第1章 序論 1.1. 研究の目的
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(2) 表 1.2.1 にディーゼルエンジンとガソリンエンジンの比較を示す。ディーゼルエンジ ンの最大の特徴は自己着火点火である。その燃焼形態は希薄燃焼であり、かつ高圧縮比 で行われる。そこからもたらされるメリットとして熱効率の高さが挙げられる。 式(1.2.1)に理論熱効率を示す。式(1.2.1)より計算されるガソリンエンジンとディー ゼルエンジンの理論熱効率を図 1.2.1 に示す。圧縮比がガソリンエンジンの 8〜10 に対 して、18〜23 と 2 倍程度も大きい上に、希薄燃焼であるために比熱比が大きい。その ために計算される理論熱効率はガソリンエンジンが約 40%であるのに対し、ディーゼ ルエンジンでは約 65%と計算される。理論的に圧倒的に熱効率が良い。. η th = 1 −. 1. 式(1.2.1). ε κ −1. η th : 理論熱効率 ε:圧縮比. κ : 比熱比 (= 定圧比熱Cp / 定容比熱Cv ). ディーゼルエンジン. 理論熱効率 η. 1.0. ガソリンエンジン κ=1.45 κ=1.40 κ=1.35 κ=1.30 κ=1.25 κ=1.20. 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0. 5. 10. 15. 20. 25. 30. 圧縮比 ε 図1.2.1 ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの理論熱効率の比較 また、余り知られていない特徴として燃料選択の自由度が大きいことがある。圧縮比 20 倍もの断熱圧縮を行うと空気温度は約 500℃に達する。500℃にも達すると大半の燃 料 は、自己着火することになる。脱石油系燃料として天然ガスから造る GTL:Gas to Liquid の利用が望まれている[1‑1][1‑2]。また、脱化石燃料としては菜種油やパーム. 1-2.
(3) あるいはバイオマスから造ったバイオディーゼル燃料や水素燃料が検討されており、多 様な燃料が利用可能である。 1.2.2. DPF の必要性. 図 1.2.2 に PM の模式図を示す。また図 1.2.3 に PM 粒子径分布を示す。PM は平均径、 約 60‑100nm で約 10nm から 1000nm に分布する。PM は固体のカーボンの周りに未燃焼の 燃料 SOF: Soluble Organic Fraction や硫酸塩、金属分が凝集している。とくに 100nm より小さいナノ粒子と呼ばれるものは肺胞への沈着率が高く健康に与えるリスクが大 きいとされている。 HC, 炭化水素 SOF (Solvable Organic Fract ion). 金属アッシュ分 Metal ash. サルフェート SOx 固体炭素 IOF (Insolvable Or ganic Fraction). 図1.2.2 PMの模式図 いくらディーゼルエンジンの CO2 排出量が少なく地球温暖化に与える影響が小さいと 言えども、ヒトの健康に悪影響を与えるリスクがある PM を排出している以上ディーゼ ルエンジンは環境配慮型エンジンにはなり得ない。 図 1.2.4 に世界的な PM と NOx規制動向を示す。欧州ではほぼ 5 年毎に規制が厳し くなり、2010 年から始まる EuroV 規制においては 5mg/km の規制が予想されている。 70,000. PM 数[個]. 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 0.01. 0.1. PM粒子径 [mm]. 図1.2.3 PMの粒子径分布 1-3. 1.
(4) 60. JPN(H14) EuroIII. PM mg/km. 50 40 30. EuroIV. 20. JPN新長期. 10 0. EuroIV. 0. 100. US07 Tier2 Bin5. 200. 300 400 NOx mg/km. 500. 600. 図1.2.4 各国の排ガス規制 この値はガソリン車と同等もしくはそれ以下のレベルの PM 排出量になることを意味 する。従来のディーゼルエンジンから排出される PM 量は、40‑60mg/km であるのでこの 規制に適合し欠点を無くし、ディーゼルエンジンのメリットすなわち熱効率の良さだけ を享受するためには信頼性の高い DPF を開発し装備することが必須となる。 1.3. 従来の研究. 1.3.1. 従来の再生システム. ディー ゼルエンジンの平均排気温度は約 150℃と大変低いためその燃焼温度が約 630℃である PM は限られた高速運転を除き DPF 上に堆積していく。そのため従来よりな んらかの強制再生システム(アクティブシステム)が必要であると考えられ、多くの試 みがなされて来た。しかしながら、システムが複雑であることや PM を燃焼再生させる ためのエネルギーが実用からはかけ離れていたため実際の運用上で成立したシステム は無かった。. 1-4.
(5) 表1.3.1 各PM再生ティブシステムにおけるメリット・デメリット. システム 電気ヒーター. 最適温度. 有利な点. 不利な点. 低回転/低 流速. 低い温度にコントロールされ たシステム. イニシャルコストが高い 車載するには電気容量が大きす ぎる. ディーゼル 燃焼バーナ ー 逆洗システ ム. イニシャルコストが高い 安全性確保に必要なものが多い 全領域. アッシュが堆積しない. イニシャルコストが高い システムが非常に複雑. 表 1.3.1 に従来より検討されてきたアクティブシステムを示す。電気ヒーターシステム は数多くの試みが為されてきた。DPF に電気ヒーターを前置し DPF を再生する温度まで 昇温させるものである。筆者もこのシステムを自動車用に開発を試みた[1‑3],[1‑4]が 実用化には至らなかった。図 1.5 に車載用電気ヒーターシステムを示す。. Flow rate of total emission 4000〜13500L/min. 13L Diesel Engine. Pressure 1000〜3000mmAq. Flow rate 100〜200L/min. Ps. Valve No.1 +. DPF No.1. Battery. Heater. CPU. drive circuit. INPUT. OUTPUT. Valve No.2 DPF No.2. Valve No.3 DPF No.3. 図1.3.1 車載用電気ヒーターDPFシステム[1-3]. 1-5.
(6) 車載上で電気ヒーターにより DPF を 600℃を越える温度まで昇温するためには、エン ジンより排出される大流量の排気ガスによる温度低下を防ぐため分岐する必要があっ た。つまり DPF システムを複数個に分岐しておき再生中の DPF にはバルブなどを用いて わずかな流量しか導かれないような工夫をして順番に再生を行った。そのような工夫を しても必要な電力は 3000W であり車載上のオルタネーターあるいはバッテリーより再 生エネルギーを得ることは大変難しい。またその再生時間は約 40 分と非常に長いもの であった。40 分という再生時間はデリバリートラックのように配達をしながらストッ プアンドゴーを繰り返す走行モードにおいては実質上、安定な再生を達成することはで きない。筆者もこのシステムを用いメキシコのコカコーラ配達トラック[1‑5]への適用 や北米ロスアンゼルス市における宅配便への適用を試みたが、実際の走行では再生中に エンジンが切られる。または、低速走行が連続するなどの理由で圧力損失が上昇し DPF の破損に至った。また、1993‑1997 年には東京都の都バスに DPF システムを搭載するプ ロジェクトが展開された。ここでは、上記の同様な電気ヒーターシステムや、バーナー システムも検討された[1‑6]。バーナーシステムは、DPF に軽油バーナーシステムを前 置し軽油を燃焼することにより再生用の熱を得るものである。熱量としては十分確保で きたが、燃料の損失やシステムの安全装置の構成が複雑なことなどの理由により実際に は普及するには至らなかった。. 表1.3.2 各パッシブシステムにおけるメリット・デメリット システム. 最適温度 最 適温度. 有利な点. 不利な点 不利 な点. > 350°C. 機械的にシンプル. 燃料に混ぜておくか、滴下す るシステムが必要。フィルタにアッシュの 堆積がある. 触媒担持フ ィルタ. > 375°C. 機械的にシンプル 堆積物の問題がない. すすが多いと効かない エージングにより触媒が失活する. NO2 生成 CRTTM. 250‑450°C. 堆積物の問題がない 適量範囲が広い. 低Sの燃料が必要 C/NOバランスがとれたエンジンが 必要. 燃料添加剤. また、表 1.3.2 に代表的なパッシブシステムのメリットとデメリットを示す。パッシ ブシステムとは、触媒によりPM酸化燃焼の活性化エネルギーを低減させ、より低温で PM を連続再生させようという試みである。ここで連続再生とは堆積する PM 量と DPF 上 で酸化燃焼する PM 量のバランスにおいて、DPF 上で酸化燃焼する PM 量の方が上回って いる場合は連続再生が成立する。連続再生が成立する場合は DPF 上に PM が堆積し続け るということがないので圧力損失の上昇は飽和する。 燃料添加剤とは燃料中に適正な濃度の PM 燃焼触媒を混入させるものである。通常は CeO2 や FeO など酸素吸蔵能(OSC: Oxigen Storage Capacity)に優れたものが構成金属元. 1-6.
(7) 素(Ce, Fe)を含む有機錯体として採用される。PM と触媒の接触がナノレベルで達成さ れ[1‑7]、PM 燃焼温度を大きく低減できる。図 1.3.2 に TEM(透過型電子顕微鏡)で調 べられた CeO2 と PM の接触の様子を示す。. 図1.3.2 TEM(透過型電子顕微鏡)観察によるPMに分散 した燃料起源触媒(CeO2)の様子,文献[1-7]より引用. 触媒担持フィルタとは触媒を直接、DPF 上に担持する方法であり燃料起源触媒よりも 添加装置が要らないなどさらにシンプルな構成である。担持する触媒は Pt 系の触媒が 多く試みられている。Pt などの貴金属により排ガス中のガス成分である HC(炭化水素) や CO(一酸化炭素)あるいは PM 中の未燃の燃料である SOF 分を酸化燃焼することによ り得る熱を PM の酸化再生に用いる。CRTTM(CRT: Continuous Regeneration Trap)[1‑8] とは、 DPF の前段に Pt 系などの酸化触媒を配置し NO⇒NO2 反応によりを NO2 を生成する。 その NO2 により固体の C を酸化するというものである。この NO2 により C 酸化の温度は 250℃とパッシブ再生反応の中ではもっとも低温であるが、燃料中の S(硫黄)分の濃 度が高いと NO⇒NO2 反応の転化率が低下し燃焼温度が上昇する。また、排気ガス中の N/C バランスが燃焼を成立させる場合、重要であることから、運転マップ中で特定の領域に おいてしか高い効率が得られないことや、将来的に NOx の規制も同時並行で厳しくなっ ていく場合成立の可能性が低下する(付録1参照)。このようにパッシブシステムもデ ィーゼル車両の排気温度が平均 150℃程度であることを考えると、米国のハイウエイ高 速モードなど限られた運転領域においてのみ成立するシステムと言える。 上記したように、従来のアクティブシステムとパッシブシステムでは以下の点が課題 であり成立しなかった。 1) PM の燃焼温度、600℃以上を得るために外部からエネルギーを与えることは大変な 困難であるばかりでなく、システムの複雑化や大型化を招く。 2) 触媒作用による連続再生は理想的であるが、ディーゼルの平均排気温度に対し再生 温度が高く、限られた運転条件でしか成立しない。. 1-7.
(8) 1.3.2. 新しい再生システム. 上記より再生のためのエネルギーを外部から取り入れることは非常に困難であるこ とが判った。しかしながらエンジンの筒内温度は 2200℃を越える温度に達する。この 熱量を有効に利用しようと考えらたのがポストインジェクションという再生方法であ る。ポストインジェクションは図 1.3.3 に示すエンジンの燃焼筒内への多段噴射を利用 したものである。 TDC. メイン噴射(トルク発生). 初期噴射率制御 (騒音,NOx低減) プレ噴射 (騒音低減). ポスト噴射 (後処理制御). 噴射率. パイロット噴射 (騒音低減). 後噴射 (PM低減,後処理制御). ピストンクランク角度. 図1.3.3 コモンレールによる多段噴射 メイン噴射により車両推進用のトルクを得た後、ポスト噴射とよばれる余分の燃料を ミリ秒単位で筒内に噴射するものである。その筒内の様子をイメージ化したものを図 1.3.4 に示す[1‑1]。 メイン噴射 約1000℃. 排ガス >450℃. ポスト噴射. 図1.3.4 筒内におけるポストインジェクションの様子. 1-8.
(9) メイン噴射の後にさらに噴射が行われているのが判る。この操作により走行条件によら ず排気温度を約 450℃まで昇温できる。未だ PM の燃焼温度 600℃までには至らないが DPF に前置した酸化触媒で余分に噴射された燃料を燃焼し、さらに温度を昇温すること により再生行う。 このポストインジェクションは必要とされる噴射の自由度や精緻さから、従来の列型 ポンプを用いたインジェクターでは困難であり、図 1.3.5 に示すコモンレール式のイン ジェクターの出現により可能となった。. (a)システム. (b)インジェクター断面図. 図1.3.5 コモンレールシステム (出典: Bosch社HP) 共通なレール(コモンレール)に独立した電磁開閉式のインジェクターを備え、高圧 を各インジェクターにかけておき、噴射は電磁開閉により行われる。共通に圧力をかけ ておけることから 160MPa を越える圧力をかけることができる。噴射も各インジェクタ ーが独立していることから自由度が高く、正確に短時間の噴射が可能になるという特長 を有している。一方、高圧に対するレールやインジェクターの信頼性確保が難しい。こ のコモンレール化の採用だけで高圧にできることから噴射燃料の微細化が促進され拡 散燃焼が大きく改善され PM ならびに NOx 排出量が 1/2 以下になるなどの効果が確認さ れている。 多段噴射を目的とした現在のコモンレールは、90 年代初めに Daimler 社、Fiat 社、 Elasis 社(Fiat subsidiary)、Lucas 社(Delphi)等で盛んに研究され、ダイムラー社 とフィアット社で共同開発したものを BOSCH 社が完成させ、1998 年のアルファロメオ 156、ベンツ C クラスに初めて搭載された。このときに用いた効果は、主に、パイロッ ト噴射によるノイズと NOx 低減である。ポストインジェクションで排気温上昇や還元用 の HC の供給を狙ったのは、lean NOx 触媒用としては Daimler 社が行った。DPF 再生用 としては 1998 年に新聞発表により PSA 社がその実用化を宣言し、2000 年に PSA 社が世 界で始めて量産乗用車に適用し実用化した。図 1.3.6 に PSA 社が採用した DPF システム の概念図を示す。. 1-9.
(10) 図1.3.6 PSA社による世界初の企画量産車搭載DPFシステム 図1.10 PSAによる世界初の企画量産車搭載DPFシステム (出典: PSA社HP) このシステムには前節で述べた燃料添加触媒が採用されている。PM の燃焼温度をあ らかじめ 550℃程度に低減させておき、PM が DPF 上に堆積したら圧力損失により再生の 時期を検知する。再生はポストインジェクションにより行われ、排気温度を約 450℃ま で上昇させた後 DPF に前置してある酸化触媒により PM が燃焼する温度 550℃まで上昇 させる。燃料添加剤により PM の燃焼温度が低減してあるため、再生に要するエネルギ ーの損失が小さいことが特長である。そのため再生時間は約 500sec と従来のアクティ ブシステムでは到底達成できない短時間再生を可能にしており、車両が遭遇するあらゆ る走行条件でも安定な再生を達成できる可能性が非常に高い優れたシステムである。再 生間隔は初期には約 1000km と長いものであるが、燃料添加触媒が DPF 内に堆積するこ とに圧力損失を上昇させ DPF のライフを決めることが初期の課題であった。 1.3.3. DPF 材料の課題. DPF 用の材料としては、これまで主としてガソリン用触媒担体に使用されているコー ジェライト基材が用いられてきた。コージェライト基材は、押し出し方向に配向する性 質により線膨張係数が極めて小さく耐熱衝撃性セラミック材料としてガソリン用触媒 担体に広く普及している。DPF に堆積した PM を燃焼再生する際に再生温度がときに 1200℃にもなり、DPF 基材自体溶損する問題がおきる。そのため実車制御上 PM の再生 間隔が短くなる。再生間隔が短くなると燃料の損失が増大するばかりでなく、ピストン. 1-10.
(11) とシリンダーの隙間から燃料がオイルに混入する潤滑油の希釈という現象がおきる。そ のためエンジンの信頼性を損ねる。 また初期性能から繰り返し応力が加わると強度劣化が認められ安全な PM 再生域がさ らに小さくなるといった課題があった。 1.4. 研究の方法. 最初に実車上にて要求される必要再生 PM 量を理論的に求め、耐熱衝撃性を確保する 手法を確立する。そして DPF におけるガス透過に関する性能である圧力損失とろ過効率 を最適化する。耐熱衝撃性を確保するために最初に最適再生 PM 量の導出をした。導出 方法はエネルギー損失が最小化する再生 PM 量を最適値とする考え方を用いた。DPF を 搭載することにより損失するエネルギーは DPF の圧力損失に拠るエネルギー損失と DPF の再生に拠るエネルギー損失がある。この二つは、再生 PM 量に対して背反の関係にあ るので最適値があることが分かり、それぞれのエネルギー損失にあたる燃料消費量を予 備実験的に求めておいて必要な緒言において最適 PM 再生量を導出した。次に DPF に堆 積した PM を再生する際の熱衝撃を解析した。ガソリン用触媒担体に比較して DPF 内で PM が燃焼再生するときの熱応力の違いを理論的に解析した。その上でその熱衝撃を評 価する方法を研究し再生限界試験法の確立をした。再結晶 SiC は構成する粒子の大きさ を変えずに造孔剤の径、添加量を変えることで比較的広い気孔構造範囲の多孔質体が形 成できるのでプロセスを確立し供試できるサンプルを作製した。そして求めた最適 PM 再生量が安全に再生できるかを確認した。確立した DPF に要求される耐熱衝撃性から数 ある耐熱衝撃性セラミックから再結晶 SiC 多孔質体を用いた DPF を選択することにした。 さらに再結晶 SiC は熱膨張係数が大きいので分割する構造体を採用した。弾性率が低い 接着剤を用いてどのくらい熱応力が低減できるのかを解析した。 もう一つの DPF の重要な特性としてガス流れ特性がある。ガス流れ特性から生じる性 能として圧力損失性能と PM ろ過効率がある。それらを予測する理論について検討し、 その結果をもとに特に重要な PM 捕集後の圧力損失を低減する方法と触媒コートに対す る気孔構造の設計方法を見出した。さらには PM 中には金属分が含まれており、完全に 再生を実行してもアッシュ分が堆積し圧力損失を増大させフィルタの寿命を決定する。 そこで、アッシュ堆積に対して圧力損失低減効果の高いセル構造を見出すために入口側 のセル容積が出口側のセル容積よりも大きくなる構造体を追及した。実際にそのセル構 造を試作し最適化によりセル構造の選択、最適入口/出口の容積比率を検討した。 実際に設計した DPF を実車に搭載してモード運転により 1 ㎞あたりに排出される PM 量や粒子大きさ毎の PM 粒子数を計測して低減効果を検証し、ディーゼルエンジンの排 気レベルをどの程度まで清浄化できるのかを検証する方法をとった。最後に、繰り返し 再生によりアッシュが溜まり、DPF の有効容積を減少させることにより増大する熱応力 を解析した。有効容積が予測通り減少し求めた限界熱応力を越えたときにクラックがど. 1-11.
(12) のように生じてろ過効率にどのように影響を与えるかを調査した。あわせて DPF を洗浄 して初期の圧力損失に戻せるか等、 DPF の制御をする際に必要なパラメータを追求した。 1.5. 本論文の構成. 本論文の構成は 4 章から成る。 第 1 章は序論であり、研究の目的と背景、従来の研究ならびに関係研究の概要ならび に問題点、研究の方法と概要について述べ、本論文の意義を明確にする。特に DPF にお ける課題をシステムにおける課題と材料における課題に分離し実用上の課題はどこに あるのかを明確にした。概念としては 1980 年代前半から広範に調査研究されているテ ーマであるので周辺技術の進展にも言及し新たにどのような機会が現れてきたかにつ いても述べた。 第 2 章では DPF の耐熱衝撃性と耐久性の確保について述べる。ハニカム型 DPF を用い て PM を浄化する際に従来においてその成立を阻んでいた PM を再生する際の耐熱衝撃性 に注目した。その最適再生 PM 量を予測するために理論の導出、熱衝撃解析の評価方法 の提案、再結晶 SiC 多孔質体の作成、再生限界評価の実施と解析、材料選択と DPF 構造 設計、疲労試験の節からなる。結論の節では DPF に必要な耐熱衝撃性についてとその要 求に耐える DPF 材料、構造体についての結論を述べる。 第 3 章では、第 2 章で得た結果をもとに DPF を構成し車両の運転の妨げになる圧力損 失を低減する方法、PM のろ過効率を低い圧力損失を維持した状態で向上させる方法に ついて検討し述べる。性能を予測するための圧力損失とろ過効率理論、PM を堆積した 条件での圧力損失の低減、触媒コートと圧力損失、ろ過効率と気孔構造、アッシュ堆積 に対する最適セル構造、実車上でのろ過効率検証、繰り返し再生による性能変化の検証 の節からなる。結論の節では、圧力損失/ろ過効率の理論と実験の相関について、圧力 損失を低減する方法、触媒コートに対する最適化、アッシュ堆積に対するセル構造の最 適化、実車上でのろ過効率検証結果についての結論を述べる。 第 4 章においては本研究で得られた結果を総括しディーゼル自動車に対し DPF を用い て排ガスを浄化することによって可能になったことを述べる。また、最後 SiC‑DPF の課 題を明確にし、将来における研究課題を展望する。. 1-12.
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