<論文>営業報告書に関する若干の考察
著者
龝山 幹夫
著者別名
Akiyama Mikio
雑誌名
経営論集
巻
25
ページ
31-68
発行年
1986-01-21
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005786/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja営 業 報 告 書 に 関 す る 若 干 の 考 察
穐 山 幹 夫 31 〔I 〕 は 。じ め に 周知 の よ うに, 昭和56 年6 月 の商法 改正 に と もない 法 務 省令 「株式 会社の 貸借対 照表, 損益 計算書 及び附 属明 細書に 関す る規 則 」 も昭 和57 年4 月に 改 正 され, 新たに 「株式 会社 の貸借対 照表, 損益 計 算書, 営業 報告 書及び附属 明細書に 関す る規 則」(傍点筆者)と改称され るにい た った。 こ の法務 省令心 改 正に おい て 画期的 とい われ る点は, 明治23 年 以来 商 法 上そ の作 成が義 務づ け られ てい なが ら も, そ の内容お よび性 格が 法文上 全 く不 明確であ った営業 報 告書 の記載 事項 が明 確に 定めら れた とい う点 であ ろ う1)。 これに より, 営 業 報告 書の存 在に 対す る認識 が法的には 一歩 前進し た こ とは 事実 であろ う。 し かし ながら, このこ とが 営業 報告 書に関す る諸 問題 を 根 本的に 解決し た と はいい 難 く, 依然 とし て営業 報告書は その存 在に 関し てい くつ か の問 題点を 有し てい る。 本 稿では, この営業 報 告書の 計算書 類体 系 上へ の出 現 の経 緯を 探 る とともに, 情報開示 制 度と のか かわ りに おい て営 業 報告 書お よびそ の存 在がかかえ るい くつ か の問題点を 検 討し, 加え て営業 報告書 に対 す る役割期 待を 考 察し てみ るこ とにす る*。 * 以下,本稿では,昭和57年改正前の法務省令「株式会社の貸借対照表,損益計 算書及び附属明細書に関する規則」を旧商法計算書類規則と呼び,昭和57年改正 後の「株式会社の貸借対照表,損益計算書,営業報告書及び附属明細書に関する 規則」を新商法計算書類規則と呼ぶことにする。また,これら法務省令について 一般的に述べる場合には,たんに商法計算書類規則とい うことにする。 〔U 〕 営業 報 告書 記載 事項 法定化 の経緯 昭和56 年 の商 法改正は 昭和13 年お よび25 年 の改正に 次 ぐ大 改正であ り,「戦 後の商 法改正 のい わば 総 仕上げ」 ともいか れ るほ どの 大 幅な 改正であ ったといえ るであ ろ う≒ 今次 の商 法改正 は,「商 法等 の一部を 改正す る法 律案 提 案 説明書」に 述べら れ てい る ように, 基本 的には,「株式 会社 の 自主 的な監 視 機能を 強 化し, そ め運 営の一 層 の適 正化を図 る 等」を 目的 とし て 行なわれ た ものであ り, 歴 史的に は, 昭 和49 年 の商 法改正 審議 の過程に おい でなされ た 衆議 院法務委員 会お よび 参議 院法 務委員 会 の附帯決 議を 直 接の契 機 とす る ものであ る といわ れてい る3)。 これら 附帯 決議に も とづ き, 法制 審議 会商 法 部会は49 年 商法改正 の成立 後 の昭 和49 年9 月 より会 社法 の全面 改正 の作業に 取 りかか ることに なる のであ る。 会社 の 自主的 監視機 能の強 化 とい う観点 から す るなら ば, 商法 の改正は必 然 的に 株主 総会, 取締 役会, 監 査役 会, 会 計監査 人, 計 算・公開 の全 般に わ たらざ るを 得ず, これら に また が る改正 で完結的 な もの となる4)とい い うる 七あろ う。 とくに 取締 役 の受 託 責任 の遂 行と のかかお りで考えて み るなら ば, 株式会社 の会計 とそ の報告を 取 扱 う計算 ・公 開に 関す る規 定の改 正は 極め て 重 要な もの とし て位置 づけ ら れ るこ とにな るであ ろ ‰ そ こで, 以下, 本稿 の主 題 であ る営業 報 告書 の記載事 項が新商 法 計算書類 規則に おい て定めら れ るに 至 った 経 緯を 辿 ってみ るこ とにし よ う。 (1)「会 社法 改正に 関す る間題 点」 め公 表 衆議院法 務委員 会お よび 参 議院 法務 委員会 の附 帯決議に もとづ い て商法 改 正 作業 に着 手し た 法制審 議会 商 法部会 の審 議を 踏 まえて, 法務省民 事局参 事 官 室は, 昭 和50 年6 月12 日付で 「会 社法 改正に 関す る問 題点」(以下「間題点」 とい う)を公表し , 関 係各 位に 会社 法改 正に関す る意見 照会を 行な う こ と と し た。 こ の「問題点」 に おい ては, 間 題点 とし て 大略7 項 目5) が要 約され て お り, そ の「第五 株式会 社 の 計算・公 開」 の二に おい て, 営業報 告書に 関 し て以 下 のよ うな問 題提 起が なされ てい る。 ■■■ 「 営業 報告 書の記載 事項を 法 定すべ き か。 特に 記 載すべ き事項 とし て, 例え ば , 次の よ うな ものにつ い て, ど う考え るか。 他に どの よ うなも のがあ るか。 (一) 重 要な財産 の得 喪変 更に 関す る事項 (二) 株式, 社 債の発 行に 関す る事 項 (三) 自己 株式 等に 関す る 事項 ト( 四) 子会社 等に 関す る事 項 ベ 五) 役員報 酬に 関 す る事項
営業報告書に関する若干の考察33 ベ 六) 役員 , 支 配 株 主 等 と会 社 の利 害 に 関 す る事 項 〉 ( 七) 従業 員 の人 数 , 給 与 総 額 等 に 関 す る 事 項 っ く八) 公 害 の 防 止 , 消 費 者 の 保 護 そ の 他 会 社 と の関 係 に お い て 生 じ た 問 題 及 び そ れ に 対 し て 講 じ た 措 置 に 関 す る 事 項 ( 九 ) 重 要 な 寄 附 に 関 す る事 項」 1 ̄営業 報告書 の記 載事 項」 の法定化に 関し てはじ め て具 体的に 公 の場で問題 提 起がな され た とい う点 で, この 「問 題点」 の意 義は 極 め て高 く評 価 できる であろ う。 バ2)「株式会 社 の計 算・公 開に 関す る改正 試案」 の公 表 その後,ト法 務省民 事 局参事官 室は昭 和52 年5 月16 日に は 「 株式 制度に関す る 改正試 案」 を, また昭 和53 年12 月25 日には 「株式 会社 の機 関に関す る改正 試 案」 を 公表 す るに 至 った が, 会 社の 計算・公 開に 関し ては 昭和54 年12 月25 日に 「株式会 社 の計 算・公 開に 関す る改 正試案」(以下,「計算・公開改正試案」 という) が公表 され てい る。 これら三つ の改正試 案が 出 揃った こ とに より, 株式 制度, 株式 会社 の機 関, 計算・公 開に関し て一 括的 な 改正を す るための 臭 体的な段 取 りが整 った ことに な るわげ であ る。 この「 計算 ・公開 試案」 におい ては 営業 報告 書 とい う名 称が姿を 消し , こ れ 脳代 り業 務報 告書 とい う名称 が新たに 登場し てい る。 営業 報 告書 から業 務 報告書へ の名称 の変 更は,「計 算・公 開試案」 作成0 当 事者 の言に よれば, 以 下の よ うな 理由に もとづ く ものであ るとい われ てい る6)。 イ。 営業 報 告 書に つ い ての既成 の概 念を 排除す る。 ロ。 会 社 の業務 執行 全般につ い ての情 報を 開示す る書類 であ るこ とを示す 上 には,「営業 」 より「業 務」 の方 が広い言 葉 であ り, 適切 であ る。 この よ うな発 言 の中 に立 案当 事者の 営業 報告 書 の含 意 とそ れに 対す る役割 ノ期待が感じ とれ るこ とは 興味深い ことであ る。 そ れは と もか くとし て, この 業 務報告 書は 「計算 ・公 開試案」 では取 締役 が毎決 算 期に 作成し なけ ればな ら ない もの とさ れて お り(一 計算書類等1 ), 計 算書 類体 系 の 中 で の 位 置 づ けは 営業 報告 書 と何ら 異な ってはい ない。 し かし ,「計 算・公 開試 案」 で は「業 務報 告書に は, 法務 省令で定 め るところ に より, 会社 の業 務 の状況に 関 す る重 要 な事 項を 記載し なけ れば なら ない」(一 計算書類等5 ) とし, 業
務 報 告 書 が 記 載 す べ き 事 項 に つ い て の 基 本 理 念 と , 記 載 事 項 を 法 務 省 令 で 定 め る 旨 の 提 案 が な さ れ て い る 。 こ の こ と と の 関 連 に お い て, ( 注1 )と し て さ ら に , 「 業 務 報 告 書 の 記 載 事 項 を 次 の よ う に 定 め る こ と は ど う か 。」 と し て , 以 下 の 諸 項 目 が 具 体 的 に 提 示 さ れ て い る 。 「(a) 貸 借 対 照 表 及 び 損 益 計 算 書 の 作 成 に づ き 採 用 し た 重 要 な 会 計 方 針 且b ) 子 会 社 の 数 , 総 資 産 及 び 総 資 本 , 子 会 社 の 総 資 本 に お い て 会 社 の 有 す る 割 合 並 び に 子 会 社 の 営 業 に よ る 収 入 及 び 利 益 又 は 損 失 の 総 額 ( 子 会 社 以 外 の 会 社 と の 資 本 提 携 等 の 状 況 を 記 載 す る も の と す る か ど うか は , な お 検 討 す る 。) (c) 大 株 主 及 び そ の 持 株 数 並 び に 大 株 主 が 株 式 会 社 で あ る 場 合 に は , 会 社 が そ の 計 算 に お い て 取 得 し て い る 当 該 株 式 会 社 の 株 式 の 数 (d) 過 去3 年 間 の 営 業 成 績 り 比 較 (e) 決 算 期 後 に 生 じ た 会 社 の 業 務 に 関 す る 重 要 な 事 実(f ) 役 員 の 数 及 び 報 酬 の 総 額 ( 使 用 人 と し て の 給 与 は. 別 記 す る 。) (g) 会 社 が 無 償 で し た 金 銭 , 物 品 そ の 他 の 財 産 上 の 利 益 の 供 与 ( 反 対 給 付 に 比 し 著 し く 過 大 な 給 付 を 含 む 。) の 総 額 (h) 会 社 の 業 務 の 状 況 及 び 将 来 の 見 通 し に つ い て の 検 討 の 結 果 (i) そ の 他 会 社 の 業 務 に 関 す る 重 要 な 事 項 」 ま た , こ れ ら を 補 足 す る 意 味 で , 注2 で は さ ら に 以 下 の よ う な 提 案 も な さ れ て い る 。 「 法 務 省 令 で 定 め る 事 項 の ほ か , 業 務 報 告 書 に 記 載 す べ き 事 項 を 定 款 又 は 総 会 の 決 議 で 定 め る こ と が で き る も の と す る こ と は ど う か 。」 こ れ ら 記 載 事 項 に は , 昭 和50 年6 月 に 公 表 さ れ た 「 問 題 点 」 の う ち , 日 , ㈲, ㈲ ,(七),(八)の 各 項 目 が 含 ま れ て お ら ず , 代 っ て(a), (d), (e),(h), (i)等o 諸 項 目 が 新 た に 例 示 さ れ る に 至 っ て お り , 全 体 と し て 「 問 題 点 」 の 記 載 事 項 が 大 ま か で あ っ た の に 対 し て , 比 較 的 詳 細 に , し か も 具 体 的 な 内 容 と な っ て い る と い え る 。 こ の 「 公 開 ・ 計 算 改 正 試 案 」 が ( 株 式 会 社 の 株 主 に 対 す る 直 接 の 開 示 を 大 幅 に 拡 充 す る こ と を , 重 要 な 一 つ の 柱 と し て い る7)」 こ と か ら す れ ば , そ れ は 当 然 の 結 果 と い え る で あ ろ う 。 そ し て ま た , こ の 「 計 算 ・ 公 開 改 正 試 案 」 の 審 議 途 中 に お い て 航 空 機 疑 惑 問 題 や 大 企 業 の 粉 飾 決 算 問 題 等 が 多 発 し , こ
営業報告書に関する若干の考察35 れら の事 件を 契 機 とし て企業 の非 行防 止 のため の 自主 的 監視機 能 の強化 への 認 識が 相当に 影響を受け た とい うこと も容易に 推 察で き る8)。 (3)「商法 等 の一 部を 改正す る法 律案要 綱案」 お よび 「商 法 等の一部を改 正 す る法 律案要綱」 の公表 法制 審 議会商 法部会は(2)で 述べた 改 正試 案 のそ れ ぞれ につ い て法曹会, 学 会 ,実業 界等 の各界から 商法 改正に つい て の 意見を 募 り, 審議を 重 ねた 後, 昭 和55 年12 月24 日に「商法等 の一部を 改正 す る法 律案要 綱案」(以下「要綱案」 という)を 公表し た。 この 「要綱案」 の構成 は第 一 「商 法 の一部 改正」, 第二 「株式会 社 の監 査等に関す る商法 の特例 に関 す る法 律の 一 部改正」 の 二部 か ら 成っ てい る。 こ の「要 綱 案」は そ の後昭 和56 年1 月26 日開 催の法制審 議会 総 会で 審議 承認 され,「商法等 の一部を 改正 す る法 律案 要 綱 」(以下「要綱」と い う)とし て法 務大臣に 答申さ れてい る。 この 「要綱」 に おけ る, 営業報告 書に 関す る規定 は 大 略以下 の よ うな もの であ る。1 営業 報告書には, 当 該事業年 度に おけ る営業 の経過 その 他会 社 の状 況 を 明ら かに す る重 要な 事項を記 載し なけ れば ならない(第一,七,1, (二))。2 監 査役 の監査報 告書には, 営業 報告書 が法 令 お よび 定 款に 従って会 社 の状 況を 正し く示し てい る か ど うか が記載さ れ ねばなら ない(第一, 七,1.(四),(D)。3 取締 役は, 営業 報 告書を 定時 総会 に提 出し て そ の内 容を 報告し なけ れば ならない(第一,七,1, (六))。 ニ4 大会 社*の営業 報告 書の記載 方法 そ の他 の様式 は 法務 省令で 定 め る (第二,一.4, ミ ))。5 営業 報 告書の記載 事 項の うち, 会 計に 関す る 部 分につ い ては, 監査 役 の監 査 のほ か, 会計監 査人 の監査を 受け なけ れば なら ない(第二, 一,4,(二))。」 ゛ 「要綱」における大会社の要件は以下のようなものである(第二,−,1 )。(1) 資本金の額が5 億円以上の株式会社 (2) 最終の決算期以前の1 年間の営業による収入が200億円以上の株式会社(3) 最終0 貸借対照表上の負債の部に計上した金額の合計が100 億円以上の株式 会社
この 「要 綱」に おけ る営業 報告書 の記載事 項に関 す る規 定は, さき の 丁計\ 算・公 開改正試 案」 がそ の注に おい て個 々の 具体的 な項 目を 列挙し ていた の・ と比し て, 極め て概 略的で 一 般的な 表 現となっ てい るレ こ の ような点Tでは, この 「要 綱」に おけ る営業 報告書 の記載 事項に関 す る規 定は 一歩 後 退し た と の印 象を まぬ がれない 。 こ の ような結果 とな った 背景に は, 大 会社 以外につ いて まで,営 業 報 告書 の記載 方式を 定 めるこ とは 中小会 社に負 担を かけ す ぎ る との意見があ ったから だ といわ れ てい る9)。 このため に,r 要 綱」 では原則= 的な 規定が設け ら れ, 大会 社につ い てのみ, 営業報 告書 の記 載方 法を 法務省 令で具体 的に定 め るこ ととし た わけ であ る。 ところ で, さ きに公 表 さ れた 「計算 ・公 開改正試 案」 に おい ては営業 報告 書に 代 って 業 務報告 書 とい う名 称 が新たに 用いら れた のであ るが, 奇妙な こ とに こり 「要綱 」 では事業 報告書 とい う名 称 が消え, また 営業 報 告書 という 名 称が復 活し てい る。 立 案当 事者達 の諸 論稿を読 んで み て もな ぜ この1 年 の 間に営業 報告 書 とい う名 称 が復活し た かにつ い ては 何等 の言 及 もな く, そ の 理 由は定 かでは ない6 こ の名 称 の変 遷の経緯を 探 るこ とは 極めて 興味あ るこ と であ るが, 武 田教授は こ の よ うな 事情を 以下 の よ うに 推 測し ておら れる10) 「(イ) 業 務 報告 書に記 載 すべ き内 容は 最終 的には 決定 され てい ない が, 試 レ 案 に よる内 容提示 に よっ て, 当 初の意 図が一応 充 足さ れた とみら れ る こ と。 こ こで当 初 の意図 とい うのは 「営業 報告書 のあ るべ き論一一→記 載 内容の 規定」 とい うアプpt ーチを避け ,「記載 事項 の範 囲 の明確化 一 報 告書 の性 格規定 」 とい うアプpt ―チに よって, 立 法者 の 目指す 目的が 一応 達成 で きた とみら れ るこ とが第一に あげら れ るこ と。 ㈲ 上 記(イ)の実 質的 目的 が 一応達 せられ た以上, あえ て業 務報 告書 とい う新奇 な用 語に とら われ る必 要がな くな った も のと解さ れ るこ と。 こ とに 丁業 務」 とい う概 念に は 問題性 が含 まれて お り, 営業 報 告書 とい し ダう慣用化 さ れた 用 語に 優 る特別 の唯 名 的 用 語(その‥内容をよりよく表現 する用語) とは 思 わ れない こ とが第二 の理 由 とし てあげ ら れ る。」 思 うに, 営業 報 告書 とい う名 称を用い ても商法に おけ る情報 開示 の本来 の 目的は実 質的に 何ら 害 なわ れ るこ とは ない であろ うと思慮 され, また業 務報 告書 とい う名 称 を用い た とし て も, 営業 報告 書 とい う名 称を 用い た 場合 と比 し て どの程度 情報 開示 の 目的 が よりよ く達成 され うる かに関し て, 立 案当事
営業 報 告書 に関す る 若干 の考 察37 者 達 に 疑 問 な し と し な い と の 考 え が あ っ だ の で は な い か と 推 察 さ れ る の で あ こ る 。 (4)丿「 法 務 省 令 制 定 に 関 す る 問 題 点 」 の 公 表 前 記(3)の 「 要 綱 」 に も と づ き そ の 後 法 務 省 民 事 局 に お い て 法 律 案 の 立 案 乍 某 が 進 め ら れ, 最 終 的 に は 昭 和56 年3 月24 日 付 で 「 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 案 提 案 理 由 説 明 書 」,「 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 案 要 綱 」お よ び「 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 」 と し て 国 会 に 提 出 さ れ る に 至 る の で あ る 。千 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 」は「 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 の 施 行 に 伴 う 関 係 法 律 」 の 整 理 等 に 関 す る 法 律 」と と も に 昭 和56 年5 月15 日 の 衆 議 院 本 会 議 で の 可 決 のノ 後 参 議 院 に 送 付 さ れ,56 年6 月3 日 の 参 議 院 本 会 議 で 可 決 さ れ 成 立 し,6 月9 日 に そ れ ぞ れ 法 律 第74 号, 第75 号 と し て 公 布 さ れ ,昭 和57 年10 月1 日 施 行 の 運 び と な っ た 。 こ れ に。よ り 今 次 の 商 法 そ の も の の 改 正 は 一 応 の 決 着 を み る の で あ る 。 し か し な が ら , 昭 和56 年3 月24 日 付 の 「 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 案 要 綱 」 に お い て は さ き の 「 要 綱 」 に 示 さ れ て い た 「 営 業 報 告 書 に は , 当 該 営 業 年 度 に お け る 営 業 の 経 過 そ の 他 会 社 の 状 況 を 明 ら か に す る 重 要 な 事 項 を 記 載 し な げ れ ば な ら な い 。」 と い う 規 定 お よ び 「 会 社 の 営 業 報 告 書 の 記 載 方 法 そ の 他 の 様 式 は 法 務 省 令 で 定 め る 」 と い う 規 定 は 全 く 姿 を 消 し て し ま っ て しヽる 。 こ の 理 由 は , 立 案 当 事 者 の 言 に よ れ ば , 営 業 報 告 書 の 作 成 は 明 治32 年 の 現 行 商 法 施 行 以 来 行 な わ れ て き て い る こ と で あ り ,ニそ こ に 会 社 の 営 業 が 記 載 さ れ る べ き こ と は 当 然 の 前 提 と さ れ て き て い る の で , 改 め て そ れ に う い て の 記 載 事 項 を 規 定 す る こ と は 立 法 的 に お か し い し , そ の 必 要 も な い と い う 意 見 が あ っ た た め だ と さ れ て い る 。 そ し て , 結 局 , 「 要 綱 」 に 定 め る 内 容 の 記 載 が さ れ る こ と を 前 提 に し て 新 た に こ れ に つ い て の 規 定 を 置 か な い こ と に し た の だ と い う11)。 た し か に 記 載 事 項 を こ の 期 に 及 ん で 規 定 す る こ と は 立 法 的 に は 疑 問 で あ る と し て も , 営 業 報 告 書 の 作 成 を 法 的 に 義 務 づ け な が ら , そ の 内 容 に つ い て 法 は 何 ら 言 及 し な か っ た と い う 法 の 不 備 を 考 慮 す る な ら ば , こ の よ う な 議 論 は 余 り に も 形 式 的 す ぎ る も の で あ ろ う 。 む し ろ , 法 の 不 備 の 解 消 の た め に こ そ 記 載 事 項 に つ い て の 規 定 を こ の 際 新 た に 明 確 に し て お く の が 本 来 の 筋 で は な か っ た の で は な か ろ う か 。 ㎜ ■■ ■ た だ し , 昭 和56 年3 月24 日 付 の 「 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 案 要 綱卜 で の 営 業 報 告 書 の 記 載 内 容 の 削 除 に 代 え て,「 商 法 中 改 正 法 律 施 行 法 」( 昭 和13 年
法律第73号)第49 条 の 規定 「株式会社 ノ貸借対照表, 損益計算書及附属明細 書 ノ記載方法其 ノ他ノ様式 ハ命令 ヲ以テ之 ヲ定 ム」を 「株式会社 ノ貸借対照 法 務 省令を 早急に 制定す 表 及公 告 スベ キ要旨, 損益 計 算書, 営業 報 告書並 二附属 明細書 ノ記 載方法 ハ 命令 ヲ以 テ之 ヲ定 ム」( 傍点筆者) と改 正す るこ とに より, 法務 省令に より営 業 報 告書の記載 事 項を定 め る方途 が とら れ るこ とにな っ た ので, 技術的に は あ る程 度こ の問 題 も解 決 がつ いた といえ な くは ない。 ところ で, 商 法 の本文そ のもの の改正 は昭和56 年6 月3 日の参 議院 本会議 に おけ る可 決で一 応 の決着を みたわけ であ るが, 商法改 正の審 議 の過程にお い て昭 和56 年5 月13 日の衆 議 院法務 委員会 お よび 昭和56 年6 月2 日の参議院 法務委員 会に おい て, それ ぞれ 「商 法等 の一 部を 改正す る法律 案に対 する附 帯 決議」 が なされ てい る12)。 と くに,「会社 の計算 ・公 開」 に 関し ては, 以 下 のよ うな附 帯決 議 がなさ れ てい る。 衆議 院法 務委員 会(昭和56年5 月13日)に おけ る附帯 決 議 「ニ 。 大会社 の社 会的 責任 が ます ます 強調され る ことに かんが み, 業 務及び 会 計に 関す る情報につ い ては進 んで 公開す る よ う指 導す る とと もに, 更 にこ の点につ い て法 改正を 検 討す ること。 三EE.改正 法に 伴 う省令中, 営業 報告書 及び附属 明 細書につ い ては, 法制審 議会 の答申 とそ の審 議の 内容を 尊重し , 社会 的責任 が明示 で きる よ う十 分な 内容 のも のとす るこ と。」 参 議院法務 委員 会( 昭和e 年6 月2 日)に おけ る附帯決 議 「三 。 株主 債権 者 の保 護を図 る とと もに, 企業 の社会的 責任を 明ら かに する ため, 株式 会社 の業 務及 び財 務に 関す る公示 ・公 開 の制 度を より一 層充 実強化す るこ と。 四。 営業 報告 書及 び附 属 明細書 の記 載事 項に関 す る省令 の 制定に 当 っては, 国会におけ る審 議の 内容を 尊重し , 大 会社 の社会的 責 任を 明ら かならし め る内容 のも のとす るこ と。」 このため 改正 商法 の施 行に 付随し て, い くつか の事項 に 関し てー とくに 営業報告書と附属明細書の記載事項については る必 要が生じ る こと とな るに 至 った。 こ のよ うな経 緯の もとに 法務 省民 事局 参 事 官室は問題 提 起を 行ない, 各 界 の意見を 募 るた めに 昭和56 年10 月9 日に 以 下 の8 つ の大項 目 から 成 る「法務省 令制定に 関す る問 題 点」(以下「問題点」
営業報告劃こ関する若干の考察39 という)を 公表し た。 「一 営業報 告書 二 貸借対 照表及 び損 益計 算書 三 附属 明細書 四 公告すべ き貸 借対 照表 及び 損益 計算書 の要旨 五 議決 権行使につ い て の参考書 類(株主千人以上の大会社のみ) 六 書面投 票用紙 / 七 会 計監査 人の監 査報告 書 八 監査 役の監査 報告書 (大会社のみ)」 こ の うち, 営業報 告書に つい ては 以下 の よ うな問題 提 起がな され てい る。 「営業 報告書には, 次 の事 項を記 載 す るもの とす るこ とは ど うか。1 主 要な事業 内容, 発行 済株式 の内 容及 び総数, 主 要な営業 所 ・工場, 従業員 の状況 そ の他会 社 の現況2 そ の営業 年度 におけ る営業 の経 過及 び 成 果(設 備投資の状況,資金調達 の状況,営業部門が分れているときは部門別の記載等を含む)3 親会社,子 会 社そ の他 企業 結合 の状況 及び成果 (注)「結合企業の活動状況」とすることはどうか。4 会 社が対 処す べ き課題 及び これにつ い て の方針5 そ の営業 年度 におけ る取締 役 及び監査 役 の氏名(住所), 主な 職業 又は 任務 及び持 株数6 大 株主, そ の持 株数 及 び大 株主へ0 資 本参加 の 状況7 主 な借入 先, 借入 額 及びそ の持 株数8 過去3 年 間以上 の営業 成 績 の推 移及び これにつ い ての説 明9 決算期 後に生じ た 会社 の状況 に 関す る重要な事 実10 そ の他会 社 の状況に 関 す る重 要 な事 実 (注)1 営業報告書の記載について,企業秘密保護条項を定めるべきか(ドイツ 株式法160条4 項等参照)。2 小会社(資本金1 億円以下)については,適用除外することはどうか。3 中会社については,特例を設けないものとすることはどうか。典型的に 記載を要しないものとすべき事項があるか 」 ’ これ まで述べ て きた よ うに, 営業 報 告書 の記載事 項 に関し ては, 昭 和50 年6 月公表 の「会 社法改 正に 関す る問題 点」,昭 和54 年12 月公表 の「株式会 社 の
計 算 ・ 公 開 に 関 す る 改 正 試 案 」, 昭 和55 年12 月 公 表 の 「 商 法 等 の 一 部 を 改 車 す る 法 律 案 要 綱 案 」 お よ び 昭 和56 年1 月 公 表 の 「 商 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法1 律 案 要 綱 」 に お い て 何 度 も 問 題 と さ れ な が ら も つ い に 法 文 化 さ れ な か っ た 経 緯 が あ る 。 今 回 め こ の 「 問 題 点 」 は 商 法 改 正 に と も な う 衆 参 法 務 委 員 会 り 附 帯 決 議 に も と づ く も の で あ る と い う , そ の 公 表 の い き さ つ か ら み て も , ま た 。 今 次 の 改 正 商 法 附 則 第12 条 と の 関 係 に お い て , 昭 和57 年10 月 決 算 期 の 会 社 は 新 し い 法 務 省 令 の 適 用 を 受 け る こ と に な っ た と い う 状 況 を 背 景 と し て , 営 業 報 告 書 の 記 載 事 項 の 法 定 化 は や う と 実 現 の 方 向 に 動 き だ し た と の 感 が す る 。 こ の 「 問 題 点 」 に お け る 営 業 報 告 書 の 記 載 事 項 は 前 述 し た こ れ ま で に 公 表 さ れ た も の に 比 し て , 全 体 と し て す っ き り と し た 体 系 と た っ て お り , 昭 和50 年6 月 公 表 の 「 会 社 法 改 正 に 関 す る 問 題 点 」 に 比 し て 項 目 万 具 体 的 か っ 詳 細 に 示 さ れ て い る 。 他 方, 昭 和54 年12 月 に 公 表 さ れ た 「 株 式 会 社 の 計 算 ・ 公 開 」 が 極 め て 詳 細 に 記 載 事 項 を 列 挙 し て い る も の の , そ れ ら 記 載 事 項 の 体 系 に 脈 絡 が 欠 け て い る 印 象 を 与 え て い る の に 比 べ , こ の 汀 問 題 点 」 に お い て は 項 目 の 配 列 が 整 理 さ れ て い ろ と の 感 を 受 け る 。 こ の 「 問 題 点 」 に 対 し て , 企 業 会 計 審 議 会 で は 昭 和57 年1 月14 日 に 丁『 法 務 省 令 制 定 に 関 す る 問 題 点 』 に 対 す る 意 見 書 」 を 公 表 し , 会 計 に 関 す る 事 項 の 明 示 と 後 発 事 象 の 記 載 区 分 の 明 示 の 二 点 に 関 し て 要 望 を 出 し て い る も の の , 「『 法 務 省 令 制 定 に 関 す る 問 題 点 』 に 掲 げ ら れ て い る 営 業 報 告 書 の 記 載 事 項 は , 会 社 め 営 業 の 状 況 に 関 す る 重 要 な 事 項 で あ り , 企 業 内 容 の 開 示 の 充 実 ・ 強 化 の 観 点 か ら , 概 ね 妥 当 と 考 え ら れ る 」 と の 評 価 を 下 し て い る1 ≒ (5) 「 株 式 会 社 の 貸 借 対 照 表 , 損 益 計 算 書 , 営 業 報 告 書 及 び 附 属 明 細 言 に 関 す る 規 則 」 の 公 表 「 法 務 省 令 制 定 に 関 す る 問 題 点 」 公 表 の 後 , 各 種 団 体 か ら 寄 せ ら れ た 意 見 等 の 取 り ま と め の 作 業 が 法 制 審 議 会 商 法 部 会 に よ り 行 な わ れ , 最 終 的 に は , 昭 和57 年4 月24 日 付 で , 法 務 省 令 第25 号 「 株 式 会 社 の 貸 借 対 照 表 , 損 益 計 算 書 , 営 業 報 告 書 及 び 附 属 明 細 書 に 関 す る 規 則 」 と し て 公 表 さ れ る の で あ る 。 こ の 新 商 法 規 則 に お い て は , 「 第 四 章 営 業 報 告 書 」 第45 条 に お い て 以 下 の よ う な 営 業 報 告 書 の 記 載 事 項 が 定 め ら れ る に 到 る の で あ る 。 「 営 業 報 告 書 に は , 次 の 事 項 そ の 他 会 社 の 状 況 に 関 す る 重 要 な 事 項 を 記 載 し な け れ ば な ら な い 。 ・F ・` 「t. ■ ■■
一 主 要 な事業 内 容, 営業 所 及び工場, の会社の 現況 営業 報告書 に 関す る 若干 の考 察41 株 式 の 状 況 , 従 業 員 の 状 況 そ の 他 二 そ の営業年 度に おけ る営業 の経 過お よ び 成 果( 資金調達の状況及び設備 投資の状況を含む) 三 親会社 と の関係, 重要 な子会 社 の状況 そ の他の 重 要な企業 結合 の状 況 四 過 去三 年間 以上 の営業 成績 及び財 産の状 況の推 移並びに こ れについ て の説 明 犬五 会社 が対 処すべ き 課題 六 そ の営 業年 度 の取締 役及び 監査 役の氏名, 会社 に おけ る 地位及 び担当 又は主 な 職業 七 上 位七名 以上 の大 株主 及びそ の持 株数 並びに当 該大 株主 へ の出資 の状 況 八 主 要な 借入 先, 借 入 額及び当 該借入 先 が有す る 会社 の株式 の数 九 決算期 後に 生じ た会 社の状 況に関 す る重 要な 事 実」 営業 報告書 の記 載事 項 が「会社 法改 正に 関す る問題 点」 に おい てはじ めて 公の場 で問題 とな って 以来, 今 回の新 商法計 算書類 規則 にそ の記 載事 項が定 められ る までには 実に7 年 余 の歳 月 が費さ れてい る。 多 くの紆 余 曲折を 経 な がら もやっ と今 日営業 報 告書 の記載 事項 が法的 に 制定 され た とい う点 では, 新商 法 計算書類 規則 の存 在は, 企業 の財 務内 容開示制 度に とって新 たな頁を 開くも のとし て高 く評 価でき るであ ろ う。 〔 Ⅲ〕 営業 報 告書記 載 事項 法定化 の意義 前節 では, 昭 和56 年 商 法改正に ともな う営業報 告書 記載 事項 の法定 化 の経 緯を 辿って みた。 この営業 報 告書 の記載 事項の 法定 化か商 法改 正 の歴史 の中 でどの よ うな 意味を 有す る もの であ るかを 本節 では検 討をし てみ るこ とにす る。 商 法上, 営業 報 告書 の作成 義 務に関す る規定 の歴 史は 極め て古 く, 明治32 年3 月9 日公 布 のい わ ゆ る新商 法第190 条 の以下 の よ うな規定に お い て 既に 営業 報告 書 の名 称 が見 られ る。 「取 締役 ハ定 時総会 ノ会日 ヨ リ一週 間前 二左 ノ書類 ヲ監査役 二提 出 スルri ト ヲ要ス ニ
一 財 産 目録 二 貸 借対 照表 三 営業 報 告書 四 損益 計 算書 五 準備 金及 ヒ利益又 ハ利 息 ノ配 当 二関 スル議案」 し かし この新商 法公 布に 先立つ こと約10 年前, 明治23 年4 月26 日に公布さ れ,( 西欧 法を ほと んど白地 継受し た近代 的な商 法 典を一 応完成 させた14)」と い われ る, い わ ゆる旧商 法に おい て, 既に こ の営 業 報告 書に類 す る「事業報 告 書」 の作成 が義 務づけら れてい た。 す なわち, 明治23 年商 法第222 条は以 下 のよ うな規定を 行なってい る のであ る。 「会社 ハ其 本店及 ヒ各支 店 二株主名 簿, 目論 見 書, 定 款, 設立免 許書, 総会 ノ決議 書, 毎 事業年 度 ノ計算書, 財産 目録, 貸借 対照 表, 事業 報告書, 利息 又 ハ配当 金 ノ分配 案及ヒ抵当 若 クハ不 動産質権 者 ノ債 権 者 ノ名 簿 ヲ備置キ通 常 ノ取 引時間中 何人 ニモ其 求 二応 シ展 閲 ヲ許 ス義 務 ア リ」。 この よ うに, 営業 報告 書もし くは 事業 報告 書 の作成 義 務は 我が国 商法 の制 定 当 初 よ り法文 上 規定さ れていた ものであ る。し かし な がら, そ の営業 報告 書 の記載 内容につ い ては 法は何ら 言及し ない まま今 日に 至 り, 前 節で述べた よ うに, その 規定 の制定は 昭和57 年4 月 公布 の新 商法 計 算 書類 規則 の公布 ま で 待た ねば なら なか った のであ る。 し かも, 昭和13 年 の 商 法改正 の折,「商 法 中改 正 法律施 行法」 第49 条に おい て貸借 対照 表, 損益 計 算書 お よび 附属明 細書 の記載方 法そ の 他の様式は 省令に より定め ら れる と の規定 が設けら れた に も かかわら ず, 営業 報告 書の記載につ い ては 何ら 言及 さ れずじ まいであ っ た のであ る。 こ の 「商 法中改正 法律 施行法」 に も とづ き, 昭和37 年4 月 の株 式 会社 の会 計を 中 心 とし た 商 法改正 の折, 貸借対 照表, 損 益 計算書 お よび附 属 明細 書 の記 載 様式 に関し ては 昭和38 年3 月に旧 商 法 計算 書類 規則 がはじ め て 制定 され, 財 務内容 開示 に 関す る規定 の改善 が一 段 と前 進し た とい う事実 が 認識 で きる。 この よ うな状況に もかかわら ず, 営業 報 告 書の 記載内 容に 関 し ては 明治以来, 不 問に 付されてい た のであ る。 こ の よ うに 法 が営業 報告 書ないし 事業 報告書 の作成 を 義 務づけ な がら も法 の 制定 の 当初 から 営業 報告 書の記載 事項 が何ら 定 められ な か った 背 景には, 営 業 報告 書ないし は それに類 似す る報告 書の 作成 が既に 当 時 の会 計実務 の中
営業報告書に関する若干の考察43 に浸 透し ていた た めでは ない かとい うことが 推察 され る のであ る15)。 ちなみ に, 明治23 年 の旧商 法公 布以 前の 明治20 年12 月に2 期 分 まとめ て発表 された 日本 郵船 会社第 一回 報告(m 治18年10月1 日より明治19年9 月30日まで) お よ び 第二回 報 告(m 治19年10月1 日から明治20年9 月30日まで)を みてみ よ う。 こ れ らに。は, 以下 の よ うな事 項が記 されてい る。 「 日本 郵船 会社第 一回 報告 第一 項 創立顛 末 第二 項 業務 概況 / 第三 項 航路 明 治19 年9 月30 日現在 第 四項 郵便 御用物 第五項 會 計 明 治十九 年九月三十 日日本郵 船会社 損 益勘 定表 明 治十九年 九月三 十 日日本郵 船会社保 険 積立 金勘定表 明 治十九年 九月三十 日日本郵船 会社大 修繕 積立 金勘定 表 明 治十九年 九月三十 日 日本郵 船会社 資 産 負債 勘定表 第 六項 船 舶 第 七項 船舶地 所家 屋増減 第 八項 命令書中 改正 第九 項 船舶遭 難 第 十 項 各店 位置 第 十一 項 役 員」 「日本 郵船 会社第二 回 報告 第一 項 業 務 概況 第二 項 航 路 第三 項 郵便 御用物 第 四 項 會 計 明治二十 年 九月三十 日 日本 郵船 会社損 益 勘定 表 明 治二十年 九月三 十 日日本 郵船会社 保 険 積立 金勘定 表 明治二 十年 九月三十 日 日本郵船 会社大 修繕 積立金 勘定表 明治二 十年九 月三十 日 日本 郵船 会社資 産負 債勘定表 第 五 項 船 舶
…… … 第六項 船 舶地所 家屋増 減 上 コ 第七項 命令 書中改正 上 ……… 第 八項 各店 位置- 。 > = 第九項 役員(役員進退) 第十項 負 債券」 日 本郵船 の場 合, ただ 「報告」 と のみ表 題 が付され てい る ものの, 業 務の 概 況, 創立顛 末, 船 舶遭 難, 役員, 役員 進退等 の庶 務事 項 が会計事項 ともど も整 理し て併 記され でお り, そ の内 容は 今 日の営業 報告 書 の記 載事項に 極め て 近い ものであ るとい え る。 当時 既に この よ うな報 告書 の 作成 実務 が存在し て い た とい うことはす こぶ る興 味 深い こ とであ る。 この よ うな実 務が発達し てい た のは, 片 野教授 が指 摘し ておられ る ように, 銚 治6 年 の国立銀 行の 開設 とそ れに と もな う国立銀 行 の簿記 会計制 度の 創始 と ともに, 大 蔵省 が国立 銀行が定 期に 紙 幣頭(後の銀行局長)に 差出すべ き報 告 書の差 出規則を既 に定 めてい た とい う事実 が存 在し, それ ゆえに 「国立銀 行会 計制度 の基礎 が確立 された そ の上に,今 日に つ な が る日本 の株式 会社会 計 制 度が展開 されて 行った16)」 こと からす れば 当然 の成 り行 きだ った といえ る であ ろ う。 こ の 日本郵船 の報告 書は そ の 後第9 回 決 算期(明治26年10月1 日から明治27 年9 月30日まで) より第14 期 前 半 年 度* 明治3i年10月1 日から明治32年3 月31日 まで) までの期間は 「日本郵船 会社 事業 報告書, 計算書, 貸借 対照表, 財産 目録, 利益 金分配 案」 とそ の名称 が改めら れ て作成 され てい る。 この事業 報 告 書 とい う名称は, 明治24 年1 月1 日施 行 のい わゆ る旧 商 法第222 条 に お い て , 事業 報告 書の作成 義 務を 定め た こ とに 呼応 す るも のであろ う。 そし て, 明 治32 年3 月9 日のい わゆる新 商 法公布 直 後に 到来 す る第14 期後半 年 度(明 治32年4 月1 日から明治32年9 月30日まで) に かかお る報 告書 よ り そ の 名 称 は 「日本 郵船 株式 会社 営業 報告書 ・計 算書 ・貸 借対照 表 ・利 益金 分 配 案」 と 改 め ら れ るに 至 ってい る。 こ の報告 書の中に お いては, 営業 報 告書が独立し, 計 算書類 と並列的 な位 置にお かれ てい る。 こり 第14 期 後半 の営業 報 告書 の記 載 事 項 の概 略を 参 考 までに以下 に示し て み よう。 * 日本郵船は第lO期より1 年決算から半年決算へ変更をしている。 「一 営業報 告書
営業報告書に関する若干の考察45 第一 業 務概況 及報告 ノ要旨 第 二 株主総 会 っ 第三 航 路 丿 第 四 郵 便物 し 第 五 船 舶 第 六 海 難 第 七 地所 建物 第八 各店 位 置 … …… 第九 役 員」 ニ し この 営業 報告 書はそ の内容 が相当に 整理され てお り, 会社 の業 務の概況を 明らかに す ると と もに, 貸借対 照表や 損益計 算書等 の 財 務諸表 の背 後にあ る 状況を把 握す る のに あ る程 度役立つ もの となってい る。 商 法の規 定が, 営業 報告書 の記載 内容 に関し て 何ら 規定し ていな か ったに もか かわらず, この よ うな形 で 営業 報 告書 が作成 されていた こ とは 驚 くべ き こ とであ る。 このよう な事実は 前 述し た 武 田教授 の指摘を 極めて 明確に 裏 付け るもの とい え るで^あ ろ う。 以上 のよ うな実 務 の状況は 基本的には 今 日まで さほ ど変 化な く継続し てい る ものと思 われ る。 この よ うな営業 報告 書につ い て定 着し た 実 務が存 在す る とい う状況を 考え るとき, 果たし て 営業 報告書 の記 載 事 項 の法 定化 か必要で あ った か ど うかに つい て若 干の疑問 が残 る。 事実, さ きに も述べ た よ うに, 明 治32 年以 来商 法上 営業 報告書 の作成は 義務づけ ら れ てい る ものであ るとい うことを 理 由に, 営業 報告書 の記載 事項に つい て,「 商法 等 の一 部を 改正す る法律 案要 綱」 に おい ては 原則的 な規定を 設け る こと すら 認めら れな かった, とす るなら ばなお のこ と, この期に 及 んで記載 事項を 敢え て法定 化せ ず,一 般 の慣 行に 委ね る とい う方 策を とるとい うこ とも可 能 で なかった の か,いや むし ろ 現実 的な 方策 でな かった のかと思 われ る。 た とえ ば, 現 行商 法第32粂2 項には 「商業 帳簿 ノ作成 二関 スル規 定 ノ解釈 二付テ ハ公正 ナル 会計 匿行ヲ= 斟酌 スベシ」 と規定 され てお り, 上に 述べた よ うな方 策を 採 り うる可能性 も あ りうる。 ただ, この場 合, 営業 報告 書を 商業 帳 簿と み なし うるか ど うか と い う点, お よび 一般 の会計実務を公 正 な る会 計 贋行と いい うるか とい う点 に つ いて問 題 があ る。 し かし ながら, 解 釈の可能性 とい う点 におい てそ の よう
に 考えら れる のであ る。 思 うに, 今 次 の商 法改正 は, 財 務公 開制 度を充 実, 強 化す る ことに よって。 株式 会社 の自主的 監視機 能を 高め, もって その 運営 の一 層り 適正 化を 図 るこ とを 目的 とし た ものであ る とす るなら ば, この よ うな 目的を よりよ く達す る ために は, 営業 報告書 の記載 事項 の法定 化は 不可 欠なこ ととい え るのであろ う。 なぜならば ,今 次 の改 正に おい ては, こ の 目的 との 関連に おい て, 株式 会社 の株主 に対 す る直 接 の開示を 大 幅に 拡充 するこ とを 重要な 一つ の柱 とす る17)ものであ り, 昭和49 年 の商 法改 正以 来, 株主 への直 接 開示 書類 となった 営業 報告書 の記載 事項 の法定 化は 是非 と も達 成さ れねば なら ない ものであ る とい え るのであ る。ノし か も, 法の 技術的 な側 面 から 考え れば 今回 の商法改正 に おい ては条文 の上で 営業 報 告書 に関 す る規定 が充 実強 化さ れてお り, これ との 関連におい て, 営業 報告 書の 記載 事項 の法定 化は不 可避 な ものとな って い った のであろ う。 た とえ ば, 商 法第281 条 ノ3, 第2 項, 第6 号は 「営業 報告書 ノ内容 が真実 ナル ヤ否 ヤ」 とい う規定 から 「営業 報告書 が法令 及定款 二従 ヒ会社 ノ状 況 ヲ正 シ ク示 シ タル モ ノナル ヤ否 ヤ」 と改めら れてい る。 ま た, 第281条 ノ3, 第2 項, 第9 号に は 監査報 告書には 営業 報 告書と附 属明 細 書の記載 が合致し ない ときは そ の旨を 記 載し なけ れば なら ない とい う規定 が新 設され てい る。 また,「株式 会社 の監 査に関 す る商 法 の特 例に 関す る法 律」 第2 条 に おい て も, 監査 役お よび 会計監 査人は 営業 報告 書の会 計に 関す る部 分につ い て 監査をし なけ れ ば なら ない 旨を 定 め, 営業 報告書には 会 計事 項 も記載さ れる ことを 示 唆し てい る。 以上 の よ うに, 今回 の商 法改 正 の基 本理念 から す れば, 営業 報告 書の記 載 事項 の法定 化は 必然的 な 帰結であ った とい え るであろ う。 た だ, 問題 は, 記 載事 項の内容 であ る。 財 務公 開制 度は 適切 な情 報提供を 行 な うご とを 基 本的 な哲学 とす るも のであ るから , 何 で も無条 件に 開示 すべ き 性質 のもの では な い。 営業 報 告書におい て開示 され るべ き 事項は, 営業 報告 書が 商法に おけ る 財務公 開制 度を 担当す る 計算 書類等 の 体系 の中で 担当す べ き役 割に よっ て決 定さ れるべき 筋の ものであ るよ 営業 報 告書を こ の財務公 開制度 の充実, 強 化 の一環 とし て考え るなら ば, との役 割 分担につい て の論 理的 な認 識 が不可欠 し であ る。 この よ うな認 識に も とづ い て営業 報 告書 の記載 事項が 決定 された か ど うかにつ い ては疑問 なし とし ない のであ る。 犬
営業報告書に関する若干の考察47 [ Ⅳ] 営 業 報 告 書 に 対 す る 役 割 期 待 営業 報 告 書 の 記 載 事 項 の 法 定 化 が 成 就 さ れ る こ と に よ り, こ れ で 営 業 報 告 書 に 係 る 問 題 が 全 て 解 決し た と 思 慮 す る の は 早 計 に 過 ぎ よ う。 営業 報 告 書 の 記 載 事 項 の 法 定 化 に か く も 永 き 歳 月 が 費 さ れ た のは , 前 節 で も 明ら か にし た よ うに , 営 業 報 告 書 作 成 の 実 務 が 明 治 の 商 法 制 定 時 に 既 に 定 着し て い た とい う現 実 的 な 状 況 も大 き く影 響 し てい た と 考 え ら れ る。 立 法当 事 者は こ の よ うな実 務 慣 行 の存 す る こ とに よ り, 制 定 し た 法 規 定 の不 備に 対 す る批 判 を 回 避し え た た め に , 法 定 化 に 対 す る 積 極的 な 取 り 組 みを 忘 れ てし ま った の で は な い か と 推 察 さ れ る の で あ る 。 そし て, そ のこ と の ゆえ に, 今 日 まで 営 業 報 告 書 の 概 念 な いし は 役 割 分 担 に 対 す る 根 源 的 な 考 察 が 何 ら な さ れ ない ま ま に 放 置 さ れ て き た の で は な い か と 思 惟 さ れ る の で あ る。 営業 報 告 書 の 記 載 内 容は , 商 法に お け る 計 算 書 類 体 系 の中 に おけ る営 業 報 告 書 の 位 置 づ け が な さ れ る ご とに よ り 自 動 的 に 決 定 さ れ るは ず の も の であ る。 つ まり, 営業 報 告 書 の 役 割 分 担 が 明 確 に さ れ る こ とに よ っ て , そ れ に よ っ て 開示 さ れ る べ き 情 報 の 内 容 が 規 定 さ れ る こ とに な る の で あ る 。 こ の よ うな点 で, 営業 報 告 書 の概 念 とそ の 任 務 を 明 確 に す る こ と が , 営 業 報 告 書 に よる 財 務 公 開 制 度 を よ り充 実, 強 化 す る こ と に よ っ て 不 可 欠 の 事 項 で あ る とい え る で あろ う。 た とえ ば , 武 田 教 授は ,「我 が 国営 業 報 告 書 へ の 中 間 的 提 言」 と し て, 業 務 報 告 書 に 記 載 す べ き 事 項 は 本 来 次 の三 つ の 面 か ら 検 討 さ れ な け れ ば なら な い と さ れ てい る18)。 「(1) 情 報 開 示 の メ デ ィ ア とし て 業 務 報 告 書*に ど の よ うな 位 置 づ け を 与 え る べ き か (作成課題)(2) 特 定 の 計 算 目 的 を 充 足 す るた め に は , ど の 程 度 の内 容を 必 要 最 小 限 度 の 事 項 とし て, 画 定 す べ き で あ る か ( 情報 の範 囲) (3) 開 示 さ れ た 情 報 が 利 害 関 係 者 に ど の 程 度 理 解 さ れ る も の と期 待 さ れ る か ( 情報 の理解可能性)」 * 上記引用文中「業 務報告書」 となってい るのは ,武田教 授の論文執筆が昭和55 年8 月であ り, 昭和54 年12 月に公表された「株式会社の計 算・公開に。関する改正 試案」にある業 務報 告書とい う用語に対応するためである。 営業 報 告 書 に よ る 効 率 的 な 情 報 機 能 を 期 待 す る な ら ば , こ れ ら の 基 礎的 か つ 前 提 的 な 諸 問 題 と, こ れ に 加 うるに 商 法 の 財 務 公 開制 度 の基 本 理 念 と の 複
合的 な 観点 から 営業 報告 書 のあ りよ うを 演棒的に 考察す ることは 不 可欠であ ろ う。し かし , 本 稿では, 以 下に 述べ るとお り, 現行 の商 法規定 等を ふ まえ て, 帰 納的 に営 業 報告書 の存在意義 お よびそ れとの 関連におい て記 載内容を 検討し てみるこ とにす る。(1) 営業 報告書 の概 念 さ きに も述べ た, 営業 報告書 がい かな るものかについ て, 商 法 上明文 規定 は ない。 そこ で二, 三 の文 献に よっ て営業 報告書 の概 念を 探 って み ることに し よう。 た とえ ば, 昭 和35 年6 月に 企業 会計審議中 間報 告 とし て 公表 された 「企業 会 計原則 と関 係諸法 令 との調 整に 関す る連 続意見 書」 におい ては, そ の「 第一 財務諸 表 の体系」 に おい て,「営業報 告書は, 一 般に 営業 の経過 お よび 会社 の状況 につ いて の文書に よる報 告であ ると解 釈され てい る」 とされ てい る。 また 服部 教 授は,「企業 の一 定営業 年度 の営業 の概況 を 記載し た文 書を 営業 報告 書 とい う。 これは数 字を もってでは な く, 通常 の文 書に よって 営業 の状況を説 明し てい る点に 特色 があ る。 他 の計算書 類に おい て数 字で も って示 されてい るところを 説明 または 解説す るほ か, 他の計 算書類 に おい て 示さ れ てい ない 事項 また は数 字を も って表示 されえ ない 事項に つい て も説 明 を 与え るものであ る19)」 とさ れてい る。 また, 武田 教授に よれ ば 「営業 報告 書は, ①貸借対 照表, ②損益 計 算書, ③注記, ④附 属 明細書 の書類 で 蔽 うこ とので きない 情 報す なわ ち取 引 の背 後にあ る重要な 事実 関係や 企業 の状況を 明ら かに するた め の事実 関 係の説 明・ 報告文 書 とし て位 置づけ ら れ る ものと 解 す る20)」 とさ れ てい る。 これら の定義 から, 一 般的に,「 営業 報告 書は, 会社 の営業 の概況に つい て の文 書に よる報告書 であ る」 と概 念す るこ とがで きるであ ろ う。 そし て, 上に 述べ たい くつ か の説 明から, 同 時に 基本的 な記 載事 項と計算書 類 体系 の中 での 位置づけ も明ら かに され るこ とに な るが, こ れについ ては後 に 言及す るこ とに す る。 上に 述べた定 義は 以下 の ような商 法の規 定 もし くは新 商法 計 算書類 規則に おけ る営業 報告 書に 関す る規定を 対 応させ るこ とに より, よ り明確 とさ れ る であ ろ う。 商 法第281条 ノ3 「監査 役ハ前条 第一 項 ノ書類 ヲ受 領シ クル日 ヨリ四 週間 内 二監査 報告書 ヲ取 締 役 二提 出スル コト ヲ要 ス
営業報告書に関する若干の考察49 ② 前項 ノ監査報告 書 ニハ左 ノ事項 ヲ記載 スル コ ト ヲ要 ス 六 営業 報告書 が法 令及定 款 二従ヒ 会社 ノ状況 ヲ正 シ ク示 シ タルモ ノナ ル ヤ否ヤ」 新 商法 計算書類 規則第2 条2 項 「営業 報 告書は, 会 社 の状 況を 正 確に 判断 す るこ とが で きる よ う朋 瞭に 記載 し なけ ればなら ない 。」 新商 法計算書 類 規m 第45 条 「営業 報告書には, 次 の事項 そ の他会 社 の状況 に関 す る重 要な 事項を記載し な け れば ならない 。」 すな わち, 商 法に おい ては, 営業 報告 書は 会 社の状 況を 適切に 伝達す るた ・め の報告 書 とし て基本的 には 認識 され てい る のであ る。(2 ) 営 業報 告書 の計 算書類 体系に おけ る位置 づけ 営業 報 告書 の定 義に も とづ きそ れ が記載す べ き項 目 は基 本的には上 述し た 通 りであ る。 そ れら項 目 の具 体的 内容 は, 営業 報告 書 の計 算書類 体系に おけ る位 置 づけ , すなわ ち, その役 割分 担 との関 係に おい て定 めら れる も=の とな る。 営業 報告 書 の計算書類 体系で の位置づけ を 考え るにあ た って, 商法の基 本 理念 ないし は 目的 と の関 係におい てこ れを 考え るこ とも可能 であ る21)。し かし ながら, 本稿 では, そ の位 置づけ を, 商 法お よび 新商法 規則に 指示され てい る営業 報告 書に関す る規定 等に もとづ き, 帰納的 に類 推し てみるこ とに す る。 先ず,営業報 告書 と財務諸 表 の関 係に つい て 考え てみ よ う。商法第281 条に お い て, 営業 報告書は, 商法上, 貸 借対 照表, 損 益計 算 書 とい った財 務諸表 と並 列的に計 算書類 とし て位置づけ られ てい る。し かし ながら, 営業 報告書 は , 現行 の企業 会計を 支える技 術的 な メ カニ ズ ムとし て の複式簿記 機構 のア ウトプ ットとし て作 成さ れる ものでは な く, 会 計上 の 財 務諸表 とはい え ない 。 財務諸 表 とは, 取引→仕 訳帳 →総 勘定元 帳 →試 算表 とい った 企業 活動につい て の複式簿 記に よる情 報処理 プl==1セ スを 経 て作 成さ れ るものであ る。 さ きに も引用し た 「企業 会計 と関係 諸法令に 関す る連 続 意見 書」 に おい て も「営業 報 告書は 必ずし も会計 帳簿に 基づい て作成 さ れ る報告 書 ではない ので」 とさ れ, 財務諸 表 体系に 含 め るべ きで ない こ とを 示 唆し て い る。 他面に おい て, 先に。述べた 概念 から 明ら かな ように , 営業 報告 書は 企業 の営業活 動に つい て
の状況を 包括的, 据 羅的に 報 告す るも のであ る。 これら の事柄 お よび新商法 計 算書類 規則 の第2 条 お よび 第45 条の 規定等を 考え併 せ る とお のず と営業 報 告 書 の役 割分 担が 明ら かと なる。 すな わち, 営業 報告 書は, 企業 の営業 活動 に 関す る情報 であ って, 貸借対 照表 お よび損益 計算書 のい ず れに も記 載され ない が, こ れら の背 後にあ る事実 関係を 補足的に 説明す る とと もに, 会社の 状況を 的 確に 判 断せし め るた め の重要な 事項を記 載す る報 告 書であ るといえ る。 この よ うな点で は, 営業 報告 書を ( 独立し た総合的 会社 情報 の集成 とし て 特徴づけ るこ とが でき る22)」 と みなす ことは 妥当 であ る といえ よ う。 こ の場 合問 題 とな るこ とは, 営業 報 告書 と附属 明細書 と の関 連であろ う。 附 属 明細書に 関し ては新 商 法計 算書類 規則第46 条にお い て,「附 属 明細書に は, こ の規則 で定 め るも ののほ か, 貸 借対照表, 損益 計 算 書及 び営業 報告書 を 補足す る重 要な 事項を 記載し なけ れば なら ない」( 傍点筆者) と規定 する と ともに,具 体的 な記 載事 項を 定め てい る。 こ のこと から いえ るこ とは,(イ)営 業 報告書 と附属 明 細書は そ の役 割分担に おい て異な るも のであ ること, ㈲附 属 明細書には 営業報 告書を 補足 す る事項 も記載さ れ るも のであ るこ と, を物 語 ってい る。し かし ながら, 他面に おい て, 両 者は 貸借 対 照表 や損益 計 算書 とい った財 務諸 表を 補足 す る役割を 有す るとい う点 では 共 通性を 有し てい る。 両 者の相違ぱ, 法的に み るなら ば, 営業 報告書は 定時株 主 総会 の 招集通知に 添 付さ れて 株主に 直接 送 付され る直接 開示 書類であ るの に対し て, 附 属 明細 書は 会社の本 支 店に据 置 かれ, 株主 お よび 会社債権 者の 閲覧に 供 され る間接 開示 書類 であ る とい う点 であ る。 こ のこ とは, 営業 報告 書に は比 較的 重要な 情 報 が開示 さ れ, 附属 明細 書に は 細 目的な情 報が開示 さ れ るこ とを 期待 する・ 利 益金処 分案 営 業報告書ll L 一一一一一一一 一 直 接1 ふ 示 図1 営業報告書と他の計算書類との関係 附 属 明 細 書 111111 t 間接 開示
営業報告書に関する若干の考察51 も ので あ り,し た がっ て, 両 者の差 異は 質的 な もの とい うより量的な 程度問 題 であ るとされ てい る2≒ こ れを 経済的 な側面 から み れば, 開示 に おけ るコ ス ト・ペ ネフ ィットの関係 とし て どらえ ること もでき る であろ う2≒ 以上 の検討 から, 営業 報告書 の計 算書 類体系 に おけ る 位置 づけは 図1 のよ うに示す こ とができ るであろ う。 犬 ノ(3) 営業 報告 書 の記載 事項 とそ の範 囲 十 営業 報告 書を 「総合的会 社情 報 の集成」 とし て 特徴づけ るならば, そ こに は ,会 計的事項 お よび非会 計的 事項, 計 数的 情報 と非計 数 的情報 のい ず れも が 包含されて 記載 され るこ とに な る。 以下, これら 事項 と営業 報告書 との関 係につ い て考察し てみ よ う。 | ヶ 会計事項 と非 会 計事項に 関し てい えば, 問 題 どな るのは, 何を もっ て両者 の 境界 線とす るかとい うこ とであ ろ う。 会 計事項 のほ とん どは 財務 諸表に集 約 され るこ とに なる が, そ れ以 外 の会計 事項 と非会 計事 項 との関係が と くに 問 題となろ う。 と くに,「株式 会社 の監査 等に 関す る商 法 の特例に 関 す る 法 律」におい ては, 貸 借対 照表 や損 益 計算書 とい った 財 務 諸表 の作成を 前提 と し た上で, そ の第2 条に おい て, 営業 報告 書 と附 属 明細 書上 の会計に 関す る 部分に 限 って監査 役お よび会 計監 査人 の監 査を 受け ねば なら)ないiとし てい る。 こ のこ とから 類推 すれば, 財務 諸表 に集 約さ れた事 項以 外に 会計事 項 が存在 す るこ とが 明ら かとなる。 営業 報告 書の記 載 事項 との関 連 でのみいえ ば,さ きに 亀述べた よ:うに, そこに は, 会 社の状 況を 的確に 判 断せし める ほ どに重 要 な事項 が記載 され れば足 り るのであ るから , こ の条 件 を満た す事項 であ る な らば, 当然記 載範 囲に含 まれ る ものであ り, どれ が会 計事項 であ り, どれ が 非会計 事項 であ るかの区分 はそ れほ ど重 要な 意味を 亀だない。し かし , 監 査 との関連に おい て考え るなら ば, 会 計事項 は 監査役 お よび 会計監 査人 の監 査 対象 との関 連に おい て極め て重 要な 事項 とな り, 会 計 事項 と非会 計事項 の 区 分は絶 対に 明 確に され ねば なら ない。 こ の点 につ い て は次節 で改め て検討 す るこ とに す る6 計数情 報と非 計数 情報 の区 分 も営業 報 告書 の記載 事項 との関 連に おい ては そ れほ ど大 きな 意味を有 さない 。寸ト数 情報 であろ うと非 計数 情報 であろ うと, 企業 の状況につ い て の重 要な事 項 であ るな らば, 必 ず営 業 報告書に 記載 され ねばなら ない から であ る。 ただし , 非 計数 情報 の うち, 新商 法計 算書類 規則
伽 知 扉 耀 佃 轍1 回 斑 庇 Biia >aT * ︶isGgma 庸 粧 翁 。石 印49 心 匈 尨 暇 暇 刈 ミ 収 。石I り い斑 坦 心 肺 緬 飴一 菜Q 貼 諮 扁 罷 泥 認e 貧 俳 扁 旨e 抑 筆 弓 犀 陛b べ4 細 班 聯 報 翁 (M 回 ム 憾 価 ね 泰 楸 ㈲ 皆 畷 芯Q 徊 沿 ぬ 愈 祗 友 蕪 準 彩 説 布 ・-一 一一 一TT 抑 糾 な 卵 綴 似 臨 芯 駒 組 憾 婚 ≒ 部 珀 ね 蕪
営業報告書に関する若干の考察53 第3 条第1 項に 規定 す る資産 の評価方 法, 固定 資産 の減 価 償却 の方法,重 要 な引当金 の 計上方 法そ の他 の重 要な 会計方 針そ の他保証 債務, 手形 遡求義務 等は財務 諸表に 注 記さ れ るこ とにな り, これら事項 は 営業 報 告書 の記載事項 の範囲から 除外 さ れるこ とに な る。 以上 の検 討の 結果を 総合 すれば, 営業 報告書 の記載 事 項 の範 囲は 図2 め よ うに要 約し て示す こ とがで き るであ ろ う。し かし なが ら, この 図は あ くまで も観念的 な区 分を示し た ものであ り, 新 商法計 算書類 規 則に 規定 され てい る 事項が全て この 図上 のい ず れか の象限上に 明確に 区分 され 七位 置づけら れる とは考えら れない 。 た とえ ば,('イ)主 要な事業 内容, 営業 所 及 び工場, 従業員 の状況, そ の他会 社 の現状,(ロ)あ るい は会 社が対処 すべ き課題 ,h) そ の営業 年度 の取 締役 及び 監 査役の氏名, 会社におけ る地 位及 び担 当又 は主 な職業 等 の事項は非 会 計事項 ・非 計数 情報 とし て 位置づけ るこ とが でき るが,(■イ)過去3 年間以 上 の営業成 績及び財 産 の状況 並 びに こ れにつ い て の説 明, ロ資金調 達 の状況 及び 設備投 資 の状況, ㈲そ の営業 年度に おけ る営業 の経過 及び成果 等は2 以 上 の象限に また が り うる事項であ る。 企業0 経 営 活動は 様 々な要素 の有機的 関連性 の も とに おい てなされ るものであ り, そ れ ゆえ , 企業 の営業 に関す る情報 も相互 に 複雑に 錯綜し うるもの とな る。 営 業 報告 書を 「独立し た総合的 会社 情報 の集成」 とし て特 質づけ るならば, この よ うな状 況は 必然 的なも のといい うるであろ う。 問題は, 営業 報告 書 の記載 事項を これら のい ず れか の区 分にい かに 適切に 帰属せし め るか とい うことでは な く, この記載範 囲0 中 にい かにし て「株式 会社の 自主 的監 視機 能 の強化」 を 適切に達 成せし め う るため の情 報を 効率的 に記載 せし め るかであ ろ う。 このこ とこそ が営業 報告 書 に対 す る最大 の役割 期待な のではな かろ うか25)。 〔V 〕 営業報告書に関する問題点 営業報告書に関す る問題点とし て, もっとも基本的な事項は,それに対す る役割期待が現状において商法上必ずし も明確にされていないとい う点であ ろう。し かし ながら, この点は営業報告書の「あるべ き論」 との関連におい て考察されるべきものとし て,本稿では言及しない。 本節においては,営業 報告書に関する現行法上の規定において, もっとも問題 となる営業報告書上
の会 計に 関す る部 分につい て若干 の考察をし てみ ることに す る。 営業 報告書 の記載 事項 が法定化 され た ことに より, 形 式 的にぱ一 応 営業 報 告書に 関す る法律 上の整 備は完了し た ものといえ る。し かし ながら, 他面に おい て, 現 行法上 の営業 報告 書に 関す る規 定 が全て満足 のゆ くもの であ り, 問 題点 が存し ない か とい うと, 必ずし も疑問 なし とはし ない のであ る。 これ ら 諸問 題を 脈絡な く断片 的に 列記す れば, た とえば, 以 下 の ような点 が指摘 で きる。 イ, 営業 報告書を 事実 報告文 書 とし て 位置づけ, これ には 判断を 要す る事 項 が含 まれない と考え, そ れ ゆえ に これを 定時 株主 総会 で の承認 の対象 とし ない こ とは 果し て 妥当 であ るか。=. 営業 報告書 の記 載事項を 法務省 令に よ り規定し た ことは果し て 妥当 で あ るか26)。 ハ。 法 務省令 で定め た営業 報 告書 の記載 事項は 果し て 適切 でかつ 十 分なも のであ る か。 た とえ ば, 会社 が対 処すべ き課 題 とい った事項 の記 載は 妥 当 か。 ニ,営業 報 告書に記 載され る 事項 の うち, 会 計に 関す る部 分は 監査 特例法 との関連に おい て, 監査 役お よび 会 計監査人 の監査 の対 象とな るが, 会 計に 関す る部 分は 果し て 明確な ものとし て識別し うるかど うか。 これら問 題点 の うち, ニ。 の問 題点 に 焦点を 当 てて本 節 では考察を するこ とにす る。 前節で も述べ た よ うに, 営業 報告 書には 会 計事項, 非 会 計事項 のい ずれ も が記載 され るこ とに な る。 営業 報告 書に よる情報提 供機 能 の観点 からすれば, 両者 の区 別は さし て問題 とはな らない 。し かし, 監査特 例法第2 条に おい て は, 大 会社 の場 合, 営業 報告 書 と附 属 明細書記 載 事項 の うち, 会計に 関す る 部分が 監査役 お よび 会 計監査人 の 監査 対象 とな る旨お よび これについ て の監 査 報告 書を 作成 す る旨 が規定 され てお り(監査特例法第2 条および第13条第2 項), 会計に 関す る部 分の識別は 監 査の観 点 から 極め て重要 な問 題 とな る。 し かし , 監査特 例法におい ては, こ の ように 会 計に関 す る部 分の監査を 要 請す るも のの, 会 計に 関す る 部分につ い て の規定 は商法 , 監査 特例法 さらに は 新商 法 計算書類 規則 のい ず こに も見 当ら ない。 さ きに も述べた よ うに 企業 会 計審議 会の 「『法務 省令制定に 関す る問題点 』 に対 す る意見 書」 に おいて
営業報告書に関する若干の考察55 は 会計 監 査 人 が 営業 報 告 書 記 載 事 項 乃 適 法 性 を 監 査 に よ っ て 十 分 担 保し うる た めに は 会 計 に 関 す る 事項 を で き る か ぎ り 明示 す る こlとを 強 く要 望 し た に も か かわ ら ず , 新 商 法 計 算 書 類 規 則 に お い て は 最 終 的 に は こ の 要 望 は 反 映 さ れ な か った の は 周 知 の通 りで あ る。 こ の会 計 に 関 す る部 分に つ い て , 日本 公 認 会 計 士 協 会 の 監 査 第 一 委 員 会 は 昭 和57 年9 月に 「監 査 第 一 委 員 会 報 告 第40 号 商 法 監 査 に 係 る 監 査 上 の取 扱 い 」を 公 表 し 以 下 の よ うに 述 べ て い る。 以 下 , こ れ を 手 が か り とし て 会 計 に 関 す る部 分 に つ い て の 検 討 をし て み よ う。 「営業 報 告 書 の 記 載 事項 の うち 会 計 に 関 す る 部 分 と は , 会 計 監 査 の 実 施 過 程 に おい て 検 証し 得 る会 計 帳 簿 の 記 録 に 基 づ く 金 額 や そ の 他 の 記 載 部 分 に 限 定 さ れ る と解 釈 す る27)。」 また , 営 業 報 告 書 の 監 査 に つ い て は 以 下 の よ うに 述 べ て い る ○ 「会計 監 査 人 に よ る 営業 報 告 書 の 監 査 は , 監 査 基 準 に 準 拠し て 実 施 さ れ る 会 計 監査 の 領 域 内に と ど ま るべ き であ る。 し た が っ て , 会 計 監 査 人 の 監 査対 象 と な る 営業 報 告 書 の 会 計 に 関 す る 部 分 の 解 釈 や 会 計 監 査 人 の営 業 報 告 書に 関 す る監 査 意 見 の 記 載 方 法 も, 会 計 監 査 とし て 実 施 可 能 な 範 囲 に おい て 考え る も の とす る 。」 これ ら 文 言 か ら 判 断 す れ ば , 会 計 に 関 す る部 分 は 。( イ) 会 計 帳 簿 の 記 録 に 基 づ く金 額 で あ り。H 会 計 監 査 の 実 施可 能 な 範 囲 で あ る とい う こ と が で き る。 こ の 場 合 , 会 計 帳 簿 の 範 囲 を ど の よ うに 考 え る か が 問 題 と な ろ う。 通 常, 会 計帳 簿 とし て は , 複式 簿 記 の メ カ ニ ズ ム と の 関 連に お い て, 仕 訳 帳 , 総 勘 定 元 帳, 補 助 記 入 帳 や 補 助 元 帳 等 を 総 称 す る 補 助 簿, あ るい は こ れ ら 各 種 帳 簿 の代 替 的 役 割 を 果 た す 伝 票 , た とえ ば 入 出 金 伝 票 や 振 替 伝 票 等 が 考 え ら れ て い る・。 し かし な が ら , 商 法 と の関 連 で み る な ら ば , 武 田 教 授 の 指 摘 さ れ る よ うに , 法 的 に は 会 計帳 簿 は 商 法 第32 条 に おい て 規 定 す る 以 下 の よ うな もの でなげ れば な ら な い と 考 え ら れ る28)。 ・I。:I 「(イ) 営 業 上 の 財 産 お よび そ の 価 額 卜) 取 引 そ の 他営 業 上 の財 産 に 影 響 を 及 ぼ す べ き 事 象 を 整 然 か つ 明瞭 に 記 載 す る も の」