Title
Serum level of soluble tumor necrosis factor receptor 2 is
associated with the outcome of patients with diffuse large B-cell
lymphoma treated with the R-CHOP regimen( 内容と審査の要
旨(Summary) )
Author(s)
中村, 信彦
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第943号
Issue Date
2014-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/49076
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 中 村 信 彦(愛知県) 博 士(医学) 甲第 943 号 平成 26 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
Serum level of soluble tumor necrosis factor receptor 2 is associated with the outcome of patients with diffuse large B-cell lymphoma treated with the R-CHOP regimen
(主査)教授 吉 田 和 弘
(副査)教授 岩 間 亨 教授 小 澤 修
論 文 内 容 の 要 旨
びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)は非ホジキンリン パ腫の中で最も多い病型であるが,多様性の高い集団であることから臨床病態や予後は様々である。
一方,適切な治療法の選択には,予後因子によって症例を層別化することが重要である。Rituximab 登場以前は,International Prognostic Index(IPI)が最も標準的な予後因子と考えられてきたが, R-CHOP(rituximab,cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,prednisolone)療法が標準治 療となってからは Revised-IPI(R-IPI)など新たな予後因子が報告されている。これまでに我々は, 血清の可溶性腫瘍壊死因子受容体 2(soluble tumor necrosis factor receptor 2:sTNFR2)濃度 が,CHOP 療法を受けた非ホジキンリンパ腫患者の独立した予後因子となることを報告してきた。今 回我々は,血清 sTNFR2 濃度が R-CHOP 療法を施行した DLBCL の予後因子となり得るかどうか評価し た。 【対象と方法】 2002 年 12 月から 2008 年 6 月まで当院および関連施設に入院し,文書にて研究への参加同意の得 られた無治療 DLBCL 患者 154 例を対象とした。初期治療は全例 R-CHOP 療法を施行し,bulky 病変を 有する症例に対しては化学療法後に 30〜40 Gy の放射線療法を追加した。再発例に対しては Rituximab 併用 P-IMVP-16/CBDCA(methylprednisolone,ifosfamide,methotrexate,etoposide, carboplatin)療法を施行した。初期治療開始前に採血した血清を用いて,ELISA 法にて sTNFR2 を 測定し,各種臨床パラメ ーターとの関連ならび に Overall survival (OS),Progression free survival (PFS)との関連性を解析した。治療効果判定は Cheson の基準に従い,各種パラメーター間 の血清 sTNFR2 濃度の比較には Mann–Whitney U 検定を,OS,PFS における生存期間比較は, Kaplan-Meier 曲線を用いて Log Rank 検定および多変量解析を行った。
【結果】
治療前血清 sTNFR2 濃度の中央値は 13.72 ng/mL(2.66-112.5 ng/mL)で,IPI,R-IPI のリスク群 ごとに比較すると,いずれも予後不良群で有意に sTNFR2 が高値を示した(P<0.0001)。また DLBCL の subtype である GCB(germinal center B cell)type と non-GCB type を比較すると,予後不良と される non-GCB type で有意に sTNFR2 が高値を示した(P=0.0058)。ROC 解析を用いて sTNFR2 の cut off 値を 20 ng/mL に設定して解析したところ,完全寛解(complete response:CR)率は sTNFR2 低
値群が 88%,高値群が 49%で,高値群で有意に低下した(P<0.0001)。5 年生存率は sTNFR2 低値群が 83%,高値群が 29%で,高値群で有意に低下した(P=0.0008)。また 5 年無増悪生存率は sTNFR2 低値 群で 76%,高値群が 27%で,高値群で有意に低下した(P<0.0001)。単変量解析の結果,sTNFR2 高値, 年齢 61 歳以上,Performance Status 2 以上,LDH 上昇,節外病変 2 個以上,non-CR,IPI,R-IPI 予 後不良群が OS および PFS の予後不良因子として抽出され,多変量解析の結果,sTNFR2 高値および non-CR が OS および PFS の独立した予後不良因子として抽出された。R-IPI と sTNFR2 を組み合わせ て解析を行ったところ,Poor 群であったとしても sTNFR2 が低値であれば Good 群と同程度の治療成 績が得られ,Good 群であったとしても sTNFR2 が高値であれば,5 年生存率が 20%まで低下した。 【考察】
近年多くの研究者が DLBCL の予後因子として CA125,DNA microarrays assay,nm23-H1 protein などを報告している。我々も同様に可溶性 Fas,可溶性 Interleukin-2 受容体等の予後因子として の有用性を報告してきた。しかしこれらの報告はいずれも Rituximab の臨床導入前に検討された予 後因子であり,現在の DLBCL の予後を正確に反映しているとは言い難い。今回我々は R-CHOP 療法を 施行した DLBCL 症例において血清 sTNFR2 高値症例が予後不良であることを示した。腫瘍壊死因子 受容体(tumor necrosis factor receptor:TNFR)には TNFR1 と TNFR2 の 2 種類が存在するが,TNFR1 は全身の多くの組織に恒常的に発現しているのに対して,TNFR2 は何らかの刺激を介して免疫系の 細胞に発現する誘導型の受容体である。従って血清 sTNFR2 濃度は,DLBCL に対する免疫反応と相関 していると考えられる。Rituximab の導入により明らかに治療成績は改善したが,依然として難治 症例は存在する。血清 sTNFR2 を予後因子として用いることにより, 予後不良群を抽出することが可 能であり,予後不良群に対しては 初回治療に自己末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を施行 する等,適切な治療法選択のための患者層別化が可能となる。 【結論】 血清 sTNFR2 濃度は DLBCL 症例における有意な予後因子であり,適切な治療法選択のための 患者層別化に有用である可能性が示された。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者 中村信彦 はリツキシマブ治療を受けた DLBCL 患者 154 名の予後解析を行い,血清 sTNFR2濃度と完全寛解到達とが独立した有意の因子であることを証明した。さらに改訂 IPI の poor リスクかつ sTNFR2 20ng/ml 以上の患者はリツキシマブを用いても治療予後が極めて不良であること を見出した。これらの知見は DLBCL 患者に適切な治療選択を行う上で血清 sTNFR2 濃度が重要な指標 であることを示し,血液病態学,臨床腫瘍学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]
Nobuhiko Nakamura, Naoe Goto, Hisashi Tsurumi, Masao Takemura, Nobuhiro Kanemura, Senji Kasahara, Takeshi Hara, Ichiro Yasuda, Masahito Shimizu, Michio Sawada, Toshiki Yamada, Mitsuru Seishima, Tsuyoshi Takami, Hisataka Moriwaki :Serum level of soluble tumor necrosis factor receptor 2 is associated with the outcome of patients with diffuse large B-cell lymphoma treated with the R-CHOP regimen