組 み 合 わ せ の 順 序 は カ ウ ン タ ー バ ラ ン ス を と る. 配 信 内 容 は, 配 信 者 の 好 き な こ と を 主 題 と す る フ リ ー ト ー クで あ る. 配 信 者 は 配 信 前 に 予 め ト ー ク 内 容 を 書 い た 原 稿 を用 意 し, そ れ を 読 み な が ら 配 信 を 行 う. 視 聴 者 は 配 信 者 の 話 に 共 感 を 覚 え た り 面 白 い と 感 じ た 場 合 に 高 い テ ン シ ョ ン を 選 択 し, 逆 に 反 感 を 覚 え た り 面 白 く な い と 感 じ た 場 合に 低いテンションを選択する. 被 験 者 は 配 信 者 ・ 視 聴 者 と も に 経 験 し, す べ て の ラ イ ブ 配 信 後 に 配 信 者 用 と 視 聴 者 用 の ア ン ケ ー ト に 答 え る. アン ケ ー ト 項 目 は 文 献[2]を 参考に設定し, 各伝達部・表現部ご と に 7 段 階 で 評 価 し た. 伝 達 部 の 評 価 項 目 は 「 話 し や す さ 」 「 視 聴 者 の 存 在 感 」 「 安 心 感 」 「 満 足 感 」 「 シ ス テ ムの自然さ」の 5項目, 表現部の評価項目は「操作しやす さ 」 「 存 在 感 を 送 る 楽 し さ 」 「 安 心 感 」 「 満 足 感 」 「 シ ステムの自然さ」の 5項目で, 自由記述の欄も設けた. 実 験の流れを図8に示す. 図8. 評価実験の流れ図 5 5 5 5 . . 2. . 222 実験結果実験結果 と実験結果実験結果ととと 考考考 察考察察察 図 9 に 配信者用アンケート, 図 10 に視聴者用アンケー ト 項 目 の 平 均 と 標 準 偏 差 を 含 む グ ラ フ を 示 す. 各 項 目 では 7が最も評価が良いことを示している. 多重比較の結果, 有 意 水 準 5%で 有 意 差 が 確 認 された項目同士について項目ご とに棒グラフ上の括弧で示す. 1)配 信 者配 信 者配 信 者配 信 者 用 ア ン ケ ー ト の 結 果用 ア ン ケ ー ト の 結 果用 ア ン ケ ー ト の 結 果用 ア ン ケ ー ト の 結 果 配信者用アンケートの分散分析結果を以下に列挙する. 「 話 し や す さ 」 「 話 し や す さ 」 「 話 し や す さ 」 「 話 し や す さ 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 さ れ な かった(F(3, 40) = 1. 740, p=0. 174). 「 視 聴 者 の 存 在 感 」 「 視 聴 者 の 存 在 感 」 「 視 聴 者 の 存 在 感 」 「 視 聴 者 の 存 在 感 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 さ れた(F(3, 40) = 16. 865, p<0. 001). Bonferroni法による多重 比較の結果, 表現部1は表現部2, 表現部3, システム無しよ りも有意に強く, 表現部2は表現部3, システム無しよりも 有 意 に 強 く 存 在 感 を 感 じ る こ と が 示 さ れ た (1>2, p<0. 01;
FIT2013(第 12 回情報科学技術フォーラム)
Copyright © 2013 by Information Processing Society of Japan and The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers All rights reserved.
19
第 3 分冊
1>3, p<0. 01; 1>無, p<0. 001; 2>3, p<0. 05; 2>無, p<0. 001). 「 安 心 感 」 「 安 心 感 」 「 安 心 感 」 「 安 心 感 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 さ れ た(F(3, 40) = 3. 661, p<0. 05). しかし, Bonferroni法による多重比較 の結果, 表現部ごとの有意な差は確認されなかった. 「 満 足 感 」 「 満 足 感 」 「 満 足 感 」 「 満 足 感 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 さ れ た(F(3, 40) = 11. 127, p<0. 001). Bonferroni法による多重比較の結果, 表現部1は表現部2, 表現部3, システム無しよりも有意に 高 く 満 足 感 を 得 る こ と が 示 さ れた (1>2, p<0. 05; 1>3, p<0. 01; 1>無, p<0. 01). 「 シ ス テ ム 「 シ ス テ ム 「 シ ス テ ム 「 シ ス テ ム の 自 然 さの 自 然 さの 自 然 さの 自 然 さ 」」」」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 された(F(2, 30) = 9. 146, p<0. 001). Bonferroni法による多重 比較の結果, 表現部1は表現部2, 表現部3よりも有意に自 然であることが示された (1>2, p<0. 05; 1>3, p<0. 001). 視聴者の存在感の項目について, 表現部 1と 2で強い存 在 感 が 得 ら れ た と い う 結 果 か ら 「 視 覚 的 な 表 現 方 法 」 が 視 聴 者 の 存 在 感 を 表 現 す る こ と に 適 し て い る と 言 え る. ま た表現部2に比べて表現部1の方が視聴者の存在感を感じ ら れ る こ と か ら, デ フ ォ ル メ さ れ た 顔 画 像 の よ う な 「 人間 で あ る と 感 じ ら れ る 図 案 的 要 素 」 が 有 効 で あ る と い え る. また満足感の項目について有意差が見られ, 表現部 1が最 も 高 く 満 足 感 を 得 ら れ る と い う 結 果 に な っ た. 逆 に 表 現部 3 に つ い て はシステム無しよりも低い満足度となったこと から, 聴覚的な表現は配信者に不満を与えているといえる. こ れ ら の 結 果 か ら 存 在 感 の 表 現 方 法 と し て は, 視 覚 的 な も の で 人 間 で あ る と 感 じ ら れ る 要 素 を も っ た 方 法 が 有 効 であり, 表現部3のような聴覚的な表現は耳障りとなり, 配 信者が話をしにくくなると考えられる. 2)視 聴 者 用視 聴 者 用 ア ン ケ ー ト の 結 果視 聴 者 用視 聴 者 用ア ン ケ ー ト の 結 果ア ン ケ ー ト の 結 果ア ン ケ ー ト の 結 果 視聴者用アンケートの分散分析結果を以下に列挙する. 「 操 作 し や す さ 」 「 操 作 し や す さ 」 「 操 作 し や す さ 」 「 操 作 し や す さ 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 さ れ なかった( F(2, 30) = 0. 882, p=0. 424). 「 存 在 感 を 送 る 楽 し さ 」 「 存 在 感 を 送 る 楽 し さ 」 「 存 在 感 を 送 る 楽 し さ 」 「 存 在 感 を 送 る 楽 し さ 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認された( F(3, 40) = 10. 349, p<0. 001). Bonferroni法による 多重比較の結果, 表現部2はシステム無しよりも有意に強 く, 表現部 3はシステム無しよりも有意に強く楽しいと感 じることが示された (2>無, p<0. 01; 3>無, p<0. 01). 「 安 心 感 」 「 安 心 感 」 「 安 心 感 」 「 安 心 感 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 さ れ な か っ た( F(3, 40) = 2. 563, p=0. 068). 「 満 足 感 」 「 満 足 感 」 「 満 足 感 」 「 満 足 感 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 さ れ た( F(3, 40) = 5. 348, p<0. 01). Bonferroni法による多重比較の結果, 表現部2はシステム無しよりも有意に高く, 表現部3はシ ス テ ム 無 し よ り も 有 意 に 高 く 満 足 感 を 得 る こ と が 示 さ れ た (2>無, p<0. 05; 3>無, p<0. 05). 「 シ ス テ ム の 自 然 さ 」 「 シ ス テ ム の 自 然 さ 」 「 シ ス テ ム の 自 然 さ 」 「 シ ス テ ム の 自 然 さ 」 の 項 目 に お い て 有 意 な 差 が 確 認 されなかった(F(2, 30) = 0. 910, p=0. 413). 存在感を送る楽しさの項目について, 伝達部2と 3が強 い楽しさを感じるという結果となった. 特に伝達部 2につ いては, 伝達部1やシステム無しより強い楽しさが得られ, ボ タ ン を 連 打 す る と い う 能 動 的 で は あ る が 直 感 的 な 操 作 が 伝 達 シ ス テ ム に 有 効 で あ る と い え る. ま た 満 足 感 の 項目 についても有意差がみられ, 伝達部2と 3がシステム無し より満足度を得られる結果となった. これらの結果から総合的に判断すると, 伝達部 1のよう に 明 確 に テ ン シ ョ ン を 選 択 し 伝 達 す る 方 法 よ り も, 伝 達部 2の よ う に 直感的に操作し明確にはテンションを選択しな い 方 法 が 存 在 感 の 伝 達 に 適 し て い る と 考 え ら れ る. し かし 提案した伝達部2は「操作しやすさ」や「安心感」といっ た 項 目 で 他 の 伝 達 部 よ り も 低 い 評 価 で あ っ た た め, 改 良の 余地があると考えられる. 6 6 6 6 . . . . まとめまとめまとめ まとめ 本 研 究 で は ラ イ ブ 配 信 に お け る 配 信 者 に 視 聴 者 の 存 在 感 を 伝 達, 配 信 者 が 話 を し や す く す る シ ス テ ム の 構 築 を目 指 し, 単 純 化 し た 比 較 実 験 シ ス テ ム を 構 築 し て 実 験 的 考察 を行った. 実験の結果 1) 視覚的な要素 2) 人間であると感じられる図案的な要素 が 視 聴 者 の 存 在 感 伝 達 シ ス テ ム に 必 要 な 伝 達 要 素 で あ る と導き出せた. 参考文献 [1]高橋征資, 公文悠人他,“ ラ イ ブ ビ デ オ ス ト リ ー ミ ン グ に お け る 拍 手 マ シ ン を 用 い た 拍 手 の 遠 隔 伝 送 ”, 映 像 情報 メディア学会誌, Vol. 66, No. 2, pp. J39-J45, 2012 [2]坂 本 大 介, 神 田 崇 行他,“ 遠 距 離 存 在 感 メ デ ィ ア と し て の ア ン ド ロ イ ド ・ ロ ボ ッ ト の 可 能 性 ”, 情 報 処 理 学 会 論文 誌, Vol. 48, No. 12, pp. 3729-3738, 2007 [3]河 本 康 太 郎, “ カ ラ ー 表 現 に よ る 可 視 化 技 術 ”, フ ジ ・ テクノシステム, p. 159-163, 1996 図10. 視聴者用アンケート結果 図9. 配信者用アンケート結果 視聴者の 存在感 安心感 満足感 1 2 3 4 5 6 7 評 価 平 均 値 1>2>3, 無 1>2,3, 無 1>2,3 n.s. n.s. 操作 しやすさ 存在感を 送る楽しさ 安心感 満足感 1 2 3 4 5 6 7 評 価 平 均 値 2,3> 無 2,3>無 n.s. n.s. n.s.
FIT2013(第 12 回情報科学技術フォーラム)
Copyright © 2013 by Information Processing Society of Japan and The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers All rights reserved.