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MIMO-OFDM固有ビーム空間分割多重方式におけるチャネル情報フィードバック量の削減手法

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(1)

MIMO-OFDM

固有ビーム空間分割多重方式における

チャネル情報フィードバック量の削減手法

大渡

裕介

a)

小川

恭孝

西村

寿彦

大鐘

武雄

Reduction of the Amount of CSI Feedback in MIMO-OFDM Eigenbeam-Space

Division Multiplexing Systems

Yusuke OHWATARI

†a)

, Yasutaka OGAWA

, Toshihiko NISHIMURA

,

and Takeo OHGANE

あらまし 送受信側に複数のアンテナを設置し,各送信アンテナごとに独立したOFDM 信号を送信する

MIMO-OFDM 空間分割多重では,マルチパス環境においても符号間干渉なしに伝送速度の向上が期待できる.

更に,送信側でチャネル情報(CSI) が既知の場合,MIMO チャネルにおける最大スループットを得る固有ビー

ム空間分割多重(E-SDM) 方式を用いることができる.しかしながら,OFDM では各サブキャリヤごとに CSI

をフィードバックする必要があり,通信容量を圧迫してしまう.本論文では,筆者らが以前より提案している時

間領域で最小二乗法を適用し,推定したCSI をフィードバックすることで情報量を削減でき,更に良好な特性が

得られることを示している.

キーワード MIMO システム,固有ビーム空間分割多重,OFDM,フィードバック情報量

1.

ま え が き

近 年 ,OFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式に関する研究が盛んに行われて おり[1], [2],無線LAN,地上波ディジタル放送等で利 用されるに至っている.一方,通信容量の増加を目指 して,送受信側に複数のアンテナを設置したMIMO (Multiple-Input Multiple-Output)空間分割多重通 信も注目を集めている[3]∼[5].更に,両者を組み合 わせたMIMO-OFDM空間分割多重通信システムは IEEE802.11nに採用されると考えられ,研究が進め られている[6]∼[9].このMIMO空間分割多重通信に おいて,送信側でチャネル情報(Channel State Infor-mation: CSI)が未知の場合は各送信アンテナから独立

したOFDM信号をそれぞれ等電力で送信する.しか

し,送信側でチャネル情報が得られる場合,固有ビー ム空間分割多重(Eigenbeam-Space Division

Multi-†北海道大学大学院情報科学研究科,札幌市

Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, Kita 14, Nishi 9, Kita-ku, Sapporo-shi, 060–0814 Japan

a) E-mail: [email protected]

plexing: E-SDM)方式を用いることができ,MIMO チャネルの最大スループットを得ることが可能とな る[10]∼[14].送受信において周波数帯が異なるFDD (Frequency Division Duplex)方式の場合には,送信 側でチャネル情報を得るために,それを受信側から フィードバックする必要がある.送受信の周波数帯 が同一のTDD (Time Division Duplex)方式の場合 も,送受信機の校正を不要とするためチャネル情報を フィードバックする方式が採用される可能性がある. しかしながら,OFDMでは各サブキャリヤごとにチャ ネル情報をフィードバックする場合には,その情報量 が膨大となり,通信容量を圧迫してしまう問題点があ る[15]∼[17].フィードバック量の削減のため,これ までにいくつかの研究がなされている.その一つは チャネルのベクトル量子化である.これは,チャネル の各要素を量子化した有限個のベクトルを送受信側 の双方に用意しておき,それらにラベルを付し,実際 のチャネルに最も近いベクトルのラベルのみをフィー ドバックするものである[18].事前に用意する量子化 されたベクトルが多いときには,最適なベクトル検 出の演算量が多くなり,特に多数のサブキャリヤから なるOFDMの場合は,計算負荷が大きくなる.別の

(2)

手法は,送信ビームを決定する送信行列(ウェート(注1) 行列)からなる有限集合(コードブック)を送受信側 の双方に用意し,チャネルに応じた,最適な送信行列 に付されたラベルをフィードバックするものである. この方式については多くの検討がなされているが,適 切なコードブックがチャネル行列(フェージング)の 分布に依存してしまう欠点がある[18].文献[19]は, 送受信アンテナ間の各チャネルの統計的性質が独立で 同一(i.i.d.)なレイリー分布に従うときのコードブッ クの検討を行ったものである.この手法も多数のサブ キャリヤからなるOFDMの場合には,最適な送信行 列の選択に要する演算量とフィードバック量の増加が 避けられない.そのため,いくつかのサブキャリヤの みについて,上記の操作を行い,残りのサブキャリヤ については補間を行うことが必要になる[16], [17].演 算量・フィードバック量と特性のトレードオフが問題 になると考えられる. 本論文では,時間領域のチャネル情報(インパルス 応答)を精度良く推定し,それをフィードバックする ことにより,サブキャリヤ数の増加によるフィードバッ ク量増大の問題を解決することを提案している.この 手法は,チャネルの統計的性質には全く依存せず,補 間の必要がない特長を有している.

2. MIMO-OFDM

固有ビーム空間分割

多重

図1にMIMO-OFDM固有ビーム空間分割多重シ ステムを示す.同図では,受信機でのチャネル推定を FFT後の周波数領域で行うときのことを示している. 3. 1で述べる周波数領域でのチャネル推定がこれに対 応する.一方,3. 2で説明する時間領域でのチャネル 推定の場合には,FFT前の信号が用いられる.送信 アンテナ数をL,受信アンテナ数をMとする.この とき,j番目のサブキャリヤにおけるM 次元受信信 図 1 MIMO-OFDM固有ビーム空間分割多重システム構成

Fig. 1 E-SDM in a MIMO-OFDM system.

号ベクトルrjは次式で表せる. rj=Ajxj+nj (1) ここで,Ajxjnjは,それぞれ,j番目のサブキャ リヤにおけるチャネル行列,送信信号ベクトル,熱雑 音ベクトルである.送信側でチャネル情報が既知であ るとき,固有ビームを使用することで送受信間のチャ ネル空間を直交化することができる.j番目のサブキャ リヤにおけるL次元非負値エルミート行列AHjAjの 固有値分解を次式により表現する. AH j Aj=UjΛjUHj (2) ただし, Uj= [e1,j e2,j · · · eP,j] (3) ここで,H はエルミート共役を表している.また, P (≤ min(L, M))Ajのランクを示しており,ΛjAHjAjのもつ正の固有値λp,j(p = 1, · · · , P )を対 角要素とするP次対角行列である.固有値λ1,jλP,j に対応する固有ベクトルe1,jeP,jを送信ウェートと して乗積することで,送受信間に直交したマルチビー ム空間を形成するE-SDM伝送が可能となる.以下に E-SDM伝送時における送信信号ベクトルと受信信号 ベクトルをそれぞれ示す. xj=Ujsj (4) rj=AjUjsj+nj (5) ただし,sjj番目のサブキャリヤにおける各固有 チャネルに伝送する信号を要素としたP 次元情報信 号ベクトルである.本論文では,各サブキャリヤ間に おける電力配分は行わずに等電力とし,各ストリーム に割り当てる変調方式及び送信電力配分は文献[10]に 従った. (注1):本論文では,「重み」を「ウェート」と呼ぶ.

(3)

3.

チャネル推定

本論文におけるシステムでは,まず送信側からチャ ネル推定用既知信号(サウンディングパケット)を送 信し,受信側でチャネル推定を行う.そして,得られ たチャネル情報を送信側へフィードバックし,それを 用いてデータフレームをE-SDM方式により伝送する. ここで,サウンディングパケットの送信からE-SDM 伝送まで伝搬環境の変化はないものと仮定し,ドップ ラー変動も無視できるとする.図2 に本論文で扱う サウンディングパケット構成を,図3にデータフレー ム構成を示す.これらは,各送信アンテナから送信さ れるIFFT後の時間領域信号であり,括弧内の数字は サンプルポイント数を表している.簡単化のために, 図2,図3にはタイミング検出やAGCの制御など に用いられるプリアンブルシンボルの記載は省略し ている.また,本論文ではタイミング検出,周波数オ フセット調整,AGCの制御は完全になされていると 仮定する.サウンディングパケットは送信アンテナ数 Lによって定まる直交したN 個のOFDMシンボル により構成される.例えば,L = 2のときはN = 2L = 3,4のときはN = 4となる.データフレーム は9OFDMシンボルにより構成されるものとした.ま た,サウンディングパケット,データフレームともに 各OFDMシンボルの先頭に16サンプルポイントの ガードインターバルを付加した.本論文では,サウン ディングパケット(図4にL = 4の例を示す)を用 いて,周波数領域及び時間領域でチャネル推定を行っ た.以下にこれらのチャネル推定法を述べる.なお, 本論文ではサブキャリヤ数や時間領域のサンプル数は 図 2 サウンディングパケット構成

Fig. 2 Sounding packet format.

図 3 データフレーム構成

Fig. 3 Data frame format.

IEEE802.11aなどの無線LANで用いられている数値 を参考にしているが,他のOFDM系にも適用可能で ある. 3. 1 周波数領域でのチャネル推定 サウンディングパケットにおいては送信アンテナご とにOFDMシンボルが直交していることを用いて FFT後の周波数領域でチャネル推定を行う.チャネル 行列Ajl番目の列要素からなるベクトル(周波数 領域のアレー応答ベクトル)を al,j= [a1,l,j a2,l,j · · · aM,l,j]T (6) と表す.ここでT は転置を表している.また,am,l,j は受信アンテナm,送信アンテナlj番目のサブキャ リヤにおける周波数領域でのチャネルを表す複素数で ある.なお,後述する時間領域でのチャネルを表す複 素数にはhを用いることとする.これを用いて,サウ ンディングパケットのi番目のOFDMシンボルにお ける受信信号ベクトルは次式で表せる. rj,i= L



l=1 al,jdl,j,i+nj,i (7) ただし,dl,j,il番目の送信アンテナから送信される j番目のサブキャリヤにおけるi番目のOFDMシン ボルのトレーニング信号を表す.l番目の送信アンテ ナについての推定した周波数領域アレー応答ベクトル ˆal,jは,トレーニング信号が直交した電力1の系列と しているので式(7)を用いて, ˆal,j= 1 N N



i=1 rj,idl,j,i = 1 N N



i=1



L



l=1 al,jdl,j,i+nj,i



dl,j,i 図 4 トレーニング系列 (L = N = 4)

(4)

=al,j+ 1 N N



i=1 nj,idl,j,i (8) と表せる.この推定を使用するサブキャリヤすべてで 行うことで,周波数領域チャネルを推定することがで きる. 3. 2 時間領域でのチャネル推定 本節では,サウンディングパケットにおいて最小二 乗法により送受信アンテナ間の時間領域のチャネルを 推定する方法[20], [21]を述べる.図2 より,サウン ディングパケットにおける1OFDMシンボルのサン プルポイント数を64としていて,その先頭に16サ ンプルポイントのガードインターバルを付加している ので,サウンディングパケット全体のサンプルポイン ト総数はサウンディングパケットの先頭のガードイン ターバルを除いて(80× N − 16)となる.m番目の 受信アンテナにおけるFFT処理前の先頭のガードイ ンターバルを除いたサウンディングパケットの信号か らなる(80× N − 16)次元の受信信号ベクトルをzm とすると, zm= [zm,1(16) zm,1(17) · · · zm,1(79) zm,2(0) zm,2(1) · · · zm,2(79) zm,N(0) zm,N(1) · · · zm,N(79)]T (9) と表せる.ここで,zm,i(t)m番目の受信アンテ ナ に お け る ,ガ ー ド イ ン タ ー バ ル を 含 め たi番 目 の トレ ーニ ン グシ ンボ ル の時 間信 号 を表 した も の で あ る .サ ウ ン ディン グ パ ケット に お け るl 番 目 の 送信 ア ンテ ナか ら 送ら れるIFFT後 の 時間 信 号 をcl(0) cl(1) · · · cl(80× N − 1)とする.l番目の 送信アンテナからの信号のk 番目のマルチパス波 (k = 0, 1, · · · , K)に対応する,サウンディングパケッ トの信号からなる(80× N − 16)次元のベクトルcl,k は次式で表される. cl,k= [cl(16− k) cl(17− k) · · · cl(16) cl(17) · · · cl(80× N − 1 − k)]T (10) ここで,k番目のマルチパス波はkサンプルポイント の遅延を有しているとする.また,16サンプルポイン トのガードインターバルを超えるマルチパス波はない ものとする.つまり,K = 15と仮定する.このとき zmzm= L



l=1 15



k=0 hm,l,kcl,k+nm (11) と表される.ここで,nmm番目の受信アンテナ に加わる熱雑音ベクトルである.また,hm,l,kl番 目の送信アンテナとm番目の受信アンテナ間のイン パルス応答のk番目のサンプル値であり,時間領域の チャネルを表している.これを用いると,二乗誤差に 基づいた評価関数Jmは次のように与えられる. Jm=







zm− L



l=1 K



k=0 hm,l,kcl,k







2 (12) ここで, · はベクトルのノルムを表している.この 評価関数Jmを最小にするチャネルの推定値hˆm,l,kを 求めることで,時間領域のチャネルを推定することが できる.これは,文献[20]に述べられている手法によ り,計算が可能である.

4. CSI

フィードバック手法

E-SDM伝送を行うためには,受信側で推定したチャ ネル情報を送信側にフィードバックする必要がある. 以下に本論文で考察する三つのフィードバック手法を 述べる.なお,手法1,2では前章の周波数領域での チャネル推定法を,手法3では時間領域でのチャネル 推定法を用いている.手法2,3は筆者らの知る限り, E-SDMのチャネル情報フィードバック量削減を目的 として考察されたことはない.しかし,後述する数値 例で明らかなように手法3が最も良好な特性を示す. そこで,手法3を本論文での提案方式と呼ぶことに する. 4. 1 手法1(周波数領域チャネルのフィードバック) 3. 1の手法を用いて推定された周波数領域のチャ ネルを使用するサブキャリヤ分だけそのままフィード バックする.このフィードバック手法では,(送信アン テナ数)×(受信アンテナ数)×(使用するサブキャリ ヤ)だけのCSIの量をフィードバックする必要がある ため,通信容量を圧迫してしまう.そのため,情報量 を削減する手法を次節以降に述べる. なお,周波数領域の全サブキャリヤのチャネルを フィードバックするのではなく,間引きを行った一部 のチャネルのみをフィードバックすることによってその 量を削減することが可能である.送信側では,補間に より全サブキャリヤのチャネルを近似することができ る.補間については様々な方法が考えられる[22], [23].

(5)

しかし,原理上,この方法は全サブキャリヤのチャネ ルをフィードバックする手法1の特性を超えることは できない.また,数値例で示すように後述する提案方 式が手法1よりも特性が良好であることから,一部の チャネルのみのフィードバック法については比較検討 を行わないことにする. 4. 2 手法2IFFT後の時間領域チャネルのフィー ドバック) 前節と同様,3. 1の手法を用いて推定を行う.この とき推定して得られた周波数領域のチャネルより,次 のような64要素のベクトルを作る. [ˆam,l,0aˆm,l,1 · · · ˆam,l,63] (13) このベクトルをIFFTによって変換した時間応答ベク トルは次のように表される.



˜ hm,l,0h˜m,l,1 · · · ˜hm,l,63



(14) ただし,˜hm,l,0m番目の受信アンテナに到来した, l番目の送信アンテナからの0番目のサンプルポイン トの複素振幅値である.本論文では最大マルチパス波 数をガードインターバル内に収まると仮定しているの で,0∼63サンプルポイントの時間応答のうち先頭の 16要素のみを残し,残りの48要素を切り捨てたベク トルを作る.



˜ hm,l,0h˜m,l,1 · · · ˜hm,l,15



(15) この16要素からなるベクトルを送信側にフィードバッ クすることで,CSIの量は(送信アンテナ数)×(受信 アンテナ数)×16となり,前節の手法と比較して使用 するサブキャリヤ数を52若しくは56としたときでも 情報量を3分の1以下に削減することが可能である. フィードバックされた情報は送信側で48個の0を後 尾に付加してFFTを施し,周波数領域のチャネルに 変換する. なお,ドップラー変動が無視できないときには,式 (15)の要素以外も考慮しなければならないが[22], [23], 本論文ではドップラー変動は十分小さいと仮定してい るので,上述の手法により各サブキャリヤのチャネル が推定可能となる[24]. この手法は,64サブキャリヤすべてが用いられて いれば,前節と同じ結果が得られる.しかし,実際に は後述するように,隣接する帯域への放射を防ぐため などの理由により,使用されないサブキャリヤがある. この場合,式(13)で使用されないサブキャリヤに対 応する要素は0となる.これによって,IFFTで得ら れる時間領域のチャネルに誤差が含まれることになる. その結果,送信側でのFFT処理後の周波数領域チャ ネルにも誤差が含まれてしまうため,特性の劣化をき たすことになる. 4. 3 手法3(時間領域チャネルのフィードバック) 3. 2の手法を用いて推定された時間領域のチャネル をそのままフィードバックする.このとき,3. 2で述 べたチャネル推定法では最大マルチパス波数(本論文 では16波)の時間応答を推定しているのでフィード バックするCSIの量は4. 2と同様,(送信アンテナ 数)×(受信アンテナ数)×16となり,4. 1の手法と 比較して情報量を3分の1以下に削減することが可能 である.フィードバックされた情報は4. 2と同様,送 信側で48個の0を後尾に付加してFFTを施し,周 波数領域に変換する.

5.

計算機シミュレーション

本章では計算機シミュレーションにより各フィード バック手法を用いたときの平均誤り率を明らかにし, 評価を行う.表1に本章で用いたシミュレーション諸 元を示す.ここでは誤り訂正符号化は行っていない. サブキャリヤは64周波数中の52,56周波数を使用 し,サブキャリヤ配置は図5のとおりである.実線の 矢印が示す位置(6番目から31番目と33番目から58 番目,若しくは4番目から31番目と33番目から60 番目)のサブキャリヤのみ通信に使用する.これらは, 先に述べたように無線LANの規格IEEE802.11a及 びIEEE802.11nで検討されていることを参考にした 表 1 シミュレーション諸元

Table 1 Parameters of simulations

送受信アンテナ素子数 2× 2,4 × 4 (L = M = 2,4) サウンディングパケット BPSK 変調方式 QPSK,16QAM, データフレーム変調方式 64QAM,256QAM (2× 2 では QPSK,16QAM) ストリーム・電力制御 Chernoff上界を用いた 誤り率最小基準 搬送波数 64サブキャリヤ中の 52波,56 波 各送受信アンテナ間・ チャネル特性 各マルチパス波間で独立な 準静的レイリーフェージング データフレーム 9シンボル

(6)

(a) 52 subcarriers

(b) 56 subcarriers

図 5 サブキャリヤ配置

Fig. 5 Subcarrier locations.

図 6 離散時間系の平均電力遅延プロファイル

Fig. 6 Averaged power delay profile in a discrete-time system. ものである.マルチパス波はガードインターバル内す べてのサンプルポイントに到来するとし,1サンプル ポイント遅延するごとに平均電力が1 dBずつ減衰する モデルを用いた(図6).1OFDMシンボル区間の1サ ブキャリヤ当りの総送信ビット数は,2Lビットとした. つまり,伝送レートは固定となり,52サブキャリヤ使

用時の2× 2 MIMOでは208 [bit/OFDM symbol], 4× 4 MIMOでは416 [bit/OFDM symbol],56サブ キャリヤ使用時の2× 2 MIMOでは224 [bit/OFDM symbol],4×4 MIMOでは448 [bit/OFDM symbol]

となる.この固定レートのもと,QPSK,16QAM,

64QAM,256QAM の 中 か ら(2× 2 MIMO で は QPSK,16QAMか ら ),Chernoff上界 を 用い て 受 信時の全ストリームの平均誤り率が最小となる変調 方式を選択し,各ストリームに対して最適な送信電

力配分を行った[10].ただし,各サブキャリヤ間にお

ける電力配分は行わず,等電力とした.受信側の処理 としては,最大比合成(Maximum Ratio Combining: MRC)及びMMSE (Minimum Mean Square Error) 基準を用いた.また,チャネルの時間変動は極めて小 さくチャネル情報のフィードバック,及び,それを用 いてのE-SDM送信の間に環境変動はないと仮定す る.なお,以下に示す特性結果の横軸はすべて規格化 送信電力を表している.ここで,規格化送信電力とは 1素子のオムニアンテナで送信した場合に,平均受信 Es/N0が0 [dB]となる送信電力で実際の総送信電力 を規格化した値である. 図7 (a)から図7 (d)は,52,56サブキャリヤ使用 時の送受信アンテナ数2,4の場合について,受信側で 最大比合成を行い,各フィードバック手法を用いたと きの平均ビット誤り率(以下,BER特性と略す)を示 している.それぞれのグラフについて,○が送信側と 受信側でチャネルが既知の場合,△が4. 1に述べた, 推定した周波数領域チャネルを使用するサブキャリヤ 分だけフィードバックする手法1を用いた場合,◇が 4. 2に述べた,周波数領域チャネルを推定し,時間領 域に変換後フィードバックする手法2を用いた場合, □が4. 3に述べた,推定した16サンプルポイントの 時間領域チャネルをフィードバックする手法3(提案 方式)を用いた場合の結果を示している.使用するサ ブキャリヤ数,送受信アンテナ数によらず,手法2は 規格化送信電力が35 [dB]付近からフロアを引いてい ることが分かる.一方,手法1と手法3(提案手法) ではフロアを引くような著しい特性劣化は見られな いが,手法1では送信側・受信側でチャネルが既知の 場合と比較して約3 [dB]程度劣化している.しかし, 提案手法である手法3はその劣化が抑えられていて, BER特性が最も良好であることが分かる.この特性 結果について考察する.手法2の劣化が著しいのは, 先に述べたように使用されないサブキャリヤが存在す ることにより,時間領域のチャネル推定精度が劣化し, そのフィードバックを用いた周波数領域チャネルの精 度も低下していることによってストリーム間干渉を引 き起こしているためと考えられる.一方,手法1と手 法3の特性が著しく劣化しないのは,使用されないサ ブキャリヤの影響を受けないため,精度の高いチャネ ル情報がフィードバックされるためである.更に,手 法3が手法1よりも特性が良好であるのは,チャネル 推定時に推定する要素が3分の1以下であるため同じ トレーニング区間を用いた場合,手法3の方が高い精 度で推定が可能であるためと考えられる. 図8 (a)から図8 (d)は,同様に52,56サブキャリ ヤ使用時の送受信アンテナ数2,4の場合について,受 信側でアダプティブアンテナのウェートをMMSE基 準で求め,各フィードバック手法を用いたときのBER 特性を示している.それぞれのグラフについても同様

(7)

(a) 2× 2 MIMO, 52 subcarriers (b) 2× 2 MIMO, 56 subcarriers

(c) 4× 4 MIMO, 52 subcarriers (d) 4× 4 MIMO, 56 subcarriers

図 7 各種 CSI フィードバック手法の BER 特性(最大比合成)

Fig. 7 BER performance for various CSI feedback methods (MRC).

に,○が送信側と受信側でチャネルが既知の場合,△ が4. 1に述べた手法1を用いた場合,◇が4. 2に述 べた手法2を用いた場合,□が4. 3に述べた手法3 (提案方式)を用いた場合の結果を示している.受信 側で最大比合成を行った場合と比較して,使用するサ ブキャリヤ数,送受信アンテナ数によらず,手法2の 特性が改善されていることが分かる.しかし,規格化 送信電力が高くなるにつれて劣化が生ずる.一方,手 法1と手法3は受信側の処理にかかわらずBER特性 はほぼ同じであり,提案手法が最も良好であることが 分かる.手法2の特性が改善されたのは,MMSE基 準で求めたウェートがストリーム間干渉を抑える働き をしたためである. 図9 (a)から図9 (d)は,52サブキャリヤ使用時の 送受信アンテナ数2,4の場合について各送受信アン テナ間のチャネルごとに量子化を行い,実際にフィー ドバックする際のデータ量を考慮に入れてシミュレー ションを行った結果である.なお,すべての結果にお いて受信側の処理としてMMSE基準に基づくウェー トを用いている.それぞれのグラフについて,□が量 子化せずに連続量としてチャネル情報をフィードバッ クした場合,△がチャネル情報を6 [bit]に量子化して フィードバックした場合,◇が4 [bit]に量子化した場 合の手法1の結果であり,同様に■,▲,◆が手法3 の結果である.また,図9 (a)と図9 (c)は各送受信ア ンテナ間のチャネル情報を実部と虚部に分け,その中 の絶対値の最大値で規格化した値を量子化している. すなわち,手法1においては,まず,周波数領域チャ ネルの推定値ˆam,l,jについて,次式で与えられるよう に全サブキャリヤ,全送受信アンテナを通じての最大 値αを求める. α = max m,l,j





Re{ˆam,l,j}





,





Im{ˆam,l,j}





(16) ただし,Re{·}とIm{·}は,それぞれ複素数の実部と

(8)

(a) 2× 2 MIMO, 52 subcarriers (b) 2× 2 MIMO, 56 subcarriers

(c) 4× 4 MIMO, 52 subcarriers (d) 4× 4 MIMO, 56 subcarriers

図 8 各種 CSI フィードバック手法の BER 特性(MMSE 基準)

Fig. 8 BER performance for various CSI feedback methods (MMSE).

虚部を表している.αを用いて規格化Re{ˆam,l,j}/α, Im{ˆam,l,j}/αを行い,それらを量子化している.また, 手法3については,インパルス応答の推定値ˆhm,l,kに ついて, α = max m,l,k





Re{ˆhm,l,k}





,





Im{ˆhm,l,k}





(17) を求め,規格化Re{ˆhm,l,k}/α,Im{ˆhm,l,k}/αを行い, それらを量子化している.一方,図9 (b)と図 9 (d) はチャネル情報を振幅と位相に分け,振幅については 同様に周波数領域若しくは時間領域における最大値で 規格化した値を量子化している.また,位相について はの範囲を等分割している.ここで,変調方式と 電力制御に必要な値βをチャネル情報を規格化した際 に用いた値αと雑音の分散σ2を用いて β = α 2 σ2 (18) とする.βの値が0∼40 [dB]の範囲を忠実に与えられ るようにする場合,必要なビット数は14 [bit]程度と なる.本論文では更に精度を高めて,各量子化手法に おいてβを16 [bit]でフィードバックしている.量子 化の方法によらず,6 [bit]でフィードバックした場合 は手法1,手法3ともに量子化を行わない場合とBER 特性がほぼ一致している.しかし,4 [bit]でフィード バックした場合,提案手法である手法3の特性劣化が 手法1と比較して大きいことが分かる.しかしながら, フィードバック情報量は両手法に6 [bit]を与えた場合 は3分の1以下に低減することができ,また,手法1 に4 [bit]を与え,提案手法に6 [bit]を与えた場合でも 半分以下に低減することができる.更にその場合,手 法1に比べて特性が良好であるので,提案手法が有効 なフィードバック手法であるといえる. 図10 (a),図10 (b)は,52サブキャリヤ使用時の送 受信アンテナ数4の場合について,前述したチャネル

(9)

(a) 2×2 MIMO, Quantization of real part and imaginary part

(b) 2×2 MIMO, Quantization of amplitude and phase

(c) 4×4 MIMO, Quantization of real part and imaginary part

(d) 4×4 MIMO, Quantization of amplitude and phase

図 9 CSIの量子化による BER 特性の変化(MMSE 基準)

Fig. 9 BER performance for quantized CSI (MMSE).

(a) 4× 4 MIMO, 6 bit quantization (b) 4× 4 MIMO, 4 bit quantization

図 10 CSIフィードバック時の雑音を考慮した BER 特性(MMSE 基準)

Fig. 10 BER performance in the presence of noise in the CSI feedback channel (MMSE).

(10)

情報の実部と虚部のそれぞれを6 [bit]及び4 [bit]に量 子化してフィードバックする際に雑音を考慮し,フィー ドバックチャネルにも誤りが生じ得るとした場合のシ ミュレーション結果である.なお,ここでも誤り訂正 符号化は行っていない.チャネル情報をフィードバッ クする際はシングルキャリヤの空間分割多重方式(変 調方式QPSK)を用いており,上り回線のチャネル推 定は下り回線と同様のN シンボルからなるトレーニ ングシンボルを用い,その直交性を利用して行ってい る.また,フィードバックされたチャネル情報の分離・ 検出にはMMSE基準に基づくウェートを用いている. それぞれのグラフについて,□がチャネル情報フィー ドバック時に雑音の影響による誤りがない場合,▽が 雑音の存在する環境において下り回線と同等の規格化 送信電力でチャネル情報をフィードバックした場合の 手法1の結果であり,同様に■,▼が手法3の結果で ある.グラフより,量子化ビット数6 [bit],4 [bit]と もに雑音の影響による特性劣化が手法1と比較して提 案手法である手法3の方が若干大きいことが分かる. これは,時間領域チャネルに誤りが発生すると,全サ ブキャリヤにわたり影響が及ぶのに対し,周波数領域 チャネルでは,誤りが生じたサブキャリヤにしか影響 が現れないためと考えられる.したがって,時間領域 チャネルをフィードバックする方法は周波数領域チャ ネルのフィードバックよりも伝送時に生じる誤りの影 響が大きいといえる.しかしながら,手法3の情報量 は手法1よりも少ないことから,フィードバック時に 手法3は手法1よりも若干長い符号長の誤り訂正符 号化を行うことができるため,この特性劣化は解決さ れると考えられる.実際に特性劣化を抑えるために, どの程度の符号長が必要であるかは今後の検討課題で ある.

6.

む す び

MIMO-OFDM固有ビーム空間分割多重方式におい て,チャネル情報のフィードバック量の削減手法を提 案した.更に,計算機シミュレーションにより提案手 法を含め各手法の特性評価を行った.その結果,提案 した最小二乗法により得られた時間領域チャネルを フィードバックすることにより,量子化を考慮に入れ た場合でも情報量を半分以下に削減でき,かつ良好な 特性が得られることが確認された. フィードバック量を同一としたときの,本手法と文 献[16]∼[19]で述べられている送信行列のコードブッ クを用いた手法の詳細な比較は重要と考えられ,レイ リー環境やライス環境での検証が今後の課題である. 文 献

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Ar-eas Commun., vol.17, no.3, pp.461–471, March 1999. (平成 18 年 1 月 5 日受付,4 月 11 日再受付) 大渡 裕介 (学生員) 平 17 北大・工・電子卒.現在,同大大学 院情報科学研究科修士課程在学中.MIMO チャネル通信に関する研究に従事. 小川 恭孝 (正員) 昭 48 北大・工・電子卒.昭 53 同大大学 院博士課程了.昭 54 同大・工・電子講師, 昭 55 同助教授,平 7 同大大学院・工・電 子情報・教授,現在に至る.この間,アダ プティブアレーアンテナ,放送衛星による 時刻と周波数の精密遠隔比較,ディジタル 通信システム,高分解能時間領域測定法に関する研究に従事. 平 4∼5 米国オハイオ州立大にて,電磁波の高分解能測定に関 する研究に従事.工博.昭 53 年度丹羽記念賞,昭 56 年度本 会学術奨励賞受賞.IEEE,映像情報メディア学会各会員. 西村 寿彦 (正員) 平 4 北大・理・物理卒.平 6 同大大学院 理学研究科修士課程了.平 10 同大学院工 学研究科博士後期課程了.同年同大学院・ 工・電子情報・助手,現在に至る.アダプ ティブアレーを用いた SDMA 方式に関す る研究に従事.平 11 年度本会学術奨励賞 受賞.IEEE,日本物理学会各会員. 大鐘 武雄 (正員) 昭 59 北大・工・電子卒.昭 61 同大大学 院修士課程了.同年郵政省電波研究所(現, 通信総合研究所)入所.平 4 年 7 月∼平 7 年 3 月(株)ATR 光電波通信研究所に出 向.平 7 北大大学院・工・電子情報・助教 授,現在に至る.この間,陸上移動通信伝 搬,アダプティブアレーの研究に従事.工博.平元年度本会篠 原記念学術奨励賞,平 5 IEEE AP-S Tokyo Chapter Young Engineer Award受賞.IEEE 会員.

Fig. 1 E-SDM in a MIMO-OFDM system.
図 3 データフレーム構成 Fig. 3 Data frame format.
図 6 離散時間系の平均電力遅延プロファイル Fig. 6 Averaged power delay profile in
Fig. 7 BER performance for various CSI feedback methods (MRC).
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参照

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