26 27 私の専攻は管理会計であり、とりわけ組織間管理会計と 呼ばれる領域を専門としています。一般に会計学は、会計 情報の利用者が企業の外部者か内部者かという区別に基 づいて、大きく財務会計と管理会計に大別されます。私が 専門とする管理会計とは、その後者すなわち企業内部者 を対象とした会計であり、経営管理のための会計ともいわ れます。「会計」といえば、簿記や財務諸表などを想像して 非常に難解なイメージをもつ人も多いかもしれません。ま た「管理」という堅苦しい言葉がその前に付くため、その実 態を把握しにくいのですが、意外と私たちの日常生活やビ ジネスに深く関連しています。 歴史的にみれば,管理会計は19世紀に萌芽し、その後 の産業構造の革新と巨大企業の出現によって生成期を迎 えたといわれています。そしてF.テイラーによる科学的管 理法の提唱にともない、標準原価計算や予算統制といっ た実務を中心として、管理会計は発展してきました。目標 を設定し、経営実績が予算数値からどの程度乖離している か、その差異を分析し、次期以降の中長期経営計画や予 算策定に役立てるといったコントロール機能を担う管理 会計は、企業の経営管理システムにおいて重要な役割を 果たしているといえるでしょう。 Plan-Do-Check-Actionという一連の経営管理サイクル の中で実施される管理会計実践の有用性は、これだけ情 報技術が発達した現代においても色褪せるものではあり ません。しかし、ほんの十数年前まで、管理会計実務は一 つの企業の中で完結するものという前提が置かれていた ように思います。管理会計研究も単独の企業内部に限定 した分析がごく当たり前のように行われてきたのです。企 業にとっては予算データやコストデータは経営上の最も 守秘すべき内容をともなうことからも、こうした考え方は ごく自然なものだったのでしょう。 しかし、さまざまに蓄積された管理会計研究を眺めて みると、必ずしも管理会計技法やその思想が単一企業の 内部に限定的に適用されているわけでないことが明らか となってきました。たとえば、新製品開発におけるコストマ ネジメントでは、開発プロセスの源流段階から原価を作り 込む活動が行われます。これは原価企画とよばれ、最終製 品のアセンブリーメーカーは、製品開発のかなり初期段階 から部品サプライヤーと共同で開発業務に携わります。そ して、時には部品サプライヤーの技術者がアセンブリメー カーに常駐することもあります。業種によっては、自社製造 コストに占める外部購入費の割合が7割を超える場合も あるため、企業が単独でコスト低減を行うよりも効果的だ というわけです。つまり、優れた他社と協調的な関係を構 築し、win-win関係を実現することが重要な成功要因とな るのです。 しかしながら、現実にはそれほど簡単な話ではありませ ん。単独の組織としては自己の利益最大化を前提とした行 動をとる一方で、他社との利害の不一致を調整するため に、組織境界を超えて様々なコントロールの必要性が生じ るためです。現在,私が最も興味をもち研究しているのは、 組織を隔てたコントロール・メカニズムがどのように機能 し、管理会計がどのような役割を果たしているのかといっ た問題です。 このような問題は、現代の経営環境下では、SCM(サプ ライチェーンマネジメント)をはじめ、EMS(Electronics Manufacturing Service)、OEM(Original Equipment Manufacturer)、ファブレス経営、グローバルソーシング、 アウトソーシング、シェアードサービスなどの新たなビジ ネスモデル、あるいは戦略的提携や合弁事業などの新た な組織間関係のあり方とも関連しています。伝統的に単一 組織内に限定的であった管理会計研究の射程を組織の枠 を越えて広げることによって新たな視座を与えることが、 現在の私の研究上の目的となっています。
今の研究を語る 「方言から探ることばのしくみ」
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