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障害児の家族関係についての研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)障害児の家族関係についての研究 キーワード:家族関係,きょうだい,動的家族画,心理的揺れ 人間共生システム専攻 松尾 伸一 1.問題と目的 障害児を生涯にわたって支えていくのは家族である。. る。近年,発達障害児の援助に関して,人間関係,とり わけ家族関係を援助の対象として対応する事が必要(白. 障害児の抱える社会的な不利の軽減や,情緒の安定を図. 石,2001)とされているが,障害児とその家族について,. りながら生活する際に,家族の果たす役割は重要で,障. 家族関係とその援助という視点をもりこんで検討した研. 害児への援助を考える際に,障害児本人のみならず,家. 究は少ない(茂木,2002) 。. 族全体を援助の対象とする事が重要であると思われる。. きょうだいと同胞との関係を中心とした家族関係にお. このような家族への援助という観点から,障害児の家. いて,先述した家族の中での共有という点に関連し,親. 族研究が要請されているが,障害児の家族研究では,母. がきょうだいに障害をどう伝えるかが重要だとの指摘. 親を対象とした研究が数多い。 親とは異なる立場として,. (平川,1983)がある。富安・松尾(2001)は,8 割以. きょうだいの存在が挙げられるが,きょうだいは親研究. 上の母親がきょうだいに同胞の障害の説明をした,もし. の中で付随的に取り上げられるに過ぎない事も多く,親. くはしようと考えている事を報告しているが,2 割程度. ほどの系統的な研究が行われているとは言い難い。. の親は障害の説明は敢えてしておらず,きょうだいは自. きょうだい研究の中でも,障害児の存在がきょうだい. 然と障害を受け入れ,理解していると考えているようで. の心理適応や意識に与える影響ときょうだいに対する援. あるとしている。こうした親の姿勢の違いは,きょうだ. 助というテーマに基づく研究は比較的多く(Bagenholm &. い自身やきょうだいと同胞の関係に何らかの影響を与え. Guillberg,1991; Gold;1993 他) ,きょうだい研究の中で. ている可能性も考えられるが, その点の検討は不充分で,. のこの分野に関する関心の高さがうかがえる。. またこうしたことを家族の中で話すことや考えていく事. 障害児のきょうだいは,家族に障害を持った子ども (以下,同胞)がいる事で心理的・適応上様々な影響を 受けると考えられており,西村・原(1996)は,内外の先. についてきょうだいがどのような姿勢でいるかという点 についての検討は行われていない。 以上の事から,本研究では同胞の障害や行動について,. 行研究をまとめ,家族に障害児がいる事で,きょうだい. 家族の中で話題としてどの程度取り上げているか,その. は家族の中で重要な役割を担い,能力や自尊心,責任感. ことについてきょうだいがどのような姿勢でいるかを軸. が育まれる等の肯定的な影響,家族の中での位置や役割. とし,きょうだいの同胞の障害や関係の捉え方を個別的. の変化が,憤りや親との葛藤といったストレスとなり,. な文脈から検討する事を目的とする。. 情緒的な問題や不適応,家族関係に問題が生じるなどの 否定的な影響を受ける可能性を指摘している。 しかし,先行研究の問題点として,以下が挙げられる。 まず第1に, 先行研究はきょうだいの意識や態度を数量・. また,検討にあたり,本研究では Burns&Kaufman (1970)の考案した動的家族画(以下 KFD)を併せて用 い,きょうだいの捉える家族関係についての検討を行う 上での補足的資料とする。. 統計的に処理したものが多い。しかし,一般的な傾向が 示された研究でも,個人差が大きい事が指摘(McHale et. 2.方法. al.,1986)されている。西村・原(1996)はきょうだい. 1)対象. に影響を与える要因は多様であることから,「何らかの. 12 家族のきょうだい 15 名(男 7 名,女 8 名,8 歳∼16. 指標による統制を行ったとしても,きょうだい達が感じ. 歳(M=12.5) )と親 12 名(父親 1 名,母親 11 名,34 歳から. る主観的な重みはそれぞれ異なると考えられる」と指摘. 48 歳(M=41.2))であった。詳細は Table1に示した。. している。従って,数的処理では掴みきれない事例的・ 個別的な部分にも注目する必要があると考えられる。 また,第 2 の問題点として,きょうだいの受ける影響 に家族関係の変化が関係している可能性が指摘されてい.

(2) Table1 家 族 ステータス. ってきょうだいを分類した。全ての親はきょうだいに対. 家 族 NO.. 事例. 学年. 間柄. 同 胞 の診 断 名. 1. a児. 中2. 兄. 自閉症. 父 ・母 ・a児 ・同 胞 (♂ ). 2. b児. 小4. 姉. 自閉症. 父 ・母 ・b児 ・同 胞 (♂ ). る事が確認されたため,“親はきょうだいに同胞につい. c児. 小6. 兄. 自閉症. 父 ・母 ・m児 ・c児 ・同 胞 (♀ ). m児. 中2. 兄. ての話をしていている”という前提にたち,きょうだい. d児. 高1. 姉. 自閉症. 父 ・母 ・d児 ・同 胞 (♂ )・n児. n児. 小6. 弟. e児. 中2. 姉. 自閉症. 父 ・母 ・e児 ・同 胞 (♀ ). 6. f児. 中1. 姉. 自閉症. 父 ・母 ・f児 ・同 胞 (♀ )・妹. 7. g児. 中2. 姉. 自閉症. 父 ・母 ・g児 ・同 胞 (♀ ). 8. h児. 中3. 兄. 自閉症. 父 ・母 ・h児 ・同 胞 (♀ ). i 児. 中1. 妹. j児. 小5. 妹. k児. 小6. 弟. 知的障害. 父 ・母 ・姉 ・姉 ・同 胞 (♀ )・k児. 11. l児. 小2. 兄. 知的障害. 父 ・母 ・l児 ・同 胞 (♂ ). 12. o児. 小4. 姉. 知的障害. 父 ・母 ・o児 ・同 胞 (♂ ). 3. 4 5. 9 10. 家族形態. して障害の事もしくは同胞の日常についての話をしてい. が同胞に関する話をする事に関してどのような姿勢でい るかという点に注目し, A 群,B 群,C 群の3群に分類. 自閉症. 父 ・母 ・同 胞 (♀ )・i 児 ・j 児. した。各群の分類基準は以下の通りである Table4 A,B,C3群の分類基準 A群. 親からの話だけでなく,きょうだいからも積極的に同胞の話をする. B群. きょうだいから積極的に聞くことはないが,同胞の話はする. C群. 同胞の話はしない. この基準から,15 名のきょうだいを筆者及び,臨床心 理学を専攻する大学院生 2 名の計 3 名により 3 群に分類 した。分類の結果,A 群に 3 名,B 群に 7 名,C 群に 5 名. 2)手続き. が分類された。一致率は 93%であり,一致しなかった場. ①調査Ⅰ. 合は話し合いにより決定した。. きょうだいに対して, 動的家族画を実施した。 描画後, 絵の内容に関しての質問を行った。. 尚,事例的な検討に際し,きょうだいの語る内容に関 して,Table3 に示した基準に加え“同胞の障害の見方” という項目を加えて整理した方が適切であると判断され たため,以下では,Table3 にこの項目を加えた4つ及び. ②調査Ⅱ,Ⅲ きょうだいに対して,調査Ⅰの終了後,引き続き同胞. 描画の形式をから検討を行った。. との関係についての半構造化面接(調査Ⅲ)を行った。 この半構造化面接時に,調査Ⅱできょうだいに対して設. KFD の特徴. 定された質問項目に関して併せて回答を求めた。. 補足的情報として,形式分析から得られた各群の KFD の. Table2 調査Ⅱ:家族の中で同胞の話をする程度や内容及びそれに取り組む姿勢 A) きょうだいに対して. B) 親に対して. ①同胞のことについて家族の中で話をするかどうか ①きょうだいが同胞の障害を意識した時の様子と,その時の 親の対応。 ②同胞の障害のことをきょうだいに説明したことがあるかど うか,どのような説明をしたか。 ③同胞のことについてきょうだいと話すことがあるか,どんな 話をするか。. 特徴を Table5 として以下に示した。 Table5 KFDの各群別の特徴 同胞との距離 順番 位置 大きさ 表情無し 自分>同胞 自分>同胞 自分>同胞 一番近い 一番遠い 全体 7/ 15 2/ 15 8/ 15 7/ 15 2/ 15 12/ 15 A群 3/ 3 0/ 3 2/ 3 3/ 3 0/ 3 2/ 3 B群 2/ 7 0/ 7 2/ 7 2/ 7 0/ 7 7/ 7 C群 3/ 5 2/ 5 4/ 5 2/ 5 2/ 5 3/ 5. Table3 調査Ⅲ:きょうだいの同胞や同胞との関係の捉え方に関する質問項目 1)同胞の捉え方. ・同胞はどういう人? ・同胞とのかかわりで楽しいことや嫌なこと,不満など. きょうだいげんかについて 2)同胞との日常的なかかわりから見た ・ 関係性 ・他の家のきょうだいと比べて,仲が良いと思うか. 事例のまとめと考察(以下,同胞は S と示す) A 群(a 児,b 児,c 児)代表事例 a 児 A群:a児(中2:兄). ・同胞とかかわるときに何か気をつけていることはあるか 3) これからのことについて. ・これから同胞とどんなふうにかかわるか,これからについて 心配なこと ・特に同胞に対して伝えたいこと. ③調査Ⅳ 親からの補足的な情報とし,①きょうだいの仲につい て②親ときょうだいの関係③きょうだいを育てる時に気 をつけてきた事④きょうだいに関して気になるエピソー ドの 4 項目からなる自由記述式質問紙を作成し,調査Ⅱ で親に対して設定した質問を加え, 併せて回答を求めた。 3.結果と考察 きょうだいの分類 事例的検討に際し,調査Ⅱ(Table2)から得られた, 家族の中での同胞の障害に対する説明の頻度と内容によ. ①同胞の捉え方. とにかく明るくて、気付くところもよくあって…。言葉でちょっと感づいた りする。そういうところは耳がちょっと敏感。 ②同胞との日常的なかかわりから見た関係性 楽しいことは、からかえること。嫌なこといったり、くすぐったり。くすぐり遊 びはよくやる。<ケンカはする?>ケンカということはない。言い合いは あった。わざとSがきにくわなかった言葉を言ったりして…。からかおうと思 ったのもあったけど、慣れて欲しい気持ちもあって…。「あ、○○って言っ た」って言われて、自分からやったから「ゴメンゴメン」って言った。 <きょうだいげんかはする?> あまりケンカはしない。小さい時はあ ったかも。TVのチャンネルとか、PCとか、見たいものがバラバラとい うのはあった。 仲は多分いいほうだと思う。よその家を見てると、ウチのきょうだいは仲が いいのかなと思う。 ③同胞の障害の見方 興味示すところは、障害者だからちょっと変わっててもしょうがないけど。 興味を示す所が意外。ヒーローものや昔のアニメが好き。普通なら今 放送してるアニメとか、漫画とかに興味を示すと思う。でも、Sが示 すのは違うねぇ…。.

(3) ④これからのことについて あとは…できればTVに慣れさしてほしい。TVの音が気に食わないらし い。なんでやろう。ホラー映画のCMが最初嫌になって,次に、いろん なところのチャンネルが嫌になってNHKとか教育テレビしか見なくな った。その後音を消して見るようになった。今は、交渉して,CMのと きに音を消せば見れる。CMが嫌なのは変わらない。交渉しないで見れ るようになればいいねぇ…。. 家庭としては、このまま楽しく暮らしたい。それに合わせて、Sの克服する点 がついてくればなおいい。. a 児は同胞を「とにかく明るくて,気付くところもよ くあって」と説明し,音や言葉へのこだわりは気にして いるようだが,否定的な印象を持っているとは感じられ ない。日常的には, 「くすぐったり,からかったり」と,. ってくる。<話す事は?>Sとは話さない。話してもあまり意味がない。かかわ ることはない。話しかけてくることはない。仲良くしたいとはあまり思わない。 <きょうだいげんかはする?>ケンカは日常的にはない。親がいないと きにした事があるけど。<かかわりで楽しい事は?>療育活動に行くの は楽しい。いろんな人に愚痴る事もある。 ③同胞の障害の見方 違い”をなくして欲しい。だってひいきやし。だってSがやったら許されることで も、自分がすると許されない。そういうのを親に聞いたこともあるけど,怒られ る。「あんた、障害児じゃないやろ」などと言われたこともある。そんな理由では なかなか納得できない。 障害児と健常児では違うけど、違うにもほどがある。いい部分だけ同じにす る。Sがなんかやって,私が怒ると、逆にこっちが怒られる。私が何かし ても怒られる。それはいいけど…。Sは言われたらさっとやるけど、私 はしない。そういう部分では同じにする。都合のいい所だけ、健常児と 障害児を別々にして、別の所では一緒にする。弟、姉とか。. はいい」と語るように関係性も良好であるようだ。b 児,. ④これからのことについて Sが健常児だったら…。あと、できんと思うけど、妹ともう少し歳が近か ったら、きょうだいでしゃべれたのに…とは思う。. c 児においても,仲がよい,仲良くしたいという気持ち. f 児は同胞を「害児」と説明したのみで,g 児,j 児に. は A 群の 3 名において共通して語られ,全般的に A 群の. おいても「うるさい」と否定的な印象が語られ,肯定的. きょうだいと同胞の関係性は良好であると考えられた。. な印象を語ったきょうだいも, 「う∼ん」 と首をひねった. a 児は同胞の言葉のこだわりについて,「わざと嫌い. り(d 児,e 児) ,言葉少なになる様子(I 児)が見られ,. きょうだいからも積極的に楽しむ様子がうかがえ, 「仲. な言葉を言うこともあった」 と語り, 「からかおうと思っ. 同胞を肯定的に見ているとは感じられなかった。. たのもあったけど,慣れてほしいという気持ちもあって. 同胞との関係性では,「仲がいい」と答えたきょうだ. …」と述べている。b 児は学校の授業の中で自分から同. い(7 名中 3 名)と, 「分からない」もしくは「仲が悪い」. 胞の障害の事を調べており,また c 児は同胞の気持ちを. と答えたきょうだい(7 名中 4 名)が共に含まれていた。. 推測しながらの発言が多く見られ,同胞の障害について. f 児の話からは,積極的な関わりへの言及はなく,f 児か. きょうだいなりに理解を示している事がうかがわれた。. らの働きかけは少ないようだ。 また, 「話してもあまり意. KFD の中では自分を同胞よりも順番を先に,位置を下. 味がない」と,同胞と関わる事を諦めたような発言もあ. に描いていた。 (Table5)描画の順番は,家族内の日常的. った。同胞の行動については,笑顔を交えながら話す事. 序列,描かれる位置は家族内の役割の大きさを表すとさ. もあったが, 「自分の部屋に人が入ると怒るくせに, 人の. れている(日比,1986)が, “自分の方が序列は先”と感. 部屋には入ってくる」 等, 怒りを交えて話す事もあった。. じながら“家族の中での役割は同胞が大きい”と,家族. 「同胞に障害があるからといって,同胞はする事が許. の中の同胞と自分の捉え方は同胞の側に偏る事も無くバ. され, 自分がすると怒られてしまうのは納得がいかない」. ランスが取れており,同胞を最も近くに描いた事から同. と,同胞と自分の扱いが違うと感じ,不満や割り切れな. 胞との心理的距離も近いと感じている事がうかがわれた。. さを感じていると思わせる発言が見られた。こうした言. こうした特徴は A 群の 3 名の描画で共通して見られた。. 及は山本(2000)においても報告され,日常の中で不満. 一方,b 児・c 児の母親からはそれぞれの情緒的な不. や割り切れなさを感じる事も多いのかもしれない。. 安定さを心配する声が聞かれた。しかし,こうした不安. また,「いろんな人に愚痴る事もある。話せる人がい. 定な面を見せながらも,同胞を肯定的に捉え,関係性も. るだけまだいい…」とも話している。f 児自身は家族の. 良好であると考えている事から,A 群のきょうだいはあ. 中で自分から積極的に同胞の話はしないようだが,家族. る程度揺らぎながらも安定を保てていると考えられ,そ. 以外の場で,心の負担を軽くしていると考えられる。. のことに A 群の特徴でもある,家族の中で同胞のことを 取り上げて共有する姿勢が関連している事が考えられた。. 同胞の事は完全に拒否はしておらず,肯定的に捉えて いる部分もあるが,どこか割り切れなさを抱いているの が B 群の特徴で,家族の中で自分から積極的に同胞のこ. B 群(d 児,e 児,f 児,g 児,h 児,i 児,j 児)代表事例 f 児 B群:f児(中1:姉) ①同胞の捉え方 害児。障害児。害児って障害児の略かと思って言ったらお母さんに怒ら れた。 ②同胞との日常的なかかわりから見た関係性 部屋にSが勝手に入ってくる。Sは自分の部屋に誰か入ると嫌がる。特に 妹が入ると嫌がる。Sの部屋にはTVまである。そのくせに私の部屋に入. とを話さないでいる事から,こうした割り切れなさを感 じている可能性も考えられる。 KFD の中では,7名中 4 名で自身が描かれず,それ以 外の 3 名の描画においても,きょうだいの表情は描かれ ず,家族の中での自身の位置づけの困難さや,気持ちの 表現しづらさを感じている可能性も考えられる。.

(4) C 群(k 児,l 児,m 児,n 児)代表事例 n 児 C群:n児(小6:弟) ①同胞の捉え方. 話の中に入ってくる面白い人。話題の中に飛び込んで、変なことを言う。 みんなで喋ってるときに急に入ってきて、面白いことを言う。 ②同胞との日常的なかかわりから見た関係性 Sちゃんとは64でポケモンをやる。ミニゲームがあるから。ゲームを しているときとかにキャラクターに関することを言ったりする。そう いうのは面白い。ゲームをしてる時に,自分で持った印象を言う。「か わいい∼」とか。 <嫌だったとか、やめてほしいとかいうことは?>あるかもしれない…。 <きょうだいの仲は?>いいと思います。ほかのきょうだいはもっと ケンカとかしてそう。 ③同胞の障害の見方 <ケンカは?>リモコンの取り合いでします。音を消したり消さなか ったり。音は消しておこうとする。嫌いな音が入りそうなときとか。 人の声とか…。歌声は大好き。アニメの台詞とかはだめ。結構多い。 <他には?>自分のものとかは分かってるので、僕のものをとったり とかはほとんどない。 ④これからのことについて <これからこんなふうに関わっていければとか,こんな事が心配だと かはある?>今までどおりでいいと思う。<伝えたいことがあったら>と くにありません。今のままでいいと思う。. るかに注目し,きょうだい同胞との関係について事例的 な文脈から半構造化面接と補足的な資料としての動的家 族画(KFD)を用いて検討する事であった。 A 群のきょうだいは,同胞を肯定的に捉え,障害を自 分なりに理解する姿勢が見られた。心理的な“揺れ”を 感じさせるエピソードも母親から得られているが,同胞 についての言及は肯定的で,関係性も良好であった。 こう した事に,家族の中で同胞の障害や日常の行動などにつ いて積極的に話をしながら共有していくなかでの,同胞 や障害の理解の深まりが関連していると考えられた。 B 群のきょうだいは,同胞との関係の中で割り切れな い気持ちを抱いている事が考えられた,A 群でも見られ た揺れが,B 群にはより顕著に現れていたと考えられる。 親に対する不満を訴えるきょうだいも見られ,家族関係 の中での不全感がこうした割り切れなさにつながってい る可能性もあると思われる。. 同胞の捉え方については「話に入ってくる面白い人(n. C 群のきょうだいは,同胞の事を自然に受け入れてい. 児) 」 「とぼけた性格(l 児) 」のように,簡潔に同胞の様. る様子が感じられた。C 群のきょうだいは,家族の中で. 子を言い表した表現が見られた(5 名中 3 名)一方, “上. 同胞の事を話題にしていると感じてなかったが,親から. の姉とケンカしたとき慰めてもらった”というような具. の情報では,家族の中で同胞の話をする事が示されてい. 体的なかかわりエピソードで同胞を説明しようとする例. る。それをきょうだいがあまり認識していないのは,取. (5 名中 2 名)も見られ,同胞の事を一言では言い表せ. り上げる親の姿勢や,きょうだいの伝わらなさとの関連. ないながらも,きょうだいなりには同胞の姿を捉えてい. が考えられる。しかし,こうした観点からの検討は本研. る可能性が感じられた。. 究の中では行えなかったので, 今後の検討課題としたい。. 同胞との日常的な関係性では,「(遊ぶのは)楽しい。. 3 群の特徴から,きょうだいは同胞との関係を築く中. 喋るのも多い(o 児)」等の肯定的なもの,「あまり遊びま. で,心理的な“揺れ”を経験する事も多いと考えられる。. せんね(m 児)」等の否定的なもの双方が含まれていた。. こうした心理的な揺れを支えていく受け皿的な存在とし. 同胞の障害については,「時々僕のおやつを取る(l. て,家族が果たす役割は大きい事が示唆された。. 児) 」といった,自分に直接的な影響がある事に関しては. 本研究の問題点として,家族の中で同胞の障害や日常. 気をつけている様子であった。 しかし, “どちらかという. 生活の事に関する話をする事に,きょうだいが取り組む. と発達とか遅れてる”といった曖昧な回答もあり,同胞. 姿勢に注目したが,きょうだいと同胞の関係を中心とし. と他の子どもの違いを,障害であるというかたちでは意. た家族関係は,その他の家族の関係に影響されることも. 識していない事が考えられた。この点に関しては,富安・. 考えられ, 家族全体の関係からの検討が望まれる。 また,. 松尾(2001)の言うように,敢えて同胞の行動や障害の. きょうだいが感じる心理的な“揺れ”は同胞と共に成長. ことについての話をしなくても,自然に同胞のことを受. していくきょうだいの心理特性を捉える上で重要な要素. け入れている可能性があることが考えられた。. と考えられるが,時期による変動も大きいと考えられ,. C 群の描画においては,同胞との距離が最も近い描画. 事例的,継続的な検討が望まれる。. と最も遠い描画が同数で,全体としては同胞との距離感 をうまくとれていないようであるが,きょうだいを強調. 5.引用・参考文献. する,あるいは同胞を強調する特徴もなく,描画では C. 1)原 幸一,西村辨作(1996) 障害児のきょうだい. 群の共通した特徴は現れなかった。. 達(1) ,発達障害研究,18(1) ,56-67. 2)McHale,S.M.&,Gamble,W.C(1989):Sibling relati-. 4.総合考察 本研究の目的は,家族の中で同胞のことを話題にする ことに関して,きょうだいがどのような姿勢を取ってい. onships of children with disabled and nondisabled brothers and sisters. Journal of Autism and. Developmental Disorders,16,399-413.

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