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第9章 発達クリニック

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Academic year: 2021

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第9章 発 達 ク リ ニ ッ ク

昭和 62 年 11 月、児童相談所の移転に併せ、新たに設置(併設)された大型児童館とともに神戸市総合 児童センター(愛称「こべっこランド」という。)が設置され、神戸市における児童福祉の中核としての機 能を発揮するよう位置づけられた。 神戸市総合児童センターの具体的な役割としては、①健全育成、②療育指導、③啓発、④相談(こども 家庭センター)が挙げられるが、その中の②療育指導のための事業が「発達クリニック」である。従来、 こども家庭センターでは、原則として「個別指導」を中心に通所指導や心理治療を行ってきた。近年、児 童数の減少にもかかわらず相談受理件数は増加しており、しかも継続して指導しなければならないケース の増加が著しくなってきた。 これは、相談事例が複雑化、多様化してきており、1~2回の助言や指導では終結しない処遇困難な事 例が増加しており、より高度な指導・治療の技術や知識が要求されていることを示しているとも言える。 また、効率的な処遇についても考慮しなければならないところから、従来の個別指導を原則としながら、 一方で「集団指導」体制を導入するという方向で、その必要性が検討されることとなったのである。 従って、これらのニーズに対応するために、(1)現在のこども家庭センターがもっている専門的知識・技 術をより高度なものとし、児童処遇の質的向上を図る。(2)集団指導システムを導入し、指導の効率化を図 る。この2点が必要であるとされた。 そこで、専門的な知識・技術を有する大学の研究グループとこども家庭センター、総合児童センターが 連携して機能する新しい体制を確立し、P30 に示すプログラムを導入することとなったのである。その中 には、それまでこども家庭センターが実施してきた在宅障害幼児のための「母子教室」や不登校児童を持 つ「母親グループ指導」の2つのプログラムも「発達クリニック」の事業として位置づけられた。 「極低出生体重児とその親のための子育て教室」は、平成 11 年度から「発達クリニック」の事業として 位置づけられたもので、出生時体重 1,500g 以下の極低出生体重児の療育を援助するプログラムを実施して いる。 「情緒障害児親グループ指導」については隔週で「家族療法」的方法を取り入れたプログラムを実施し ている。 「行動療法しつけ指導」では、親が乳幼児の子育てを楽しめるよう援助するプログラムの他、小学校年 齢児を対象とした「夜尿講座」や児童館出張も実施している。 「在宅障害幼児母子訓練」ではリトミックなどをとりいれたグループ指導の他、0歳児のダウン症児等 に対する「個別指導」、対人関係面で障害を持つ幼児に対する「抱っこ法」も実施している。 さらに、「感覚運動指導」では、空間での感覚遊びを通して、自閉症児や知的障害児等への指導・訓練を 行っている。 その他、幼児・児童にかかわる専門職員を対象にした専門講座も実施している。 また、5つのプログラムの成果を「育ちゆく子ども―発達クリニックの実践と研究―」として発行し、 各関係機関に送付するとともに、一般家庭に対する子育ての啓発運動の一環として「育ちゆく子ども―子 育てシリーズ―」を発行し、希望者に無料で配布している。 心身に障害を持つ児童や、いろいろなリスクを持つ児童、および保護者に対して、発達支援および指導

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助言を行う療育指導事業を実施した。 また、療育指導事業の成果を広く普及させるために、専門講座や各種啓発講座等を開催した。

1-1 療育指導事業

大学の研究グループ0及びこども家庭センターと連携し、療育指導を必要とする子ども達や保護者 に対して、発達支援および指導助言を行った。 また、療育指導事業の成果を広く普及させるために、専門講座や各種啓発講座等を開催した。 (1) 事業実績 事 業 名 対 象 人 員 (a)極低出生体重児とその親の ための子育て教室 高田 哲 神戸大学医学部保健学科教授 修正月齢6ケ月~2歳半 に達した乳幼児とその親 ・修正月齢6月児 40 組(双子8三つ子1組) 10 回 ・修正月齢1歳児 31 組(双子2三つ子1組) 10 回 ・修正月齢1歳半児 42 組(双子7組)10 回 ・修正月齢2歳児 20 組(双子5組) 5 回 ・修正月齢6ケ月児 26 組(双子4組) 5 回 (b)情緒障害児親グループ指導 倉石 哲也 武庫川女子大学大学院助教授 小学生の初期非行に悩ん でいる親 ・「親子を考える講座」 10 期 10 名 7回 11 期5名 7回 12 期5名 7回(児相ケース1名) 乳幼児と母親 ・0歳児Ⅰ 11 組 7回 ・0歳児Ⅱ 7組 7回 ・0歳児Ⅲ 10 組 7回 夜尿児と母親 ・夜尿児 10 組 10 回 (c)行動療法しつけ指導 芝野 松次郎 関西学院大学社会学部教授 乳幼児と母親 ・出張講座「親と子のふれあい講座」 平野児童館 22 組 2回 道場児童館 20 組 2回 東須磨児童館 22 組 2回 (d)在宅障害幼児母子訓練 安藤 忠 神戸親和女子大学教授 0 歳 ~ 3 歳 の 知 的 障 害 児、情緒障害児と母親 ・グループ指導 母子 63 組 週1回で 37 回 うさぎ22名 キリン20名 ラッコ21名 ・個別指導 母子 37 組 延 182 回 ・抱っこ法 母子 11 組 延 72 回 ・言語指導 母子 58 組 延 190 回 (e)感覚運動指導 中村 稔堯 神戸大学発達科学部教授 3歳~10 歳の知的障害 児、情緒障害児等 ・感覚運動指導 12 名 29 回 ・教育相談 68 名 ・学習指導 2名 (2) 実施内容 (a) 極低出生体重児とその親のための子育て教室(YOYOクラブ) 極低出生体重児に対して基本的な発達支援を実施し、併せて保護者に対して発達に関する指導 ・助言や必要な情報提供を行うことを目的としている。主として神戸市内の周産期医療基幹病院(中 央市民病院、神戸大学付属病院、県立こども病院、済生会兵庫病院等)を退院した修正月齢6ケ月か

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ら2歳6ケ月までの乳幼児を4クラスに分けて、各クラス毎月1回(年 10 回)の割合で開いている。 平成 16 年4月に 108 組の方へYOYOクラブの案内を出し 48 組の参加があった。10 月は 90 組の 方に案内を出し 26 組の参加があった。不参加の理由として 16 年度も双子、三つ子のため連れていく のが大変ということが多く、参加できない三つ子が5組もあった。参加児の出生体重は 1000g未満が 約4割、1000g以上が約6割であった。この教室は各クラス月1回の参加ということもあり、お父さ んや祖父母の協力を得ての出席がよく見られた。教室への参加に家族の協力は欠かせないようである。 平成 14 年度は 106 組(双子 16 組)、平成 15 年度は 135 組(双子 16 組、三つ子1組)、平成 16 年度 は 159 組(双子 27 組、三つ子2組)と参加者は年々増加している。教室のスペースに限りはあるが、 家庭の都合や病気などの理由で出席率がどのクラスも平均して 50%程度のため、なんとか実施できて いる。 1500g未満の極低出生体重児の出生数は神戸市とその周辺で年間 150 人~200 人と推測される。知 的、情緒的な障害が明らかになった場合、この教室のスタッフとして参加しているこども家庭センタ ーの職員を通じて、年間数名の子どもが同センターの相談ケースとして繋がり、施設措置などの支援 活動が開始されている。 (b) 情緒障害児親グループ指導(学童期の子育てを考える講座) 情緒不安定や情緒障害のある早期思春期の児童を持つ親・家庭を対象としたグループ指導を実施し、 親や家族に子どもへの関わり方や子どもの理解を認識してもらうとともに、家族間の関係を調整して 問題の軽減を図ることを目的としている。 最近問題視されている少年犯罪やひきこもりの背景に、早期思春期の親子関係の問題も取り上げら れ、この時期における社会適応や良好な親子関係への社会的援助が注目される。このような中、平成 12 年度より思春期の初期で起こってくるさまざまな問題を抱えている親・家族を対象としたグループ 指導「学童期の子育てを考える講座」をスタートさせ、平成 16 年度で第 12 期を迎えた。現在整備さ れつつある子育て支援には学動期を対象としたものが少ない中で、先駆的に開発されたプログラムで ある。 学動期前から子育ての行き詰まりは深刻になりつつあり、保育所・幼稚園の先生も親子の育ちに問 題意識を持っており、地域レベルでの支援策の展開の必要性が高い。このような事から、平成 17 年度 は新たな取組として、①募集対象の年齢の拡大、小学生中心から就学前~小学生②名称の変更「学童 期の子育てを考える講座」から「学齢期を考える講座」③地域レベルでの支援策の拡大、児童館・保 育所・小学校等へ出向いてプログラムを実施する出張講座(1カ所に付き2回)④直接処遇している 児童指導員や保育士等の保護者支援活動を対象とした職員研修を中心としたプログラムの紹介とワー ク・ショップ(体験学習)を実施する計画である。 (c) 行動療法しつけ指導(親と子のふれあい講座) しつけや養育上に問題を持つ児童及び母親に対して指導を行うことにより、育児不安の解消と好ま しい親子関係の成立を図ることを目的としている。 この講座はこべっこランドが開設時と同時にスタートし、「マタニティ・ブルー」や「育児ノイロー ゼ」といったことがマスコミに取り上げ始め、家庭の子育て支援に対するニーズが高まりつつある頃、

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先駆的に立ち上げたものである。平成 16 年度で 17 年間開講している。 この講座のプログラムは育児を楽しむ5つの条件として、①育児を楽しもうという動機づけ②育児 知識③育児技術④横のつながり⑤息抜きを柱としている。講座終了後、アンケート結果に基づき5つ の条件が満たされたかどうか比較・検討を重ね、次の講座に活かすことを大切にしている。アンケー トは、プログラムの効果的な運営、親のニーズに応えられたか等、今後の講座を進める上で大切な指 針となっている。また、育児環境の変化や親のニーズに応えていくため、どの様にプログラムを見直 し、検討、修正するかという上でも欠かせないものである。 平成 16 年度は、0歳児講座を集中的に3回実施し、同一集団の比較・検討やアンケートの見直しを 重点項目として取り組んだ。0歳児講座に父親の参加日を設けているが、平日のため参加者が少なく、 平成 17 年度は、「赤ちゃん講座のファミリー日」(週末講座)の試みをする計画である。 前年に引き続きおねしょ講座を実施した。また、出張講座として兵庫区平野児童館(母子 22 組)、 道場児童館(母子 20 組)、東須磨児童館(母子 22 組)も実施した。 (d) 在宅障害児母子訓練(母子教室) 在宅障害児の発達を促進するための援助を行うとともに、その母親への指導・助言を通じて望まし い母子関係の成立及び幼稚園・保育所など社会集団に参加していくための準備を目的としている。 指導プログラムの内容は、保育所や障害幼児通園施設に近いものであるが、大きな違いは母子で参 加することである。季節に応じた七夕、クリスマス会といった行事や公演、プールといった外遊びも 実施している。保育士、言語療法士、リトミック、こども家庭センター等の専門スタッフや保育士等 をめざす学生ボランティア約 40 名のスタッフが、①障害のある子ども自身の発達支援②両親の子育て 支援③地域の資源への移行支援④長期経緯観察の4つの柱を基本としてグループ指導、個別指導に取 り組んでいる。 平成 16 年度の参加児童は3グループ 63 名で、そのうち 37 名の児童が1年間継続して指導を受け、 年度途中で 15 名の児童が保育所や障害幼児通園施設などへ入所し、新たに 23 名の児童が加わった。 どのグループもグループ終了後の経過観察として同窓会を実施している。平成 16 年度の「うさぎ OG会」では母子約 80 名の方が参加し、各年度別にその後の様子などの現状報告をし、子ども達はお もちゃでの遊びやステンドグラス作りに取組んだ。OG会は、こべっこランド母子教室を卒業した保 護者の方が自主的に集まり、子どもに関する日頃の悩みや相談事を話し合い、また、成長を喜び合う 会である。また、「気持ちのわかちあい」「情報のわかちあい」「考えのわかちあい」を柱に、年代を超 えてなんでも相談できる仲間として、お互いに集まって話し合える場となっている。 (e) 感覚運動指導 障害を持つ子どもに臨床観察を実施し、感覚運動指導に基づいて指導を行っている。障害幼児通園 施設や保育所、小学校(なかよし学級)に通っている子どもが主に参加している。 感覚運動指導は、「たえまなく脳に流れ込んでくる多量の刺激をうまく交通整理できるように、脳の 機能をよくするための働きかけする。そして子どものより望ましい発達をうながす。子どもの成長・ 発達は感覚統合の課程である」と言うアメリカのJ・エアーズ博士の理論に基づき、トランポリン、 ハンモック、平均台などを利用して「子どもの成長発達の基礎的・基本的な機能や能力を育てるため

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の発達支援」を行っている。 年間継続指導の児童は 12 名で、運動指導が中心となるため1名の児童に対して指導者が2名で対応 している。学齢期の児童には、教科学習の支援としてパソコンなどを使用したプログラムにも取り組 んでいる。 教育相談は、平成 14 年度まで毎年 50 名程度だったものが、平成 15 年度より申込み者が増えて 70 名近い申し込みがある。1日に2名の教育相談では、年度内に終了することが出来ないため、平成 16 年度より1日3名に増やした。平成 16 年度も 70 名近い申し込みがあったが、年度内に全員実施する ことができるようになった。 教育相談は 68 名の申し込みがあり、その内訳はのばら学園(知的障害幼児通園施設)等施設よりの申 込みが 10 名、保護者よりの直接申込みが 12 名、こども家庭センターのCWよりが 46 名となっている。 教育相談者の中から選定して次年度の継続指導に繋げるシステムを採用している。

1-2 啓発事業(療育指導)

児童福祉の充実を目指し、療育指導事業の成果を広く普及させるために、専門講座や各種啓発講座 等を開催した。 (1) 障害児保育ゼミ 障害児保育ゼミは、担当している障害児童の具体的事例を発表してもらい、その報告に基づきディ スカッションを行い①発達評価についての理解、方法②保育所、施設、児童館での適応状況について のとらえ方、考え方③親の障害受容のレベルをどう理解し、どう対応するか④障害についての基本的 な考え方⑤親の養育態度と担当者との関係のあり方など具体的なケースを通じて援助のあり方、考え 方などを学ぶ研修である。 このゼミは、平成2年に神戸市立保育所長(障害児保育指定保育所)20 名でスタートし、平成 16 年度で 14 回目を迎えた。その間、障害幼児通園施設、児童館の保育士や指導員と参加対象者が広がり、 16 年度は 27 名が参加して実施した。 平成 17 年度は、保育士や指導員等から指導上の困難性をよく耳にするようになってきた軽度発達障 害〔LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動障害)、PDD(広帆性発達障害)、高機能自閉症、アスペル ガー障害など〕を中心とした研修内容に取り組む計画である。 (2) 専門研修「親育ちに役立ついくつかのヒント」 この研修は、療育指導事業で研究開発された「学童期の子育てを考える講座」をもとに、子どもと 関わる仕事・職種の方(教諭、保育士、児童委員、主任児童委員、子育てボランティア)を対象に実 施した。 1部は、「子育て支援は親育ち支援」と題した倉石先生の講演、2部は「親支援に役立つ教材の紹介 とその実施方法を学ぶ」というテーマで、4つのグループに別れてプログラムの進め方を体験しても らった。 アンケート結果「このようなプログラムを自身の仕事や所属機関で実施してみたいと思いますか?」

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という質問に、「してみたい」という回答が多くよせられ、講座終了後すぐに出張講座の依頼も受けた。 (3) 講演会 こべっこランド「子育てシンポジウム」 このシンポジウムは「伸びる力を引き出すために~こべっこからの発信~」をテーマに、こべっこ ランド来館者 500 万人達成記念行事として、療育指導事業担当の先生を中心に平成 16 年9月 26 日に 開催した。 コーディネーターの安藤先生からは、「こべっこランドの療育指導事業のプログラム」の全般につい て、及び今までの変遷とこれからについてのお話をしていただいた。各先生からは、「伸びる力を引き 出すために」と題して、それぞれの立場から担当事業のプログラム内容の説明を中心に、対象児を取 り巻く現状や目的、課題などについてのお話をしていただいた。 討論会では、①地域の子育て支援・支援者のあり方②子育てをするというイメージ③子育ての専門 家④軽度発達の子ども⑤子育て資源の評価⑥子育てに一番大切なもの等を中心に勧められ、中身の深 い講演会になった。 (コーディネーター) 安藤 忠 先生 (シンポジスト) 芝野 松次郎 先生 中林 稔堯 先生 高田 哲 先生 倉石 哲也 先生

参照

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