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2. 観測概要

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Academic year: 2022

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(1)

豊橋市内の中規模緑地による周辺市街地に対する気温低減効果(Ⅱ)

-2010年、夏季の詳細観測による冷気層と“冷気のにじみ出し”の関係性の把握-

豊橋技術科学大学 環境・生命工学系 三島浩敬(学生会員) 、東海林孝幸(会員) 、田中里佳(非会員) 、北田敏廣(会員)

1. 緒言

ヒートアイランド対策の 1 つとして、緑地から 市街地への“冷気のにじみ出し”という市街地気温 低減効果を持つ現象がある。この“冷気のにじみ出 し”現象とは、晴天・静穏な夜間という条件下で 放射冷却により緑地内に冷気が蓄積され、その冷気 が周辺市街地に重力流的に全方位に向かって流れ 出ることをいう。

2009 年の夏季における豊橋市の中規模緑地(高師緑地 24.2 ha)と緑地周辺市街地を対象とした気温測定により、緑 地南側市街地に“冷気のにじみ出し”の存在が示唆された。

しかし、冷気の到達距離や緑地内で生成された冷気がにじ み出しとして市街地へと出て行く過程は明らかにされてい ない。そこで本研究では、高師緑地と高師緑地南側市街地 を対象とした定点、移動観測による多地点での気温を測定 することで高師緑地からの“冷気のにじみ出し”の到達距 離を明らかにし、同時に緑地内の鉛直・水平方向の気温観 測から冷気層と“冷気のにじみ出し”の関係を調査する。

2. 観測概要

2 1 観測対象・期間

観測対象は愛知県豊橋市南部にある緑地( 高師緑地 24.2 ha)とした ( 図 1) 。定点観測の観測期間は2010 年8月1日から9月31日まで行った。また、移動 観測、鉛直気温観測、水平気温観測、風速観測は 8月21日18時から翌22日6時まで行った。

移動観測等の行った日の天気は 21 日の夕方から 夜間まで晴れ、翌 22 日の明け方の天気は曇りであ った。

2.2 観測方法

(a) 定点観測 緑地内と緑地南側市街地の 23 箇所

( 図1 ●)に測器を設置し、設置高さは一律地表

面から 2.5 m とした。緑地内では樹林内、芝生上、

駐車場といった場所に取り付けた。また、温度セン サーの近傍( 5 m以内)に空調室外機などの人工 排熱源が存在すると測定に影響が出るため、市街地 に測器を設置するとき、周辺に人工排熱源がないよ う考慮した。測定器のサンプリング間隔は1分で、

解析には1時間平均値を使用した。

(b) 移動観測 緑地南側市街地を対象に 21 地点

( 図 1 ×)の観測を行った。移動手段は自転車と し、観測地点の気温、地表面温度の測定を行った。

なお、観測は地表面から高さ1.5 m とし、1時間毎 に行った。

(c) 水平気温観測 緑地内の芝生上と樹林内に測器を設置 し(図1△)、地表面から高さ1.5 m で観測を行った。

サンプリング間隔は1分で、解析には1時間平均値を用い た。

(d) 鉛直気温観測 バルーンに紐を付け緑地内から上空

30 m 付近まで上げ、紐に設置した測器によって緑地の鉛直 気温分布を測定した(図1 ■)。サンプリング間隔は1分

で、解析には1時間平均値を用いた。

(e) 風速観測 3次元超音波風速計を緑地内の芝生上と

樹林内の 2 箇所( 図 1 ○)に設置した。風向、

風速は 10 Hz で観測し、解析には 10 分平均値を

用いた。

図1 観測対象場所

3.

結果、及び考察

3.1 冷気のにじみ出し到達距離

移動観測によって得られた、緑地と緑地南側境界

から330 m までの市街地における20時~4時まで

の 2 時間毎の気温分布を図 2 に示す。20 時及び 22時いずれの地点においても気温は同程度であり、

緑地南側境界付近と市街地の気温差は 0.1 ℃ であ った。このことから 22 時の時点で冷気は市街地に 流出していないことが示唆された。また、0 時では 緑地南側境界から 50 m 程度までの気温が、それ 以降の気温より低い。このことから冷気が緑地南側 境界から約50 m 地点に到達していることがわかる。

そのときの緑地南側境界付近と市街地の気温差は 0.3 ℃ となった。さらに2時では冷気の到達距離は

概ね120 m 程度と考えられ、このときの緑地南側境

:定点観測

△:水平観測

■:鉛直観測

×:移動観測

○:風速観測

土木学会中部支部研究発表会 (2011.3) VII-037

-645-

(2)

界付近と市街地の気温差は0.5 ℃ となった。4時に 冷気は更に深く浸透し、距離にして約140 m となり、

このときの緑地南側境界付近と市街地の気温差は 0.3 ℃ となった。

以 上の結 果か ら緑地 南側 境界か ら市 街地へと

“冷気のにじみ出し”が始まる時間は、22 時から

0 時の間である。また、“冷気のにじみ出し”最大到 達 距 離 は 約 140 m で あ り 、 緑 地 南 側 境 界 か ら

約 140 m 程度の距離にある市街地は“冷気のにじ

み出し”現象による気温低減効果を受けていると 考えられる。

3.2 市街地への“冷気のにじみ出し”過程

移動観測と水平気温観測によって得られた、緑地と市街 地における気温の時間変動を図 3 に示す。緑地と 市街地の間を横断する道路を0 m とし、緑地を-方 向に市街地を+方向に取る。クールアイランド強度 は、20 時~4 時の平均を取ると 1.5 ℃ であった。

ここで、クールアイランド強度とは緑地と市街地そ れぞれの代表値の平均気温差としている。緑地境界 と 市街地の気温差は、20時~4時の平均を取ると 1.2 ℃ となった。また、芝生上と樹林内の気温差は、

20時~4時の平均を取ると0.3 ℃ となった。

こ のこ とから 、緑 地と市 街地 の間に 気温 差は 約 1.5 ℃ に維持されていことがわかった。この 原因として、緑地境界と市街地の間には 1 車線の 市道があり、その地表面からの放熱によって緑地と 市街地の気温差が小さくならないためであると 考えられる。また、緑地の芝生上で生成された冷気 は市街地へ 直接にじみ出していくのではなく、

樹林内と道路で温められた上で、“冷気のにじみ出 し”として緑地から市街地へ流出しているといえる。

3.3 冷気層の生成と厚さ

鉛直気温観測によって得られた、緑地内の鉛直 気温分布を図4に示す。ここでの“冷気層の厚さ”は 鉛直方向の気温勾配がほぼ無くなる高度とした。

鉛直方向の気温は、20時の段階では地表面付近から 5 m まで0.3 ℃ の気温差が見られ、5 m から10 m までは気温の変化はなく、10 m 以上で再び気温が 上昇した。このことから、20 時には地表面付近の 大気は安定となっていることがいえる。同様に 22 時以降も地表面付近の気温が上空よりも低い 状態が続き、大気は安定状態を保ち続けたが6時ま でに消滅した。冷気層の厚さは20時に5 m であっ たものが、22時には15 m 、0時には20 m 、2時に

は 17 m 、4 時には 20 m と変化した。冷気層は

2時に最大厚20 m 地点の気温と地表面の気温の差 は最大1.3 ℃ となった。

観測期間内で冷気層は0時に最大20 m となった。

これは緑地内にあるクロマツとほぼ同等の高さで ある。これより冷気層は、芝地周辺の樹木が壁とな り、その高度まで蓄積されたと考えられる。また、

冷気層の厚さは夜間を通して維持されず、一定の 厚さになるとそれ以上は発達しないことが明らか になった。

4.結論

本研究により得られた結論を以下にまとめる。

① 高師緑地における“冷気のにじみ出し”の最大到達距離 は緑地境界から市街地の約140 m 地点までであった。また、

“冷気のにじみ出し”は22時~0時の間に始まることがわか った。

② 緑地の芝生上で生成された冷気は市街地へ直接にじみ

出していくのではなく、樹林内と道路で温められて、緑地 から市街地へ“冷気のにじみ出し”が発生している。

③ 冷気層は20時~22時の間に生成され始め、0時に層の 厚さが最大となる。また、冷気層の厚さは夜間を通して 維持されているわけではなく一定の厚さになるとそれ以上 は発達しない。

④“冷気のにじみ出し”発生時間は冷気層の最大厚さにな る時間と重なる。そのことから、緑地内で冷気層が最大 厚さになると市街地へ“冷気のにじみ出し”が始まると 考えられる。

⑤ 今回の観測で、高師緑地のクールアイランド効 果における詳細な部分が明らかとなった。

今後、高師緑地周辺市街地に対し地表面被覆の 改善等のヒートアイランド対策技術を導入するこ とによる緑地による気温低減効果を評価したいと 考えている。

図2 にじみ出し到達距離

図3 夜間の緑地と市街地の気温推移

図4 緑地内の鉛直気温分布

24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0 27.5 28.0 28.5

-130 -80 -30 20 70 120 170 220 270 320 370

距離(m)

気温(℃)

20:00 22:00 0:00 2:00 4:00

市街地 緑地

芝生上 樹林内

0 5 10 15 20 25 30 35

24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0

気温(℃)

高さ(m

2010/8/21 20:00 2010/8/21 22:00 2010/8/22 0:00 2010/8/22 2:00 2010/8/22 4:00 2010/8/22 6:00 25.5

26.0 26.5 27.0 27.5 28.0 28.5

0 50 100 150 200 250 300 350

緑地境界からの距離(m)

気温(℃)

20時 22時 0時 2時 4時

土木学会中部支部研究発表会 (2011.3) VII-037

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