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476 日本金属学会誌 (2015) 第 79 巻 のひとつとして知られている一方, 現実的には Ti Cu 系合金が結晶化による脆化を起こしやすいために大きなガラス形成能を実現することは容易ではなく, 金属ガラス合金の特徴として合金中に含まれる酸素濃度が増加することで脆化する事象 30) があるこ

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(1)

東京工業大学名誉教授(Professor Emeritus, Tokyo Institute of Technology)

1東北大学金属材料研究所 2東京工業大学

3株式会社開倫塾

J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 79, No. 10(2015), pp. 475484  2015 The Japan Institute of Metals and Materials

Solubility of O and Ca in Molten TiCu Alloys Equilibrated with a CaOMgOCaCl2Flux at 1473 K

Ichiro Seki1, Kazuhiro Nagata2,, Jun Tanabe3and Tetsuya Ashino1

1Institute for Materials Research, Tohoku University, Sendai 9808577 2Tokyo Institute of Technology, Tokyo 1528550

3Kairin Juku School, Ashikaga 3268505

Solubility of Ca and O in molten TiCu alloys equilibrated with a CaOMgOCaCl2ternary flux in CaO or MgO crucibles at 1473 K was analytically investigated. The Equilibrium constant of deoxidization reaction by dissolved Ca can be determined as follows:

CaO(s)in CaO crucible=Cain Metal+Oin Metal, -3.25=logK, K=(aCa・aO)/(aCaO)

Moreover, from the investigated partial pressure of O around the reaction cell, an equilibrium constant of dissoluble reaction of O in the molten alloys can be determined as follows:

1/2O2=Oin Metal, 16.08=logK, K=[aO in Metal]/(P1/2O2)

If it is possible to use an equilibrium constant of calcia formation published as a thermodynamic data book, an equilibrium constant of dissolution reaction of calcium into molten alloys can be determined as follows,

Cain Flux=Cain Metal, -2.29=logK, K=[aCa in Metal]/(aCa in Flux)

The activity of CaO in the CaOMgOCaCl2ternary flux equilibrated with a MgO crucible is determined as 0.76 compared to the normal state (aCaO=1) using a CaO crucible. This is obtained from the difference of the equilibrium constants of CaO formation using CaO and MgO crucibles, as expressed by the relation: logK=logK ′+logaCaO. [doi:10.2320/jinstmet.J2015019]

(Received February 24, 2015; Accepted June 29, 2015; Published October 1, 2015)

Keywords: distribution, equilibrium constant, reduction, smelting, metallic glass, fluxing

1. 緒 言 CaCl2融体および CaOCaCl2二元系融体1)などのカルシウ ムハライド系低融点融体を電気化学的に還元して得られる カルシウムを利用してチタン27)やジルコニウム8,9)などの金 属微粒子を得ることが可能であることに加え,カルシウム ハライド系融体を利用することにより融体と金属チタン片の 界面反応を活性化させて固体内拡散によって進められるチタ ン片を効果的に脱酸することで高純度化1012)が可能である ことが知られている.一方でカルシウムハライド系融体を 用いて還元および精錬を行う場合のチタンの清浄度は用いら れる融体(フラックス)の熱力学的性状によって決定されるこ とは想像するにたやすく,カルシウムによるチタン還元反応 の 平 衡 定 数 や フ ラ ッ ク ス に 係 る 活 量 な ど の 熱 力 学 的 知 見1319)についても多数の報告がある.チタン中の溶解酸素 濃度に対するフラックスの熱力学的性状を具体的に報告20,21) した例もあり,フラックス中のカルシウム活量と脱酸生成物 である CaO の活量比によってチタン中の溶解酸素濃度が決 定されると報告されている.一方で熱力学的には脱酸生成物 である CaO 活量を低下させることによってもチタン中に溶 解する酸素を低減させることが可能であるにもかかわらず, フラックス組成を検討することによって CaO 活量の低減を 図ることは積極的には検討されていないようである. 我々は CaOCaCl2二元系フラックスに CaO と広い組成範 囲で固溶体を形成する MgO22)に着目し,MgO を含む三元 系にフラックス組成を拡張することで CaO 活量が低く抑え られて脱酸能が向上することを期待し,過去の研究23,24)にお いて CaOMgOCaCl2三元フラックスを用いた TiCu 系の 溶融合金の改質を試みている.TiCu 系合金はチタンと銅 を混合することによって金属ガラス(急冷法によって形成さ れる非晶質合金)の形成に有利25)な負に大きなエンタルピ ー26)が達成されることから金属ガラス合金2729)の基本組成

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のひとつとして知られている一方,現実的には TiCu 系合 金が結晶化による脆化を起こしやすいために大きなガラス形 成能を実現することは容易ではなく,金属ガラス合金の特徴 として合金中に含まれる酸素濃度が増加することで脆化する 事象30)があることを考慮すると,金属ガラスの大きなガラ ス形成能を実現するためには酸素による合金の汚染を少なく すること,もしくは酸素による影響を極力抑えるような方策 が必要であると結論付けられる.そこで我々は溶融合金中の 酸素親和力の高いチタンに雰囲気由来で溶解した酸素が急冷 過程で非金属化合物(介在物)を生成し,これが非均質核とな り結晶成長を助けていると考え,溶融合金のカルシウム脱酸 を行うとともにフラックスを利用することで脱酸生成物の CaO 活量を低下させて脱酸反応を進行しやすくし,それと 同時に結晶核となりうる高融点非金属化合物(CaO 等)を低 融点フラックス組成(CaOMgOCaCl2)に平衡させることで 酸化物の結晶系に散見されるファセット成長を抑制できるこ とを予測し,実際に実験事実として結晶成長を大幅に抑制で きることを証明している.本報ではその研究23)において行 ったカルシウム脱酸の効果24)についてフラックスの活量測 定による熱力学的な詳細な検討を行ったので報告する. 2. 実 験 方 法 2.1 試料作製23) CaOMgOCaCl2三元フラックスの組成は 1473 K で CaO ルツボに平衡するルツボ飽和組成を基準に 20 molCaO CaCl2とし,CaCl2比を固定して実験条件に合わせて CaO を

MgO で置換した.試薬粉末には特級および一級グレードの 炭酸カルシウム(CaCO3)と酸化マグネシウム(MgO),塩化 カルシウム二水和物(CaCl2・2H2O)を用いて実験条件に合わ せて秤量した後,電気炉を用いて 1473 K まで空気雰囲気中 で加熱することで脱水と炭酸カルシウムの熱分解を行った. 一方で TiCu 系金属ガラス合金(Ti45Cu45Ni10, Ti45Cu45Fe10, Ti45Cu45Zr5Ni5)は,チタン,銅,ニッケル,ジルコニウムの 金属塊を各々秤量した後,Ar 雰囲気中でアーク溶解するこ とで合金化した.このようにして作製したフラックスと合金 は f15 mm×f11 mm×50 mm(一部試料では f19 mm×f15 mm× 50 mm ) の CaO も し く は MgO ル ツ ボ を 用 い , 20 NmL/min(0.33 NmL/s)の Ar ガス流で雰囲気置換した縦型 電気抵抗炉の中で 1473 K にまで加熱し,フラックスが完全 に溶解したことを確認後,アルミナチューブを利用して適量 の金属カルシウム(もしくはマグネシウム)塊を脱酸剤として ルツボ内に投入,所定時間の静置の後にルツボごと炉下部に 設置した水冷バケツに落下させることで急冷,もしくは He ガスを吹き付けて急冷を行った.実験中の抵抗炉内の酸素分 圧は反応容器とするルツボ上方に参照極を Cr/Cr2O3とする カルシア安定化ジルコニア固体電解質(ZR11/株ニッカトー 製)の酸素濃淡電池(酸素センサー)を設置31)することで常時 酸素分圧の計測を行った.また,本実験における酸素分圧の 測定条件下では固体電解質の輸率に対する電子伝導の寄与が 十分に小さいことを補正項(P〇―)より確認しており,測定し た起電力値に対する補正は行わないこととした. 2.2 分析方法 急冷した試料は金属部分とフラックス部分に注意深く選り 分けた後,金属部分はヘリウムガス移送燃焼赤外線吸収方 法(LECO TC436, LECO Corp.)による酸素濃度分析と誘導 結合プラズマ発光分光装置(ICPOES, Inductively Coupled PlasmaOptical Emission Spectrometry/IRIS Advantage Duo, Thermo Fisher Scientific, Inc.)による Ca と Mg 濃度分 析を行った.酸素濃度分析では 0.05~0.1 g に切り分けた金 属試料片をニッケルカプセルに入れた後,さらに 0.1 g の黒 鉛粉末とともに黒鉛カプセルに挿入したものをヘリウムガス 気流中において 2423 K まで加熱燃焼させ,発生した二酸化 炭素ガス濃度から検量値を基に酸素濃度を決定した.また, ICPOES 分析32,33)では 0.2~0.3 g に切り分けた金属試料片 を PTFE ( フ ッ 素 樹 脂 ) 容 器 中 で 2 cm3の HF , 2 cm3 HNO3,10 cm3の蒸留水とともにホットプレートを用いて 400 Kに加熱して完全に溶解した後,5 cm3の H 2SO4を加え た後に 530 K まで加熱することで HF と HNO3を蒸発させ た.その溶液は室温にまで冷却した後に 50 cm3の蒸留水を 加 え て 希 釈 し , CaII393.368 nm, MgII280.270 nm, ZrII339.198 nm のスペクトルラインを利用して ICPOES による成分濃度分析を行った.一方,フラックス部分は大気 中の水分を吸収して潮解してしまうため,細かく破砕するこ となく,金属部分との分離の際に生じた破面を蛍光エックス 線分析装置(Rigaku ZSX PrimusII)により Ca, Mg, Cl の濃 度分析を行った. 3. 結 果 3.1 成分濃度積と溶解時間 Table 1 と Table 2 は初期フラックス組成と合金の種類や 量,溶解温度(一部),溶解時間,添加した脱酸剤の種類や 量,定常状態における炉内酸素分圧,合金中の酸素,Ca Mg の分析濃度を示している.また,実験温度は TiCuNi (TCN)と TiCuZrNi(TCZN)合金が 1473 K である一方, TiCuFe(TCF)合金では急冷時の結晶化抑制に最適な溶解 温度を探査23)することを最優先事項として溶解温度を僅か な範囲で変化(1423~1458 K)させたのでその際の温度を併 記している.フラックス組成については CaO ルツボを用い た場合で MgO を未添加のものから MgO の混合比を 25ま で引き上げたものを用意した.一方で MgO ルツボを用いた 試料では MgO の混合比を 98まで引き上げた試料(98は CaO+MgO に対する MgO の比率であり,実際には塩化カ ルシウムがフラックスの内の 80 molを占め,残りの 0.4 molが CaO,19.6 molが MgO)を用意した.溶解時間は 過去のフラックス/メタルの分配実験の平衡時間31)を参考に するとともに CaO ルツボの耐久性を考慮して 3.6~10.8 ks の範囲とした.実験中の炉内酸素分圧は脱酸剤を添加した直 後には一時的に 10-50atm(=p O2,10 -45Pa)程度にまで低下 するものの定常状態では概ね 10-35atm(10-30Pa)を保って おり,試料合金中の酸素濃度や Ca および Mg 濃度も飛び抜 けて高い(1 massを超えるような)異常値と考えられるも

(3)

C28 C(100)C 3600 TCN -34.72 0.2265 0.00255 0.00060 M50 MC(10:90)C 4200 TCN -33.77 0.2380 0.00530 0.22885 C40 MC(25:75)C 5400 TCN -36.65 0.2480 0.00275 0.14900 M77 MC(40:60)C 6600 TCN -40.09 0.2180 0.00310 0.23850 M34 MC(50:50)C 3600 TCN -32.39 0.4840 0.03125 0.43950 M49 MC(50:50)C 4200 TCN -33.91 0.2425 0.00235 0.23000 M44 MC(85:15)C 5400 TCN -33.21 0.2475 0.00080 0.22400 M36 MC(90:10)C 3600 TCN -34.62 0.0850 0.00705 0.87400 M38 MC(90:10)C 3600 TCN -33.99 0.0725 0.00840 0.64400 M41 MC(90:10)C 5400 TCN -32.41 0.0705 0.00285 0.76150 M46 MC(95:5)C 4500 TCN -32.35 0.2395 0.00120 0.23650 M47 MC(98:2)C 4500 TCN -35.72 0.2430 0.00055 0.23550 M53 MC(95:5)C 10800 TCN -34.34 0.2340 0.00070 0.22550 M56 MC(95:5)C 5400 TCN -35.68 0.2335 0.00070 0.23600 M58 MC(95:5)C 5400 TCN -35.93 0.3450 0.00150 0.26000 M45(1473 K) MC(75:25)C 5400 TCF -32.92 0.2430 0.00365 0.20550 M37(1473 K) MC(90:10)C 3600 TCF -33.77 0.0675 0.00870 0.94550 M73(1423 K) MC(90:10)C 6600 TCF -38.98 0.1650 0.00225 0.25850 M75(1448 K) MC(90:10)C 6600 TCF -38.12 0.1980 0.00410 0.24050 M80(1458 K) MC(90:10)C 6600 TCF -38.71 0.1930 0.00050 0.22750 C22(1473 K) C(100)C 3600 TCZN -35.89 0.0165 0.03465 0.00010 C26 C(100)C 3600 TCZN -35.21 0.0355 0.01300 0.00050 C29 C(100)C 3600 TCZN -34.52 0.0650 0.00660 0.00040 C30 MC(25:75)C 3600 TCZN -34.38 0.1220 0.01320 0.15100 C32 MC(25:75)C 3600 TCZN -34.15 0.1190 0.00550 0.50900 M55 MC(25:75)C 7200 TCZN -34.98 0.4220 0.00070 0.24500 M78 MC(40:60)C 6600 TCZN -39.48 0.4810 0.00040 0.19900 M33 MC(75:25)C 3600 TCZN -30.60 0.3225 0.00095 0.37200 M35 MC(90:10)C 3600 TCZN -34.91 0.1540 0.00645 0.99450 M39 MC(90:10)C 5400 TCZN -36.57 0.1850 0.00410 0.60800 M42 MC(90:10)C 5400 TCZN -33.41 0.1715 0.00355 0.78400 M72 MC(90:10)C 6600 TCZN -37.70 0.3590 0.00060 0.26750

C(xx)C is CaOCaCl2flux, MC(xx:xx)C is MgOCaOCaCl2flux.

TCN is TiCuNi alloy, TCF is TiCuFe alloy and TCZN is TiCuZrNi alloy.

のはなく,概ね安定した実験値が得られていると思われる. また,平衡状態における脱酸反応を熱力学的に評価するには 成分濃度の時間依存を確認する必要があり,本実験のように 溶融合金にカルシウムを添加して脱酸を行う反応式は CaO ルツボを用いて CaO 活量を規定できる場合と MgO ルツボ を用いることで規定できない場合として以下のように表すこ とができ,その平衡定数は式( 1 )で与えられる.

CaO(s)in flux equilibrated with CaO cru.=Cain Metal+Oin Metal もしくは

CaOin flux equilibrated with MgO cru.=Cain Metal+Oin Metal

K(1)=(aCa・aO)/(aCaO) ( 1 )

ここで脱酸生成物の CaO の活量が規定される場合には合金 中のカルシウムと酸素の活量積が一義的に決定されるため, 活量積の時間依存を調査することで平衡状態の可否を評価で きる.また,成分濃度が極低濃度で活量係数を ``1'' と見な すことのできる範囲では濃度積と置き換えることができる. Fig. 1 に本研究で得られた試料合金中の酸素とカルシウムの 濃度積の時間依存性を示す.CaO ルツボを用いた場合には 脱酸生成物の CaO 活量が純物質として ``1'' に規定されると 見なすことができ,濃度積が一定値になる平衡状態は 4 ks 以上で現れ,その値は-3.2(=log[[massO]×[mass Ca]])に収束したと見なすことができる.一方で MgO ルツ

(4)

Table 2 Measured and estimated final compositions of flux.

No. Alloytype Mass ofAlloy/g

Initial composition of flux(mol)

Mass of flux Final compositon of flux

total /g

Deoxidant/g Measured compositon(mass) Calculated compositon(mol)

CaO MgO CaCl2 Ca Mg Ca Mg Cl CaO MgO CaCl2 mi/mf sigma2

C21 TCN 5.03 20.01 0.00 79.99 2.038 0.122 0.000 C28 5.01 20.01 0.00 79.99 1.820 0.120 0.000 M50 6.20 17.99 1.98 80.03 2.048 0.250 0.052 C40 5.20 15.01 4.96 80.03 1.852 0.000 0.127 46.55 0.00 53.45 21.05 0.00 78.95 0.95 0.001 M77 6.57 11.97 8.02 80.01 2.082 0.015 0.000 M34 5.59 10.04 9.96 79.99 2.021 0.148 0.000 M49 6.01 10.04 9.96 79.99 2.096 0.149 0.050 M44 6.39 3.00 17.06 79.94 2.064 0.242 0.082 M36 5.18 2.01 18.01 79.98 2.070 0.179 0.000 M38 5.34 2.01 18.01 79.98 2.069 0.242 0.000 M41 5.37 2.01 18.01 79.98 2.069 0.205 0.085 M46 6.30 1.00 18.98 80.02 2.072 0.243 0.081 M47 6.40 0.41 19.56 80.02 2.081 0.242 0.079 M53 6.30 1.00 18.98 80.02 2.153 0.073 0.079 M56 6.44 1.00 18.98 80.02 2.155 0.023 0.043 M58 6.42 1.00 18.98 80.02 2.154 0.000 0.041 M81 6.56 2.01 18.02 79.97 2.145 0.017 0.000 38.10 1.48 60.42 16.90 6.02 77.08 1.05 0.000 M64 6.40 0.41 19.56 80.03 2.159 0.039 0.000 40.54 1.60 57.86 17.25 6.10 76.65 1.07 0.000 M45 TCF 6.31 5.01 15.07 79.92 2.055 0.245 0.076 M37 5.14 2.01 18.01 79.98 2.067 0.183 0.000 M73 6.43 2.01 18.02 79.97 2.145 0.015 0.000 M75 18.21 2.01 18.02 79.97 3.861 0.041 0.000 M80 18.70 2.01 18.01 79.98 3.861 0.035 0.000 41.14 0.60 58.26 21.48 2.35 76.17 1.07 0.001 C22 TCZN 5.06 20.01 0.00 79.99 2.037 0.109 0.000 C26 5.08 20.01 0.00 79.99 2.181 0.124 0.000 C29 5.88 20.01 0.00 79.99 2.189 0.120 0.000 C30 5.06 15.02 4.96 80.03 2.255 0.124 0.000 C32 5.01 5.01 15.07 79.92 2.508 0.131 0.000 M55 6.39 15.02 4.96 80.03 2.064 0.000 0.040 M78 6.54 11.97 8.02 80.01 2.082 0.015 0.000 M33 5.03 5.01 15.07 79.92 2.508 0.135 0.000 M35 5.13 2.01 18.01 79.98 2.071 0.179 0.000 M39 5.04 2.01 18.01 79.98 2.074 0.245 0.000 M42 5.26 2.01 18.01 79.98 2.071 0.122 0.122 M72 6.55 2.01 18.02 79.97 2.145 0.015 0.000 M74 6.54 2.01 18.02 79.97 2.145 0.015 0.000 38.32 1.04 60.64 19.06 4.28 76.66 1.06 0.000 TCN is TiCuNi alloy, TCF is TiCuFe alloy and TCZN is TiCuZrNi alloy.

ボを用いた場合には 10.8 ks の静置で濃度積が-3.8 程度に 収束したと見なすことができるものの CaO 濃度の高いフラ ックスを用いた場合で濃度積の値が平衡値に収束するまでに 時間が掛かっていることがわかる.しかしながら,いくつか の例外的な実験点を除いて濃度積の分散範囲が一桁以内に収 まっており,3.6 ks 以上の静置を行った試料は概ね平衡状態 に至ったものと考えることにする. 3.2 フラックスの組成 Table 2 は実験に用いたフラックスの初期組成と添加した 脱酸剤の成分と量,急冷時の水濡れによるフラックスの劣化 を免れた一部の試料について蛍光エックス線分析によって得 られる実験後のフラックスの主要成分比と実験前後の物質収 支より計算される実験後のフラックス組成を示している.実 験後のフラックス組成を計算するにあたり,酸素とカルシウ

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Fig. 1 Time dependence of products of OCa concentrations in Ti45Cu45Ni10(TCN), Ti45Cu45Fe10(TCF) and Ti45Cu45Zr5Ni5 (TCZN) alloys.

Fig. 2 Expected phase relation of molten CaOMgOCaCl2ternary system at 1473 K and analytical flux compositions at initial and final states.

100+VCa

〇 mi[(CaO mol)i+(MgO mol)i] =mf[(CaO mol)f+(MgO mol)f] 〇 mi[(MgO mol)i]/100+nMgi

=mf[(MgO mol)f]/100+VMgCl2+VMg

〇 mi[(CaCl2mol)i]/100=mf[(CaCl2mol)f]/

100+VMgCl2

〇 (Ca mol)f+(CaO mol)f+(MgO mol)f+ (CaCl2mol)f=100

線分析で明らかになるフラックス中の Ca および Mg の割合 は各成分の原子量,MCa, MMg, MClを用いて以下の 2 つの式

で示される.

〇 [(Ca mass)f]/100

=[(Ca mol)f+(CaO mol)f+(CaCl2mol)f]MCa

/[[(Ca mol)f+(CaO mol)f+(CaCl2mol)f]MCa

+[(MgO mol)f]MMg+[2(CaCl2mol)f]MCl]

〇 [(Mg mass)f]/100=[(MgO mol)f]MMg

/[[(Ca mol)f+(CaO mol)f+(CaCl2mol)f]MCa

+[(MgO mol)f]MMg+[2(CaCl2mol)f]MCl]

ここで与えられるすべての未知数[(Ca mol)f], [(CaO mol)f], [(MgO mol)f], [(CaCl2mol)f], mf, VMgCl2が

正値になるようにコンピュータを用いて最適値を決定すると 実験後のフラックス組成は Table 2 に示す値を取る.ここで 決定した最適値は実験前後の物質収支 ``mi/mf'' をおおよそ 満たしており,個々の最適値に対する値の精度を示す分散値 ``sigma2'' も極めて小さく,決定した最適値の誤差は少ない ものと見なすことができる.このように決定される実験前後 のフラックス組成の変化を図示すると Fig. 2 に示すように なり,フラックス初期組成が CaCl2リッチの MgOCaCl2二 元系に近いものであっても平衡状態に近づくにつれて平衡さ せられるルツボの種類(CaO もしくは MgO)によらず CaO が多くなり CaOCaCl2二元系に近い組成に至ることがわか

る.特に CaO ルツボを用いた場合には最終組成から MgO が検出されなくなって CaOCaCl2二元系に至ることがわか

(6)

Fig. 3 Xray diffraction (XRD) profile of CaOMgOCaCl2 ternary flux of M64 sample quenched at 1623 K.

Table 3 Fitted interaction parameters and equilibrium con-stants of CaOforming reaction equilibrated with a CaO or MgO crucible.

Alloy type Function

Equilibrated with CaO crucible MgO crucible

TCN -e O Ca 3.14 -0.97 log(K′) -3.95 -3.22 TCF -e O Ca ― 0.200 log(K′) ― -3.40 TCZN -e O Ca 3.67 -2.01 log(K′) -3.47 -2.79 ALL -eO Ca 0.48 -1.15 log(K′) -3.25 -3.14 ALL aCaO 1.00 0.76

TCN is TiCuNi, TCF is TiCuFe and TCZN is TiCuZrNi alloy.

Fig. 4 Comparison of equilibrium constants for CaOforma-tions equilibrated with a CaO or MgO crucible for the alloys.

ると,実験温度(1473 K)で CaO ルツボを用いた場合に最終 的に行き着くことが予想される液相と固体の CaO が共存す る CaO ルツボ飽和組成(aCaO=1)に対して 3 mol程度の誤

差に収まっていることがわかり,さらに十分な平衡時間が確 保されれば 3 mol程度の組成の差異は小さくなり,完全な 平衡状態では重なるものと推測できる.このことは平衡状態 に対するフラックス組成の誤差が 3 mol程度であると仮定 することができ,Fig. 2 に示す測定点を囲む同心円の範囲内 には平衡状態に至った場合の組成が示されている可能性が高 いと見なすことができる.一方で MgO ルツボを用いたフラ ックスについて同心円の重なりを考慮すると,その重なりの 最も多い部分が平衡状態における MgO ルツボ飽和組成であ る可能性が最も高いと判断することができ,M74 の実験点 を中心とする同心円内には MgO ルツボ飽和組成があると見 なすことができる.また,Fig. 3 は MgO ルツボ飽和組成で あると予想される同心円内に現れる M64 のエックス線回折 結果であり,CaO と MgO の相を確認することができる.こ のことは MgO ルツボ飽和組成において自由度( f=C-P)を 見積もると 3 成分(C)に対して液相を含む 3 相(P)が存在し ていると考えることで温度と圧力が一定の下では自由度がな くなる組成が存在し,CaOMgOCaCl2三元系に対しては

Fig. 2 に示すように CaO と MgO と平衡する相関係がある ことが予想できる. 3.3 脱酸反応の平衡定数と相互作用助係数 カルシウムを用いた TiCu 系合金の脱酸反応とその平衡 定数は式( 1 )のように考えることができ,その脱酸反応の 平衡定数は活量係数を用いて以下の式のように書き換えるこ とができる.

K(1)=[ fCa[massCa]・fO[massO]]/(aCaO)

log fCa=eCaCa[massCa]+e O

Ca[massO]

log fO=eCaO[massCa]+eOO[massO]

ここで Table 1 に示されるように TiCu 系合金中に溶解す るカルシウムおよび酸素が極低濃度であることから自己相互 作用助係数(eCa Ca, eOO)を無視することができる場合にはカルシ ウムおよび酸素濃度と平衡定数の関係は相互作用助係数の相 互関係により酸素やカルシウムの原子量(MCa, MO)を用いて 以下のように簡略化34)することができる. eCa O=eOCa(MO/MCa), log[massCa][massO]

=logK(1)-eOCa([massO]+(MO/MCa)[massCa])

( 2 ) ここで CaO ルツボを用いた場合のように脱酸生成物の CaO が純物質として存在する場合には活量が 1 とおけるので式 ( 2 )において活量を示す項がないことは自明である.一方 で MgO るつぼを用いた場合には CaO 活量を規定できない ので式( 2 )に以下に示す式( 3 )の関係を用いて見かけの平 衡定数と CaO の活量を別途考慮する必要があるが,このこ とについては後述する.

logK(1)=logK ′(1)+logaCaO ( 3 )

Table 3 と Fig. 4 は式( 2 )のカルシウムと酸素の濃度積と濃 度和の関係から切片および傾きとして導かれる平衡定数 (K(1))と相互作用助係数(eOCa)を示している.このように与 えられる平衡定数(MgO ルツボの場合は見かけの値)は平衡 させられる合金やフラックス組成の違いによって異なり - 3.95 ~ - 2.79 ( = logK(1)ま た は logK ′(1)) の 値 を 示 す 一 方,合金種類の違いによるデータ点の偏りは見られず,さら にここで示される差異が CaO および MgO ルツボを用いた

(7)

Fig. 5 Determined and reported equilibrium constants for CaOformation by dissoluble Ca and O in the alloys, and the reaction for CaOformation reported by various researchers.

CaO 活量が規定できていないからであり,ここで MgO ルツ ボの場合における CaO 活量を考えることにする.CaO ルツ ボを用いて CaO ルツボ飽和組成となる場合には Fig. 2 に示 すように CaO と CaCl2の 2 成分(C)に対して液相と固相の 2 相(P)が現れて組成が一義的に決定( f=C-P)され,その CaO 活量は固相純物質の CaO に平衡することで ``1'' に規定 されることに対し,MgO ルツボを用いた MgO ルツボ飽和 組成の場合には CaO と MgO,CaCl2の 3 成分(C)に対して 液相と CaO と MgO の 2 種類の固溶体の 3 相(P)が現れて組 成が決定されるものの CaO の活量は固溶体であるがゆえに 規定することはできない.そこで Fig. 4 に示すように式 ( 1 )について CaO ルツボを用いて決定した平衡定数と MgO ルツボを用いて決定した見かけの平衡定数を用いて式( 3 ) の関係(logaCaO=logK ′(1)-logK(1))を適用すると MgO ルツ

ボ飽和組成の CaO 活量は 0.76 と見積もられる.一方で相互 作用助係数については平衡させられるルツボの違いで逆の濃 度和依存性が示されているが実際には溶解成分濃度が酷似し ていることから逆依存性が現れることは考えがたい.カルシ ウム脱酸に伴う相互作用助係数(eO Ca)については Tsukihashi ら16)が TiAl 合金に対して決定した値が負の濃度和依存性 (eO Ca=-0.87~-0.969 at 1823~2023 K)を示すとともに顕 著な温度依存性が認められないことを考慮すると本実験温度 (1473 K)でも同様の傾向が示される可能性が高く,本研究 では CaO ルツボを用いて決定した値に妥当性がある. また,Fig. 5 はチタンおよびチタン合金のカルシウム脱酸 に係る平衡定数として多くの報告がある一部から溶融チタン 合金に対して Tsukihashi ら16)や Kobayashi ら19)が決定した ル シ ウ ム の 交 換 反 応 (Cain Flux= Cain Ti) を 考 慮 す る こ と で Okabe らや Ogasawara らの平衡定数とも整合性を比較する ことができる.ここで本実験において MgO ルツボを用いて 決定した平衡定数は CaO 活量が規定された条件下にないた め,参考値である.また,ここ示す平衡定数はすべてが純チ タンおよびチタン合金に係るものであり,特に溶鉄35)のカ ルシウム脱酸(CaO(s)=Ca+O, logK=-8.2 at 1473 K)な ど脱酸される側の酸素親和性がチタンに比較して大きく異な る場合には平衡定数の値が大きく異なることを確認してい る.一方で Tsukihashi らのチタンと TiAl 合金の場合や本 実験で用いた TiCuNi や TiCuFe, TiCuZrNi 合金の 場合のようにチタンが母相となる場合,もしくはチタン以外 の合金成分の酸素親和性が特に低い場合には実験的に平衡定 数の大きな差異にはつながらないようである.これらの結果 を比較すると本実験で決定した平衡定数は Tsukihashi らが 1923~2023 K において決定した平衡定数の延長線上に破線 で示すように存在しており,その温度依存性は溶融チタン合 金を用いて決定した Tsukihashi らや Kobayashi らが決定し た 傾 向 よ り も 固 相 チ タ ン を 用 い て 決 定 し た Okabe ら や Ogasawara らの決定した温度依存の傾向に近くなることが わかる.本研究で溶融 TiCu 合金を用いて決定した平衡定 数と Okabe らや Ogasawara らの決定した固相チタンを用い て決定した平衡定数の整合性については後述する. 3.4 酸素とカルシウムの溶解反応の平衡定数 溶融チタン合金中に溶解する酸素濃度は雰囲気中の酸素分 圧と釣り合う関係にあるため,反応系内(炉内)の酸素分圧 (酸素ポテンシャル)を測定することによって溶融チタン合金 中に溶解する酸素に係る平衡定数を式( 4 )のように見積も ることができる.

1/2O2=Oin Metal

K(4)=[aO in Metal]/(P1/2

O2) ( 4 )

さらに文献値として純粋なカルシウムと分子状態の酸素によ る CaO 生成反応の平衡定数36)として式( 5 )

CaO=Ca+1/2O2

K(5)=(aCa・P1/2O2)/(aCaO),

logK(5)=-16.87 at 1473 K ( 5 )

が利用できるため,先に求めた平衡定数(CaO=Ca+O)を用 いてカルシウムの溶融チタン合金中への溶解反応

Cain Flux=Cain Metal

K(6)=[aCa in Metal]/(aCa in Flux) ( 6 )

の平衡定数を見積もることが可能であり,フラックス中に存 在する金属カルシウムの活量を利用して先に見積もったフラ ックスの CaO 活量と同様にフラックス組成の違いによる脱 酸能の優劣を評価することができる. 溶融合金が無限希薄溶体(a=f X, f=1)であると仮定する と酸素の溶解反応に対する見かけの平衡定数(K ′(4))は炉内酸

(8)

Table 4 Apparent and fitted equilibrium constants for dissolu-ble reactions of O and Ca in the alloys and Ca activity of the flux equilibrated with CaO or MgO crucibles.

Sample number

Apparent equilibrium constant,

log [K′] Activity, log [aCa in Flux]

1/2O2=Oin Metal Cain Flux=Cain Metal

C21(1473 K) CaO crucible 17.14 -3.52 0.37 C28 CaO crucible 16.72 -3.10 0.39 M50 MgO crucible 16.26 -2.65 -0.04 C40 CaO crucible 17.72 -4.10 0.36 M77 MgO crucible 19.38 -5.77 0.19 M34 MgO crucible 15.88 ― ― M49 MgO crucible 16.34 -2.73 0.31 M44 MgO crucible 16.00 -2.39 0.78 M36 MgO crucible 16.24 -2.62 -0.16 M38 MgO crucible 15.86 -2.24 -0.24 M41 MgO crucible 15.05 ― ― M46 MgO crucible 15.55 -1.94 0.61 M47 MgO crucible 17.25 -3.63 0.94 M53 MgO crucible 16.54 -2.93 0.84 M56 MgO crucible 17.21 -3.59 0.84 M58 MgO crucible 17.50 -3.89 0.51 M45(1473 K) MgO crucible 15.85 -2.23 0.12 M37(1473 K) MgO crucible 15.72 -2.10 -0.25 M73(1423 K) MgO crucible 18.71 -4.30 0.33 M75(1448 K) MgO crucible 18.36 -4.35 0.07 M80(1458 K) MgO crucible 18.64 -4.79 0.99 C22(1473 K) CaO crucible 16.16 -2.55 -0.74 C26 CaO crucible 16.16 -2.54 -0.32 C29 CaO crucible 16.07 -2.46 -0.02 C30 CaO crucible 16.27 -2.66 -0.32 C32 CaO crucible 16.15 -2.53 0.06 M55 MgO crucible 17.11 -3.50 0.84 M78 MgO crucible 19.42 -5.81 1.08 M33 MgO crucible 14.81 -1.19 0.71 M35 MgO crucible 16.64 -3.03 -0.12 M39 MgO crucible 17.55 -3.94 0.07 M42 MgO crucible 15.94 -2.32 0.13 M72 MgO crucible 18.40 -4.79 0.91 Intercept, actual values (at 1473 K) CaO crucible 15.82 -2.20 -0.55 MgO crucible 16.17 -2.31 -0.33 ALL samples 16.08 -2.29 ―

Fig. 6 Determination of equilibrium constant for dissoluble reaction of O in the molten alloys.

素分圧と合金中の酸素濃度のみから Table 4 のように見積も ることが可能ではあるが実際には実在溶体には少なからず酸 素に対して相互作用が働くことを考慮する必要がある.そこ で酸素濃度に対する相互作用の影響を考慮するため,Fig. 6 に酸素濃度に対する見かけの平衡定数を図示し,酸素濃度が ゼロになる切片の値を相互作用の影響を受けない真値である と考えると式( 4 )の平衡定数は 16.08(=logK(4))となる.こ こで実験条件の違いとして CaO ルツボを用いた場合の平衡 定数が 15.82(=logK(4)),MgO ルツボを用いた場合には 16.17(=logK(4))と決定できるが,原理的には反応自体が溶 融合金中の溶解酸素と炉内の酸素分子の釣り合いのみでフラ ックス組成に左右されないため,ここで生じた平衡定数の値 の差異は測定誤差の範囲であると考えることができる.ま た,式( 6 )のフラックスと溶融合金に溶解するカルシウム の釣り合いを示す平衡定数は CaO ルツボを用いて決定した 式( 1 )と式( 4 ), ( 5 )で得られた平衡定数の差分から-2.46 (=logK(6))を得ることができる.

logK(6)=logK(1)-logK(4)-logK(5)

=(-3.25, CaO cru sat.)-(16.08, ALL cru.) -(-16.87, Barin) =-2.46 一方で式( 4 )の平衡定数の決定にあたっては Fig. 6 のよう に溶融合金中の酸素濃度が大きくなるに従って相互作用の影 響が顕著であり,そこから近似関数を用いて決定される平衡 定数の値にも少なからず誤差が含まれていることは想像がつ く.そこで実験的に得られた分析値より式( 6 )の平衡定数 を見積もるため,CaO ルツボを用いて決定した式( 1 )の真 の平衡定数,式( 5 )の平衡定数の文献値36)を用い Table 4 のように見かけの平衡定数を求めることができ,これを合金 中で最も相互作用の大きいと思われる酸素濃度に対して図示 すると Fig. 7 が得られる.このようにして切片の値として 決定される式( 6 )の平衡定数は-2.29(=logK(6))となる. また,ここで得られた平衡定数は先に決定した式( 1 ), ( 4 ), ( 5 )の差分より得られる平衡定数(logK(6)=-2.46)と大き く異ならないことがわかる.さらに,ここで示される式 ( 6 )の平衡定数は式( 1 )の溶融チタン合金に溶解したカル シウムによる脱酸反応と式( 7 )に示すフラックスに溶解し たカルシウムによる固相チタンの脱酸反応の差分であり,

CaO(solid)=Ca(in Flux)+O(in Alloy)

K(7)=(aCa・aO)/(aCaO) ( 7 )

本実験温度(1473 K)では Fig. 5 に示すように Okabe ら17) 値との差が-2.25(=logK(6))程度,Ogasawara ら18)の値と の差が-2(=logK(6))程度であり,本研究において決定した 式( 6 )の平衡定数の値とも良い一致を見せている.このこ とは本実験で決定した式( 1 )の平衡定数の値が図中の破線 で関係付けられた Tsukihashi ら16)の値との整合性を保ちつ

(9)

Fig. 7 Determination of equilibrium constant for dissoluble reaction of Ca in the molten alloys.

Fig. 8 Estimation of Ca activities in the CaOMgOCaCl2 ternary flux equilibrated with a CaO or MgO crucible.

つ,Okabe ら17)や Ogasawara ら18)の値とも良い整合性を示 していると結論つけることができる. さらに式( 6 )の関係を用いて溶融合金中のカルシウムの 活量係数を無限希薄溶体として仮定できる場合には合金中に 溶解するカルシウムの濃度分析値から平衡するフラックスの カルシウム活量を見積もることができ,見かけの値として Table 4 のように得られる.しかしながら,ここでも相互作 用として酸素の影響が大きく現れることが予想されるため, 酸素濃度に対して見かけの値を図示すると Fig. 8 のように なり,CaO ルツボ飽和組成におけるフラックス中のカルシ ウム活量を見積もると 0.28(=aCa),MgO ルツボ飽和組成に おけるカルシウム活量を 0.47(=aCa)と決定することができ る. 4. 考 察 本研究では TiCu 系合金に適当なフラックスを用いるこ とで冷却時の結晶成長を鈍化させて金属ガラス(非晶質)合金 を作製することを最優先事項にして実験条件を選定したため, Fig. 1 のように合金に溶解したカルシウムと酸素の濃度積の 示す関係が完全な平衡状態を示しているとは言いがたいが, データ点の分散が一桁以内であることに加えて Fig. 2 のよ うにフラックス組成のゆらぎを考慮することでフラックス組 MgO 関係にはデータ点に規則性なく,散乱しているだけ のように見られることからマグネシウムは合金の一成分と見 なすことができると判断した.本研究において決定した式 ( 1 )の溶融合金中に溶解したカルシウムと酸素による CaO 生成反応の平衡定数は温度依存性を考慮すると Fig. 5 に示 すように Tsukihashi ら16)の決定した同一反応の平衡定数と 無理なく関連付けることができる.また,式( 6 )のカルシ ウ ム 溶 解 に 係 る 平 衡 定 数 を 用 い る と Okabe ら17) Ogasawara ら18)の決定した平衡定数の値とよく一致した結 果を得ている.CaO および MgO ルツボ飽和のフラックス組 成を利用することによる脱酸能の優位性については Fig. 2 に示す相安定図から予想することができ,MgO ルツボ飽和 組成を用いることで CaO ルツボ飽和組成に比べて脱酸生成 物である CaO 活量が小さくなって脱酸反応が進行しやすく なることが想像できる.また,具体的な脱酸能の違いについ ては式( 1 )の平衡定数から導かれる CaO の活量値を直接比 較することで判断することができ,CaO ルツボを用いた場 合に 1.0 であった CaO 活量が MgO ルツボを用いることで 0.76 にまで低下させられることがわかる.さらに本研究で は溶融合金の脱酸に際して溶融合金にカルシウムを溶解させ て式( 1 )の反応が起ることを期待しているが,チタン合金 中に溶解するカルシウム量は極めて少ないために余剰となっ たカルシウムはフラックス中に溶解することが予想できる. このカルシウムは溶融合金とフラックスの間で式( 6 )の反 応によって釣り合いが保たれることになるが,同時に式 ( 1 )の脱酸反応との整合性も保たれるため,フラックス中 に溶解するカルシウム活量が高くなることに連動して合金中 に溶解するカルシウム活量も高くなり,溶解度積の関係から 相対的に合金の脱酸反応が進みやすくなることがわかる.フ ラックス中のカルシウム活量は Fig. 8 に示すように CaO ル ツ ボ の 場 合 で 0.28 ( = aCa) , MgO ル ツ ボ の 場 合 で 0.47(=aCa)となり,フラックスが MgO ルツボ飽和組成とな ることでカルシウム活量が高く保たれるがゆえに CaO ルツ ボを用いる場合よりも高い脱酸能が期待できる.このように フラックスに溶解したカルシウム活量に対しては小さくはな い値が得られてチタン合金の脱酸能の向上への期待が考えら れる一方,Table 2 に示す実験後のフラックス組成の収支計 算において 1以上の金属カルシウムの存在を考慮すると最 適値の精度を示す分散値 ``sigma2''が急激に大きくなって最 適値の精度を下げることから実際にはカルシウム濃度は 1 以下になると考えられる.このように低いカルシウム濃度に 対して大きな活量値が得られることは稀であるが,Suzuki ら20)が検 討 に用 い て い る CaCaOCaCl 2三 元 系に よ る と 1173 K において中央部の大部分を CaCaCl2の二液相領域 が占めており,カルシウム活量が高いままカルシウム濃度の 希薄な CaOCaCl2リッチ側に至ったと考えると不思議では ない.また,Han ら21)はフラックス中の金属カルシウムと

(10)

Fig. 9 Estimated O concentration in the metal for ratio of activities of CaO and Ca (aCaO/aCa)in the flux at 1473 K.

CaO 活量比に対応して式( 7 )の固相チタンの脱酸反応に基 づき決定されるチタン中の溶解酸素濃度との関係について報 告を行っており,これを本実験で決定したフラックス中のカ ルシウム活量と CaO の活量比と照らし合わせると Fig. 9 に 示すように CaO ルツボを用いた場合では 3600 ppm,MgO ルツボを用いた場合には 1700 ppm に至ることがわかり,こ こでも MgO ルツボを用いることによる脱酸能の優位性を確 認することができる. 5. 結 言 本研究では前報23)において TiCu 系金属ガラス合金の結 晶化抑制に有効であることを明らかにした CaOMgOCaCl2 フラックスのカルシウム脱酸に関わる熱力学的性質24)につ いて詳細な調査を行った.フラックス組成は CaO ルツボに 平 衡する CaO ル ツボ飽和組 成と MgO ル ツボに平 衡する MgO ルツボ飽和組成とし,実験中に測定した炉内酸素分圧 や急冷した合金のカルシウムや酸素の分析値から脱酸反応に 関わる平衡定数の決定を行った.本実験で決定した 1473 K における各反応の平衡定数は以下のようになる.

K(1)=(aCaaO)/(aCaO) ( 1 )

logK(1)=-3.25

K(4)=[aO in Metal]/(P1/2O2) ( 4 )

logK(4)=16.08

K(6)=[aCa in Metal]/(aCa in Flux) ( 6 )

logK(6)=-2.29 また,式( 1 )において求めた平衡定数の値の差異から CaO ルツボ飽和組成における CaO 活量が ``1.0'' に至ることに対 して MgO ルツボ飽和組成における CaO 活量は ``0.76'' と決 定した. 本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業・若手研究 (B)の課題研究 No. 19760457 として実施して得られた実験 試料を基に(一社)日本チタン協会・平成 23 年度助成「チタ ン研究助成」を受けたことで試料の詳細な成分分析を行い, その結果を基に熱力学的検討を加えてまとめたものである. ここに記して謝意を表します. 文 献

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Table 2 Measured and estimated final compositions of flux.
Fig. 2 Expected phase relation of molten CaOMgOCaCl 2 ternary system at 1473 K and analytical flux compositions at initial and final states.
Table 3 Fitted interaction parameters and equilibrium con- con-stants of CaOforming reaction equilibrated with a CaO or MgO crucible.
Fig. 5 Determined and reported equilibrium constants for CaOformation by dissoluble Ca and O in the alloys, and the reaction for CaOformation reported by various researchers.
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