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第 55 回神奈川腎炎研究会 アルポート症候群の一家系 1 石田典子 1 遠藤正之 1 田中寿絵 1 深川雅史 呉新村文男 1 瓊 2 症例症例 1 S.M.:8 歳, 男児 ( 腎生検時 6 歳 ) 現病歴 :5 歳時の検尿で尿潜血を指摘され, 半年後に蛋白尿も指摘されため精査目的に入院 家族歴

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症  例

症例 1 S.M.:8歳,男児。(腎生検時6歳) 現病歴:5歳時の検尿で尿潜血を指摘され, 半年後に蛋白尿も指摘されため精査目的に入 院。 家族歴:母,姉にも蛋白尿,血尿が認められ ている。 身 体 所 見: 身 長103cm, 体 重15kg, 血 圧 103/54mmHg,眼瞼結膜:貧血なし,心音:純, 呼吸音:清,腹部:平坦,軟,下腿:浮腫なし。 聴覚異常なし,眼球異常なし。 検 査 成 績:WBC 7100/μl,Hb 11.3g/dl,Plt 29.9x104 /μ l,TP 7.7g/dl,Alb 4.1g/dl,BUN 13mg/dl,Cr 0.39mg/dl, 尿 蛋 白 (1+),UP/UCr 比 0.24,尿糖(-),尿潜血 (3+),尿沈渣:赤 血球30-300/毎視野,赤血球形態:糸球体性 症例2 R.M.:16歳,女児。(腎生検時8歳), 症例1の姉。 現病歴:4歳時に蛋白尿および血尿を指摘さ れ,その後も持続しているため腎生検目的に入 院。 家族歴:母,弟にも蛋白尿,血尿が認められ ている。 身 体 所 見: 身 長120cm, 体 重20kg, 血 圧 108/60mmHg,眼瞼結膜:貧血なし,心音:純, 呼吸音:清,腹部:平坦,軟,下腿:浮腫なし, 聴覚異常なし,眼球異常なし。 検 査 成 績:WBC 7800/μl,Hb 14.0g/dl,Plt 26.1x104/μ l,TP 7.7g/dl,Alb 4.3g/dl,BUN 11mg/dl,Cr 0.5mg/dl,IgG 1336mg/dl,IgA 189mg/dl,C3 111.0mg/dl,C4 20.8mg/dl 尿蛋白 (1+),UP/UCr比 0.11,尿糖(-),尿潜 血 (3+),尿沈渣:赤血球30-300/毎視野,赤血 球形態:糸球体性 症例3 A.M.:38歳,女性。症例1,2の母親。 現病歴:6歳の頃から蛋白尿,血尿を指摘さ れており,健診のたびに尿所見異常ありと言わ れていたが定期通院はしていなかった。36歳 時,咽頭炎後に尿所見の悪化があり,ASO髙値, 補体低下を認め溶連菌感染後急性糸球体腎炎と 診断されたが,無治療で回復した。今回,尿所 見が安定したため腎生検目的に入院。 家族歴:子供2人(息子,娘)に蛋白尿,血 尿を認める。両親,兄弟の腎疾患の有無は不明。 身 体 所 見: 身 長 153cm, 体 重 43kg, 血 圧 112/70mmHg,眼瞼結膜:貧血なし,心音:純, 呼吸音:清,腹部:平坦,軟,下腿:浮腫なし, 聴覚異常なし,眼球異常なし。 検 査 成 績:WBC 4900/μl,Hb 14.5g/dl,Plt 26.5x104/μ l,TP 8.4g/dl,Alb 4.4g/dl,BUN 9mg/dl,Cr 0.61mg/dl,IgG 1776mg/dl,IgA 283mg/dl,IgM 89mg/dl,C3 85.2mg/dl,C4 17.6mg/dl,尿蛋白 (1+),UP/UCr比 0.32,尿糖 (-),尿潜血 (3+),尿沈渣:赤血球30-300/毎視 野,赤血球形態:糸球体性

アルポート症候群の一家系

石 田 典 子

1

  田 中 寿 絵

1

  呉     瓊

1

遠 藤 正 之

1

  深 川 雅 史

1

  新 村 文 男

2

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図1 図2 図3 図4 図5 図6

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図7 図8 図9

アルポート症候群

◦難聴・視力障害などを伴う進行性遺伝性疾患。 ◦ Ⅳ型コラーゲンα5鎖遺伝子の突然変異によ る,X染色体連鎖優性遺伝が多い。 蛍光抗体法においてα5鎖欠損が診断に有 用。 ◦ 電子顕微鏡においては,糸球体基底膜(GBM) に特徴的変化をおこす。 ◦ 男性患者は幼少期から血尿・蛋白尿が持続し, 30歳頃までに末期腎不全に至る。 一方,女性では一般に軽症で経過する。

まとめ

1.アルポート症候群の一家系を報告した。 2. 男性例はボウマン嚢および糸球体基底膜の Ⅳ型コラーゲンα5染色が陰性であった。 3. 女性例のα5染色は1例はモザイク状染色, 1例はほぼ正常であった。 4.女性例では詳細な病歴聴取が重要である。

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討  論

石田 よろしくお願いします。東海大学腎内分 泌代謝内科の石田です。今回,「アルポート症 候群の一家系」を発表させていただきます。よ ろしくお願いします。 【スライド】まず症例1ですが,症例1は8歳の 男児,腎生検時は6歳でした。  原病歴ですが,検尿で尿潜血を指摘され,蛋 白尿もその後指摘されたため腎生検を行いまし た。家族歴ですが,母,姉にも蛋白尿,血尿を 認めています。身体所見ですが,身長103cm, 体重15kg,血圧は103/54,聴覚および眼球異常 は認めませんでした。  検査所見ですが,BUNが13mg/dL,クレアチ ニンが0.39mg/dL,尿蛋白は(1+)で,尿潜血 は(3+),糸球体性の血尿を認めました。 【スライド】光顕では,糸球体は40個,そのう ちの1個にglobal sclerosis,1個にボーマン嚢と の癒着を認めました。個々の糸球体では,ごく 軽度のmesangium基質の増加を認めました。 【スライド】電顕では,基底膜に層状の変化を 認めました。 【スライド】次に免疫染色です。Ⅳ型コラーゲ ンα-2とα-5の二重染色で,α-2は赤,α-5 は緑色に染色されます。こちらのほうが正常腎 で,こちらのほうが患腎です。正常腎におい ては,基底膜はα-5が結合して緑色に。一方 mesangium基質はα-2により赤色に染色されま す。一方ボーマン嚢は両抗体が染まるため,中 間色である黄色に染まります。  こちらは患腎ですが,本症例では,基底膜お よびボーマン嚢のいずれもⅣ型コラーゲンα-5 が染色されず,X染色体,優性遺伝のアルポー ト症候群と診断しました。 【スライド】次に症例2です。症例2は16歳の 女児で,腎生検時は8歳,症例1の姉です。  原病歴ですが,4歳のときに蛋白尿と血尿を 指摘され,その後も持続しているために腎生検 を施行しました。身体所見ですが,聴覚,眼球 を含め異常所見は認めませんでした。  検査所見では,BUNが11mg/dL,クレアチニ ンが0.5mg/dL,尿蛋白が(1+)で,尿潜血は(3+) で,糸球体性の血尿を認めました。 【 ス ラ イ ド 】 光 顕 で は, 糸 球 体 は32個, そ の う ち の2個 がglobal sclerosisと な っ て お り, 個々の糸球体では一部の糸球体にごく軽度の mesangium基質の増加を認めました。 【スライド】電顕では,糸球体基底膜の網目状 の変化を認めています。 【スライド】免疫染色では,基底膜のα-5が部 分的に消失しています。そのためモザイク状に 染色され,X染色体性のアルポート症候群と診 断しました。 【スライド】症例3は,38歳の女性。症例1,2 の母親です。  原病歴ですが,6歳のころから蛋白尿と血尿 を指摘されていましたが,特に定期通院はされ ておりませんでした。36歳のときには,溶連 菌感染後の急性糸球体腎炎と診断されています が,この後に尿所見が安定したため,今回腎生 検を行いました。  家族歴ですが,ご両親や兄弟の腎疾患の有無 は不明です。身体所見では,聴覚および眼球異 常を含め,特に異常所見は認めませんでした。  検査所見ではBUNが9mg/dL,クレアチニン が 0.61mg/dL,IgA が 283mg/dL,C3 が 85.2mg/ dL,C4は17.6mg/dL,尿蛋白は(1+)で,尿潜 血が(3+)で,糸球体性の血尿を認めました。 【スライド】光顕では,糸球体8個のうち,分 節状硬化を呈するものが1個で,糸球体は軽度 のmesangium基質の増加と,mesangium細胞の 増加を認めました。 【スライド】次に免疫染色ですが,糸球体の mesangium領 域 にIgAが(2+) と 沈 着 し,IgA 腎症の診断となりました。しかし,本症例では 家族歴からアルポート症候群が強く疑われたた め,α-2とα-5の二重染色を行いました。結 果は,このようにほぼ正常に近い所見でしたが, ごく一部にα-5の染色が薄い部分が観察され

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ました。よって,この症例では,IgA腎症のほ かに,α-5の免疫染色だけでは診断には至り ませんが,明らかな家族歴から,この方もアル ポート症候群と診断することができました。 【スライド】アルポート症候群は,難聴や視力 障害を伴う進行性の遺伝性疾患です。糸球体の 基底膜に特有の変化を示すことが特徴です。頻 度は5万人に1人といわれています。  原因としては,Ⅳ型コラーゲンα-3,4,5 のいずれかの遺伝子異常が明らかにされていま す。遺伝形式には,X染色体連鎖の優性遺伝の ほかに,常染色体の劣性遺伝,常染色体の優性 遺伝があります。このうちの約80パーセント がⅣ型コラーゲンα-5の突然変異によるX染 色体の優性遺伝とされています。  EKSCAのコホート研究では,40歳までに末 期腎不全になる確率として,男性では90パー セント,女性では12パーセントと報告されて おります。 【スライド】この家系におけるまとめと考察で すが,まず症例1の息子さんでは,明らかに糸 球体,およびボーマン嚢のⅣ型コラーゲンα 5が陰性であったことからX染色体優性のアル ポート症候群と診断できました。症例2の娘さ んのほうでは,同染色で,モザイク状に染色さ れたため,アルポート症候群と診断できました。 当然のことながら,息子さんのY染色体はお父 さんのY染色体から,X染色体に関してはお母 さんのX染色体から来ており,母親のX染色体 の片方にアルポート遺伝子が存在するというこ とがいえます。  ここで,母親と娘の遺伝型を比べてみますと, 片方のX染色体が正常で,片方がアルポート遺 伝子を持ったX染色体となります。このように 二人とも同じ遺伝型であることが分かります。  しかし,先ほどお示ししたとおり,二人には α5の発現に差がありました。一つ前のスライ ドでお話ししましたが,女性では軽症から末期 腎不全まで予後に差があるとされています。そ の理由としていわれているのが,lyonizationと いう一方の染色体が不活化される現象です。  女性の性染色体は2本ありますが,過剰な遺 伝子の発現を避けるために,片方のX染色体を 不活化しています。どちらのX染色体が不活化 されるかは全く無作為に決められ,また,いっ たん不活化されると,その染色体は活性化され ません。  女性においては,この現象が胚発生時に各細 胞で決定され,その子孫となる細胞もその情報 が引き継がれます。よって,正常なX染色体の 活性が多ければ多いほど,正常に近く軽症とな り,アルポート遺伝子を多く持つX染色体が多 く活性化された場合は,予後が不良となります。  余談ではありますが,三毛猫のまだら模様も 同様の現象とされております。 【スライド】まとめですが,今回,アルポート 症候群の一家系を報告しました。男性例では糸 球体,およびボーマン嚢のⅣ型コラーゲンα5 の染色が陰性であり,アルポート症候群と診断 されました。女性では,α5の染色は1例はモ ザイク状の染色,1例はほぼ正常でありました。 女性例では,3年目のように詳細な病歴聴取に より,アルポート症候群の診断となる場合もあ り,病歴聴取が重要であると考えられたため, ここに提示させていただきます。ありがとうご ざいました。 乳原 どうもありがとうございました。親子で 三人をきちんと評価されたということで,貴重 な発表だと思います。何かございますでしょう か。 安田 聖マリアンナ医科大学の安田です。皮膚 生検でもモザイクが基底膜のところで分かると 言われているのですが,腎臓と大体同じような 比率でモザイクになったりするのかと思いまし た。腎臓だとどうしても重なりで,モザイクが 分かりにくいときもあるので,皮膚のほうがよ り分かりやすいかなと思います。もしこの症例 で皮膚生検もやっていて,同じような比率でし たというようなのが分かったら教えていただき たいと思います。

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石田 ありがとうございます。この症例では皮 膚の生検はしておりませんので,ちょっと分か らないのですけれども。 乳原 何かございますでしょうか。モザイクパ ターンというのは,女性によく見られる所見だ ということですが,母親のほうが弱いというこ ともあり得るのですか。今ので説明できるので しょうか。 石田 そうですね。それはできると思います。 乳原 よろしいでしょうか。ではまた,病理の お話を聞いた後,ディスカッションしたいと思 います。 重松 じゃあ,重松のスライドを出してくださ い。アルポート症候群ということで,非常に貴 重な症例を見せていただきました。ありがとう ございました。デモンストレーションは,お母 さんのほうから始めたいと思います。 【スライド01】これは,母親のbiopsyで,この 中で大きく見て,九つの糸球体のうち,二つが FGSという状態に入っている。後の糸球体は, 軽度のmesangiumに変化ある糸球体です。 【スライド02】まず,FGS的な変化を示した二 つのglomerulus。こちらはちょっとはっきりし ませんけれども,ここにあまり変化の強くない 糸球体。この二つが基質の分節性硬化を伴って います。 【スライド03】同じ所をPAMで見ますと,これ はFGSと言っていいだろうと。この二つの分 節性硬化性病変がある。FGSというのは,アル ポート症候群のときに取る一つの形でもありま す。 【スライド04】しかし,この症例では,ここは FGS的な硬化を示していますが。 【スライド05】これもそうですね。 【スライド06】ここでは,癒着病変があって, ちょっと腎炎的な変化が強く出ております。 【スライド07】それで,コントロールに比べま すと,僕が見ると正常じゃないかというふうな 印象だったのですけれども,やはり,解析をす ると,一部,α5コラゲンの表出の欠損がある という所見です。 【スライド08】ところが,この症例では,IgAが, ご覧のようにかなり有意に糸球体に出ておりま すので,これはIgA腎症というものが,アルポー ト症候群に合併して起こっているというふうに 解釈できるのではないかと。それで,FGS病変 もそうですし,癒着病変もIgA腎症の一つの表 出だというふうな見方もできると思います。 【スライド09】お母さんのほうには電顕がな かったので,これ以上ディスカッションでき ませんが,今度は息子さんのほうです。40の glomerulusがあって,ほとんどはっきりした変 化がありません。ほかに三つほどinmatureな glomerulusがありました。そのFGS的所見を 示す糸球体はここに書いていませんけれども, FGSを示唆するような所見が,一部の糸球体に 見られました。それをちょっと出しましょう。 【 ス ラ イ ド10】 そ れ が こ れ で す。 こ れ は, inmatureな糸球体がinvolutionというか,硬化し ていく過程だということも一方で考えられると 思います。 【スライド11】ところがこれをPAM染色でやる と,係蹄上皮細胞が活発で,むしろ増殖してい る。そして,係蹄はcollapseになっています。 だから,FGSの亜型のcollapsing variantを思わ せるような,この一つの糸球体だけを見るとそ ういうふうな印象を持てる。つまり,FGSの形 になる前の変化だといえると思います。 【スライド12】それからもう一つは,このtip

lesionです。proximal tubuleの上皮と,この係蹄 がちょうどせめぎ合いをして,癒着ないし衝 突している。こういう所見もFGSのときには, tip lesionとして見つかりますので,このアル ポート症候群の糸球体が荒廃していく一つのプ ロセスとしてFGSのタイプを採るものは,こ ういうふうなかたちで説明できるのではないか という気がいたしました。 【スライド13】この症例は,説明のとおり,α 5の表出が全く見られない。 【スライド14】そして,電顕像を示していただ

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くと,典型的な所見で,アルポート症候群の基 底膜像はこういうふうに一見厚いのですけれど も,緻密層の中がすかすかになっていて,基質 の間に丸いvesicleが見えるということです。そ れからGBMがずっと細くなって,ここでは上 皮細胞の一部が潜り込んできて,恐らくここに 基底膜の欠損があるんでしょうね。そして,内 皮と接触しかかっているような場所がありま す。こういうふうな,基底膜の異常が,息子さ んのほうはよく出ているということです。 【スライド15】ここもlayeringがかなりよく出 ています。それでもまだ変化としてはdiffuseに 出ているということは言えず,かなり部分的な 現れ方をしております。 【 ス ラ イ ド16】 そ れ か ら 娘 さ ん で す。22の glomerulusがあります。ここでもちょっとFGS 的な糸球体の異常が見られます。 【スライド17】ここは完全な糸球体硬化が起 こっています。こちらの糸球体は特に強い変化 はありません。 【 ス ラ イ ド18】 中 に, こ う い う 形 でcollapse 気味のglomerulusの外側に活発な,いわゆる podocyticのcellular lesionみたいなものがあっ て,collapsing variant的な所見を呈しています。 【スライド19】一部はpolar hyalinosisを思わせ るような所見もちょっとある。 【スライド20】これはPAS染色です。この血管 極のところに基質の増加が部分的に見られる。 【スライド21】この症例は,一部欠損している ところ,出ているところもあるということで, モザイクパターンであるということです。 【スライド22】この症例では,弟さんに比べる とずいぶん軽いのですけれども,やはり基底膜 α5の異常がある程度見られました。 【 ス ラ イ ド22】 ち ょ っ と 薄 いGBMで,thin basement membraneと言ったほうがいいかもし れないような所見がありました。 【スライド23】ということで,付け加えること はあまりありませんけれども,この症例では, アルポート症候群の進行がFGS的な展開を取 る可能性があるのではないかということをお話 ししました。以上です。 山口 私もあまり追加することはありません。 アルポート症候群でいいのだろうと思います。 ですからあまり問題はないです。IgA腎炎がア ルポート症候群にどのぐらいacquiredな腎炎が 合併するのか。なかなか少ないように思います。 【スライド01】息子さんで,糸球体は,いつも アルポート症候群のときにどういう,今,重松 先生からFGS likeにつぶれていくとは言われて はいるのです。そういうふうに考える人もいる し,clonic pielみたいにちょっとボーマン嚢が 厚くなって,糸球体がcollapseしてくる。こう いう円柱に伴う間質炎なのかもしれないのです が,ご承知のようにα5は,distalのTBMには α5が通常はあるわけです。そうすると,アル ポート症候群で息子さんの場合は完全欠損して いますから,α5がないのです。そういうもの が,間質のfoamcellとか,いろいろなものに, 間質炎とつながってくるのかどうか。その辺は よく分かりません。  なぜ,α5がdistalにあるのかも,長田先生 に後で聞きたいと思っています。理由を教えて ください。 【スライド02】こういうように少し尿細管間質 病変があるのです。つぶれた糸球体が出ていま すから当然それに随伴しているのですが,何か ちょっと変にfibrousなところがあったので,つ いでに撮りました。ちょっと変に,近位尿細管 がfoamyになっています。 【スライド03】それから,こういうつぶれです。 peritubular fibrousと, 糸 球 体 のcollapseで つ ぶ れてきている。 【スライド04】あと,僕も,光顕でアルポート 症候群を示唆する所見は何なのかなと見ること はあるのですが,一つは,この血管腔がちょっ と硬い感じなのです。それから細かい。非常に 細かいのです。大小不同がある。そんなことを 言ってもちゃんとした所見がなければ誰も言わ ないわけですが,そういうcollapseもあります

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けれども,どうも何となく硬くて,毛細血管腔 が細かいという印象はあります。 【スライド05】無理やりそういうふうに見れば, 小さな血管腔ができてきている。できたのかど うか分かりませんけれども,非常に細かい,硬 い感じがするという印象です。 【スライド06】これは(★00:03:53 /一語不明) lisionかもしれませんけれども,FGSにはなっ ていないです。 【スライド07】同じような感じです。血管腔が 大小あって,非常に小さい血管腔が見えている。 ですから,何となくのびのびした正常なものと はちょっと違うかなという印象です。これは, お姉さんのほうですけれども,似たような感じ です。 【スライド08】先ほど重松先生が,これはどう いう感じで,periglomerular fibrosisが強いので す。ですから,どうしてこういう虚脱型でつぶ れてくるのか分かりません。 【 ス ラ イ ド09】 お 母 さ ん は, 確 か にperihilar hyalinosisのかたちでちょっとIgAがかぶってき ましたので,また,mesangiumのマトリックス が増えているように思います。

【スライド10】これはpara mesangial depositが どこかにあると思って見たのかもしれないです ね。ちょっとあまりはっきりしないです。 【スライド11】それで,α5とα2のコンビネー ションで,女性はこれでいいと思う。母親がど うかという問題で,一つはよく分かりません。 ただ,一つの可能性としては,ボーマン嚢も欠 損するのです。それから,distalのTBMも欠損 します。ですから,これは,ボーマン嚢が一部 ここら辺は赤いので,ボーマン嚢が一つ参考に なるのかなと。ちょっと係蹄のほうは,撮った 人でないと分からないみたいです。よく見てい ると,どこかで欠損している部分があるらしい というのは,見ている人ではないと分からない 場合もあるらしいです。ですから,非常に軽い ことは事実ではないでしょうか。 【スライド12】息子さんの,われわれもよく thin membraneとアルポート症候群をどうやっ て区別つけるかで,時々困る場合がありま す。ベースはthinなんです。一つは上皮側の angulation,でこぼこがある。それから,thin membraneでもこういう断裂を見ることがある。 形成異常で断裂を見ることがあります。それか ら,lamina densaのsplittingとか,網状かという のが,部分的に徐々に。ですから,もうちょっ と息子さんが若いと,thinだけで区別できない 場合があります。もちろん,α5を見れば分か るわけですが。 【スライド13】これがお姉さんです。このよう にきれいなんですが,一部少し,先ほどdensa granularで,少し厚ぼったい感じのところに, thinのところもずいぶんあるのです。ですから, 肥厚が不規則に見られる。それから上皮側やや angulationがある。angulationというかでこぼこ がある。フラットじゃない,でこぼこがある。 それから,何となく顆粒,densa granularという か,小さなvesicleが基底膜内に見られるという だけで,なかなか電顕だけで判断するのは難し い場合があります。 【スライド14】お姉さんで,やはり薄いのが ベースです。そうすると,これだけ見せられ るとthin membranesと区別がつかないのです が,ちょっとでこぼこがあるかな。それか ら,fusionが 部 分 的 に あ る。 も ち ろ ん,thin membranesで も 時 々 fusionが 出 て く る の で す。そうすると,いよいよ成人の場合は,thin membranesなのか,アルポート症候群なのか区 別がつかない場合があります。一つはこういう でこぼこで,肥厚が部分的に見られる。これ は虚脱もあるので,何とも言えません。densa granularがある。 【スライド15】そういうようなことで,アルポー ト症候群で珍しいのですが,母親はIgAが合併 している。X-linked dominantなアルポート症候 群でいいのだろうと思います。 【スライド16】Gubler先生が,レビューでいろ いろなものを出しています。最近は,僕も知ら

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なかったのですが,lamininの欠損で,Pierson syndromeというのが最近見つかったらしいで す。だから,Ⅳ型コラーゲンだけではなくて, lamininのほうの異常です。 【スライド17】これは皆さんご承知のように, Autosomalの 場 合 は,3と4が 具 合 が 悪 く て, Xリンクの場合は,5ですよね。そうすると, Xq22,2番目の染色体のqのこちらはAutosomal で,もう一つはHANAC syndromeというのがあ るそうです。 【スライド18】これは,α1と,α3と,α5を 染めています。ですから,Autosomalなかたち ですと,ボーマン嚢とdistalのα5が残ってい るということで,α3,4の異常であるという ことが分かるのですが,α1,α2ですと,い ずれも陽性に出てきてしまうということです。 ただ,今,いろいろなacquiredの腎障害で,実 際にGBMを糖尿病とかいろいろなもので染め てみると,相当変化があるのではないかという ふうに考えているのですが,誰もまだやってく れませんので,ぜひ誰が,興味のある方はやっ ていただければなと思いました。  以上です。 乳原 どうもありがとうございました。ただ今, 病理からの発表が終わりまして,何かございま したら。 長浜 横浜市大病院の長浜と申します。突飛な 質問で申し訳ないのですが,乳原先生も最後に 質問していたのですけれども,母親があれだけ 染まっていて,子どもがあれだけ染まっていな いというのは,もちろんライオナイゼーション でいいのかもしれないのですけれども,僕が 思っているのは,父親から何か来ているのでは ないかと思うのです。ライオナイゼーション は,確かエピジェネティックな変化だと思うの です。腎炎ではなくても,がん家系であるとか, そういうエピジェネティックな変化を示唆する ような家族歴がないかどうか,教えてください。 石田 ありがとうございます。一応,聞いた限 りでは,家系の中で何かあるような疾患は全く ありませんでした。 長浜 ありがとうございました。 乳原 おばあちゃんは大丈夫なんですかね。出 てこなかった。 石田 はい,特に。出ていないです。 乳原 どうぞ。 上杉 筑波大学病院の上杉です。福岡大学にい たときに,アルポート症候群ありの光顕を一緒 に見ているときに,アルポート症候群を疑う所 見とは,山口先生が言われたように係蹄が張っ ていない,小さい,きれいに輪郭を追えないか, くちゃくちゃっとしているような感じがすると いわれました。確かに,この症例も,息子さん のほうはかなり係蹄がくちゃっとしていて,お 姉さんのほうは部分欠損なので,割と係蹄が開 いているような感じがしました。山口先生の言 われているとおりと思いました。  それと,先生方に質問なのですけれども,ア ルポート症候群のときにはfoamcellが出現が多 いのですけれども,この症例はfoamcellが出現 していなかったでしょうか。 山口 私が見た感じでは,まだ出ていなかった です。場所にもよる。脾膵境界の辺りにすごく foamcellが出やすいですよね。だから,ちょっ と見かけなかったです。重松先生はどうだった。 重松 特に見なかった。 山口 じゃあ,まだ出ていないのかもしれない です。 乳原 蛋白尿がどうも三人とも少なそうですけ れども,蛋白尿との関係とかは。あと,そのほか, 小児科の先生いらっしゃいますか。いないです か。きれいな症例を見せていただきまして,と てもいい勉強になったのですが,何か一言言っ ておきたいという方はございますでしょうか。 よろしいでしょうか。じゃあ,どうもありがと うございました。

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参照

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